月別アーカイブ: 2007年8月

沖縄タイムス 関連記事(8月8日夕刊)

2007年8月8日(水) 夕刊 1面

「集団自決」修正/知事、県民大会参加も

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述を修正・削除した高校歴史教科書の検定意見撤回を求める県民大会が予定されていることについて、仲里全輝副知事は八日、自民党県連の新垣哲司幹事長らと県庁で意見交換。県の対応について「超党派で、要請があれば(仲井真弘多知事の)参加を検討する」との考えを示した。

 意見交換後、仲里副知事は沖縄タイムス社の取材に対し「知事が参加するかどうかは日程の都合にもよるが、超党派であれば参加と(大会での)発言を検討する」と述べた。

 また「偏った政治的な集会なら参加できない。集会そのものを知事が主催することはない。教科書検定問題というのは事実検証の問題で、感情的、政治的問題ではない」との認識を示した。

 仲里副知事は同問題への別の対応として「専門家や学者らから成る組織を立ち上げ、事実を検証することも方法の一つではないか」と提案した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081700_02.html

 

2007年8月8日(水) 夕刊 1・5面

米軍校内侵入/外務省「地位協定逸脱」

 【東京】うるま市田場の県立前原高校の敷地に米軍車両が侵入した問題で、社民党の照屋寛徳衆院議員と山内徳信参院議員は八日、外務省に伊澤修日米地位協定室長を訪ね、再発防止などを米側に働き掛けるよう要請した。照屋氏らによると、伊澤室長は「明白な地位協定違反だ」と言明、米側に綱紀粛正を求めていく考えを示したという。伊澤室長は、地位協定第五条二項で定める「基地間の移動」で保護される範囲を逸脱していると説明した。

 侵入した車両は米海軍所属だが、海兵隊に貸し出していたもので、海兵隊員が運転していたことも明らかにした。ただ、行き先や同校に侵入した理由は「事実関係が特定できない」とした。

 これに対し、照屋氏らは事実関係を明らかにした上で、再発防止や綱紀粛正のために、当事者の特定と責任追及など具体的かつ有効な方策を取るよう求めたが、伊澤室長は「日米の高いレベルで協議して、綱紀粛正を図っていきたい」と述べるにとどめたという。


沖縄事務所と施設局に要請

社民県連・護憲ネット


 同問題で、社民党県連と護憲ネットワーク県議団は八日、外務省沖縄事務所と那覇防衛施設局を訪れ、米軍の当事者の特定など事実関係の公表と再発防止を要請した。

 外務省沖縄事務所では倉光秀彰副所長が「このようなことが起きないよう高いレベルで求めていく」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

米軍「指導徹底されず」/抗議の教育長に謝罪


 うるま市の県立前原高校(大城順子校長)に米海軍所有のトラックが侵入した問題で、仲村守和県教育長、県の保坂好泰基地防災統括監らは八日午前、北中城村石平のキャンプ瑞慶覧を訪れ、在沖米海兵隊外交政策部(G5)に抗議と再発防止を申し入れた。

 仲村教育長によると、対応したG5のラリー・ホルコム大佐(部長)は「(前回の侵入後)各指揮官から隊員に指導するよう伝えていたが、徹底されていなかった」と説明し、謝罪した。また、公共施設に立ち入ることのないように目的地や経路を明確にするなど、再度兵員指導を徹底する認識を示した、という。

 トラックの所属部隊や行き先などの詳細については「運用上の理由から答えられない」と述べた、という。

 仲村教育長は「装甲車であれトラックであれ、いかなるものも学校内に入ることは許されない。三度目が起こることのないよう、直ちに全兵員に再発防止の指導を徹底するべきだ」と強い口調で話した。


施設局、学校に陳謝


 【うるま】那覇防衛施設局は八日午前、うるま市田場の県立前原高校(大城順子校長)を訪ね「ご迷惑掛けて申し訳ありません。米軍に対して再発防止をきちんと申し入れしました」と謝罪した。

 施設局の立津長一業務課長は、兵士が道に迷って校内に侵入したことなどを説明。米軍の回答として「今後、県民に心配を掛けないようきちんと指導する」と伝えた。また「米軍の行動は極めて遺憾であり、厳重に注意した。米軍には常識に欠けることがあったかもしれない」と述べた。

 大城校長は「無断侵入は、傍若無人としか言えない。なぜまた同じことが起きたのか。米軍の教育は末端まで行き届いていない」と述べ、施設局に対し米軍に地位協定を守らせるよう要請した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081700_03.html

 

2007年8月8日(水) 夕刊 5面

先島のサンゴ白化深刻/高海水温が要因

 【宮古・八重山】宮古島や石垣島の周辺海域で、七月以降の高海水温が要因とみられるサンゴの白化現象が広範囲に確認されている。リーフ内側の水深の浅い部分での白化が顕著で、環境省は「海水温が高いままだと、さらに広がる可能性がある」とみている。

 気象庁によると、沖縄近海の七月の海水温は平年に比べ一―二度高い。海水を混ぜることで水温を下げる効果がある台風の発生が少ないことが原因の一つと考えられる。大規模なサンゴの白化が起きた一九九八年と状況が似ているという。

 環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターによると、石垣島の平久保、玉取崎、米原、川平石崎、御神崎、名蔵湾、白保と竹富島の東側の海岸付近で、サンゴの白化が見られる。七月下旬以降、確認情報が集中しているという。

 白化しやすいとされるミドリイシサンゴ、コモンサンゴのほか、米原や白保ではハマサンゴの白化を確認している。

 宮古島周辺でも七月中旬からサンゴの白化現象が確認されている。二〇〇四年から環境省の委託を受け調査を実施している宮古島市職員の梶原健次さん(38)は五日、同市城辺の吉野海岸で白化が進行している状況を目撃した。

 水深一―二メートル内の海岸近くでは全体の約八割、ミドリイシサンゴの約九割が白化し、うち5―10%が死滅していたという。梶原さんは「今年は台風の接近も少なく、白化の程度がかなり強いというのが実感。現状のままでも来年の産卵に大きな影響が出るのは間違いない」と話す。

 サンゴの白化は共生藻を失って、白い骨格が透け、白く見える現象。サンゴは共生藻の光合成生産物を受け取ることで大半の栄養を補給しているため、白化が長く続くと飢餓状態で死滅する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081700_04.html

 

2007年8月8日(水) 夕刊 5面

V字案修正を否定/官房長官、再度強調

 【東京】塩崎恭久官房長官は八日午前の記者会見で、防衛省が名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を県などに送付したことを受け、日米両政府が合意したV字形滑走路案を修正する考えがないことをあらためて強調した。

 塩崎長官は「二〇一四年までの代替施設の完成を実現するため、今回の方法書の送付はぎりぎりのタイミングと(防衛省から)聞いている」と送付の理由を説明した。

 県や名護市が代替施設の建設位置を沖合に移動するよう求めていることには「(在日米軍再編最終報告で日米が合意した)ロードマップで示された計画を進めていくという基本方針は変わっていない」と述べ、V字案を推進するとの認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月7日、8日朝刊)

2007年8月7日(火) 朝刊 1面

F15未明離陸 延期/嘉手納基地

 【中部】米軍嘉手納基地は六日午後、機体の入れ替えのため、米本国に向け七日早朝に予定していたF15戦闘機四機と空中給油機一機の離陸について「延期する」と発表した。理由や今後のスケジュールについては明らかにしていない。

 これに対し、基地周辺自治体の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は六日午後、同基地司令官あてに、深夜早朝の飛行中止を求める要請文を送付した。

 北谷町議会基地対策特別委員会(照屋正治委員長)は七日、委員会を開いて対応を協議する。

 野国町長は「五月に未明離陸したF22戦闘機の一部はグアム経由で日中に帰還しており、未明離陸ではない方法も可能なはずだ。米軍は(午後十時―午前六時の飛行制限を定める)騒音防止協定を順守してほしい」と訴えた。

 同基地では今年一月にF15などが二日連続で、五月にも一時配備されていたF22戦闘機十二機のうち、十機が地元の反対を押し切り、未明離陸を強行した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071300_03.html

 

2007年8月7日(火) 朝刊 2面

年内にも開始の意向/ハンセン共同使用

 在日米軍再編の最終報告に盛り込まれた米軍キャンプ・ハンセンの共同使用で、防衛施設庁は年内にも陸自第一混成団のハンセン使用を開始したい意向であることが六日分かった。ただ、七日の県と金武町などへの事前説明では、地元の反発が強いことなどを考慮し、具体的な使用開始時期など詳細には触れない方針だ。

 同庁は当初、七日に渡部厚施設部長や佐藤勉那覇防衛施設局長を県と金武町に派遣し、訓練スケジュールなどの詳細を説明する予定だった。

 ところが、報道が先行し、地元から「いま説明に来られても反対を表明せざるを得ない」との意向も伝えられたことから、同庁内部で説明内容を再検討。一方的な「通告」と受け止められ、地元との関係悪化を避けるため、今回は「共同使用に向けて理解を求めるキックオフ」(同庁関係者)との位置付けとし、担当調査官の説明にとどめる方針に変更した。

 米軍再編交付金の配分調整が進む中、共同使用の受け入れに難色を示した場合、交付金の受給にも影響しかねないため、地元側も現時点で受け入れの可否を迫られるのは避けたい意向があるとみられる。同庁は今後数回の地元との「調整」を経て、自衛隊による在日米軍基地の使用を規定した日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手する見込み。

 施設庁は七日、米軍再編交付金の配分に向けた検討状況や、キャンプ・キンザーの返還に伴うキャンプ・ハンセンへの一部施設の移転の可能性についても言及するとみられる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071300_09.html

 

2007年8月7日(火) 朝刊 28面

さんご礁保全啓発を/環境省

 さんご礁の保全活動を訴える世界的なイベント「国際サンゴ礁年2008」を来年に控え、環境省自然環境局は六日、県庁で説明会を開いた。研究者、企業、自治体やダイビング関係者など約七十人が県内での活動について話し合う「沖縄ワーキンググループ」の設立について議論した。

 一九九七年以来二度目の実施で、日本や米国、オーストラリアなど四十四カ国と、四十の国際機関が参加。それぞれさまざまな行事や活動で、さんご礁の価値や危機にひんしている状況を普及啓発する。イベントを主導する県自然保護課によると、ワーキンググループでは、県民や観光客の参加が可能で、さんご礁がある沖縄ならではの取り組みを探る。東京の推進委員会に活動の報告や提案を行い、来年の活動計画に「現場」の意見を反映させるという。

 出席者からは「サンゴについて、メンバーの共通認識が必要。まずは勉強会から始めてはどうか」「学校現場のカリキュラムに合わせた活動方針を定めた方が良い」などの意見が出た。

 県自然保護課はワーキンググループに参加する団体や個人を募集している。問い合わせは同課、電話098(866)2243。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071300_11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月7日朝刊)

[原爆症認定]

救済基準の見直し急げ

 広島市を訪れた安倍晋三首相は、国敗訴が続いている原爆症認定の問題について、「認定基準を専門家の判断の下、見直すことを検討させたい」と表明した。

 国の認定基準をめぐる裁判では原告全員、あるいはほとんどを原爆症と認める判決が相次いでおり、認定基準の見直しを求める声も高まっている。

 しかし、厚生労働省は見直しには否定的だ。このため、認定基準の緩和による救済など「政治決着」を模索する動きも出ていた。

 被爆者援護法によると、広島、長崎の被爆者は、厚生労働相の認定を受ければ月額約十三万七千円の医療特別手当が支給される。国は二〇〇一年、爆心地からの距離で推定される被ばく放射線量と、当時の年齢、性別などで発症リスクを数値化した「原因確率」を基に放射線の影響を審査している。

