月別アーカイブ: 2007年9月

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月13日)

2007年9月13日(木) 朝刊 27面 

教科書・基地 期待と警戒/安倍首相退陣表明

 「職責」を強調した所信表明演説の二日後、戦後最年少の総理大臣はすべてを放り出した。十二日、安倍晋三首相が突然の退陣表明。「なぜ今なのか」の質問に「私がいることがマイナス」と局面打開を強調したが、国民への謝罪を口にすることはなかった。県内からは、教科書検定や基地問題で「潮目」が変わることへの期待の声が上がった。「ボンボンだったということ」「年金はどうなる」。街頭の市民も、遅すぎる辞意表明にあきれた。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の小渡ハル子副実行委員長(県婦人連合会長)は、首相が辞任すれば、検定意見撤回の追い風になるとみる。「大会後に上京するが、安倍首相は面談してくれたかどうか。誰が首相になっても、今よりは県民の声に耳を傾けてくれるのではないか」と期待。「集団自決(強制集団死)」の問題を理解する人を新しい首相や文科相に、と要望した。

 「首相が去っても、憲法の危機は残る」と指摘したのは、大学人九条の会沖縄代表の高良鉄美琉大法科大学院教授。国民投票法制定など一年間の“実績”を列挙し、「国民が改憲姿勢に怒って辞任に追い込んだわけではない。首相も最後まで、違憲の疑いが非常に濃いインド洋での給油活動継続にこだわった」と、警戒を緩めない。

 基地問題で、米軍普天間飛行場の名護市移設を容認する荻堂盛秀同市商工会長は、移設問題でのリーダーシップ欠如について「テロ特措法などに気を取られて普天間まで、じんぶん(知恵)が回らなかったのか」と振り返った。「何度も来県しアジア・ゲートウェイ構想など沖縄振興への思いはあった。参院選敗北は、安倍さんだけの責任ではないので気の毒だ」と述べた。

 逆に移設に反対し、座り込みを続ける当山栄平和市民連絡会事務局長は、「基地に苦しむ沖縄の現状を把握せず、海上自衛隊や海上保安庁を派遣するなど強権的に作業を進めてきた」と批判。辞意表明については「移設の政治日程も遅れるだろう。民意が反映される政治の契機になってほしい」と話した。

 東村高江区への基地建設に反対する「ヘリパッドいらない住民の会」の石原理絵さん(43)は、座り込み中に辞意表明を知った。「突然で驚いた。基地建設を止める人が新しい首相になってほしい」と言う一方で、「流れが簡単に変わるのは難しいと思う」とも話し、期待とあきらめに揺れた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709131300_01.html

 

2007年9月13日(木) 朝刊 2面

「普天間」解決遠く/調印時 麻生氏は外相

 安倍晋三首相が辞任を表明し、焦点は「ポスト安倍」に移った。最有力候補とされる麻生太郎自民党幹事長は、昨年五月に日米が在日米軍再編の最終報告に調印した際の外相。名護市キャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路を造る政府案を変更する可能性は低いとみられる。沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題では、「戦後レジームからの脱却」を唱える安倍首相の退陣で「政府が柔軟化する可能性はあるのではないか」(関係省庁幹部)との期待感もある。

国会は騒然


 「なぜ本会議が開かれないんだ」

 十二日昼、永田町では、国会議員と政府関係者が混乱に包まれた。

 午後零時四十五分前後から各会派が院内控室で代議士会を開き、本会議の呼び込みに備えた。しかし、開会直前になってもベルは鳴らず、一時前にテレビ各局が「安倍首相、辞任の意向」とテロップを流すと、国会は騒然とした。自民党代議士会ではいすにへたり込み、動けなくなる議員も。

 中継を見ていた内閣府幹部は「信じられない。こんな話は聞いたことがない」とあぜんとした。

 午後二時の安倍首相の辞任会見を受け、三時には総裁選挙管理委員会の臼井日出男委員長、県出身の仲村正治委員長代理が急きょ会談し、「政治の空白は許されない」との認識で一致。

 自民党総裁公選規程は告示日を「投票日の十二日前」と規定するが、両氏は党則六条二項の「特に緊急を要する」に該当するとして、十四日告示、五日後の十九日には後任を決定する異例のスケジュールを決めた。

 県選出国会議員の一人は、「(1)総裁選(2)内閣総辞職(3)新内閣発足(4)テロ特新法が時間切れで不成立(5)年内の衆院解散」とのシナリオを描き、選挙対策に乗り出している。


停滞を懸念


 総裁候補には麻生幹事長、谷垣禎一元財務相、福田康夫元官房長官らの名前が挙がる。

 最有力候補とされる麻生氏について、政府関係者は「米軍再編最終報告の当事者で、政府案(V字案)を堅持するだろう」とみる。

 麻生氏は、県や名護市が求める沖合移動に柔軟姿勢を示していた久間章生元防衛相と極めて近く、「当時の久間氏の考えに理解を示していた」(政府関係者)との警戒も根強い。しかし、「久間氏は問題発言で当面、表舞台に出てこない」(同)とみており深刻さはない。

 一方、沖縄の関係省庁には、政府・与党が十一月一日に期限が切れる海上自衛隊のインド洋での給油活動延長問題への対応に忙殺され、移設協議会の開催など沖縄関係閣僚の対応が停滞するとの懸念もある。

 これに対し、県の上原昭知事公室長は「政府と基本的方向は一致している。(首相の)辞任で大きな影響があるとは考えていない」との見方を示している。


国家観近く


 安倍首相は過去に、日本の歴史教育を「自虐的歴史観に基づいている」と批判する、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の事務局長を務めるなど、教科書検定問題に関心が強い。このため、「安倍政権では沖縄の怒りが収まる事態にならない」(内閣府幹部)との悲観論が強かった。

 ただ、麻生氏は国家観や安全保障観が安倍首相と極めて近く、「麻生首相が実現しても、検定撤回は難しいのではないか」(同)と受け止められている。(東京支社・吉田央、島袋晋作)


     ◇     ◇     ◇     

防衛省 移設への影響懸念


 【東京】安倍晋三首相の突然の辞意表明で十二日、防衛省などからは米軍普天間飛行場移設問題への影響を懸念する声が上がった。

 名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に向け環境影響評価(アセスメント)の手続きが始まるなど、「普天間」の移設がすでに「実施」の段階に入っていることから、政府内では「従来の方針が変わることはない」(防衛省幹部)との見方が支配的だ。

 政府は、移設先の埋め立て申請で、仲井真弘多知事の許可を年内にも得たい考えだ。しかし、政府関係者は「これで当面、普天間問題は止まってしまう」との懸念を漏らす。

 政府・与党が当面、海上自衛隊のインド洋での洋上給油継続に集中しなければならず、この関係者は「沖縄どころではなくなる」と指摘。

 今後、内閣改造が想定される上に、外務、防衛などの関係閣僚も国会対応などで拘束されるため、仲井真知事の埋め立て許可を得るための細やかな対応が困難になるとの見方を示す。

 防衛省幹部は「次の総理、大臣が誰になるかによって、左右される。政府案を変えようという人もいないわけではない」と説明。県や名護市が求めている政府案(V字形滑走路)の沖合移動に、久間章生元防衛相が柔軟姿勢を示していたことを念頭に、警戒感を強めている。


内閣府 平静保つのに懸命


 【東京】「完全に理性的な判断力を失っている」―。安倍晋三首相の突然の辞意表明に、内閣府沖縄担当部局でも困惑の声が広がった。

 首相が答弁する本会議の直前に突然、飛び込んだ辞任のニュース。「無責任もいいところ」と露骨に不快感を表す職員も。

 来週の総裁選後の内閣総辞職もささやかれる中、岸田文雄沖縄担当相は当面の日程をキャンセルしないよう事務方に指示し、平静さを保つのに懸命だった。

 ある幹部は「政治家として再起を期すならもっと早く辞めるべきだったし、『テロとの戦い』に全力を尽くすなら臨時国会の論戦を全うすべきだった」と辞任のタイミングに疑問を呈した。

 安倍首相は十日の所信表明演説で、テロ対策特別措置法延長など政権運営への決意を表明したばかり。十二日は午後一時開会の本会議で答弁するはずだった。

 「こんな辞め方は聞いたことがない。首相の精神状態が心配だ」と漏らす幹部もいた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709131300_02.html

 

2007年9月13日(木) 朝刊 27面

実行委設置 動き広がる/検定撤回 県民大会

沖縄市

 【沖縄】沖縄市の東門美津子市長は十二日、宜野湾市で二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」について、臨時、嘱託を含む全職員約千六百人に参加を呼び掛ける市長メッセージをメールで配信した。また庁内連絡会議を十三日に立ち上げ、全職員が主体となり市民や市内各種団体に参加を呼び掛けることも決めた。

 東門市長は「検定意見の撤回と『集団自決(強制集団死)』に関する記述の回復は県民の総意だ」と強調。「沖縄戦の実相を正しく後世に伝えることが最も重要だ。県民の一人としてぜひ参加してほしい」と呼び掛けた。


豊見城市


 【豊見城】豊見城市議会(大城英和議長)は十二日、与野党会派長会議を開き、市内の各種団体に対し、二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への参加を呼び掛ける「豊見城市実行委員会」を結成することを確認した。

 市総務部と連携して事務局を設置。十八日に市役所で自治会など、各種団体の代表らを集めて「立ち上げ式」を開き、市全体の結束を図る。約四百五十人の市職員にも参加を呼び掛ける。

 大城議長は「市内のすべての団体が結束し、運動を盛り上げていきたい」と意欲を述べた。


読谷村


 【読谷】二十九日に宜野湾市で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、同大会読谷村実行委員会が十二日、発足した。実行委員長に安田慶造村長、副委員長に前田善輝同村議会議長を選出。実行委を組織する村内二十三団体が中心となって大勢の村民に参加を呼び掛ける。

 設立総会で、安田村長は「将来を担う子どもたちのためにも、しっかりと事実を伝えていかなければならない」と協力を求めた。


     ◇     ◇     ◇     

沖教組、校長らに協力依頼県内反応複雑


 沖教組(大浜敏夫委員長)は十二日、本島や周辺離島の小中学校約三百二十校の校長と県内四十一市町村教育長あてに、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への教職員らの参加を促す依頼文を送付した。沖教組から小中学校の管理職らにあてた依頼文の送付は異例。文書は「文部科学省は県民大会の参加人数に注目している」と指摘。より多い人数が参加することで、検定撤回に向けて圧力をかけることができる―と訴えている。

 具体的には、職員会議での校長からの参加呼び掛け、大会当日の参加状況の確認、PTAと協力した保護者への大会案内―などとなっている。沖教組の山本隆司副委員長は「県民総ぐるみの大会になったことで労使が一致できた」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709131300_03.html

 

2007年9月13日(木) 朝刊 2面

縦覧期限きょうまで/普天間代替環境アセス

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局は八月十四日から開始している方法書の公告縦覧を十三日で終了する。沖縄防衛局は縦覧後、二週間以内(二十七日まで)に住民らの意見を受け付け、その意見概要を県などに送付する。方法書の受け取りを「保留」している県の対応が注目される。

 沖縄防衛局は八月七日に方法書を県などに送付。滑走路の沖合移動などを求める県や名護市は「前提条件が整っていない」として受け取りを保留。公告縦覧の場所提供に応じず、同局の関連施設やホテルなどで縦覧が行われる異例の事態が続いている。

 アセス手続きでは、県は意見概要の受理後、名護市など関連市町村長の意見を聴取した上で、知事意見を九十日以内(県条例に基づくアセスの場合は六十日以内)に沖縄防衛局に提出。同局は知事意見などを踏まえ、方法書を確定する。

 県アセス条例は、知事意見をまとめるために、必要があれば期間内に県環境影響評価審査会の意見を聴くことができる、と規定。県が審査会に諮問するのか注目が集まりそうだ。

 高村正彦防衛相は八日の仲井真弘多知事との面談で「アセス後の修正」を検討することを提案。「知事から否定的な感触はなかった」と強調している。

 一方、仲井真知事は「アセスに入る前に互いの考えを一致させた方がいい」と主張しているが、知事意見への対応については「まだ少し考えてみたい」と明言を避けている。


「不快感与え申し訳ない」/沖縄防衛局長


 沖縄防衛局の鎌田昭良局長が着任会見で再編交付金について「ボーナスのようなもの」と発言したことに関し、同局長は十二日、「交付については関係市町村が協力をしているかどうかが一つの判断基準であるとの趣旨を述べたものだが、『ボーナス』という言葉を使用したことで関係者の方々に不快感を与えたことは申し訳ないと思う」とのコメントを発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709131300_04.html

 

2007年9月13日(木) 朝刊 2面

未明離陸は困る 地元の声伝えて/東門市長

 【沖縄】沖縄防衛局の鎌田昭良局長は十二日、沖縄市役所に東門美津子市長を訪ね、就任あいさつをした。

 米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など五機が十一日に未明離陸した問題について「未明離陸をされたら困るという地元の声を、米軍側にしっかりと伝えたい」と述べた。

 東門市長は「騒音防止協定が守られていない現実と市民の負担は、本土に届いていない。沖縄の現実と市民の思いを政府に伝えてほしい」と強調した。

 これに対し、鎌田局長は、米軍から未明離陸の情報が入った時点で実施しないよう求めていたことを説明した上で「結果的に実施されてしまい申し訳なく思う」と陳謝。「安保の最前線である沖縄で県民の負担を肌身で感じ、現場をしっかり見て勉強したい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709131300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月13日朝刊)

[安倍首相退陣]

不可解で理解しがたい


宰相としての見識疑う

 安倍晋三首相が本会議のベルが鳴る直前に突然退陣を表明した。

 所信表明しながら、それに対する各党・会派の代表質問を受けずに政権を投げ出す。本会議直前の辞意表明は前代未聞であり、国会を混乱させた責任は極めて重大だ。

 首相の政治家としての見識を疑わざるを得ない。

 首相は十二日午後二時から開いた緊急会見で、辞意を決断した理由の一つに、インド洋での海上自衛隊の給油活動について継続の見通しがたたないことを挙げていた。

 さらに、民主党の小沢一郎代表に党首討論を呼び掛けたが断られたことも理由にしている。

 政権を投げ出すにはあまりにも希薄な理由であり、それこそ国民への説明責任を欠いた言動といっていいのではないか。

 十一月一日に期限切れを迎えるテロ対策特別措置法の延長について、首相が「国際公約」と言い、「職責を賭して取り組む」と述べたのは三日前だ。

 民主党など野党の反対で、そのまま延長するのは事実上、困難には違いない。だが、それでも自民党は、一時的に給油活動が中断したとしても衆院での再議決で継続できるよう新法を提出する方針を固めていたではないか。

 なのに、会見では「自らけじめをつけることによって、局面を打開しなければいけない。そう判断するにいたった」と述べるにとどまっている。いったい、どのようなわけがあったのだろうか。

 国民が知りたいのはそこなのに、会見で肝心の理由が明らかにされたとは言いがたい。

 辞めるのであれば、民意が得られず惨敗した参院選の直後であり、内閣を改造し臨時国会で自らの政策を訴えた後ではなかったはずだ。

 国民はまたしても十分な説明が得られなかったのであり、退陣に対する不可解さは依然として残されたままだ。

 宰相として国民を導くという自覚に欠けていると指摘されても仕方なく、結局、首相の器ではなかったというのが国民の正直な気持ちだろう。


求心力を欠いた結果


 「お友達内閣」と揶揄された安倍内閣は発足当初からおかしかった。

 まず佐田玄一郎行政改革相が政治資金問題で辞任したのをはじめ、松岡利勝農相、久間章生防衛相、赤城徳彦農相がそれぞれの理由で辞めている。

 柳沢伯夫厚生労働相は「女性は産む機械」発言でひんしゅくを買い、改造内閣の農相に就いた遠藤武彦衆院議員もわずか一週間で辞めてしまった。

 ひとつの内閣で短期間にこれだけの辞任・更迭者が出たのはかつてない。

 最後には首相までが退陣するのだから、首相自身の人事における眼力のなさとともに、自民党の危機管理能力も深刻だといっていい。

 戦後生まれの初の首相として、60%を超える高い支持率で船出した安倍内閣だったにもかかわらず、一年もたたないうちに支持率は低下し、先の参院選では歴史的大敗を喫した。

