月別アーカイブ: 2007年8月

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月16日、17日、18日)

2007年8月16日(木) 朝刊 23面

「ひめゆり」次世代へ/Coccoさんトーク熱く

 【東京】終戦記念日の十五日午後、元ひめゆり学徒の証言記録映画「ひめゆり」の特別上映会が新宿区四谷区民ホールで開かれた。元学徒の二人と歌手のCoccoさんのトークショーもあり、Coccoさんは会場の若い世代に向け、「まずは聞き、知ってほしい」と、戦争の悲惨さを後世に伝えようと呼び掛けた。

 Coccoさんが同映画を支援したことがきっかけで企画された。十六日まで開かれるが、計八百五十席に三千件以上の応募があり、抽選で選ばれた人たちが集まった。ひめゆり学徒隊を通して紹介される沖縄戦の映像に、客席からすすり泣きが聞こえた。

 上映後は柴田昌平監督を司会に、島袋淑子さんと宮城喜久子さんの元学徒がCoccoさんを交えてトーク。宮城さんは学友の死を「絶対に忘れてはいけない。若い人は命を大切にしてください」と語った。

 島袋さんは「(戦争前も戦争中も)何も知らないまま戦場に出された。知らない、知らされないことほど怖いものはない」と訴えた。Coccoさんは「あの体験をしゃべる勇気に比べ、私たちがそれを見て聞く勇気なんて小さい。おばぁたちに感謝したい」と話した。

 ミニライブでは、「お菓子と娘」などを熱唱した。同映画は今月十九日に名護市民会館、二十、二十一日には沖縄市民小劇場あしびなーでも上映される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708161300_04.html

 

2007年8月16日(木) 夕刊 1面

金武町議会 抗議決議へ/米新射撃場

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用の小銃(ライフル)用射撃場が建設される問題で、金武町議会(松田義政議長)は十六日午前、全体協議会を開き、早ければ十七日にも臨時議会を開き、抗議決議を行うことを決めた。

 自衛隊によるキャンプ・ハンセンの共同使用についても反対していく方針を確認し、基地機能の強化に抗議の意思を示す。

 全体協議会では儀武剛町長が、住宅地に近いレンジ3に射撃場を建設する計画があることを説明。

 「レンジ4の都市型戦闘訓練施設に町民、県民挙げて反対したその近くに、新たな施設を造るということが理解できない。断固として反対する」と町の姿勢を伝えた。

 全体協議会では、「新たな施設を造るということはもってのほか。早急に反対決議すべきだ」「金武町として容認できる問題ではない。これ以上の基地機能強化は認められない」と建設反対の声が相次いだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708161700_01.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 1面

三重の人的ミス原因/嘉手納・燃料漏れ

バルブ閉め忘れ・交代報告せず・確認怠る

 【中部】米軍嘉手納基地で今年五月、ジェット燃料が流出した問題で、同基地第一八航空団は十六日、「担当者が燃料タンクの送油管のバルブを閉め忘れたことと、不十分な勤務の引き継ぎが原因」とする調査結果を発表した。流出量は当初は約八千七百リットルと公表していたが、その後の調査で約一・七倍の約一万五千リットルに増えたことも明らかにした。人的なミスによる流出に、地元から反発の声が上がった。

 米軍の発表などによると、担当者が燃料タンクの送油管のバルブを閉め忘れただけでなく、勤務交代の際に、使用するタンクが変わったことを交代要員に報告しなかったため、指定外のタンクが誤って継続使用されたという。

 さらに、タンクへの燃料供給過剰を示す警報装置の警告を担当者が確認したが、流出の確認作業を怠ったことも判明。同航空団は装置を監視する専門要員を新たに配置するとしている。

 懸念されていた環境への影響については「水源に達することはなかった」と結論付けた。

 米軍からの報告を受けた那覇防衛施設局は十六日、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)に調査内容を説明した。

 野国会長は「当初の発表と量が違うのはどういうことか。人的なミスであり、管理がずさんすぎる。再度、県や地元の立ち入りを認め、確認させるべきだ」と不満をあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_02.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 31面

琉大事件 処分取り消し/51年ぶり不当認める

きょう学長が謝罪の意

 一九五六年、島ぐるみ闘争のデモに参加した琉球大学の学生七人が除籍処分などを受けた「第二次琉大事件」で、琉大は十六日までに、五十一年ぶりに「不当処分」だったことを認め、取り消しを決めた。岩政輝男学長が十七日、処分を受けた当時の学生らと面会し、「謝罪」の意を伝える見通し。これまで公式行事や記念誌などで、事件にほとんど言及してこなかった大学当局が学生不当処分の「汚点」を認める画期的な発表となる。

 第二次琉大事件については今年五月、当時の森田孟進学長が「個人的見解」として、処分学生の希望を聞いた上で「特別修了証書授与」か「再入学」を認める考えを発表。六月に就任した岩政学長の指示で、調査委員会(委員長・新里里春副学長)が設置された。

 委員会は、学生らの行動が違法ではなかったと認め、不当処分を取り消すよう求める報告書をまとめ、学長に提出。琉大の最高意思決定機関、教育研究評議会が十四日、処分の取り消しを承認した。

 岩政学長との面談には、除籍処分を受けた学生六人(一人は他界)のうち、三人が出席する予定。

 デモの行動隊長だった嶺井政和さん(73)は「大学が取り上げるまで長過ぎた感はあるが、学長の対応が具体的にどういう形になるのか注目したい。処分を取り消し、事件をなかったことにするというのでは困る」と注文を付けた。

 当時、新聞記者で米民政府が問題視していた「琉大文学」の同人だったジャーナリスト、新川明さん(75)は「忌まわしい事件として歴史から抹殺するようなことがあってはならない。謝罪すれば済むわけではなく、今後、琉大の歴史にきちんと位置付けていくのかどうかが問われる」と話した。


[ことば]


 第2次琉大事件 1956年7月、軍用地の無期限接収と地料一括払いの方針を示すプライス勧告に反対するデモに参加した琉大の学生のうち、反米的な言動があったなどとして大学が学生会幹部やデモの中心人物ら6人を除籍(退学)、1人を謹慎処分とした。7人のうち4人が「琉大文学」の同人。近年、米国民政府の大学への強い圧力があったことを示す報告書が見つかったほか、琉大同窓会が処分学生の「名誉回復」を大学に働き掛けていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_04.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 1面

教科書検定撤回要求 県民大会来月23日

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会が、九月二十三日午後三時から糸満市摩文仁の平和祈念公園で開かれることが、十六日決まった。大会の実行委員長は仲里利信県議会議長に決定した。十六日に那覇市内で開かれた実行委員会準備会で決まった。

 仲井真弘多知事に就任を要請する予定だった大会長は置かないことになった。知事には県民代表としてあいさつを要請する。

 事務局は、県議会内に設置する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_05.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 2面

米軍、工事入札を公告/ハンセン新射撃場

 米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場の建設が計画されている問題で、米軍は十六日、工事に関する入札を公告した。九月末までに業者を選定する。事業費は米軍予算で七百二十万ドルを見込んでいる。地元の金武町伊芸区は来週にも抗議決議する方針。

 金武町の儀武剛町長と伊芸区の池原政文区長は同日、那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所に抗議するとともに、県に反対の立場で協調するよう求めた。県の上原昭知事公室長は「連携して適切に対処したい」と述べた。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「キャンプ・ハンセン全体で見たときに、訓練や人員の増加にはつながらない」と説明。使用部隊については「海兵隊は使わないという説明は受けていない。陸軍が主に使うという以上のことは言えない」と述べ、米陸軍専用とは断定しなかった。

 施設局の佐藤勉局長は、沖縄自動車道からの距離が約五百メートル、最も近い伊芸区の集落から約一キロ離れていると説明。レンジ4に建設された都市型戦闘訓練施設(最も近い住宅地まで約三百メートル、沖縄自動車道まで約二百メートル)との違いを強調した。

 抗議で儀武町長は今回の計画について「伊芸区の住民に、ハンセン・ゲート前での四百八十六日にわたる(レンジ4の都市型戦闘訓練施設反対の)早朝抗議行動の苦悩に満ちた日々をよみがえらせた」と指摘。「約一万人が参加した(都市型戦闘訓練施設の)緊急抗議県民集会の(地元の)意志から何一つ学んでいない」と政府の対応を批判した。

 池原区長は「過去にハンセンからの流弾、被弾事故があり、周辺住民は銃弾が一定方向に飛ぶとは限らないことを知っている。しかも今回は射程千二百メートルのライフル用の射撃場。レンジ3はレンジ4に次いで集落に近い。朝から晩まで戦場さながらの訓練が続くのは耐えられない」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_06.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 13面

シェラトン宮古進出へ

180億円投資8階建て354室

 【宮古島】宮古島市のトゥリバー地区約13ヘクタールを40億円で購入する仮契約を結んだ特定目的会社「SCG15」(本社・東京)は、同地区にホテルを中心とするリゾート開発を進め、世界各地に展開するホテルチェーン・スターウッドグループのシェラトンがホテル運営を担当する計画であることが16日、分かった。本契約成立後に開発・設計に関する業務委託を受ける松野八郎綜合建築設計事務所(東京)が同日、市議会への説明会で明らかにした。

 親会社の米国系不動産投資会社「セキュアード・キャピタル・ジャパン」(SCJ)がホテル建設費を含む総額180億円を調達。議会の承認後に本契約し、年内にも現地運営会社がシェラトンと委託契約を締結する。

 市議会で説明した「宮古島リゾートホテル計画(仮称)」によると、地上8階建てのホテルのほか、コテージを建設する。部屋数は合計で354室。

 このほか、5つのレストランやエステ、結婚式を行うチャペル棟などを計画している。従業員は約250人を見込んでいる。

 仮契約書の条項には2年以内の着工と5年以内の供用開始が盛り込まれており、9月定例会で承認されれば、2008年8月に着工、10年2月にオープンする計画だ。

 売却金は議決後5日以内に総額の10%に当たる4億円、2カ月以内に残金を支払う。

 仮契約締結後の会見で伊志嶺亮市長は「長い間の市の懸案が仮契約まで進み、ほっとした気持ちだ。厳しい市の財政状況の好転に向けて大きな一歩を踏み出した。議会の理解を得て、宮古島の経済の発展につなげたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_08.html

 

琉球新報 社説

米軍再編法施行 押し付けより対話重視を

 米軍再編推進法の施行令が15日、閣議決定され、29日施行が決まった。米軍再編に伴う政府施策への協力の度合いに応じて自治体への交付金を増減する「アメとムチ法」と呼ばれる同法の本質が、施行令でより鮮明になった。再編に絡む米軍基地を抱える県や名護市など当該自治体は、いよいよ正念場だ。

 問題はすでに普天間移設問題で顕在化している。政府案に異議を唱える県や名護市を無視し、政府は代替基地建設に必要な辺野古沖での環境影響評価方法書の公告縦覧を強行している。

 そこに米軍再編推進法の施行である。「非協力的な自治体には再編交付金は出せない」(防衛省首脳)と、政府は早くも同法に基づく「ムチ」をちらつかせている。

 名護市の島袋吉和市長は「とんでもないことだ。(交付金で)縛ろうとしている」と反発している。

 同法に基づく再編交付金は、施設面積や建物・工作物、艦船・航空機の数など再編に基づく「変化」に応じて支給される。

 支給額の判断基準は「住民生活に及ぼす影響の程度」とされている。その点からすると、交付金はいわば「迷惑料」である。

 「産廃、原発、基地」が3大迷惑施設といわれる。受け入れ自治体には迷惑料となる交付金や特別振興策が支給・実施される。

 県内でも基地交付金、基地周辺対策事業など、毎年300億円近い「基地迷惑料」が交付されている。これに島田懇事業、北部振興策(総額1千億円)が別枠で加わる。

 だが、基地絡みの交付金や振興策は、必ずしも地域振興につながっていない。

 名護市では、この10年間に500億円を超す基地関連の特別振興策が投入・実施されたが、10年前に比べ失業率は8・7%から12・5%に、市債残高は171億円から235億円に増え、法人税収は1千万円減の4億3千万円に後退している。借金(市債残高)は基地振興策の自己負担分(裏負担)が押し上げたものだ。

 失業率は高まり、借金は増え、自立に必要な収入が減る。さらに新たな振興策が必要となり、基地依存度が高まる。悪循環に見える。

 米軍再編法の施行で、政府はムチを恐れアメ(交付金)欲しさに基地を受け入れる自治体が増えると期待しているようだが、そう甘くはない。

 新たな危険や負担増と引き換えにもらう予算や振興策というアメの怖さ、逆に自立を阻む基地振興策の矛盾に気付いた自治体は、「アメとムチ法」を前に、脱基地、反基地の動きを強めるだろう。

 頭越しの基地押し付けは百害あって一利なしである。政府には、どう喝型政治からの脱却と対話重視の民主政治への回帰を求めたい。

(8/17 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26387-storytopic-11.html

 

2007年8月17日(金) 夕刊 1面

知事、県民大会参加を明言

 仲井真弘多知事は十七日午前の定例記者会見で、来月二十三日の開催が決まった沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除する教科書検定意見の撤回を求める県民大会について「大変評価している。私もきちっと参加して、東京に向かって申し上げるべきことを私なりに表現し、発言していきたい」と大会参加を明言した。

 金武町の米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に米陸軍の小銃用射撃場が建設される問題については「金武町は米軍基地が多く、基地をある程度許容してきた部分もあったと思うが、はるかにその許容度を超え始めている」と建設に反対する町の立場に理解を示し、近く儀武剛町長と意見交換する考えを示した。

 米軍普天間飛行場代替施設建設計画で、那覇防衛施設局が県などに提出した環境影響評価(アセスメント)方法書について「信義違反というよりも、そもそも仕事のやり方がおかしい」と政府の対応を厳しく批判し、現状のままではアセス後の埋め立て申請手続きに応じない姿勢を示唆した。

 受け取りを保留している方法書に対する知事意見については「法的には動き始めているという解釈もあり、私の意見なしというわけでいくか検討中」と述べ、対応に苦慮していることを明かした。

 仲井真知事は方法書送付について「(自身は)事前に聞いていなかった」とし、送付前日に小池百合子防衛相と県との間でやりとりがあったかについても「していないと思う」と述べた。

 十一日の集中豪雨で那覇市の安里川がはんらんした問題で、県南部土木事務所が、四月のはんらんの後に、蔡温橋の改修工事で被害が拡大したとの調査結果を得ながら、対策を放置していたことについては「土木建築部からまだ(報告を)聞いていない。確認した上で、県の考えを含めて報告したい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171700_01.html

 

2007年8月17日(金) 夕刊 1面

新射撃場の建設中止要求/金武議会抗議決議

 【金武】金武町議会(松田義政議長)は十七日午前、臨時議会を開き、米軍がキャンプ・ハンセン「レンジ3」付近で予定している最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場建設に反対する意見書、抗議決議、要請決議案を全会一致で可決した。

 決議では「町は米軍実弾演習に伴う被弾、流弾の事故の発生に非常に敏感な地域で、レンジ4反対の緊急抗議県民運動の抗議集会から日米両政府は何一つ学んでいない」と指摘。

 民間地域に隣接する地域に、米海兵隊射撃場が多数存在している町の状況を「極めて異常な事態」と強調した上で、「米陸軍射撃場建設および陸上自衛隊の共同使用を含め、金武町がさらなる負担を押し付けられている状況である」として、射撃場建設の即時中止を強く求めている。

 意見書のあて先は内閣総理大臣、外相、防衛相など。抗議決議は駐日米国大使、在日米軍司令官あて。

 同日午後、松田議長ら代表五人が、那覇防衛施設局や外務省沖縄事務所、県などを訪ね、抗議・要請行動を展開する。

 同問題では、儀武剛町長が強い反対の意思を示しており、十六日には「レンジ3」に近接する伊芸区の池原政文区長とともに那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所に抗議した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171700_02.html

 

2007年8月18日(土) 朝刊 1・27面

第2次琉大事件 処分取り消し通知

51年ぶり/学長、7人に謝罪

 米軍統治下の一九五六年、反米的言動を理由に琉球大学の学生七人が大学から退学(除籍)などの処分を受けた「第二次琉大事件」で、琉球大学の岩政輝男学長は十七日、五十一年ぶりに七人の処分を取り消し、当時の学生らに謝罪した。処分を受けた七人(一人は死去)のうち三人が大学主催の式典に出席、岩政学長から処分取り消し通知を受け取った。

 岩政学長は、(1)処分学生の行動は当時の法令や学則に違反していない(2)処分は米国民政府から強硬に求められ、なされた(3)大学は処分学生に何ら弁明の機会を与えていない―との事実を認めた大学の調査結果を報告。「処分を取り消し、被処分者の名誉を回復する」と発表した。