 安倍首相は今回、認定基準の見直し方針を明らかにする一方で、「裁判は別」と発言するなど司法の判断を仰ぐ姿勢をなお崩していない。

 この問題では、厚労省の新たな認定基準導入後、がんなどを発症した被爆者らが原爆症認定を求めて国に集団申請したが、却下されたため、処分取り消しと慰謝料支払いを求めて各地で提訴する動きが広がった。

 大阪地裁は昨年五月、原告九人を原爆症と認定、同八月には広島地裁が四十一人、今年一月に名古屋地裁で四人中二人、三月には仙台地裁が二人、東京地裁も三十人中二十一人を認定している。七月には熊本地裁が二十一人中十九人を認定した。

 判決は認定基準の不備を指摘。基準の機械的な適用を批判し、被爆直後の症状や疾病の内容などを総合的に考慮すべきだとしている。

 原告の平均年齢は七十六歳を超えており、提訴後に三十五人が死亡した。「国の認定基準の機械的運用では不十分」とする新基準導入前の最高裁判決を踏まえた原告勝訴の流れができつつある中で、高齢の被爆者にこれ以上の負担を強いるのは酷である。

 安倍首相の発言をめぐっては「参院選で追い詰められた首相のポイント稼ぎ」など、冷ややかな見方もある。選挙後の状況を見れば当然だろう。

 それでも、全国各地の原告らはかたずをのんで見守っているはずだ。懸念を払しょくできるかどうかは、ひとえに今後の首相の対応にかかっている。

 放射線の人体への影響は未解明の部分もあり、新基準の設定は容易ではないようだが、問題を先送りする時間的な猶予はない。国は控訴を断念して原告と真摯に向き合い、被爆者の救済に全力を挙げるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070807.html#no_1

 

琉球新報 社説

原爆症認定 新たな基準作りを急げ

 広島、長崎の被爆者や遺族から批判を浴びている原爆症の認定基準をめぐる問題で安倍晋三首相は「認定基準を専門家の判断の下、見直すことを検討させたい」と表明した。

 原爆症の認定申請を却下された被爆者が処分取り消しなどを求めた各地の集団訴訟で、国は7月30日の熊本地裁判決を含め6連敗している。

 司法判断は既に固まっているとみるべきだ。原爆投下から62年。被爆者の高齢化が進む。残された時間は少なく、救済は待ったなしである。

 見直しを求める意見は与党内にもある。もろもろの事情を酌めば、安倍首相は、見直しの検討指示の段階にとどまるべきではない。認定枠の拡大に向け、抵抗も予想される厚生労働省に対し、実態に合った認定基準作りを急ぐようもっと踏み込んだ指示を出す必要がある。

 原爆症の認定をめぐる一連の訴訟で争点となったのは、認定基準である。昨年5月の大阪地裁判決は、放射線と発病との因果関係を明確に認める画期的な判断を下した。国の認定審査の誤りを指摘し、被爆者の幅広い救済を促した判決はその後に続く司法判断の枠組みとして定着しつつある。

 国の敗訴に終わったこれまでの判決で指摘されたのは「科学的根拠を厳密に求めると、被爆者救済という被爆者援護法の目的に沿わない」というものだ。現行の認定基準は、爆心地からの距離などを基に推定される放射線量をベースに年齢、性別などの要素を加味し認定している。

 しかし、判決はこの審査の在り方について「機械的に当てはめて放射線に起因することを否定している」と批判。「被爆状況など個々の被爆者の個別的事情を踏まえた判断をする必要がある」と政府に反省を強く迫った。

 最新の熊本地裁判決では、糖尿病のほか、変形性関節症など運動機能障害の症状にも救済範囲が拡大された。放射線の人体への影響にはまだ未解明の点がある。それを考慮した妥当な判断だ。

 首相は見直し検討の一方で「裁判は別だ」とも語っているが、原告らは肉親を失い、病に苦しめられるなど辛酸をなめてきた。平均年齢は70歳を超え、亡くなった人も多い。国は控訴するべきではない。

 原爆症の認定者には、月額約14万円の医療特別手当が支給される。だが認定者は、被爆者健康手帳を持っている者の1%にも満たない。厳格な基準に阻まれ、申請者のうち認定されるのは2、3割にとどまっている。

 国は被爆者の切実な訴えに耳を傾け、早急に新たな基準作りに取り組んでほしい。

(8/7 9:49)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26098-storytopic-11.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 1面

アセス方法書送付/普天間政府案で防衛省

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に向け、防衛省は七日午後、政府案に基づく佐藤勉那覇防衛施設局長名の環境影響評価(アセスメント)方法書を県に送付した。県は名護市が求める滑走路の沖合移動を主張し、現段階で方法書を送付されても、知事意見の取りまとめに向けた審査を行わない意向を示しており、普天間移設問題をめぐる県と政府の交渉は重大局面を迎える。

 施設局幹部らは同日正午すぎ、県庁二階にある返還問題対策室を訪ね、方法書を提出した。

 国からの方法書送付について仲里全輝副知事は七日午前、「前提条件が整っておらず、方法書を受理できるわけがない。仮に強行したとしても文書で受理しない旨を防衛省に通告するつもりだ」との考えを示した。ただ、方法書の送付を受けた場合、県は法律上、受け取りを拒否できないため、難しい判断を迫られそうだ。

 県は同日夕、知事コメントを発表する。方法書送付を受け、国と県などは来週にも、普天間移設に関する協議会を内閣改造が想定される二十七日前に開催する方向で調整に入るとみられる。

 小池百合子防衛相は二日に仲井真弘多知事と面談した際、普天間代替施設の建設について「沖縄の海を守ることに力点を置いている」と述べ、環境への配慮を強調。海域の埋め立て面積が増大することから、沖合移動は困難との見方をあらためて示していた。

 仲井真知事は二月に守屋武昌防衛事務次官と面談した際、アセス後に修正の可能性があるとの提示を受けたことを明らかにした上で「県は現行のV字案に反対しており、後先が逆。新しい案にして、名護市の考えも聞いて対応するのが筋」と指摘。環境アセスメントの先行実施を容認しない考えを示している。

 県首脳は、政府案に基づく方法書が送付された場合、「フリーズ(凍結)状態にする」と主張。県が知事意見を出さない場合、国から「不作為」を理由に行政訴訟を起こされる可能性もあるが、訴訟も覚悟で臨む見解を示していた。

 方法書は県への送付と同時に、一カ月間の公告縦覧に付される。縦覧後、県は住民らからの意見をまとめた意見概要を受理し、六十日以内に知事意見を国に提出する。

 防衛省はキャンプ・シュワブ周辺海域で六月にミドリイシサンゴの産卵が始まるため、「五月には調査準備に着手する必要がある」と主張。アセスに基づかない事前調査の位置付けで海域の現況調査に着手している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_01.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 1面

守屋次官、今月末退任/防衛相方針

 【東京】小池百合子防衛相は七日までに、防衛省の守屋武昌事務次官を今月末で退任させ、後任に西川徹矢官房長を起用する方針を固めた。守屋氏は今年三月、定年を延長しており、在任期間は異例の五年目に入っていた。守屋氏の退任に伴い、同様に定年延長していた佐藤勉那覇防衛施設局長も退任する。

 民主党など野党が反対するテロ対策特別措置法が焦点となる秋の臨時国会に向けて留任説もあったが、在任期間が異例の長さとなったため、交代を決めた。

 守屋氏は一九七一年に防衛庁入り。官房長、防衛局長を経て二○○三年八月に事務次官に就任。米軍普天間飛行場移設など沖縄の基地問題や在日米軍再編に長く携わった。ただ、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設では、現況調査(事前調査)への海上自衛隊動員を強行するなど、厳しい姿勢が目立っていた。

 西川氏は一九四七年六月生まれ。大阪府出身。京大卒後、七二年に警察庁入庁。二〇〇五年八月から現職。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_02.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 5面

うるま議会 抗議決議へ/相次ぐ米車両学校侵入

 【うるま】米軍車両とみられるトラックが、うるま市田場の前原高校(大城順子校長)の敷地内に侵入した問題で、うるま市議会基地対策特別委員会(東浜光雄委員長)は七日午前、九日に臨時会を開き、再発防止などを求める意見書と抗議決議を提案することを決めた。うるま市基地対策課では車両の所属などについて那覇防衛施設局を通し米軍側に照会しているが、同日午前の時点で回答はないという。一方、県教育庁は「度重なる米軍の傍若無人な行動に抗議する」などとした抗議文を決定。午後にも仲村守和県教育長が那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所に再発防止を求めて抗議する。

 うるま署は七日午前、前原高校敷地内で、侵入した車両のタイヤ痕などを調査した。

 同市では先月十八日にも、市内にある県立沖縄高等養護学校内に米海兵隊の装甲車が侵入していおり、うるま市議会は同二十六日に臨時議会を開いて抗議決議と意見書を可決している。

 米軍関係の教育現場への車両侵入が相次いだことに、市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「また同じことが起こってしまった。抗議決議や意見書を提出しても原因の説明は得られず、それで(事件が)終わった状態になってしまっている」と指摘。

 米軍側が日米地位協定の運用上の都合を理由に事故の原因を説明しないことについて「地位協定の行き詰まりであり、これでは県民が納得しない」と話し、県の協力を得て米軍側に再度原因究明を求めていく意向だ。

 うるま市も抗議行動を行う予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_04.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 5面

北谷町議会 中止要請へ/未明離陸

 【北谷】米軍嘉手納基地がF15戦闘機の未明離陸を予定している問題で、北谷町議会基地対策特別委員会(照屋正治委員長)は七日午前、臨時会を十日に開き、未明離陸の中止と深夜・早朝(午後十時―午前六時)の飛行制限などを定めた騒音防止協定の順守―などを求める意見書を提案すると決めた。あて先は首相や外相、防衛相など。

 意見書案は、五月にF22戦闘機が米本国向けに帰還した際、一部が他基地を経由して嘉手納基地を日中に離陸したと指摘。「未明離陸の回避は可能であり、いかなる理由があるにせよ容認できない」としている。

 照屋委員長は「深夜・早朝の安眠する時間帯の離陸は、大きな住民負担があり容認できない。中止要請の決議までに未明離陸を強行すれば、意見書に加えて抗議決議も審議したい」とした。

 基地特委は、前原高校の敷地内に米軍車両とみられるトラックが侵入した問題についても臨時会前に開催する基地特委で対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_05.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 4面

山内徳信氏が初登院/臨時国会

 【東京】七月二十九日投開票の参院選比例代表で初当選した山内徳信氏(72)=社民=が臨時国会召集日の七日午前、初登院した。沖縄選挙区で二期目の返り咲きを果たした糸数慶子氏(59)=無所属=は約十カ月ぶりに登院した。両氏は最優先で取り組む課題に、高校歴史教科書から日本軍の関与が削除された教科書検定問題を挙げ、「師弟コンビ」で沖縄の課題解決に向けて連携する意欲を示した。

 山内氏は紺のスーツに、出馬表明でも身に着けた読谷山花織のネクタイで国会入り。教科書検定の撤回を最優先に挙げた上で「辺野古のV字形の海上基地や東村高江のヘリパッドを造らせないことにも全力を尽くしたい」と述べ、文部科学省や防衛省の関係者と早期に面談する意向を示した。

