月別アーカイブ: 2007年11月

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月4日から7日)

2007年11月4日(日) 朝刊 1面

北部振興策 再開へ意欲/岸田沖縄相来県

普天間移設 議論継続を強調

 【本部】岸田文雄沖縄担当相は三日、凍結状態となっている本年度北部振興策について「早期に予算執行できるようにしたい」と、振興策の凍結解除に尽力する考えを示した。就任後二度目の来県で本部町の海洋博記念公園などを視察した後、記者団に述べた。七日に開かれる普天間飛行場の移設協議会については「お互いの意見を交換し、今後も継続していくことが大事だ」と強調した。

 北部振興策について岸田沖縄相は「関係者のさまざまな意見交換や意思疎通を積み重ねることによって、関係省庁にも検討してもらい、予算執行にこぎつけたい」と述べた。しかし、凍結解除の時期については「明確にどの時期からというのではないが、できるだけ早く執行しなければいけないと認識している」と述べるにとどまった。

 仲井真弘多知事や島袋吉和名護市長らが求める、代替施設の沖合移動については「協議会の場で、県や名護市の意見をしっかり述べていただきたい」として、解決に向けて率直に話し合うことの重要性を説いた。

 また、福田康夫首相が小沢一郎民主党代表との党首会談で連立を持ち掛けたことについては「連立は拒否されたが、いろいろ意見交換されたと聞いている。一つでも具体的な成果につながることがあれば、会談も意味があったと思う」と述べ、事態の推移を注視する姿勢を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711041300_01.html

 

2007年11月4日(日) 朝刊 25面

藻場のくい 実際は短い8センチくぎ/ジュゴン誤飲の恐れも

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、沖縄防衛局が天然記念物ジュゴンの餌場となる藻場に設置した目印用の鉄くいを「六十―八十センチの鉄製の棒」と説明していたが、実際には八センチのくぎが使われていたことが三日までに分かった。自然環境保護団体は「外れやすく、ジュゴンが誤飲してしまう危険性がある」と批判している。

 「北限のジュゴンを見守る会」(鈴木雅子代表)のメンバーが、移設先周辺の名護市東海岸を調査して明らかになった。

 メンバーが一部海域を調査したところ、軽く触れただけで動いたり、外れたりする目印を確認。八センチのくぎにビニールテープでロープを固定したものや十センチのくぎも複数確認された。

 藻場には、百カ所前後の目印が設置されているが、少なくとも十―二十カ所以上がこうした短いくぎを使用しているとみられる。

 体重が平均で二、三百キロ以上あるジュゴンは、一気に口で海草を根元から掘り起こし、食べながら前進する。調査に参加したジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎事務局次長は「打ち上げられたジュゴンの体内から釣り糸が見つかった例もある。餌場に不安定な八センチから十センチのくぎとロープがあると、飲み込んだ場合、命にかかわる。絶滅が心配されるジュゴンの調査としては、あまりにもずさんだ」と批判した。

 同調査は環境影響評価の対象外とされている。あらためて沖縄防衛局の調査手法や業者への監督責任が問われそうだ。

 同局はこれまでの取材に対し、「自然環境に十分配慮している」とし、「できるだけ鉄筋が海中に出ないよう海底面に打ち込んでいる」と説明していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711041300_06.html

 

2007年11月4日(日) 朝刊 2面 

決裂なら21日スト/全駐労

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が日本人従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、撤回を求めて防衛省と団体交渉をしている全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長)は三日、東京都内で中央委員会を開き、次回十六日の交渉が決裂した場合、二十一日にも四時間の時限ストライキを決行する方針を確認した。

 山川委員長は「提案は生活破壊につながるもので、受け入れられない。労働者として正当な闘争行動に、不退転の決意で臨む」と、全国各地区本部から集まった約百人に決起を促した。

 防衛省は、二日の団交で国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」の廃止などをあらためて提案してきたが、全駐労は拒否した。一九九一年以来、十六年ぶりとなる全国的なストは避けられない情勢だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711041300_08.html

 

琉球新報 社説

「連立」提案 党利党略の政治はやめよ

 「談合」あるいは「野合」と非難されても仕方がなかろう。福田康夫首相(自民党総裁)が2日、民主党の小沢一郎代表との党首会談で、政策実現のため連立政権樹立に向けた協議開始を提案した。これに対し、小沢代表は回答を保留。役員会で検討した結果、拒否した。

 いくら自民党が政権運営で行き詰まりを見せていたとはいえ、提案はあまりに唐突だ。政権維持こそが最優先と見られかねない姿勢に、国民の理解は得られまい。小沢代表の対応にも疑問が残る。なぜ、提案を即座に拒否できなかったのか。先の参院選でも「選挙による政権交代」を掲げてきただけに、その態度には一貫性を欠く。「政権にいたいだけなのか」との指摘も避けられまい。

 海上自衛隊の給油活動を継続する新テロ対策特別措置法案をはじめ、衆参で与野党の多数が異なる「ねじれ国会」では、多くの法案の成立のめどが立っていない。事実、福田政権となってから約1カ月の臨時国会で、一つの法案も成立していない。首相としては、民主党を政権に取り込むことで、このような事態を打開したい、との思惑があったのだろう。

 しかし、それは筋道が違う。もし、政策が実現できず、政権の維持が難しいというのであれば、総辞職するか、衆院解散・総選挙で国民の信を問うのが筋だ。それが「憲政の常道」というものだ。

 もちろん、国民生活に対する大きな支障を回避するため、与野党が協議を重ねることは必要なことだ。だが、その過程を飛び越して、いきなり連立政権の樹立、とは唐突に過ぎる。自らの協議能力を否定するようなものだ。

 そもそも、先の参院選で民主党が第1党になったことを、どう説明するのだろうか。選挙の「民意」は「政権交代が可能な2大政党制の実現」ではなかったのか。そうであるなら、今回の行為はこの国民の意思に反し、大政翼賛会の実現を目指すもの、と批判されてもしょうがない。

 共同通信社が10月末に実施した世論調査によると、「民主党中心の政権」を望む声が42・4%と、「自民党中心の政権」の39・8%を上回った。国民は政党の離合集散ではなく、政権を任せられる政党を求めているのだ。

 民主党もこの事実をあらためて認識すべきだ。安易に政権にすりよるべきではない。先の参院選で「自公政権の打倒」「政権交代で議会制民主主義の定着」を訴えて国民の共感を得たことを、いま一度思い起こしてほしい。

 政党、政治不信がなぜ、やまないのか。国民の意をくまない、党利党略に過ぎる政治に要因はないのか。国民の目線に沿った政治がなにより求められている。

(11/4 10:01)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28651-storytopic-11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月4日朝刊)

[普天間爆音訴訟]

司法は被害救済を急げ

 米軍普天間飛行場の周辺住民四百人余りが、ヘリコプターなど航空機の夜間飛行差し止めなどを求めた普天間爆音訴訟が那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で事実上、結審した。

 司法は、国内の米軍基地をめぐる騒音訴訟で一定レベルの騒音について違法性を指摘するが航空機などの飛行差し止めは認めていない。政府に米軍の活動を制限する権限はなく、飛行差し止め請求は成り立たないとする「第三者行為論」を根拠に、住民の訴えをことごとく退けてきた。

 騒音の違法性を指摘しながら、違法な騒音をまきちらす米軍機の飛行は黙認するという分かりづらい構図だ。結果、基地周辺住民の騒音被害は続いている。米軍の活動を制限する権限のない政府に、住民の被害救済を求めても問題が解決しないのである。

 裁判所は、難解な法理論を展開する前にまず基地被害の実態に目を向けるべきだろう。

 普天間飛行場を離着陸する米軍ヘリは騒音に加え、波長が長く人間の耳に聞こえにくい低周波音を発生させている。低周波音の被害は頭痛などの症状となり、不眠、圧迫感などさまざまな影響を及ぼす。

 原告住民の証言によると「ヘリコプターが家の上を飛ぶとき、体も心も押しつぶされそうになる。音が壁になって上から押さえ込まれる感じになる」という。

 被告の国は、低周波音が人体に及ぼす影響については認めているが「その影響が低周波によるものか否かの見極めが大切で、方法論が確立しているとは言い難い」などと主張。住民の被害についても個別的には立証されていない、と反論している。

 同訴訟で、那覇地裁沖縄支部は同飛行場周辺を現場検証した。短時間とはいえ、米軍ヘリが発する騒音を聴き、低周波音を直接、体に感じたはずだ。

 違法な騒音を出し続ける基地と、騒音に苦しむ人々が見捨てられるようなことがあってはならない。司法は住民の被害救済を優先すべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071104.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月4日朝刊)

[党首会談]

大連立は民意にそむく

 参院選での与野党逆転は、福田康夫首相の政権運営を厳しい局面に追い込んでいる。衆参両院の第一党が異なる「ねじれ国会」がもたらした効果はかくも絶大であり、自民、民主両党に国民の厳しい目が向けられている。

 福田首相と民主党の小沢一郎代表の党首会談で、第一党と第二党による「大連立構想」が飛び出した。

 しかし、大連立構想は論理が飛躍しており、違和感を抱かざるを得ない。最大の問題点は、参院選の民意をないがしろにしてしまうことだ。

 党首会談で福田首相は連立政権樹立へ向け協議することを提案した。小沢氏は回答を留保したが、党役員会は国民の理解を得られないと拒否した。

 民主党が拒否するのは当然だろう。なぜ即座に拒否しなかったのか、疑問がわく。小沢氏が大連立に前向きだったとすれば従来の言動とは矛盾する。

 福田首相は会談で新テロ対策特別措置法案の成立に協力を求めたが、小沢氏は憲法違反で認められないと反論。自衛隊海外派遣を随時可能にする「恒久法」の必要性を訴え、民主党の主張を取り入れて検討するなら、新テロ対策法成立に協力する考えを伝えた。

 民主党は政権公約「マニフェスト」を発表し、政権交代可能な二大政党の実現を主張してきた。参院選では「国民の生活が第一」と訴え、有権者の支持を集めたことを忘れたのか。

 大連立は自民党政権の延命、民主党の崩壊にもつながりかねない。もろ刃の剣であることに気付かなかったとすれば、小沢氏の指導力が問われよう。

 福田首相は会談後、「今の国会、政治状況を打開するため、政策を実現するための新体制をつくることもいいのではないかと話した」と語った。

 手詰まり状態に陥った首相の危機感の表れだろう。与野党で調整しなければ法案が一本も成立しない可能性もある。民主党に協力を求めるしかない。

 自公政権は衆院で三分の二以上の絶対多数を確保しているが、衆院での再議決にも限界がある。しかし、党首会談を経たことで、新テロ対策法成立へ向け衆院の再議決という強硬手段を取る可能性が高まったともいえる。

 自民、民主両党は表舞台である国会論戦でそれぞれの政策を訴え、対立軸を明らかにしていくことが先決である。その上で、政策面の一致点を見いだしていく努力も求められる。

 ねじれ国会の下での新たな国会運営の在り方について、双方とももっと知恵を絞っていくべきだ。党利党略では有権者に見透かされる。事態の打開が困難になれば、衆院解散・総選挙で国民に信を問うしかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071104.html#no_1

 

2007年11月5日(月) 朝刊 2面

移設協議進展に期待/岸田沖縄相

北部振興策「意思疎通を」

 岸田文雄沖縄担当相は四日午後、那覇市内のホテルで帰任会見した。七日に再開される米軍普天間飛行場の移設協議会について「関係者の皆さまに忌憚のない意見交換をしていただける環境づくりに努力してきたので、実りある協議会にしたい。さらなる議論の成果につなげなければいけない」と述べ、協議進展に期待感を表明した。

 凍結状態になっている本年度の北部振興策については「移設協など、さまざまな場を活用して関係者が意思疎通を図っていただくことが(早期の)予算執行につながる」との認識を示した。

 教科書会社から文部科学省に訂正申請が出ている高校歴史教科書の検定問題については、所管していないため具体的に言えないと前置きした上で、「地元沖縄の皆さま方と思いを共有し、理解を深めることは大変重要で、文科省が丁寧に対応することを期待している」と述べるにとどめた。

 文科省が実施した全国学力テストで、沖縄県が最下位となったことに「一般論で言うなら、教育分野における一つの調査結果ではないかと思う」との認識を示した。今後の対応は県が検討しているだろうとし、沖縄担当相の立場でできることは支援する考えを示した。

 岸田沖縄相は同日、名護市キャンプ・シュワブの普天間飛行場代替施設建設予定地などを視察した。


「理解される調査を」

ジュゴン藻場調査で沖縄相


 【名護】岸田文雄沖縄担当相は四日、米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う名護市キャンプ・シュワブの海域調査で、沖縄防衛局が実施するジュゴンの藻場調査が自然保護団体から危険だと指摘されている問題について、「多くの皆さんに理解してもらえるよう、調査が適切に進められなければいけないと思う」と述べた。視察後、記者団の取材に答えた。

 また、「大変素晴らしい自然環境があるとあらためて感じた。海の青さ、自然環境の一端も見ることができた。課題(移設問題)を解決する上で、頭に入れておかなければいけない要素だ」と語った。


忌憚ない意見 言える環境に

沖縄相が知事に


 岸田文雄沖縄相は四日午後、那覇市内で仲井真弘多知事と会談し、七日に再開される米軍普天間飛行場の移設協議会などをめぐって意見を交わした。岸田沖縄相によると、「(協議会では)忌憚のない意見を言える環境づくりに努力したい」と協力を求めたのに対し、仲井真知事も「努力したい」と応じたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711051300_05.html

 

琉球新報 社説

パキスタン戒厳令 民主化に逆行する愚挙

 主権在民を何と心得るのだろうか。パキスタンのムシャラフ大統領が3日、非常事態を宣言、現行憲法を停止して暫定憲法命令を発令した。事実上の戒厳令で、国民の基本的権利停止などが盛り込まれている。

 ムシャラフ氏はテレビ演説で理由を説明し、テロや過激派の脅威で「行動を起こさなければ統合が保たれなくなる」として、国民に理解を求めた。非常事態宣言を正当化する内容だ。

 確かに、自爆テロなど治安悪化の情勢はある。発端は首都イスラマバードで今夏起きた神学生らのモスク(イスラム教礼拝所)立てこもり事件だ。治安部隊が強行突入し、100人以上が死亡した。

 その後、イスラム過激派による軍や治安部隊への報復攻撃が続発し、武装勢力が兵士200人以上を人質に取った事件も、解決のめどが立っていない。しかし、こうした情勢だけをもって、大統領が事実上の戒厳令布告を出す決断に至ったとは思えない。ほかに大きな理由があるとみるべきだろう。

 指摘されているのが、大統領選の出馬資格をめぐる訴訟でムシャラフ氏に不利な判決を出すと予想される最高裁の封じ込めである。実際、政権内には「裁判所の中に政府の政策に反対する者がいる」との不満がくすぶっていた。

 ムシャラフ氏が、非常事態宣言を「権力の座にとどまる唯一の手段」と考えたとすれば、恣意(しい)的な強権発動である。進みつつあった民主化プロセスを止め、逆行させる愚挙と言わざるを得ない。

 問題はまだある。パキスタンが核保有国という点だ。民主化の公約を、あっさりほごにするような政権は危なっかしい。ムシャラフ氏には1999年、当時のシャリフ首相を失脚させ実権を掌握した「クーデター」歴もある。

 あれから8年。今回の非常事態宣言も、兼務する陸軍参謀長名で出された。軍のトップであれば、何をしても構わないというスタンスは危険極まりない。

 国民を失望させれば、反政府運動が活発化しよう。民主化しか政権維持の道はないことを、ムシャラフ政権は知るべきだ。

(11/5 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28678-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

小沢代表辞任表明 「政治は生活」の看板が泣く

 福田康夫首相(自民党総裁)との二度目の党首会談から2日。民主党の小沢一郎代表が緊急記者会見し、代表辞任の意向を表明した。首相から提案された連立政権樹立に向けた政策協議を、持ち帰った党役員会で否定され、政治的混乱が生じたことへの「けじめ」だという。

 どんなに失態を演じても、責任を取ろうとしない政治家が多い時代に潔いとの見方もあろうが、こと今回の件に関しては、不可解としか言いようがない。

 党内の混乱を反省するなら、まずは説明を尽くし、混乱の収拾に努めるのが党首の役目だろう。それもせずに辞めては、混乱に拍車を掛けるだけではないのか。所信表明直後に突然辞任した安倍晋三前首相と何ら変わりがない。

 小沢氏は、自由党党首だった1998年に自民党と連立合意し、「以前から考え方が合えば、どことでも協力すると言っていた」と話したことがある。しかしその後、連立を離脱し、2003年に民主党と合併した際には「総選挙に勝たないといかん、その一点だ」と方針を転換。06年4月の民主代表選では、党内に自身の政治手法への懸念があることを念頭に「まず私自身が変わらなければならない」と言明していた。

 その一つが代表選を戦った菅直人氏を代表代行に、鳩山由紀夫氏を幹事長に据えて挙党態勢を印象付けたことだろう。かつての「剛腕」「独断」は影を潜め、今年7月の参院選では「国民の生活が第一」と訴えて躍進、参院での野党による過半数を実現させた。

 “変身”ぶりは8月上旬、シーファー駐日米大使との会談で際立った。インド洋で海上自衛隊が米艦船などに給油活動するためのテロ対策特別措置法の期限切れが近いことを踏まえ、大使が延長に同意するよう求めたのに対し、小沢氏は「米国中心の活動は国連安保理からオーソライズ(承認)されていない」と突っぱねた。会談は小沢氏の意向で報道陣に公開され、実に分かりやすかった。