 その上で、学生らに「大変長い間ご迷惑をお掛けしました。心よりおわび申し上げます」と謝罪。出席した古我知勇さん(75)、神田良政さん(72)、嶺井政和さん(73)の三人に、それぞれ処分取り消し通知書を手渡した。出席しなかった元学生には後日、郵送される。

 式典後の記者会見で、古我知さんは「感謝の念とともに、もっと早くできなかったかなという気持ちでいっぱいだ」と複雑な心境をのぞかせた。

 嶺井さんは「これからは事件を正しく位置付け、琉大の歴史を積み上げていくための糧としてほしい」と語った。


     ◇     ◇     ◇     

元学生 ぬぐえぬ悔しさ


 米民政府の圧力に屈した琉球大学が存続のため、学生七人を退学(除籍)などの処分とした第二次琉大事件。大学当局は十七日、五十一年前に処分を下した同じ日に取り消しを発表した。通知を受けた七十代の元学生らは感謝の念を示しながらも、「もっと早くできなかったか」と、苦渋の半世紀を振り返り、悔しさをにじませた。大学の歴史の「汚点」とされる事件に振り回された当事者らは「負の歴史を記録に残し、大学の自治、学問の自由を守る糧にしてほしい」とメッセージを送った。

 記者会見した三人は一様に緊張した表情。当時、琉大学生会長として退学処分を受けた古我知勇さん(75)は「決定を喜んでいるが、もっと早くできなかったかというのが正直な心境だ」と複雑な思いを吐露した。

 嶺井政和さん(73)は「不当な処分を取り消すと決めた大学の労苦を評価し、感謝したい」としながらも、「五十一年間、退学処分の上に生きてきた。当事者はみんな七十代になっており、一人はすでに亡くなっている。(取り消しの)実効性を考えると悔しい」と無念さものぞかせた。

 当時の仲宗根政善副学長らの尽力で、本土の私大などに転入学した元学生たち。「直接の不利益はなかったのでは」との質問に、古我知さんは「二十代での二、三年の空白は五、六十代での十年に匹敵する。処分に当たった者でないと分かりませんよ」と気色ばむ場面も。当事者が負った心の傷の深さをのぞかせた。

 会見に同席した前琉大同窓会長の比嘉正幸さん(73)は「大学がいつまでも闇に葬っていてはいけなかった。時期は遅れたが、過去の学生処分を反省し、語り継いでいく第一歩にしてほしい」と期待した。

 琉大の新里里春副学長は、二〇一〇年の開学六十周年記念誌に事件の記述を初めて掲載する方針を示し、「大学人として学園の自治、学問の自由を侵さないよう頑張りたい」と決意を語った。

 一方、一九五三年に当時の灯火管制に従わなかったなどとして学生四人を退学(除籍)処分とした第一次琉大事件について、新里副学長は「大学の規定に沿った処分だった」とし、見直さない考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708181300_01.html

 

2007年8月18日(土) 朝刊 27面

普天間ヘリ 新ルート改善なし/住宅地を旋回・連日深夜飛行

 【宜野湾】日米両政府が普天間飛行場を離着陸するヘリコプターの新飛行ルートに合意して十七日で一週間。同飛行場を離着陸するヘリは新ルート以外を飛行したり、基地外上空をはみ出して訓練しており、抜本的な解決策とはほど遠い。

 同飛行場では十日から一週間、CH53大型輸送ヘリやAH1軽攻撃ヘリなどが住宅地上空を飛行。タッチ・アンド・ゴーや急上昇、急降下などを繰り返した。

 騒音防止協定で禁止されている午後十時以降の夜間飛行も連日のように続いている。宜野湾市には「孫が寝付けず、ミルクも飲まなくなっている。ノイローゼになりそうだ」「落ちるかと思い、家から飛び出してしまう」などの苦情が十件寄せられた。

 在沖米海兵隊報道部は沖縄タイムス社の取材に「運用の必要性など定められた制限範囲で安全と責任を持って飛行している」と回答。深夜の飛行については「アジア・太平洋地域の平和を維持するために必要な訓練」とした。

 伊波洋一市長は「米軍がいくら安全に気を付けても事故は起こる。(住宅密集地で)訓練するのは限界だ。日米両政府の合意は『普天間』の現状を追認したにすぎず、今後も問題点を訴えていく」と話した。


イラク派遣ヘリ7カ月ぶり帰還


 【宜野湾】イラクへ派遣されていた米軍普天間飛行場のヘリ部隊が七カ月ぶりに同飛行場に帰還したことが十七日、分かった。同日付の在日米海兵隊ホームページが伝えた。周辺の住民は、騒音の激化を懸念している。

 派遣されていたのは第一海兵航空団第二六二海兵中ヘリ中隊。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708181300_03.html

 

2007年8月18日(土) 朝刊 2面

普天間移設 変更なし/小池防衛相

 【東京】防衛省の次期事務次官に増田好平人事教育局長が内定したことを受け、小池百合子防衛相は十七日夕、新体制による米軍普天間飛行場移設問題への対応について「日米合意に基づき、再編を速やかに進めていく従来姿勢と変わらない」と述べ、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設方針に変更はないことを強調した。防衛省で記者団に答えた。

 沖縄政策全般では「米軍再編を速やかに進める方針に変更はない。同時に沖縄の発展をどう考えるか。高市早苗沖縄担当相のところでもやっているので、全体としての流れの中で決めていく」と述べた。

 次官人事が内定した経緯については「きょう安倍晋三首相から『収拾を図るように』と指示を受けた」と述べ、安倍首相の指示で内閣改造前の早期決着に至ったことを明らかにした。

 増田氏の起用には「一気に世代交代が図られることになる。これまでの次官の在任期間が長かった分だけ、その若返り度が顕著に見えるかと思うが、適材適所を機能させ、人材育成を図りたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708181300_05.html

 

2007年8月18日(土) 朝刊 2面

米新射撃場 計画中止申し入れ/国に金武議会

 米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設問題で、金武町議会の松田義政議長らが十七日、外務省沖縄事務所や那覇防衛施設局を訪ね、計画の即時中止を申し入れた。県と県議会にも協調して関係機関への計画中止を働き掛けるよう要請した。

 同議会は同日可決した意見書で「基地負担増は明白。安寧な住民生活がおびやかされているのが実情」と指摘。「米軍再編に伴って沖縄の負担軽減が計画されているが、現実は陸上自衛隊の共同使用を含め、町にさらなる負担を押し付けている状況」と訴えている。

 県の保坂好泰基地防災統括監は「町と連携を密にして対応したい」と地元との協調姿勢を示した。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「沖縄自動車道などからは見えない位置に設置し、三方が壁に覆われ、射撃はもっぱら山の方に向けて行われる」と安全性や騒音面での負担が少ないことを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708181300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月18日朝刊)

[琉大事件]

処分取り消しは英断だ

 米軍統治下の一九五六年八月、反米的言動を理由に退学処分などを受けた学生七人に対し、琉球大学は正式に処分取り消しを決め、本人および遺族に通知した。

 大学が半世紀以上も前の処分行為を撤回するのは極めて異例である。

 処分学生が受けた精神的苦痛を考えると遅きに失した感は否めないが、歴史のかなたに消えかけていた事件を掘り起こし、処分の不当性を認めた大学当局の英断を評価したい。

 軍用地の強制接収と反共政策が吹き荒れた沖縄の五〇年代は「暗黒の時代」と表現されることが多い。

 当時、琉大は布令に基づいて米民政副長官が管理運営の最終的な権限を持っていた。

 五〇年代半ば、米軍による土地の強制接収、地料の一括払いに反対する住民大会やデモに参加した学生は数多い。処分されたのは七人だが、この中にはデモに参加しなかった学生も含まれている。「反米的言動」というだけで、処分理由ははっきりしなかった。

 「第二次琉大事件」の名で呼ばれるこの学生処分は、琉大が「布令大学」であった時期に、米民政府の圧力に屈して、明確な理由もないままに学生を処分し、大学の自治を自ら葬り去った事件だった。

 処分学生の名誉回復を求める教職員や同窓会の声を受け、大学当局は学内に調査委員会を設置し、調査を進めてきた。

 委員会は「処分学生の行動は、当時の法令及び大学の学則その他の規定に照らしてもこれに違反するとは認められない」と明確な判断を下している。

 にもかかわらず大学当局が当時、処分に踏み切らざるを得なかったのはなぜか。調査委員会が指摘するように「米国民政府から強硬に除籍を含む処分を求められ」たからである。

 大学当局は処分に反対だった。学生を処分しなければ大学をつぶすという強硬な民政府の姿勢に抗しきれなかったというのが事の真相だ。

 七人のうち処分取り消し通知書の伝達式に参加したのは三人だけ。処分学生のうち一人は一昨年に亡くなり、残る三人はそれぞれの理由で伝達式への参加を辞退した。

 伝達式に参加した処分学生の一人は「(大学に対する)感謝の念と同時に、なんでもっと早くできなかったのかという思いもある」と複雑な胸のうちを語った。

 大学はこれで終わりとせず、大学の歴史の中にきちんとこの事件を位置づけ、後世に伝えていく努力をしてほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070818.html#no_1

 

琉球新報 社説

第2次琉大事件 歴史の影に目を向けたい

 1956年に反米的言動などを理由に琉球大学の学生7人が退学、謹慎処分を受けた「第2次琉大事件」で琉大当局は17日、岩政輝男学長らが記者会見し、処分の取り消しを公式に発表した。

 大学の自治を揺るがした不当な弾圧から半世紀。忌まわしい事件に新たな光を当て、歴史の影の部分と向き合い、大学の歴史に正しく位置付ける作業が始まったことを歓迎したい。

 今年6月の発足以来、事件を再検討してきた調査委員会は、処分学生の行動について「当時の法令および大学の学則やその他の規定に照らしてもこれに違反するとは認められない」と結論付けた。権力を握る米国民政府が介入し、強硬な処分を求められた末の不当処分であったことを認めた。

 当事者らは70歳を超え、一人は亡くなった。とりわけ退学処分の不名誉な烙印(らくいん)を押された6人にとって、事件の暗い記憶はその後の人生のさまざまな断面でつきまとったに違いない。

 再検討方針が明らかになった直後、ある一人が語った「琉大には青春のすべてがあった」との言葉が重く響く。名誉回復の扉がようやく開かれたとはいえ、費やされた歳月はあまりにも長すぎた。

 ただ琉大当局にとっては、名誉回復措置の検討に際し、現段階では今回の対応以外の策は考えにくかったのだろう。同窓会など関係者の声に耳を傾け、問題を放置せずに真摯(しんし)に向き合った姿勢は評価に値するのではないか。遅きに失した印象は残るけれども「大学人の良心」といったものを感じさせる。

 米軍用地料の一括払いに反対し、島ぐるみ闘争が燃えさかる渦中で起きた琉大事件には、いまだ解明されていない部分が多い。米国に生殺与奪権を握られた中での大学の自治や運営、思想・表現の自由、民主主義の在り方、アメリカの二重基準など学問対象としても多くの要素を含んでいる。

 第1次琉大事件を含め、語り尽くされていない歴史の全容解明に向けた取り組みに期待したい。

(8/18 10:02)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26413-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月13日、14日、15日)

2007年8月13日(月) 朝刊 1面

「もう飛ばないで」沖国大でライブ

米軍ヘリ墜落3年

 米軍ヘリが墜落して三年になるのを前に、現場となった宜野湾市の沖縄国際大学の学生たちが十二日、学内で手作りの「NO FLY ZONE」コンサートを開いた。ミュージシャンが歌と言葉で「もうヘリを飛ばさないで」とアピールし、事故現場隣の教室は数百人の熱気であふれた。

 「すばっぷ」のボーカルで、同大四年のみゆきさんは「どうかこの事件を忘れないでほしい」と、下級生に語り掛けた。学生自らが企画したコンサートに「うれしいけど、ヘリがまだ上空を飛んでいるのが悔しくて半々の気持ち」と話した。

 カクマクシャカ、知花竜海ら計六組が登場し、ラップや三線も交えて「行動を起こそう」と訴えた。フィナーレは総立ちでカチャーシー。実行委員長で四年の高橋正太郎さんは「今後もそれぞれの表現方法で伝え続けてほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708131300_03.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月13日朝刊)

[ヘリ墜落3年]

根本解決には程遠い

 沖縄国際大学の構内に米軍ヘリが墜落炎上した事故から、きょうでちょうど三年になる。この間、周辺住民や大学関係者が切実に訴えてきたのは、一日も早く危険性を取り除いてほしい、ということだった。しかし、この三年間の日米交渉の結果は、解決にならない合意というほかない。

 日米両政府は地位協定の運用改善の一環として、基地外で米軍機事故が起きたときの日米の役割を定めたガイドライン(指針)を策定し、同指針に基づく日米合同訓練を実施した。

 事故現場の外周は日本、内周は日米共同で規制するというのが指針の基本的な考え方だ。

 基地外での事故にもかかわらず県警さえ近寄れないような米軍の一方的な現場規制は、県内外から激しい反発を招いた。ガイドラインの運用で果たして日本側の機体検証、捜査権が保障されるのか、依然として疑問は残る。

 日米両政府はさらに、ヘリの飛行経路の見直しと安全対策をまとめた。

 北東向きの出発経路を優先して使用するなど飛行ルートを見直し、滑走路末端に識別灯を新設するなどの安全対策を講じるという。

 なによりも不思議なのは、この程度の対策がなぜこれまで実施されなかったのか、ということである。

 普天間飛行場の危険性や騒音被害については、事故が発生する何年も前から指摘されてきた。日米の今度の合意内容は、本来、もっと前から取り組むべきことであって、今回はそれを上回る根本的な安全対策が示されなければならなかったはずだ。

 防衛施設庁の担当課長は、今回の飛行ルート見直しと安全対策について「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(知事が求める三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との考えを明らかした。

 沖縄側との溝は依然として大きい。政府には、機能分散、訓練移転などを含めた危険性除去の方策を引き続き追求していく義務がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070813.html#no_2

琉球新報 社説

米軍ヘリ墜落3年 県外移設、真剣に考えよ

 米軍普天間飛行場所属のヘリが沖国大に墜落事故を起こしてから、きょう13日で満3年を迎えた。この悲劇を教訓にすべく、日米両政府がさまざまな対策を講じたかに見えたが、残念ながら、いまのところ、県民にとって目に見える成果はゼロに等しい。肝心の普天間移設問題は宙に浮いたままだ。それどころか、日米軍事再編の大合唱の下、沖縄の基地機能の強化が進むばかりだ。

 もつれにもつれたかに見える普天間移設問題。ここで、日米両政府は原点に立ち返ってほしい。そして、肝に銘じてほしい。「住宅密集地にある普天間飛行場の危険性の除去」。これが今回の移設問題の原点だ。そのことは、ヘリ墜落でより明確になったはずだ。今からでも遅くはない。県民の意思をくみ、県外移設に真剣に向き合うべきだろう。

 軍用機の墜落事故は過去何度かあった。復帰前の1959年6月30日、嘉手納基地を離陸した米戦闘機が宮森小学校(旧石川市)に墜落。児童を含む17人の死者と121人の負傷者を出す大惨事となった。また、68年11月19日には、嘉手納基地内に離陸したばかりのB52戦略爆撃機が墜落炎上。同機は通常兵器を積んでいたため、何度も爆発と炎上を繰り返した。近くには核兵器や毒ガスを貯蔵していたといわれる嘉手納弾薬庫があり、一歩間違えば壊滅的な被害をもたらしていた。

 しかし、それほどの事故があっても日米はどう動いたのか。県民の猛反発を無視する形で、基地の居座りを許し続けてきたのが現状だ。こう見てくると、何も沖国大へのヘリ墜落で基地の危険性が露見したわけではなかろう。

 今回の事故が起きるまで事態を放置してきた日米政府の責任は重い。百歩譲ってB52、宮森小の事故は施政権のない時代であったにしても、日本政府の責任は逃れることはできない。復帰前の状況を考えれば、今回の事故も十分、予想の範囲内といえたであろう。復帰後もほとんど無策だった、といわれても仕方がない。

 キャンプ・シュワブ沖への移設案にしても、県民の意向を無視した泥縄的な計画でしかない。この間の動きも、環境アセス事前調査への自衛隊動員、方法書の押し付け、抜本的な解決策にはならない飛行経路の見直し案など、県民を到底納得させるものではない。基地機能の強化などを見ても、むしろ「最初に再編ありき」で、危険性除去は二の次、という日米政府の姿勢がありありだ。

 県民の意思を無視した施策がうまくいくはずもない。先の参院選の際の世論調査でも普天間の県内移設反対が6割を超えている。県外移設が県民の意思だ。日米政府はこのことを真剣に受け止めよ。

(8/13 10:03)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26276-storytopic-11.html