 糸数氏は白のスーツ姿。「付託された議席の重みをあらためて感じている。(恩師の)山内氏と一緒に、沖縄と国政の課題解決に取り組めるのは大きな喜びだ」と意気込んだ。教科書検定問題については「戦争体験のない世代に歴史認識をきちんと伝えるため、元の正しい記述に戻していくことが真っ先にやることだと思っている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_08.html

 

2007年8月8日(水) 朝刊 1面

公告縦覧 来週開始/県・名護市、受け取り保留

「普天間」アセス方法書提出

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に向け、防衛省が七日、環境影響評価(アセスメント)方法書を県に提出したことを受け、県の仲里全輝副知事は同日午後、県庁で記者会見し、方法書の受け取りを保留し、知事意見などのアセス手続きに着手しない意向を明らかにした。しかし県は法律上、受け取りを拒否できず、那覇防衛施設局はアセス法に基づき、来週中に公告縦覧手続きを開始する方針だ。防衛省は同日、県のほか名護市と宜野座村にも方法書を送付。名護市も県と歩調を合わせ、アセス手続きには応じない考えだ。

 方法書送付を受け、県は数日中にも、仲井真弘多知事名で小池百合子防衛相と佐藤勉那覇防衛施設局長あてに、現段階ではアセス手続きには応じられない、との県の見解を正式に申し入れる。また県は、公告縦覧の場所として県庁など関連施設を提供しない考え。

 仲里副知事は会見で「前提条件が整わない中、方法書が提出されたことは誠に遺憾」と表明。県と名護市が求める滑走路の沖合移動や普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態について、政府の前向きな対応が示されない段階で方法書が提出されたことを批判した。さらに「単なる行政的な事務処理の一手続きとして進めることはできない」と主張。方法書の受理を保留する考えを示した。

 アセス後に行われる国から県への埋め立て申請手続きに関しても仲里副知事は「政府が(県の意向を)無視して強行していく過程があれば承認申請の場合にノーという場合もあり得る」とし、応じない意向を示唆。調査範囲について方法書は、現在海域で実施している現況調査と同様の範囲まで拡大しているとみられる点について、仲里副知事は「方法書の中身については精査していない」と断った上で「法律上何の意味合いもない」との認識を示し、政府案を前提とした方法書である以上、受理しない方針をあらためて示した。

 一方、防衛省幹部は「環境影響評価法六条に基づく『送付』はあくまでも送付であり、協議などを行う必要はなく、送付さえすれば効力を有する」との解釈。施設局は公告縦覧については「来週に行う予定」とし、県の意向とは無関係にアセス手続きを進める考えだ。

 名護市の島袋吉和市長は七日、「県や名護市の考え方について協議を行うことなく方法書を提出したことについて大変遺憾。受け取ることはできない」と述べた。宜野座村の東肇村長は「宜野座村としては、従来通り村内上空を飛行しないよう、施設局に求めていく。アセス手続きについては、県や名護市と歩調を合わせて対応していきたい」と話した。


調査範囲は政府案前提


 【東京】米軍普天間飛行場代替施設の建設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書で、V字形滑走路の位置は、日米で合意した名護市キャンプ・シュワブ沿岸部の位置に明記され、政府案を前提とした内容となっている。海域の調査範囲については、名護市嘉陽集落の東部にあるバン崎から、同市久志集落の南部にある宜野座村前原付近までのエリアを設定。アセスの前段として防衛省が実施している現況調査(事前調査)と同じ範囲とみられる。

 辺野古沖を埋め立てる従来案の調査範囲に比べると、安部岬からバン崎に及ぶエリアを新たに追加。南北方向には拡大しているが、全体的に陸地寄りとなっており、V字形滑走路の沖合移動を求める名護市にとっては受け入れ難いと見られる内容だ。

 方法書によると、公有水面の埋め立て面積は、約百六十ヘクタール(代替施設本体部分約百五十ヘクタール、護岸部分約十ヘクタール)。埋め立てに使う土は約二千百万立方メートルを計画。辺野古ダム周辺の土砂約二百万立方メートルを活用、残り約千九百万立方メートルは購入する計画だ。護岸は延長約四千八百メートルを計画。そのうち深い水深に対応する「ケーソン護岸」を千四百メートル、浅い水深に対応する「傾斜堤護岸」を三千四百メートルと想定している。

 護岸のブロックなどを製作するための陸上ヤードも大浦湾西岸海域(大型ブロックを製作)、辺野古地先水面(小型ブロックを製作)に設置。そのほか、製作済みケーソンの仮置きのための海上ヤードを大浦湾中央海域の海底に想定している。

 一方、飛行場の使用を予定する航空機の種類については「米軍回転翼機及び短距離で離発着できる航空機」と明記。現在普天間飛行場で運用しているヘリや固定翼連絡機を想定したものだが、将来的には垂直離着陸機MVオスプレイの配備も予想される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081300_01.html

 

2007年8月8日(水) 朝刊 27・26面

強権手法に反発噴出

 「地元を敵に回すつもりか」「小池さんは無知だ」―。防衛省が七日、米軍普天間飛行場代替施設の建設に向け、環境影響評価(アセスメント)方法書の送付を強行した。一方的に書類を押し付けられ、ぶぜんとした表情の県や名護市の幹部。容認派の市民からさえ、反発の声が上がった。環境問題の専門家は、非科学的な調査を懸念した。

 【名護】防衛省が方法書を名護市などに送付した事に、地元の反対派は環境への影響を危惧、容認派からも地元との協力関係への悪影響を懸念する声が上がった。

 辺野古区出身の島袋権勇名護市議会議長は「一方的に送付するやり方は理解できない。市議会でも沖合移動を決議しており市の立場を支持する。政府は地元と協議会を開く努力をしないのか」と強引な手法にいら立った。同区代替施設等対策特別委員会の古波蔵廣委員長は「何を焦っているのか。地元の感情を悪化させては敵に回すだけだ。久辺三区、市、県と連携していく」と憤った。

 一方、同区有志でつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「一歩進んだ感じ」と移設作業の進展を歓迎。「時限立法で出来高払いの米軍再編推進法も成立した。作業が早めに進み、地元が要望する振興策を実現させてほしい」と話した。

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の東恩納琢磨団長は「小池さん(防衛相)はジュゴンの藻場の消失面積が少ないから『環境に配慮している』というが無知だ。辺野古崎を挟んで埋め立てれば潮の流れが変わり、人間で言えば首を絞めるようなもの。ジュゴンは救えず海ガメなど、地域の生態系への影響は大きい」と指摘した。

 また、平和市民連絡会の平良夏芽共同代表は「基地建設のためのアセスで到底容認できない。白紙撤回まで反対の声を大きな渦にしていきたい」と批判した。


県、政府の「暴走」懸念


 「米軍統治下みたいに県民意思を無視して(基地建設を)強行するのか」「基地と向き合うことになる地元に対する政府の姿勢に疑問を持たざるを得ない」。七日午後、県庁で開かれた県側の記者会見。政府が不意打ちに近い形で方法書を提出したことに仲里全輝副知事は終始、ぶぜんとした表情で厳しい言葉を続けた。

 会見の冒頭、知事コメントを淡々と読み上げながら、仲里副知事は率直な思いも語った。「沖縄の米軍基地は非民主的な形で、所有者の権利を無視して強権的に接収され出来上がった。この経緯を思い出す」。一呼吸置いて、「(今後は日本)政府がそういうことをまたやるのか、という思いもある」と、気抜けした口調で漏らした。強権的な対応への怒りより、膠着状態の打開に突っ走った政府の「暴走」への懸念を強くにじませた。

 施設局の幹部らは正午すぎ、県庁の返還問題対策課を訪れた。上與那原美和子課長は「受け取れないときちんと申し上げたが、向こうは置いていった」。その場で、互いに「理解してほしい」との応酬があったという。

 名護市役所には、午後二時すぎに姿を見せ、やはり拒否する市側を押し切って提出した。市幹部は「地元が納得していないのに、どうしてこのタイミングなのか理解できない」と首をひねった。


     ◇     ◇     ◇     

「アリバイづくりだ」/環境専門家、厳しく指摘


 防衛省が提出した方法書に対して、環境の専門家から批判が相次いだ。沖縄大学学長の桜井国俊教授は「事前調査で環境を破壊した上、方法書でも航空機の種類を明示しない。アセス法に違反しながら、環境配慮のアリバイをつくる犯罪的な行為だ」と厳しく指摘。

 建設場所をめぐる国と地元の対立に触れ、「両者の案と、環境影響が大き過ぎれば中止するという三つの選択肢を用意するのが本来のアセスだ」と、科学的に比較検討するよう求めた。

 方法書は、ジュゴンについて「海外で飛行場など人間活動との共存の有無について情報を入手する」と記述。ジュゴンに詳しい水生哺乳類の研究者、粕谷俊雄さんは「生息地を破壊する工事との共存例など聞いたことはないが、あっても沖縄に当てはめられるか疑問だ」とした。

 ジュゴンは環境省が絶滅危惧種に指定したばかり。「頭数が少な過ぎて、ここまでなら生息環境を破壊しても大丈夫だと許容する余地はない」と断言し、計画自体の見直しを求めた。

 事前調査では、すでにサンゴの着床具が設置されているが、方法書でもその場所は明らかにされなかった。沖縄リーフチェック研究会の安部真理子会長は「海流や砂が堆積しないことが場所選定の条件になるが、公開しなければ検証できない。学生の論文なら失格だ」と、手厳しい評価を下した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081300_02.html

 

2007年8月8日(水) 朝刊 2面

射撃や爆破訓練予定/ハンセン共同使用で施設庁説明

 防衛施設庁の原田実施設調査官らが七日、県と金武町役場を訪ね、在日米軍再編で日米が合意した米軍キャンプ・ハンセンの共同使用で陸上自衛隊が射撃や爆破、車両を使った訓練を実施すると説明した。町役場で説明を受けた金武町、恩納村、宜野座村の三首長はいずれも共同使用について「地元の負担増になる」と反対の意思を伝えた。訓練の開始時期や具体的な訓練場所などについての言及はなかった。原田施設調査官は三町村が米軍再編交付金の支給対象になることを明らかにした。

 県への説明後、ハンセンの共同使用について原田施設調査官は「地元は負担増と懸念を抱いているので自衛隊、米側と詰めた内容についてよく説明し、理解を得られるようになればいい思っている」と述べた。

 県の上原昭知事公室長は「自衛隊が共同使用することによって地域の負担につながらないよう、地元に十分説明し理解を得るよう求めた」と強調。その上で、防衛施設庁が説明を重ねた後、共同使用を進めていくとの見通しを示した。ハンセンの共同使用に伴う再編交付金については「共同使用も米軍再編の一環なので自衛隊が使用することで負担が増えるのであれば当然(交付)対象になるということだった」と述べた。

 金武町役場では、ハンセンに関する三町村連絡協議会(三連協、会長・儀武剛金武町長)で、三町村の首長らがハンセンの共同使用などについて説明を受けた。儀武町長は「レンジ4の都市型戦闘訓練施設は使用しないと明言していた。地元としては共同使用は、現状では負担増になるので反対だと伝えた。共同使用に反対しているので、再編交付金については、具体的に聞かなかった」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081300_04.html

 

2007年8月8日(水) 朝刊 27面 

米軍、侵入認め「遺憾」/うるま市

 【うるま】米軍トラックがうるま市の前原高校(大城順子校長)敷地内に侵入した問題で、在日米海兵隊基地司令部は七日午後、うるま市の照会に対して、米海兵隊員が運転中に道に迷って学校内で方向転換したことを認め「事件によって生じた不安について遺憾に思う」と回答した。那覇防衛施設局を通して文書で答えた。