 早期退陣を求める民意を無視して首相を続投させた責任は、それを許した党幹部にある。

 一方で、健康面に不安があったとはいえ自らの政策を推し進めることができないことを理由に政権を投げ出すのも首相が取るべき行動ではあるまい。

 一連の動きは首相のひ弱さを露呈するとともに、求心力のなさも浮き彫りにしたといえよう。


背負った十字架は重い


 自民党は首相の退陣表明を受けて後継総裁選びに入る。

 総裁選は十四日告示、十九日投票案が浮上しているが、その間の政治空白は避けられない。

 新たな総裁が選出されても、憲政史上例を見ない首相退陣の仕方が政治に対する信頼をさらに失墜させたのは間違いない。

 その責任はまた連立を組む公明党にもあり、与党新体制によるこれからの政権運営は“いばらの道”になることを覚悟する必要がある。

 谷垣派の中谷元・元防衛庁長官は「参院選直後に身を引くべきだった。辞めるべき時に辞めず、辞めてはいけない時に辞めた」と話している。国民誰もがそう感じているのであり、そのツケは新政権にもついて回るはずだ。

 自民党は大きな十字架を背負った。国民の信頼を回復するために何が必要か。まずそのことを国民の視線に立ち、真摯な気持ちで検証することだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070913.html#no_1

 

琉球新報 社説

首相退陣表明 無責任極まる決断/最高責任者の見識を疑う

 安倍晋三首相が12日、突然退陣を表明した。臨時国会で10日に所信表明演説を行ったばかりである。12日は各会派の代表質問を受けることになっていた。その直前の退陣表明は理解に苦しむ。

 11月1日に期限切れとなるテロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊のインド洋での米軍などへの給油活動の継続のために「局面を転換する」ことが退陣の最大の理由である。

 格差の拡大、政治とカネの問題、年金記録不備問題へのけじめならば、まだ理解もできよう。しかし、安倍首相は会見で「テロとの戦い」の継続を訴えることに終始した。国政を混乱させることにわびる言葉もなかった。

 無責任と批判されても返す言葉はあるまい。

なぜこの時期に

 安倍内閣は「美しい国づくり」を掲げて昨年9月に発足、ことし8月末に改造内閣を発足させたばかりである。

 安倍首相は参院選惨敗後も「逃げてはならない。厳しい状況になるが、政治の空白は許されない」として、世論や与野党内外からの退陣すべきだとの声に耳を貸さなかった。

 にもかかわらず、なぜこのタイミングでの退陣表明なのか。安倍政権に国民が実質的に「ノー」を突きつけた参院選後に退陣するべきではなかったか。遅きに失した決断と言わざるを得ない。

 民主党の小沢一郎代表との党首会談を断られたことも退陣理由に挙げたが、果たしてそれが理由になり得るのか。

 安倍首相は、海上自衛隊の給油活動は「国際社会から高い評価を受けている。何としても継続していかなければならない」とのテロ特措法延長への強い決意を示してきた。

 しかし、野党が過半数を占める参院で否決されるのは、ほぼ確実である。

 政府が国会に提出する方針を固めている国会承認を必要としない給油支援新法案も、首相の思惑通りにはいかない公算が大きい。

 テロ特措法に進退を懸けた首相にとってはまさに正念場である。同法の評価は別として、難問を解決し、難局を打開してこその首相である。

 自らの狙い通りにいかないからと、投げ出せるほど首相の職務は軽いものなのか。もともと首相の器ではなかったとの思いもわく。

 自らの所信表明に対する質問を各会派にさせないまま、首相を辞めることは前代未聞の出来事であり、許されることではない。

 首相はブッシュ米大統領に給油活動の継続を約束している。給油活動継続は「国際公約」とも公言している。

 退陣は、それが実現できない情勢になったことへのけじめなのか。首相就任以来の対米追従姿勢が自らを追い込んだとも言えるだろう。

成果に乏しく

 首相は教育基本法を1947年の制定以来、初めて改正し、憲法改正に向けた国民投票法も制定した。首相はそれを成果として挙げるが果たしてそうか。

 日本が危険な方向へと向かうのではないかとの不安を抱いた国民も少なくない。

 数にものを言わせた強行採決という形で重要法案を次々と成立させた。

 国民生活にとって大切な法案を、十分な審議を経ずに成立させる強硬な姿勢が国民の不支持につながった側面もある。

 沖縄の基地問題では何ら成果を挙げられなかった。

 今回の所信表明でも「在日米軍の再編については、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力をあげて取り組むことにより、着実に進める」と述べた。

 しかし、首相をはじめ政府は、地元の声を押さえ付けてきたのが現実である。

 政府に従う自治体などにだけ再編交付金を与える米軍再編特別措置法はその象徴である。

 安倍首相は防衛相に任せっきりで、積極的に地元の声を聞くこともなく、沖縄の基地問題解決のため、指導力を発揮することは最後までなかった。

 閣僚らの政治とカネの問題が噴出した際は、かばうことに終始し、即座に対応しなかった。首相の任命責任はうやむやのままである。政治空白を招いた責任も重大だ。

 テロ特措法延長だけが退陣理由とすれば、国民感覚からは大きくずれている。

(9/13 9:47)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27103-storytopic-11.html

 

2007年9月13日(木) 夕刊 5面

記述復活へ懇談会/「集団自決」修正

 文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を二○○六年度の検定で削除させた問題で、教科書の執筆者や歴史学者らが中心となって記述の復活を求める懇談会を二十五日、東京都内で発足させる。各出版社の執筆者や編集者らが連携し“共同歩調”を取る。

 懇談会は、〇六年度検定で記述が削除された実教出版「高校日本史B」執筆者の石山久男さんらが中心となって呼び掛けている。記述が削除された五社七冊の教科書執筆者だけでなく、小中高校の地理、歴史、公民の教科書執筆者、教科書会社の編集者、歴史研究者などに対し、幅広く参加を呼び掛けている。

 同様の懇談会は一九八〇年代にもあったが、検定制度の変更で消滅していた。

 懇談会の再発足に琉球大学の高嶋伸欣教授は「文科省の検定意見を拒否すれば、教科書会社は倒産の危険性に直面するため、執筆者は記述の削除を受け入れざるを得なかった。しかし、懇談会の再発足で、執筆者や出版社が連携を強化し、文科省の強権的な検定に異議を唱え、記述の復活を求めてほしい」と期待している。


糸満市でも実行委結成

 【糸満】二十九日に宜野湾市内で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、糸満市(西平賀雄市長)は、十三日までに同市実行委員会を結成することを決めた。十六日に市役所内で第一回の会合を開く。

 実行委員長は西平市長。事務局は市総務課に設置する。十六日の「設立準備会および第一回実行委員会」で市内二十の関係機関・各種団体代表者を委員として選任し、今後の取り組みなどを確認する。

 また、西平市長は市全職員に県民大会に参加するよう呼び掛けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709131700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月11日、12日)

2007年9月11日(火) 朝刊 1・22・23面

戦隊長下の軍命証言/「集団自決」沖縄法廷

軍曹が手榴弾配布/金城さん体験証言

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、住民に命令を出したという著作への記述で名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の戦隊長とその遺族が作家の大江健三郎氏と岩波書店に、出版の差し止めや慰謝料などを求めて大阪地裁で争われている訴訟の所在尋問(出張法廷)が十日、福岡高裁那覇支部の法廷であった。渡嘉敷島で「集団自決」を経験した金城重明氏(78)が被告岩波側の証人として出廷。兵器軍曹から住民に手榴弾が配られ、「一個は敵に投げ、もう一個で死になさい」と訓示があったと、後になって当時の兵事主任からじかに聞いたと証言。自身の経験とも併せ、戦隊長指揮下の軍命令なしに「集団自決」は起こり得なかったと訴えた。

 一方で原告・戦隊長側は、島にいた金城氏自身が手榴弾が配られた現場に呼ばれていないなどとして、兵事主任の話の信用性に疑問を提起。金城氏が指摘する軍命令について、何を軍命ととらえ、具体的にどう伝えられたか証言するよう求めたという。

 法廷は非公開で、原告と被告双方の代理人が終了後に記者会見した。

 被告代理人によると、金城氏は、当時の兵事主任だった富山真順氏から「米軍が上陸する約一週間前に、兵器軍曹が役場に青年団や職員を集めて手榴弾を一人二個ずつ渡した。『一個は敵に投げ、もう一個で死になさい』と訓示していた」という話を聞いた、と証言した。

 また米軍の上陸時に、軍が住民を危険な陣地のそばに集まるように命じたことは、逃げ場のない島で住民を死に追い込んだことになると指摘。集まった住民の間で軍による「集団自決」命令が出たとささやかれる中、軍の伝令が村長に伝えられたとする元職員の証言などを軍命令の存在の根拠に挙げた。

 渡嘉敷島では、村長の発声で「天皇陛下万歳」が三唱され、手榴弾による「集団自決」が始まった。

 金城氏は「村長が独断で住民に『集団自決』命令を出すことはあり得ず、軍の命令なしに、『集団自決』は起こり得ない」と強調。

 「住民は軍の命令によって死んだのであり、その責任者は戦隊長」と訴えた。

 同訴訟は十一月九日に原告と被告の本人尋問があり、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏や大江健三郎氏らが証言。十二月二十一日の最終弁論で結審し、来年三月までに判決が出る見通し。


     ◇     ◇     ◇     

苦悩62年「真実」重く/愛する者に手を・・・目を閉じ語る


 大阪で続いていた「集団自決」訴訟の審理が、初めて沖縄の地で開かれた。十日午後、福岡高裁那覇支部であった所在尋問(出張法廷)で、被告側証人の金城重明さん(78)が、体験を基に「集団自決(強制集団死)」に軍命があったと証言した。県内外から支援者が駆け付け、被告側の勝利と教科書検定の撤回を勝ち取ることを誓った。原告側は金城さんの証言に、「推測だ」と切り返した。

 非公開となった「集団自決」訴訟の「出張法廷報告集会」(主催・沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会、大江岩波沖縄戦裁判支援連絡会、大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会)が十日、那覇市の八汐荘で開かれ、証人尋問に立った金城さんや弁護団が証人尋問の報告をした。県内や大阪、東京などの支援団体ら約百二十人が参加した。

 証人尋問を終えた金城さんは、こぶしを握り締め静かな口調で法廷の様子を語り始めた。愛する者に手をかけた過去を「手をかけなければ、非人情という思いがあった」と目を閉じながら語った。

 三百二十九人が「集団自決」の犠牲になった渡嘉敷島。座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(90)が自決命令は出してないとの証言に、金城さんは「六十二年前の本人の言葉だから、(命令していないという)うそは誰でも言える。私は六十二年間苦しんできたのに、隊長は苦しんだのか」と疑問視した。

 体調面も心配される中、原告側の反対尋問では、「痛いところに針を刺されるような気持ちだった」と苦悶の表情を見せる場面もあったが、「言いたいことは言えた」と振り返った。

 被告側の近藤卓史弁護士は「『集団自決』は自発的に起こり得ない実相を金城さんに証言してもらった」と体験者の証言の重みを語った。また、教科書検定について「戦争の残酷な部分をぼかしている文部科学省の責任は大きい」と批判した。

 集会の最後に、主催者側が「歴史の歪曲を許さず、沖縄戦の真実が反映された公正な判決が下されることを強く求める」とのアピール文を読み上げた。


教科書問題と「同根」/被告支援者「戦争できる国目的」


 「集団自決」訴訟の出張法廷に駆け付けた被告側の支援者は十日、原告の意図と、軍関与の記述を削除した文部科学省の教科書検定が「同根だ」と口々に指摘した。被告側の勝利と、検定撤回を同時に追求していく決意を示した。

 沖縄の近代史を研究する琉球大学大学院の赤嶺玲子さん(24)=沖縄市=は「軍隊がなければ、家族に手をかけることも、『集団自決』もなかった」と信じる。「裁判も教科書問題も、背後には戦争ができる国にしようとする政治が絡んでいる。戦争に行くのも、家族に手をかけるのも嫌だ」と力を込め、一連の流れを止めたいと語った。

 「原告の狙いは名誉の回復だけでなく沖縄戦の史実の改ざんにある」と感じた同大三年の西山佳那さん(22)=宜野湾市。「歴史を政治的に利用するのはおかしい」と訴えた。

 前日に初めて渡嘉敷島を訪れた長澤浩二さん(66)、加代子さん(63)夫妻=大阪市。「集団自決」の証言をしてくれた戦争体験者は、多くを語らなかった。加代子さんは「今でも話しづらいことなのだ」と実感したという。訴訟のことは、全国紙の小さな記事で知った。「少しでも力になりたくて」と、沖縄行きを決めた。県民大会に向けて大阪で開かれる集会にも、参加する予定だ。

 大阪市の上地武さん(45)は読谷村出身。沖縄戦裁判支援連絡会のメンバーとして駆け付けた。「教科書問題にも、政治的な意図を感じる。軍関与の削除は軍国主義の復活であり、絶対許せない」と、語気を強めた。

 沖縄平和ネットワーク首都圏の会の柴田健代表は「原告や文科省はもう沖縄は抵抗できないだろう、となめてかかった。ところが、体験者の気持ちに火をつけてしまった」と指摘。「教科書の記述にも決着がつくような、踏み込んだ判決を期待したい」と語った。

所在尋問での証言について報告する金城重明氏=10日午後、那覇市松尾・八汐荘

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111300_01.html

 

2007年9月11日(火) 朝刊 1面

県教委員長も参加へ/9・29県民大会

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の仲里利信実行委員長(県議会議長)は十日、県庁などに仲井真弘多知事と中山勲県教育委員会委員長を訪ね、大会出席とあいさつを求める依頼文を手渡した。既に参加を明言している仲井真知事は「大会に出席し私の考えを述べたい」と承諾、代理で受け取った仲村守和教育長は「積極的に参加したいとの意向を委員長は持っている」と話した。

 仲里委員長は「国の姿勢を正すためにも、県民や教育代表である知事や委員長の発言は必要だ」と要請。仲井真知事は十一日の庁議で、職員にも出席依頼するとした。

 また、実行委は県民大会後の来月十六日にも、検定意見撤回の意見書を可決した四十一市町村議会議長らとともに、東京で要請行動を展開したいと提案。仲井真知事は「喜んでお供したい」と答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111300_02.html

 

2007年9月11日(火) 朝刊 2面

「再編交付金はボーナス」/防衛局長着任会見

 沖縄防衛局の鎌田昭良局長は十日の着任会見で、再編交付金について「交付することが、再編の円滑かつ確実な実施に貢献するかどうかで判断している。ある種のボーナスのようなものなので、一生懸命やった(協力した)ところにはその分、手当てするというシステム」との認識を示した。防衛省が現時点で名護市を交付対象としない理由については、同市が米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書の受け取りを保留していることが要因との見方を示唆した。

 鎌田局長は「名護市はアセス方法書の受け取りを拒否している事態にあり、総合的に勘案してどうするのか決めていく」と指摘。同時に「われわれは交付したいと思っている。条件が早く整うことを希望している」と述べた。

 鎌田局長はまた、高村正彦防衛相が仲井真弘多知事との面談で普天間飛行場代替施設について「アセス後の修正」検討を提案したことに触れ、「私も(面談に)同席したが、大臣の提案に(知事は)絶対的に駄目だという否定的な感触はなかった」との認識を明らかにした。

 鎌田局長は普天間移設事業について「アセスを進める中で客観的なデータが出てくるので、その結果を県、名護市など地元に伝え、丁寧に説明していくというのがわれわれのスタンス」と説明。V字形の政府案に関しては「現時点で政府側として理想的な形であり、なかなかこれを変えるだけの合理的な理由がなければ変更するのは難しい」と言及し、アセス後の修正の可能性に否定的な見方も示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月11日朝刊)

[防衛相・知事会談]

毅然たる姿勢 堅持せよ

 普天間飛行場の移設問題で高村正彦防衛相は就任後初めて沖縄を訪れ、仲井真弘多知事、島袋吉和名護市長らと会談した。政府も地元側も、それぞれ従来の考えを譲らず、議論は平行線のままだった。

 両者の溝は確かに埋まっていない。埋まる気配も見えない。だが、事態は対立点を抱えたまま、既成事実の積み重ねによって、じわりじわり政府のペースで進んでいるようにみえる。

 久間章生元防衛相と小池百合子前防衛相に対して、県が「地元の要望を聞いてくれるのではないか」と淡い期待を抱いたのは確かだ。

 滑走路の沖合移動と普天間飛行場の三年以内の閉鎖状態実現を求める県に対し、かたくなにこれを拒み続けてきたのは前防衛事務次官の守屋武昌氏である。

 V字形滑走路案を実現するために守屋氏が採用した新たな手法は二つ。地元の意見に振り回されないことと、「食い逃げ」を許さない、というものである。

 基地建設の受け入れを表明した北部市町村に対し、手厚く振興策を講じてきたにもかかわらず、この十年余り、基地建設は少しも前に進まなかった。そのトラウマから生まれた強硬策だといっていい。

 高村防衛相もどうやら、守屋路線を踏襲していくつもりらしい。

 だが、この手法は地方自治・地方分権の観点から言っても、県土の均衡ある発展を目指す沖縄振興特別措置法の趣旨からしても、極めて問題の多いやり方だ。

 安倍晋三首相は臨時国会冒頭の所信表明演説で在日米軍の再編問題にふれ、「沖縄など地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力をあげて取り組むことにより、着実に進めてまいります」と語った。