 ところが先月、首相から“密室会談”を持ち掛けられたところから雲行きが怪しくなる。一度は拒否した対テロ特措法案だが、二度目の会談で「連立協議」が持ち出され、ぐらついた。国際貢献の在り方に持論のある小沢氏は、前のめりになり、窮地の自民党に助け舟を出す格好となった。

 辞任表明会見で、小沢氏は「政権の一翼を担い、政権運営の実績を示すことが民主党政権を実現する近道だ」と指摘したが、政権交代を繰り返し訴えてきたことと矛盾する。国民生活を左右する重要課題は、国会で議論を戦わせてこそである。民意に背く安易な政権すり寄りでは「政治は生活」の看板が泣くというものだ。

(11/5 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28679-storytopic-11.html

 

2007年11月5日(月) 夕刊 5面

読谷議会が落下傘抗議/訓練の中止を要求

 【読谷】読谷村議会(前田善輝議長)は五日午前、臨時会を開き、嘉手納基地内に住む米軍人の息子による強姦致傷事件と同基地の即応訓練、爆音激化、パラシュート降下訓練、F15戦闘機などの未明離陸についての抗議決議と意見書の計六議案を全会一致で可決した。

 パラシュート降下訓練に対する抗議決議、意見書は同基地での訓練の恒常化を懸念、「基地周辺は住宅街や交通量も多いことから事故を誘発することも予測され、断じて容認できない」と指摘。

 十月三十日に実施された未明離陸については「周辺住民の安眠は妨げられ、平穏な日常生活は完全に破壊されている」と訴えている。

 同基地でのパラシュート降下訓練、未明離陸、即応訓練については今後、一切行わないよう求めている。

 嘉手納基地内に住む米軍人の息子による強姦致傷事件については、被害者への謝罪や補償、再発防止を徹底するよう要求している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711051700_03.html

 

2007年11月5日(月) 夕刊 4面

学童疎開の映像に大賞/県平和資料館制作 映文連アワード

 県平和祈念資料館が二〇〇五年に戦後六十周年記念事業の一環で疎開学童らの証言を映像にまとめた作品「やーさん ひーさん しからーさん」がこのほど、映像文化製作者連盟主催の映像作品コンクール「映文連アワード2007」で応募総数百三十七点の中からグランプリに選ばれた。同館で四日、受賞報告と作品の上映があり、関係者らが喜びを語り、平和な世の中を願った。

 作品は四十一分のドキュメンタリー。九州などへ疎開した学童や引率教諭などの証言を集め、「やーさん(ひもじい) ひーさん(寒い) しからーさん(さみしい)」という体験者の心情を明らかにし、「もう一つの戦争と呼ばれた疎開」の実態を浮かび上がらせている。

 あいさつで、宮城智子館長は「作品は疎開の厳しさが象徴的に表現され、映像としても説得力がある」とたたえた。制作を担当したシネマ沖縄の吉田尚子さんは「たくさんの平和に対する熱い思いが結集し、受賞に結び付いたと確信している。この賞を励みに今後も映像を通し、後世に真実を残していけるよう頑張りたい」と語った。

 出演した元学童らは「決して忘れてはならない記憶。特に若い人に見てもらいたい」などと語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711051700_04.html

 

2007年11月6日(火) 朝刊 1・23面

F15構造的欠陥か/米軍、飛行停止措置

空自200機 嘉手納53機も/米国墜落事故受け

 【嘉手納】米ミズーリ州空軍所属のF15戦闘機が今月二日、同州で墜落する事故があり、米軍嘉手納基地報道部は五日、「事故原因が特定されるまで嘉手納基地所属のF15戦闘機の飛行を停止する措置を取った」と発表した。事故原因について米空軍は「航空機に構造上の欠陥が起きた可能性」を指摘している。嘉手納基地周辺自治体の首長らは「F15は欠陥機であり、即時撤去するべきだ」と反発しており、六日にも米側への申し入れなど対応を検討する。この事故を受け、航空自衛隊のF15約二百機も飛行を見合わせていることが五日分かった。

 飛行停止措置は米本土だけでなく、米国外の基地でも取られている。F15は嘉手納基地には五十三機が配備されている。

 米空軍公式ホームページ(HP)は、事故原因について「初期段階の調査は、航空機に構造上の欠陥が起きた可能性を示している」と指摘したが、具体的な言及はない。

 嘉手納基地報道部は「事故原因のさらなる検査、分析を終えるまで」停止措置は続くと説明。期間は明らかにしていない。

 同基地での停止措置は四日に始まり、仮に戦闘任務が発生した場合は、飛行するという。

 航空自衛隊航空幕僚監部によると、在日米軍から四日午前、F15の飛行停止措置の連絡があった。この後、小松(石川県)、新田原基地(宮崎県)などで飛行を見合わせている。

 防衛省は二〇〇八年度予算概算要求で航空自衛隊那覇基地の旧型主力戦闘機F4部隊(約二十機)と百里基地(茨城県)のF15部隊(約二十機)の入れ替えに約一億九千万円を盛り込み、同年度中の入れ替えを目指している。

 AP通信などによると、墜落したF15は一対一の戦闘訓練を行っていたが、米ミズーリ州ボス近くの森林地帯に墜落した。操縦士一人が緊急脱出したが、腕の骨を折るなどの大けが。近隣の建物や人身への被害はなく、同行した三機は無事に帰還したという。

 嘉手納基地を抱える嘉手納、北谷、沖縄の三自治体には五日、同基地や沖縄防衛局から連絡があった。同飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「三連協でF15は欠陥機と指摘してきたことが証明された。F15は即時撤去するべきで、六日にも何らかの措置を講じるよう事務局に指示したい」と話した。

 嘉手納基地のF15の飛行停止措置に伴い、航空自衛隊小松基地(石川県)で五日から始まる予定だった訓練移転は実施されなかった。小松基地によると訓練移転の日程は「未定」という。

 米空軍は一九七五年にF15を採用し、四百機以上を保有。現在は米本土やアラスカ、ハワイ、英国、中東などにも配備されている。


     ◇     ◇     ◇     

「欠陥機」一斉に反発/住民、即撤去求める


 【中部】「飛行停止でなく、撤去すべきだ」。F15戦闘機が米本国で墜落事故を起こし、嘉手納基地での運用を停止していることが明らかになった五日、周辺の首長や住民らは一斉に反発し、同機の早急撤去を求めた。同基地に配備されているF15戦闘機は過去にも墜落事故などを繰り返し、そのたびに飛行を再開。住宅地上空を飛行している。「いつ事故が起きるか分からない欠陥機が、嘉手納基地に配備されているとは恐ろしい」。住民の不安と不信感は高まっている。

 F15戦闘機の撤去を求めてきた嘉手納町の宮城篤実町長は「事故の頻発具合から、F15には重大な欠陥があるのではと懸念していた。今回の事故で地域住民の不安や不信感は一層高まった。あらためて三連協としてF15の撤去を求めていきたい」と述べた。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は、墜落した機体がかつて嘉手納基地に所属していた可能性もあると指摘した上で「米軍が国内外に向けて停止措置を講じざるを得ない大きな欠陥が見つかったのではないか」と懸念した。

 滑走路に隣接する同町屋良地区に住む伊波勝雄さん(68)は「住民は以前から欠陥機と指摘していた。F15は普段から未明離陸などで騒音をまき散らしている」と批判。

 北谷町砂辺区の松田正二区長は「運用停止ということは、墜落の恐れがあるということだ。そんな飛行機が嘉手納基地に配備されているのなら恐ろしいことだ」、沖縄市知花の田島清信自治会長も「F15は騒音もひどいが、過去にエンジンの一部が落ちた事故もあった。いつ飛行再開されるか心配だ」と不安を語った。


飛行停止は重大 根本的に問題か


 航空評論家青木謙知さんの話 米本土の事故で嘉手納基地のF15にも飛行停止を命じるとは重大だ。通常発生するようなトラブルと異なり、F15の根本にかかわる問題があったのではないか。戦闘訓練中の墜落であれば目撃した操縦士が証言でき、どのような問題が発生したか米軍は分かるはずだ。航空機の安全確保は重要で、飛行停止は必要な措置だろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061300_01.html

 

2007年11月6日(火) 朝刊 2・23面

社「軍の強制」明記/教科書検定

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、検定意見が付された五社七冊の訂正申請が六日にも出そろうことが五日、分かった。また、同日夜に東京都内で開かれた「社会科教科書執筆者懇談会」の第三回会合に、五社のうち山川出版を除く四社六冊の執筆者や編集担当者約二十人が出席し、訂正申請時の記述に各社が日本軍の強制性を明記しているとの認識で一致した。

 東京書籍、実教出版、清水書院、山川出版の四社は今月一、二日に申請を終えており、最後に残った三省堂も六日に申請する見通しだ。

 申請理由には五社とも、教科用図書検定規則十三条二項の「学習を進める上に支障となる記載」を挙げているもようだ。

 執筆者懇談会の会合では、今まで訂正申請時の記述が明らかになっていなかった二社の執筆者が、内容を説明した。

 このうち、日本史A・Bの二冊に検定意見が付いた会社の執筆者は、執筆者同士が合意した案として「『集団自決』は自発的な死ではなく、日本軍が強いたという趣旨が分かる記述になっている」と述べた。「集団自決」以外にも、近現代史で沖縄や北海道に本土からの差別や偏見があったことに関する記述を増加。「集団自決」関連の訂正だけが突出しないよう配慮したという。

 申請に際して会社側から記述を変更する説明がないため、「(案段階から)記述は変わっていないと思う」としている。

 もう一社の執筆者は、「集団自決」関連の写真説明文を検定前より具体的で詳細な記述に改め、巻末の年表にも教科書検定問題を明記する方向を明らかにした。

 会合では、執筆者が七日に文部科学省などで記者会見し、懇談会としての見解を声明の形で発表することを確認。県内に訂正申請だけでなく、あくまで検定意見の撤回を求める声が強いとの認識に立ち、今後の課題や取り組みを表明する。


     ◇     ◇     ◇     

沖縄条項 新設要請/高嶋教授ら、検定撤回も


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、高嶋伸欣琉球大教授、赤嶺政賢衆院議員(共産)らが五日、文部科学省に初等中等教育局教科書課の松木秀彰課長補佐を訪ね、検定意見の撤回や沖縄条項の新設などを要請した。

 高嶋教授によると、松木課長補佐は検定意見撤回については「上司に伝える」と述べるにとどめた。沖縄条項については「広島、長崎(への原爆投下)、東京(大空襲)の例もあり、(沖縄だけの条項をつくるのは)なかなか難しい」と難色を示したという。

 高嶋教授は、同省の布村幸彦大臣官房審議官が十月三十日の参院内閣委員会で、教科書検定意見について「手続き的に撤回ということはない」と述べたことを問題視。

 「検定規則に撤回を盛り込んでこなかった不作為の責任が文科省にあるのではないか」と指摘したが、松木課長補佐から回答はなかったという。

 要請では高嶋教授と山口剛史琉球大准教授が個人名で検定意見撤回を求めた要請書と、「沖縄戦首都圏の会」など三団体名の要請書の二種類を提出した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061300_02.html

 

2007年11月6日(火) 朝刊 2面

基地割合1位 所得最下位/「100の指標からみた沖縄県」

 県企画部は、「100の指標からみた沖縄県のすがた」の二〇〇七年度改訂版をこのほど発刊した。経済や社会、教育、福祉、財政など十一分野における全国ランキングを示した。県土に占める米軍基地・施設面積の割合は断トツの一位。一方で、一人当たりの県民所得は依然として最下位、現金給与総額(常用労働者)も最も低い。年間の収入に対する負債比率も全国一で、家計の厳しい状況が浮き彫りになった。一九八六年の発刊から、おおむね三年ごとに改訂し、今回が七回目。全百六十六項目のうち、全国一位が十七、四十七位が三十一項目あった。

人口


 人口増加率(自然増加率+社会増加率)は三位と高く、出生率の高さから自然増加率はトップ。社会増加率は三位だった。年少人口(〇―十四歳)も全国最高で、全国的な人口減少傾向とは逆に、社会活性力が高いのが特徴といえる。


労働


 完全失業率が7%台で全国一で、有効求人倍率は四十六位。高校・大学の新規学卒者の無業者(就職・進学もしない)比率はともに一位だった。新規卒業者の初任給は、高校・大学の男女ともに全国で最も低く、雇用・労働情勢の厳しさが裏付けられる。月間総実労働時間は、男性が前回の四位から三十二位に、女性も二位から十四位と下がり、長時間労働の傾向は改善された。


産業・経済


 開業・廃業率がともに全国一。小規模零細企業が多数を占める県内の状況を反映している。製造業出荷額は最下位に転落した。第三次産業の割合は全国二位。一方で第二次産業は四十七位と、観光などのサービス産業中心の構造となっている。


財政


 県の自主財源の割合は約27%で、最下位から脱して四十五位。ただ、県と市町村分を合わせた地方税(一人当たり)は約十五万四千円で四十七位で、財政基盤の脆弱さが目立つ。


その他


 高齢化の動向を把握するため、今回新たに単独世帯割合の項目が設けられた。全国十八位と全国平均より若干低い。「高齢化の度合いは全国に比べて低いものの着実に進展している」(企画部)状況となっている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061300_03.html

 

2007年11月6日(火) 朝刊 23面

山の景観台無し」/シュワブで野焼き実施

 【名護】名護市の米軍キャンプ・シュワブの久志岳ふもとの「レンジ10」付近で、米海兵隊が不発弾処理のために“野焼き”することについて沖縄防衛局は五日、沖縄タイムス社の取材に対し「過去にシュワブで野焼きが行われたとは承知していない」と回答、同演習場で初めて行われる可能性が高いことを認めた。

 久志区の森山憲一さん(65)は「十月末にも爆弾がさく裂し頂上近くまで燃える着弾があった。迫撃砲や爆破訓練などこれまで以上の訓練が行われている可能性がある」と訓練強化との関連を指摘。「地元では『久志富士』と呼ばれるほど美しい山の景観が台無しになる上、山の保水力が下がり赤土被害も増える」と環境への悪影響を心配する。訓練内容について同局は、「米軍の運用にかかわる事であり承知していない」と説明している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061300_08.html

 

2007年11月6日(火) 夕刊 1面

嘉手納53機 撤去要求/F15飛行停止

 【中部】米本国での墜落事故を受け、嘉手納基地のF15戦闘機が飛行を停止していることについて嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は六日午前、臨時会を開き、同基地所属のF15全五十三機の即時撤去を求める意見書案と抗議決議案を全会一致で可決した。また、同基地を抱える嘉手納、北谷、沖縄の三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は同日午後、北谷町役場で幹事会を開き、F15の即時撤去などを求める方向で協議する。

 嘉手納町議会は六日午前に開いた臨時会で、米軍嘉手納基地に配備されているF15全五十三機を即時撤去するよう求める意見書と抗議決議の両案を全会一致で可決した。

 臨時会は当初、同基地所属のF15など計八機が十月三十日に未明離陸を強行した問題で、抗議決議と意見書を審議する予定だったが、今月二日に米国内でF15が墜落、同基地に配備されているF15が飛行を停止していることが五日、明らかになったことを受け、「欠陥機F15戦闘機を撤去すること」の一文を急きょ盛り込んだ。

 同町議会は後日、同基地など関係機関を訪れ、F15撤去を求めて直接抗議する予定。

 未明離陸に対しては、同基地の騒音防止協定は深夜早朝(午後十時―翌日午前六時)の飛行を制限しているが、米軍は「運用上必要」として「例外規定」を盾に未明離陸を繰り返しており、協定そのものが形化している実態を指摘。骸 「例外規定」廃止のため、地元自治体、県、県議会、県選出国会議員の連携の必要性を強調。「同協定の抜本的見直しを働き掛けることが強く求められている」と訴えている。

 日米両政府に対しては深夜早朝飛行の中止に向けた協議を行い、内容を明らかにすることを要求している。


即時撤去要請へ三連協が幹事会/北谷町役場で午後


 三連協は六日午後、北谷町役場で幹事会を開き、嘉手納基地所属の「F15戦闘機の即時撤去」などについて協議する。

 野国昌春会長(北谷町長)は、昨年一月に伊計島沖で起きたF15の墜落事故を挙げ、「沖縄だけでなく、至る所で事故を起こしている欠陥機が、われわれの上空を飛んでいること自体許せない。即時撤去すべきだ」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

領空侵犯F4で代替/那覇から派遣 空自「支障ない」


 【東京】米空軍のF15戦闘機の墜落事故を受け、航空自衛隊は千歳(北海道)、小松(石川県)、百里(茨城県)の各基地で対応する対領空侵犯措置でもF15の飛行を見合わせ、F4戦闘機で対応措置を取っていることが六日、分かった。空自那覇基地から五日、F4八機を百里基地に派遣した。

 航空幕僚監部は事故原因が判明するまでF15の飛行を当面見合わせる方針。対領空侵犯措置に関してはF4戦闘機で対応するとしており、「特に支障はない」と説明した。

 飛行見合わせについて空幕は「自衛隊が使用しているF15は米国からライセンスを取得して生産している。今回は安全を重視し、(墜落事故の)原因が分かるまで飛行を見合わせることにした」としている。