 トラックが所属する部隊や行き先、訓練の内容は明らかにしていない。トラックは海軍の所有だという。文書によると、トラックは(学校の)駐車場内で安全に方向転換後、訓練のための運送業務を続けたという。

 また、うるま市では同日夜、前原高校、沖縄高等養護学校を含む市内の七つの県立学校の校長やPTA会長が参加した連絡協議会が開かれ、今後の対応策などを話し合った。

 前原高校の有銘清教頭は「沖縄高等養護学校内に装甲車が侵入して、ひと月もたたないうちに事件が発生したことは大きな問題だ」と指摘。沖縄高等養護学校の塩浜康男校長は「米軍側はいったいどういう感覚をしているのか。危機回避の方法として、正門を閉めることも検討している」と怒りを隠せなかった。

 前原高校PTAの具志川光彦会長は「市内のどの学校でも事件が起こる可能性がある。不審者対策と同様に、危機意識を持って対策を立てていきたい」と呼び掛けた。


仲村県教育長 施設局に抗議


 うるま市の前原高校の敷地内に米海軍所有のトラックが侵入した問題で、仲村守和県教育長、県の保坂好泰基地防災統括監らは七日午後、那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所を訪れ抗議した。

 仲村教育長らは七月二十三日に、同市の沖縄高等養護学校への米海兵隊装甲車侵入で抗議したばかり。「再び米軍の暴挙が発生し、学校の安全が脅かされたことは異常事態だ」と厳しく批判。米軍に再発防止の徹底を強く申し入れるよう要請した。保坂統括監も「全軍で隊員教育を徹底してほしい」と要望した。

 同局の池部衛次長は無断侵入の経過を報告、「隊員の綱紀粛正を強く申し入れた」と述べた。外務省沖縄事務所では倉光秀彰副所長が対応した。

 また、高教組、沖教組、沖縄平和運動センターの三団体も同日、同局を訪れ、安全確保が徹底されるまでの間、米軍基地外での車両の運行中止を米軍当局に強く働き掛けるよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月8日朝刊)

[米軍車両再侵入]

舌の根も乾かぬうちに

 果たして日本国内で、市街地を迷彩色を施した軍隊の車両が、真昼から堂々と走り回る地域がどれほどあるのだろうか。

 七日午後、うるま市田場の県立前原高校の敷地内に米軍車両が侵入した。目撃した学校関係者によると、米軍車両は、中庭を一周して出て行ったという。時間にしてわずか一分前後。人身、施設への被害はないものの、実に由々しき問題だ。

 同市内にある県立沖縄高等養護学校に米軍装甲車が侵入したのは半月ほど前のことである。前回の問題で、米軍は再発防止を示していたのではなかったか。それが舌の根も乾かぬうちに二度目の侵入である。安保条約を盾にした米軍の「何でもあり」の行為は絶対許されるものではない。

 まず指摘したいのは米軍による沖縄県民の権利の侵害である。沖縄は先の戦争で、県民の意に反する形で米軍に土地を接収され、その後六十数年も基地として使用されている。だが、われわれは生命、財産の権利侵害まで認めてきたことはない。

 今回の問題で米軍は日米地位協定に基づく「施設間の移動」との立場をとっている。だが、現実的に県民の生活の場である公道が日常的に軍事利用されているのは明白だ。

 数年前、沖縄自動車道が米兵の大型トラックの運転訓練に使用されていることが明らかになった。朝夕の出勤、帰宅時間に遭遇する米軍の大型車にヒヤっとしたドライバーも多いだろう。

 確かに一連の軍車両侵入という出来事は、目に見える被害はなかった。しかし、平和に暮らす権利を侵害され、事故に結び付く危険性という日常の中での精神的苦痛は政府が考える以上に大きなものがある。

 政府は基地面積の縮小によって負担を軽減していると主張する。しかし、駐留自体が負担だということになぜ目を向けようとしないのか。基地の整理・縮小と、海兵隊などの撤退を求める理由はそこにこそあり、政府はそのことを真摯に受け止めるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070808.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月8日朝刊)

[アセス方法書送付]

県民の怒り無視するか

 防衛省はなぜ地元を無視して強引に事を運ぼうとするのだろうか。普天間飛行場の代替地となる名護市辺野古キャンプ・シュワブ沿岸部で実施する環境影響評価(アセスメント)のことだ。

 防衛省は政府案に基づくアセス方法書を県に送付したが、名護市と県、国の協議が三者の溝を埋めるほどきちんと進められた形成は全くない。

 「沖合移動」を求める名護市に対し、「変更せず現計画通り」とする政府の間で意見は隔たったままだ。

 仲井真弘多知事も現行案の沖合移動と、三年をめどに「普天間」を閉鎖状態にすることを政府に求めている。つまり、これが県の基本姿勢なのに何一つクリアされていない。

 さらに忘れてならないのは、多くの県民がシュワブ沿岸部への「新基地」建設だけでなく県内移設に反対しているということだ。その声を一切無視した那覇防衛施設局の手法には、どうしても異を唱えたくなる。

 これでは見切り発車であり、「県民、地元の意見はもう聞かない。国の方法で移設を推し進める」というようなものだろう。

 強権を発動して事をなそうとするのは、県民を愚弄する行為と言っていい。強行すれば地元住民との衝突は必至であり、このような手法を認めるわけにはいかない。

 仲里全輝副知事は「前提条件が整っておらず、方法書を受理できるわけがない。仮に強行したとしても、文書で受理しない旨を防衛省に通告するつもりだ」と述べている。

 当然であり、地元の意向を無視した動きには毅然とした態度で反対の意思を示してもらいたい。

 ただ、県が反対しても方法書は法律上、受け取りを拒否できない。今回の場合、一カ月間公告縦覧に付され、県は住民らの意見をまとめた意見概要を受理し、六十日以内に「知事意見」を国に提出しなければならないという。

 県が方法書を受け取らず知事意見も出さなければ、国から不作為を理由に行政訴訟を起こされる可能性もある。

 とはいえ、海域現況調査や海上自衛隊の大浦湾派遣、今回のアセス方法書送付など防衛省の強引さは目に余る。国への不信感は高まっているのであり、県の対応を注視していきたい。

 方法書送付は確かに行政手続きの一つである。だが、防衛省がなし崩し的に新基地建設を進めていけば、地元だけでなく県民の反発を買うのは間違いない。県民の胸中には憤怒のマグマが渦巻いているのであり、政府は怒りの大きさを認識する必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070808.html#no_1

 

琉球新報 社説

米軍車両侵入 本当に兵士を教育したのか

 またしても米軍車両が県立高校に無断で侵入するという由々しき事態が6日に発生した。米海兵隊の装甲車が7月18日に県立沖縄高等養護学校に侵入してから1カ月もたっていない。

 今度は米海軍のトラックだったが、運転していたのは、やはり海兵隊員である。

 高等養護学校侵入後、在沖海兵隊は「良き隣人として再発防止のため、文化の違いについて(兵士の)教育に努めたい」と、抗議に訪れた仲村守和県教育長に謝罪した。

 それにもかかわらず学校への侵入が再発したのは一体どういうことか。兵士に対し、具体的にどのような指導がなされたのだろうか。

 「教育に努める」という言葉は口先だけで、実際は何の対策も講じていなかったのではないか。疑念と不信感は強まるばかりだ。

 学校関係者などによると、6日午後2時44分ごろ「NAVY」(海軍)と記されたナンバープレートを付けたクリーム色のトラック1台が、うるま市の県立前原高校に、正門から無断で乗り入れ、敷地内のロータリーを時計回りに一周して走り去った。

 車両は2トントラックで、運転席と助手席に軍服を着た外国人が乗っていた。ロータリーを回る際にタイヤを内側の縁石に接触させたという。

 米軍は、無断で学校敷地内に乗り入れた経緯と理由を明らかにしてもらいたい。その上で、兵士に対する教育を徹底し綱紀粛正を図り、二度と同様の事態を引き起こすことがないように厳しく対処すべきだ。

 安心して学習に専念できる環境であるべき学校施設内に、米軍車両を許可なく乗り入れる兵士の行為は、生徒の安全を脅かすものであり、非常識極まりない。

 学校を米軍の提供施設とでも勘違いしているのではないか。占領意識が丸出しだ。

 こうした暴挙が沖縄で繰り返されるのは、米軍に対し毅然(きぜん)とした態度で対処してこなかった日本政府の責任であると言わざるを得ない。

 政府は、米国側に強く抗議し、具体的な再発防止策を示すよう要求すべきだ。

 日米地位協定は、第5条で米軍車両が日本国内で施設・区域間を自由に移動する権利を保障しているが、学校施設に断りなく侵入してもいいとは、どこにも書いていない。

 政府は、高等養護学校を含め一連の学校施設への侵入が地位協定上も問題があることをきちんと示し、猛省を促してもらいたい。

 米軍は本当に「良き隣人」を自任するのなら、県民の安全を脅かすような行為をしないように、細心の注意を払うべきだ。

(8/8 9:56)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26130-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月8日)

2007年8月6日(月) 朝刊 21面

沖縄も模索 体験者・2世協力 きょう広島原爆忌

 六十二年前のきょう、米軍が広島市に原爆を投下した。県内にも広島、長崎で被害に遭った被爆者が三百人ほどいるとみられている。沖縄戦の陰に隠れがちな中、十年ほど前から語り部になったり、写真展を開いたりして県内でも核兵器の恐ろしさを訴える活動が続いている。だが、被爆者の高齢化が進み、体験の伝承も難しい。被爆者や被爆二世は「沖縄戦と原爆投下は、米国の沖縄統治戦略でつながっている」と、県民に関心を持つよう訴えている。(吉田啓)

 一九四五年八月六日の朝。当時十三歳で広島市の女学校一年生だった比嘉幸子さん(75)=那覇市=は、発熱し自宅で静養していた。戦時協力で遅れがちな勉強が気になり、机で教科書を開いていたとき原爆がさく裂した。

 すさまじい爆風でふすまが背に倒れ、割れた窓ガラスが足に突き刺さった。仕事に出て市内で被爆した母は半身にやけどを負い、命からがら帰宅した。放射能を含んだ塵が舞い上がり黒い雨が降った。市街地では青い太陽のようなリンの球体が立ち上った。

 終戦後、母の実家がある沖縄に戻った比嘉さんが、体験を話し始めたのは十一年前から。生活に追われ、「放射能が被爆者から伝染する」などの偏見もあり、体験を語る余裕はなかった。

 だが、戦後五十年目の節目に広島市を訪ね、慰霊碑に刻まれた亡くなった級友たちの名をたどって決心がついた。一人一人の顔が浮かび、「語り部になり、伝えなければ」と思った。

 以来、県内の中学校や大学で語り部を続けている。気掛かりなのは後継者だ。副理事長を務める県原爆被爆者協議会でも、体験を話す人はわずかしかいない。比嘉さんの次の世代の県内被爆者は、被爆当時、三歳未満で語るほどの記憶がない。

 一方で、比嘉さんが心強く思うこともある。今月一日、沖縄市役所で反戦、反核を訴える写真展が始まった。主催の「沖縄原爆展を成功させる会」の事務局員として金城辰也さん(41)=同市=も参加した。

 辰也さんは被爆二世だ。五年前に肺がんで亡くなった父の文栄さんは長崎の造船所で被爆した。同協議会や同会の会長を務め、体験談を話して回るなど県内被爆者の先頭に立ってきた。だが、家族には体験を話さなかった。