 にもかかわらず現実には、地元の頭越しに日米合意案が決まり、修正を求める県や名護市に対しては、北部振興事業費を凍結し、米軍再編法に基づく再編交付金をちらつかせて協力を迫るといった案配だ。度が過ぎると言わざるを得ない。

 高村防衛相は「合意案はバランスの非常に取れた合理的な案」だと述べ、修正の理由が見いだせないとの考えを示した。沖合移動案と合意案のどっちがすぐれた案かをいくぶん挑発的に県民に示したような印象を受ける。

 県はそれにどう答えていくのか、これからの舵取りは容易でない。安易に妥協すれば、これまで主張してきたことがすべて瓦解し、県民の反発と失望を買うだけである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070911.html#no_1

 

2007年9月11日(火) 夕刊 1・5面 

F15未明離陸 109デシベル/嘉手納基地

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が十一日未明、米本国へ向け同基地を離陸した。同日午前四時三十一分に、北谷町砂辺地区で一〇九・九デシベル(未補正値、電車通過時の線路脇に相当)、嘉手納町屋良では最高値九五・三デシベル(騒々しい工場内に相当)をそれぞれ計測した。米軍は八月二十八日にも基地周辺自治体の反対を押し切って未明離陸を強行したばかりで、周辺自治体の首長らは繰り返される爆音被害に反発を強めている。

 F15戦闘機四機は午前四時三十分ごろから、四機が相次いで同基地南側滑走路から北谷町の方向に離陸。同三十四分には、KC10空中給油機が沖縄市方向に飛び立った。

 嘉手納町の職員が「安保の見える丘」で測定した騒音は、F15の離陸順に、九三・九デシベル、九四・一デシベル、九二デシベル、九〇・一デシベル。KC10空中給油機は八二・五デシベルだった。同地区に常設されている騒音測定器は、最大で九五・三デシベルを計測した。

 F15などの未明離陸に先立ち、同日午前三時ごろにはP3C対潜哨戒機が同基地に着陸した。同機の着陸については周辺自治体への事前通知がなく、騒音防止協定で定められた午後十時から翌日午前六時までの飛行制限が形骸化している実態があらためて浮き彫りになった。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「騒音防止協定に『運用上』という項目がある限り、米軍はその上に居座って住民に負担を強いる。米軍を含め、国家間の問題として対処するよう、政府に負担軽減を訴えなければならない」と指摘した。

 三連協は今回の未明離陸について、同基地司令官に直接抗議する方針で調整している。北谷町議会(宮里友常議長)は十一日午後、基地対策特別委員会を開き、対応を協議する。沖縄市議会(喜友名朝清議長)の基地に関する調査特別委員会は、十四日に委員会を開く方針だ。

 今回の未明離陸は、「アイロン・フロー計画」と呼ばれる、同基地の旧型F15を製造年の新しい機体に更新する措置に伴うもの。当初は十日未明に離陸を予定していたが、F15一機が「離陸前点検で軽度の修理が必要」として延期されていた。


     ◇     ◇     ◇     

抗議無視 安眠妨げ/協定形骸化に怒り


 【中部】住民の安眠は「運用上の理由」でまた妨げられた―。十一日未明の米軍嘉手納基地。F15戦闘機四機とKC10空中給油機一機が相次いで離陸し、轟音が寝静まった住宅街を切り裂いた。先月の旧盆明け離陸からわずか二週間で再び離陸を強行したことに、基地周辺の首長や議会関係者、住民からは「軍事優先だ」「抗議が無視された」「時間帯を考えろ」と怒りと抜本策を求める声が次々と上がった。

 沖縄市の東門美津子市長は「住民への配慮を全く考慮することなく、米軍の必要性だけを優先した対応だ」と米軍の未明離陸を批判。「騒音防止協定も形骸化されており、国の強い姿勢も問われている」と指摘した。

 沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「私たちの抗議は無視されている。怒りをどこにぶつけていいのか」とあきれた様子。「未明離陸によって市民の生活がどれだけ脅かされているか、米軍はきちんと認識すべきだ」と強調した。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は基地から約二百メートルしか離れていない自宅で離陸を確認。「すさまじい爆音。中止させる抜本的な解決策が必要。北谷町、沖縄市の議会と連携していきたい」と話した。

 未明離陸の際には睡眠薬を飲まなければ眠れないという北谷町砂辺に住んで五十年になる伊礼信子さん(74)。「毎日家の真上を飛んで、地響きのような爆音に苦しめられる。もう我慢ならない」と怒りで声を震わせた。早朝から弁当を作っていた砂辺の主婦大城ミヨさん(69)も「ビューンという、窓を閉めていてもうるさいくらいの騒音。寝ていた家族も全員起きてしまった。何でこんなに早くから飛行機が飛ぶのか」と憤った。

 嘉手納町屋良に住む主婦の池原菊江さん(66)は「ゴーン」という音で目を覚ました。「嘉手納飛行場の中で何が起こっているのか住民には知らされない。いつか戦争が起きるんじゃないかと不安になる」と話した。

 滑走路の延長線上にある沖縄市池原の沖縄職業能力開発大学校。校内には約百三十人が生活する学生寮があり、寮長の大月隆博さん(21)は「朝、うるさくて跳び起きた人もいた。時間帯を考えて飛んでほしい」と訴えた。嘉手納基地からの騒音で、テレビの音や授業中に教師の声が聞こえないこともたびたびあるという。「長崎から来て三年になるが、毎日うるさい。基地を早くなくしてほしい」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111700_01.html

 

2007年9月11日(火) 夕刊 1・5面 

知事、職員に参加促す/検定撤回県民大会

 仲井真弘多知事は十一日午前の臨時庁議で、二十九日に開催される教科書検定意見撤回を求める県民大会に県職員が参加するよう呼び掛けた。この種の大会で、知事が職員に参加呼び掛けをするのは極めて異例。臨時職員を含めると知事部局だけで約六千人の職員がおり、知事の参加呼び掛けで、大会全体の動員にも弾みがつきそうだ。

 仲井真知事は庁議の冒頭、県民大会への職員参加を呼び掛けた上で、「高校歴史教科書の沖縄戦の集団自決(強制集団死)の記述から軍の関与が削除されていることは大いに遺憾である。(軍関与については)係争中だが、現在、教科書の記述が削除される理由はまったく分からない」と、軍関与の文言を削除した検定意見にあらためて疑問を投げ掛けた。

 その上で、「沖縄戦の実相について正しく後世に伝えることは、子どもたちが平和な国家や社会の形成者として育っていくためにも必要だ」と述べ、検定意見撤回の必要性を強調した。

 知事の参加呼び掛けを受け、県は各部単位で最大動員できるよう、周知していくことにしている。


     ◇     ◇     ◇     

那覇市長も呼び掛けへ


 翁長雄志那覇市長は十一日午前の市議会定例会で、二十九日に開かれ教科書検定意見撤回を求める県民大会に、市民や職員に参加を呼び掛ける意向を示した。仲村家治氏(自民・無所属連合)への答弁。

 翁長市長は「沖縄戦の実相を正しく検証していかなければならないという多くの県民の思いが原動力となっており、県民大会への参加は大変意義あるものと確信している」と述べた。

 高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述が削除されたことについては、「適切な教科書を確保するという狙いが達成できていない」と指摘した。


宜野湾市が実行委/市長先頭に参加呼び掛け


 【宜野湾】二十九日に宜野湾市内で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、宜野湾市の伊波洋一市長は十一日午前、臨時庁議を開き、同市実行委員会を結成することを決めた。実行委員長に伊波市長、副委員長に伊波廣助市議会議長らを選出。市内五十二団体や地域住民に参加を呼び掛け、十八日に正式な結成総会を開く。

 庁議では、ホームページや防災無線で市民に参加を呼び掛け、市としても「集団自決(強制集団死)」に関する記述の回復を求めることを決定。大会の円滑な実施に向け、県民大会実行委と連携を図ることを確認した。

 伊波委員長は「宜野湾市は開催地でもあり、県民大会があるという周知徹底が重要だ。横断幕で市民参加を呼び掛けてはどうか。大会の機運を盛り上げよう」と、決意を新たにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709111700_02.html

 

2007年9月12日(水) 朝刊 1面

検定 審議実態なし/小委、文科省意見を追認

「集団自決」軍命削除/沖縄戦研究者は不在

 文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を二○○六年度の検定で削除させた問題で、検定を担当した教科用図書検定調査審議会(教科書審議会)の日本史小委員会では「集団自決」の記述について審議委員の話し合いはなく、意見も出なかったことが十一日、分かった。文科省の教科書調査官が検定意見の原案を示して説明し、そのまま意見が素通りしていたことが明らかになった。沖縄タイムス社の取材に、教科書検定審議会日本史小委員会の複数の委員が初めて証言した。=教科書検定問題取材班

 日本史小委員会は十人以下の大学教授らで構成され、うち四人がアジア太平洋戦争など日本近現代史の専門家。だが、沖縄戦について詳しく研究した委員は皆無だ。文科省は全審議委員の氏名、所属は公表しているが、担当教科・科目や部会、小委員会の審議内容はこれまで明らかにしていない。

 委員の一人は「日本史担当の審議委員の中に沖縄戦を専門としている先生はおらず、議論のしようがない」と振り返った。その上で「日本史小委員会では『集団自決』に関する検定意見について教科書調査官の説明を聞いただけ。話し合いもせずに通してしまった。歯痒い思いだ」と語った。

 別の文科省関係者も、「日本史小委員会で『集団自決』についての具体的な議論はなかった。『調査官の意見、説明を聞いただけ』といわれればその通り。審議会では学問的な論争はしていない」と認めた。文科省はこれまで、「『集団自決』は日本軍の強制によるものだった」とする記述に対し「沖縄戦の実態について、誤解する恐れのある表現である」と検定意見をつけ、日本軍の強制に関する記述を削除させたことについて、「学術的な検討を得た審議会の決定」と説明してきた。

 伊吹文明文科相は、衆院文部科学委員会で「文部科学省の役人も安倍(晋三)首相もこのことについては一言も容喙(口出し)できない仕組みで教科書の検定は行われている」と答弁、政府の関与を一貫して否定し続けている。

 しかし審議会には検討の実態がなく、文科省から発案された調査意見が追認されただけであることが明らかになった。


政府の責任重い


 山口剛史・琉球大准教授 教科書審議会で審議されずに教科書調査官の発案を追認していたというのは予想通り。さも公平な審議がされたように説明してきた政府の責任は重い。国会で真相を明らかにし、これを機会に公平で開かれた審議会に改め、沖縄戦の正しい記述を取り戻すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121300_01.html

 

2007年9月12日(水) 朝刊 24・25面

官僚主導 黙る「素人」/軍強制 あっさり消滅

 「委員に沖縄戦の専門家はいない」「役所が検定を決めている」―。ベールに包まれた教科書検定の内幕が十一日、教科用図書検定調査審議会(審議会)日本史小委員会委員や文科省関係者の証言で初めて明かされた。委員会が実質的に沖縄戦の“素人”で構成され、文科省の教科書調査官が作成した原案に沿って「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除する検定意見が付されていた実態。審議委員の一人は「ここまで軍の関与が削られるとは思わなかった。委員を引き受けるんじゃなかった」と本音をぶちまけた。=教科書検定問題取材班

 国際政治に詳しい審議委員は、都内の外務省施設で取材に応じた。

 「沖縄戦については委員から議論が提起された記憶がない」と委員会のやりとりを再現。「調査官の原案(調査意見書)に沿って粛々と進んだ」とあっさり認めた。

 関係者によると、調査官は同じ文科省職員から「先生」と呼ばれ、検定に絶大な権限を持っていることがうかがえる。

 この審議委員によると、近代日本史に関し、委員会で主な議論になったのは(1)イラク戦争への国連決議の有無(2)第二次世界大戦の呼称(3)南京大虐殺の犠牲者数―など。

 文科省は大阪で提起された「大江・岩波裁判」と検定との関連性を否定しているが、委員は「沖縄戦『集団自決』の説明で、調査官は大阪での裁判を理由の一つに挙げていた」と証言。文科省が係争中の事案を根拠に、調査意見を付していたことを明かした。

 委員は修正後の教科書を見て「あたかも関与がないがごとくの表現になってしまった」との印象を受け、「出版社が修正要望にあまりにも過剰反応しすぎた」と教科書会社側の責任に言及した。

 別の文科省関係者は委員の専門分野について「(沖縄戦を)きちんと研究した人はいない」と専門外の委員で審議したことを明かした。関係者によると、「集団自決」をめぐる日本軍の強制の削除について委員会では「特に異論はなく、議論も沸騰しなかった」という。

 一方で「私は検定には過剰な価値を見いだしていない。最終的な責任を負うのは審議会ではないのではないか」と指摘。審議会の決定を“錦の御旗”に掲げる文科省の「公式見解」に異を唱えた。


小委開催2回だけ


 文部科学省の検定意見は、二回の審議会日本史小委員会で決められていたことが十一日、分かった。沖縄タイムス社の情報公開請求に、文科省が二〇〇六年度の教科書審議会第二部会(社会科担当)と日本史小委員会の開催日時や場所を示した資料を明らかにした。

 開示資料によると、高校の日本史教科書について検定意見を決めた日本史小委員会は二〇〇六年十月三十日と十一月十三日の二回、いずれも都内ビルの会議室で開かれ、一回当たり五時間でそれぞれ六点と四点の教科書を対象に審議する予定になっていた。

 日本史担当審議委員によると一回目は全体の説明で「集団自決」への検定意見の説明は二回目にされただけだったという。


     ◇     ◇     ◇     

「歪曲なぜ」問う都民


 文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を二○○六年度の検定で削除させた問題について学ぶ集会「今、なぜ沖縄戦の事実を歪曲するのか(歴史教科書の『集団自決』検定修正をめぐって)」が十一日、東京都練馬区の勤労福祉会館で開かれ、百六十五人が参加した。

 同区では住民が、検定意見撤回を求める意見書を採択するよう、区議会に陳情している。

 集会では、山口剛史・琉球大准教授が、沖縄の検定意見撤回を求める運動が保革を超え、県民大会開催に結び付き、同区など全国にも同調する動きが広がり韓国にも広がろうとしていることなどを紹介。「あの戦争はどのような戦争だったのかを全国、アジア全体で考え直す機会になっている」と話した。

 岩波書店の岡本厚さんは「岩波・大江訴訟」について、「今回の教科書検定の大きな材料とされたが、多くの体験者が証言を始めるなど逆に、教科書検定が裁判に影響を及ぼしている」と説明。「この訴訟に勝ち、真実を伝えていく大きな力にしたい」と訴えた。

 同区で区議会への陳情署名を呼び掛けている柏木美恵子さんが、十一日までに千八百四人の署名が集まったことを報告。「私たちの運動はささやかだが、この発信が全国に広がり『命どぅ宝』の言葉が伝わるよう、検定撤回にむけて粘り強く続けていく」と決意を示すと大きな拍手がわいた。


東京県人会も撤回要求へ


 東京沖縄県人会(川平朝清会長)は二十七日の理事会で、教科書検定意見の撤回を求めるアピールを宣言する。

 二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に合わせて行うもので、同県人会では「県出身者として放ってはおけない問題。県人会の立場を明らかにし、検定撤回を求めたい」と話している。

 アピール文は今後検討し、宣言には理事会の全会一致が条件。県人会の金城驍副会長(73)は「本島や宮古、八重山でも県民大会が開かれる。県議会も二度決議しており、その立場を支持したい」としている。


姉妹市議会にも意見書採択依頼/浦添市議会が蒲郡市に


 【浦添】浦添市議会(大城永一郎議長)は十日、姉妹都市である愛知県蒲郡市の市議会(小林康宏議長)に「集団自決(強制集団死)」の日本軍関与を削除した文部科学省の教科書検定について、検定撤回を求める意見書を提案、可決するよう求める依頼文を送った。

 浦添市議会は五月に検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決しており、依頼書には同意見書を添付している。


県民大会実行委 参加を呼び掛け/報道各社訪問


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の仲里利信委員長らは十一日、沖縄タイムス社など報道各社を訪ね、大会への参加呼び掛けと協力を求めた。十二日にも、参加予定の千七百―千八百団体に出席依頼文を送付、県民の幅広い参加を目指す。

 仲里委員長は「未来を担う若者たちに悲惨な戦争を体験させないためにも、大会を成功させ検定意見を撤回させたい」と意気込みを語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121300_02.html

 

2007年9月12日(水) 朝刊 2面

泡瀬水域期限更新/東門市長が陳謝

 【沖縄】米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長は十一日、市役所で記者会見し、米軍側に一年間の期限を付けて更新依頼書を送付した経緯を説明するとともに、市民への説明がないまま更新手続きを済ませていたことに「申し訳なく思う」と陳謝した。