2007年8月13日(月) 夕刊 5面

「変わらぬ危険 憤り」ヘリ墜落3年

沖国大学長 横断幕で飛行抗議

 米軍ヘリ墜落事故から三年がたった十三日午前、事故後も上空を行き交う米軍機に抗議しようと沖縄国際大学(渡久地朝明学長)は本館屋上から空に向け、「NO FLY ZONE」の横断幕を設置した。渡久地学長は「三年が経過した今もなお大学や宜野湾上空を飛び続ける米軍ヘリコプターは、大きな不安を与えている。変わらない現状に憤りを禁じ得ない」とコメントを発表した。

 横断幕は横七メートル二十センチ、縦九十センチで、掲揚期間は未定。同日午前、同大職員が設置する時間帯前後も、周辺には米軍機の爆音が響いていた。

 同日付で学内の米軍ヘリコプター墜落事件対策委員会は解散する。コメントで、渡久地学長は「これまでと同様、普天間基地を使用するすべての航空機の飛行停止、普天間基地の即時撤去、日米地位協定の改定を要求していく」とした。

 旧本館の壁面の一部はモニュメントとして保存し、関連資料は図書館で展示を予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708131700_02.html

2007年8月13日(月) 夕刊 4面

アセス方法書 撤回訴え/市民団体300人が抗議

 沖縄平和運動センターなど十二団体で構成する「基地の県内移設に反対する県民会議」は十三日、防衛省が米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に向けて環境影響評価(アセスメント)方法書を県などに提出したことに抗議する緊急集会を那覇市の県庁前県民広場で開いた。参加した約三百人(主催者発表)はアセス方法書の撤回などを訴えた。

 主催者を代表して玉城義和副代表(ヘリ基地反対協議会顧問)は「在日米軍再編は抑止力と県内の負担軽減をうたっているが、県の負担は増えるばかりだ。県はアセス方法書の受け入れを拒否しているので支援したい。国が辺野古への建設を断念するまで迫っていきたい」と訴えた。

 糸数慶子参院議員は「沖縄はこれまで自ら基地を招き入れることはなかった。基地に頼らず自立した経済を確立するため辺野古の自然を守っていきたい。一緒に頑張っていこう」と呼び掛けた。

 同日午後には、仲里全輝副知事を訪ね、アセス方法書を引き続き受理しないよう要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708131700_03.html

2007年8月13日(月) 夕刊 5面

県遺族連合会が声明/戦争の事実ありのまま教えて

 県遺族連合会(仲宗根義尚会長)は十三日、文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を検定で削除させた問題で、記述復活を求めるアピールを発表した。仲宗根会長は「戦没者遺族として、世界の平和を願う気持ちを込めた。多くの人々に関心を持ってもらいたい」と話した。同連合会は教科書検定問題を受け、今年五月の理事会・評議会でアピールの発表を決定した。

 アピールは「『集団自決』の発生は住民を巻き込んだ地上戦があった」と指摘。「当時、日本軍は『住民に安易な捕虜を戒め玉砕をしてでも島を守る』と言ったという表現や、手榴弾を民間人に二個配り『一個は敵に投げつけ、あと一個で自決するように』と言われていたことも多くの証言があり、真実」とした。

 「青少年に教科書を通して戦争の悲惨さの事実をありのまま教えることこそ、平和運動の原動力になる」とし、検定意見の撤回と教科書の記述復活を訴えている。

 仲宗根会長は「開催が決まった県民大会の成功に向けて最大限、努力したい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708131700_04.html

2007年8月14日(火) 朝刊 1面

きょうから公告縦覧/「普天間」代替

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局は十四日、方法書の公告縦覧を開始する。

 縦覧場所は施設局など県内五カ所で、期間は九月十三日までの一カ月間。方法書の受け取りを「保留」している県や名護市が場所提供に応じないため、関連自治体の行政施設では縦覧が行われない異例の事態となる。

 国のアセス法は、対象事業を滑走路千八百七十五メートル以上と規定。普天間代替施設は滑走路の長さが千六百メートル(延長部分含めて千八百メートル)、公有水面の埋め立ては約百六十ヘクタール。このため施設局は、飛行場に関するアセスは県条例、埋め立てに関しては国のアセス法に基づいて手続きを進める。

 施設局は縦覧後、二週間以内に住民などの意見を受け付ける。それらの意見の概要を作成し、県などに送付する。県は意見概要の受理後、名護市など関連市町村長の意見を聴取した上で、知事意見を九十日以内(県条例に基づくアセスの場合は六十日以内)に施設局に提出。施設局は知事意見などを踏まえ、方法書を確定する。

 県や名護市は現段階で、知事意見などの審査手続きに応じない意向を示しており、知事意見の回答期限の解釈が焦点になる可能性もある。

 縦覧場所は(1)施設局三階広報室(2)同局名護連絡所(名護市辺野古134ノ1)(3)同局金武防衛施設事務所(金武町金武35)(4)観光ホテルおおくら一階ホール(名護市東江1ノ3ノ6)(5)キューピットハイツ一階(宜野座村惣慶1639ノ2)。いずれも土日、祝日を除く午前九時から午後五時。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708141300_02.html

2007年8月14日(火) 朝刊 25・2面

ヘリ墜落3年 決意新た

 米軍ヘリ墜落事故から三年を迎えた沖縄国際大学(渡久地朝明学長)で十三日、学生や教員ら約百五十人が集会を開き、「事故を風化させず、記憶を語り継いでいこう」と誓いを新たにした。

 事故発生時刻に近い午後二時、墜落現場付近で始まった集会で、四年の高橋正太郎さん(21)は「僕は事件から目を背けません。僕たちができる表現方法で、素直な気持ちを伝えていきたい」とメッセージを読み上げた。

 教員有志でつくる「米軍ヘリ墜落事故を考える会」は、事故翌月から三年間、毎月十三日に欠かさず続けてきた集会を普天間飛行場が撤去されるまで続ける決意を表明。教員らは口々に「われわれに時効はない」「基地閉鎖は夢物語ではない」などと訴えた。

 参加した二年の知花恵さん(19)は「先輩たちの思いが伝わってきた。体験していない自分たちがどう伝えていけるか考えていきたい」と話した。

 また、同大の教員三人はそれぞれの研究室から星条旗を逆さに掲げ、抗議の意思を示した。八月末まで毎日続ける予定。


「基地撤去を」500人が抗議/宜野湾で市民集会


 【宜野湾】米軍ヘリの沖国大への墜落事故から三年たった十三日、事故に抗議する「動かせ普天間!許すな県内移設!8・13抗議集会」(主催・沖縄平和運動センターなど)が宜野湾市で開かれた。同市真栄原の普天間飛行場第二ゲート前には労組関係者や市民ら五百人(主催者発表)が集まり、同飛行場の即時返還を求め、県内移設反対の声を上げた。

 崎山嗣幸平和運動センター議長は「事故から三年。飛行ルートが変わっても、住宅や学校の上空で訓練が行われる。今後も運動を強化しなければならない」と呼び掛けた。


普天間の危険極限/伊波市長会見


 【宜野湾】沖縄国際大学に米軍CH53D大型輸送ヘリが墜落した事故から満三年を迎えた十三日、宜野湾市の伊波洋一市長は市役所で記者会見し、「普天間飛行場の危険性は極限状態だ。今後も危険性が放置されることは許されない」と述べ、同飛行場の早期閉鎖・返還に引き続き全力で取り組む考えを示した。

 日米両政府が合意した同飛行場の新しい場周経路について、伊波市長は「防衛施設庁は米側の説明をうのみにしている。住宅地上空のヘリ飛行を容認するもので、点数で評価すると零点かマイナスだ」と述べ、市が求める危険性除去策にはつながらないとの認識を示した。

 その上で、「政府の説明はフェンス内での飛行訓練が前提で、詭弁でしかない」と指摘。「現実には、三種類のヘリによって高度や飛行ルートなどが異なっており、住宅地上空で訓練を繰り返している。飛行経路をカメラで撮影し、政府の言う『安全の根拠』を示すよう求めていく」と話した。

 今後の取り組みとしては「普天間の現状を国会レベルで訴え、米国議員にも、より深く問題を理解してもらう。部隊をグアムに移すことが最善の方法だ」とした。

 ケビン・メア在沖米国総領事が事故の容疑者の氏名公表に「なぜ名前を知りたいのか疑問を感じる」との認識を示したことには、「私たちの思いを受け止めていない。県民感情を逆なでしている」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708141300_05.html

2007年8月14日(火) 朝刊 24面

宮城さん、原告を批判/「集団自決」訴訟で報告会

 大阪地裁で七月にあった「集団自決」訴訟の証人尋問の報告集会が十三日、那覇市内であった。被告・岩波書店側の証人だった宮城晴美さんが、自著「母の遺したもの」について「話しを聞きやすかった女子青年団からの取材で、日本軍寄りでこの本を書いてしまった」と振り返り、「言葉が足りなかった部分は書き改めているところ」と語った。

 同訴訟は、沖縄戦時の慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、住民に命令をしたと著作に記されて名誉を棄損されているとして、旧日本軍の戦隊長らが作家の大江健三郎さんと岩波書店に出版の差し止めなどを求めている。

 集会で宮城さんは、著書で当時の兵事主任(助役)が住民に「集団自決」を命じたとしたことについて「助役には申し訳なく、遺族に迷惑を掛けたことを反省している」と強調。座間味島の戦隊長だった原告の梅澤裕氏には「兵事主任や手榴弾を配った部下が悪いと、自分に都合のいいことばかりを言っている」と批判した。

 報告集会は、被告・岩波側を支援している「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の主催で約五十人が参加。

 裁判を傍聴した沖縄国際大の安仁屋政昭名誉教授は「原告側の証言はピント外ればかりだった。『集団自決』にはさまざまな背景があるが、住民が軍の強制と誘導によって死んでいったという『集団自決』の言葉の中身を、しっかりと伝えていく必要がある」と語った。

 また九月十日に那覇で予定されている所在尋問(出張法廷)が非公開とされていることについて、参加者から公開を求める声が次々と上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708141300_09.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月14日朝刊)

[サンゴ白化]

死滅防ぐために知恵を

 海水温がいつもの夏より高く感じられるという。この高水温が、石垣島・白保海域のサンゴ群落をはじめ多くのさんご礁の白化の原因になっているというから要注意だ。

 今月四日から六日まで、白保海域の水深五メートル未満のリーフ内二十八地点を調査した世界自然保護基金(WWF)サンゴ礁保護研究センターが、同海域に生息するほぼすべてのサンゴの分類群で白化を確認したという。

 目視調査では、ハナヤサイサンゴ科とミドリイシ属の90%以上が白化。コモンサンゴ属は50―70%、白化しにくいハマサンゴ属も30―50%、アオサンゴ属は5%未満が白化していた。

 事態は深刻で、海底の環境は極めて厳しい状況にあると言うしかない。

 サンゴは石灰質でできている。骨格にある無数の穴にはサンゴ虫が生息している。サンゴ虫の体内にはカッチュウソウ(植物プランクトン)がすむが、海水温が三〇度を超えると外に逃げ出すことも明らかになっている。

 カッチュウソウが光合成でつくった養分をサンゴ虫が取れず、色鮮やかなサンゴが脱色したようになるのが白化であり、やがて死滅に至るのである。

 沖縄近海で大規模な白化が起きた一九九八年には、世界中に点在する二百七のさんご礁海域でも約75%が白化現象を起こし、多くの地点でサンゴが死滅したという報告もあった。

 今回の調査では、死滅したのは5%にとどまっているが、「今後も高水温が続くと大量死につながる」(同センター)との懸念は消えない。

 同センターが水深四―五メートルに設置した水温計で、梅雨明け後の六月二十一日から最高水温は三〇度を超えているからだ。

 七月二十三日以降は一日中三〇度から下がらず、七月末までに三〇度を超えた時間を積算すると平年の四倍以上あったという。

 琉球列島周辺に多い造礁サンゴの適正水温は一八度から二八度だ。いまの海水温は高過ぎるといっていい。

 白化現象は石垣島と西表島の間にある「石西礁湖」でも見られ、一九八〇年から二〇〇三年の間には75%のサンゴが死滅したとの環境省報告もある。和歌山県の潮岬沖で沖縄近海で見られるリュウキュウキッカサンゴが確認されたり、南方の魚類が本州周辺で捕れてもいる。海水温が高いからだ。

 白化現象は陸域の気象と連動する。海の環境を守るためにも温暖化防止は急務であり、CO2の排出削減など世界的規模で検討することがサンゴを保護する手だてとなる。手遅れにならぬうちに知恵を出していきたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070814.html#no_1

2007年8月14日(火) 夕刊 1・5面

アセス方法書 縦覧開始/「普天間」代替

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局は十四日午前、県内五カ所で方法書の公告縦覧を開始した。方法書は政府案を前提とし、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部にV字形の長さ千八百メートル(延長部分含む)の滑走路二本を配置した図を掲載。ただ、滑走路の緯度経度、進入灯の長さなど詳細は明示していない。県や名護市は現段階で方法書の受け取りを「保留」しており、知事意見などの審査には応じない方針だ。

 調査海域は、日米特別行動委員会(SACO)で合意した名護市辺野古沖の従来案とほぼ同範囲を設定。施設局によると、調査内容は陸海ともに現在、事前調査の位置付けで実施している現況調査と同じだという。

 方法書はA4判、三百一ページ。事業実施区域を「名護市辺野古沿岸域」と明記。滑走路の北側に「格納庫・エプロン」や「飛行場支援施設」を配置。埋め立ての北端部には「燃料関連施設」を設置する。

 使用を予定する航空機の種類として、「米軍回転翼機及び短距離で離発着できる航空機」と記載している。

 埋め立て面積は、代替施設本体が約百五十ヘクタール、護岸部分約十ヘクタールで、計約百六十ヘクタール。埋め立て土量は約二千百万立方メートルを計画し、そのうち約二百万立方メートルはキャンプ・シュワブの山側(北西部)の土砂を採取する。飛行場設置区域にかかる美謝川は、一部流域で切り替えなどを行う。

 大浦湾西側海域に大型ブロックなどの製作ヤード、辺野古地先水面に小型ブロックの製作ヤードの設置を想定。作業ヤードとしての使用が終了した後は「名護市が有効に活用することも含め」今後検討するとしている。

 ほかに、大浦湾の中央海域の海底に「製作済みケーソン」の仮置きのための海上ヤードの設置を想定。規模などは今後検討するという。

 公告縦覧期間は九月十三日までの一カ月間。

 同日の公告で、施設局は名護市辺野古沖を埋め立てるSACO合意に基づく従来の代替施設建設事業を、八月七日付で廃止したことも明らかにした。


     ◇     ◇     ◇     

「欠陥方法書」批判/市民、内容に憮然


 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、方法書の公告縦覧が十四日午前始まり、初めて内容が公開された。那覇市の那覇防衛施設局では早速市民が閲覧し、「必要な情報がない欠陥方法書だ」と批判。同局は閲覧場所として、県や市町村から庁舎の提供を受けられず、ホテルやアパートの一角を借りる「苦肉の策」。五カ所のうち、那覇防衛施設局を除く、名護市辺野古、名護市東江、宜野座村、金武町の四カ所では同日午前、閲覧者はいないまま、手続きの形式は整い、動き始めた。

 施設局の閲覧窓口には、方法書三冊と意見書を受け付ける箱が置かれた。開始早々の午前九時すぎ、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の土田武信副団長が訪れた。

 メモや写真をとりながら閲覧した土田副団長は、施設の緯度経度も明示されない内容に、「説明責任を果たしていない」と憮然。「少なくともサンゴを痛めつけている事前調査を白紙にした上で、アセスの手続きに入るべきだ」と、同局の対応を批判した。

 メンバーの真喜志好一さんは「航空機の種類や飛行ルートも明示されず、これでは住民生活への影響が分からない。方法書の資格がない」と断じた。「国の事業にもかかわらず、アセス法の精神に反する手続きを強行するのはおかしい」と憤った。

 一方、移設先に隣接する名護市辺野古の那覇防衛施設局名護連絡所の縦覧場所には、午前中閲覧者が誰も来ず、方法書の置かれた部屋はがらんとしていた。

 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「県や名護市も協力していない。『国のやることに口出しするな』と言わんばかりの傲慢なやり方で腹立たしい。こうした状況でわれわれが慌てて中身を確認する必要はない」と話した。

 名護十字路近くの観光ホテルおおくらでは、一階ロビーの一角に、いすとテーブルが並べられ、施設局の担当者二人が閲覧者を待った。午前中、閲覧者は一人も訪れなかった。

 宜野座村内では民間アパートの一階に方法書が三冊置かれているが午前中、閲覧に訪れる人はいない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708141700_01.html