 文栄さんの死後、父の講演記録や開催していた写真展のことを調べるうちに、当時の戦況から日本を降伏させるのに原爆投下は不要だったこと、米国が戦後交渉を有利に進め、沖縄を完全な統治下に収めるためもあり広島、長崎に原爆投下したことなどを知った。

 昨年夏、辰也さんは長男を連れて、広島市を訪れた。原爆のことを知ってもらうためだ。「沖縄戦も原爆投下も、別々の出来事ではなく、つながっている。どちらも、沖縄の人たちにしっかり伝えていかなければ」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708061300_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月6日朝刊)

[広島・原爆の日]

あらためて核廃絶誓う


唯一の被爆国の責任

 広島と長崎に原爆が投下されて六十二回目の夏が来た。鎮魂の時を迎えて、被爆者や遺族、核廃絶を希求する人々は困惑し、いつもと違う重苦しい空気を感じているのではないか。

 防衛庁が「省」に格上げされ、その初代防衛大臣に就いた長崎県選出の久間章生衆院議員の発言がその原因だ。

 「長崎に落とされて悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で、しょうがないなと思っている」

 原爆投下を「しょうがない」と言い放つこと自体、許されることではない。だがこの背景には、昨年来、日本の核保有に言及したり核論議を認めようとする動きがあるのではないか。

 自民党の中川昭一政調会長が「核があることで攻められる可能性が低くなる。当然議論はあっていい」と述べたのは、昨年十月の安倍内閣発足直後だ。これに呼応して、麻生太郎外相は「(核保有の)議論まで封殺するのはいかがか」と答えている。

 笹川尭党紀委員長に至っては、核兵器を「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」という非核三原則の見直し論も必要との考えを示している。

 核兵器をめぐる論議を否定するものではもちろんない。しかし、それはあくまでもヒロシマとナガサキで身をもって体験した立場からのものでなければなるまい。

 核論議は核廃絶を求めることが大前提なのであり、「核開発」や「核保有論」ではないということだ。

 久間、中川発言から垣間見えるのは、国民の中にある核に対する意識が時の流れとともに薄れ、「絶対に核保有は許さない」という認識と緊張感がなくなりつつあることである。

 私たちに求められているのは、もう一度被爆者の体験を基にした「原爆の記憶」を一人一人がしっかりと受け継ぐことだ。そして、それを根気強く次代に継いでいく意志である。

 そうでなければ被爆の実相を世界に発信することは難しくなる。唯一の被爆国がなすべき責任はそこにこそあり、それが私たちの義務だということを肝に銘じたい。


米国の政策に「NO」を


 秋葉忠利広島市長は、きょうの平和宣言で「謙虚に被爆の実相と被爆者の哲学を学び、米国の時代遅れの誤った政策にはノーと言うべきだ」とし、政府に対して米国に核廃絶を訴えるよう求めていくという。

 米国からはしかし、ブッシュ政権が次世代の新型核として「信頼性のある代替核弾頭(RRW)」の研究を進め、一年以内に開発着手の検討に入ったという報道も聞こえてくる。

 地下深く造られた司令部施設や兵器などの貯蔵施設をピンポイントで攻撃できる小型の貫通型核兵器構想しかり。これらを「ならず者国家」や「国際的なテロ組織」に対して使用しようとの思惑が見て取れるのだから恐怖は倍増する。

 包括的核実験禁止条約(CTBT)に反対するブッシュ政権の動きは、「核の不平等」を拡散する行為といってよく、ヒロシマ、ナガサキから何も学んでいないと断ずるしかない。

 私たちが政府に要望するのは、このような米国の動きへの明確な反意である。

 日本は国際社会で核廃絶への指導力を発揮していく責務があり、決して「核保有に興味を抱く」ことではないということをあらためて強調したい。


被爆者の声発信してこそ


 安倍晋三首相は官房副長官時代に早稲田大学で講演し「憲法上は原子爆弾も小型であれば憲法違反にはならない」と話したことがある。本当にそうだろうか。

 世界には米国とロシアなどが保有する核兵器は約三万発あるといわれている。広島型の百四十七万発分に当たり、世界人口約六十六億人の三十倍を超える二千億人を殺せるほどの量だ。

 冷戦時代には確かに抑止力だけで「使えない核」だった。だが、いまではより小型化した「使える核」が開発されつつあるというのだから、年月は人類を賢くしてきたとはいえない。

 被爆から六十二年。核廃棄を訴え続けてきた被爆者の声も核保有国の為政者の耳には届かず、核廃絶への道筋は全く見えていないというのが実情だ。

 とはいえ私たちは核を容認しないし、核保有の動きも認めることはできない。復帰前まで核兵器が貯蔵されていた沖縄だ。広島、長崎との連携を強めて核廃絶を世界に訴えていきたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070806.html#no_1

 

琉球新報 社説

原爆の日 核廃絶こそが人類の使命

 広島、長崎は原爆被爆から62年の夏を迎えた。広島は6日、長崎は9日の「原爆の日」にそれぞれ平和式典を催し、核廃絶への誓いを新たにする。未曾有の惨禍で、おびただしい犠牲を払ったにもかかわらず、今日なお核兵器保有国が存在し、被爆者たちの声を受け止めようとしない。

 そんなエゴがいつまで許されるのだろうか。少なくとも日本は、唯一の被爆国としてこれ以上、核保有国のエゴを許すわけにいかない。核廃絶が絶対に譲れない一線であることを、核保有国を含む世界各国に対し、一段と強く訴えねばなるまい。

続く被爆者の苦痛

 原子爆弾は第二次大戦末期の1945年8月6日、広島市の上空で米国のB29爆撃機から投下された。爆心地の地表温度は4000度に達し、大量の放射線が発生。市内の建物の9割以上が焼失または全半壊し、その年だけで推定約14万人が死亡した。

 3日後の9日、今度は長崎市に原爆が投下され、市の上空で爆発した。爆風と放射線で、同年末までに約7万4千人が死亡した。翌年以降に亡くなった被爆者も数万人規模に上り、生存被爆者の多くは、がんなど放射線が原因の健康障害に苦しんでいる。被爆は決して過去の出来事ではない。極めて今日的問題である。

 中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」は、原爆のすさまじさを描き出す。全身にやけどを負い、皮膚が垂れ下がったまま苦しむ人たち。倒壊した家屋に圧死した家族ら。どれも“地獄絵”だ。激しい地上戦に巻き込まれた沖縄県民にも通じる光景であり、こうした体験・教訓を風化させることなく、次世代に継承していく必要性をあらためて痛感する。

 ところが世界に目を向けると、未曾有の惨禍を教訓とするどころか、格段に威力を増した核兵器が開発され続けている。米国、ロシア、英国、フランス、中国の五カ国に加え、インド、パキスタン、イスラエルが事実上の核保有国とされ、北朝鮮も「核保有」を宣言した。

 確かに、米ソ冷戦時代は「抑止力」としての核の役割が強調された。いわば、使うことを基本的に想定しない核であった。しかし、冷戦後も核は“居座り”続ける。イランや北朝鮮が大国に対抗する政治カードとして核開発をちらつかせてきたこともあり、米国などは従来の抑止力から用途を広げ、核を「ならず者国家やテロ組織」に対して使うことも辞さない兵器と位置付け始めた。

 実際、ブッシュ米政権が核テロ対策の一環として、広島と長崎の原爆被爆者やビキニ水爆実験被ばく者の調査を続ける邦人研究者らの技術協力を受けていたことが分かっている。

「抑止力」の変質

 これは看過できない。危うい事態である。1970年発効の核拡散防止条約(NPT)は核兵器の保有を米国、ロシアなど五カ国に限り、他の国の保有を禁じているが、一方で「核軍縮交渉の義務」を課した。その義務をないがしろにしてはいないか。五カ国以外の核保有を禁じるのは当然だが、保有国が核軍縮への取り組みを怠っていいはずがない。肝心な部分を忘れてもらっては困る。

 翻って日本はどうか。長崎出身の久間章生前防衛相が、米国の原爆投下を「しょうがない」と発言し、当初、安倍晋三首相も擁護した。原爆投下は多くの市民の命を奪い、今なお被爆者を苦しめる残虐行為だ。発言は被爆国の閣僚として非常識で、被爆者の気持ちを踏みにじる暴言と言わざるを得ないが、これを首相が擁護してしまったのでは、被爆国の意識が薄れたと言われても仕方がない。

 久間発言を念頭に置いてか、広島市の秋葉忠利市長は6日の平和記念式典で、日本政府が「被爆の実相と被爆者の哲学」を謙虚に学ぶよう訴える。長崎市の田上富久市長も9日の式典で、核兵器使用が正当化されないことを政府が世界に訴えるよう求めるという。

 被爆地の訴えを日本政府、そして各国は真剣に受け止めてもらいたい。国際社会が結束して非核運動のうねりをつくり出せば、核保有国のエゴをただせるし、道も開けよう。核廃絶は人類に与えられた使命であり、喫緊のテーマである。核の恐怖から脱するために、日本が果たす役割は大きい。各国をリードし、ことしの原爆忌を平和構築への再出発点としたい。

(8/6 9:42)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26062-storytopic-11.html

 

2007年8月6日(月) 夕刊 1面

嘉手納基地F15、4機あす未明離陸

三連協、抗議へ

 米空軍嘉手納基地は六日午前、F15戦闘機四機と空中給油機一機が米本国に向け、七日早朝に離陸すると発表した。同基地のF15を、製造年の新しいF15に更新する措置に伴うもの。しかし、周辺自治体の首長は「安眠を妨げる未明離陸が繰り返されている」と強く反発している。

 嘉手納基地所属だった四機は、米本国で空軍州兵部隊として飛行を続けるという。

 離陸時間について、同基地は「早朝」としているが、同基地から米本国へ飛行する場合は通常、未明の時間帯に離陸しており、今回も未明離陸になる見通し。同基地では、一月にF15などが二日連続で、五月にも暫定配備されていたF22戦闘機十二機のうち十機が、未明離陸を強行している。

 那覇防衛施設局は六日午後、佐藤勉局長名で「他の基地の経由などで可能な限り午前六時以降の離陸を追求するよう」配慮を求める文書を同基地司令官に提出する。

 同基地の未明離陸については日米が回避の可能性を協議。夏場に関しては施設局が昨年、「アラスカ経由の場合、ハワイより日没が数時間遅くなる」として、アラスカ経由によって午前六時以降の離陸を探るよう、米側に提案した経緯がある。だが、今回の未明離陸は、日本側提案を米側が受け入れなかったことを示し、今後も繰り返されることが予想される。

 同基地は「航空機の早朝離陸により周辺住民に騒音の影響が及ぶことを認識しながらも、運用上の必要性を注意深く考察し、早朝離陸を行うことになった」と説明した。

 嘉手納基地周辺自治体の首長らによる「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は、六日午後に北谷町役場で幹事会を開き、未明離陸に抗議する方向で調整している。

 三連協会長の野国昌春北谷町長は「安眠を妨げる未明離陸が繰り返され、住民の基地負担は増大している。(午後十時―午前六時の飛行を制限する)航空機騒音規制措置を順守するべきであり、三連協としても抗議したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708061700_01.html

 