 空幕によると、四日に米軍から「米空軍のF15に不具合があった」との連絡を受け、航空総隊司令官などから各部隊長に飛行を見合わせるように指示したという。

 墜落事故原因についての外務省の照会に対し、駐日米国大使館は「調査中」としているという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061700_01.html

 

2007年11月6日(火) 夕刊 1面

文科相、予算支援前向き/「学テ」最下位

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は六日午前、同省の全国学力テストで最下位となった沖縄県への対応について「県側からも要請を受けており、テスト実施の目的が生かされる支援は当然」と述べ、予算支援を含め学力向上に積極的に取り組む考えを明らかにした。閣議後の会見で答えた。

 仲村守和県教育長が五日、文部科学省を訪ね、学力調査官の派遣や小規模校の教員増、学力改善推進モデル事業への指定などを求めていた。渡海文科相は「すでに富山県の検証改善委員会から要請があり、調査官を派遣している。(沖縄については)具体的な日程調整や詳細を詰めて対応したい」と述べた。

 また、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、教科書会社の訂正申請後の審議について「教科用図書検定調査審議会の開催を求めているが、審議が終わる段階までは静かな審査をお願いしており、結果が出た段階で審議経緯をできるだけ皆さんに説明したい」との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061700_02.html

 

2007年11月6日(火) 夕刊 1面

クラスター弾訓練 政府「必要」

 【東京】米海兵隊がクラスター爆弾や、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使った訓練を沖縄周辺で実施している問題で政府は六日、「使用される爆弾の種類、訓練内容などの詳細は承知していないが、必要な訓練を実施していると認識している」とする答弁書を閣議決定した。照屋寛徳衆院議員(社民)への答弁。

 答弁書は、国連人権委員会の差別防止・少数者保護小委員会が大量破壊兵器や無差別に影響を与える兵器の製造、拡散を制限するよう求めた決議について「各国に法的な義務を課するものではなく、特定の兵器を使用した訓練の制限などを求めるものではない」と指摘。

 その上で、「米軍が沖縄で行う訓練について、同決議との関係で問題があるとは考えていない」との見解も示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061700_06.html

 

2007年11月6日(火) 夕刊 5面

「カメさん」の軌跡 資料・写真細かに

 那覇市長や衆院議員を務め、「カメさん」の愛称で親しまれた故瀬長亀次郎氏(一九〇七―二〇〇一年)の遺品を紹介する資料・写真展が六日、那覇市ぶんかテンブス館で始まった。瀬長さんの生誕百周年を機に実行委員会(代表・田港朝昭琉球大学名誉教授)が主催した。十一日まで。入場無料。

 〇一年十月五日に九十四歳で亡くなるまでの瀬長さんの軌跡をくまなく公開。戦前に医師を志した七高(現鹿児島大学)時代の様子や、数々の書籍に論文を残し著作を執筆したジャーナリスト時代など、民衆運動の象徴的存在だった瀬長さんの違った一面も見ることができる。

 開場を前にオープニングセレモニーが開かれ、村山純日本共産党県委員会委員長代理、中村文子一フィート運動の会顧問、小松直幸日本民主青年同盟県委員会委員長がテープカット。

 瀬長さんの遺品を保管・管理する二女の内村千尋さん(62)は「多くの人が来場しうれしい。『カメさんを語る会』の企画も用意しており、今まで知らなかったエピソードなどを集めたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061700_07.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 29面 

墜落同型ヘリ普天間に/米、定期配備も示唆

 【宜野湾】二〇〇四年八月に沖縄国際大学に墜落した米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリコプターと同型のヘリ二機が六日、宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備された。米海兵隊報道部は、ローテーションの部隊配備計画(UDP)に基づく措置としており、同ヘリを定期的に配備する可能性を示唆している。伊波洋一市長は「製造から四十年近くたつ老朽化したヘリが、市街地上空を飛ぶことは許されない。米軍に直接抗議することも検討している」と反発を強めている。

 CH53D二機は六日午後三時ごろ、米空軍のC5大型輸送機に積み込まれ普天間飛行場に到着した。残る二機は七日に運び込まれる予定。同市には六日、沖縄防衛局から「『普天間』に到着した」との連絡があった。

 米海兵隊報道部は、沖縄タイムス社の取材に対し、同ヘリの配備について「『イラクの自由作戦』の支援のため、UDPを延長する」と回答。同ヘリがローテーションで配備される可能性を示唆している。

 四機はすべて米海兵隊岩国基地(山口県)の所属で「イラクの自由作戦」から帰還した、という。

 ヘリ墜落事故が起きた沖縄国際大学がある宜野湾区の仲村清自治会長は、CH53Dヘリの老朽化にあらためて懸念を示した上で、「事故と同型のヘリ配備に住民の不安は大きい。飛行場に到着するだけでも、心の平安が脅かされる」と不安を口にした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_01.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 1・2面

県、沖合移動を正式要請/普天間協きょう再開

 【東京】米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会が七日午前、約十カ月ぶりに首相官邸で開かれる。県と名護市は「滑走路の沖合移動」を協議会の公式の席で初めて正式要請する。仲井真弘多知事は、環境影響評価(アセスメント)とは別に、政府の自主的な判断で沖合移動することも要請する方針。一方、防衛省は政府案を前提に、アセス手続きを進める考えをあらためて示すとみられる。

 福田政権初の協議会となる今回は、主宰者が防衛相、沖縄担当相の共催から官房長官に格上げされ、沖合移動をめぐる地元との溝を埋められるかが焦点になる。

 仲井真知事は協議会で、沖合移動について(1)事業者の自主的な判断(2)アセス手続きの中での修正―の二段階で実施するよう要請。一方で、移動範囲はキャンプ・シュワブ沖の平島にかからないことなど、大幅移動を求めていないことも明確化し、移設計画が「円滑に進むことを前提に政府と協議」する姿勢を打ち出す。具体的な移動距離は政府が決めることとし、地元からは要望しない方針だ。

 また、飛行ルートが集落上空に差し掛かることや戦闘航空機装弾場の設置など、運用計画に対する地元への説明が不十分な点も指摘する。

 福田康夫首相は六日夕、官邸で記者団に「協議会をきっかけに(移設への)沖縄の理解が進み、われわれも前進できるように具体的な案が出ればいい」と述べ、地元の理解獲得に全力を挙げる考えを示した。

 町村信孝官房長官も会見で「政府と県、名護市との関係が必ずしも順調ではないが、協議会を何度か開くことでアセスが順調に進み、本格着工がスムーズにできるようにしたい」と強調した。

 また、岸田文雄沖縄担当相は四日に来県した際の記者会見で、凍結状態になっている本年度の北部振興事業の取り扱いについて「移設協など、さまざまな場を活用して関係者が意思疎通を図っていただくことが(早期の)予算執行につながる」との認識を示し、協議会再開が同事業継続にも寄与することを明確にしている。


     ◇     ◇     ◇     

政府配慮引き出し狙う


 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会が七日、約十カ月ぶりに再開される。県側は「一年近く政府から前向きな回答が得られなかったものを今回、一気に解決できるとは考えていない」(県幹部)と楽観視していない。ただ、主宰者が官房長官に格上げされ、官邸主導となったことで「政治決着」への期待も広がる。「互いにあと半歩近づけばいい」(同)。もともと「日米合意の範囲内」の修正を求めてきた県は沖合への大幅移動は念頭にない。県にとって、実際の移動距離に勝るとも劣らず重要なのは、沖縄側の強い要望が「政府の配慮」を引き出したという形にすることだ。

 「今回は『正常化協議会』だ」(県幹部)。県は七日の協議会を一月以来の交渉停滞を解き、互いの主張に耳を傾ける「キック・オフ」と位置付けている。

 アセス方法書の住民意見概要の送付を受け、仲井真弘多知事は方法書の受け取り保留を解除。知事意見提出に向け、手続きを進める方針を打ち出した。これは県が「アセス前の修正」を事実上断念し、アセス手続きの中で沖合移動を求めていく姿勢への転換と受け止められる。

 アセス手続きで定められた「軽微な修正(変更)」でも、理屈の上では数百メートル単位の移動は可能だ。それでも県が「アセス前」にこだわったのは、「アセス手続きの中での知事意見は法的拘束力を持たず、沖合移動の明確な担保が得られない」(県幹部)からだ。

 法的拘束力のない知事意見で沖合移動を求めても、事業者の国が従う保障はない。むしろ、自然環境に与える負荷を抑制する面から検討するアセスでは、沖合移動は自然環境にマイナスと判断される可能性が高い、との懸念が県にはある。

 「日米合意案がベスト」との立場の政府には、「移動ありき」で議論することへの抵抗は強い。県側にもアセス手続きの中で沖合移動を求める以上、「事業者がアセスを踏まえて決めることを事前に県がやれとは言えない」(同)との認識がある。具体的な移動距離の要請が先行する形になれば、防衛省から「アセス制度を無視するもの」と付け入られることへの警戒もある。

 一方で県は「合理的な科学的データが得られれば、沖合移動を踏まえてもらえるかということは、事前に主張できる」(同)と指摘。しかし、これでは県にとって「担保」にはなり得ない。このため県は、アセスとは別に、政府から沖合移動に前向きな言質を協議会で引き出したい考えだ。

 地元にとっては、なるべく沖合に移動した方が集落への影響は低減されるが、県や名護市が「日米合意の範囲内」で要求している以上、おのずと限界がある。知事は実際にヘリを飛ばして現地で騒音調査を実施するよう求めているが、客観的なデータを基にするとしても、「合格点」の判断は最終的には知事や名護市長の主観に委ねられる。

 政府がアセス手続きとは切り離し、「地元の意向に配慮し、自主的に沖合に移動した(する)」という形式を踏まえることが、容認に向けた「地元の決断」を後押しする展開につながりそうだ。(政経部・渡辺豪)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_02.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 2面

旧軍飛行場用地問題/「団体方式」方針決定

 戦時下に接収された旧軍飛行場用地問題の解決促進を協議する県と市町村の第三回連絡調整会議(主宰・仲里全輝副知事)が六日、県庁で開かれた。同問題解決に向けた今後の方針として、(1)団体方式での解決策(2)条件の整った市町村から先行的に事業実施に取り組む(3)個人補償を求める地主会への団体方式での合意形成の呼び掛け―などを了承した。

 具体的には、本年度中に国に対して、各市町村と地主会から取りまとめた事業案の説明や担当窓口の設置を求める。また、国会議員や県議会議員へ支援を依頼。二〇〇九年度の予算獲得に向け、国との検討を進める。

 仲里副知事は「振興計画もあと四年しか残されていない。国に解決を求めるには、市町村と県が連携して取り組むことが必要。戦後処理の大変重要な問題で、解決のために連携を密にしたい」と述べた。

 会議には那覇、石垣、宮古島の三市、嘉手納町、読谷、伊江両村の六市町村の代表らが出席。嘉手納町の當山宏総務部長は「地主会が個人補償を求めており、『団体方式』で取り組む方針を決めてしまうと個人補償の可能性が閉ざされてしまうのではないか」と指摘した。

 このほか「個人補償を求める地主会に対して、市町村だけでなく、県が積極的に合意形成を図ってほしい」「振計の期限も迫り、先行しているところから取り組むことが必要だ」などの意見が出された。


[解説]

折衝戦略いまだ白紙


 旧軍飛行場用地問題について、県と市町村の連絡調整会議で「団体方式を解決策とする」との方針が固まったことで、遅々として進まなかった同問題が解決に向けてようやくスタートラインについた格好となった。

 同問題は二〇〇二年度にスタートした沖縄振興計画(一一年度終了)で「戦後処理の課題」として初めて位置付けられながら、手付かずの状態が続いていた。

 具体的な解決策が見いだせなかった背景には、個人補償と団体補償を求める地主会の態勢の違いもあるが、行政側と地主会が一緒になった強力な態勢を整えられなかったことも要因に挙げられる。

 県は調査検討委員会が〇四年に提言した「団体補償による早期解決」を基本スタンスとしてきた。だが、同問題に取り組む責任の所在のあいまいさが残ったままだった。

 六日の第三回の調整会議は約三年ぶりに開催。仲里全輝副知事は「振興計画も残り四年で、時間的に厳しい」と繰り返し、市町村の連携と協力を求めた。

 ただ、戦後処理事案としての事業規模や予算措置、仕組みづくりなどはまだ白紙の状況。今後、国への説明や事業案の精査、検討作業に着手する。

 県と市町村の連携は当然ながら、事業案を具体化するためにも、国との折衝への戦略づくりが求められる。戦後処理問題という共通認識を再確認し、解決に向けた実行力が試されている。(政経部・赤嶺由紀子)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_05.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 2面

F15欠陥恐れ/三連協が即時撤去要請

 【中部】米本国での墜落事故を受け、米軍嘉手納基地のすべてのF15戦闘機が飛行を停止している問題で、同基地を抱える沖縄、北谷、嘉手納の三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は六日、「欠陥機の飛行は基地周辺住民の生命を軽視した基地の運用と言わざるを得ない」などとして、F15の即時撤去を求める要請書を同基地司令官あてに送付した。

 同基地では六日午後五時現在もF15の飛行は確認されておらず、米軍は事故原因や、「構造上の欠陥の可能性」について具体的に明らかにしていない。

 要請書は米本国で墜落した同機種が、県内では一九九四年から現在までに四件の墜落事故を起こしていると指摘。同基地内での緊急着陸の約65%がF15を含む戦闘機であることを踏まえた上で、「(事故のたびに)原因の早急な究明と公表および再発防止を求めてきたが、一向に改善の兆しが見られない」と強く反発。

 F15の構造上の欠陥が疑われる米本国の事故を問題視し、「一歩間違えば嘉手納基地周辺でも同様な事故が発生する可能性は大であり、住民を巻き込む大惨事につながるものである」として即時撤去を求めている。

 三連協は同じ内容の要請書を外務省沖縄事務所、沖縄防衛局へも送付した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_06.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 29面

「集団自決」訴訟/那覇で被告支援集会

 大阪地裁で九日に行われる「集団自決」訴訟の原告と被告の本人尋問を前に、那覇市の教育福祉会館で六日、被告側の支援集会が開かれた。沖縄平和ネットワークの津多則光・沖国大非常勤講師が「梅澤裕・赤松嘉次戦隊長の罪状を追及する」と題して講話し、原告の戦隊長側が「証言や証拠をねつ造している」などと批判した。

 津多さんは、座間味島の戦隊長だった梅澤氏が役場助役(兵事主任)に対し、「死ぬでない」「最後まで生き残って軍とともに戦おう」などと自決を止めたとしていることについて、その場にいた生存者の記録や当時の状況に照らして整合性がつかないと指摘。

 また援護法の適用を受けるために軍命令があったことにしたという原告側の主張について、同法適用の問題を一緒くたに「集団自決」に絡めていると批判。原告側の主張の根拠に疑問を呈した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月7日朝刊)

[F15飛行停止]

構造上の欠陥とは何か

 米空軍の主力戦闘機F15イーグルがまたしても米国内で墜落事故を起こし、米軍嘉手納基地所属の五十三機を含む全機が飛行を停止している。

 米軍の措置にあわせて航空自衛隊も、保有する二百機余の飛行を当分見合わせることを決定。対領空侵犯措置(スクランブル出動)のため、空自那覇基地のF4が百里基地に派遣されるなどその波紋は日本にも及んでいる。

 F15は製造から三十年余が経過し、その老朽化が指摘されている。県内での同機の事故件数は、一九七九年の嘉手納基地配備後、優に百件を超える。

 中でも昨年一月、伊計島の東約七十五キロの洋上で、同基地所属機が墜落したのは記憶に新しい。このほか緊急着陸、不時着、部品落下、空中接触、エンジン火災、車輪パンク、燃料漏れなど枚挙にいとまがない。

 今回、事故原因について米空軍は「航空機に構造上の欠陥が起きた可能性」を指摘しているだけで、詳細は明らかにしていない。だが、それは今に始まったことではない。

 一連の事故について、これまで県民の納得のいく原因の公表がなされたことがあるだろうか。軍事機密を理由に、県民、国民は常に自らの安全に関する情報の外に置かれている。

 今回の米国内での事故後、即座に対応した空自の飛行停止の措置は、F15が抱える構造上の問題の大きさを示しているように思える。事故の原因究明と調査結果の公表なしには、住民の不安を解消することができない。

 事故を受けて嘉手納町議会は六日、急きょF15の全機即時撤去を求める意見書と抗議決議を採択した。また沖縄、北谷、嘉手納三市町首長による「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)も同日幹事会を開き、即時撤去の要請行動を決めた。

 米軍の言う「構造上の欠陥」とはいったい何なのか。果たして今回も住民を無視したまま、うやむやにされるのだろうか。まず国は事故原因と対策について詳細な情報を入手し、国民に知らせるべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071107.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月7日朝刊)

[党首会談の怪]

国民への説明が不十分だ

 民主党は、辞任表明した小沢一郎代表について、自民党との連立はしないという条件付きで慰留する方針を確認した。

 「小沢氏続投」を党内の一致した見解にまとめ上げ、小沢氏に翻意を促し辞任騒動の早期収拾を図りたいという狙いだろう。

 鳩山由紀夫幹事長らが五日、小沢氏に代表辞任を撤回するよう要請したのに対し、小沢氏は当初、回答を留保。夜になって党三役が再度慰留したところ小沢氏は辞意を撤回する考えを明らかにした。