2007年8月15日(水) 朝刊 1面

金武町ギンバル跡利用/がん施設 琉大と連携

 金武町の儀武剛町長と琉球大学医学部放射線医学分野の村山貞之教授らが十四日、県庁で記者会見し、同町の米軍ギンバル訓練場の跡地利用計画として、がんの早期発見・治療が可能な先端医療施設の整備を琉大と協力して進めていくと発表した。PET―CT(陽電子放射断層撮影装置)や県内で設置例がなく、外科手術を伴わないFUS(集束超音波装置)など先端の医療機器を導入し、周辺に人工ビーチや宿泊施設などを集積する「金武町ふるさとづくり整備事業」を推進する。

 跡地利用の中核施設となる先端医療施設、免疫療法施設、リハビリ関係施設などは、「米軍基地所在市町村活性化特別事業」(島田懇談会事業)の約七十億円で整備する見込み。

 公設民営を想定しており、ほくと会北部病院を運営主体とする方針。

 琉球大学は今後、医師の派遣や技術支援、臨床研究などを実施する予定で、町と連携して先端医療施設の整備を進めていくことを確認した。

 医師や看護師などのスタッフ、病床数など施設規模の具体的な内容は未定。同町は事業導入による雇用効果約百二十人と見込んでいる。村山教授は「PET施設だけでなく、もう少しレベルの高い研究に使えるものを考えている。有意義な機器を町と協力して導入していきたい」と話した。

 儀武町長は「琉大、北部病院と連携して先端医療施設の整備を進め、北部地域や県民の健康保養に貢献したい。医師確保なども含めて急ピッチで進め、三―四年後をめどに開業したい」と述べた。会見には北部病院の前田利夫理事長も出席した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708151300_01.html

2007年8月15日(水) 朝刊 1面

PAC3司令官を解任/内部規律に違反

 米軍嘉手納基地に日本国内で初めて配備された最新鋭の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を運用するため、昨年十一月に着任した米陸軍防空砲兵大隊の司令官が、軍の内部規律に違反したとして解任されていたことが十四日、分かった。

 PAC3をめぐっては当初から、新たな部隊移駐で「米兵の犯罪が増加するのでは」などとする米軍内の規律の乱れを懸念する声が地元で上がっていた。部隊トップが規律違反で解任されたことで、綱紀粛正を求める声が一層強まりそうだ。

 解任されたのはマシュー・マイケルソン中佐。米軍によると、米軍人の規律などを定めた統一軍事裁判法に違反した。違反の内容については「プライバシーにかかわるため明らかにできない」としている。後任には八月七日、エドワード・オニール中佐が着任した。

 日米両政府は昨年七月、米軍再編最終報告に基づく嘉手納基地へのPAC3配備を発表。米本土から第一防空砲兵連隊第一大隊の約六百人が同基地に移駐し、昨年十二月末から運用を開始した。

 司令官解任について、上部組織の第九四陸軍防空司令部(米ハワイ州)は「第一大隊の隊員が高潔で品格ある司令官の下で任務に当たるよう約束する」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708151300_02.html

2007年8月15日(水) 朝刊 29面

監視団がアセス方法書撤回要求

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局が方法書の公告縦覧を始めたことを受け、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団は十四日、方法書の即時撤回を求める声明を発表した。

 声明は、防衛省の指針が「航空機の種類」の方法書への記載を義務付けていると指摘。「記されていないのは、危険なオスプレイの配備を隠すためではないか」と指摘した。

 県庁で記者会見した東恩納琢磨団長は、「アセスは地域の合意形成のための手続き。(知事)意見がなければないでいい、という姿勢が他府県で許されるか。沖縄差別だ」と批判した。

 また、ブロック製作ヤードとして大浦湾を埋め立てる計画について、平良夏芽事務局長は「サンゴの大群落を付属施設でつぶすような青写真は許せない」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708151300_05.html

2007年8月15日(水) 朝刊 2面

防衛次官交代 知事が提案?/全国紙報道

 ○…混迷を深める守屋武昌防衛事務次官の交代人事をめぐって十四日、県に思わぬ「火の粉」が降り掛かった。全国紙の同日付朝刊で、守屋次官の交代を小池百合子防衛相に提案したのは仲井真弘多知事だった、と報じられたためだ。記者団から真偽をただされた仲井真知事は「考えられない話でしょ」と一笑に付し、県幹部も「泥仕合のとばっちりだ」と苦り切った様子だった。

 ○…全国紙が報じた「知事提案説」は、名護市議の証言として「二日に仲井真知事から防衛相に“守屋外し”の提案があった」という内容。県などが求める米軍普天間飛行場の移設案の修正に応じない守屋氏の交代と引き換えに、移設手続きの第一弾となる環境影響評価方法書を県に提出。小池防衛相が訪米の際の手柄にした、としている。

 ○…この報道で同日午前、県庁で記者団に囲まれた仲井真知事は「別の組織の話で、常識では考えられない話」と半ばあきれた口調。方法書とのバーター論にも「(県は)方法書を正式に受け付けていない。(次官交代と方法書送付は)全然別の話では」と一蹴。県幹部の一人は「根も葉もない話。県をおとしめるための謀略めいている。とんだ騒動だ」と苦笑交じりに首をひねった。


     ◇     ◇     ◇     

小池氏・名護市長会談/きょう来県


 【東京】小池百合子防衛相は十五日夕、一泊二日の日程で来県する。名護市内のホテルで宿泊を予定しており、島袋吉和名護市長ら米軍普天間飛行場移設先の周辺市町村関係者と会談するとみられる。県と名護市が要求している代替施設の沖合移動や、防衛省が難色を示している北部振興事業費の本年度一次配分などの行方が焦点になる。

 小池防衛相は十五日午後六時すぎ沖縄入り。十六日午前に「かりゆしウエアを世界に広める会」のイベントに出席し、同日午後六時半から那覇市内のホテルで沖縄観光をテーマに講演する。

 普天間移設をめぐって防衛省は今月七日、移設先の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部海域での環境影響評価(アセスメント)方法書を県や名護市に提出。アセス手続きを開始したとの認識に立っている。

 一方の県と名護市は、アセスが政府案(V字形滑走路案)の建設位置を前提に実施される点を問題視。代替施設を沖合側に寄せるよう強く求め、方法書の受け取りを保留している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708151300_06.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月15日朝刊)

[8・15と戦後体制]

事態は悪化しつつある


戦場・占領・復興の混在


 終戦記念日にあえて問い掛けてみたい。「先の大戦が終わった日はいつですか」「沖縄戦が終わったのはいつですか」。

 「八月十五日=終戦記念日=戦争が終わった日」という認識は、今や国民共通の記憶となっているが、ことは必ずしも単純でない。

 国民が終戦詔書の玉音放送を聞いたのは八月十五日だが、日本政府がポツダム宣言の受諾を正式に連合国に伝えたのはその前日の十四日。ミズーリ艦上で降伏文書の調印式が行われたのは九月二日のことである。

 沖縄の慰霊の日に当たる六月二十三日は、沖縄戦が終わった日だとはいえない。六月二十三日以降も一部では日本兵による奇襲攻撃などがあった。逆に六月二十三日以前に収容所に収容され「戦後」の生活を歩み始めた住民も少なくなかった。

 激しい戦闘と占領生活と戦後復興が混在する形で進行していたのである。

沖縄で降伏文書の調印式が行われたのは九月七日のことだ。

 地上戦のあと米軍がそのまま占領軍として駐留し住民を直接統治した沖縄と、ポツダム宣言受諾後に米軍が進駐して間接統治した本土とでは、「終戦」の迎え方、受け止め方が大きく異なる。そしてそれ以上に本土と沖縄の決定的な違いを生んだのは戦後体制であった。

 本土の一部知識人の中には、四月二十八日を終戦記念日にすべきであるとの意見があったという。

 四月二十八日はサンフランシスコ講和条約が発効した日である。日本が米軍占領から解放され主権を回復したこの日、沖縄は本土から切り離され、米軍の統治に委ねられた。

 この日を終戦記念日にしたいと主張する知識人には、沖縄が置かれた戦後の境涯に対する痛覚が働かないのだろうか。

 安倍晋三首相は就任以来、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を訴えてきた。参院選敗北後も、その姿勢を変更する気はないようだ。だが、沖縄の戦後体制は本土とまったく異なっており、一緒くたに論じることはできない。それが議論の前提だ。


同一制度の異なる現実


 復帰前、沖縄には憲法が適用されなかった。軍事上の必要性がすべてに優先され、地方自治も人権も大きな制約を受けた。あえて要約すれば、これが沖縄の戦後体制であった。

 復帰によって憲法が適用され、米軍基地は日米安保条約と日米地位協定の下で運用されることになった。しかし、本土と同一の制度に移行したからといって、本土と同一の現実を保障したわけではなかった。

 基地外での米軍機事故にもかかわらず、県警さえ近寄れないような米軍の一方的な現場規制。学校敷地への米軍装甲車、車両の度重なる侵入。米軍基地をめぐるさまざまな「理不尽さ」は、沖縄の戦後体制が今なお続いていることを示している。

 憲法は国の最高法規である。けれども沖縄では、その最高法規の位置に日米安保条約が鎮座していて、憲法の影が薄い。

 普天間飛行場所属の米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落した際、現場規制をした米軍は、地位協定の合意議事録に基づいて、つまり与えられた権利として、県警の検証を拒否した。

 イラク戦争にのめり込む米国を支援する一方で、国家主権にかかわる事例に対して米軍に強く当たることのできない日本政府とはいったい何なのか。多くの県民が疑問を感じたはずだ。


進む日米の軍事一体化


 「戦後体制からの脱却」を言うのであれば、何よりもまず沖縄において基地をめぐる「理不尽さ」の解消に全力を挙げなければならない。

 残念ながら沖縄の現実は、その方向に向かっているとは言い難い。普天間飛行場の辺野古移設をめぐる最近の政府の対応は、あまりにも強引で度が過ぎるところがある。

 事前の相談もなく日米で移設案を決め、決まったものに対しては「のむならカネをやるが、のまないならカネはだせない」という露骨な脅し。これが果たして負担軽減のための施策といえるのだろうか。

 米軍再編に絡んで本島北部への基地の集中化、機能統合が進んでいる。米軍と自衛隊の一体化も急速に進みつつある。その上、集団的自衛権の行使や憲法九条の改正が具体化すれば、沖縄は大きな安全保障上の負担を新たに抱え込むことになるだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070815.html#no_1

琉球新報 社説

終戦記念日 平和と不戦を誓う日に

 戦後62年の終戦記念日が今年も巡ってきた。去る大戦で犠牲になった多くのみ霊に謹んで哀悼の意を表する。あらためて恒久平和と不戦を誓う日にしたい。

 最近の日本の現状を見ると、過去の過ちに目をつぶり歴史の風化を促すような動きが顕著である。極めて憂慮すべき状況だ。

 今年3月に公表された高校日本史教科書検定で沖縄戦「集団自決」の日本軍の関与が削除・修正されたほか、第2次大戦中の従軍慰安婦問題では安倍晋三首相が「(旧日本軍による慰安婦動員の)強制性について、それを証明する証言や裏付けるものはなかった」などと発言し批判を浴びた。

検定意見の撤回を

 不用意な首相発言が一因となって、7月には米下院が日本政府に慰安婦問題で公式謝罪を求める決議を初めて可決する事態になった。

 教科書検定問題、従軍慰安婦問題などに共通しているのは、旧日本軍の犯した非道な行為を可能な限りぼかし、糊塗(こと)しようとする意図が透けて見える点だ。

 戦後62年が経過し大戦の実相を証言できる人が少なくなってきたのをいいことに、歴史を歪曲(わいきょく)することは絶対に許されない。

 再び過ちを繰り返さないためには、過去の行為を直視して反省し、史実を後世に正しく伝えていくことが不可欠である。

 政府内で、過去の過ちをあいまいにしようとする動きが見られるのは危険な兆候だ。こうした傾向が強まれば、やがては大戦自体を

正当化することにもなりかねない。

 沖縄戦の集団自決については、昨年の検定まで、軍の強制を明記した教科書もすべて合格していた。ところが、今年の検定で、唐突に修正意見が付いた。

 教科書を審査するのは教科用図書検定調査審議会だが、検定意見の原案は文部科学省が作成している。何らかの政治的意図が働いたとしか思えない。

 にもかかわらず、伊吹文明文科相は検定意見撤回の要請に対し「政治による教育への介入になるので難しい」と述べ、教科用図書検定調査審議会の結論を尊重する考えを示している。

 審議会に修正を求める検定意見を出させておきながら、抗議を受けると審議会を盾にして撤回を拒む。このような欺瞞(ぎまん)がまかり通っていいはずがない。

 同問題では、県議会と県内全41市町村議会が検定撤回を要求する意見書を可決した。県議会や県子ども会育成連絡協議会、県PTA連合会、県老人クラブ連合会、県高等学校PTA連合会、県遺族連合会、県婦人連合会などによる超党派の県民大会が9月に開催される運びになっている。

 終戦記念日に際し、政府がなすべきことは、歴史の真実に目を向け、検定意見を直ちに撤回し記述を復活させることだ。

住民守らぬ軍隊

 昭和天皇が国民向けのラジオ放送(玉音放送)でポツダム宣言受諾を明らかにした1945年8月15日、沖縄では敗戦を知らずガマに隠れている住民がおり、依然、投降を拒否する日本兵と米軍との間で散発的な戦闘もあった。

 久米島では15日以降も、海軍通信隊(約40人、鹿山隊)によって住民がスパイ容疑で次々と殺される事件が起きている。軍は住民を守るどころか刃(やいば)を向けた。

 20万人余が犠牲になった沖縄戦で、日本兵は住民を壕から追い出したり、食料を奪ったり、スパイの嫌疑をかけて殺害するなどしている。

 こうした悲惨な歴史をありのままに伝えていくことは、後に続く者の務めである。

 憲法9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とうたっている。

 とりわけ9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記、戦力の不保持にまで踏み込んでいる。

 戦争の悲劇を二度と繰り返さないためには9条を堅持しなければならない。

 だが、自民党が9条2項を削除し「自衛権」と「自衛軍」の保持を明記した新憲法草案を2005年に決定するなど、改憲に向けた動きも具体化している。

 戦争を防ぐにはどうすればいいのか。皆で考える日にしたい。

(8/15 9:49)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26324-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月11日、12日)

2007年8月11日(土) 朝刊 1・31面

ハンセンに新射撃場/来週入札 金武町は反発

特殊部隊施設相次ぐ/射程1200メートル道路まで500メートル

 米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用の小銃(ライフル)用射撃場が整備されることが十日分かった。米側予算で来週、入札で業者選定を実施。来年二月ごろに着工、二〇〇九年七月ごろに完成見込み。同日、国から説明を受けた金武町の儀武剛町長は「負担増につながり到底受け入れられない」と反対を表明したが、日米合同委員会の合意事項ではなく、米側の判断で整備可能という。

 外務省などによると、沖縄自動車道からの距離は約五百メートル。最も近い金武町伊芸区の集落からは約一キロ。射撃場から数キロ離れたレンジ16には、グリーンベレーの都市型戦闘訓練施設の整備が進んでおり、同演習場内でグリーンベレー専用施設が相次いで整備されることになる。

 防衛施設庁によると、新射撃場は遠距離射撃に用いるといい、接近戦訓練用の都市型戦闘訓練施設の射撃場とは「用途が違う」と説明している。

 新射撃場は兵士に射撃の資格を付与するための訓練施設。高さ約十四メートルの三階建てで二、三階にそれぞれ十の射撃スポットを設置。ターゲットは百メートルから千二百メートルの距離の範囲内で対応可能となっている。

 射撃方向は北西の山側のみで、他の三方向は壁で覆うため、民間地域に銃口が向く可能性はないとし、屋上や屋外からの実弾射撃訓練は行わないとしている。

 小銃の射撃訓練で米陸軍はこれまでハンセン内の既存射撃場を使用してきたが、演習場の管理は海兵隊で、陸軍が使用するには調整が必要なため効率的ではなかったという。外務省は新射撃場の設置によって「訓練の集約・改善を行い、効果的、効率的な訓練が行えるようになる」とし、在沖米陸軍の増員を否定。米軍再編で合意した陸上自衛隊との共同使用で新射撃場を使用する可能性についても防衛施設庁は「現時点で計画していない」と否定した。

 県の保坂好泰基地防災統括監は「内容を精査して金武町との連携を密に対応を協議したい」との見解を示した。


     ◇     ◇     ◇     

安保の重荷 町に次々/町長・住民怒りの声


 【金武】「基地負担の増加で、到底容認できない」「住民をばかにした計画だ」。金武町の米軍キャンプ・ハンセンのレンジ3近くに、米陸軍が使用する新射撃場の建設計画が明らかとなった十日、町関係者やレンジ3に近接する伊芸区では、地元を無視した危険施設建設に怒りの声が上がった。金武町は、宜野座村や恩納村とともに今月七日、ハンセンの陸上自衛隊共同使用に反対の意思を表明したばかり。