2007年8月6日(月) 夕刊 1面

知事、慎重姿勢/ハンセン共同使用

 在日米軍再編の最終報告に盛り込まれた米軍キャンプ・ハンセンの共同使用で、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が近く同演習場の使用を開始することについて、仲井真弘多知事は六日午前、「基本的には基地機能が強化されない(ことを求める)というのが、われわれのスタンス。その点からどうか」と述べ、陸自の使用が地元の負担増につながらないかどうかを慎重に見極めた上で、判断する考えを示した。ハンセンの共同使用については、七日に防衛施設庁の渡部厚施設部長と那覇防衛施設局の佐藤勉局長らが、県と地元の金武町、恩納村、宜野座村に詳細な訓練内容を説明する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708061700_02.html

2007年8月7日(火) 朝刊 1・29面 

米軍車両 また学校侵入/うるま市 前原高校

ロータリー 一周去る/生徒らけがなし

 【うるま】六日午後二時四十四分ごろ、うるま市田場の県立前原高校(大城順子校長、生徒数八百三十三人)の敷地に米軍車両とみられるトラックが侵入、ロータリーを一周して正門から同市安慶名方面に去った。車両侵入時、近くにいた男子生徒ら三人にけがはなかった。同市では七月十八日に同校から約六百メートルの県立沖縄高等養護学校に米海兵隊の装甲車が侵入、市議会が抗議決議をしたばかり。

 県教育庁は七日にも那覇防衛施設局などに抗議するほか、同市議会基地対策特別委員会は同日に対応を協議する。

 目撃した同校の平良智事務長によると、車両は白っぽいトラック。運転手ら二人はいずれも外国人で、車両ナンバーは「NAVY95 29619」と記載されていた。敷地内を回る際、車体が揺れたという。ロータリーの縁石などに車両が衝突した痕跡はなく、一分足らずで立ち去った。

 市内の学校で相次ぐ車両侵入に、知念恒男市長は「事実関係を確認中」としながら「米軍ならば、市民感情を理解していない。ここを戦場とでも思っているのか」と厳しく批判。その上で「市としてできる限りの意思表示を行いたい」と述べ、米軍に厳重抗議する考えを示した。

 一方、仲村守和県教育長は「沖縄高等養護学校への米軍の装甲車侵入に強く抗議し、再発防止を要請したところだ。度重なる許し難い暴挙に怒りを禁じ得ない」とのコメントを発表した。

 那覇防衛施設局は、沖縄タイムス社の取材に対し「(車両が米軍のものかどうか)米軍に照会中」としている。


     ◇     ◇     ◇     

なぜ再発「反省 口だけ」/職員の質問を無視


 【うるま】「米軍はなぜ、何度も校内侵入を繰り返すのか」―。六日、うるま市田場の県立前原高校の敷地に米軍とみられる車両が侵入したことに教育関係者は一斉に怒りの声を上げた。七月十八日には米海兵隊の装甲車が県立沖縄高等養護学校に侵入、市や市議会、教育関係者が米軍に再発防止を強く申し入れた。相次ぐ車両侵入に、「学校は安全な場であるはずだ。米軍は非常識だ」など不信感と批判が広がっている。

 目撃した前原高校の平良智事務長(49)によると、正門近くの敷地内に米軍車両がいた。車両は停車することなく、敷地内のロータリーを走り回った、という。

 平良さんが「どうしたんですか」と声を掛けたが、外国人とみられる運転手らは目を合わすこともなく校外へ。県道を右折するために停車した車両に近付き、急いで番号を控えた。車両が侵入して出て行くまで「時間にして一分もない」出来事だったという。

 同校の大城順子校長は「戦前には軍隊が学校を接収して使用した。教育現場と軍隊は相いれないもので、侵入は残念だ」とまゆをひそめた。

 同校ではこの日、午前中に夏期講座があったほか、部活動などのため登校する生徒もいた。米軍車両侵入を知った二年の女子生徒(17)は「米軍は何をするか分からないから、校内には入ってきてほしくない」と話した。

 同校PTAの具志川光彦会長(47)は「間違って侵入したなら一言謝ってほしい。人の庭をはだしで歩き、黙って帰るようなことは良くない」と指摘。七日に開かれる市内の県立高校長やPTA会長らとの会合で、対応を協議する、という。

 現場を確認した同市議会の東浜光雄基地対策特別委員長は「学校は安全な場であるはずだ。米軍は非常識極まりない」と憤る。「先月米海兵隊の装甲車が侵入した際、米軍は兵士の教育徹底を約束したが、口先だけだとしか思えない」と語気を強めた。


「故意」と疑う声も


 米軍とみられる車両が前原高校の敷地内に侵入したことに、県内の教職員やPTAなどから反発の声が上がった。

 高教組の福元勇司書記長は「平和の大切さを教育する学校と相反する米軍車両が再び侵入するとは絶対に許せない。米軍は事の重大性をきちんと認識しているのか非常に疑わしい。関係当局に対し強く抗議したい」と憤った。県高校PTA連合会の西銘生弘会長は「米軍は故意に侵入したのではないかと疑いたくなる」とした上で「何度も同じようなことが起きるのは米軍に規律を守るつもりがないからだろう。早めに抗議の意思を示したい」と話した。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「たまたま夏休み中で生徒も少なかっただろうが、安全面を考えると許せない。学校に土足で上がり込むような行為は常識を疑う」と話した。

 沖教祖の大浜敏夫委員長は「学習の場への立て続けの侵入に強い怒りを覚える。復帰以前のやりたい放題の行動は米軍が反省していない証拠。那覇防衛施設局の対応も生ぬるいのではないか。主権国家として強く抗議するべきだ」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071300_01.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(8月4日、5日)

2007年8月4日(土) 朝刊 1・27面

研究者団体 撤回決議へ/「集団自決」修正

会員3千人歴教協大会 検定問題討議も

 全国の小・中・高校・大学の歴史教育研究者らでつくる歴史教育者協議会(石山久男委員長)は四日午前、神戸市で第五十九回全国大会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦の記述から「集団自決(強制集団死)」への軍の関与が削除・修正された文部科学省の検定意見撤回と記述回復を求める決議を採択する。

 同会は約三千人の会員で構成する国内最大規模の歴史教育者らの研究団体。一九八二年の教科書検定では沖縄戦の「住民虐殺」の記述が削除された際、同様の決議を行っている。

 実教出版「高校日本史B」で執筆した石山委員長は「沖縄県民や全国の歴史研究者が抗議しても文科省は態度をあらためようとしない。決議が沖縄の運動を支える一助になってほしい」と期待。その上で「文科省への申し入れや教科書会社、他の教科書執筆者に呼び掛け、記述の訂正を求めていきたい」と話した。

 県歴史教育者協議会の平良宗潤委員長は「決議は県民の怒りや抗議が正当なものであることを示している。全国の歴史教育研究者が支持してくれることは励ましになる」と語った。平良委員長ら五人が出席、平和分科会などで教科書検定問題について報告する。

 決議案は、今回の検定について「強制と誘導という事実をかくし、『集団自決』を住民の自発的なものであるかのように書き直させたことは、歴史研究を踏みにじり沖縄県民が体験し継承させてきた歴史の事実を抹殺する」と糾弾。「戦争と軍隊を美化し、海外で戦争する『日本軍』の復活を目指す憲法改悪につなげようとする意図から発したものだといわざるを得ない」と批判している。


     ◇     ◇     ◇     

「集団自決」授業法紹介/県教育者協が機関誌


 県歴史教育者協議会(平良宗潤委員長)はこのほど、高校歴史教科書の検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から軍関与が削除・修正された問題について、研究者や教科書執筆者らの論文、授業法などをまとめた機関誌「歴史と実践」を緊急出版した。

 同書は七部構成で、県内外の沖縄戦研究者や教科書執筆者による座談会、論文を集録。軍関与が削除・修正された背景や記述の回復などについて論じている。

 軍関与が削除・修正された検定後の教科書や、六月に開かれた検定意見撤回を求める県民大会などを例に、子どもたちに今回の問題を考えてもらうための授業実践法や「集団自決」があった座間味村や渡嘉敷村のフィールドワークを紹介。県内各地で発生した「集団自決」に関する県史や市町村史の証言リストなどもまとめられている。

 三日、県庁記者クラブで会見した平良委員長らは「授業での実践や資料集として多くの人に活用してもらいたい」と話した。

 同書は千円、三千部を発行した。問い合わせは同協議会機関誌担当、ファクス098(834)5830。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708041300_01.html

 

2007年8月4日(土) 朝刊 27面

ジュゴン 絶滅危惧種/環境省「リスト」に初

 環境省は三日、絶滅の恐れのある野生生物の「レッドリスト」の改訂版に沖縄近海に生息するジュゴンを初めて掲載、最も高い絶滅危惧1A類に分類した。成体の個体数は五十頭未満と推定した。生息地で計画されている米軍普天間飛行場代替施設の建設について、同省は「指定も踏まえ、今後の環境影響評価で適切に対応されるものと考えている」との見方を示した。このほか、イリオモテヤマネコも1B類から1A類に危険度が上がった。

 哺乳類のレッドリスト見直しは九年ぶり。同省によると、海に生息する哺乳類は原則としてリストの対象外だが、ジュゴンは陸地近くの浅い海域で海草を食べることから、今回新たに評価の対象とした。「引き続き漁業者などの協力も得ながら保護を進めたい」と話した。

 絶滅危惧指定について、ジュゴンに詳しい沖縄美ら海水族館の内田詮三館長は「保護に向け具体的な一歩を踏み出すきっかけになれば意義がある。環境省、水産庁、防衛省をはじめ、自治体や研究者を網羅したプロジェクトチームを立ち上げ、保護区設定を含めて検討すべきだ」と指摘した。

 このほか沖縄の生物では、イリオモテヤマネコが最近の調査で個体数の減少傾向が見られるとして、1B類から1A類に。イリオモテコキクガシラコウモリは2類から1B類になった。

 また、南西諸島の魚類が大幅に評価対象に加えられ、カワボラやコゲウツボは評価対象外から1A類に危険度が上がった。

 植物では、1A類指定のヒメヨウラクヒバなどで、知られていた個体群が絶滅したと報告された。

 今回結果を公表した見直しでは、哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物の計約七万種について評価。新たに七百二種を追加、二百八十七種を指定から外し、絶滅危惧種は二千九百五十五種となった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708041300_02.html

 

2007年8月4日(土) 朝刊 27面

汚染土壌を撤去/北谷米軍油流出

 【北谷】北谷町の米陸軍貯油施設からディーゼル燃料が流出した問題で、米軍は三日、燃料が漏れ出た小型タンク周辺の汚染土壌を撤去した。流出現場は二〇〇三年に返還されたキャンプ桑江北側部分の跡地で、地主は「返還した時点でタンクを撤去していたら、燃料の流出事故も起きなかった」と批判している。

 那覇防衛施設局によると、流出量や原因は米軍が調査中。米軍が二日に撤去した小型タンクは、町内の米軍基地で保管している、という。米軍はショベルカーで汚染土壌を掘り起こし、ダンプに積み込んで回収。コンクリート製の土台も撤去され、ビニールシートで覆われた。北谷町の野国昌春町長は「流出量や発生原因などを確認した上で、週明けに今後の対応を決めたい」としている。

 キャンプ桑江北側部分の地主で、北谷町軍用地等地主会の玉城清松副会長は「これまでも多くの銃弾や油送管が見つかるなど、跡地利用はスムーズには進んでいない。燃料流出は区画整理の障害になり得るものであり、国はきちんと対応してほしい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708041300_05.html

 