 今回の辞任劇の背景に何があったのか、不明な点があまりにも多い。党首会談の真相はやぶの中で、どんなやりとりがあったのかを説明すべきだ。

 最も解せないのは、福田康夫首相と小沢代表の言い分が大幅に食い違っていることである。

 小沢氏は辞任表明で、福田首相が(1)国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は、国連安全保障理事会か国連総会の決議によって認められた国連の活動への参加に限る(2)自民、民主両党の連立が成立するなら、新テロ対策特別措置法案の成立にはこだわらない―と述べたと説明した。

 しかし、首相は自衛隊の海外派遣について「国連決議が出て、何でもかんでもやるかはよく詰めなければならない」とし、検討すべき課題が多いとの認識を示している。

 対テロ新法案については「給油活動は国際協力の一環としてぜひやりたいと一貫して考えている」と、小沢氏の言い分を全面的に否定した。

 連立に絡む問題で、双方の認識がここまですれ違うことがあり得るのか。

 「大連立構想」をどちらが最初に持ち掛けたのかという点も説明が違う。

 小沢氏は「わたしが持ち掛けたとか『小沢首謀説』までが報道されている。まったくの事実無根だ」と述べ、首相が持ち掛けたとの認識を強調した。

 これに対し、首相は「あうんの呼吸という感じではないか」と述べ、町村信孝官房長官によると、小沢氏から持ち掛けたと言いたげな説明である。

 大騒動の割には原因が釈然としない。双方が都合よく解釈した「同床異夢だった」では説明になっていない。

 両党の連立は極めて重要な問題であり、国民に見える形での議論が前提になる。いやしくも衆院第一党、参院第一党の党首が二度にわたって突っ込んだ話し合いをしたのである。国民への説明責任をきちんと果たすべきだ。

 国民不在の密室会談は有権者への背信行為ではないか。肝心の中身をうやむやにしたまま放置することはできない。このままでは国民は納得しない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071107.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15飛行停止 欠陥あるのか徹底究明を

 米国でF15C戦闘機の墜落事故が発生したことを受け、米空軍は嘉手納基地所属のすべてのF15戦闘機の飛行を実戦任務を除き停止した。機体の構造的な故障が墜落の原因となった可能性があるためだ。

 構造上の欠陥を抱えているかもしれない戦闘機が、長年にわたって嘉手納基地から飛行を繰り返していたと考えると背筋が寒くなる。

 欠陥機である可能性が少しでも残っている間は、飛行停止措置を継続すべきだ。

 事故は2日に発生。操縦士1人が乗った米ミズーリ州空軍州兵部隊所属機が民有地の森林地帯に墜落した。パイロットは脱出したものの重傷という。

 構造的な故障の可能性は初期段階の検査で指摘されていた。米軍が飛行停止を命じるほどだからただごとではない。予想以上に深刻な欠陥が見つかるかもしれない。

 米軍は今回起きた事故の原因を徹底的に究明し、県民に公表してもらいたい。

 米空軍が保有するF15は700機以上あり、嘉手納基地にも50機余が駐留している。

 嘉手納基地報道部は「運用停止は予防措置。さらなる検査、分析が完了するまで運用停止期間は未定」と説明している。

 2005年度末現在203機のF15を保有している航空自衛隊も、米軍の措置を受け、同型機の飛行を停止させた。

 構造上の欠陥がないことがはっきりしない限り飛行を見合わせるのは当然の措置だ。

 嘉手納基地所属のF15戦闘機は1982年以来、8機が沖縄近海などに墜落している。

 94年には嘉手納弾薬庫地区内の黙認耕作地に墜落・炎上、一歩間違えば県民を巻き込んだ大惨事につながりかねなかった。

 06年1月に伊計島の北東70キロの海上に墜落した事故は記憶に新しい。

 米空軍は同事故について「右側エンジンの損傷の影響で航空機の飛行コントロールシステムの維持ができなくなったことが原因」と発表したが、エンジン損傷の原因は不明と説明していた。

 過去の事故も構造的な故障が原因となった可能性はないのか。疑念は尽きない。

 嘉手納基地のF15戦闘機は、ほとんどが製造後20年以上経過し老朽化している。墜落には至らないまでも、緊急着陸を余儀なくされたケースは枚挙にいとまがない。今年5月には離陸のため移動中に前輪が折れる事故も起きたばかりだ。

 米軍が「安全」と発表したとしてもにわかには信用し難い。

 本当に安全を確保するには部隊の全面撤去しか方法はない。

(11/7 10:00)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28736-storytopic-11.html

 

2007年11月7日(水) 夕刊 1・4面

県・政府 協議加速へ/普天間協10カ月ぶり再開

 【東京】米軍普天間飛行場の移設について政府と地元が話し合う「普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会」の第四回会合が七日午前、約十カ月ぶりに首相官邸で開かれた。滑走路の沖合移動について、仲井真弘多知事は「(移設を)円満に進める前提として、まず政府が自主的に沖合移動を進めた上で、アセス手続きの知事意見を踏まえ、誠実に対応してもらいたい」と主張。環境影響評価(アセスメント)手続きの中で(1)事業者の自主的な判断による沖合移動(2)知事意見を踏まえた沖合移動―の二段階の修正を要請した。これに対し、政府は「現行案が基本」との姿勢は崩さなかったものの、協議を加速することで県などと一致した。次回協議会は十二月中旬に開かれる予定。

 協議会が再開されたことを受け、政府は本年度分の北部振興事業予算の凍結解除の検討に着手する。

 協議会は約四十分間。沖合移動について、島袋吉和名護市長は「政府との基本合意で、建設計画については誠意を持って協議を継続するとある。住民に著しい影響を与えない範囲で沖合移動を求める」と主張した。

 石破茂防衛相は協議会後、「政府としては今の形が最も適切であると考えている。すべてを満足するのはあり得ないが、何ができるか知恵を出すことが大事ではないか」との見解にとどめた。

 仲井真知事は、北部振興事業凍結や名護市を再編交付金の対象から外したことに「地元の反発を招く」と批判。町村信孝官房長官は「誠意を持って協議することが可能であることが確認された。北部振興事業や再編交付金もあるので、年内に開催を調整したい」と述べ、次回協議会までに政府内で調整を進める考えを示した。

 北部首長からは、ヘリが陸域上空も飛行することや戦闘航空機装弾場などの付帯施設設置に関し、政府の地元への情報開示が不十分だとの指摘も出た。

 普天間飛行場の危険性除去については、石破防衛相が米側との場周経路などに関する合意内容を説明し、「現時点で最大限の措置だ」と強調した。これを受けて仲井真知事は「それは一つの方策だが、抜本的改善が必要」と主張。久間章生元防衛相が、普天間移設が進めば普天間の閉鎖状態について米側と協議する用意がある―との趣旨の発言をしたことも挙げ、努力を求めた。しかし、石破防衛相は「今後とも最大限の努力をしたい」との回答にとどめた。


官房長官、修正の可能性示唆


 【東京】町村信孝官房長官は七日午前の閣議後会見で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で県や名護市が求めるV字形滑走路の沖合移動について、「可能性はないとは言わない」と述べ、修正の可能性を初めて示唆した。

 政府は従来、「政府案が最良」などと修正に否定的な見解だった。町村氏の発言は、環境影響評価(アセスメント)手続きの過程での修正を念頭にしたものとみられる。

 町村氏は「(同移設案は)大変な紆余曲折を経て決まった内容だし、いったんは地元も合意した経緯がある。仲井真知事が誕生する等々の状況の変化もあるので、そういうことも踏まえながら適切な答えを出していく必要があると考える」と述べ、慎重に対応する考えを示した。


     ◇     ◇     ◇     

「沖合移動」焦点に違和感


 米軍普天間飛行場移設に関する協議会の再開は、地元と政府の利害が一致した結果だ。政府にとっては、インド洋給油が中断している中、日米防衛首脳会談や福田康夫首相訪米の際、普天間移設の順調ぶりをアピールするのが米側への唯一の「お土産」となる。一方、名護市は北部振興事業継続のためにも政府との協議のテーブルに着く必要に迫られていた。今回は目立った進展はなかったが、仲井真弘多知事はアセス手続きの中での沖合移動を求める方針を明示。「大幅移動」を求めない考えを打ち出したことで、次回以降、接点を模索する展開も予想される。

 普天間移設と「パッケージ」とされる嘉手納基地より南の基地返還や在沖海兵隊八千人のグアム移転を評価する仲井真知事にとって、自らの判断で普天間移設の停滞を招くことは避けたいのが本音だ。

 しかし、知事は公約の「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」、名護市が求める「代替施設の滑走路の沖合移動」について成果は得られておらず、政府との協調関係をアピールして就任した保守県政の面目をつぶされているのが実情だ。

 知事周辺では、来月の知事就任一年で「政府ペース」との批判を避けたい意向が強い。県は今回、事業者の自主的判断による沖合移動を「円満に進める」前提と位置付け、沖合移動の「担保」にしたい意向を明らかにした。

 一方、政府内では次回協議会を年内に開き、歩み寄りが図られれば名護市を再編交付金の交付対象に盛り込むことも検討している。ただ、対米関係の観点からは、首相訪米を終えれば、政府が県や名護市に譲歩するメリットは少ない。防衛省内には、当面はアセス手続きを粛々と進めればいい、との思惑もあり、今後の進展は不透明だ。

 知事は今回、普天間の閉鎖状態についても政府に検討を要求したが、協議会の焦点が「沖合移動」への政府対応に集約されつつある状況に、違和感は否めない。知事公約の「普天間の三年閉鎖」の道筋が明確でなくても、「沖合移動の担保さえ得られれば解決」とのシナリオが県にあるのだとすれば本末転倒だ。(政経部・渡辺豪)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071700_01.html

 

2007年11月7日(水) 夕刊 5面

知事、政府軟化を評価/閉塞打開に手応え

 【東京】「耳傾ける姿勢が見えた」。七日午前、十カ月ぶりに開かれた米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会を終えた仲井真弘多知事は、閉塞状況だった政府との関係が修復され、問題解決への道筋に一定の手応えを感じた様子だった。会合の場では従来の政府対応に不満をあらわにし、居並ぶ政府閣僚から「今後も誠意を持って協議したい」との言質を取ったことへの期待の表れだが、滑走路の沖合移動など、双方が抱える考え方の隔たりは次回以降へ先送りとなった。

 会合は約四十分。仲井真知事は事務方が用意した文書を読まず、自身でメモした表現で口にした。「住民生活や自然環境に十分配慮する」ことを念頭に、現行のV字形滑走路を可能な限り住民区域から遠ざける沖合への移動などを訴えた。

 名護市辺野古沖の現況調査に自衛艦を出したことや振興策の凍結、再編交付金の問題も切り出し、「国民に対して軍隊を出すのはあまりに乱暴だ。振興策などでバルブを閉めるようなやり方は反発が出る」と従来の政府姿勢を批判した。

 今年一月の協議会では、議事録の残らない懇談会形式で進められ、県側の要望が具体的に聞き入れられなかったという思いも強かった。この日の会合で政府は「忌憚のない意見を交換する」姿勢を貫き、県側の要望に耳を貸した。

 会合後の会見で、仲井真知事は「これだけの大臣がそろい、解決できないものはないと感じた。(政府との)コミュニケーションが緊密になった印象だ」と述べ、政府側の軟化姿勢を評価している。

 政府側は出席した石破茂防衛相や岸田文雄沖縄担当相らが「最大限の努力」「地元意向に配慮」と口をそろえた。島袋吉和名護市長は「大変有意義だった。(政府は)今後も誠意を持って対応することが確認できた。今日の会合を機会に北部振興策も当然動くものと理解している」と手応えを感じた様子だった。

 一方で、政府から具体論への言及は乏しく、課題は残ったまま。今回から協議会の主宰者となった町村信孝官房長官は冒頭、「普天間飛行場は早く移設させなければならない。日米安保の根幹をなす重要な問題なので、最大限の努力をお願いしたい」とし、地元側譲歩の必要性も示唆した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071700_02.html

 

2007年11月7日(水) 夕刊 5面

高江ヘリパッド/移設容認を東村長が陳謝

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設計画が進む東村高江区の公民館で六日、行政懇談会があり、伊集盛久村長は「皆さんの意見に沿うことができないことはおわびしたい」と陳謝、移設容認への理解を求めた。区民からは「今以上の基地負担を強いられる」などと移設反対を求める意見が相次いだ。

 伊集村長は四月の村長選で移設反対を公約していたが、就任後は容認の立場に転換。この日初めて同区民に直接、経緯を説明した。

 公約との整合性について、伊集村長は「北部訓練場の返還合意やさまざまな事業との関連もあり、現実的な問題を考えると、一村長の立場で反対できるものではない」と釈明。その上で「騒音が激しいときはその都度防衛局に抗議し、住民の生活に影響が出ないよう運用改善を求める」と述べた。

 区民からは「子どもたちの上にヘリ機が落ち、被害が出てからでは遅い」「運用改善では問題は解決しない」など反対を求める意見が出た。一方で「(ヘリパッド移設に)賛成の人は一人もいないが、予定地は国有地でもあり、どうにもできない村長の立場も分からなくもない。区民への迷惑を最小限にするよう防衛局に要請してほしい」と、補償制度に言及する声も上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071700_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月1日、2日、3日)

2007年11月1日(木) 朝刊 1面

首相、関係修復に意欲/知事と初会談

沖縄の考え聞き交渉/普天間代替・教科書問題

 【東京】仲井真弘多知事は三十一日夕、首相官邸で福田康夫首相と初めて会談し、米軍普天間飛行場の移設問題や沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題などで意見交換した。仲井真知事は、普天間移設に向けた政府の丁寧な対応を要望。福田首相は会談後、記者団に「沖縄の方々の考えを取り入れながら、しっかりと交渉していきたい」と述べ、関係修復に意欲を示した。

 仲井真知事は会談で、普天間飛行場移設問題について「地元の意見にちゃんと耳を傾けて、丁寧に進められるように円満な解決をお願いしたい」と要望した。

 知事によると福田首相は「(知事の考えは)よく理解できる」と応じたという。

 関係者によると、首相は「協議会で沖縄の声をよく聞くよう、関係閣僚に指示しているので、具体的な話はよく相談してほしい。決めるときは私と決めましょう」と述べ、自ら主導する形で問題解決に取り組む姿勢を示したとされる。

 また、教科書検定問題についても福田首相は「今まであったもの(日本軍の強制)を三月に急に(削除した)というのはね」などと、記述の回復を求める沖縄側に理解を示したという。

 仲井真知事は会談後、普天間移設問題解決に向けた福田首相の意欲について「非常に驚くくらい感じた」と述べ、好感触が得られたことを明らかにした。

 一方、仲井真知事は首相との会談後、町村信孝官房長官とも約三十分間、意見交換した。しかし官房長官との会談については会談後、周囲に「まだ隔たりがある」などと不満を漏らした。

 移設問題をめぐっては、政府案(V字案)を堅持する政府と、滑走路の沖合移動を求める県などの意見が食い違い、移設に関する協議会は今年一月以来中断している。

 普天間移設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、方法書提出などを強行する手法を取り続けた政府と沖縄の溝は深まっていたが、福田首相が協調姿勢を示したことで、七日に再開予定の協議会で事態が進展するか注目される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_01.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 1面

きょうにも訂正申請/「集団自決」強制削除

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除した教科書検定問題で、同省が各教科書会社に対して今週内に訂正申請をするよう要望していたことが三十一日、分かった。これを受け、検定で記述を削除された教科書会社五社の一部は一日にも訂正を申請するとみられる。

 関係者によると、記述訂正の対象となる教科書は来春には全国の高校に配られることから、各教科書会社は十二月上旬までに印刷を始める。文科省は訂正申請があった場合、教科用図書検定審議会を開き、申請内容の是非を検討した上で訂正を認めるかどうかを判断する。

 このため、今月中旬までには審議会を開きたい意向で、教科書会社各社に「今週内には訂正を申請してほしい」との要望を伝えていたという。

 文科省は訂正申請を受けるかどうかの決定前に訂正内容を明かさないよう教科書会社に求めており、執筆者が訂正内容の抱負を述べたことに、銭谷真美事務次官が記者会見で慎重な対応を求めるなどしていた。

 教科書会社は文科省の要望も考慮した上で訂正申請の日程を決めるとみられている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_02.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 29面

石西礁湖 死滅深刻/サンゴ白化現象要因

 【八重山】九州大学大学院理学府附属臨海実験所は三十一日までに、石垣島と西表島の間に広がる国内最大のさんご礁「石西礁湖」の三十三地点で、今年七月以降のサンゴの白化現象が原因でクシハダミドリイシの約53%、ハナガサミドリイシの約39%が死滅したことを明らかにした。他の種類のサンゴも甚大な影響を受けており、海底の面積に占める生きたサンゴの割合(サンゴ被度)は急激に低下したとしている。同実験所の野島哲准教授は「石西礁湖のサンゴは幼生を広範囲に供給する役割があるだけに、周辺海域の生態系にも影響を及ぼす可能性がある」と指摘している。(福元大輔)

 サンゴは、高海水温などのストレスを受けると共生している褐虫藻が離れ、白くなる。栄養の大半を褐虫藻の光合成で補給しているため、白化した状態が長く続けば死滅する。

 野島准教授は、石西礁湖の内側二十六地点、外側七地点の計三十三地点で、十一種類のサンゴを七日間かけて潜水調査。そのうち同礁湖で優先種とされるクシハダミドリイシ、ハナガサミドリイシの二種類の結果を発表した。