 儀武剛町長は、会見を開き「米軍再編は沖縄の基地負担軽減というが、北部ではかなりの負担増だという疑念が強くなった。負担減と言いながら、訓練する場所を増やすという発想が理解できない」と、日米両政府に対する不信感をあらわにした。

 「到底受け入れられない。強い意思で反対を貫く」として、週明けにも那覇防衛施設局などに抗議する考えだ。

 池原政文伊芸区長は、レンジ4の都市型戦闘訓練施設に続いて新たな射撃場が造られることに、激しく怒った。「日本政府は米軍の言いなりではないか。レンジ4の問題で、県民から大きな反発を受けたことを理解していない」と批判。

 同基地内のレンジ16奥側へ移転するまでの間、暫定使用されているレンジ4では現在も夜間訓練や突破訓練が行われている。

 池原区長は「米軍は、住民への配慮をまったくしない。週明けにも全体協議会を開き、区として反対の意思を示したい」と話した。

 町議会の松田義政議長は「民間地に近いレンジ3に射撃場を造るとなれば、けしからん問題だ」と声を荒らげた。

 十六日にも全員協議会を開いて、儀武町長から詳細な説明を受けた上で、「議会としての対応を検討したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_01.html

2007年8月11日(土) 朝刊 1面

4米兵を不起訴/沖国大ヘリ墜落

 宜野湾市の沖縄国際大学に二〇〇四年八月十三日、米軍普天間飛行場所属のCH53D大型輸送ヘリコプターが墜落した事故で、那覇地検は十日、航空危険行為処罰法違反(過失犯)の容疑で書類送検されていた米軍の整備士四人について、条約上、裁判権がないとして不起訴処分にした。

 県警捜査一課と宜野湾署の合同捜査本部は一日、事故から三年目となる十三日の公訴時効を前に、氏名などを特定できなまま四米兵を書類送検した。

 那覇地検は県警の捜査結果を踏まえ、日本側に裁判権があるかどうかの確認を進めていた。

 日米地位協定によると、日本の領域内で起きた事件や事故は日本側に裁判権があるが、公務執行中の罪については米軍当局に第一次裁判権があり、放棄しない限り日本側に裁く権利はない。

 米軍は軍法会議などで四米兵を降格などの処分にしており、那覇地検は米軍当局が裁判権を行使したと判断した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_02.html

2007年8月11日(土) 朝刊 1・2面

14日に公告縦覧開始/「普天間」アセス

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局は十四日から方法書の公告縦覧を開始する方針を固めた。縦覧場所は施設局のほか、名護市や金武町、宜野座村内の施設局関連施設やホテルなど五カ所で調整中。方法書の受け取りを「保留」している県や名護市が場所提供に応じない姿勢のため、関連自治体の行政施設で公告縦覧を行わない異例の事態となる。

 公告縦覧の期間は一カ月間。施設局は縦覧後、二週間以内に住民などの意見を受け付ける。それらの意見の概要を作成し、県などに送付。県は意見概要の受理後、名護市など関連市町村長の意見を聴取した上で知事意見を九十日以内(県条例に基づくアセスの場合は六十日以内)に施設局に提出。施設局は知事意見などを踏まえ、方法書を確定する。

 県や名護市は現段階で方法書の受け取りを保留し、知事意見などの審査手続きに応じない意向を示している。


     ◇     ◇     ◇     

県、提出再考求める/アセス方法書


 米軍普天間飛行場代替施設建設に向け、国が環境影響評価(アセスメント)方法書を県などに送付したことについて、県は十日、那覇防衛施設局の佐藤勉局長あてに「方法書に対する県の考え方」を提出し、「誠意ある対応と方法書提出の再考」を求めた。小池百合子防衛相らにも同日付で郵送した。佐藤局長は文書を受理したが、コメントなどは発表していない。

 文書で県は、環境影響評価手続きに入る前提として(1)代替施設の規模や位置などの具体的な建設計画が県、関係市町村と政府の間で協議され、移設に関する協議会で関係者の確認を得る(2)普天間飛行場の三年を目途とする閉鎖状態の実現(危険性の除去、騒音の軽減など)についても政府の誠意ある姿勢が示される―の二点をあらためて指摘した。

 その上で「普天間飛行場代替施設建設事業が具体的に始まることになる方法書の提出が、このような前提条件が整わないまま行われたことは誠に遺憾。政府の姿勢に疑問をもたざるを得ない」と批判した。県として方法書の受け取りを保留したことを表明する一方、「普天間飛行場移設問題を早期に解決したいとの県の考えに変わりはない」とし、政府との協議は今後とも続けていきたいとの意向も示している。

 また、米軍再編で負担が生じる地域への振興策、返還跡地利用対策、県全体の振興対策について「政府の責任として当然に所要の措置が講じられるべき」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_03.html

2007年8月11日(土) 朝刊 2面

防衛施設庁 北東側ルート優先

「普天間」新飛行経路

 二〇〇四年八月に起きた宜野湾市の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が米軍普天間飛行場を離発着するヘリコプターの飛行ルートを再検討していた問題で、防衛施設庁は十日までに、合意内容を報告書にまとめ、同日午前の日米合同委員会の承認を得た、と発表した。それによると、住宅密集地の上空を通過する同飛行場と中城村津覇漁港間の南東側の飛行ルートについて、市街地上空の飛行を最短距離で通過するため、「旋回範囲をより南側方向に延伸して補正」し、北東側の飛行ルートを優先使用することなどで合意した。

 しかし、基本的な場周経路や飛行高度は変更されておらず、「これまで確定されていなかった安全評価を日米間で科学的に検証した」(防衛施設庁)にすぎないのが実態。市街地の中心にある同飛行場の抜本的な安全対策にはつながらず、地元の不安は続きそうだ。

 防衛施設庁の辰己昌良施設企画課長は「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(知事が求める三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との認識を示した。

 報告書は約二十ページ。合意した安全対策はほかに、これまで目視で行っていた管制を自動化する自動管制機能の導入や、夜間の滑走路を見やすくするため、滑走路末端識別灯の新設。飛行場内にある六カ所の工作物や樹木などの障害物を撤去する。

 また、場周経路飛行時の設定高度である三百三十メートルを維持すれば、飛行場周辺での訓練中、空中でエンジンが停止しても、回転翼が回転を続け、水平方向に移動できるヘリの特性によって、飛行場内に帰還することが可能なことを確認したという。


改善取り組み「一定評価」

仲井真知事


 米軍普天間飛行場のヘリの飛行ルートの日米協議が合意したことを受け、仲井真弘多知事は十日、「日米両政府で離着陸経路の改善などの取り組みが決定されたことについては一定評価する。政府が今後、取り組みを一層強化し、ヘリの運用が極力低減されるなど、県の求める三年を目途とする閉鎖状態が早期に実現することを求める」とのコメントを発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_04.html

2007年8月11日(土) 朝刊 31面

知事に会長就任要請へ/超党派大会

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会について、準備実行委員会は十日、県婦人連合会など準備実行委をつくる六団体に加え、県議会や県経営者協会、連合沖縄など二十団体で構成する実行委員会の結成を決めた。十六日に最初の実行委員会が開かれる。また、開催時期は実行委員会に一任し、開催場所を宜野湾市の宜野湾海浜公園にするなどの開催案を決めた。

 開催案では大会名を「教科書検定意見撤回を求める沖縄県民大会」とし、大会長に仲井真弘多県知事を、実行委員長に仲里利信県議会議長を選出することや、五万人以上の参加を目標に、数百の各種団体に幅広く協力を呼び掛けていくことなども盛り込まれた。

 また、会場には糸満市の平和祈念公園が候補に挙がっていたが、五万人以上の収容を考え、一九九五年の米兵による暴行事件に抗議して行われた、県民総決起大会でも会場になった宜野湾海浜公園が第一候補となった。

 準備委員会に参加した仲里議長は「一切の政党色をなくして、ぜひ成功させたい」と意気込みを語った。県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の意見が一つになれば、教科書の改ざんを撤回させることはできる」と参加を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_06.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月11日朝刊)

[4米兵不起訴]

日米地位協定のひずみだ

 検察までもが日米地位協定の壁に押しつぶされたということか。二〇〇四年八月に宜野湾市の沖縄国際大学に墜落した在沖米海兵隊の大型輸送ヘリ事故について、那覇地検は米兵四人を不起訴処分にした。

 この事故で米側は、軍法会議で二等軍曹や伍長など整備士四人の降格と減給、けん責処分したという。

 県警は四人を航空危険行為処罰法違反の疑いで送検する方針だったが、米側から氏名通知を拒否されたため被疑者不詳のまま書類送検している。

 被疑者も事故原因も分かっている。だが氏名が特定されないため起訴できず、同法違反の罪に問えない。これが日米地位協定の真の姿であり、不平等性の元凶といっていい。なぜ政府は抜本的に改正しないのか、県民には疑問というしかない。

 県警が四兵士の氏名を問い、県民がその名前を知りたいと思うのは県民感情として明白ではないか。

 にもかかわらず、ケビン・メア米総領事は地位協定を盾に「日本側が(二次)裁判権を行使できないのに、なぜ県警は名前を知りたいのか逆に疑問を感じる」と述べている。

 確かに地位協定によれば、米軍兵士や軍属の公務中の罪についての第一次裁判権は米軍当局にある。だが、「だからといってなぜ事故を起こした兵士の名前を伏せるのか」という疑問に答えたことにはならない。

 もう一つは、事故原因が整備士の人為的ミスであったにせよ、米軍には組織としての責任があるはずだ。

 であれば、地位協定を盾に高飛車に対応するのではなく、公共の危険を発生させたことを深刻に受け止め、県民に誠意を示すことが米側の最低限の礼儀ではないのか。

 総領事の発言からは逆の姿勢しか見えず、地位協定で定められた既得権益を守るようにしか受け取れない。不平等性の維持であり、県民に負担と危険性を押し付ける姿勢である。

 私たちは、復帰前の米兵絡みの事件、事故の多くが、証拠などが明白なのに沖縄側に裁判権がないため裁けなかったり、形だけの強制送還で終わったことを覚えている。

 今回の不起訴処分はそのことを思いださせる。

 想定できる米軍関連事故を考えれば、日米が平等の立場で事故原因を究明したり、事故現場の管理や捜査ができるようにするのは当然だろう。

 そのためには地位協定の運用改善ではなく、対等独立の立場に立った刑事裁判および捜査権を確立することだ。重要なのはその一点と考えたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070811.html#no_1

琉球新報 社説

飛行ルート これで見直しの結論か

 木を見て森を見ない議論から導かれる結論については、あらためて報告を聞くまでもない。初めから予測はされたが、それにしてもである。

 防衛施設庁は10日、2004年8月に起きた沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が見直しを進めていた米軍普天間飛行場のヘリコプター発着の場周経路などに関する報告書を発表した。

 報告書によると、離着陸のルートは、沖国大を中心に住宅などが広がる「住宅高密集度区域」を避けて飛行し、住宅密度の低い北東側経路を優先的に使用するとしている。

 沖国大側からの飛行を回避すれば安全は保障される。そう言わんばかりの結論である。地元市民は到底、納得するまい。

 宜野湾市の地図を広げて見れば、一目瞭然(りょうぜん)なのは広大な面積を含め米軍普天間飛行場の位置やその形状の特異さなどである。市の中央部にでんと構え、占有する形となっている。このため、進入経路を変更したところでほとんど意味を成さない。

 住宅街の密集度の相対的な比較では本質的な問題は何1つ解消されないのだ。

 施設庁は「現状で普天間でとり得る最善の措置」と強調。仲井真弘多知事が求めている「3年以内の閉鎖状態」への対応として検討したと説明する。

 「3年以内の閉鎖状態」は知事の公約である。ハードルの設定は、この程度というのだろうか。随分と低く見られたものだ。

 場周経路や飛行高度が変更されていないのも疑問だ。現状の高度を維持すれば、緊急時にも飛行場内に帰還できることが可能だとしているが、説得力を欠く。3年前の墜落事故との関連について全く言及していない。

 普天間飛行場の問題は、安全性ばかりではない。騒音による地域住民の身体的、精神的な苦痛は計り知れない。

 普天間の危険性を除去するには飛行場の即時閉鎖・撤去以外にない。報告書は自明の理を図らずも証明した。

(8/11 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26212-storytopic-11.html

2007年8月12日(日) 朝刊 1・2面

「普天間」危険除去に限界/ヘリ墜落3年

 二〇〇四年八月に起きた宜野湾市の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故は、十三日で三年を迎える。事故を受け、日米が協議していた米軍普天間飛行場を離着陸するヘリコプターの飛行ルートの再検討は、現状の場周経路や飛行高度を「追認」する内容で合意。仲井真弘多知事は「三年をめどにした普天間の閉鎖状態」を繰り返し政府に求めているが、同飛行場が市街地の中心部に存在し続ける以上、危険性除去策には限界があることを浮き彫りにした。

 仲井真知事は普天間飛行場の県内への代替施設建設を容認する一方、「現行の政府案のままでは受け入れられない」として沖合移動を要請。しかし、政府からは「ゼロ回答」が続き、県は国が送付した環境影響評価(アセスメント)方法書の受け取りを保留している。

 政府と県は「早期の代替施設建設が最大の普天間の危険性除去策」との認識で一致。だが、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設が進まない限り、普天間飛行場が「居座り」続けることになり、仲井真県政は難しい判断を迫られている。


     ◇     ◇     ◇     

増え続ける騒音被害/激しさ増す外来機訓練


 日米両政府は宜野湾市の米軍普天間飛行場に離着陸するヘリコプターの新しい飛行ルートに合意した。しかし、実際には同飛行場の所属機が住宅地上空で旋回飛行を繰り返し、外来機の訓練が激しさを増している。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落、炎上してから十三日で三年。同飛行場の現状をまとめ、伊波洋一市長に今後の取り組みなどを聞いた。

 普天間飛行場のヘリ部隊は今年一月下旬から、イラク派遣や海外演習などで「不在」が続いた。しかし、ヘリに代わって嘉手納基地に常駐するP3C対潜哨戒機や山口県岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機などの外来機が飛来。住宅地上空での旋回飛行訓練が常態化し、騒音の激化に歯止めがかかっていないのが現状だ。

 同飛行場の主力ヘリを含む第三一海兵遠征部隊(31MEU)は二月上旬から約二カ月間、沖縄近海や韓国で戦時増援演習「RSOI」に参加した。六月にはオーストラリアに遠征し、七月十八日に再び帰還。その後、住宅地上空で飛行訓練を繰り返している。

 一方、FA18は五月下旬から、延べ二十機以上が飛来した。タッチ・アンド・ゴーなどの飛行訓練を繰り返し、電車通過時の線路脇に相当する百デシベル超の騒音が連日発生した。

 騒音の激しい上大謝名区では四月に二千四百六回だった騒音発生回数が、五月には約一・二倍の二千九百二十九回に増加した。相次ぐ戦闘機の爆音に加え、ヘリ部隊が帰還した七月は昨年から一年間で最も多い三千四百三十九回を記録。一日平均で約百十回もの騒音が発生したことになる。

 市に寄せられた苦情も増加している。四月は一件だったのが、五月以降は毎月二十件以上にはね上がった。「爆音で頭がくらくらする。高齢者にはたまらない」「仕事で疲れて帰ってきても、爆音で気持ちよく夕食が食べられない」など、悲鳴にも似た声が絶えない。

 外来機の相次ぐ飛行訓練はヘリ墜落以前は確認されておらず、事故から三年がたち市民の負担が増しているのが現状だ。


伊波宜野湾市長に聞く/グアム移転が最善策


 ―事故後の三年間の普天間飛行場の運用をどう見る。

 「事故直後から約半年間はヘリが飛ばなくなったが、その後、イラクから部隊が帰還し事故以前の状態に戻った。最近は(騒音防止協定で禁止された)午後十時以降にヘリが飛ぶ場合が多い。三年たっても政府は何の解決策も示せていない」

 ―FA18など外来機の訓練が常態化している。

 「運用は米軍に委ねられており、日本政府はどのように使われようと止めることができない。住宅地が密集する普天間ですらこの状態で、名護市辺野古に新基地が造られれば、(同様に)日本側は手出しができないことを示している。海兵隊の出撃拠点として基地機能が強化される。絶対に容認できない」

 ―日米両政府が合意した新飛行ルートについて。

 「住宅密集地では、いくら検討しても問題は解決できない。現在、ヘリは八カ所ほどから出入りをしているが、同じ場所から離着陸を繰り返すとその地域で騒音が激化する。無灯火の夜間飛行やはみ出し飛行も絶えない。政府は普天間の実態を分かっておらず、机上の理論でしかない」