 東門市長は同協定の更新期限が今月八日に迫る中、既に八月三十一日に米軍への更新依頼書を沖縄防衛局に送付していた。

 協定が必要とされる中城湾港泡瀬沖合の埋め立て事業について、東門市長は「事業のすべての情報を公開し、市民の声を聞いて判断する」と公約に掲げ年内に結論を出す方針を示している。

 市民への説明がなかったことには「更新期限の日付を六月ごろ知り、内部で検討するうちに更新期限を迎えてしまった。しっかりと市民に説明して、分かってもらえるように努力したい」と述べた。

 東門市長は、米軍からの回答がまだないことを挙げた上で「一年以上の更新を求められた場合はその時に判断する」と説明。埋め立て後の土地の一部が保安水域にかかり「新たな基地の提供になる」と懸念の声があることには、「保安水域にかかる部分は現在工事が進められている第一区域ではなく、おおむね二〇一三年以降に埋め立て予定の第二区域だ。一年間の更新であれば、新たな基地を提供する実態はない」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121300_08.html

 

琉球新報 社説

「ボーナス」発言 裏にある政府の高圧姿勢

 在日米軍再編への協力の度合いに応じて関係自治体に支給される再編交付金について、鎌田昭良沖縄防衛局長が10日の着任記者会見で「ボーナスのようなもの」との認識を明らかにした。

 ボーナス(賞与)とは、褒めて与える金品という意味だ。再編交付金は負担の増加に見合う形で支給されるはずだが、事実上、基地、部隊、訓練などを受け入れた地域に対する特別な「褒美」という位置付けになるわけだ。

 言葉の裏に、基地を受け入れるなら金を出すのでありがたく思いなさい―といった、高みから見下ろして無理にでも要求をのませる政府の姿勢が透けて見える。

 沖縄は去る大戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦を体験した。戦後は米軍施政下に置かれ、広大な土地が米軍基地として強制的に接収された。基地は日本に復帰した後も居座り続け、現在も在日米軍専用施設面積の4分の3が沖縄に集中している。

 鎌田局長の発言からは、意思に反して基地を押し付けられ、特異な歴史をたどってきた沖縄に対する配慮が感じられない。

 米軍普天間飛行場の移設先となる名護市の島袋吉和市長は11日の名護市議会一般質問で、「そのような発言をしたのであれば、不適切で慎むべきだと考えている」と述べ、不快感を示した。

 高村正彦防衛相は11日の閣議後会見で「なるべく不快感を与えないような言葉を使うように注意をしたい」と述べ、不適切な発言だったことを認めている。

 「ボーナス」との表現が不用意だったことは疑いないが、鎌田局長は沖縄で米軍再編を推進する現地責任者である。政府の方針を自分なりに率直に表現したものと受け止めていいだろう。

 再編交付金は、米軍再編による施設面積や人員の変化、計画の進ちょく率に応じて点数を付け、点数に基本額を掛けて算出される。再編計画の進展度合いによって防衛相の判断で減額したりゼロにできるのが特徴的だ。

 防衛省は、新たな米軍施設に関する使用協定が締結され米軍の運用が制限された場合には交付金を減額する方針を打ち出した。

 まさに札束で顔をひっぱたくような手法である。

 普天間飛行場の移設で、県、名護市は日米合意のV字形滑走路を沖合に移動するよう求めているが、政府はこれを拒否し、現状のままでは名護市は再編交付金の支給対象にならないと警告している。

 沖縄側の要求には一切耳を貸さず、一方的に政府案の受け入れを迫るやり方は県民無視も甚だしい。

 沖縄防衛局長の発言は、高圧的な姿勢を取る政府の動きの延長線上にあり、決して看過できない。

(9/12 9:51)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-27072-storytopic-11.html

 

2007年9月12日(水) 夕刊 1・5面

「集団自決」検定審議/“虚偽”説明に批判噴出

 文部科学省が二〇〇六年度の高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述について、教科用図書検定調査審議会(教科書審議会)で議論されずに軍の強制が削除されたことが明らかになり、県内では批判が広がった。「学術的な検討を得た審議会の決定。首相でも一言も容喙(口出し)できない」としてきた伊吹文明文科相らの説明と大きく食い違う教科書検定の実態。二十九日に開かれる県民大会の実行委員や研究者らは「国のシナリオに乗せられた」「教科書検定で公開性を高めるべきだ」と厳しく指摘、文科省の対応に不満をあらわにした。

 県民大会の仲里利信実行委員長(県議会議長)は「小委員会内で議論がされていないことや文科省意見を追認していることは、独自の調査で調べはついていたが、公にできなかった」と述べつつ、沖縄タイムスの調べで実情が公になったことで「県民大会を受けて再度要請に行くときには、文科省が『口出しできない』と返答してきたことに強く回答を求めたい」と語った。

 七月に県内の行政・議会六団体代表として文科省に撤回を求めた大浜長照石垣市長(八重山郡民大会実行委員長)は「検定結果には首相でも口出しできないというのが文科省の見解だった。子どもの人間形成に影響を与える教科書の検定が実質的に官僚の言いなりだったとは」とあぜん。

 宮古郡民大会実行委員長の伊志嶺亮宮古島市長も「伊吹文科相は役人や首相は口を出せない仕組みだと言っていたが、実態は調査官が読み上げるのを審議委員が追認するだけだったとは、われわれが想像していた通りだ」と厳しい口調。審議委員に沖縄戦の専門家もいなかったことを挙げ、「こうした事実がありながら、口を出せない仕組みだと言い続けてきた文科相に憤りを感じる」と語った。

 実行委の立ち上げに奔走した県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長も「検定する力のない審議会が国のシナリオに乗せられた。国による歴史の捏造だ。審議会に責任を負わせ文科省は裏で操ってはいないか」と批判。

 小渡ハル子県婦人連合会長は「戦争体験者がどれほど苦しい思いで戦後を生きてきたか。専門家を交えず、真実をゆがめたことは許せない。うその史実を教えるなんて、とんでもない」と訴えた。

 検定制度に詳しい琉球大学の高嶋伸欣教授は「軍による強制の記述を復活させて済む問題ではない。文科省は審議会の決定に口出しできないという、偽りの主張に対する説明責任も果たさなければならない」と指摘。その上で「教科書検定制度は限界に来ており、今後は公開性を高め、国民から意見を募る方法を模索するべきだ」とした。


運賃無料化を要請/県バス協、前向き姿勢


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の仲里利信実行委員長らは十二日午前、那覇市の県バス協会を訪ね、来場者の交通の便を図るため、会場近くのバス停で降りる利用者の運賃を無料にするよう要請した。

 県バス協会の中山良邦会長(沖縄バス社長)は、即答はできないとしつつ、「バス業界も厳しいが、県民が盛り上がるのであれば、協会ができることは協力する」と前向きな姿勢を示した。沖縄バス、東陽バス、那覇バス、琉球バス交通の四社で協議、近日中に結論を出すという。

 仲里委員長は「交通の確保が重要課題だ。バス会社の支援なしには成功はない」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

体験者も怒り


 「(文部科学省の)役人に、私たちの苦労が分かるのかと言いたい」。沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述が文科省の教科書調査官主導で削除されていたことに、沖縄戦の体験者や関係者は一斉に怒りの声を上げた。

 渡嘉敷で「集団自決(強制集団死)」を体験した池原利江子さん(84)=那覇市=は「心の底からワジワジーしている。文科省の役人に私たちの苦労が分かるか、と言ってやりたい」と糾弾。

 その上で「(文科省は)何も調査しないで勝手によくも、こんなことを。事実を歪曲するのは絶対に許せない。私たち体験者がつらい思いをどうにか、証言しようとしているのに」と語気を強め、「戦争の事実を消して、子どもたちに何も教えず戦争できる国にしようとしたいんでしょう。県民大会に必ず参加して反対の声を出していきたい」と話した。

 本島南部の激戦地を逃げ惑った瑞慶覧長方さん(75)=南城市。「やはり最初から『軍関与削除ありき』だったのか。われわれ体験者を切って捨てようという恐ろしい歴史修正主義はもともと右翼の思想だったようだが、行政がそんな思想に染まってしまっている」と文科省の対応にあきれた様子。「われわれが受けた皇民化教育以上に恐ろしくなりそうだ。日本国民全体で行政の暴走を止めないといけない」と語った。


県老連が撤回決議


 【中部】「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、県老人クラブ連合会(花城清善会長)は十二日午前、沖縄市民会館で開かれた第三十八回中部地区老人クラブ大会で教科書検定意見の撤回を求めるアピール文を決議、県民大会への参加を呼び掛けた。

 アピール文は、日本軍の関与を示す記述が削除されたことに「まるで住民が勝手に死んだとも読める教科書が全国の子どもたちの手に渡ろうとしている」と危惧。文部科学省が県議会や県教育長らの要請を受けても撤回に応じなかったことに「県民の怒りは頂点に達している」と糾弾した。


宜野座議会も全12人参加へ


 【宜野座】宜野座村議会(小渡久和議長)は十二日、全員協議会を開き、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に議員十二人全員で参加することを決めた。


日南・川崎市に協力を呼び掛け

那覇市議会


 那覇市議会(安慶田光男議長)は十二日、姉妹都市である宮崎県日南市の谷口善幸市長と影山一雄議長、神奈川県川崎市の阿部孝夫市長と鏑木茂哉議長あてに、宜野湾市で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の開催を市民に呼び掛けるなどの協力を求める文書を送付した。

 文書では、県内全市町村議会で意見書が可決されたことなどを説明し、県民大会の開催日時などを案内している。安慶田議長は「教科書検定は全国的な問題。まずは姉妹都市に呼び掛け、全国的に広げたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121700_02.html

 

2007年9月12日(水) 夕刊 5面

F15未明離陸/北谷議会が抗議決議

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が十一日未明に離陸した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は十二日午前、開会中の九月定例会冒頭で、未明離陸の即時中止と騒音防止協定の順守などを求める抗議決議、意見書の両案をそれぞれ全会一致で可決した。今回の未明離陸に対する決議は同議会が初めて。

 同議会は米軍が八月二十八日に未明離陸を強行した際、九月三日の臨時会で抗議決議、意見書を可決したばかり。わずか八日後に、未明離陸を繰り返し、同町砂辺で一〇九・九デシベルという騒音被害を与えた米軍を「地域住民の安眠を妨害し精神的苦痛を与えている」と批判した。

 抗議決議は未明離陸の回数が二〇〇五年度に四回、日米が米軍再編に合意した〇六年度で十二回に増加していると指摘。「米軍は『周辺住民への騒音の影響が及ぶことを認識しながら、運用上の必要性を注意深く考察し、早朝離陸を行うこととなった』と言及しているが、いかなる理由であっても容認できるものではない」と強く抗議している。

 その上で、F15の即時撤去、住宅居住地域での旋回、訓練、低空飛行を中止することなどを求めている。あて先は首相、防衛相、同基地司令官、駐日米国大使ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121700_03.html

 

2007年9月12日(水) 夕刊 5面

戦時下の新聞展示/本社1階18日まで

 戦時下の新聞を展示する「新聞記事にみる沖縄戦」(主催・沖縄タイムス社、沖縄文化の杜、沖縄歴史研究会)が十二日、那覇市の沖縄タイムス社一階ギャラリーで始まった。入場無料、十八日まで。

 同研究会が三日まで県立図書館で開催した展示会に比べ、大幅に多い三十二点を複写と現物で展示。悲惨な沖縄戦を美談として伝える紙面を、直接読むことができる。

 一九四五年六月二十七日付の東京新聞は、「壮烈・沖縄に応へん」と題した歴史家、東恩納寛惇の寄稿を掲載。「本土防衛に鉄壁布陣の時間を稼いだ沖縄舞台の功績は、永久に没する事は出来ない」などとたたえた。

 展示資料のほとんどを収集した沖縄歴史研究会の仲村顕さん(34)は「教科書検定が問題化する中、真実の偽装、誇張、美化の実例を見てほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121700_04.html

 

2007年9月12日(水) 夕刊 4面

ハンセン病療養所/ポナペ島に補償外施設

 日本の統治領だった旧南洋群島のハンセン病療養所で、戦後補償の対象とは別の療養所があったことが分かった。富山国際大学の藤野豊准教授が県立図書館で当時の資料を発見し十一日夜、那覇市内で開かれたハンセン病問題学習会で報告した。

 同群島におけるハンセン病患者への補償をめぐっては、パラオやサイパン島などにある四療養所が対象。

 国はこれ以外の療養所があることを把握しておらず、藤野准教授は「世論を盛り上げ、補償対象とするよう国に要請したい」としている。

 新たに見つかった療養所はカロリン諸島の中央にあるポナペ島。一九四三年版の南洋庁「南洋群島衛生概況」の中で、患者四人の入所が記録されている。

 また、戦況悪化を受け日本人患者を本土へ送り返すことが困難になったとして、「サイパン島に邦人仮説ハンセン病療養所新設工事中」との文言もあり、藤野准教授は日本人患者がいた可能性を指摘している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(9月8日、9日、10日)

2007年9月8日(土) 朝刊 1面

10日も未明離陸 嘉手納F15

周辺首長 反発強く

 【中部】米軍嘉手納基地報道部は七日、F15戦闘機四機と空中給油機一機が米本国に向け十日未明に同基地を離陸すると発表した。「アイロン・フロー計画」と呼ばれる、同基地の旧型F15を製造年の新しい機体に更新する措置に伴う。米軍は八月二十八日にも地元の反対を押し切って同計画による未明離陸を強行しており、基地周辺自治体の首長らは反発を強めている。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は七日午後、同基地司令官に対し「運用工夫で日中の離陸も可能であり、米軍は努力を怠っている」とする抗議文を送付した。

 野国町長は「機体の入れ替えが目的なら、今後も未明離陸が続くことが懸念される。騒音防止協定で運用上とあるものを、時間を明記して飛行やエンジン調整を禁止させるべきだ。この問題は自治体と基地のものではなく、日米両政府で取り組まなければならない」と怒りをあらわにした。

 同基地報道部は、未明の離陸について「搭乗員が日中、安全に目的地に着陸するため作戦上必要」だと説明。離陸予定時間については「作戦の安全上、明らかにできない」と公表しなかった。

 八月二十八日の未明離陸では、北谷町砂辺地区で電車通過時の線路脇に相当する一〇九デシベル、嘉手納町屋良地区では一〇四デシベルをそれぞれ計測した。沖縄、嘉手納、北谷の三市町議会は抗議決議、意見書を全会一致で可決し、いかなる理由でも未明離陸を行わないよう求めていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_01.html

 

2007年9月8日(土) 朝刊 27面

「夜だけは寝かせて」/F15・10日未明離陸

また爆音 怒る住民

 【中部】寝静まった住宅街を、また激しい爆音が襲う。米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機の機体更新のため、十日未明にF15など計五機が同基地を離陸する。未明離陸は八月二十八日にも行われたばかり。繰り返される爆音被害に、基地周辺の首長や住民らは一斉に怒りの声を上げたが、米軍は地元の反対を押し切り「運用上の必要」を理由に強行する構えだ。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「未明離陸は町の基地問題の中でも解決を急ぐべき課題。国が積極的に解決に向けて取り組んでほしい」と述べた。「軍事優先の米軍のおごりが垣間見える」。沖縄市の東門美津子市長は「不安のない生活を願う周辺住民の気持ちを一切くみ取っていない。再度の早朝離陸に怒りを持って抗議したい」と強調した。

 同基地に隣接する同町屋良地区。滑走路から約二百メートルの場所に住む知念小夜子さん(64)は「日常的に騒音と隣り合わせの生活を強いられている。せめて夜だけはゆっくり寝かせてほしい」と切実な訴えをぶちまけた。

 八月に行われたF15戦闘機の未明離陸の際、北谷町砂辺地区は、長時間さらされていると難聴になるという一〇九デシベルの騒音を計測した。同地区に約四十年住んでいる国場信子さん(80)は「毎日朝から晩まで家の真上を飛ばれて頭が変になるかと思うこともある。毎日の爆音だけでもワジワジーしているのに、夜中の爆音は許せない」と怒りをあらわにした。

 同基地から沖縄市向けに離陸した場合、飛行ルート直下に当たる沖縄市登川自治会の仲宗根清朝会長は「どうして未明なのか。夜が明けてからでいいじゃないか。抗議の声が届かないことにむなしさを感じる」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_02.html

 

2007年9月8日(土) 朝刊 1面

市町村に組織結成要請/検定撤回大会実行委

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会は七日、県内四十一市町村の首長や議会議長に説明会を開き、市町村別に実行委を立ち上げるよう要請した。また、運営経費のカンパや、参加者の交通手段確保なども併せて呼び掛けた。

 説明会には、本島を中心に約五十人が出席。実行委員長の仲里利信県議会議長は「住民に直接、参加を呼び掛けることができるのは市町村だ。町議全員の出席を決めた与那原町に習い、大会盛り上げに協力してほしい」とあいさつした。