2007年8月4日(土) 朝刊 26面

ゾルゲ直筆文が存在/元特高の娘が沖国大に寄贈

 太平洋戦争直前に、日本やドイツの軍事・政治関係機密を諜報して検挙されたソ連のスパイ・ゾルゲの直筆署名文書などを含む関係資料約数千点が、このほど沖縄国際大学の南島文化研究所(小川護所長)に寄贈された。ゾルゲ事件に連座して獄死した名護市出身の画家、宮城与徳の取り調べ文書も含まれており、研究者らは「ゾルゲ事件を知る上で第一級の貴重な現物資料」としている。

 資料は、ゾルゲ事件を取り調べた元特別高等警察部(特高)の故大橋秀雄氏が所蔵していた。公開されていた資料も一部あるが、あらためてまとまった形で寄贈された。大橋氏の娘の中島和子さん(68)=神奈川県=から申し出があり、今年四月同研究所がまとめて受け入れた。

 ゾルゲ直筆署名資料や宮城与徳関係資料、警察取調書、内閣情報局週報や戦前、戦後の貴重書など計数千点。関係者によるとゾルゲ直筆の文書類などはこれまで「まったく残っていない」という。

 一九四二年三月七日、東京拘置所内でゾルゲが大橋氏にあてた直筆の手紙では「私の事件の取り調べに彼の最も同情ある、ただ最も親切であったことを記念し、私は取り調べの指揮者である彼に深い感謝を述べます」などと記されている。

 宮城与徳の取り調べ調書には「昭和十六年十二月」の日付があり、与徳が当時収集していた情報が詳細に書かれている。

 同研究所は、今後、近現代史の専門家を中心とするプロジェクトチームを組織し、目録化や翻刻作業を行いながら公開する方針。

 同研究所特別研究員の比屋根照夫琉球大学名誉教授は「これだけの資料はなかなかない。資料を検討するとゾルゲ事件を解明する新たなヒントが得られる可能性がある」と重要性を強調している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708041300_06.html

 

2007年8月4日(土) 朝刊 2面

北部振興 予算要求へ/高市沖縄相、強い意欲

 【東京】内閣府沖縄担当部局は三日までに、二〇〇八年度予算概算要求に北部振興事業費を盛り込む方針を固めた。高市早苗沖縄担当相は同日午前の閣議後会見で、同事業費を継続する条件の「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況」が崩れていないとの認識を示し、予算要求に強い意欲を示した。

 高市沖縄相は「代替施設の受け入れ、現況調査に同意いただき、調査が進められている。私と地元、小池百合子防衛相と地元の関係者間の調整も継続している」との見解を示し、予算要求ができる状況にあるとの考えを示した。

 一方で、「これに加えて一歩進めていくため、協議会を開くことが重要なポイントになると考えている」とも述べ、普天間飛行場移設に関する政府と地元の協議会の早期開催の必要性を強調した。

 防衛省が〇七年度北部振興事業費の一次配分に難色を示していることには、「来年度の要求とは違い、本年度のものは要件が満たされた上で決定されている。適切な時期に配分できるよう、防衛省などと調整する考えに変わりない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708041300_08.html

 

2007年8月4日(土) 夕刊 1面

歴史教育協、撤回・記述回復を要求/「集団自決」修正

 全国の小・中・高校・大学の歴史教育研究者らでつくる歴史教育者協議会(石山久男委員長)の全国大会が四日午前、神戸市で開幕した。会員総会で高校歴史教科書の沖縄戦の記述から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が削除・修正された文部科学省の検定意見撤回と記述回復を求める決議を採択した。

 決議は、今回の教科書検定について「『集団自決』を住民の自発的なものであるかのように書き直させたことは、歴史研究を踏みにじり、沖縄県民が体験し継承させてきた歴史の事実を抹殺する」と指摘。

 その上で「戦争と軍隊を美化し、海外で戦争する『日本軍』の復活を目指す憲法改悪につなげようとする意図から発したものだといわざるを得ない」としている。同協議会は決議後、文科省に検定撤回などを訴えるほか、教科書会社や執筆者に呼び掛け記述の訂正を求める方針。同会は約三千人の会員で構成する国内最大規模の歴史教育者の研究団体。


全国で問題共有


 大会に出席している県歴史教育者協議会の山口剛史事務局長(琉球大学准教授)は「歴教協の活動方針の中でも教科書記述の問題が明記された。全国の教職員が問題を共有化し、正しい歴史を子どもたちにきちんと教えるために取り組んでいきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708041700_01.html

 

2007年8月5日(日) 朝刊 1・2面

ハンセン近く共同使用/陸自第一混成団

施設庁、地元説明へ/「負担増」と反発も

 在日米軍再編の最終報告に盛り込まれた米軍キャンプ・ハンセンの共同使用で、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が近く演習を開始することが四日分かった。これに先立ち、七日に防衛施設庁の渡部厚施設部長と那覇防衛施設局の佐藤勉局長らが、県と地元の金武町、恩納村、宜野座村に事前説明を行う。同庁は地元自治体の理解を得た上で、自衛隊による在日米軍基地の使用を規定した日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手する意向だが、地元は「負担増につながる」と難色を示しており、反発も予想される。

 陸自の演習は、ハンセン内の「中部訓練地域」の既存レンジを使用する。

 同庁は県のほか、ハンセンに隣接する四市町村のうち、同訓練地域に近い三町村に説明。地元の意見を聴取後、日米合同委員会で正式合意するとみられる。

 ハンセンでの陸自の訓練は、自衛隊単独や日米共同の戦闘訓練、射撃訓練を想定。

 同庁は「自衛隊による施設整備を要しない共同使用については二〇〇六年度からの実施が可能」として、日米間の調整や自衛隊内部で訓練内容の検討を進めていた。

 日米特別行動委員会(SACO)合意に基づく金武町のギンバル訓練場全面返還に伴い、ブルービーチへのヘリパッド移設を同町が受け入れたため、ハンセンの共同使用に向けた事務手続きに着手する意向を固めたとみられる。

 自衛隊の使用に伴う施設整備の必要性について、同庁は「検討する」としているが、現時点で新たな施設整備は実施されていない。

 恩納村議会は〇六年五月、共同使用により騒音、異臭、山火事、漁業被害、流弾事故などの悪影響が考えられるとして、「明らかに負担増」とする意見書を全会一致で可決している。

 金武町、宜野座村も共同使用は容認していない。


     ◇     ◇     ◇     

「負担軽減」に逆行/ハンセン共同使用


 米軍キャンプ・ハンセンの共同使用により、那覇市に駐屯する陸上自衛隊第一混成団の訓練効率は飛躍的に向上する。現在千九百人の第一混成団は旅団格上げで二千三百―三千人規模に増強する方針が打ち出されており、今後は「質量」ともに実力を備えた部隊に変容するのは確実だ。ハンセンの共同使用で、米軍再編の目的である日米の「軍事融合化」が沖縄を舞台に進む。米軍再編の主眼とされた「沖縄の負担軽減」に逆行しているのが実情だ。

 陸自はハンセンで射撃訓練のほか、車両を伴う機動展開などの攻撃・防御訓練、対遊撃訓練を想定している。当面は自衛隊のみで訓練を行うとみられるが、米海兵隊との共同訓練も実施されることは間違いない。

 第一混成団は県内で実弾射撃訓練場が確保されていないため、これまで熊本や大分県など主に九州の自衛隊演習場に移動して訓練を実施していた。こうした「転地訓練」は、隷下の第一混成群で年間約六十日、第六高射特科群で年間約七十日、その他部隊で年間約四十日間(いずれも二〇〇四年度の例)に及ぶ。

 〇八年度以降は、陸自の小火器射撃訓練施設として整備中の沖縄市の東恩納覆道射場の使用も見込まれ、沖縄の陸自は今後、実戦的な訓練や演習の機会を大幅に増大させることになる。

 米軍再編では米空軍嘉手納基地の共同使用も合意されており、沖縄では空と陸で日米の軍事融合化が図られる。

 自衛隊基地を米軍に使用させる共同使用化に当たっては、日米地位協定の実施に伴う国有財産管理法七条で、政府は「関係行政機関の長などの意見を聞かなければならない」と規定している。だが、政府はこれまで「住民生活には軽微な影響しか与えない」として、地元の意見聴取を実施していない。

 政府は、米軍再編の実行に際し「地元の理解と協力を得て進める」としており、「地元の負担増」につながるハンセンの共同使用に当たって、地元の意向をなおざりにすることは許されない。(政経部・渡辺豪)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708051300_01.html

 

2007年8月5日(日) 朝刊 23面

歴教協「歴史認識覆される」/研究者ら危機感共有

 高校歴史教科書から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が削除された検定意見撤回を求める決議を採択した歴史教育者協議会(歴教協・石山久男委員長)の全国大会は四日、「地域に学ぶ集い」が神戸市産業振興センターであり、「教科書問題」の分科会も開催。参加した研究者や高校の教師など約三十人が、来年度から使用される歴史教科書の沖縄戦について認識を深めた。

 集いでは、大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会の小牧薫事務局長が、大阪地裁で係争中の「集団自決」訴訟について報告。県歴教協の山口剛史事務局長は検定をきっかけに、県内で「集団自決」生存者の新証言の掘り起こしが進んでいるとした。

 山口事務局長は「裁判まで含めると、教科書問題が全国に浸透しているとは言い難い」と県内との「温度差」を指摘したが、「今回の検定を許せば、この先沖縄だけでなく、日本の歴史認識が覆されるという危機感は共有できた。全国に検定意見の撤回を求める運動を広げていく出発点にしたい」と抱負を話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708051300_05.html

 

琉球新報 社説

絶滅危惧種指定 ジュゴン保護に英知を

 国の天然記念物ジュゴンの生息環境悪化に、あらためて警鐘が鳴らされた。環境省は3日、絶滅の恐れのある野生生物の種をまとめた「新レッドリスト」を発表。その中で、旧リストでは対象外だったジュゴンを評価対象種とし、絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧1A類」に指定した。

 区分の定義は、国際自然保護連合(IUCN)の基準に合わせており、IA類は「ごく近い将来に野生での絶滅の危機が極めて高いもの」。ジュゴンは普天間飛行場代替施設建設予定地となっている辺野古沖の海域でたびたび目撃されている。今回の指定で、施設建設の影響がさらに憂慮される事態となったともいえよう。

 ジュゴンは海棲(かいせい)哺乳類の一種で、ジュゴン目(海牛目)ジュゴン科に属する。かつては2属2種だったが、1960年代にステラーカイギュウが絶滅したため、現在はジュゴン(1属1種)のみである。アフリカ東海岸から東シナ海、オーストラリア付近まで広く生息していたが、現在はかなり限られた海域にしかいないという。世界でも合計で10万頭ほど、との推定だ。南西諸島海域が分布の北限だが、既に50頭未満との推計もある。減少の原因としては肉用目的の乱獲、開発による生息地の環境悪化、餌となる海草の生えた藻場の消滅などが指摘されている。ほとんどが、いわば「人災」だ。

 特に懸念されるのが、辺野古沖で今春から実施されている事前調査の影響。大掛かりな機器設置やそれに伴う騒音が、ジュゴンの生息環境に、決して好ましい結果をもたらさないことは明白だ。音には敏感で、船のエンジン音を聞くと、藻場に近寄らなくなる恐れもある。さらに、施設建設となれば、壊滅的な影響は避けられない。

 既に日本哺乳類学会、水産庁でも「絶滅危惧種」として指定しており、今回の環境省の指定は「遅すぎたぐらい」との指摘もある。

 いずれにせよ、保護に向けて一歩前進とも評価できる。後は指定のみで終わるのではなく、どう具体的に保護策を取っていくか。人類の英知が試される。

(8/5 10:38)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26050-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(8月2日、3日)