 ―七月にはグアムを視察した。

 「アンダーセン空軍基地に海兵隊の移転場所が造られつつあり、アセスメント(環境影響評価)も進んでいる。来年八月にはグアムのマスタープランが決定される。具体的な部隊名や移設の手順が明らかになるだろう。市として優先的に普天間のヘリ部隊をグアムに移す仕組みを強く求めていく。それが危険性除去の現実的な解決策で一番の近道だ」

 ―今回の参院選で野党が過半数を占めた。

 「政権交代もあり得る状態だ。国の方針も変わると思う。民主党は『常時駐留なき安保』論を示した経緯がある。米軍駐留が国民の犠牲の下に行われることに、強い抵抗感が生まれるだろう。沖縄の基地は返還されるべきだ。野党の意見が国政で実現されれば、米側も強硬的な姿勢を続けることは難しくなる」

 ―今後の取り組みは。

 「参院選で普天間の返還を求める沖縄の二人の議員が当選した。政府与党は沖縄の基地機能の強化を容認してきたが、これに歯止めをかける必要がある。これまで連絡を取ってきた米国議員などにも沖縄の状況を伝え、より早い解決に向けて取り組む」(聞き手=中部支社・下里潤)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_02.html

2007年8月12日(日) 朝刊 1面

本紙「集団自決」報道にJCJ賞/東京で贈賞式

 【東京】優れたジャーナリズム活動と作品を表彰する日本ジャーナリスト会議(JCJ)の二〇〇七年度JCJ賞贈賞式が十一日、東京都内の日本プレスセンターホールであり、沖縄タイムス社の長期企画「挑まれる沖縄戦/『集団自決』問題キャンペーン」が表彰された。取材班を代表して出席した謝花直美編集委員に、清田義昭選考委員(出版ニュース社代表)から表彰状が贈られた。

 清田選考委員は「二年前から続く長期企画で、(大阪での)裁判や(文部科学省による)教科書への介入もあり、現在も進行中。地元の身近な問題をジャーナリストの原点に立ってまとめており、キャンペーンとはこういうものだとつくづく感じた」と報道内容を評価した。

 謝花編集委員は「歴史の歪曲を許さないという県民の代表の一人として受賞したと受け止めている。沖縄の一人一人の声を原動力にして県民大会などに向け、粘り強い報道を続けていきたい」とキャンペーン継続への意欲を示した。

 謝花編集委員は〇五年にも「戦後六十年キャンペーン」の取材班を代表してJCJ賞を受賞している。

 ドキュメンタリー映画「ひめゆり」でJCJ特別賞を受賞した柴田昌平監督は「過去に向き合って戦争体験を証言してくれた『ひめゆり』の皆さんが映画を作り、受賞したと理解している。私は仲立ちしただけだ」と述べ、証言者への謝意を強調した。

 「ひめゆり」は、財団法人県女師・一高女ひめゆり同窓会が共同製作している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_03.html

2007年8月12日(日) 朝刊 18面

サンゴ白化 白保ピンチ/WWF、死滅拡大を懸念

 【石垣】世界自然保護基金(WWF)サンゴ礁保護研究センターは九日、世界的に貴重なアオサンゴ群落があり、今月一日に国立公園に指定された石垣島・白保海域で、高海水温が原因とみられるサンゴの白化が進んでいると発表した。沖縄近海で大規模な白化が起きた一九九八年にさえ、白化を確認できなかったアオサンゴも一部で白化(淡色化)しているという。

 白化したうち、死滅したサンゴは5%程度にとどまる。同センターは「今後も高海水温が続くと大量死につながる。台風6、7号でも水温が下がらなければ被害は広がる」と懸念している。

 同センターは四日から六日まで、リーフ内(水深5メートル未満)の二十八地点で調査。すべての地点、同海域に生息するほぼすべての分類群で白化を確認した。

 目視による調査では、ハナヤサイサンゴ科とミドリイシ属は90%以上、コモンサンゴ属は50―70%、白化しにくいとされるハマサンゴ属も30―50%が白化していた。アオサンゴ属は5%未満。

 同センターが水深四―五メートルの場所に設置した水温計の記録では、梅雨明け後の六月二十一日から最高水温が三〇度を超え、七月二十三日以降は一日中三○度を下回らない日もあった。七月末までに三○度を超えた時間を積算すると平年に比べ四倍以上に達するという。

 サンゴは高水温などのストレスを受けると共生藻を失い、白く見えるようになる。今年は梅雨時の降雨や台風発生が少ないため、高海水温が続いている。さんご礁が減れば、生態系や環境に大きく影響する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_05.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月12日朝刊)

[秘密保全協定]

論議は尽くされていない

 日米の軍事一体化が新たな段階に入った。というより、日本が米国の軍事戦略に組み込まれたと言ったほうが正確だろう。

 麻生太郎外相とシーファー駐日米大使は十日、軍事秘密の保全に関する規則を網羅的に定めた「日米軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)に署名、発効した。

 政府は協定に連動して新たな罰則法令は定めないとしているが、政府関係者や関連企業などに対し広範囲の守秘義務が課される。関係省庁が情報公開に消極的になるのは明らかで、さまざまな情報が「軍事秘」を盾に国民の目から遠ざけられ、国民の知る権利が制約される危険性は高い。

 もう一つ忘れてならないのは、秘密軍事情報の共有は憲法で禁じた「集団的自衛権」の行使に限りなく近づくということだ。

 協定で規定された秘密軍事情報にはMD(ミサイル防衛)やイージス艦の戦術データ、暗号情報、有事の際の共同作戦に必要な情報などが網羅的に含まれるという。

 例えば、海上自衛隊のイージス艦が収集した高度な軍事情報がデータリンク(情報共有)によって米軍に提供され実際の武力行使に至った場合、集団的自衛権の行使につながる恐れがあるとの指摘は国会などでも度々、論議されてきた。協定の締結で日米の秘密軍事情報の共有化が進めば、そうした事態がさらに現実化する可能性は高い。

 政府はデータを提供しても、武力行使には米軍独自の判断が必要で一体化には当たらないとしてきたが、もっと踏み込んだ説明が必要だ。

 協定は国会の承認なしに発効した。政府は協定などの国会承認について、法律の改廃や財政的な負担、政治的な重要性のある場合としている。同協定の締結によって法律の制定はなく、財政負担も伴わないから、国会の承認がないというのはおかしい。

 国民の知る権利や憲法解釈にもかかわる重要な協定について再度、国会で議論を尽くすべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070812.html#no_2

沖縄タイムス 社説(2007年8月12日朝刊)

[米陸軍射撃場]

これが負担軽減の実態か

 米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用の小銃用射撃場が整備されることが明らかになった。米側予算で来年二月ごろ着工、二〇〇九年七月ごろに完成する計画だ。

 射撃場から沖縄自動車道まで約五百メートル、金武町伊芸区集落まで約一キロ。同町は「負担増につながり、到底受け入れられない」と強く反発している。

 米軍は〇五年七月、「レンジ4」都市型戦闘訓練施設で実弾射撃訓練に踏み切った。だが住宅地から約三百メートル、沖縄自動車道から約二百メートルと近接しているため、地元住民が猛反発した。

 その後、日米合同委員会で「レンジ16」北側に移設することで合意。代替施設完成後、「レンジ4」の管理権は海兵隊に移行されることになった。

 近辺住民が安堵したのもつかの間、今度は小銃用射撃場である。地域の懸念を無視した整備計画であり、住民らが怒るのは当然のことだ。

 防衛施設庁によると、遠距離射撃用で射程は最大で約千二百メートル。接近戦訓練用の都市型戦闘訓練施設の射撃場とは「用途が異なる」という。

 従来はキャンプ・ハンセンの既存射撃場で小銃射撃訓練を実施したが、海兵隊が演習場を管理しているため、効率的ではなかったと説明している。

 しかし、なぜ今になってグリーンベレー専用の新射撃場が必要なのか。キャンプ・ハンセンではせきを切ったように訓練施設整備が続き、機能の強化・集約も急ピッチで進んでいる。

 在日米軍再編の最終報告でキャンプ・ハンセンの共同使用が盛り込まれ、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が近く射撃訓練などの演習を始める。米海兵隊第三師団との共同訓練も検討されており、陸自が一連の射撃場で訓練を実施する可能性もある。

 共同使用についても、金武町、恩納村、宜野座村は「明らかな負担増」と受け止めている。新射撃場への住民の反発は必至である。米軍は住民の意向を踏まえ、整備計画を見直すべきだ。

 嘉手納以南の基地返還に伴う北部地域の負担増、基地機能強化の実態が明らかになってきた。日米で嘉手納基地の共同使用について合意しており、第一混成団の旅団への格上げ、旧東恩納弾薬庫跡地への射撃場建設など、自衛隊の強化も着々と進められる。

 テロなど新たな脅威だけでなく、中国封じ込めへ向けた南西諸島防衛などが強調される中、沖縄を舞台にした自衛隊と米軍の一体化・融合化が明確になってきた側面を見落としてはならない。今回の射撃場計画も米軍再編の中に位置付けて見ていく必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070812.html#no_1

琉球新報 社説

新射撃場計画 おかしな「負担増」の先行

 在日米軍再編であれだけ「地元の負担軽減」を強調しておきながら、沖縄でこうも「負担増」が先行しているのはどういうことだろう。

 日米政府による昨年5月の米軍再編合意後、ミサイル防衛を担う主要装備の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)や、最新鋭のステルス戦闘機F22Aが相次いで嘉手納基地に配備された。

 今度は金武町のキャンプ・ハンセンに、陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用のライフル射撃場を新設するという。射程1200メートルで実弾を使う計画だ。沖縄自動車道から約500メートル、伊芸区の集落から1000メートル弱の地点だが、遠距離射撃であることを考えると民間地への流弾の可能性は否定できない。

 地元の金武町が「到底受け入れられない」(儀武剛町長)、「政府は米軍の言いなりか。悪夢がまた始まる」(池原政文伊芸区長)などと不安や怒りをあらわにしたのは当然だ。

 政府の説明だと、新設されるのはグリーンベレーに射撃資格を与えるための訓練施設で、高さ約14メートルの3階建て。三方向を壁で覆い、射撃方向は北西の恩納岳側だけ。「民間地へ銃口が向く可能性は全くない」(外務省)と強調する。だが、想定外の事態を引き起こすのが軍隊だ。過去に何度も流弾事故が起きていることがその証しで、いくら「安全」と言われても信用し難い。

 グリーンベレー関連施設は先に都市型戦闘訓練施設が集落に近い場所で整備された。この時も反対運動が起きたが、比較的奥の演習場側に移設することを条件に、暫定使用が日米で合意された経緯がある。

 ハンセンでは自衛隊との共同使用も始まる。自衛隊は爆破訓練などを実施する計画で、金武町や宜野座村、恩納村が負担増を訴えていた。そんな矢先の新射撃場計画だ。地元が納得するはずがない。米軍再編でうたった負担軽減はどこへ消えてしまったのか、という思いであろう。

 名護市辺野古沖での普天間飛行場代替施設計画もしかり。新たな基地建設に反対する人々や、計画修正を求める名護市や県の意向に政府は頑として取り合わない。欠陥機の指摘がある兵員輸送機MV22オスプレイの配備も現実味を帯びており、負担増は明らかだ。

 一方で、日米合意にあった在沖海兵隊司令部と隊員・家族計1万7千人のグアム移転や、それに伴う本島中南部の基地返還は進んでいない。「抑止力の維持」だけが鮮明になり、負担増を先行させる構図だ。これはおかしい。

 政府は、これ以上の負担は受け入れられないという地元の意向を踏まえ、新射撃場の計画撤回を米側に強く迫ってもらいたい。

(8/12 10:26)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26255-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月10日)

2007年8月10日(金) 朝刊 2面

那覇軍港代替施設で合意/牧港補給地区

 【東京】米軍那覇港湾施設(軍港)の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)沖への移設で、政府と県、那覇市、浦添市、那覇港管理組合は九日、第十三回移設協議会を防衛施設庁で開き、追加整備される集積場を含む代替施設の位置や形状、面積について合意した。

 キンザー沖に整備する浦添ふ頭地区の沖合に隣接する逆L字形で、規模は約四十九ヘクタール。政府は今後、代替施設内の建物や集積場などの配置計画について、米側との調整に入る。

 防衛施設庁、内閣府沖縄担当部局、国土交通省港湾局の担当者のほか、県側から上原昭知事公室長、當銘芳二那覇市副市長、吉村清浦添市副市長、那覇港管理組合の堤敏郎副管理者が出席した。

 政府側から米側との調整を経た移設案が示され、県側は「提示された位置および形状に基づき、関係機関との調整を進めることについて同意する」と了承した。

 その上で(1)追加的な集積場を含む代替施設と港湾計画との整合を図りつつ円滑な移設を進める(2)今後より具体的な事項について引き続き担当レベルで密接に調整する―ことを確認した。

 政府は今後、施設の配置計画を米側と協議した上で、具体的な建設計画を進める方針だ。

 那覇港湾施設は、一九九五年の日米合同委員会で、浦添ふ頭地区内への移設を条件として全面返還に合意。代替施設の規模は三十五ヘクタールとされた。

 その後、二〇〇六年の在日米軍再編最終報告(ロードマップ)で追加的措置として集積場(十四ヘクタール)も整備されることになり、規模は全体で約四十九ヘクタールとなった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101300_03.html

2007年8月10日(金) 朝刊 27面

「再発防止徹底を」/米軍車両侵入

うるま市長ら外務省・施設局に抗議

 うるま市の前原高校に米海軍所有のトラックが侵入した問題で、知念恒男市長と市議会の島袋俊夫議長、基地対策特別委員会委員ら十八人は九日、那覇市の外務省沖縄事務所と那覇防衛施設局を相次いで訪れ、抗議した。同市議会は同問題でこの日午前、抗議決議と意見書を全会一致で可決している。市内の県立沖縄高等養護学校で起きた米軍装甲車による侵入から約二十日で同様の事件が再発したことに、知念市長と島袋議長は「県民感情を無視した米軍の行動は断じて容認できるものではない」と批判。在沖米軍に対し、再発防止を働き掛けるよう申し入れた。

 防衛施設局の池部衛次長は事件の再発に「大変申し訳なく思う」と陳謝。その上で八日、在沖米海兵隊各基地の司令官あてに、同隊外交政策部長から注意喚起の文書が送付された、と説明した。

 外務省沖縄事務所は倉光秀彰副所長が対応。「真摯に受け止める」と陳謝した。

 同席した田中直次市議は、侵入した米海兵隊員が学校内で安全に方向転換したと話していることについて、「縁石に乗り上げた跡がある」と指摘。米軍に再度、事実関係を確認するよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101300_06.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月10日朝刊)

[南北首脳会談]

核の完全放棄引き出せ

 韓国の盧武鉉大統領が今月末に平壌を訪問し、金正日総書記と南北首脳会談を行うことが決まった。二〇〇〇年六月に金大中・韓国大統領(当時)と金総書記の間で初めて行われたが、七年ぶり二回目の首脳会談になる。

 北朝鮮の核問題は六カ国協議でようやく動きだしたばかりだ。北朝鮮は非核化へ向けた「初期段階措置」として寧辺などの核施設の稼働を停止し、国際原子力機関の監視を受け入れた。

 これを受けて、今後は「次の段階」として核施設の「無能力化」と「すべての核計画申告」という重要な局面を迎えることになる。

 しかし、核の完全放棄に応じるかどうか、なお予断を許さない。今回の会談はこうした環境下で行われるため、盧大統領は北朝鮮に核放棄へ向けた取り組みを強い姿勢で求めるべきだ。

 韓国側は南北の交流・協力事業の拡大や、軍事的緊張緩和を進めたい意向だ。対北朝鮮「包容政策」を次期政権にも継承させ、南北首脳会談の定例化につなげたいとしている。

 大統領の任期は半年余を残すだけとなった。北朝鮮が会談に応じた背景には、韓国の大規模支援に期待するとともに、年末の大統領選への影響力を行使したいという狙いがあるという分析もある。野党が勝利すれば、融和政策が見直される可能性があるためだ。

 韓国国内では、野党のハンナラ党などから、劣勢の与党系勢力の浮揚を狙った「選挙イベント」などと批判があり、冷ややかな見方があるのも事実。

 ただ、朝鮮戦争以来、休戦状態にある朝鮮半島の平和体制構築へ向けた協議が検討され、米朝関係改善の新たな動きが出てきているのも確かだ。

 難しい局面だが、首脳会談がこうした動きを後押しする可能性を秘めていることも軽視してはならないだろう。

 核問題をめぐり南北首脳会談で一定の成果を挙げれば六カ国協議にも好影響を与えるはずだ。しかし、パフォーマンスに終始し、成果が得られなければ内外から反発を招く。厳しい南北首脳会談になるのは間違いない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070810.html#no_2

沖縄タイムス 社説(2007年8月10日朝刊)

[超党派県民大会]