 実行委は、地域の各種団体を網羅した市町村実行委を立ち上げて、地域住民や各種団体に大会参加を呼び掛けるよう要請。目標の五万人を集めるため、各自治体での送迎バス確保を求めた。また、県バス協会に対して会場までの運賃無料化を提案するとした。

 市町村からは取り組み状況などが報告された。十三日に町実行委を立ち上げる与那原町の古堅國雄町長は「高齢者の参加が多数予想される。会場で迷ったり、けがをしたりすることがないよう、安全面の確保を実行委で検討したい」と話した。

 また、開催地(宜野湾海浜公園)である宜野湾市の伊波廣助議会議長は「地元開催のため、ボランティアの態勢づくりも検討しなければならない。まずは早急に実行委を結成したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_03.html

 

2007年9月8日(土) 朝刊 2面

1年更新 与党が容認/泡瀬・共同使用

 【沖縄】八日に契約期限が切れる米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長が「一年間の期限で更新したい」と米軍側に更新依頼書を送付していた件で、市議会与党十二人は七日までに、市長の方針を容認する見解をまとめた。

 与党代表の普久原朝勇議員は「事業の是非について市長の結論が出ていない中、一年の更新であれば、同事業や基地問題の公約と切り離して考えるべきだと意見が一致した」と述べた。

 沖縄防衛局は「契約期限の八日を過ぎて米軍から回答がなかった場合でも、更新手続き中ということで引き続き共同使用できる」と説明している。

 一方、同事業の推進団体である沖縄市東部海浜リゾート開発推進協議会(仲村富吉会長)は同日、沖縄市役所を訪ね、東門市長に事業推進の要請書を手渡した。

 要請書では、埋め立て後に市が大型ホテルなどを誘致して土地利用を図る東部海浜開発事業を推進するよう強調。仲村会長は「同事業は沖縄市の最後の望み。埋め立て後の人工島を観光やレクリエーションを主体として開発し、市の活性化と雇用の創出につなげ、市の一大プロジェクトを推進してほしい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_04.html

 

2007年9月8日(土) 朝刊 2面

基本設計手続き着手/普天間代替

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で沖縄防衛局は七日、飛行場本体や格納庫などの支援施設を含む施設配置の基本設計検討業務などを公募型プロポーザル(提案)方式で募集することを公示した。普天間代替施設事業で、同局が基本設計に関する手続きに着手したのは初めてだ。

 業務内容は、基本設計(1)が「飛行場、飛行場支援施設(格納庫、整備施設など)及び護岸などにかかる施設配置などの基本設計及び施工計画の検討業務」。

 基本設計(2)が「工場、倉庫のほか、隊舎、厚生施設など生活関連施設にかかる施設配置などの基本設計及び施工計画の検討業務」としている。

 履行期限はいずれも二〇〇九年三月末。

 また、環境影響評価準備書と環境影響評価書の作成業務も同日、公示した。履行期限は〇九年七月末。

 防衛省が作成した普天間代替施設事業の概略工程表によると、「埋め立て工事・飛行場施設の工事」は、環境影響評価手続き、埋め立て申請手続きに続き、一〇年から着手する予定。

 県や名護市は「現行案のままでは認められない」とのスタンスだが、防衛省はスケジュール通りに事業手続きを進めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709081300_05.html

 

琉球新報 社説

教科書県民大会 断固譲れない検定意見撤回

 怒りもある。しかし、それよりもむしろ「過ちを繰り返してはならない」という危機感の方が強い。今、この動きを止めなければ、歴史が繰り返される恐れがあるからだ。これは、すなわち、わたしたちの祖父母や父母が巻き込まれた戦争地獄を再現するということである。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」(同実行委員会主催)参加へのうねりが日に日に大きくなっている。

 7日開かれた県立学校長研修会で仲村守和県教育長は、学校長の全員参加を呼び掛けた。

 大会実行委員会には老若男女、農林漁業、企業など幅広い22団体が加わった。県内41全市町村に地域実行委員会の立ち上げを求めることも確認されている。議会は、全市町村で撤回を求める意見書を可決した。県議会では同一定例会中で初めて2度も可決された。

 さらに琉球新報社の調査では全41市町村のうち39市町村の首長が参加意向を表明した。国頭村、渡嘉敷村だけが「検討中」とした。両村は9月定例議会の日程調整や各市町村の動向を見ながら判断すると回答しており、ぜひとも「参加」を決断してほしい。

 県民の間にもさまざまな考え方はあるし、時代の変化で、違いはより複雑になっている。このような状況下でありながらも、県民の意志は一点に集中しているのだ。

 問題の発端を確認したい。文部科学省が2008年度から使用される高校教科書の検定結果を発表したことだ。日本史教科書にある沖縄戦の「集団自決」について、日本軍の命令や強要があったとの記述には、近年の状況を踏まえると必ずしも明らかと言いきれず「実態を誤解する恐れがある」との意見を付けた。意見を付けられた5社は「自決した住民もいた」「なかには集団自決に追い込まれた人々もいた」など、日本軍の関与に直接言及しない記述に修正した。

 昨年まで「軍の関与」について検定意見は付いていなかった。今回初めてである。その根拠として、軍命令の存在に疑問を呈している書籍や現在係争中の裁判での陳述を挙げた。

 ならば、県史をはじめ各市町村史に記された体験者の証言・記録をどう受け止めるのか。現在でも、体験者は、思い起こすのもつらい記憶を証言し続けている。文科省の検定意見は、これら重い証言を軽々しく扱っているに等しい。

 「過ちを繰り返すな」と訴えるうねりは、さらに広がるに違いない。県民にとっては、それほど重大なことなのだ。

 文科省は、県民の決意の重さを見誤ってはいないか。検定意見を撤回するべきだ。これだけは絶対に譲れない。

(9/8 10:35)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26983-storytopic-11.html

 

2007年9月9日(日) 朝刊 1・2・26面

普天間代替/防衛相「アセス後修正」

知事、事前合意求める

 高村正彦防衛相は八日、那覇市の知事公舎で仲井真弘多知事らと面談後、記者会見した。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で、県などが滑走路の沖合移動を求めていることについては、環境影響評価(アセスメント)後の修正で対応する考えを表明。アセス手続きを進める中で、県の理解を得ることは可能との見解を示した。嘉手納基地より南の基地返還に伴う跡地利用支援や、北部振興策の継続については、普天間移設問題の解決が前提との見方を示した。

 高村防衛相は、知事との面談で「アセスを進める中で客観的なデータを入手し、合理的に変えなければならないというものが出てくるのかどうか、(県や名護市と)誠実に話し合っていきたい」と提案。アセス後の修正に柔軟に応じる姿勢を見せることで、県にアセス手続きへの理解を求めた。面談後の会見で、防衛相は「知事からは否定的な感触はなかった」と強調した。

 一方、仲井真知事は面談後、記者団に「アセスに入る前に、互いの考えを一致させてスタートした方がいいと言っている。アセスをやって、途中でいろいろ変更するというのは難しいと思っている」と難色を示した。

 高村防衛相は会見で「私たちは日米合意案が自然環境、生活環境、実行可能性などから見て、極めてバランスの取れた合理的な案と思っている」とあらためて強調。「よほど合理的な変える理由がないと変えられない、というのが私たちの考えだ」と述べ、アセス後に修正を迫られる見通しは低い、との認識も示した。

 県は高村防衛相に「嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還」の確実な実施と跡地利用支援、基地従業員の雇用確保などを求める要望書を提出。これについて高村防衛相は「普天間(移設問題)の話が進めば、基本的に対応できると思っている」と述べた。

 高村防衛相は同日午前、名護市内で島袋吉和名護市長や北部首長と相次いで面談。北部振興策事業の継続について「普天間の解決策を見いだした上で、振興策も早期に進めたい」と述べ、普天間移設が北部振興策継続の鍵との見方を示した。


     ◇     ◇     ◇     

「知事は否定せず」/防衛相、進展を楽観視


 就任後初めて来県した高村正彦防衛相は、八日の仲井真弘多知事との面談で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で県などが滑走路の沖合移動を求めていることについて、環境影響評価(アセスメント)後の修正で対応する考えを表明。「知事からは否定的な感触はなかった」と強調した。県内部でも「互いに半歩寄れば手をつなげる状態」と楽観的な見方があり、アセス手続きが始まっていることを踏まえ、「現実的な解決策」を模索する兆候もみられる。


接点探る


 「知事の方から、私の提案について『駄目だ』という否定的な感触はなかった」「『アセスを進めてはいけないとは言っていない』という言葉も(知事から)あった」

 約二十分間の会見中、高村防衛相はアセス手続きを進めることや、アセス後の修正で対応することに、県が否定的ではないとの見解を五回も繰り返した。

 「アセスの中で合理的なデータが出てくれば、今の政府案にしがみつくわけではない」と柔軟ともとれる言い回しもあったが、「よほど合理的な変える理由がないと変えられない」というのがむしろ本音だ。

 防衛省は、県が法的にアセス手続きを拒否することはできない現実を踏まえた上で、政府案の「事後承認」を迫る可能性もある。

 県側にも「現実的な収め方をどうするかが今後の課題」(県幹部)との認識はある。

 防衛相がアセス後の修正で対応する考えを示したことに、県幹部は「歴代大臣が示してきた従来の考えと同じ」と冷静に受け止めつつ、「一つの考え方としてはあり得る。こちらも、アセスを絶対に進められないとは言っていない」と含みをもたせている。

 ただ、アセス後に修正できる範囲は、法的に「軽微な修正」に限定されている。県幹部は「事前調整はできる」と主張するが、方法書の知事意見までに県民を納得させる形で国との接点を探るのは困難な情勢だ。


あつれき


 「普天間移設問題がすべてのキーポイントになっている」。知事との面談の冒頭、高村防衛相はこう宣言した。

 「県の要望書で普天間の件は二番目だった。最初に挙げられていたのは嘉手納以南の返還に関する内容だった」と指摘。県が要望した「嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還」の確実な実施と跡地利用への支援などについては、「普天間の話が進めば、基本的に対応できる」との考えだ。

 北部振興策の継続に関しても「普天間の話が進めば基本的に対応できる」と強調した。

 北部振興策に対する北部市町村の立場について、同市町村会長の儀武剛金武町長は「普天間問題がなかなか解決されないでいると一致していくのは難しい」と言及する。

 別の首長は「名護市も国もメンツにこだわっている面があるのではないか。名護の方には自分から、こだわるべきでないと市長に言っている」といら立ちを見せる。

 県とともに滑走路の沖合移動を求めている名護市も、周辺自治体とのあつれきが表面化しつつあり、微妙な立場に追い込まれている。(政経部・渡辺豪、北部支社・石川亮太)


名護市長「沖合案が合理的」/議論は平行線


 【名護】高村正彦防衛相は八日、米軍普天間飛行場移設先の名護市キャンプ・シュワブを視察後、島袋吉和名護市長、北部首長、移設先に隣接する辺野古区長らと名護市内で相次いで会談した。

 高村防衛相は「生活環境や自然環境、実行可能性からみて日米合意案が一番合理的だ」と述べ、理解を求めた。一方、島袋市長は「生活環境や騒音などから沖合に出した方が合理的」と主張。議論は平行線をたどった。高村防衛相が名護市への支給を困難視している「再編交付金」については言及がなかった。

 島袋市長や北部首長らとの会談後、高村大臣は「これから誠意を持って話し合い、できるだけ早く合意点を見つけ出そうということで一致した」と述べ、協議を継続する考えを示した。島袋市長は沖縄タイムスの取材に、「誠意を持って協議していくことを確認した。名護市としての考え方を主張できた。(防衛省の)事務方からの説明との違いを感じてもらえたのではないか」として、地元の意向に耳を傾けてくれることに期待感をにじませた。

 辺野古区の大城康昌区長は生活環境への配慮や地域振興の実現を求め、「久辺小中学校の防音設備の整備をお願いする」と要望した。高村防衛相は「最大限配慮する」と前向きな姿勢を示した。

 高村防衛相はその後、宜野湾市で、沖国大の米軍ヘリ墜落現場を視察したほか、同大屋上から普天間飛行場を見た。


市民団体、高村防衛相に抗議


 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対している市民団体のメンバーらは八日、就任後初めて来県して同基地の視察や島袋吉和名護市長らとの会談を行った高村正彦防衛相に対して、「県内への新基地建設反対」など抗議の声を上げた。

 同日午前七時、移設に反対するヘリ基地反対協議会の呼び掛けで、同基地第一ゲート前に約七十人が集まった。同七時四十分ごろ、高村防衛相が到着すると、基地建設に反対するプラカードを掲げたメンバーらが「新基地計画を撤回せよ」「普天間飛行場を即時撤去せよ」とシュプレヒコールを繰り返した。

 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「事前調査の実施や不備だらけのアセス方法書など、法律を無視した政府の手法に憤りを感じる。新しい基地を造らせないという沖縄の声を、しっかりと伝えなければいけない」と語気を強めた。


アセス学会に中止要請


 【東京】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)に反対する「辺野古への基地建設を許さない実行委員会」は八日、都内で開かれた環境アセスメント学会の出席者に署名運動を行うなどしてアセスの中止を呼び掛けた。

 同実行委は同日の学会終了後、出席者有志とともにアセスの即時中止を求める緊急声明を発表した。この日集まった三十八人分の署名を近く沖縄防衛局に送付する。

 アセスに反対する有志として同学会の石川公敏副会長は「法の手続きにのっとっていない矛盾だらけのアセス。これでは独裁専制国家と言わざるを得ない」と非難した。

 NPO地域づくり工房(長野県)の傘木宏夫代表も「計画が定まっていない今の段階でアセスの方法書を出すのはおかしい。今後、仲井真弘多知事は方法書を受理した上で、きちんと拒否の姿勢を示したほうがいい」との見方を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709091300_01.html

 

2007年9月9日(日) 朝刊 1・27面

那覇であす「集団自決」訴訟出張法廷/金城重明氏証言

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、住民に命令を出したと著作に記されて名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の戦隊長だった梅澤裕氏(90)らが作家の大江健三郎氏と岩波書店に、出版の差し止めなどを求めて大阪地裁で争われている訴訟の所在尋問(出張法廷)が十日、福岡高裁那覇支部の法廷である。渡嘉敷島で「集団自決」を経験した金城重明氏(78)が被告・岩波側の証人として出廷。原告と被告双方の質問に答える。法廷は非公開。

 渡嘉敷島では米軍が上陸した翌日の一九四五年三月二十八日、「集団自決」が起きた。犠牲者は三百二十九人に上るとみられる。金城氏は当時十六歳。母や弟、妹に手をかけた体験を通して、軍の命令や強制、誘導なしに「集団自決」は起こり得なかったことを訴えている。

 大阪地裁で七月に行われた証人尋問では、渡嘉敷島に駐屯していた部隊の戦隊長だった故赤松嘉次氏が住民に「集団自決」を命じたかをめぐり、原告側の証人として当時の副官や中隊長ら二人が「命令はしていない」と証言。金城氏は、これに相対する被告側の証人と位置付けられる。


     ◇     ◇     ◇     

宮古島大会 市長が委員長に


 【宮古】宜野湾市で二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に合わせた宮古郡民大会の実行委員会は八日、宮古島市内で初の会合を開いた。委員長に伊志嶺亮市長を選んだほか、教育団体や経済界、労組団体、市議会などを網羅した組織体制を確認した。同市平良の前福多目的運動場で午後三時の開始も決定、雨天の場合は隣接する屋内練習場で行う。

 実行委員会の副委員長には多良間村の下地昌明村長や友利議長、久貝勝盛宮古島市教育長ら八人が選ばれた。事務局は市議会事務局に設置。三千人の動員を目指すことも確認した。伊志嶺市長は会合の冒頭で「大会成功にしっかりとつなげていきたい」と語った。


「教科書会社を味方につけて」

集会で山口准教授


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題を考える講演会が八日、琉球大学であった。研究者約二十人が出席。教科書会社に対して、印刷前に記述内容を手直しするよう求める運動の必要性を指摘する声があった。

 琉大の山口剛史准教授が解説。検定の撤回については当然譲れないとしたが、印刷・製本される前に記述内容を手直しする正誤訂正による復活を求めることができると説明した。「記述復活には教科書会社の協力も必要で、味方に取り込みながら運動をつくらないといけない」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709091300_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月9日朝刊)

[嘉手納F15未明離陸]

米軍の強行姿勢は異常だ

 米軍嘉手納基地は、F15戦闘機四機と空中給油機一機が米国に向け十日未明に離陸すると発表した。八月二十八日の未明離陸強行から二週間足らず。米軍は周辺自治体、議会の強い抗議や反対の声を無視するつもりのようだ。