2007年8月2日(木) 朝刊 2面

知事、きょう防衛相と会談/アセスで意見交換か

 【東京】二〇〇八年度国庫支出金要請で上京している仲井真弘多知事は二日午後、防衛省で小池百合子防衛相と会談する。会談は「表敬」の名目で十五分間の予定。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う環境影響評価(アセスメント)について意見交換するとみられる。

 防衛省は、アセスを早期に受け入れるよう県に求めているが、県はV字形滑走路の沖合移動や、同飛行場の「三年内閉鎖状態」の実現を主張し、現段階でのアセスに難色を示している。

 このため防衛省は「協議が円滑に進んでいない」と判断。北部振興事業執行の条件が崩れているとして、同事業を凍結する考えを示している。

 会談では北部振興事業の取り扱いや、普天間移設に関する協議会の次回会合の開催についても話し合われる可能性がある。

 仲井真知事は小池防衛相に先立ち、高市早苗沖縄北方担当相らを訪ね、普天間飛行場の移設先の名護市など十二市町村の北部振興事業を継続するよう要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708021300_05.html

 

琉球新報 社説

ヘリ墜落不起訴へ 第1次裁判権は日本に

 県警は2004年8月に起きた米軍ヘリ沖国大墜落事故の原因をつくり出した普天間基地に当時所属していた整備兵4人を氏名不詳のまま、航空危険行為処罰法違反(過失犯)の容疑で書類送検した。

 米側が既に第1次裁判権を行使しているため、不起訴となる見通しである。

 米軍はこの間、県警の現場検証、事故機の検証、ヘリ乗員らへの事情聴取などを拒み続けてきた。大事故を起こした当事者にもかかわらずである。

 事故の反省、県民に対する謝罪の気持ちは米軍に果たしてあるのかとの疑念さえわく。

 県警は、県民に被害を及ぼした事故として立件、送致する方針で捜査に当たった。しかし、立件に必要な捜査を米軍がことごとく拒否したことから、今回の幕切れは予想された。

 墜落事故は民間地域で発生し、学生や周辺地域住民らに多大な被害と恐怖を与えるなど、県民は重大な危険にさらされた。書類送検で終わるような事故ではない。

 事故の再発防止には原因の解明と併せて責任の追及が不可欠である。氏名も明かされず、責任の所在はうやむやのままでは、事故再発への不安を払拭(ふっしょく)できるはずがない。

 米側の事故報告書は「整備兵がヘリコプター尾部の接続器具コッター・ピンの装着を忘れて飛行させたのが事故原因」と結論付けている。

 県警の捜査結果と照らし合わせることができない以上、米側の一方的な事故報告書をうのみにすることはできない。

 県内では復帰後、民間地域への米軍機墜落事故は沖国大での事故を含めて4件発生したが、いずれも立件できていない。

 戦後62年、復帰後35年を経ても、沖縄では米軍優先がまかり通っていることをあらためて見せつけられた。

 今回も日米地位協定が捜査の大きな壁になった。米軍航空機事故の現場検証や機体検証は、同協定などで「米側の同意」が前提となっている。

 県警が現場検証したのは、米軍が事故ヘリを持ち去った6日後であり、十分な検証が実施できるはずもなかった。

 ただ、福岡県の九州大学への米戦闘機墜落事故(1968年)など、他県であった米軍航空機事故3件で米軍は警察などの現場検証を認めている。この違いはなぜか、問われ続けねばならない。

 米軍の判断で対応が決まることは今後も予想される。改善が必要だ。

 少なくとも民間地域で起きた米軍の事故は公務中かどうかにかかわらず、日本側が第1次裁判権を持つべきである。

(8/2 10:35)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25971-storytopic-11.html

 

2007年8月2日(木) 夕刊 5面 

ヘリ墜落 後輩へ語り継ぐ/12日 沖国大でコンサート

 沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落してから三年。事故の恐怖を語り継ぎ、あらためて飛行禁止を訴えようと同大の学生たちが十二日午後五時から、沖国大の本館前広場で「NO FLY ZONE」コンサートを開く。事故当時の混乱を知る唯一の学年となった四年生が、記憶の「風化」が進む現状に危機感を募らせて企画。事故を知らない下級生も賛同し、実行委員会に加わった。学生たちは「あの日を忘れないための恒例のイベントにしたい」と張り切っている。(田嶋正雄)

 コンサートにはカクマクシャカ、すばっぷ、知花竜海など、企画の趣旨に賛同する県内若手ミュージシャン六組が出演。会場では、同大美術部や文芸部の作品、普天間第二小学校の児童が描いた絵画などが展示される。焼け焦げた旧本館壁面の写真をあしらった縦四メートル、横三メートルのメッセージ板も登場し、参加者の書き込みを募る。

 発案したのは、事故当時の様子を知る最後の学年となった四年生の有志。墜落現場を知らない学生が多数派となり、事故の記憶が薄れていく学内の雰囲気に危機感を覚え、学生主体の企画を立ち上げた。

 実行委員長で四年の高橋正太郎さん(21)は「みんなが飛行禁止を叫んだのに、ヘリの爆音も上空を飛んでいく恐怖も何も変わっていない。このままでは、みんな忘れ去ってしまうと思った」と説明。「事故を体験した学年として、学生が考える場をつくり、思いを引き継いでいく責任を感じた」と力を込める。

 高一の時、事故をテレビニュースで見たという一年の上原三奈さん(18)は「遠い出来事という気がして、最近まで墜落場所も知らなかった。事故があったことさえ分からなかった本土出身の友達もいる」と話す。入学後、大学近くのアパートで暮らすようになり、「怖さを実感した」という。

 会場では「十年後の沖国生へ」と題し、未来の学生に向けた参加者のメッセージをビデオに収録するコーナーも設置する。翌十三日には、墜落地点に残るアカギの前で、宣言文を読み上げるセレモニーを行う予定だ。高橋さんは「学生からの新たなメッセージを発信する」と意気込む。「いつか基地が撤去され、ただ楽しむだけのイベントになる日まで、受け継いでいってほしい」

米軍ヘリ墜落事故を後輩たちに語り継ごうと、コンサートを開く実行委員の学生ら=宜野湾市・沖縄国際大学

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708021700_01.html

 

2007年8月3日(金) 朝刊 1面

防衛相「沖合」に難色 普天間移設で会談

知事、協議会開催に慎重

 【東京】仲井真弘多知事は二日、小池百合子防衛相と防衛省で会談した。小池氏は、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設について、「沖縄の海を守ることに力点を置いている」と述べ、環境への配慮を強調。名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について、海域の埋め立て面積が増加することから、難色を示したものとみられる。

 小池氏は、日米の自然保護団体が米国防総省に名護市辺野古沖のジュゴン保護を求めて米連邦地裁で争われている訴訟を取り上げた上で、「そういう(訴訟の)問題もあるので、自分は環境面を重要視している。防衛大臣が環境問題も語る。それが二十一世紀の新しい姿だ」と説明した。

 これに対し仲井真知事は「普天間の問題は名護市も受け入れている。地元の気持ちをくんでまとめていただきたい」と述べ、沖合移動にあらためて理解を求めた。

 小池氏はそのほか、普天間移設に関する協議会について「できるだけ早く開きたい」と協議を促進したい考えを示したが、仲井真知事は「よく調整する必要がある」と指摘。

 沖合移動や普天間飛行場の「三年内の閉鎖状態」の実現など県の要望に対する政府側の対応が先決との考えから、慎重な姿勢を示した。

 会談では、普天間飛行場移設に伴う環境影響評価(アセスメント)や、北部振興事業については話し合われなかった。

 仲井真知事はこれに先立ち、二〇〇八年度国庫支出金要請で高市早苗沖縄担当相とも会談。新規の「IT津梁パーク(仮称)整備事業」の展開や、政府の「アジア・ゲートウェイ構想」の拠点に沖縄を位置付けることなどを要望。北部振興事業を継続するよう文書で求めた。高市氏は「だいたい要望の内容には沿えると思う」と前向きな返答をした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708031300_01.html

 

2007年8月3日(金) 夕刊 1面

北部振興事業盛り込む/08年度概算要求

沖縄担当相、強い意欲

 【東京】内閣府沖縄担当部局は三日までに、二〇〇八年度予算概算要求に北部振興事業費を盛り込む方針を固めた。高市早苗沖縄担当相は同日午前の閣議後会見で、同事業費を継続する条件の「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況」が崩れていないとの認識を示し、予算要求に強い意欲を示した。

 高市沖縄相は「代替施設の受け入れ、現況調査に同意いただき、調査が進められている。私と地元、小池百合子防衛相と地元の関係者間の調整も継続している」として、予算要求ができる状況にあるとの考えを示した。

 一方で、「これに加えて一歩進めていくため、協議会を開くことが重要なポイントになると考えている」とも述べ、普天間飛行場移設に関する政府と地元の協議会の早期開催の必要性を強調した。

 防衛省が〇七年度北部振興事業費の一次配分に難色を示していることには、「来年度の要求とは違い、本年度のものは要件が満たされた上で決定されている。適切な時期に配分できるよう、防衛省などと調整する考えに変わりない」と述べた。


普天間「対応に苦慮」小池防衛相


 【東京】小池百合子防衛相は三日午前の閣議後会見で、米軍普天間飛行場の移設問題について、「県のおっしゃっていること、名護市がおっしゃっていることの具体的なところがなかなか分からないので、対応に苦慮している」と述べ、V字形滑走路の沖合移動をめぐり、県、名護市との調整が難航していることを明らかにした。

 その上で、「今後も地元自治体と連携しながら、早期に的確に、わが国の抑止力、沖縄の環境を守るといういくつかのファクターを何とか考え合わせたものにしたい」とも述べ、県、名護市との調整に積極的に取り組む姿勢を強調した。

 沖合移動については、「環境を沖縄がより守る方向に行かないでどうされるのか。環境についての取り組みを盛り込んだ案について、ご理解をたまわればと思っている」と難色を示し、日米で合意したV字案にあらためて理解を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708031700_02.html

 

2007年8月3日(金) 夕刊 1面

北谷 米軍施設で油流出/隣接の民間地汚染

 【北谷】北谷町の米陸軍貯油施設・桑江第一タンクファームの小型タンクからディーゼル燃料が流出し、隣接する民間地を汚染したことが三日、分かった。陸軍トリイ通信施設が二日午後、那覇防衛施設局へ通報し、同局から連絡を受けた県と北谷町が同日夕、油流出を確認。北谷町は三日、同様な燃料流出がないか確認するよう、施設局に電話で要請した。

 同施設局によると、油漏れがあったのは二日午後で、千ガロン(約三千八百リットル)の貯蔵能力がある小型タンク。土の上に縦一・五メートル、横一・九メートルにわたり油が広がったという。タンクには約九百ガロン残っており、漏れた量は最大で約百ガロン(約三百八十リットル)とみられる。

 現場は二〇〇三年三月に返還されたキャンプ桑江北側部分で、同町伊平の国道58号から東方三百―四百メートルの地点。米軍は残っていた油を抜き取った上で小型タンクを撤去し、三日午前十一時すぎから汚染土壌の回収作業を行っている。

 野国昌春北谷町長は「使い古しの貯油タンクから流出したという情報もあり、同様なタンクからの流出が今後も考えられる。米軍は経緯も含めて発表し、きちんと対応してほしい」と話した。

 県基地対策課は二日、施設局を通じて、米軍に原因究明や再発防止などを申し入れた。施設内への立ち入り要求については「状況確認の段階」として、現段階では検討していないという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708031700_03.html