史実は正しく伝えたい

 高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への旧日本軍の関与記述が修正・削除されたことに反対する、全県的な大会が開催されることになった。

 大会には県議会が全会一致で参加を決め、超党派であれば仲井真弘多知事も参加する意向だという。

 大会実行準備委員会の県子ども会育成連絡協議会、県PTA連合会、県婦人連合会は、市町村長会、議会議長会、経済団体などにも参加を求めるが、「集団自決」は沖縄戦の実相に深くかかわる問題だ。

 九月九日の県民大会には、できるだけ多くの県民が参加し、「集団自決」と「検定」について検証するとともに、歴史を改ざんする動きに異を唱えていきたい。

 「集団自決」の問題は、ややもすると沖縄一県だけの特殊なテーマと思われがちだ。少なくとも、本土のメディアは大きく取り上げておらず、全国的に理解されているとは言い難い。

 であれば、大会は他県の人々に「沖縄戦の実相」を伝える意義を持ち、沖縄戦における「集団自決」の実態について共通の理解が得られるような取り組みにする必要がある。

 この問題では、全国の小中高校、大学の歴史教育研究者らでつくる歴史教育者協議会も文科省の検定意見書撤回と記述回復を求める決議を採択した。

 県議会は同一会期内に二度「検定撤回」を求める意見書を採択し、四十一すべての市町村議会も可決している。

 「集団自決」に旧日本軍が関与したのは県民のコンセンサスといっていい。県議会などの採択は、体験者の気持ちを土足で踏みにじる文科省の検定意見に対する反論と受け止めるべきだ。

 誤解してはならないが、私たちは文科省や教科用図書検定調査審議会に対し、「ないことを記述せよ」と無理難題を求めているのではない。

 そうではなくて、体験者の証言から明らかなように歴史的な事実は“史実”として、「教科書にきちんと記載すべきだ」と言っているのである。

 文科省が言う「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現」との検定意見は、逆に沖縄戦の実相を意図的に消し去ろうとするもので、容認できるものではない。

 私たちは「負の歴史」からも学ぶべきことは多い。むしろ、そこにこそ歴史を学ぶ意義があるのであり、後の世代の都合によっていいように解釈し直してはなるまい。

 史実をどう厳粛に受け止め、正しく伝えていくか。そのことを再確認するのも県民大会の重要なテーマとなる。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070810.html#no_1

琉球新報 社説

南北首脳会談 「強面外交」転換の契機に

 7年ぶりとなる南北首脳会談が28日にも実現する。北朝鮮の強面(こわもて)外交に、韓国は再び「太陽(包容)政策」で応じる。アジアの火薬庫ともなりつつある朝鮮半島の和平実現に向け、成果と変化を期待したい。

 2000年6月、韓国の金大中大統領が北朝鮮の平壌を訪問し、金正日総書記と会談した前回の歴史的な南北首脳会談では、朝鮮半島の統一や交流と協力の強化をうたう「南北共同宣言」が発表され、雪解けムードが一気に高まった。

 だが、宣言に盛り込まれた金総書記の「適切な時期」のソウル訪問はなく、逆に雪解け会談の2年後には黄海で南北の警備艇による銃撃事件が起きている。事件の対策となる「偶発的衝突防止策」の合意に2年の歳月を要し、南北交流の至難さを露呈させた。

 その後も関係は悪化の一途をたどり、05年2月には北朝鮮が「核保有」を宣言し、翌06年7月には弾道ミサイルの連続発射。韓国は食糧・肥料支援を凍結。北は離散家族の再会事業打ち切り、核実験を強行するなど反発を強めた。韓国も「金剛山観光の見直し」を決めるなど対立を深めた。転機は今年2月。1年3カ月ぶりの6カ国協議の再開である。協議を契機に、北朝鮮は核施設稼働停止に応じ、南北閣僚級会談で離散家族再会に合意。韓国も肥料支援の再開や米40万トンの支援を決めている。

 そして、今回の首脳会談実現である。北朝鮮の強面外交に、韓国も一時は太陽政策を「北風外交」「殴り合い外交」に変化させた。だが、首脳会談再開という「大人の外交」で、再び太陽政策に立ち戻り、朝鮮半島の和平に挑む。

 今回の会談実現を、12月の大統領選で劣勢の盧武鉉大統領率いる与党の巻き返しを狙う「政治的イベント」と、やゆする声もある。

 しかし、南北対話、半島の和平は、拉致問題の難題を抱える日本にとっても重要な意味を持つ。在沖米軍基地の整理縮小も、朝鮮半島情勢が鍵といわれる。

 今度こそ北朝鮮には、強面外交を脱し、南の太陽政策に応じる「大人の外交」を求めたい。

(8/10 9:52)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26185-storytopic-11.html

琉球新報 社説

テロ特措法 延長は本当に必要か

 今年11月1日に期限切れとなるテロ対策特措法に、民主党の小沢一郎代表が「延長反対」を打ち出した。異論、反論渦巻く中、多数与党の政府・与党が数の力で強行し成立、延長させてきた特措法である。憲法違反の疑義も絶えない。この際、是非の徹底論議を求めたい。

 テロ特措法は、2001年9月11日の米中枢同時テロを受け、テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンやアルカイダ、アフガニスタンのタリバン政権の打倒などを目指す米国の軍事支援のために制定された。

 制定のきっかけは「ショー・ザ・フラッグ」というテロ直後の米国務副長官の言葉だった。米国支持の「旗幟(きし)を鮮明に」との意味が、「インド洋に日の丸を見せろ」との対日要求と曲解され、米軍のアフガン攻撃を後方支援する特別立法の制定につながった、との逸話もある。

 特措法制定で日本はインド洋に自衛隊を派遣。米軍を含む諸外国の軍艦・艦船への給油など後方支援活動を展開している。

 制定をめぐる国会論戦では日米安保の「極東」を超える米軍支援の地理的拡大、米軍以外の「諸外国の軍隊」への支援対象の拡大、明文規定がない「米本国への武力攻撃」に対する日本の自衛権行使など、米軍や諸外国の軍隊への後方支援活動が憲法が定める「集団的自衛権の行使」に当たるとの疑念も指摘された。

 米軍のアフガン攻撃自体を「米国による米中枢同時テロに対する報復戦争」とみる憲法学者も少なくない。そこから、報復戦争に手を貸すテロ特措法が、紛争解決の手段としての一切の「武力による威嚇、行使」を禁ずる憲法の理念にも反するとの指摘もある。

 多くの疑念や疑問、反対の声を多数与党の力で封じ、成立させたのがテロ特措法である。

 民主党は7月の参院選で大勝し、参院第一党に、同時に参院では野党が多数を占めた。そこに民主党の小沢代表の発言である。

 小沢氏は、テロ特措法の延長を求める米国のシーファー駐日米大使に「米国を中心とした活動は、直接的に国連安全保障理事会からオーソライズ(承認)されていない」と、延長拒否の考えを示した。

 小沢氏は「日本の平和と安全に直接関係ない地域で、米国やそのほかの国の部隊と共同の作戦はできない」とも述べている。

 特措法論議の中で、再三指摘されてきた違憲・違法性が小沢氏の「延長拒否」の理由だ。

 参院で多数を占める野党の反対に、政府・与党は「日米関係を後退させるもの」と反発。民主党に翻意を促している。

 論議は、秋の臨時国会が舞台となる。論戦の行方を注目したい。

(8/10 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26187-storytopic-11.html

2007年8月10日(金) 夕刊 1面

那覇空港 滑走路増設で3案/調査会議 県民の意見収集へ

 那覇空港の整備の在り方を検討する那覇空港調査連絡調整会議(構成・国土交通省、内閣府、県)の第七回会合が十日午前、那覇市内のホテルで開かれ、新滑走路を現滑走路からどの程度離して整備するかについて「千三百十メートル」「九百三十メートル」「二百十メートル」とする三案が提案された。今後は、同案に対する県民の意見を広く収集するPI(パブリック・インボルブメント)ステップ3を今月末から実施。同調査結果を踏まえ、施設整備計画・構想など具体化の検討作業に入る。

 新滑走路案は、那覇空港を利用するすべての航空機の離着陸が可能な三千メートル、沖合側への配置を設定。

 滑走路が二本ある場合、その間隔によって管制方式が異なることから、「千三百十メートル」「九百三十メートル」「七百六十メートル」「二百十メートル」の四ケースを基本に、発着回数など「空港能力」「利便性」「事業規模」「周辺環境への影響」などの指標で比較・検討を行った。

 一日六百―六百二十回の離着陸が可能な「千三百十メートル」案は、瀬長島への影響を低減するため現滑走路南端から南限に合わせた「南寄せ」配置。事業規模が二千四百億円と大きく、入域客の増加需要予測に基づく経済効果は最大千四百二十億円と試算した。環境面では、瀬長島への直接的な影響はないものの、大嶺崎周辺区域の陸域生物、さんご礁などの一部の海域生物への影響がある。

 「九百三十メートル」案は、現滑走路の両端と新滑走路の両端を合わせた配置。「千三百十メートル」案と同様、空港能力は最大で、コスト高。地上走行距離が二千百メートルと三案で最も短い。

 現滑走路に最も近い位置の「二百十メートル」案は、一日の発着回数が四百七十―四百八十回と空港能力が最小で、事業規模も千三百億円と小さい。周辺環境への影響は、他の二案と比べて、潮流や底質環境の変化は小さい。

 同調査は、那覇空港の総合的調査の一環で、二〇〇三年度から実施。本年度のステップ3は最終段階となる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101700_02.html

2007年8月10日(金) 夕刊 1面

ハンセン内に新射撃場/施設局、金武町に伝達

 【金武】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」内で、米陸軍が使用する新たな実弾射撃訓練場の建設計画があることが十日分かった。

 外務省と那覇防衛施設局の担当者らが同日午前、金武町役場に儀武剛町長を訪ね、米軍予算で建設することや最長で千二百メートルの射撃訓練が可能な施設になることなどを説明。近く業者の入札を始めたい考えを伝えたという。儀武町長は地元の負担増を理由に、反対の意思を伝えた。同日午後三時から町役場で会見を開く。

 キャンプ・ハンセンに関しては、在日米軍再編で日米合意した共同使用で、陸上自衛隊が射撃や爆破訓練を同基地内で実施することが防衛施設庁から金武町、恩納村、宜野座村に伝えられたばかりで、地元は反対している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101700_03.html

2007年8月10日(金) 夕刊 1面

「普天間」で新飛行ルート/場周経路変わらず

 二〇〇四年八月に起きた宜野湾市の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が米軍普天間飛行場を離発着するヘリコプターの飛行ルートを再検討していた問題で、防衛施設庁は十日までに、合意内容を報告書にまとめ、同日午前の日米合同委員会の承認を得た、と発表した。それによると、住宅密集地の上空を通過する同飛行場と中城村津覇漁港間の南東側の飛行ルートについて、市街地上空の飛行を最短距離で通過するため、「旋回範囲をより南側方向に延伸して補正」し、北東側の飛行ルートを優先使用することなどで合意した。

 しかし、基本的な場周経路や飛行高度は変更されておらず、「これまで確定されていなかった安全評価を日米間で科学的に検証した」(防衛施設庁)にすぎないのが実態。市街地の中心にある同飛行場の抜本的な安全対策にはつながらず、地元の不安は続きそうだ。

 防衛施設庁の辰己昌良施設企画課長は「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(知事が求める三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との認識を示した。

 報告書は約二十ページ。合意した安全対策はほかに、これまで目視で行っていた管制を自動化する自動管制機能の導入や、夜間の滑走路を見やすくするため、滑走路末端識別灯の新設。飛行場内にある六カ所の工作物や樹木などの障害物を撤去する。

 また、場周経路飛行時の設定高度である三百三十メートルを維持すれば、飛行場周辺での訓練中、空中でエンジンが停止しても、回転翼が回転を続け、水平方向に移動できるヘリの特性によって、飛行場内に帰還することが可能なことを確認したという。

 飛行ルートを再検討する日米両政府の「現地調整会議」は普天間飛行場を離陸した米軍ヘリが沖縄国際大学へ墜落した事故を受け、場周経路の再検討や安全対策の強化などを目的に、〇五年四月に発足。昨年九月の段階で日米の実務レベルの協議を終了し、現状の場周経路をほぼ維持する内容で事実上合意していた。しかし、「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」を求める仲井真弘多知事のスタンスなどを考慮し、正式承認のタイミングを模索していた。


机上の理論

伊波市長


 【宜野湾】宜野湾市の伊波洋一市長は「実際は基地外へのはみ出し飛行に歯止めがかかっておらず、住宅地上空で旋回訓練を繰り返している。防衛施設庁の言い分は机上の理論でしかない」と批判。その上で「飛行回数を最小限に抑えるという考えが見られない。政府は今の現状を追認したにすぎず、結局は何もできなかった。ヘリ部隊をグアムに移すのが一番の解決策だ」と語気を強めた。


「改善」評価

仲井真知事


 【東京】上京中の仲井真弘多知事は十日、自身が公約に掲げる同飛行場の「三年内の閉鎖状態の実現」とは別問題との認識を示した上で、「改良、改善というのを絶えずやっていただくことは結構なこと」と一定評価した。

 仲井真知事は「詳しく中身を見ていないが、これはこれなりに改良、改善ということで評価すべきだと思う」とする一方で、「三年内の閉鎖状態」について「これはこれで、(国から)きちっとした返事を頂いていない」と述べ、今後も引き続き求めていく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101700_04.html

2007年8月10日(金) 夕刊 7面

「回避可能」中止求める/F15未明離陸

北谷町議会意見書可決 車両侵入も抗議

 【北谷】米軍嘉手納基地がF15戦闘機四機と空中給油機一機の未明離陸を予定している問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は十日午前、臨時会を開き、「深夜・早朝の時間帯の離陸を回避した本国帰還は可能だ」として、離陸計画の即時中止などを首相や防衛施設庁長官らに求める意見書を全会一致で可決した。また、うるま市で発生した米軍車両侵入問題の意見書、抗議決議も全会一致で可決した。

 離陸計画の中止を求める意見書は、嘉手納基地に一時配備されたF22戦闘機が今年五月、未明離陸を強行した際、一部が日中に離陸し本国に向け帰還したことを指摘。住民の安眠を妨げる行為は「町民の生命、安全を守る立場から、いかなる理由があるにせよ到底容認できない」と米軍を批判。未明離陸を含む深夜・早朝(午後十時―午前六時)の時間帯の飛行中止などを求めている。

 外相や防衛相、外務省沖縄大使、那覇防衛施設局長らにあて送付する。

 また、うるま市の県立高校二校への米軍車両侵入問題の抗議決議は、「北谷町の約53%は米軍基地が占めており、侵入問題は本町でも起こりえる」と指摘。「安全であるべき学校への侵入は、一歩間違えれば生徒らの命にかかわる重大な問題だ」と米軍を批判した。

 決議と意見書では、真相究明と再発防止策の策定、兵員の教育徹底などを求めている。

 在日米国大使や在沖米国総領事、在日米軍沖縄地域調整官、首相らに郵送する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月9日)

2007年8月9日(木) 朝刊 1・27面

県民大会 超党派で/「集団自決」修正

県議会各派、全会一致

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を修正・削除した文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会について、県議会(仲里利信議長)は八日午後、各派代表者会議を開き、超党派での参加を全会一致で決めた。大会実行委員会には仲里議長が出席する方針だ。仲井真弘多知事も「超党派で、要請があれば参加を検討する」(仲里全輝副知事)との姿勢で、県議会の参加決定によって、県民大会の開催が事実上決定した。時期などは実行委員会で協議される。

 代表者会議では、県議会が検定意見撤回を求める意見書を二度可決したことを踏まえ、「沖縄戦の実相を後世に正しく伝えるために超党派で参加すべきだ」との意見で一致した。

 文科省に対して、「撤回を求める沖縄側の要請にまったく配慮がない」との批判も出た。

 最大会派の自民は、六日の議員総会で意見がまとまっていなかったが、八日の代表者会議の休憩中、議員総会を開いて対応を協議。「軍命の有無を争う裁判の係争中で、司法や検定制度の政治介入になる」との反対意見もあったが、「意見書を二度可決した。軍関与は明らか。検定意見撤回のために大同団結し、文科省に要請すべきだ」という意見が大勢を占め、参加を決めた。

 代表者会議後、仲里議長は「全会一致で参加を決めたことは感慨深く、全県的な運動に広がることを期待したい。米兵暴行事件に抗議した一九九五年十月二十一日の県民大会並みの規模にしたい」と述べた。

 大会の在り方などは今後、実行委で協議するとしている。

 県民大会準備実行委員会メンバーで、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の代表である県議会が参加することで、大会の実現に向けて大きく前進した。これをきっかけに多くの団体が参加してくれるだろう」と歓迎。