 嘉手納基地から派生する爆音の違法性は司法の場で何度も明らかにされ、政府が講じてきた騒音対策が十分でなかったことも指摘されてきた。

 未明離陸の強行は、ただでさえ違法な爆音にあえぐ住民をさらに苦しめ、生活を破壊することを意味する。

 「せめて夜だけはゆっくり寝かせてほしい」という住民の訴えは人としてごく当たり前のことではないか。

 こんな時、最も頼りになるはずの政府の対応はどうだろう。八月二十八日の未明離陸後、基地所在市町村長らの要請に、那覇防衛施設局(当時)は「今後もできるだけ行わないよう米側に検討を求めていく」と回答。外務省沖縄事務所は「東京の高いレベルで運用改善できないか米側と協議している」と強調したものの、具体的な解決策は今もって示されていない。

 未明の離陸を変更する方法はあるはずだ。実際、五月に未明離陸する予定だったF22Aラプターのうち、二機は午前十時すぎに離陸、グアム経由で本国へ帰還したではないか。

 外務省沖縄事務所は「(グアムの)空軍基地はF15が常駐していないので、十分な機体整備ができない」との米側の説明を受け、グアム経由は困難との見方を示したが、それでは住民は納得できない。

 政府は、最も眠りが深くなる未明に、爆音でたたき起こされる住民の身になってほしい。日本の憲法と法律で守られているはずの国民が、「作戦上必要」との理由だけで未明に離陸する米軍戦闘機で夜も眠れない。こんな理不尽なことが許されていいはずはない。

 基地の提供責任は政府にある。ならば、基地の運用改善を住民の立場から米国に毅然と要求すべきだ。それが、沖縄に過度な基地負担を強いてきた政府の責務である

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070909.html#no_2

 

2007年9月10日(月) 夕刊 1・8・9面 

沖縄法廷 軍命存在強調/「集団自決」訴訟

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、旧日本軍の戦隊長やその遺族が、戦隊長による命令はなかったとして、作家の大江健三郎氏と岩波書店を相手に、名誉棄損に基づく出版の差し止めなどを求めて大阪地裁で争われている訴訟で、裁判官が裁判所外で証人から話を聞く所在尋問(出張法廷)が十日午後、福岡高裁那覇支部の法廷で始まった。「住民は崇高な犠牲精神で自ら命を絶った」などと主張する原告側に対し、被告側証人として渡嘉敷島で「集団自決」を経験した金城重明氏(78)が出廷。皇民化教育などを背景に、軍の命令や強制、誘導なしに「集団自決」は起こり得なかったことを証言する。

 金城氏は同日午後一時前、支援者らの拍手に送られて同高裁支部に入った。被告岩波側を支援する大阪、東京、沖縄の三団体は同支部前の広場で集会を開き、大阪地裁に沖縄戦の真実を反映した公正な判決を求めるアピールを採択した。

 七月に大阪地裁で行われた証人尋問では、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の元副官や部隊の中隊長が、原告側証人として「住民への命令はなかった」などと証言した。金城氏はこれに相対する被告側証人となる。

 金城氏は当時十六歳。米軍の上陸を受け、渡嘉敷島の住民は軍の陣地近くに集められ、「天皇陛下万歳」と叫んだ村長の一声を皮切りに手榴弾による「集団自決」が始まった。手榴弾を持たない家族は互いに家族を殺し合った。金城氏も兄とともに母や弟、妹に手をかけた。

 同訴訟は今年三月にあった高校の歴史教科書検定で、「集団自決」への軍関与の表現が削除される際の根拠の一つになった。検定撤回に向けて開かれる県民大会を二十九日に控え、自身の体験を語る金城氏の証言にあらためて注目が集まる。

 法廷は非公開。尋問終了後は、那覇市内で開かれる被告岩波側の支援集会で、金城氏が証言内容を報告する。


     ◇     ◇     ◇     

真実の証言 法廷に届け/支援者集会


 「沖縄戦の実相をゆがめさせない」。十日午後、「集団自決」訴訟の出張法廷が始まった福岡高裁那覇支部近くには、被告側の支援者約八十人が集まり、集会を開いた。「集団自決(強制集団死)」を経験した証人の金城重明さんは声援を受けながら、法廷に入った。

 午後一時前、集会の会場に到着した金城さんは、出迎えた大きな拍手に、硬い表情のまま頭を下げた。「沖縄戦の真実を判決に」と書いた横断幕とともに裁判所前へ。後ろには支援者が続き、階段を上る金城さんの背中に「頑張ってください」と激励の声が飛んだ。

 これに先立つ集会で、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の山口剛史事務局長は「大阪地裁で沖縄戦の真実をねじ曲げようとする動きを、出張法廷で沖縄に持って来られたことは支援運動の大きな成果だ」と指摘。「証言が裁判官の心に届くことを願う」と語った。

 沖縄の真実を広める首都圏の会呼び掛け人の石山久男さんは「教科書検定とこの裁判は地下茎のようにつながっている。原告側の主張は破綻しており、検定も根拠をなくす」と強調した。

 続いてマイクを握った沖縄戦裁判支援連絡会事務局長の小牧薫さんは、大阪地裁で傍聴した内容を報告。「勝利を確信しているが、それだけではなく沖縄戦の真実に踏み込んだ判決を期待している」と話した。

 集会では、大阪地裁に対するアピール文も採択した。「『集団自決』の証言に裁判官が真摯に耳を傾け、沖縄戦の実相を十分に把握することを期待する。歴史の歪曲を許さず、真実が反映された公正な判決を強く求める」と主張した。


死の重さ声震わせ訴え/聞き取りした宮里芳和さん


 十日午後に福岡高裁那覇支部で行われる「集団自決」訴訟の出張法廷を前に九日夜、那覇市古島の教育福祉会館で前日集会(主催・沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会、大江岩波沖縄戦裁判支援連絡会、大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会)が開かれた。県内や大阪、首都圏の支援者ら約百二十人が参加。座間味村の「集団自決(強制集団死)」体験者の聞き取りをしている宮里芳和さんや被告側から岩波書店の岡本厚編集副部長らが参加し、思いを語った。

 「(梅澤)隊長は、自決した百七十八人の死を何と心得るのか」。座間味村平和学習ガイドブック編集委員の宮里さんは、手にタオルを握り締め、声を震わせた。家族同志が手をかけ合った事実の悲惨さから、聞き取りを始めた当初、体験者のほとんどが語ろうとしなかった。「自分の家族を殺したのだから長年話せなかった」。宮里さんは、声を詰まらせた。教科書から軍関与が削除され、「つらい過去を六十年余たって語る人も出てきた」と語った。

 岩波書店の岡本編集副部長は、「原告側は『集団自決』を清らかな死、住民自ら軍の足手まといにならぬよう死んでいったといい、住民を巻き込んだことを反省でなく、正当化している」と語った。

 また「無残な死について考えず、同情もない。そのことは(軍命の削除など)教科書検定にも表れている」と語った。

 大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会の小牧薫事務局長は、沖縄での出張法廷の実現に「(軍命なしでは)家族に手をかけるなど決してあり得ないこと。証言する金城重明さんにはつらい思いをさせるが、裁判官に体験者が語る沖縄で起きた事実を分かってほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709101700_01.html

 

2007年9月10日(月) 夕刊 1面

沖縄関係 一字一句同じ/首相が所信表明

 【東京】安倍首相が十日の所信表明演説で沖縄関係に触れたのは、在日米軍再編に関する部分のみだった。「在日米軍の再編については、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾け、地域の振興に全力をあげて取り組むことにより、着実に進めてまいります」と、地域振興策をてこに推進する考えをあらためて示した。

 この部分は、首相就任直後の昨年九月の所信表明演説と一字一句変わらず、今年の通常国会の施政方針演説も同じ文言だった。

 二〇〇六年一月の小泉純一郎首相(当時)の演説では、米軍再編のほか沖縄科学技術大学院大学設立に意欲を示す発言もあったが、安倍政権の沖縄政策に対する関心の低さが浮き彫りとなった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709101700_03.html

 

2007年9月10日(月) 夕刊 1面

未明離陸あすに延期/嘉手納F15

 【中部】米軍嘉手納基地は、十日未明に予定していたF15戦闘機四機と空中給油機一機の離陸を十一日未明に延期した。同基地は周辺自治体に対し、「F15のうち一機が、離陸前点検で軽度の修理が必要と判断された」と延期理由を説明した。

 同基地では十日午前三時五十分ごろから、航空機のエンジン調整音が断続的に響いたが、騒音防止協定で飛行制限が定められた午前六時までの離陸はなかった。延期について周辺自治体への事前通知はなかった。

 今回の未明離陸は、「アイロン・フロー計画」と呼ばれる、同基地の旧型F15を新しい機体に更新する措置に伴うもの。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709101700_04.html

 

2007年9月10日(月) 夕刊 9面

パラオ虐殺 沖縄戦と共通/藤野准教授、あす報告会

 アジア・太平洋戦争中、旧南洋群島で起きた日本軍のハンセン病患者虐殺を調査している藤野豊・富山国際大学准教授が、パラオの被害者の中で確認した沖縄県出身者の調査結果を十一日開く講演会で報告する。「日本軍によるハンセン病患者虐殺は、軍民一体の戦場で起こった。沖縄戦の住民虐殺と『集団自決(強制集団死)』と構造が同じだ」と指摘する。

 今年三月、藤野准教授はパラオ共和国で療養所生存者に聞き取り調査を実施。県出身の被害者男性の氏名や職業、さらに一九四四年の空襲後、軍に食糧を奪われ、療養所を逃げた結果殺害されたこと―が分かった。

 藤野准教授は「パラオでも日本軍は住民が捕虜になり、米軍に情報が伝わるのを恐れ虐殺した。ハンセン病患者虐殺もその中で起きた」と沖縄戦との共通性を指摘した。

 しかし、旧南洋群島の被害実態の掘り起こしは、韓国や台湾が裁判の結果、究明が進んだのと違って、十分ではない。藤野准教授は、療養所の存在、強制収容を裏付ける公文書の発掘など事実を積み重ね、国に対して調査の徹底と謝罪を求めてきたが、具体的な動きは見えない。

 その一方、日本国内では、親日感情が強い南洋群島の戦争を美化する動きも出てきた。「地元から責任を追及する声が出にくいことを利用し、戦時に人々が積極的に日本軍に協力したと美化する風潮がある。沖縄の『集団自決』歪曲の動きと似ている」と指摘する。

 今回、県内資料から、サイパンに邦人専用仮療養所、ポナペの療養所の存在も新たに分かった。サイパン陥落時、療養所にいたとみられる県出身患者四人も確認した。沖縄からの実態掘り起こしが進むことを期待する。

 講演会「戦争犯罪としてのハンセン病隔離政策」は十一日午後七時、那覇市の「てぃるる」、資料代三百円。問い合わせはハンセン病問題ネット沖縄、電話098(890)2491。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709101700_05.html

沖縄タイムス 関連記事(9月6日、7日)

2007年9月6日(木) 朝刊 1面

3訓練施設 順次新設/キャンプハンセン

都市型移設で玉突き

 米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」の米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の都市型戦闘訓練施設の移設に伴い、同演習場内の三カ所の既存の訓練施設が「玉突き」で順次移設されることが五日、分かった。三カ所の訓練施設の新設工事費は日本側が負担する。同演習場では、「レンジ3」付近に、グリーンベレー用の最大射程千二百メートルに対応する新たな小銃用射撃場の建設も計画されている。同部隊の相次ぐ施設整備で、ハンセン施設の「過密化」に拍車が掛かっている。

 レンジ4施設は住宅地から約三百メートル、沖縄自動車道から約二百メートル。民間地に近い同施設の建設、使用に地元の反発が高まり、日米両政府は施設完成後の二〇〇五年九月、レンジ16の数百メートル北側の既存レンジ(金武町金武地区)への代替施設整備で正式合意した。

 沖縄防衛局は三月、訓練施設新設に伴う造成、舗装、排水などの工事の業者を選定した。

 同工事の特記仕様書などによると、施工場所はレンジ4施設の移設先のC地区のほか、西側のA、B地区を含む計三カ所を設定。沖縄防衛局は「レンジ4施設の移設先(C地区)の既存訓練施設などをB地区へ、B地区に所在する既存訓練施設などをA地区へ移設する」と説明。さらに、B地区からの施設移設に伴い、A地区の既存訓練施設をA地区内に移設する工事も実施するという。

 工事はA、B、Cの順に実施。「都市型」移設先のC地区の工事は年内に別途発注する予定だ。

 都市型の代替施設は、最も近い住宅地までは約二キロ。移設にかかる全体の費用は約十億円を見込んでいるが、レンジ4からの移設と直接関係のないA、B地区の既存訓練施設の新設土木工事だけで契約額は約四億円(税込み)を占める。

 B地区に移設される施設は射撃場、訓練塔、ウェザーシェルター(雨天退避所)、管理棟など、A地区は射撃場やウェザーシェルターなどがある。

 レンジ4施設について、防衛省は「代替施設完成後は実弾射撃訓練はしない」と説明する一方、代替施設完成後の取り扱いについては「何ら決定していない」としている。

 管理権が海兵隊に移管されるため、海兵隊が実弾射撃以外の訓練に使用する可能性もある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709061300_01.html

 

2007年9月6日(木) 朝刊 25面

宮古でも3000人動員へ/検定撤回 県民大会

 【宮古】高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を示す記述が削除された問題で、文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会が二十九日に宜野湾市内で開かれることを受け、宮古島市内でも同じ日に、宮古郡民大会を開くことが五日、決まった。市を中心に近く実行委員会を立ち上げ、同市と多良間村の首長や議会、各種団体を網羅した形で三千人規模の動員を目指す。

 宮古地区で沖縄本島の県民大会と同時開催するのは一九九五年に起きた米兵による暴行事件に抗議する大会以来。八重山地区でも既に開催が決まっており、この日決定した宮古地区と合わせ大会は全県規模となる。

 連合沖縄宮古地域協議会の根間修議長ら役員は同日、宮古島市役所平良庁舎を訪れ、幅広い団体が参加できるよう市が実行委員会の主体となることを要請。これに対し伊志嶺亮市長は「検定調査審議会に責任をなすりつける政府、文科省の態度はおかしい。宮古での大会が成功するように一生懸命頑張りましょう」と述べ、実行委員会の早期立ち上げに向けて調整を急ぐ考えを示した。

 開催場所は未定。同市や連合沖縄宮古地域協議会は老人クラブや婦人会、遺族会、JA、商工会議所、PTA連合会などに対し、実行委員会の構成団体となるよう近く正式に要請する。

 

     ◇     ◇     ◇     

渡嘉敷も全議員参加


 【渡嘉敷】渡嘉敷村議会(島村武議長、七人)は五日、全員協議会を開き、九月二十九日に宜野湾市で開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への全議員参加を決めた。

 島村議長は「検定意見の撤回を求める意見書を六月議会で全会一致で採択しており、議会として撤回要求が通るまで運動に参加していきたい」と話した。

 沖縄戦当時、日本軍の海上挺進隊(海上特攻隊)が駐屯した渡嘉敷村では、渡嘉敷島に米軍が上陸した翌日の一九四五年三月二十八日、住民ら三百二十九人が手榴弾や農具などを使って、命を奪い合うなどの「集団自決(強制集団死)」が起こった。

 同様に海上挺進隊が置かれ「集団自決」で住民ら多数が犠牲になった座間味村でも、八月三十一日に村議会が県民大会への全議員参加を決めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709061300_02.html

 

2007年9月6日(木) 朝刊 2面

東門市長、理由説明せず/泡瀬水域使用

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業に必要な米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定が、八日に期限切れを迎える問題で、沖縄市の東門美津子市長は沖縄防衛局を通して、既に「更新依頼書」を米軍側に提出していたことが、五日までに分かった。依頼書に「更新期間一年」の文言はないが、沖縄防衛局は米軍の回答を待って「一年間の期限で更新したい」との市長の意向を正式に伝えるとしている。

 沖縄市は八月三十一日に依頼書を沖縄防衛局に提出し、同局は今月四日に米軍側に渡した。

 東門市長は三日の与党連絡会で、与党議員十二人に「一年間の期限で更新したい」との意向を説明した。しかし、依頼書を提出していた説明はせず、与党各会派は「持ち帰り検討する」とした。

 更新に反対する渡嘉敷直久議員は「与党が統一見解を出してから、市長が更新するか否かを判断すると理解していた」と戸惑いを隠さない。与党代表の普久原朝勇議員は「驚いた。与党のメンバーを早急に集め、市長の真意を確かめてからコメントしたい」と話した。

 更新期間については米軍側に裁量権があるという。沖縄防衛局管理課の島袋哲課長補佐は「依頼書に一年更新の意向は盛り込まれていないが、米軍は(一年間期限で更新したいとの)市長の意向を知っている。契約期限の八日を過ぎて米軍から回答がなかった場合でも、更新手続き中ということで引き続き共同使用できる」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709061300_05.html