 クシハダミドリイシは五百七十三群体を調べ、内側で66%、水温が低い傾向にある外側で13%、全体で53%が死滅。ハナガサミドリイシは五百五十三群体を調べ、内側で47%、外側で13%、全体で39%が死滅していた。今年九月の調査では、いずれのサンゴも約60%が白化しており、その大半が回復せずに、死滅したとみられる。三十三地点のサンゴ被度は平均で内側10%、外側70%程度。野島准教授によると、昨年まで内側でも25%程度はあったという。

 県内では、一九九八年の大規模白化の際、沖縄本島近海で九割、石西礁湖で四割近いサンゴが死滅。その後も白化のほか、オニヒトデ、台風、病気などでサンゴ被度は低下している。新たなサンゴが卵を産めるようになるには五―十年が必要とされ、さんご礁の回復は困難な状況にある。

 野島准教授は「九八年の白化で生き残った大きなサンゴが、今年の白化で死滅した。幼生を供給するサンゴが死ぬと減り続ける一方で危機的状況にある」と懸念を示した。

 石西礁湖では、今年七月下旬から海水温が三〇度を超える日が続き、サンゴの白化現象が起きていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_03.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 29面

アルジャジーラ検定問題を特集

 中東を本拠に全世界に放送網を持つ放送局「アルジャジーラ」の特派員らが三十一日、座間味島を訪れ、「集団自決(強制集団死)」体験者の宮平春子さん(82)を取材した。同局は文部科学省が高校の日本史教科書から沖縄戦の集団自決に対する日本軍の強制を示す記述を削除した教科書検定問題をめぐり、十一万六千人を集めた県民大会が開かれるなど、日本で大きな議論となっている状況を取材している。

 座間味島を訪れたのはクアラルンプール支局のデイビッド・ホーキンス特派員ら。宮平さんから、沖縄戦当時の村助役兼兵事主任だった兄・宮里盛秀さんが「集団自決」が起きる直前に、「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するよう言われている」と、父・盛永さんに伝えていたことなどを聞いた。

 取材陣は平和祈念資料館や、高校の授業風景なども取材する予定。ホーキンス特派員は「日本で改憲などへの動きが進む中、なぜこの問題が大きな論争になったのかに興味を抱いた」という。「現地で取材して、沖縄の人々は、沖縄戦時に日米両国の軍隊から被害を受けていたのではとの印象を持った」と話した。

 取材結果は特集番組として、来週以後に同局の英語チャンネルで放送される予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_08.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 29面

ジュゴン藻場にクイ/名護海岸に防衛局設置

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、沖縄防衛局が天然記念物ジュゴンの餌場となっている藻場に調査ポイントを示す標識とみられる鉄クイとナイロン製のロープを設置していたことが三十一日、分かった。自然保護団体や専門家は「ジュゴンが餌を食べに来なくなる」と危惧している。

 「北限のジュゴンを見守る会」の鈴木雅子代表らによると、水中の砂地に差し込む鉄クイは三十―四十センチ。水面に出ているわっかに、約五十センチのナイロン製の浮きロープを結び付けている。ジュゴンの食み跡近くに設置され二、三メートルから十メートルほどの間隔で、九十ほど設置されているという。

 二十七日に確認され、自然環境保護団体から「ジュゴンの体を傷つける恐れがある」との指摘を受け、沖縄防衛局は三十一日までに、鉄クイをプラスチックのクイに変更したもようだ。鈴木代表は「ジュゴンは同じ場所に餌を食べに戻ってくる。今のままでは、ジュゴンが来る障害になる」と批判。沖縄防衛局は「事実関係を調査中」とコメントしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_09.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 29面

汚水1・9トン民間地へ/嘉手納基地排水管破損

 【北谷】米軍嘉手納基地第一ゲート近くの下水道の排水管が破損し、約五百ガロン(約一・九トン)の汚水が民間地域へつながる排水溝へ流出していたことが三十一日、分かった。

 同基地渉外課は「住民への危害の恐れはない」としており、破損の原因などは明らかにしていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_10.html

 

2007年11月1日(木) 夕刊 5面

名護市、装弾場を認識/普天間代替

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、日米が普天間飛行場にはない航空機弾薬搭載場を代替施設に建設することで合意していたことを名護市が昨年十二月の段階で把握していたことが三十一日、分かった。弾薬搭載場の建設については、日米の自然保護団体などが米国防総省の公文書に記載されていることを公表、沖縄防衛局も認めている。名護市の末松文信副市長は三十一日、「昨年十二月に(政府から)説明を受けた際に、装弾場があるとの説明があった」と述べ、装弾場整備を把握していたことを認めた。ヘリ基地反対協議会の大西照雄代表委員らによると「移設合意の白紙撤回と協議会への出席中止を求める」要請に対し、明らかにした。

 末松副市長は沖縄タイムス社の取材に対し、「建設計画については協議会の場で協議することになっている。政府との合意は基本合意で、詳しい説明は受けていない」と述べた。

 その上で、米公文書で揚陸艦寄港も可能な全長二百メートルを超える岸壁の整備については「聞いていない」とし、「把握していない計画が次から次と明るみに出ているのはよくない。協議会の場でわれわれに分かるように説明していただきたい」とした。また、代替施設のオスプレイ配備計画について政府に文書で回答を求める考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011700_04.html

 

2007年11月1日(木) 夕刊 5面

最終準備書面を提出/普天間爆音訴訟

 【沖縄】米軍普天間飛行場の周辺住民が、国に夜間飛行の差し止めと損害賠償を求めている普天間爆音訴訟の最終弁論が一日、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で開かれた。原告の住民と被告の国がそれぞれ、これまでの主張をまとめた最終準備書面を提出した。双方の主張が出そろったことで、原告側は今回の弁論を事実上の結審ととらえている。同訴訟は十二月十四日に意見陳述が行われ正式に結審し、来年三月をめどに判決が言い渡される見通し。

 原告の住民らは「高い信用性のある県の健康調査で騒音による健康被害は明らか。すべての周辺住民が低周波音による人体への悪影響、生活妨害などを含めた広義的な被害を受けている」と主張。

 その上で「国は危険への接近などを理由に、自らの責任を覆い隠している。飛行差し止めを含めた画期的な判決を下してほしい」と訴えた。

 一方、国は住民の危険への接近のほか、被害対策として基地周辺の公共施設や住宅に国の費用で防音工事を施し、効果を上げていることなどを理由に、原告の請求を棄却するよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011700_06.html

 

2007年11月2日(金) 朝刊 1面

「日本軍の強制」明記 2社が初の訂正申請

中旬までに審議会開催「内容許可」に期待

 【東京】二〇〇六年度の高校歴史教科書の検定で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付いた五社のうち、東京書籍と実教出版の担当者が一日、文部科学省を訪れ、訂正申請をした。「集団自決」問題で教科書会社が訂正申請したのは初めて。東京書籍は「日本軍によって『集団自決』においこまれた」と日本軍の強制を記述した。関係者によると、実教出版も軍強制を明記して申請しており、文部科学省や教科用図書検定調査審議会の判断が注目される。

 訂正申請は最初の一社が文科省を訪れた際、冒頭が報道陣に公開された。この会社は編集部長が同省応接室で、初等中等教育局教科書課の担当官に書類を手渡した。

 編集部長は手続き終了後、記者団に「審議会が開かれると聞いているので、申請した内容がそのまま許可されるということを願っている」と期待感を示した。結論の時期については「一日も早く許可されることを願っているが、何も分からない」と述べるにとどめた。

 文科省は五社に対して今週内に訂正申請をするよう要望しており、二日も申請が続く可能性がある。関係者によると、記述訂正の対象となる教科書は来春には全国の高校に配られることから、各教科書会社は十二月上旬までに印刷を始める。

 文科省は訂正申請があった場合、審議会を開き、申請内容の是非を検討した上で訂正を認めるかどうかを判断する。日本史小委員会で審議し、審議会の第二部会(社会科)で決定する見通しだ。このため、今月中旬までには審議会を開きたい意向で、各社に「今週中には訂正を申請してほしい」との要望を伝えていたという。

 一方、文科省は教科書会社側に「静謐な環境の確保」を理由に、訂正申請に関する審議が終了するまで記述内容を公開しないよう求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_01.html

 

2007年11月2日(金) 朝刊 31面

検定撤回へ「正念場」/2社訂正申請

 「軍強制を示す記述修正への動きは歓迎するが、正念場はこれからだ」。文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で一日、教科書会社二社が文科省に訂正を申請した。九月二十九日に開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の関係者は、検定意見撤回の必要性をあらためて訴えた。

 県議会議長の仲里利信・大会実行委員長は「訂正申請は喜ばしいことだが、執筆者や教科書会社の動きであり文科省の対応がどうなるかだ」と警戒心を崩さない。県議の平良長政・実行委幹事は「検定意見は、沖縄戦の専門家もいない審議会で決められた。訂正内容の可否を決める審議会には沖縄戦の専門家を加えて、きちんと議論をするべきだ」と指摘した。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「一部の社だけではなく全社が記述修正を申請すれば、文科省も認めざるを得なくなるのでは」と教科書会社の動きに期待。「軍の強制を示す記述をきちんと書いてほしい。なぜ県民大会が起きたかについても触れてほしい」と話した。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は、「真実を伝えるのが使命」として、記述修正に踏み切った執筆者らの姿勢を評価した上で「検定意見撤回と記述回復は表裏一体で動かせない。文科省がこの要求を受け止めた上で、記述修正に応じるのであれば大きな意義がある」

 沖教組の大浜敏夫委員長と県高教組の松田寛委員長もそれぞれ、「限られた時間で、軍の強制を明記した内容での訂正申請にこぎ着けた」「前進として受け止める」と執筆者、教科書会社を評価する。

 一方で、「検定意見がそのまま残れば、何年か後に同じことが起こる」と懸念を示し、検定意見撤回や検定規則に沖縄戦への記述について配慮を求める条項を設置する必要性を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_02.html

 

2007年11月2日(金) 朝刊 2面

アセスの進め方など議題/普天間協 政府方針

 【東京】七日に再開する米軍普天間飛行場の移設に関する協議会に向け、政府は一日までに、(1)代替施設の建設計画(2)普天間飛行場の危険性の除去(3)主宰者の変更―を議題にする方針を固めた。建設計画では代替施設の環境影響評価(アセスメント)の進め方を協議。主宰者は防衛相、沖縄担当相の共催から官房長官に切り替える。従来の協議会で批判が強かった、議事録に残らない非公式の「懇談会」は実施しない方向で調整している。

 政府は二日に、協議会の開催を正式発表する。

 福田政権初の協議会ということもあり、「関係者の忌憚のない意見交換」(内閣府幹部)に主眼を置き、県と防衛省、内閣府などがそれぞれの立場で意見表明するとみられる。

 協議会は冒頭の議題で、主宰者の変更を審議。出席者の承認が得られれば、その時点で官房長官主宰に「格上げ」する。これに伴い、今回から議事の事前調整を内閣官房が担当している。

 首相官邸の主導が鮮明になったことで、仲井真弘多知事は十月三十一日、協議会の出席について「無論ですよ。私もメンバーのはずですから」と明言した。

 町村信孝官房長官は三十一日、協議会について「必要ならさらにもう一度くらい開いていい」と述べ、沖縄側との対話を加速させる考えを示している。


2市民団体が不参加を要請


 米軍普天間飛行場の移設に関する協議会が七日に開催されることを受け、市民グループが一日、県庁に保坂好泰基地防災統括監を訪ね、県の協議会への出席中止などを要請した。保坂統括監は協議会について「具体的な建設計画や普天間の危険性除去のために設置された重要な協議機関。率直な意見交換がなされ、協議できることが出席の前提」と述べ、参加の意向を示した。

 要請したのは「沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会」と「辺野古新基地建設を許さない市民共同行動」のメンバー。代替施設へのオスプレイ配備や戦闘航空機装弾場設置についても、政府に問いただし、毅然とした対応を取るよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_04.html

 

2007年11月2日(金) 朝刊 30面

カメさん語る遺品を初公開/6日から「写真・資料展」

 六日の瀬長亀次郎生誕百年記念「写真・資料展」を前に、瀬長さんの遺品を管理する二女の内村千尋さん(62)は一日、那覇市内の自宅で瀬長さんが獄中でつづった日記帳や出獄時に着用した背広などを報道各社に公開した。内村さんは「父の遺品から祖国復帰運動など素晴らしい歴史を思い起こし、いまだ実現していない基地撤去などの運動に生かしてほしい」と話している。

 資料展では、背広や革靴、妻フミさんにプレゼントした洋服などを初めて一般公開。(1)米軍の思想弾圧時(2)那覇市長時(3)衆院議員時―を中心にした貴重な資料のほか、闘病生活時の様子、写真やオリジナルの介護用品なども展示される。

 二〇〇一年十一月五日に瀬長さんが亡くなるまで十四年余り看病した内村さん。死後、父の遺品を整理するうち、数々の貴重な資料に感動し、「多くの人に知ってほしい」と思いたった。資料展に向け、「『カメさん』の愛称で親しまれた父・瀬長亀次郎の人柄に触れてほしい」と来場を呼び掛けた。

 六日から十一日まで那覇市ぶんかテンブス館三階で開かれる。入場無料。問い合わせは内村さん、電話098(886)0277。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_11.html

 

琉球新報 社説

知事首相会談 政府の「聞く耳」は本物か

 福田康夫首相は10月31日、就任後初めて仲井真弘多知事と会談し、普天間飛行場の移設について「沖縄の方々の考えも取り入れ(移設措置協議会で)交渉する」と記者団に明言、沖縄側の要望を踏まえる考えを示唆した。

 「代替施設の建設位置を可能な限り沖合に寄せてほしい」との県や名護市の要求に対し、安倍内閣は一切聞く耳を持たない姿勢だったが、福田内閣に代わり、柔軟な対応が示される可能性が出てきた。

 だが政府にとって、沖縄側のハードルは決して低いものではない。

 仲井真知事は10月23日の記者会見で、沖合移動を求める理由について(1)ウミガメの産卵地が全滅する(2)文化財、貝塚も駄目になる(3)騒音も防衛省の数字は極めて疑義が強く全く信用していない―などと指摘している。

 昨年の知事選で「現行のV字形案のままでは賛成できない」と公約して当選しているだけに、沖合修正の実行は譲れない一線だ。

 しかも10メートルや20メートルずらす程度では現行計画と大差がなく、知事が指摘した環境問題、騒音問題などをクリアできるとも思えない。

 政府は、一定程度以上の修正方針を示さない限り県や名護市の同意が得られないことを肝に銘じるべきだ。

 県にとっても、お茶を濁す程度の微修正を容認するわけにはいかない。そうなれば県民の目から見ると選挙公約の帳尻合わせとしか映らず、批判は免れないだろう。

 そもそも、ウミガメの産卵地を保全しながら、新たな基地を造ることが本当にできるのか。

 政府案は名護市のキャンプ・シュワブにある辺野古崎を覆う形で約160ヘクタールを埋め立ててV字形に2本の滑走路を建設する計画になっている。施設の全長は約1800メートル、滑走路の長さは約1600メートルだ。

 環境への負荷を最小限に抑えたとしても、広大な藻場が埋め立てによって失われる。これほど大規模な施設を環境破壊を伴わずに建設することは不可能だ。

 県は、どの位置に建設すれば自然環境を最大限に保全でき、近隣住民の騒音被害も軽減できるのか、具体案とその根拠を示す必要があるだろう。

 在日米軍再編合意は県の同意を得ることもなく、県民の頭越しに決まった経緯がある。いくら修正を加えても、すべての県民を納得させることはできない。

 普天間飛行場を、国土の0・6%にすぎない狭い県土の中でたらい回しにするという計画自体に無理があるからだ。

 福田首相は、沖縄だけに不当に米軍基地を押し付けてきたこれまでの政府の姿勢を改め、基地負担の軽減に本腰を入れて取り組むべきだ。

(11/2 9:55)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28601-storytopic-11.html

 

2007年11月2日(金) 夕刊 1面

沖合移動に根拠必要/普天間移設

騒音データ収集意向

 仲井真弘多知事は二日午前の定例記者会見で、米軍普天間飛行場代替施設協議で県などが求めている滑走路の沖合移動の範囲について「耳で聞き、実感として大丈夫と判断することは必要と思う」と述べ、名護市辺野古沖を埋め立てる従来案で沖合二・二キロの位置に滑走路を設定した際と同様に、実際に航空機を飛ばした上で騒音データを収集するなど、科学的根拠に基づいて移動距離を決めるべきだとの考えを示した。

 また、沖合移動の距離に関し、政府に具体的な数値を示した要求はしていないとした上で「政府がもう一回抜本的に協議をやり直すところまでは求めない。大幅に、というわけにはいかないという思いがないわけではない。地元の意見を尊重する姿勢を持ってもらえばどんな形で収めていくかはこれからのことだ」とし、七日に開催される普天間飛行場の移設に関する協議会の場でも、日米合意の範囲内で修正を求めていく考えをあらためて示した。

 文部科学省が四月に実施した全国学力テストで沖縄県が最下位の結果となったことに、仲井真知事は「誠に残念。沖縄の子どもたちは、文化芸能、スポーツは全国並みだろうと思う。学力も全国レベルに到達していると思っていたので、ちょっと意外な感じを受けた」と述べた。