 県や市長会、経済団体などに参加を呼び掛けるため、十日にも準備実行委員会を開き、今後の運営方法などを協議する考えを示した。

 教科書検定では、県議会が二度にわたり抗議の意見書を可決したが、文部科学省は「検定調査審議会の専門家が決めたもので撤回できない」との立場を崩していない。


     ◇     ◇     ◇     

知事も参加検討へ


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述を修正・削除した高校歴史教科書の検定意見撤回を求める県民大会について仲里全輝副知事は八日、自民党県連の新垣哲司幹事長らと県庁で意見交換し、県の対応について「超党派であれば、要請があれば(仲井真弘多知事の)参加を検討する」との考えを示した。

 仲里副知事は意見交換後、沖縄タイムスの取材に対し「知事が出席するかどうかは日程の都合にもよるが、超党派であれば、出席と(大会での)発言を検討する」と説明。仲井真知事も同様の見解だとした。

 これまで仲井真知事が態度を保留していたことについては、「偏った政治的な集会であれば、参加できない。教科書検定問題というのは事実検証の問題であり、感情的、政治的問題ではない。集会そのものを知事が主催することはない」との認識を示した。また、同問題への別の対応として「専門家や学者などによる組織を立ち上げ、事実を検証することも方法の一つではないか」と提案した。


民の声 議会動かす/関係者、安堵と喜び


 「全会一致とはすごい」、「沖縄の底力を見せよう」。高校歴史教科書の沖縄戦に関する記述から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が文部科学省の検定で削除された問題で、県議会が八日、全会一致で県民大会への参加を決めたことに、開催準備を進めてきた関係者は安堵し、喜んだ。検定撤回と記述の復活などを求める超党派の県民大会の動きが始まってから一カ月。粘り強い呼び掛けと、県民の怒りが再度、議会を動かした。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長はこの日、県議会各派代表者会議の直後、仲里利信議長、具志孝助副議長から、県民大会への参加決定を知らされた。

 「県議会がまとまるか不安もあった。県民の怒りを受け止めて参加を決めたことは非常に影響が大きい。ほかの団体も積極的に参加を表明するきっかけになる」。仲里議長の手を握り、喜びで声を弾ませた。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「超党派での参加はうれしい限り。沖縄戦を伝える『教育』として、さらに多くの人に参加を呼び掛ける」と意気込んだ。

 県が「超党派の要請があれば仲井真弘多知事の参加を検討する」としていることに、県婦人連合会の小渡ハル子会長は「大会では県民の代表として、ぜひ知事にあいさつしてもらいたい。県民が超党派で心を一つにして、歴史の改ざんをさせないよう安倍首相に訴えなければ」と強調した。

 「今度は、県民が県議会の決定に応える番だ」と力を込める青春を語る会の中山きく代表。「抗議と要請では終わらせず、教科書への記述復活を勝ち取るため、幅広く団結して県民の底力を見せつけなくては」と大会の成功を訴えた。

 県遺族連合会の仲宗根義尚会長は、近く「歴史的事実を後世に残したい」との思いを盛り込んだ独自メッセージを発表し、県民大会と連動して世論に訴えていく意向を示した。

 六月に教職員を中心に県民大会を開いた高嶋伸欣・琉球大教授。「中央政府と地方という力関係にひるまない、沖縄県民のゆるがない確信を感じる。主権在民のお手本で、『集団自決』への日本軍関与の記述復活とともに、記述復活のための県民の運動も教科書に掲載させたい」と、県民大会開催に向けた動きを評価した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091300_01.html

2007年8月9日(木) 朝刊 2面

国次第で受け入れも/アセス方法書

 米軍普天間飛行場代替施設の建設に向け、那覇防衛施設局が県に送付した環境影響評価(アセスメント)方法書の取り扱いについて、県の上原昭知事公室長は八日、県が求めている「滑走路の沖合移動」「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」に関し、政府から前向きな回答が得られれば受け入れる可能性があることを明らかにした。共産党県委員会の申し入れに答えた。

 上原公室長は、滑走路の沖合移動と普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態の二点を挙げ、「政府が何らかの形で回答し、(政府と地元の)協議会などの場で明確に示すことがない限り、方法書は受け入れられない」と表明した。

 一方で、二点について「政府から何らかの歩み寄りが認められた時点で、協議会の開催などをにらみながら、(方法書を)受け入れることはあり得る」とも指摘、政府の今後の対応に期待感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091300_03.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月9日朝刊)

[ハンセン共同使用]

これは明らかな負担増だ

 在日米軍再編で日米合意した米軍キャンプ・ハンセンの共同使用で、防衛施設庁の担当者は県と金武、恩納、宜野座の三町村長に、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が実施する射撃や爆破などの訓練内容を説明した。

 施設庁は年内にも開始したい意向だが、あえて時期や使用レンジなどを明らかにしなかった。報道が先行し、地元が「反対を表明せざるを得ない」状況であると判断したようだ。

 その代わり、三町村が米軍再編交付金の支給対象になると伝えた。同交付金は米軍再編の進ちょく度に応じて交付金を支給する。アメとムチを露骨に使い分け、受け入れを迫るものだ。

 再編交付金には言及したということはそれを使って受諾させるつもりであろうが、姑息な手法というしかない。

 訓練は当面、自衛隊のみで行われるだろうが、ゆくゆくは陸自に対応する在沖米海兵隊との共同訓練になるのは間違いない。米軍再編の狙いである「米軍と自衛隊の一体化」が具体化され、指揮系統や相互運用など「融合化」を強めるものになっていくはずだ。

 第一混成団はこれまで実弾射撃訓練場が確保されていないため、主に九州の自衛隊演習場を移動して訓練してきた。共同使用で訓練効率が飛躍的に高まる。二〇〇八年度以降は、整備中の沖縄市の東恩納覆道射場で小火器射撃が可能となり、米軍とともに「戦う自衛隊」の環境が整えられていく。

 共同使用は日米地位協定二条四項(a)の「合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本国政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使用させることができる」とする条文に基づく。

 だが、一時的にせよ、使用していないのならば、日米両政府は返還の方策こそ考えるべきではないのか。

 施設庁の説明に対し、儀武剛金武町長ら三首長はそろって「負担増になる」と明確に反対した。米軍に自衛隊が加われば地元負担の増加は明らかであり、共同使用は絶対に認められない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070809.html#no_2

琉球新報 社説

アセス手続き 普天間の危険性除去どこへ

 防衛省は7日、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古沿岸域での環境影響評価(アセスメント)の方法書を県と名護市、宜野座村に提出した。

 県は2006年5月に政府と交わした基本確認書に基づいた協議が整わない段階での提出は「遺憾」(仲井真弘多知事)とし、受け取りを拒否した。

 名護市の島袋吉和市長も同様な考えで受け取りを拒んだ。

 防衛省はアセス方法書提出で、アセス手続きの効力が発生したとの認識を示したが、容認できない。

 移設問題の原点は「普天間飛行場の危険性の除去」である。それを防衛省はないがしろにしてはいないか。

 防衛省がアセス方法書を強行提出したのは、普天間の危険性除去ではなく、日米合意を最優先した結果にほかならない。

 県や名護市の要望事項が防衛省内でこの間、真剣に検討された節はない。仲井真知事が求める普天間飛行場の3年をめどとした閉鎖状態も、無視され続けている。

 防衛省が14年の移設に向けたスケジュールに重きを置き、作業を進めていることは許し難い。

 アセス方法書自体にも疑問がある。「米軍回転翼機および短距離で離発着できる航空機」とし、機種を明記していない。桜井国俊沖縄大学学長(環境学)は「どんなヘリを使うかについて国は明記しなければならない」とし「法的に欠陥のある方法書と言っていい」と指摘している。

 必要な形式を備えていない方法書は当然、無効である。

 基本確認書は「在日米軍の抑止力の維持と沖縄の負担軽減が両立する方向で対応」と明記している。政府案に反対しながら、同案を基本とした基本確認書に同意した県の対応を、政府は「事実上の受け入れ表明」と受け止めた。

 だからといって地元を無視して強権的に事を推し進めようとする姿勢は乱暴にすぎる。県が態度を硬化させるのも無理はない。

 国は行政手続きを強行する前に、県や地元の要求にどう応えるのか。納得させられない限り、混迷を深めるだけだ。

(8/9 9:52)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26161-storytopic-11.html

琉球新報 社説

超党派県民大会 検定意見撤回実現の弾みに

 県議会は各派代表者会議を開き、県子ども会育成連絡協議会など6団体の要請を受けて、文部科学省の高校歴史教科書検定意見の撤回を求める県民大会に、県議会として参加することで一致した。

 仲里利信議長を県民大会実行委員会のメンバーにすることを自民党が提案し、各派とも了承。超党派が参加する形での大会開催が決まった。

 仲里全輝副知事は「超党派の大会であれば知事が出席して見解を述べることもできる」との考えを示している。超党派の条件が整ったことで、県をはじめ、県議会、各種団体がそろった文字通りの県民大会が実現することになった。

 来年から使用される高校教科書で、沖縄戦の「集団自決」から日本軍の強制があったとする記述が文科省の検定意見で修正・削除された。歴史の歪曲(わいきょく)に対して沖縄全体で抗議し、検定意見の撤回を求めることは大きな意義がある。

 9月9日に予定されている県民大会を成功させ、検定意見の撤回を実現する出発点にしたい。

 3月末に文科省の検定意見が明らかになって以降、県内各団体が抗議の意思を表明。県内全41市町村議会が撤回を求める意見書を可決した。県議会は同一定例会中で、初めて2度も撤回を求める意見書を可決した。

 このことからしても検定意見撤回は県民の総意である。にもかかわらず文科省は県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議長会の各代表の検定意見撤回要請を拒否した。

 教科用図書検定調査審議会が決めることというのが理由だが、検定意見の内容をまとめたのは文科省の教科書調査官である。

 しかも、調査官は調査意見書で日本軍の関与に関する記述の削除を求め、審議会はそれをそのまま受け入れ、検定意見として教科書各社に通知していたのである。

 文科省に、事実をねじ曲げた検定意見をまとめた責任があるのは明らかである。

 文科省の壁は厚いものの、1982年に「住民虐殺」の記述が削除された際には、県民の声で検定意見を撤回させた前例もある。

 今回の検定意見は、研究者らがこれまで積み重ねてきた沖縄戦の事実を踏みにじるものであり、断じて容認できるものではない。

 県民の声に応じない文科省のかたくなな姿勢を転換させることができなければ、後世に大きな禍根を残すことになる。多くの県民が大会に参加し、撤回要求の意思を示すことが重要である。

 沖縄戦の事実を子どもたち、そして後世に伝え続けることは県民、そして国の責務である。

 県民大会を弾みに、強力な県民運動を展開したい。

(8/9 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26162-storytopic-11.html

2007年8月9日(木) 夕刊 1面

うるま議会が抗議決議/米軍車両侵入

 【うるま】うるま市田場の前原高校敷地内に、海兵隊員が運転する米軍のトラックが侵入した問題で、うるま市議会(島袋俊夫議長)は九日午前、臨時会を開き、同校への米軍車両無断侵入に対する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

 同議会では、先月二十六日、同市田場の県立沖縄高等養護学校敷地内に米海兵隊の装甲車両が侵入したことに対する抗議決議と意見書を全会一致で可決したばかり。

 抗議決議では「安全であるべき学校敷地内に装甲車や軍用車両が無断で侵入するという米軍の相次ぐ暴挙は、常識では到底考えられない」と厳しく批判。

 また、事件再発に「県民に対する人命軽視の表れであり、県民感情を無視した行動は断じて容認できない」として抗議するとともに、原因究明や再発防止を求めている。

 抗議決議は駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米国総領事、在沖米海兵隊基地司令官あて。意見書は衆参両院議長や首相などのほか、県知事や県議会議長にも提出し、事件の原因究明について協力を求める。市議団や知念恒男市長らは同日午後、外務省沖縄事務所や那覇防衛施設局、在沖米国総領事館を訪ね、米軍車両の無断進入に抗議し、再発防止を求める。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091700_01.html

2007年8月9日(木) 夕刊 5面

北部訓練場近くに弾200発/東村高江県道そば

 【東】東村高江の米軍北部訓練場のメーンゲート付近で九日午前八時二十分ごろ、米軍のものとみられる弾が入ったプラスチック製のケース一個が見つかった。ケースには長さ五センチ、直径九ミリの弾が二百発入っているとみられる。

 同訓練場内で進められている米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に反対して座り込みをしている市民団体メンバーの男性が、県道70号から約三メートル入った草むらで発見した。通報を受けた名護署員が基地内の米兵に確認したところ、音だけ鳴る訓練用の弾、と説明したという。

 機械で草刈り作業中に見つけた男性は「ゴツンとの音で気付いた。発射された形跡はなく、爆発の危険性もあったかもしれない。こんな危険なものが県道の近くにあることが信じられない」と表情をこわばらせた。

 仲嶺武夫高江区長は「またかという感じ。地元住民は米軍の弾薬類の管理のずさんさは以前から思い知らされている。米軍側に強く抗議し再発防止の徹底を求めたい」と話した。

 同訓練場内にある福地ダムや新川ダムでは、今年一月以降、ペイント弾一万五千発以上、ライフル用空砲、信号弾、手りゅう弾など計一万六千発以上の弾薬類が相次いで見つかっていて、県議会や東村議会が米軍に再発防止などを求める抗議決議案を可決している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091700_02.html

2007年8月9日(木) 夕刊 5面

「核廃絶、世界に要望」/県内13首長アピール

 【北谷】日本非核宣言自治体協議会(非核協)に加盟する県内十三市町村の首長らが九日午前、北谷町役場で記者会見し、「日本と世界各国に対し、核兵器廃絶に向けた真摯な取り組みを強く要望する」とのアピール文を読み上げ、核兵器廃絶を訴えた。会見に参加した首長らは、長崎市に原爆が投下された時間の午前十一時二分に合わせ、犠牲者に黙とうをささげた。

 久間章生前防衛相の「(原爆投下は)しょうがない」発言や非核協会長だった伊藤一長前長崎市長が凶弾に命を奪われたことなどを踏まえ、核兵器廃絶運動を盛り上げる狙い。会見には首長ら十一人が出席した。

 アピール文では、高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を修正・削除する文部科学省の検定意見を挙げ、「原爆体験の風化が懸念される長崎・広島と同様に、沖縄でも戦争体験の風化が問われている」と指摘。「非核三原則の崇高な理念を実現し、核兵器廃絶と恒久平和を実現するため平和活動をさらに推進しよう」と宣言した。

 県内の非核協加盟自治体は那覇、宜野湾、石垣、名護、沖縄、豊見城、北谷、南風原、東、読谷、北中城、中城、西原の13市町村。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091700_03.html

2007年8月9日(木) 夕刊 5面

あすにも不起訴処分/米軍ヘリ墜落

 二〇〇四年八月に起こった沖縄国際大学への米軍ヘリコプター墜落事故で、航空危険行為処罰法違反(過失犯)の疑いで書類送検されていた米軍の整備士四人について、那覇地検は十日にも処分を出す。日本側に裁判権がなく、不起訴になる見通し。

 日米地位協定によると、米軍の構成員や軍属による公務執行中の罪は、米軍当局に第一次裁判権がある。

 米側が裁判権を放棄しない限り、日本側は裁判権を行使できないが、米軍は四人を軍法会議で降格などの処分にしており、裁判権は米側が行使したとみられる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091700_05.html

2007年8月10日(金) 朝刊 1面

メア米総領事「なぜ名前知りたがる」/沖国大ヘリ墜落

県警の姿勢疑問視

 ケビン・メア在沖米国総領事は九日、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故で、米側が容疑者の氏名公表や事情聴取など県警の捜査協力要請に応じなかったことについて「日本側が(二次)裁判権を行使できないのに、なぜ県警は名前を知りたいのか逆に疑問を感じる」との認識を示した。沖縄タイムス社のインタビューに答えた。

 メア総領事は、「米側が捜査に協力していなかったとは思わない」と否定した上で、事故後の米側の対応について「米側が原因を調査し、整備ミスと判明したので関係者の処分も行い、日本側に報告した。安全向上のために整備体制の見直しもした」と説明した。

 日米地位協定で、米軍の構成員や軍属による公務執行中の罪は米軍当局に第一次裁判権がある、と規定していることにも触れ、「私の理解では、公務中の場合、米側が裁判権を行使したら日本側は行使できない。今回、米側は整備士らを処分し、(一次)裁判権を行使しているから、日本側は行使できない」と指摘した。

 また、米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書の受け取りを県などが保留していることについては「アセスに対する県の対応を見ていると、逆に移設が遅れる恐れがあると懸念している」と表明。「沖合に移動するには(辺野古沖の)長島や平島が障害になる。環境への影響も拡大する」と述べ、県などが求める滑走路の沖合移動はできないとの見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101300_02.html