 

2007年9月6日(木) 夕刊 1面

調査機器の設置完了/普天間代替

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、沖縄防衛局は六日午前、パッシブソナー(音波探知機)二基を新たに設置、計百十二地点で調査機器の設置を完了した。同局は環境影響評価(アセスメント)方法書を県などに提出し、十三日まで公告縦覧手続きを実施中。方法書の縦覧期間中に調査が着手されることに、環境団体などから「アセス法違反」との声も出ている。

 関係者によると、同局は六日午前五時半ごろから作業を開始。同八時ごろまでに、二基のパッシブソナーを設置したほか、海象条件の悪化などからいったん撤去していた機材の一部の再設置などの作業を行った。

 同局は五月十八日に調査機器の設置作業を開始。海生生物調査と海象調査の調査機器として、パッシブソナー三十地点、水中ビデオカメラ十四地点、サンゴ着床具三十九地点、海象調査機器類二十九地点の計百十二地点で設置を進めていた。

 同局は調査機器の設置予定期間を「来年十月末まで」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709061700_02.html

 

2007年9月6日(木) 夕刊 5面 

反対派 更新撤回を要請/泡瀬水域使用

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業に必要な米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長が「一年間の期限」で更新したいとして米軍側に更新依頼書を送付していた件で、同事業に反対する市民団体「泡瀬干潟を守る連絡会」(小橋川共男、漆谷克秀共同代表)は六日午前、東門市長に公開質問状を手渡した。

 同連絡会では「環境破壊につながることと同様に新たに米軍基地を提供することにもなる」とし、「契約更新は現在進行している第一区域の埋め立て工事を追認することではないか」「年内で事業の是非を判断するという市長のこれまでの表明と矛盾する結果にならないか」「市長はすべての情報を市民に公開し、市民と一緒に検討して結論を出すと公約しているが、それに反していないか」など五項目十二の質問への回答を求めている。

 また、同事業について推進反対で割れる市議会与党五会派にも、市長に対する「更新依頼書の撤回」「工事の中断」などを求める要請書を手渡した。

 一方、同日午前に開かれた沖縄市議会(喜友名朝清議長)の冒頭あいさつで、東門市長は同問題について「更新期限が迫る中、更新せざるを得なかった。今後、県と国とも調整する時間が必要であり、理解してほしい」と述べた。市では市議会全議員三十人に対し十日の全員協議会で同問題について説明するとしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709061700_03.html

 

2007年9月6日(木) 夕刊 1面

防衛相 名護市長面談へ/あす初来県

 【東京】高村正彦防衛相は七日午後、二日間の日程で就任後初来県する。防衛省によると、高村氏は八日午前、島袋吉和名護市長ら北部市町村長や、米軍普天間飛行場の代替施設建設予定地に近接する辺野古区長らと面談する。

 その後、宜野湾市の米軍普天間飛行場を視察した後、仲井真弘多知事と面談。同飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で意見交換するとみられる。記者会見も予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709061700_04.html

 

2007年9月6日(木) 夕刊 5面

沖縄市議会、抗議決議/未明離陸

 【沖縄】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が八月二十八日未明に同基地を離陸した問題で、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は六日午前開会した九月定例会の冒頭、未明離陸の全面中止と騒音防止協定の順守を求めた抗議決議、意見書の両案をそれぞれ全会一致で可決した。抗議決議文は駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米軍嘉手納基地司令官あて。

 離陸が旧盆明けに強行されたことについて「住民を軽視した運用に米軍への不信感が募るばかりで遺憾だ」と訴えている。

 また、うるま市の県立沖縄高等養護学校と前原高校の敷地内に米軍車両が侵入した問題についても真相究明と再発防止、兵員の綱紀粛正を求める抗議決議、意見書も全会一致で可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709061700_05.html

 

2007年9月6日(木) 夕刊 5面

爆音ひどさ住民が証言/「普天間」訴訟

 【沖縄】米軍普天間飛行場の周辺住民が、国に夜間飛行の差し止めと損害賠償を求めている普天間爆音訴訟の原告本人尋問が六日午前、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で開かれた。

 尋問では宜野湾市喜友名出身の呉屋早子さん(42)が証言した。

 国は、生まれてから現在まで喜友名地域で五回の転居をした呉屋さんに対し、「なぜ別の地域へ移らなかったのか」と質問。呉屋さんは「離婚後は一人で働きながら子育てをしなければならず、騒音の問題よりも、家賃の安いアパートを探すことを優先した」と述べた。

 また、防音工事の効果についても証言し、「寝室に工事が施されたアパートに住んでいたこともあったが、一日中寝室で生活するわけはない。爆音は生活に支障を来していた」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709061700_06.html

 

2007年9月7日(金) 朝刊 1面

県民一丸へ態勢整う/22団体 実行委発足

 宜野湾市の宜野湾海浜公園で二十九日に開かれる「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の初会合が六日、県議会で開かれ、県議会、県婦人連合会、県遺族連合会など二十二団体で構成する実行委員会が正式に発足した。二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍による強制の記述が削除された問題で、文部科学省に対し、県民総ぐるみで検定意見の撤回を求める態勢が整った。

 実行委員長の仲里利信県議会議長は「この問題は県内だけでなく、全国的な問題。史実から『集団自決』の日本軍関与が消されれば戦争の美化につながる。大会をぜひ成功させよう」と呼び掛けた。

 大会では仲里議長や仲井真弘多県知事、渡嘉敷島や座間味島の「集団自決」の体験者、高校生代表などの発言を予定している。二十四万人余の沖縄戦の犠牲者を刻銘した糸満市摩文仁の平和の礎の中央広場にともされている「平和の火」をリレー方式で会場まで運び、世界の恒久平和を願う取り組みも計画している。

 実行委事務局は、県議会内に設置する。七日には県議会で市町村の行政、議会関係者を集めた会議を開き、各市町村単位の実行委員会の発足と協力を求めていく。また、千七百余りの団体にも共催団体として参加を呼び掛け、五万人規模の大会の開催を目指す。会場への参加者の輸送は、県バス協会に協力を求め、片道の無料バス運行を要請していく。

 大会後は、実行委員会の代表らが、安倍晋三首相や伊吹文明文科相、衆参両院議長らに対し、検定意見の撤回を求める要請行動も予定している。


県教育長も参加を明言


 県の仲村守和教育長が六日までに、二十九日に宜野湾海浜公園で開催される「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への参加を決めた。沖縄タイムス社の取材に対し、明言した。七日開かれる第二回県立学校校長研修会で、高校や特別支援学校など県立学校長七十六人に、同大会への参加を呼び掛ける。高校歴史教科書の記述内容が問われる中、県教育長による高校の校長らへの参加呼び掛けは、県民大会に大きな弾みとなりそうだ。

 仲村教育長は、六月二十一日、文部科学省に布村幸彦審議官を訪ね、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から、軍の関与が削除された同省の検定について、「遺憾である」と指摘し、検定意見の撤回と記述の回復を求めていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071300_01.html

 

2007年9月7日(金) 朝刊 27面

「撤回必ず」思い結集/実行委発足

「地域からの盛り上げが今後の課題だ」「実行委員会の発足にひとまず感謝したい」―。「集団自決(強制集団死)」の日本軍関与を否定する高校歴史教科書の検定意見撤回を求める県民大会の成功に向け、六日正式発足した実行委員会。大会開催に向け当初から携わってきた団体の代表は「ここまでこぎ着けることができた」と胸をなで下ろしつつ、「目標はあくまで日本軍関与の記述回復だ」と意気込んでいる。

 実行委では、委員長の仲里利信県議会議長らが大会の事務局態勢や必要経費、アトラクションの「平和の火リレー」などについて説明。「関係団体に参加を呼び掛けてほしい」と訴えた。

 実行委で、県PTA連合会の諸見里宏美会長は「歴史教科書を実際に使う当事者団体として、実行委が開催できたことに感謝している」とあいさつした。諸見里会長は今年七月、超党派の県民大会開催を呼び掛けた三団体の代表の一人。

 「正直いって、実行委が発足するかどうか半信半疑だった」と、閉会後に語った諸見里会長。「子どもたちのためにという一点で、多くの団体が実行委に参加したことに感謝したい」と喜んだ。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「大会開催という当初の目標は実現する方向になった」と発足を評価。一方で、「目標の五万人を集めるのは並大抵のことではない。大会を支えるための人手と計画が必要だ」と気を引き締めた。

 「だんだんと形になってきた。みんなで一生懸命、いかに成功させるかを考えたい」と話すのは県婦人連合会の小渡ハル子会長。地方から会場に向かうバスの手配、各種団体への参加呼び掛けには、住民と近い位置にいる首長らの理解が欠かせないと指摘する。

 「検定を撤回させなければ、未来の子どもたちが大変な目に遭う。実行委は、市町村長や議会議長にしっかりと趣旨説明し、県民すべてを参加させるように動いてほしい」と訴えた。

 実行委では、連合沖縄が大会告知の立て看板を設置すると報告したほか、大会を盛り上げるための工夫が必要―などの提案もあった。


恩納も全議員参加


 【恩納】恩納村議会(山城良一議長)は六日、議会運営委員会を開き、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に全議員の参加を確認した。十一日開会の九月定例議会で決議する。


伊江村議会も


 【伊江】伊江村議会(内間博昭議長)は六日の議会運営委員会で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への議員全員の参加を確認した。九月定例会最終日の十四日に全員参加を決議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071300_02.html

 

2007年9月7日(金) 朝刊 26面

沖青協 全国仲間に連帯訴え

 高校歴史教科書で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述が削除された問題で、県青年団協議会(沖青協・照屋仁士会長)は、十六日から東京都で開かれる日本青年団協議会(日青協)の理事会で、検定意見の撤回を求める共同声明の決議を提起する。

 照屋会長は「決議の可能性は六割ほど」としながらも「全国的に教科書検定の問題に対する関心が低い中、検定意見の撤回を求める沖縄県民の強い思いを全国に伝えたい。国民の意識を変えなければ、文部科学省も考えを変えないはずだ。ぜひ決議を実現したい」と意気込む。

 沖青協の前会長で日青協常任理事の久保田秀樹さんも「全国ニュースで『集団自決』の問題が取り上げられないならば、全国の仲間に直接訴えたい」と話す。

 現在、決議に向けて日青協の事務局と話を進めている。十六日に提案し、十七日の理事会での決議を目指す。

 沖青協も、九月二十九日に開かれる県民大会の実行委員会に参加している。


反基地ネットが抗議声明


 「浦添軍港建設反対!ヘリ基地建設反対!あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク(反基地ネット)」の當山全治共同代表らは六日、県庁で会見し、教科書検定で「集団自決(強制集団死)」の日本軍関与の記述が削除・修正されたことへの抗議声明を発表。安倍晋三首相と伊吹文明文科相に対し、検定意見の撤回などを求めた。

 同ネットは、安倍内閣改造後の会見で、伊吹文科相が「(教科書検定について)私が修正できるとか、こうあるべきだと言った途端にとんでもないパンドラの箱を開いた汚名を着る」と述べた点を指摘。當山共同代表は「あくまでも記述の削除を押し通し、全国に広がる検定糾弾の声を無視する詭弁だ」と怒りをあらわにした。

 その上で、「伊吹文科相は発言を謝罪し撤回せよ」、「侵略戦争に動員するための愛国心教育や憲法改悪をやめよ」などの要求を読み上げた。當山共同代表は「県民大会に向けて、反基地ネットも学習会などで輪を広げていく。必ず撤回させたい」と言葉に力を込めた。


募金の協力 呼び掛け

県民大会実行委


 県民大会の実行委員会は、開催に向け、各種団体や県民からの協賛金、募金を呼び掛けている。口座は表の通り。

 問い合わせは同実行委事務局、電話098(863)5923、ファクス098(863)5924。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071300_03.html

 

2007年9月7日(金) 朝刊 2面

ハンセン強化に抗議/軍転協

 【東京】県内の基地所在市町村長らでつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会の要請団が六日、駐日米国大使館や防衛省、内閣府などを訪れ、キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近で建設が計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場の建設中止や嘉手納基地のF15戦闘機の未明離陸中止などを求めた。

 団長の儀武剛金武町長は大使館で、「レンジ4」の都市型訓練施設の移設に伴って三カ所の既存の訓練施設が順次新設されることについて、「負担増になる」と強く抗議した。

 儀武団長によると、米国大使館のレイモンド・グリーン安全保障政策課長は訓練施設の新設に「安全面に配慮する」と理解を求めたという。儀武町長は「納得がいかない。今後も反対行動を続けていく」と強調した。

 一方、グリーン課長は未明離陸について、パイロットの安全確保のため、米本国に日中に到着できるよう沖縄を未明に発進する必要があるとの従来の米側の認識で理解を求めたという。県内の学校に米軍車両が侵入した問題については「教育を徹底し今後このようなことのないように努力したい」と陳謝したという。

 要請ではほかに、伊波洋一宜野湾市長が、日米合意した普天間飛行場の危険性除去策について「機体の安全のためのものであり、住民の安全のためのものとなっていない」と指摘。実効性のある危険性除去策を強く求めた。

 内閣府沖縄担当部局には、基地の返還に伴う跡地利用促進への支援を要請。原田正司統括官は「跡地利用の支援は責任を持って対応したい」と述べた。

 要請団は七日、在日米軍司令部にも同様に要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071300_05.html

 

2007年9月7日(金) 朝刊 2面

総合的判断で更新/泡瀬保安水域

東門市長、野党議員に説明

 【沖縄】中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業に必要な米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、東門美津子沖縄市長は六日、市議会野党二会派に対し、米軍側に一年間の期限を念頭に更新依頼書を送付した経緯を説明した。

 東門市長は「事業の総合的な判断を前に、契約期限を迎えることから、今年に入り沖縄総合事務局と県と協議を進めてきた」と説明。「沖縄市の意向を国と県が理解し、現在、更新の手続きを沖縄防衛局を通してお願いしている」と述べた。

 また、一年更新と事業全体の方向性とは別の問題だとの考えを示した上で「事業の是非は年内に結論を出す。設定した一年の期間は、国と県と協議する時間だととらえており、新たな基地の提供にも当たらない」との認識を示した。

 米軍がこれまで通り三年や五年の契約期間を示した場合は「そのときに判断する」と述べた。

 東門市長は十日の市議会議全員協議会でも、全三十人の市議に説明する予定。


共同使用更新で守る会が質問書

県と国に経緯問う


 中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業に必要な米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用について、東門美津子沖縄市長が米軍側に更新依頼書を送付していた件で、泡瀬干潟を守る連絡会の小橋川共男共同代表らは六日、事業者の沖縄総合事務局と県に更新の経緯などについて説明を求める公開質問書を提出した。

 小橋川共同代表は同日、那覇市の県庁記者クラブで会見し、「これまで東門市長は泡瀬の問題でオープンに進めていたと思っていたので残念。シャッターを開けて論議し、施策を進めてほしい」と東門市長の姿勢を批判した。

 埋め立て完了後の土地の一部が引き続き米軍との共同使用となり、建物の高さなどで利用が制限されることや、「東門市長の公約に反し新たな基地建設を認めることになる」とし、更新反対を訴えた。

 また、民主県連、社民県連、共産県委、社大の四党に、東門市長に更新撤回などを求める要請文を手渡した。

 同会では同日午前、東門市長にも同様の質問書を提出している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071300_06.html

 

2007年9月7日(金) 朝刊 26面

軍隊の性暴力「ノー」/女たちの会 国際集会へ

 基地と米軍による性暴力をなくしたい―。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(高里鈴代、糸数慶子共同代表)のメンバーら八人が、十日から米国サンフランシスコで開かれる「第六回国際ネットワーク集会」に県内の基地問題の現状を伝えるため参加する。

 県内から五年ぶりの参加で、フィリピンや韓国など米軍基地を抱える各国の女性たちと交流する。

 大学の非常勤講師の高良さんらが、フェルトでか沙哉たどった沖縄に、基地の位置や米兵による百件以上の性暴力事件が起きた場所を縫い付けた布を制作。米の集会でアピールするという。

 高良さんは、約二週間かけ作製した地図を見詰め、「基地から離れた場所でも事件は起きており、島全体が基地化されている」と語った。

 今年で十年目を迎える同集会は、フィリピンや韓国のほか、グアムが初参加し、米軍基地を抱える国から約八十人が参加する。

 高里共同代表は、二〇〇四年の沖国大へのヘリ墜落事故や宮古島市での「従軍慰安婦」日韓合同調査団に参加したことなどを報告する。

 十年間を振り返り、「県内の基地問題が県外ではそれほど興味を持たれなくても、基地を抱えるメンバーは国を越えて共感できる」と語った。

 また、「現地で基地が返還された土地計画など利用の方法も学びたい」と語った。

 帰国後、二十九日の県民大会には各国の参加者にハンカチに書いてもらったメッセージを持参する予定。メンバーらは「正しい歴史が残されないのはおかしい。みんなの声を届けたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071300_07.html