 その上で「いろんな原因、理由があると思うが、専門の先生方も含めて意見をまとめてみたい」と早急な対策が必要との認識を示した。


再編案を容認で北部の追加示唆

交付金で官房長官


 【東京】町村信孝官房長官は二日午前の閣議後会見で、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の交付対象から名護市などが外れたことについて、「地元との話がうまく整えば、それは弾力的に追加されるということだ」と述べ、普天間飛行場代替施設の日米合意案をはじめとする現行の再編案を受け入れれば柔軟に対応するとの考えを示した。

 対象漏れによる米軍普天間飛行場移設問題への影響については「影響はないと思う」との認識を示した。


協議会 7日開催を決定


 【東京】政府は二日午前、米軍普天間飛行場の移設に関する協議会の第四回会合を七日午前八時から首相官邸で開くと発表した。(1)代替施設の建設計画(2)普天間飛行場の危険性の除去(3)設置要綱の改正(主宰者の変更)―を議題にする。冒頭で主宰者を防衛相、沖縄担当相の共催から官房長官に格上げすることを審議。建設計画は環境影響評価(アセスメント)の進め方を中心に、沖縄側が最初に意見表明し、その後に関係省庁が見解を述べる。

 同日午前の閣議後会見で町村信孝官房長官は、協議会が今年一月以降、開催されていないことに「その間にアセスメントの手続きは始まったが、(政府と沖縄側が)何となくギクシャクしている状況がある。それでは普天間の早期移設、ロードマップ通りに物事が運ばなくなる」と現状への危機感を強調。「政府と地元がいい関係を保ちながら進めていくため、久方ぶりの会合をやろうではないかということだ」と開催の意義を説明した。

 岸田文雄沖縄担当相は「官房長官が主宰することによって防衛省をはじめ、それぞれの立場で忌憚のない意見交換ができる」と歓迎した。

 石破茂防衛相も「首相官邸の強いリーダーシップで、日本政府としての強い意志で動かしていこうとするなら、官房長官の主宰が望ましい」と評価した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_01.html

 

2007年11月2日(金) 夕刊 1面

宮古へ陸自誘致表明/商工会議所中尾会頭

先島の国防強化で

 【宮古島】宮古島商工会議所(会員・約千四百事業所)の中尾英筰会頭(70)は一日、宮古島市内で開かれた臨時議員総会の再任あいさつの中で、「宮古島は防衛上も重要な場所。島民の生命・財産を守る立場からも国に防衛体制を強化してほしい」と述べ、陸上自衛隊の誘致に積極的に取り組む考えを表明した。

 中尾会頭は宮古地区自衛隊協力会長を務めており、陸自誘致にはこれまでも賛成の意向を示していたが、会頭として公の場で明らかにするのは初めて。

 中尾会頭は陸自誘致に伴う経済効果に期待しつつも主な理由として(1)先島地区の国防の強化(2)急患輸送ヘリや不発弾処理隊が常駐することによる対応の迅速化―などを挙げた。

 下地島空港については「仲井真知事も(軍事利用に)ノーと言っている。現時点では考えていない」と語り、同空港は誘致場所として念頭にないとした。

 この時期に誘致表明した理由について、中期防衛力整備計画(二〇〇五―〇九年度)に盛り込まれた陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の旅団化へ向けた動きがあると指摘。「今がチャンスであり、タブー視することはできない」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_04.html

 

2007年11月2日(金) 夕刊 1面

審議会開催を要請/教科書訂正申請

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、教科書会社二社から日本軍の強制を示す記述を復活させる内容の訂正申請を受けた文部科学省は二日午前、申請内容を検討する教科用図書検定調査審議会の開催を求める文書を同審議会会長あてに送付した。閣議後会見で渡海紀三朗文部科学相が明らかにした。審議会は今後、教科書会社残り三社の訂正申請を待った上で、今月中旬にも会長名で日本史小委員会を招集。沖縄戦に係る新たな資料提出など審議方法を検討し、申請への対応を判断する見込み。

 一日に訂正申請した教科書会社のうち、東京書籍は「日本軍によって『集団自決』に追い込まれた」と日本軍の強制を記述。渡海文科相は「真摯に受け止め、対応したい」と、文科省として今月中に最終判断するとしている。

 従来、申請後の審議会審議について「疑義を生じさせてはいけない」と繰り返しており、訂正申請が出そろった後、審議会の透明性確保も課題になる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_06.html

 

2007年11月3日(土) 朝刊 1面

新たに2社 訂正申請/教科書検定

 【東京】二〇〇六年度の高校歴史教科書の検定で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付いた五社のうち、清水書院と山川出版が二日、文部科学省を訪れ、新たに訂正申請した。申請は一日の東京書籍、実教出版を合わせ合計四社になった。残る一社も「来週半ばにも申請したい」との意向で、来週中には五社の訂正申請が出そろう。清水書院は日本軍の強制性を記述したとみられるが、山川出版は「一切答えられない」としている。

 関係者によると、文部科学省は教科書会社に「十一月中に結論を出したいので、(教科用図書検定調査)審議会の日程を考慮して五日までに訂正申請してほしい」と要望しているという。

 文科省によると、訂正申請の手続きを事前に照会してきたのは、検定意見が付いた五社のみ。ほかにも一社が申請を検討していたが、教科書課は「申請はこの五社と理解している」としている。

 一方、すでに訂正申請を終えた四社のうち一社の執筆者が二日に記者会見し、同社が十月五日に開いた執筆者会議で決まった記述内容(訂正案)を明らかにした。

 執筆者によると、この会社は日本史Aで「日本軍は、住民に手榴弾をくばって集団自害と殺しあいを強制した。犠牲者はあわせて八百人以上にのぼった」と日本軍の強制を明記した。日本史Bでも「日本軍により、戦闘の妨げになるなどの理由で県民が集団自決に追いやられたり」との表現で強制性を示した。

 執筆者は「訂正申請された記述は確認していないが、記述を変更する場合は会社から説明があるのが普通だ」と述べ、会議で決まった文案がそのまま採用されたとの認識を示した。

 日本史Aで「集団自決」の表現を使っていないことには「『集団自決』には自らの意思による死という意味がある。沖縄戦の研究者は近年、強制集団死という言葉を使っており、教科書では『殺しあい』で家族同士の悲惨な現実があったことを示した」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_02.html

 

2007年11月3日(土) 朝刊 27面

戦見詰める学徒の勇気/82歳、白梅之塔訪問

 【南部】兵庫県尼崎市在住で元白梅学徒看護隊の比嘉光子さん(82)=那覇市久茂地出身=が二日、糸満市真栄里にある白梅学徒隊員や同窓生らを鎮魂する「白梅之塔」を初めて訪れた。自身が勤務していた野戦病院跡の壕を巡った比嘉さんの脳裏に悲惨な記憶が鮮明によみがえり、胸を強く締め付けられた様子だった。比嘉さんは壕の奥に続く“闇”をただ静かに、じっと見詰めていた。

 県立第二高等女学校の四年生だった一九四五年三月二十三日から白梅学徒看護隊として野戦病院に駆り出された。戦後は東京などで着物を取り扱う卸問屋などに勤めていたという。

 比嘉さんは現在、尼崎市内の特別養護老人ホームに入所。同施設の中村大蔵施設長が比嘉さんと会話する中で、元白梅学徒隊だということが分かった。それがきっかけとなり、同市内の大学で開かれたフォーラムで体験を語った。自身の体験を公の場で語るのは初めてだった。

 二日に帰郷した比嘉さんを白梅同窓会の中山きく会長らが出迎えた。学友らの名前が刻まれた白梅之塔で、比嘉さんは線香が手向けられた刻銘版を真っすぐに見据え、そっと手を合わせた。

 勤務地だった八重瀬町の新城分院(ヌヌマチガマ)では悲惨な記憶がよみがえった。「日本軍の将校が切腹した」「(患者兵士の)枕元には『敵が来たら飲むように』と毒薬が置かれた」。壕の大きさやその特徴、生活の様子など堰を切ったように語りだした。

 「ここに来るのは勇気が必要だった。あまりに悲惨で思い出すのが嫌でつらかった」とこれまでを振り返った比嘉さんは、四日に開かれる白梅同窓会の総会に出席する予定。「ほかの友人と会えるのを楽しみにしている」と話した。


[ことば]


 白梅学徒看護隊 県立第二高等女学校(那覇市)の4年生56人で編成。第24師団(山部隊)の衛生看護教育隊に入隊。八重瀬町富盛の第一野戦病院に配置され傷病兵の看護に専念した。白梅之塔には教職員や白梅隊員、同窓生149柱が合祀されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_03.html

 

2007年11月3日(土) 朝刊 2面

北谷議会、米軍に抗議/F15未明離陸

 【沖縄】米軍嘉手納基地のF15戦闘機の機体更新を目的とした「アイロンフロー計画」を理由に、同基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が十月三十日未明に同基地を離陸した問題で、北谷町議会の宮里友常議長ら議員十一人は二日、同基地広報局長のジョン・S・ハッチソン少佐を訪ね直接抗議した。

 宮里議長らは「他の基地を経由するなど運用を改善し、軍用機の深夜、未明の離陸を即時に中止すべきだ」などと抗議した。

 同少佐は「住民への影響は理解している。抗議は上司に伝えるが、未明離陸の中止は考えていない」と述べた。

 その上で、「騒音の継続時間を短くするため、まとまった機数で連続して離陸している。離陸後はすぐに高度を上げ、住宅地の真上を飛行しないよう努めている」と同基地の騒音対策を説明したという。

 次回が最後だと説明する「アイロンフロー計画」の日時や、対象機体数は明らかにしなかった。

 同議会基地対策委員会の照屋正治委員長は「米軍は軽減の努力をしていると説明するが、未明に離陸すること自体が問題だ。認識のずれを痛感した。住民の我慢は限界にきており、今後も強く中止を訴える」と話した。

 同議会は、同基地で強行されたパラシュート降下訓練、沖縄市で起きた米軍人の息子による強姦致傷事件についても、司令官あての抗議文を手渡した。


隣接3市町議会 初の意見交換会/問題解決で一致


 【中部】米軍嘉手納基地の未明離陸問題で、基地に隣接する沖縄、嘉手納、北谷の三市町議会の基地担当委員会の意見交換会が二日、嘉手納町役場で開かれた。同問題について、三市町議会が意見交換会を開くのは初めて。

 非公開で行われたが、複数の出席者によると、未明離陸問題の解決を目指す方針で一致した。

 今後、組織や活動について具体的に協議を進める方針を確認したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_04.html

 

2007年11月3日(土) 朝刊 2面

「騒音被害を重視」/高村外相 米軍に働き掛け継続

 【東京】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機などが未明に離陸を強行した問題で、高村正彦外相は二日の衆院外務委員会で「われわれは(機体の更新より)住民の騒音被害を重く考える」と明言。地元への影響を最小限にとどめるよう引き続き働き掛ける考えを強調した。照屋寛徳氏(社民)への答弁。

 高村氏は「(十月)二十六日の夕刻、未確定ながらその可能性があり得るとの情報を得た」と明らかにし、在日米国大使館や同基地司令官に「運用の調整等により、できるだけ早朝離陸を行わないよう」求めた経緯を説明した。

 また、米空軍が先月、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を強行した問題について、防衛省の地引良幸地方協力局長は、米側が伊江島補助飛行場の訓練過密化や利便性の悪さなどを理由に挙げていることを明らかにした。

 地引局長によると、米側は「伊江島は各軍がさまざまな訓練を実施し、過密状態であり、緊急を要する救難隊員の訓練を消化できない」と説明した。

 さらに「救難艇や航空機、または地上での要員の待機など事前に周到な準備が必要で、当日の天気が良いからといってただちに計画を変更することは困難」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月3日朝刊)

[「検定」の訂正申請]

審議会の審査見守りたい

 高校歴史教科書の沖縄戦の項目から「集団自決(強制集団死)」への旧日本軍の関与が削除された問題で、検定意見が付いた五社のうち四社が文部科学省に訂正を申請した。

 「集団自決」には旧日本軍の強制があった、という記述を復活させる内容になっている。

 文科省は、申請内容を検討する教科用図書検定調査審議会に開催を要請した。残る一社の申請を待って、今月中旬にも日本史小委員会を招集する方針だ。

 文科省は「集団自決」への旧日本軍の「関与」を認めているが、「検定意見の撤回」を拒否する姿勢は崩していない。

 教科書検定の目的が「客観的で公正、適切な教育的配慮の確保」にあるのなら、政治が口を挟むべきでないのは論をまたない。

 だが、例えば「日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という記述が「日本軍に壕から追い出されたり、自決した住民もいた」と書き換えられると、主語があいまいになり沖縄戦の全体像がぼやけてしまう。

 これでは、軍の関与を消すための政治的意図を疑われても仕方がない。

 記述の修正は「旧日本軍」という主語を打ち出す動きであり、文科省はきちんと受け止めてもらいたい。

 言うまでもないが、「集団自決」における「軍の強制」は沖縄戦の本質にかかわってくる。

 「軍の強制」が教科書に明記されなければ記述を回復したことにはならず、文科省も責任を果たしたことにはならない。

 もし、文科省が検定意見を撤回せず教科書会社による修正で解決を図るのなら、教科書への記述と文科省の考えが整合性を欠くことになる。

 そうなれば、同じような混乱が今後も繰り返される可能性もあるはずだ。

 それを避けるためにも検定意見の撤回は不可欠であり、決着を政治的判断に委ねてはなるまい。

 検定の在り方に対する国民の不信についてはまた、教科用図書検定調査審議会にも責任がある。審議会が閉鎖的なため、国民にはその実態がつかめないからだ。

 今回のような問題が起きたとき、正常に議論できる仕組みをどう築いていくか。審議会は知恵を出すべきであり、それには審査議事録を公開して透明性を高め、検定過程を誰もが知ることができるようにすべきだろう。

 訂正の申請には県民の願いも込められている。審議会がどのような判断を下すのか、審査の行方を見守りたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071103.html#no_1

 

琉球新報 社説

給油活動停止 国際貢献の徹底論議が必要

 テロ対策特別措置法が1日で期限切れとなり、海上自衛隊はインド洋での5年11カ月の給油活動を停止し、補給艦、護衛艦を撤収させた。政府は、活動再開へ向けて新テロ対策特別措置法案の早期成立を目指すため、福田康夫首相が2日、小沢一郎民主党代表との党首会談で協力を求めるなど、成立へ躍起になっている。

 福田首相は、活動停止について「国際社会で役割を果たしていないと肩身の狭い思いをする。長期的に見て日本にとって良くないこと」と懸念を示した。しかし、この事態を招いたのはほかでもなく、与党や政府ではないか。

 テロ特措法は、米同時中枢テロを受けて、アフガニスタンでの米英軍などの軍事行動を後方支援するため2001年10月に成立した。その過程では、憲法違反と指摘する声も強かったが、論議はうやむやになり、多数与党が押し切った形だ。集団的自衛権に絡む憲法論議に深く踏み込むことをせず、グレーゾーンでやりくりしてきたツケが今回の措置法期限切れという結果に表れたといえよう。

 その上、国民の不信を買う問題も相次いだ。米補給艦に行われた給油量の誤りの隠ぺい、燃料のイラク戦争転用疑惑、内規に反する航海日誌の廃棄などである。この状態のままで、特措法の延長、もしくは新法の成立などについて国民の理解は到底得られない。

 とりわけ転用疑惑は重大な問題である。事実ならアフガニスタンでのテロ阻止行動を目的とした特措法の趣旨を逸脱する恐れがあるからだ。政府は事実を否定するが、疑惑は晴れない。国民が納得できる資料を提示するべきだ。

 米側は、ケーシー国務省副報道官が1日、給油活動停止について「失望した」と不満を明確に表明した。早期再開を求める圧力とみていい。しかし、米国に追従する必要はない。

 共同通信社が10月末に行った全国世論調査によると、新テロ特措法案について賛成は45・0%、反対39・3%で、世論は二分に近い。一方、無党派層では41・9%が反対の意思を示し、賛成としたのは34・1%。自民、公明党支持層では反対が20%を超えた。

 活動停止は、あらためて日本の国際貢献の在り方について深く論議するチャンスであろう。従来のようにその場しのぎ的な対応ではなく、国民の理解を得、確たる理念に裏打ちされた貢献策を打ち出す必要がある。

 日米同盟など外交で重視する問題もあろうが、それにも増して大切なのは、一般の人々に支援の手を差し伸べることだろう。地道な非軍事の民生支援こそ、憲法の理念にかなう。国際的な評価にもつながるに違いない。

(11/3 12:26)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28636-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月27日より31日)

2007年10月27日(土) 朝刊 26面

不審機を想定か 小銃で囲み制圧/嘉手納基地で有事訓練

 【嘉手納】二十六日午後零時二十分ごろ、米軍嘉手納基地で、不審な航空機が侵入したことを想定したとみられる訓練が実施された。

 自動小銃を構えた兵士約十人と消防車などの緊急車両数台が同基地所属のF15戦闘機を取り囲み、同機から降りてきたパイロットに銃を向けたまま数十メートル離れた場所まで連行、うつぶせにして手錠をかけ、取り押さえた。

 訓練が行われたのは県道74号から基地と民間地を隔てるフェンスを挟んで数十メートルの場所。兵士が慌ただしく行き交う様子が有事を連想させ、通り掛かったドライバーも不安そうに見守った。

 同基地は沖縄タイムス社の取材に対し、訓練の詳細を明らかにしなかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710271300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月27日朝刊)

[レンジ16共同使用]