 

2007年9月7日(金) 夕刊 1面

県民大会開催を説明/岸田沖縄相

閣僚懇で異例の言及

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は七日午前の閣議後の閣僚懇談会で、今月二、三両日の沖縄視察を報告し、高校歴史教科書の記述から沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与を削除した教科書検定の撤回を求める大規模な県民大会が二十九日に開かれることを、全閣僚に説明した。教科書検定を直接、所管しない沖縄相が閣僚懇で自発的に同問題に言及するのは異例。

 岸田沖縄相は同日の閣議後会見で、「教科書問題の所管はわれわれ(内閣府)ではないが、沖縄の皆さんがこの問題に深い思いを持っていることを他の大臣にしっかり受け止めてほしいと思っている」と説明した。

 岸田沖縄相は閣僚懇での視察報告で、米軍普天間飛行場の移設に関する協議会にも言及。「次回会合がいつ開かれるか(地元の)関心が高かった」と述べ、関係閣僚に早期開催の必要性を促した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071700_02.html

 

2007年9月7日(金) 夕刊 7面

検定背景に「政治的策動」/研究者・大城さんが本出版

 【東京】沖縄戦研究者として県史の編さんに携わった沖縄平和ネットワーク代表世話人の大城将保さん(67)が、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与を削除した教科書検定を受け、著書「沖縄戦の真実と歪曲」(高文研)を出版した。検定の背景に、日本軍の加害行為を歴史から削除しようとする一部勢力の「思想的・政治的な策動」があると指摘。検定結果への県内の激しい反発を「政府が普段はおとなしい県民を甘く見た結果、沖縄では島ぐるみ闘争が起こっている」と分析している。

 大城さんは著書で、今回の検定の発端に、「集団自決」への軍命を否定する自由主義史観研究会の「沖縄プロジェクト」があると言及。二〇〇五年に大阪で提起された「『集団自決』訴訟」の原告である部隊長側を、同研究会が支援している構図を説明している。

 その上で、文部科学省が「軍関与」を削除した根拠の一つとして、同研究会が使用する「集団自決冤罪訴訟」との呼称を引用していた経緯を詳述。「中立公正であるべき政府の機関がここまで偏向しているのかと慄然とせざるを得ない」とし、同研究会と文科省の“接点”がうかがえる現状を厳しく批判している。

 大城さんは、県内の全四十一市町村議会と県議会が検定撤回を求める意見書を可決した動きなどを念頭に「県民は普段は黙っているが、沖縄戦の史実に手を突っ込んでゆがめようとすると猛烈に抵抗する」と解説。二十九日の県民大会に向け「一千団体に呼び掛けており、五万人以上の参加を期待したい」としている。

 著書は全二百五十五ページで価格は千八百円。高文研によると、七日前後から県内の書店に並ぶ見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071700_03.html

 

2007年9月7日(金) 夕刊 7面

教育長「県民大会 全校長参加を」

 二〇〇七年度第二回県立学校校長研修会が七日午前、県庁で開かれ、仲村守和県教育長は二十九日に宜野湾海浜公園で開催される「教科書検定意見撤回を求める県民大会」について、「校長先生方も全員、参加していただきたい。職員にも声を掛けていただきたい」と述べ、大会への参加を呼び掛けた。研修会には、高校や特別支援学校の校長ら七十六人が出席した。

 仲村教育長は「『集団自決(強制集団死)』は、住民に手りゅう弾が配られていることなどから、日本軍の関与はあったと認識している」とした上で、「沖縄戦の実相を正しく後世に伝え、子どもたちが平和な国家や社会の形成者として育つためにも、県民とともに声を上げなければならない」と訴えた。

 実行委員会への参加について「行政の立場上入らない」としつつ、「(中山勲)県教育委員長の意思表明など、協力できることについては積極的にかかわっていきたい」と明言した。教育長の訓示は、研修会冒頭に急きょ組み込まれた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709071700_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(9月4日、5日)

2007年9月4日(火) 朝刊 1面

与党側「更新」再協議へ/泡瀬保安水域

 【沖縄】八日に契約期限が切れる米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長は三日、市長の政策や市政の懸案事項を協議する定例の与党連絡会(議員十二人)に対し「一年間の期限で更新したい」との意向を示し、理解を求めた。

 これに対し、与党側は「基本的には新たな基地の提供はできないという考えで一致しており、一年更新については各会派で持ち帰って検討する」とし、契約期限までに再度、与党内で協議することを確認した。

 連絡会で、東門市長は「基地に対するスタンスは変わっておらず、本来なら共同使用協定の契約更新も認められない。今回は契約期限が迫っており、行政手続き上の問題で一年だけに期限を区切って更新したい」との考えを強調した。

 一方、野党側は六日から始まる市議会九月定例会で、同契約の更新問題や事業に対する市長の結論の時期などを追及する構え。

 市議二十四人(与党六人、野党十八人)で組織する市東部海浜開発事業推進議員連盟の事務局長の普久原朝健議員は「更新は当然のこと。野党としては、まずは与党がどのように判断するか推移を見守りたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_03.html

 

2007年9月4日(火) 朝刊 2面

「普天間」移設 地元との妥協点模索/沖縄相帰任

 就任後初めて来県した岸田文雄沖縄担当相は三日午後、那覇市内のホテルで帰任会見し、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、名護市が沖合へ移動する修正案を求めていることについて「名護市の意見はしっかり受け止めなければいけない」と理解を示しつつも「さまざまな意見、立場があり、そういうものを受け止めて最後に結論を出さなくてはいけないが、どういった結論に持っていくかは関係者全員の努力の積み重ねだと思う」と述べ、政府と地元が納得できる着地点を探る考えを示した。

 また、同飛行場の移設協議会の開催時期については「これからさまざまなチャンネルを通じ、信頼関係を構築させていただく中で、しっかり調整し、できるだけ早い時期の開催で調整をしたい」と述べた。

 県や県議会などから要望が出された沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した歴史教科書検定の意見撤回への対応については「県民の思いの深さは強く感じている。所管でないのでコメントは控えるが、要望いただいたことは内閣として、今後の施策の中にしっかりと受け止め、反映させていくのは当然のこと」との認識を示した。

 沖縄振興計画の後期五年に向けた対応では「沖縄の特色や優位性、強みを生かした産業振興と合わせて雇用の安定、人材育成、社会資本についてもめりはりをつけて努力をしなくてはいけない」と沖縄振興の推進に意欲を見せた。岸田担当相は会見に先立ち、県市長会や町村会など市町村四団体の代表らと懇談し、同日夕、帰任した。


北部振興継続に前向き


 【恩納】岸田文雄沖縄担当相は三日午後、米軍普天間飛行場代替施設建設予定地の島袋吉和名護市長ら北部圏域十二市町村長と会談した。会談で島袋市長は「北部地域では雇用、生活環境に遅れがある。県土の均衡ある発展のためにも、北部振興事業の予算が確実に確保できるよう、特段の支援をお願いしたい」と述べ、凍結されている北部振興事業の継続を強く求めた。

 岸田担当相は「県土の均衡ある発展のためにも、北部の振興は重要な課題だと認識している。二〇〇八年度の概算要求にも盛り込まれており、議論の中で関係者の協力と理解の下にしっかりと予算獲得に向けて努力していきたい」と前向きな姿勢を示した。

 会談後、岸田担当相は「北部圏域の発展、振興という点が今回のメーンテーマだったので、(基地問題については)具体的なやりとりはなかった」と語った。

 北部市町村会(会長・儀武剛金武町長)は、北部市町村の懸案事項として、北部振興事業への支援継続や地域高規格道路の整備など九項目の要請書を岸田担当相に手渡した。岸田担当相は同日午前、沖縄科学技術大学院大学の設立を推進する独立行政法人・沖縄科学技術研究基盤整備機構の発足二周年記念式典に出席した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_04.html

 

2007年9月4日(火) 朝刊 2面

高村防衛相再び「今の案が最高」/都内で講演

 【東京】高村正彦防衛相は三日、都内で講演し、米軍普天間飛行場の代替施設(V字案)について「地元から(沖合展開を)要望されてアメリカと合意した案。工事のやりやすさや環境への影響など、いろいろな観点から考えた非常にバランスの取れた案だ」と述べ、県や名護市が求めるV字形滑走路の沖合移動をあらためて困難視した。

 高村氏は、「環境影響評価(アセスメント)の結果などを見て、こういうふうに動かした方が環境上いいというのが出てくると、またいろいろあるかもしれない」と述べ、県に提出したV字案を前提としたアセスの範囲内で、滑走路の位置が変更される可能性はあるとの認識を示した。

 その上で「(普天間移設は)ただでさえ遅れている。(沖合移動の案で)環境評価をまたやり直さないといけないようなことは絶対にない」と述べ、V字案を前提としたアセスの受理を「保留」し、沖合移動に固執する県を強くけん制した。

 高村氏は仲井真弘多知事が八月三十一日の会談で「今のままでは駄目だ。少し動かして受け入れるというのが自分の選挙公約。私の公約を知った上で今の与党は応援してくれた」と沖合移動や同飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態」の実現を強く求めたことも明らかにした。

 これに対して高村氏は「私たちからすれば今の案が最高で、地元の名護市長とか隣の町や村の方とかの要望を聞いて(V字案を)つくった。県知事からすれば県知事の言い分があるが、私たちは今の案が合理的だと思っている」と理解を求めたという。


増田次官「理解得る」/就任会見


 【東京】防衛省の増田好平事務次官は三日、就任後初めての記者会見に臨んだ。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブへの移設について「日米間の合意に従って、地元にもよく説明して理解を得る」と従来の政府見解を踏襲し、県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動を暗に否定した。

 在任期間が四年を超えた守屋武昌前事務次官の後任を務めることに「一言で言えば若干戸惑いを覚えている。『やっぱり若返ったら、駄目だったね』と言われないように、皆でよく相談しながら一生懸命やっていきたい」と新体制での抱負を語った。

 普天間移設問題についても質問に答える前に、「沖縄のこの問題についてこれまでの立場で逐一フォローしたわけではない」と断りを入れるなど、慎重な姿勢を崩さなかった。

 一方、会見に先立って守屋前事務次官の離任式が行われ、「在任中、最も印象に残っていること」に在日米軍再編を挙げた守屋氏。これに対し増田氏は送辞で普天間移設問題を挙げ、「揺るぎない信念と忍耐力を持って守屋事務次官は事務方の長としてさまざまな方針を打ち立て、米側と粘り強く交渉を行い、V字移設案で米側と合意を見ることができた」と守屋氏の手腕を評価。

 その上で「守屋事務次官が心血を注がれた米軍再編・基地問題について、日本の防衛、そして何よりも日本国民のために、職員一同精いっぱい努力していきたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_05.html

 

2007年9月4日(火) 夕刊 4面

町村議長会も決議/検定撤回

 県町村議会議長会(会長・神谷信吉八重瀬町議会議長)は三日の定例理事会で、文部科学省の高校歴史教科書検定で沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の日本軍関与の記述が削除・修正された問題に対し、検定意見の撤回を求める要望決議案を全会一致で可決した。

 九月二十九日に宜野湾市の宜野湾海浜公園で開かれる県民大会に三十町村の全議員三百七十四人と議会事務局職員の参加や住民に参加を呼び掛けることも確認した。

 決議は、県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議長会の検定意見撤回を求める要求に対し、文部科学省が「教科用図書検定調査審議会が決定することで理解していただきたい」との回答に終始していると批判。検定撤回と「集団自決」に関する記述回復を求めている。

 今回の検定を(1)あらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で審議会に諮問している(2)審議会への諮問案のとりまとめで係争中の裁判を理由に一方の当事者のみの主張を取り上げている―などとし「文科省の回答は到底容認できない」と糾弾している。決議は、衆参両院議長、首相、文科相、沖縄担当相に郵送する。


     ◇     ◇     ◇     

名護市議会 全員参加/9月定例会で決議案提案


 【名護】名護市議会(島袋権勇議長)は四日午前の議会運営委員会(吉元義彦委員長)で、二十九日に宜野湾海浜公園で開催される「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への全議員の参加を確認した。六日の九月定例議会冒頭で決議案が提案され、全会一致で可決される見通し。

 また、同市と友好都市などを結ぶ北海道滝川市、岩手県八幡平市、大阪府枚方市の議会に対して、検定意見の撤回の決議を要請することも確認した。

 島袋議長は「大戦を経験した沖縄の特殊事情をくみ取ってもらわないと困る。教科書から『集団自決(強制集団死)』の事実が削除されるようなことがあってはならない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041700_03.html

 

2007年9月5日(水) 朝刊 2面

地元理解に意欲示す/沖縄防衛局長、知事を表敬

 沖縄防衛局の鎌田昭良局長が四日、着任あいさつで県庁に仲井真弘多知事を訪ね、地元の理解に努める考えを示した。米軍普天間飛行場移設問題など、具体的な取り組みについては言及しなかった。鎌田局長は初の沖縄勤務。「これまで(沖縄に)かかわったことはなかったが、これから勉強したい」と強調した。

 仲井真知事は「沖縄防衛局とは、日ごろから仕事の上でしょっちゅう接触するので、よろしくお願いしたい」と述べた。

 面談後、仲井真知事は「安倍晋三首相も、地元の意見をよくくみ取って行政をやっていくべきだと言っているから、その精神に立ってやってもらえるのではないか」と期待感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709051300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月5日朝刊)

[米朝作業部会]

政府も非核化の後押しを

 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の米朝関係作業部会がジュネーブで開かれ、核放棄へ向けた「次の段階」措置を年内に完了することで合意した。

 六カ国協議では、北朝鮮の核計画の完全な申告と核施設の無力化を「次の段階」措置として設定している。

 中国・瀋陽で行われた朝鮮半島非核化作業部会で、北朝鮮は無能力化する核施設について、寧辺の実験用黒鉛減速炉と放射化学研究所(再処理施設)、核燃料加工施設の三カ所を挙げ、年内完了は困難との認識を示した。

 それだけに核施設の無能力化の完了時期を初めて区切った意義は小さくはない。高濃縮ウランによる核開発計画など難しい問題が残る中で、米朝の駆け引きが本格化したとみることもできる。楽観は禁物だが、非核化の次のステップへ向けた動きと受け止めたい。

 六カ国協議は二月に合意事項をまとめた。「初期段階措置」として、寧辺の核施設の活動停止・封印と国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れた見返りとして、北朝鮮に重油五万トン相当のエネルギー支援が行われた。

 このため「次の段階」をどのようにして具体化していくかが焦点だった。次回六カ国協議では年内完了という土台を基に本格協議が行われる。

 北朝鮮は米朝国交正常化へ向けてテロ国家指定解除を強く求めてきた。今回の協議後、朝鮮中央通信は米国が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除し、制裁についても解除するなどの措置を取ることになったと報じている。

 これに対し、ヒル国務次官補は「米国は指定解除していない。解除するかどうかは今後の北朝鮮の非核化進展にかかっている」と否定している。

 北朝鮮の核の完全放棄という目標達成は厳しく、交渉が長い道のりになるのは確実。「次の段階」の具体化へ向けて目の前には難題が山積している。

 一方、政府は日朝国交正常化以前に拉致問題解決が先決との基本姿勢を繰り返し強調してきたが、今後、関係正常化を視野に米朝二国間協議が日本の頭越しに進展する可能性も出てきた。

 日朝国交正常化作業部会が五日から再開されるが、政府は拉致問題に加え非核化へ向けた取り組みも後押しし、関係各国と協調していくべきだ。

 拉致問題が重要な課題であることに変わりはない。だがそれを前提条件にするだけでは北朝鮮に足元を見られ、日朝交渉は進展せずに、逆に米朝交渉を加速させる事態を招きかねない。

 政府は、拉致問題の解決と、朝鮮半島の非核化、日朝国交正常化を同時に達成していくような包括的枠組みを構築する必要があるのではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070905.html#no_1

 

2007年9月5日(水) 夕刊 5面

未明離陸 嘉手納議会が抗議

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が八月二十八日未明に同基地を離陸した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は五日午前に開会した九月定例会の冒頭、未明離陸の全面中止と騒音防止協定の順守などを求めた抗議決議、意見書をそれぞれ全会一致で可決した。首相、防衛相、同基地司令官、沖縄防衛局長、外務省沖縄大使などに送付する。

 未明離陸が旧盆明けに強行されたことについて「米軍の無神経さ、傍若無人な態度に激しい怒りを禁じ得ない」とし、「我慢の限界だ」と訴えている。

 うるま市の県立沖縄高等養護学校と前原高校の敷地内に米軍車両が侵入した問題についても真相究明と再発防止、兵員の綱紀粛正、教育の徹底を求める抗議決議、意見書も全会一致で可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709051700_04.html