負担軽減は口先だけか

 陸上自衛隊と米軍との共同使用を受け入れなければ、再編交付金はびた一文出さない―。

 そう受け取れるような説明を、沖縄防衛局が金武町、宜野座村、恩納村で構成する三町村連絡協議会にしていたことが分かった。

 金武町キャンプ・ハンセン内のレンジ16には、住宅地に近く危険だとして町民から猛反発を受けたレンジ4の都市型戦闘訓練施設が移設されることになっている。防衛省は、レンジ16一帯での陸上自衛隊の射撃訓練を地元が認めるよう求めているのである。

 十二月の二〇〇八年度予算編成までに受け入れを表明すれば来年度予算に交付金の10%、〇九年度以降に100%を交付するという。

 まさに「アメとムチ」による共同使用の押し付けであり、町民に対し負担増を強要していると言うしかない。

 防衛省は年内にも地元の合意を取り付け、その上で日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手する考えだが、「カネで脅せばなんとかなる」と思っているのだろうか。

 言うまでもないが、都市型戦闘訓練施設が移設されても実弾を使った訓練の危険性がなくなるわけではない。町民は「射撃訓練の被害の可能性はいつでもある」と厳しく見ている。

 地元が反対し翻意を促している訓練を、なぜ陸上自衛隊はあえて行おうとするのか。それが腑に落ちない。

 県内の訓練空域では航空自衛隊が米空軍と合同で訓練、海上自衛隊もリムパックなどに参加し日米間の軍事的一体化が進められている。だが、これらの訓練はいずれも県民の目に届かぬ空域や海上でのことだ。

 伊芸区の住宅地からそれほど離れていない提供施設で、自衛隊員が実弾による射撃訓練を行うこととは明らかに様相が異なる。

 同盟強化における象徴という見方もできるが、だからこそ県民感情からすれば容認するわけにはいかない。

 それだけではない。ハンセン内にはレンジ3付近にも米陸軍特殊部隊の小銃射撃訓練施設が建設されることになっている。海兵隊に移管されるレンジ4ではまた、海兵隊が実弾射撃以外の訓練に使用する可能性もあるという。

 ハンセン内の施設建設や訓練計画などを見ると、日米両政府が約束した「負担軽減」とは裏腹に、負担は急増しつつあるというのが実情だろう。

 「伊芸区民は日米両政府が強調する安全性を誰一人信用していない。新たな軍事施設は住民の生活を脅かす」。政府は住民の声に真摯に耳を傾け、まず負担軽減を実行すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071027.html#no_1

 

2007年10月27日(土) 夕刊 1面

全駐労沖縄 手当削減撤回を要求

来月21日ストも視野

 全駐労沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長)の第七十七回定期大会が二十七日午前、北谷町のサンセット美浜で開かれ、在日米軍基地の日本人労働者向け諸手当約百億円の削減を日本側が提案していることについて撤回を求めていくことを確認した。

 全駐労中央本部(山川一夫委員長)は、撤回されなければ十一月二十一日にストライキを決行する予定だ。

 與那覇委員長は「提案は雇用主の責任を放棄した労働者の生活破壊につながるもので到底、受け入れられない」と強く非難。「事態は一刻の猶予もない。今こそわれわれの魂を奮い立たせ、生活水準維持の闘いを進めていこう」と呼び掛けた。

 大会は午後、「駐留軍労働者の生活を破壊する格差給・語学手当の廃止を許さず、賃金水準の維持と労働条件の抜本的改善要求に全力で取り組む」とする宣言を採択する。

 全駐労中央本部は二十三日、防衛省との団体交渉で同省の提案を拒否。十一月二日予定の次回団交で同案が撤回されなければ、同二十一日に全国的な時限ストライキを決行することを確認している。今後、各分会でスト権確立のため投票を実施し、次回交渉に備える。

 同本部による全国規模のストが実施されれば、一九九一年以来、十六年ぶりとなる。

 同問題は、日米両政府が交渉している在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で日本側から提案された。国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」や「語学手当」などの削減を提案しているが、米側は難色を示している。


[ことば]


 思いやり予算 在日米軍駐留経費の日本側負担分。日本の物価高騰を受け、1978年度から「思いやりを持って対処する」として、従業員の一部福利費などの負担を開始。その後、特別協定で従業員の基本給や光熱水料、訓練移転費などの負担に応じるようになった。対象期間は5年間だったが、2006年4月に発効した現在の協定は「米軍再編の進展を見極めることが困難」という事情を踏まえ、2年間とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710271700_01.html

 

2007年10月28日(日) 朝刊 1・22・23面

「軍の強制」明記/執筆者坂本氏 申請へ

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、検定意見の対象になった五社のうち一社の執筆者を務める高校教諭の坂本昇さん(51)が二十七日、東京都内で記者会見し、自分が執筆する教科書に「日本軍によって『集団自決』を強いられた」との記述を明記して文部科学省に訂正申請する方向で準備していることを明らかにした。また、「集団自決」体験者による「軍から命令が出たとの知らせがあった」との証言を史料として掲載し、伝聞形式で「日本軍の命令」を明記することも検討している。

 このほか、二〇〇七年に国内で起こった話題として(1)今年の教科書検定で日本軍の強制記述が消えたことが問題になった(2)検定意見撤回を求める県民大会が、一九九五年の(米兵による暴行事件に抗議した)大会の参加者数を大きく超える規模で開催された―ことを新たに加える方針という。

 訂正申請の具体的な記述内容が明らかになったのは初めて。

 この会社の申請時期は十一月一日か二日のどちらかになる見通しだ。

 坂本さんが執筆した教科書は、申請本(白表紙本)段階では日本軍が「集団自決」を強いたことを記述していた。しかし、検定意見を受け「日本軍」の主語を「集団自決」から切り離して「住民虐殺」だけにかかるよう文脈を変更した。

 今回は「日本軍」と「集団自決」を直接つなげることで、申請本より強い表現にしたという。

 また、申請本では体験者の証言を引用した史料から「軍の命令」部分を省略していたが、「検定から現在までに新しい証言や著作があり、この記述に間違いがないと確信した」(坂本さん)ため、軍命の存在を訂正申請に盛り込む方針だ。

 坂本さんは「記述が認められるか厳しい面はあると思うが、復帰後最大の県民大会の声を伝えることが執筆者の責任だと感じている」と述べた。

 他の四社も、十一月に入ってから訂正申請する方向で調整している。関係者によると、五日に予定の執筆者懇談会後、第二週の週末までに申請が相次ぐ見通しという。


     ◇     ◇     ◇     

怒り 本土に伝わる/大会関係者、評価


 文部科学省が、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の日本軍による強制を削除した教科書検定問題で、執筆者が二十七日、記述の復活に強い意欲を示した。県民ぐるみの抗議の意思を示した県民大会についても、教科書に登場させたい考え。体験者や大会関係者は「怒りが本土に伝わった」と手応えを語った。検定意見の撤回を求めつつ、文科省や教科書会社の対応を見守る。

 県民大会で渡嘉敷島の「集団自決」体験を証言した吉川嘉勝さん(69)は、大会について記述する方針に「すごい。勇気を出して証言した意義があった」と喜んだ。一方で、「教科書会社は立場があるし、文科省もOKを出すかどうか。県民と執筆者の思いに応えてほしい」と望んだ。

 座間味島の体験者、宮城恒彦さん(73)は「なぜ県民がこれだけ怒るのか。全国の子どもが県民大会について知り、戦争で負わされた沖縄の苦しみを考えるきっかけにしてほしい」と期待した。

 大会実行委員長を務めた仲里利信県議会議長は「『軍の強制』の記述復活は当然だが、今回の記述削除問題や県民大会にまで触れる内容は一歩前進だ」と評価。同時に、「検定意見の撤回を求めていくことに変わりはない」と語気を強めた。

 「県民の怒りが本土に伝わった証拠」と歓迎した県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長。「執筆者が、消された事実を真実としてくみ取ってくれたことに感謝したい」と、共感の広がりを実感した様子で語った。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「県民大会という歴史を盛り込むことで、検定で二度と同じ過ちを繰り返さないための証しになる」。将来に向け、歯止めになることを願った。

 別の教科書会社の執筆者は「県民大会を開いた県民の思いに応えたいという考えは同じだ」と歓迎。「日本軍強制の記述をぜひ盛り込むよう努力したい」と話した。


執筆者の坂本さん 自責「辞任も覚悟」


 「沖縄の人たちの思いを受け止めることができなかった」。沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題で二十七日、「日本軍の強制」を盛り込む形で文部科学省へ訂正申請する内容を公表した教科書執筆者の高校教諭、坂本昇さん(51)。記者会見では「自責の念がある」と、歴史教科書執筆者としての苦悩をにじませた。

 教科書検定では制度上、教科書検定審議会が出した検定意見に異議を申し立てる機会が設けられている。だが日本軍の強制に触れた記述の削除を求めた検定意見に、教科書会社も坂本さんも声を上げることはなかった。

 「異議を申し立てても、判定するのは文科省の同じ調査官。検事と裁判官が一緒になったようなもの」。坂本さんは検定制度の在り方を批判する一方で、「どうせ駄目だろうというあきらめの気持ちがあった」と当時を振り返った。

 転機になったのは、沖縄の人たちから次々にわき上がった怒りの声。「その粘り強さに背中を押され、励まされるような思いがした」

 「教科書の執筆者を辞める」。教科書会社が申請内容の見直しを求めてきた場合の対応を聞かれ、坂本さんは強い覚悟を見せた。


[解説]

「透明性」確保に先手


 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、検定意見が付された五社のうち一社の執筆者が「日本軍の強制」「日本軍の命令」を、本文と証言史料で明記する方針を明らかにした。申請前に記述内容を発表した坂本昇さん(51)の異例の行動は、他の教科書会社や執筆者に弾みをつけるのは確実だ。文部科学省が申請内容に異を唱えることも予想されるが、坂本さんの事前発表で記述の修正過程の「透明性」が確保される利点も見逃せない。

 今回の教科書検定に県民が強く反発したのは、検定意見が付されるまでの審議過程に「密室性」が極めて強かったことが一因だ。

 文科省職員の教科書調査官の原案が、議論のないまま沖縄戦の専門家がいない教科用図書検定調査審議会で追認されたことは、本紙などのマスコミ報道がなければ県民に伝わらなかった。

 文科省は「静謐な検定環境の確保」を理由に審議を公開しておらず、これが検定制度の不信感増幅にもつながっている。今回の訂正申請でも文科省は検定規則の細則を根拠に、申請後の記述内容の公表を教科書会社に禁じた。

 執筆者は「軍命や軍の強制があまりにも明確だと、教科書調査官が修正を要求するだろう」と警戒している。

 記述内容が事前に公表されなければ、文科省が修正を要求した際のやりとりが、再び県民不在の「密室」で処理される懸念は強い。

 申請前に記述内容を発表した坂本さんの対応は、文科省への「抑止力」にもなり得る画期的な取り組みだ。

 他の四社は記述を公表するかどうかを明確にしていないが、内容を事前に公にして県民に伝える意義を、前向きに検討してほしい。(東京支社・吉田央)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710281300_01.html

 

2007年10月28日(日) 朝刊 3・4面

協議いまだ視界不良/米軍再編「中間報告」から2年

 日米両政府が在日米軍再編「中間報告」に合意して二十九日で二年を迎える。普天間飛行場移設をめぐって代替施設案がL字(沿岸案)からV字形滑走路案となり、現在は環境影響評価(アセスメント)手続きが着々と進む。「政府とのパイプ」への期待を集めて昨年十二月に発足した仲井真県政だが、V字案の沖合移動と普天間飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態」の要求をめぐって政府とこう着状態に陥っている。福田内閣が発足し、中断していた普天間移設に関する協議会は首相官邸主導で十一月七日に再開される。しかし、政府と地元の協議の行方は依然「視界不良」だ。(政経部・渡辺豪、東京支社・島袋晋作、北部支社・石川亮太)

沖合移動/国、合理性を疑問視


 沖合移動を求める理由について、仲井真弘多知事は二十三日の記者会見で、(1)集落への騒音軽減(2)キャンプ・シュワブ北側砂浜のウミガメの産卵地保護(3)海流の変化によるサンゴや藻場への影響(4)シュワブ内の貝塚の保護―の四点を挙げた。

 知事は「沖合移動」を求める姿勢の堅持を強調しているが、アセス手続きが進む中、方法書の受け取り保留を解除せざるを得なくなり、「アセス前の修正」にこだわってきた従来スタンスは断念を余儀なくされたのが現実だ。


新たに環境


 県はこれまで、集落への騒音や危険性など生活環境面の負荷を沖合移動の理由に挙げてきた。しかし、アセス手続きの中で沖合移動を求めるスタンスに移行したことから、新たにウミガメや海流など自然環境面の根拠を表面化させたととらえられる。

 これに対し、沖縄防衛局の鎌田昭良局長は二十五日の会見で「アセス手続きの中で客観的なデータを収集し、その結果を県など地元に丁寧に説明していく」と表明。別の防衛省幹部は「環境面を考慮するアセスの観点からは、沖合移動は環境負荷が大きくなるというのが一般的な見方」ととらえ、アセス手続きの中で検討すれば、大幅な沖合移動の可能性は低いと見ている。

 シュワブ沿岸に上陸するウミガメを保護しようと思えば相当の沖合移動が必要とみられるが、県や名護市の要求は「日米合意の範囲内」でいいから「できる限り沖合に」というものだ。しかし、具体的にどれだけ移動すれば納得がいくのかは県民に明示していない。「合格点」は知事と島袋吉和名護市長の判断に委ねられている。

 政府関係者は「県から政府に非公式に伝えられている移動距離は、当初五十メートルだったのが、途中で百メートルになり、福田内閣発足後は百五十メートルと次第に長くなった」と指摘、「際限のない要求だ。根拠があるとは思えない」と合理性を疑問視する声も上がる。


集落上飛行


 日米が合意した「キャンプ・シュワブ沿岸案(L字案)反対」を掲げ、名護市長選に当選した島袋市長が、〇六年四月に防衛省と基本合意を交わした際の主眼は「集落上空の飛行を避ける」ことだった。もともと一本の滑走路だった日米合意(L字案)を、離陸、着陸専用の二本のV字形滑走路に変更したのはこのためだ。L字案のまま沖合移動することに防衛省が難色を示し、V字案に変更した、というのが名護市と防衛省の基本合意の流れだ。

 「地元の意向を尊重する」ことを公約に掲げた仲井真知事が当選するや、V字案の沖合移動を求めた島袋市長の態度は、「L」から「V」に変更した経緯を度外視したもの、と防衛省には映る。

 一方で防衛省は当初、V字案について「集落上空は飛ばない」としていたが、「緊急時は当然除外されるし、そのほかの場合、訓練の形態によっては当然(集落上空を)飛ぶことはあり得る」(金澤博範防衛政策局長)と変化させた。

 V字案合意の前提が問われる問題だが、現段階で政府と県や名護市の間で踏み込んだ議論は行われていない。沖合移動について石破茂防衛相は、科学的なデータなど「合理的な理由がない限り変更は困難」としている。集落上空飛行の問題こそ、地元の懸念の原点であり、政府と協議する「合理的な理由」に値するのではないか。

 辺野古沖を埋め立てる従来計画がとん挫した主要因は「反対派の阻止行動」との教訓がある防衛省には、阻止行動を排除しやすいシュワブ沿岸域の第一制限区域内での作業をなるべく広範囲に確保したい意向が根強い。同省が「沖合移動」に難色を示す背景には、「実行可能性」の確保を最優先するスタンスも挙げられる。


名護市 地元意向受け修正要求


 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で、地元と政府との協議が進展するかどうかのキーポイントとなっている名護市の「沖合移動」要求の経緯をまとめた。

 二〇〇六年一月、日米合意したキャンプ・シュワブ沿岸案に反対を表明した島袋市長が当選。代替施設受け入れには柔軟姿勢を示していたため、同年四月七日、島袋市長は政府と、飛行ルートが住宅地上空を避けたV字形滑走路案で基本合意した。

 しかし、翌十一日には辺野古区行政委員会が「着陸用滑走路が辺野古集落に近過ぎる。できるだけ滑走路を集落から離れた沖合側へ移動させることを求める」方針を確認し、その後、市や国に要請した。十二日には、北部市町村会が政府と基本合意した島袋市長支援の声明を発表。

 同年十一月に「現行のままの政府案(V字案)では賛成できない」との公約を掲げた仲井真知事が誕生。知事に配慮した久間章生防衛相(当時)が「修正」を示唆すると、地元で沖合移動の期待が一気に高まった。

 市は〇七年一月の政府との第三回協議会で滑走路を南西側沖合に寄せる試案を非公式に提示。市は「基本合意はあくまで概念図で詳細な場所を合意したものではない」との立場を主張。

 同二十四日には同市議会が「可能な限り沖合に移動するよう」求める意見書を可決し、島袋市長を後押しした。

 しかし、南西移動には地元辺野古区から「滑走路が近づく」「リーフが活用できなくなる」との声が出たため、島袋市長は「試案はあくまでも最大限の範囲を示したもの。地元が南には寄せるなと言うなら沖側への平行移動だけでいい」と説明。その後は「可能な限り沖合に」に路線変更。

 市は市議会三月定例会で試案提案の根拠を明示。(1)住民生活への影響(騒音等)軽減(2)埋め立てのほとんどが浅瀬で大型ケーソン(コンクリート箱)も不要となり工事費軽減、工期が短縮できる(3)長島自体がケーソンの代わりとなり平島も利活用できる(4)政府案と同様に陸側からの施工が可能(5)地元同意を得られる―の五項目を示した。

 十一月七日に開かれる協議会開催を前に二十六日、北部市町村会が「島袋市長支援」の声明を再度発表した。


「普天間」閉鎖「3年」要求でこう着


 政府との普天間移設協議の「入り口」としてきた公約の「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」について、仲井真弘多知事は二十三日の記者会見で「ある意味で普天間そのもののことは考え方が別。即閉鎖といっても困るだろうから、三年をめどに、と言っている」と解説した。

 普天間の危険性除去の問題は、既定の工程に沿って進められている移設作業とは切り離し、現段階で政府が「取り組む」姿勢さえ示せばいい、とも聞き取れる。

 三年を「めど」に「閉鎖状態」を求めたもの、と幅のある要求をしている点を強調し、知事は決してハードルは高くない、との口ぶりだ。

 しかし一方で、知事は同じ会見の中で「ヘリの数、訓練の中身を減らせばいい」とも言及している。こうなると、米軍の運用改善に直結する要求であり、政府にとっては、官僚レベルでクリアできる問題ではなく、日米の政治レベルの決断を要する課題となる。

 普天間飛行場の運用改善については沖国大への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米が協議していた飛行ルートの再検討で、北東側の飛行ルートの優先使用などで合意。

 この際、防衛施設庁(当時)は「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との見解を既に示している。

 政府は三年の閉鎖状態を「非現実的」として取り合わず、一貫してシュワブ沿岸部への代替施設建設によって普天間の危険性除去に対応するとのスタンスだ。

 現段階では政府が「引き続き危険性除去に取り組む意思表示」さえ示せば、県は代替施設の移設作業に協力して取り組む考えとみられるが、県の要求がヘリや部隊の運用にかかわる「抜本的な運用改善」である以上、政府にとってハードルは決して低くはない。

 仮に県との間で形式的な「口約束」が成立しても、実質的に米側との協議を進めなければ政府が批判の的となる。

 一方で、県側にとっても、知事就任から一年近くが経過し、公約実現の期限は二年後に迫っている。「三年がたったときに『閉鎖状態のめどを付けた』と言えばいい」(与党国会議員)と楽観できる状況ではない。

 閉鎖状態の要求は、時間との勝負であり、政府から迅速な対応を引き出せなければ意味を成さない。二年後に少しでも危険性除去の議論が進んでいればいい、との判断が現時点で知事の心中にあるのだとすれば、公約の「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」という言葉との乖離はあまりに大きい。

 知事が政府に課そうとしているハードルを、県民にも分かりやすく提示し直す必要があるのではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710281300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月28日朝刊)

[普天間移設協]

政府の強行姿勢が問題だ

 米軍普天間飛行場の移設に関する協議会が十一月上旬に開かれる見通しとなった。実現すれば今年一月の第三回協議会から約十カ月ぶりに、政府と県が同じテーブルにつくことになる。

 仲井真弘多知事は「これまでのような(政府側の)我田引水の会合では意味はないが、内閣も変わってこちらの主張にも耳を傾ける姿勢があればいい」と出席に前向きだが、果たしてそうだろうか。

 確かに内閣は変わった。だが、参加する関係閣僚は前内閣とほぼ同じ顔ぶれである。

 額賀福志郎財務相は防衛庁長官在任中の二〇〇六年四月、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設することで島袋吉和名護市長と基本合意を交わした本人だ。

 高村正彦外相も防衛相時には「現在の案は最も理想的。合理的理由がない限り変えられない」と県や名護市が求めていた沖合移動に否定的な見解を表明。名護市が「再編交付金」の交付対象に含まれることにも否定的な見方を示していた。

 「V字案」を積極的に推進してきた二人の閣僚が加わった移設協議会で、「沖縄の声」に耳を傾ける環境が整ったとは思えない。むしろ、県や名護市が求める代替施設の沖合移動に否定的な閣僚がそろい、政府の強行姿勢がより鮮明になった感すらある。

 移設協議会は開けばいいというものではない。普天間飛行場の移設に伴うさまざまな問題について政府と県、名護市などが率直に意見を述べ合う場でなければなるまい。

 政府は地元の懸念や不安の解消に誠意を持って対応すべきであり、「沖縄に譲歩するべきではない」(石破茂防衛相)という姿勢では問題が複雑化するだけで、とんでもない住民無視と言わざるを得ない。

 県は環境や騒音などの問題に加え、環境影響評価(アセスメント)の方法書や住民意見概要の送付などを頭越しで進める政府の対応を問いただし、県民に明らかにすべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071028.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月29日朝刊)

[「再編合意」から2年]

機能強化だけが目立つ

 日米両政府が在日米軍再編に合意してからきょうで二年。だが、その実態は基地施設の削減ではなく、機能強化だけが目立つと言っていいのではないか。

 もともとが自衛隊と在沖米軍の役割分担と連携に主眼が置かれていたのであれば、いまさらの感がなくもない。

 しかし、当時の小泉純一郎首相はじめ外務相、防衛庁長官は国会などで「沖縄県民の過重な基地負担を軽減するためのもの」と述べていたはずである。しかも「そのために最善の努力をする」とも強調していたはずだ。

 実態はどうだろうか。金武町キャンプ・ハンセン内にあるレンジ16での陸上自衛隊の共同使用を求めたり、米陸軍特殊部隊が使う都市型戦闘訓練施設の新設を決めるなど、負担はこれまで以上に増しているとしか思えない。

 名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設で合意した普天間飛行場代替施設も不明な点が多い。

 政府は当初、V字形滑走路を持つ代替施設では住宅地上空は飛ばないという説明を繰り返していた。

 それが「緊急時は当然除外されるし、そのほかの場合、訓練の形態によって(集落上空を)飛ぶことはあり得る」(金澤博範防衛政策局長)と言うようになっている。県民だけでなく米側にも詭弁に聞こえるのではないか。

 「米側から聞いていない」と言い張る垂直離着陸機「MV22オスプレイ」の配備計画は進み、二〇一四年度から始めて一六年度までに二個中隊が配備されることが明らかになっている。

 政府は二言目には「基地の運用に口は挟めない」と言うが、米軍が提示できる事実をなぜ隠すのか。県民の信頼を損ねている理由がそこにあることを、政府は認識する必要があろう。

 代替施設では新たな問題も出てきている。米軍が普天間飛行場にはない装弾場を設ける計画を打ち出していることだ。もう一つは、大浦湾側にある二百十四メートルの岸壁である。

 ホワイト・ビーチや天願桟橋からも明らかなように、二百メートルを超えれば輸送艦だけでなく潜水艦も着岸できる。岸壁をどう使うつもりなのか、両政府にはきちんと説明してもらいたい。

 基地が完成すれば、その後は「運用の問題」として片付けられるのは目に見えている。だからこそ、その実態を明確に示してほしいのである。

 県民は、在沖米軍の再編計画について政府が米軍の計画を知っていて隠しているという疑いを持っている。説明責任を果たすのは政府の務めであり、政府は県民の疑問に対し誠意を持って対応すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071029.html#no_1

 

2007年10月29日(月) 夕刊 1面

F15あす未明離陸/嘉手納基地

 米空軍嘉手納基地は、三十日未明にF15戦闘機六機と空中給油機一機が米本国に向けて離陸すると発表した。周辺自治体は強く反発、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は二十九日午後にも幹事会を開いて、今後の対応を協議する。

 同基地によると、製造年の新しい機体への更新の一環。F15の機体更新は今回実施すれば、あと一回で完了するという。同基地の未明離陸は九月十一日に続くもので、今年に入って六回目になる。

 同基地は「周辺住民へ騒音の影響が及ぶことを認識しながらも、運用上の必要性と安全面を注意深く考察し、行うことにした」としている。

 三連協の野国昌春会長(北谷町長)は「嘉手納基地は米軍にとって使い勝手のいい基地なのだろうが、周辺住民にとって騒音被害は我慢の限界だ」と批判した。「リリースではアイロンフロー計画はあと一回で終わるというが、未明離陸そのものがなくなるということではないだろう」と懸念を示した。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「即応訓練が終わったばかりなのに」とあきれた表情。「深夜、未明の騒音被害は、住民の健康にも影響を与える。絶対に容認できない」と述べた。

 同町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「(未明離陸の)間隔が短くなってきている。米軍の軍事的都合ばかりが優先されており、無神経さに怒りを覚える」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710291700_01.html

 

2007年10月29日(月) 夕刊 4面

射撃場建設「許さず」/金武町伊芸区

 【金武】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の射撃場建設が計画されている問題で、同レンジに近接する金武町伊芸区の住民が二十八日、断固反対を訴える看板を設置した。

 池原政文区長は「レンジ4への都市型訓練施設建設にあれだけ反対したのに、また近くのレンジ3に建設するというのは金武町全体が愚弄されているとしか思えない」と怒りをにじませた。「米軍再編で日米が合意した時から計画されていたはずだ」と話し、機能強化、負担増大にいら立ちを見せた。今後、英語の看板も設置し、米軍関係者にも訴えていく。

 草刈り作業などで中学生も協力。瑞慶村和喜君(金武中三年)は「今でさえ大砲の大きな音や山火事で大変なのに、弾が飛んでこないか怖い」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710291700_06.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 2面

未明離陸 基地司令官に抗議

三連協「住民無視の運用」

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計七機が三十日未明、同基地から米本国に向け離陸を予定している問題で、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十九日午後、同基地司令官や外務省沖縄事務所、沖縄防衛局に対し未明離陸を中止するよう文書で抗議・要請した。

 基地司令官あての抗議文では「運用を工夫すれば日中の離陸も可能であり、米軍はその努力を怠っている。住民を無視した基地の運用であると言わざるを得ない」と厳しく指摘している。

 その上で、一九九六年に日米合同委員会で合意した深夜、早朝(午後十時―翌日午前六時)の飛行を制限している騒音防止協定の順守などを強く求めている。

 沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に対しては、「国レベルで深夜、早朝飛行の中止に向けた協議を行い、内容を明らかにすること」を要求した。

 同問題で、嘉手納町議会と北谷町議会が三十日午前にそれぞれ基地対策特別委員会を、沖縄市議会は三十一日午前に基地に関する調査特別委員会を開き、今後の対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_02.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 2面

フェアな運営なら必要/知事、普天間協に前向き

 【宜野湾】仲井真弘多知事は二十九日夜、来月七日の開催が固まった米軍普天間飛行場の移設に関する協議会について「これまでと違うフェアな運営の仕方であれば、むしろ必要なことだ」と述べ、出席に前向きな姿勢をあらためて示した。宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで開かれた九州・沖縄地区防衛協会連絡協議会に出席後、記者団に答えた。

 石破茂防衛相が同飛行場の移設先が変更された過程を公表すると明言したことついて、仲井真知事は「どうしてあそこ(政府案)が理想なのか。変えられた経緯や中身、その理由が分からない。はっきり公表したほうがいいと思う」と述べた。

 守屋武昌前事務次官の証人喚問については「証人喚問の最中なのでコメントできない」と述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_03.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 24面

実行委存続を確認/教科書問題

 「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は二十九日、那覇市の教育福祉会館で会議を開き、日本史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた文部科学省の検定意見を撤回させるまで同実行委の存続を確認した。

 会議では、今月十五、十六日に東京で行われた検定意見撤回と教科書への記述復活を求める要請行動の結果報告や、同実行委の運動方針が話し合われた。

 参加者からは「国会での審議が新テロ対策特措法や防衛省不祥事が中心となり、『集団自決』教科書検定問題への注目が下火となっている」「教科書会社からの訂正申請受け入れで終わらせようとする動きが強まっている」など危機感を訴える意見が相次いだ。

 実行委の存続が全会一致で認められ、署名集めや福田康夫首相らへはがき、寄せ書きを送る運動への協力、県民大会やその後の要請行動の結果を報告し、各政党が県民大会決議の達成のために新たに決意を述べる集会の開催などが提案された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月30日朝刊)

[守屋氏証人喚問]

疑惑はいっそう深まった

 ゴルフ接待が始まった十二年前から数えると、回数は二百回を超えるという。正規料金を支払ったことはなく、夫人同伴でプレーすることもしばしばだった。夫婦丸抱えの、すさまじい接待攻勢である。

 接待を受けているという認識を持ちながら、業者に「これからはこの名前でやってほしい」と言われて、ゴルフ場でもゴルフバッグのタグにも偽名を使っていたというのだから、開いた口がふさがらない。

 守屋武昌前防衛事務次官に対する衆院テロ防止特別委員会での証人喚問。防衛事務次官といえば防衛省の事務方のトップである。就任の際には栄誉礼を受けるほどの身分で、一般の隊員からみれば雲の上の人だ。

 自衛隊員倫理規程は、利害関係者と「遊技またはゴルフをすること」を禁じている。明らかな倫理規程違反だ。国家公務員倫理法にも反する。

 守屋氏は一時期、倫理管理官を務めていた。倫理規程の周知徹底を呼び掛け、部下を指導する立場にある人が業者と癒着し、夫婦同伴のずぶずぶの接待にはまっていたのだ。

 職業倫理の欠如は驚くばかりである。調達実施本部の汚職事件や防衛施設庁の談合事件など、過去の教訓がどれだけ生かされているのか、疑わしい。

 業者との癒着を生みやすい組織体質がないかどうか、天下りの問題を含めてこの際、徹底的に洗い直すべきだ。

 航空自衛隊の次期輸送機(CX)のエンジン調達をめぐって守屋氏は、業者に「便宜を図ったことは一切ない」と全面否定した。だが、疑惑が晴れたとはいえない。

 業者は何らかの見返りを期待して、長期にわたる接待攻勢を続けたのではないのか。この業者がヘリコプターの装備品納入の際、防衛庁(当時)に対して過大請求をしながら処分を受けていないのは腑に落ちない。

 海上自衛隊による米艦船への給油量の訂正問題が起きたとき、守屋氏は防衛局長だった。守屋氏は証人喚問で「後で報道で知った」と関与を否定したが、にわかには信じがたい。

 普天間飛行場の辺野古移設をめぐって、沖合浅瀬案を拒否し、沿岸V字形滑走路案を強く主張したのは守屋氏である。

 照屋寛徳議員(社民)は「基地建設が利権の対象にされている」と事実関係をただした。質問時間が短く、しり切れトンボに終わったこの問題の解明も欠かせない。

 守屋氏に対する再喚問だけでなく、関係者の国会招致も必要だ。疑惑解明に手を抜いてはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071030.html#no_1

 

琉球新報 社説

守屋前次官喚問 疑惑は晴れていない/真相究明は国会の責務だ

 防衛省への装備納入業者との癒着疑惑が取りざたされる同省の守屋武昌前事務次官に対する証人喚問が、衆院テロ防止特別委員会で行われた。

 前次官と親密な関係にあった元専務が経営を取り仕切っていた防衛商社「山田洋行」から受けていた利益供与は、どの程度の頻度で行われていたのか。その見返りに業者に何をしたのか。守屋氏は、利害関係者とのゴルフについて「大変不適切な行為だった」と述べ、業者とのゆがんだ関係が明らかになった。

 だが接待を受けた防衛商社に対しては、装備品調達などで便宜を図ったことは「一切ない」と疑惑の核心部分を全面否定した。

記憶たどる努力を

 喚問の様子は、約2時間半にわたってテレビで中継された。守屋氏の説明を聞いて、どれだけの国民が納得しただろうか、大いに疑わしい。

 守屋氏は「責任を痛切に感じている」のであれば、もっと積極的に実態に踏み込んで説明すべきだった。肝心な部分については、なるべくぼかし、あいまいに済ませたい。そんな姿勢に映った。

 「承知していない」「記憶にない」と逃げるのではなく、むしろ記憶をたどる努力をし、誠実に語ってほしい。

 能吏、実力者とうたわれ、防衛省の事務方トップに上り詰めた守屋氏である。自分に向けられた疑惑の数々を、たとえ否定するにしても、その根拠を示すなど論理的に言葉を尽くして説明しない限り説得力を持ち得ない。

 証人喚問で問われたポイントは3点だ。業者とのゴルフ疑惑、海自補給艦が2003年に米補給艦に給油した量の訂正問題への関与、業者への便宜供与はあったのかどうかの3つである。

 守屋氏は、喚問前に既に元専務とのゴルフ交際については認めている。自費であっても防衛省の利害関係者とのゴルフを禁じている「自衛隊員倫理規程」に違反するとの認識を持っていたことも明らかにしている。

 そのせいか、守屋氏のゴルフ接待についての説明は、比較的よどみがなかった。

 元専務とゴルフを始めたのは防衛政策課長だった12年前にさかのぼることや、回数は「200回を超える」ことを明かした。この5年間では「多い時は月に4回、100回を超えた」と語った。

 ゴルフは守屋氏の妻も一緒にプレーすることが多く、その際に偽名を使い、ゴルフセットを夫人分も含めて二度もらっていた。元専務と賭けゴルフや賭けマージャンをし、旅行の接待も受けていた。

 それにしても、公務員の倫理に触れる行為がこれほど頻繁に安易に繰り返されていたとはいまさらながら驚かされる。公務員の基本中の基本に目もくれなかったことになる。

地に落ちた信頼

 巨額の防衛装備をめぐる契約が不正にゆがめられることへの危惧はどうなっていたのか。あきれるほかない。

 守屋氏は自身の問題が新テロ対策特別措置法の障害になっていることへの責任に言及したが、それ以上に深刻な問題が別にある。

 実力部隊を抱える防衛行政への信頼が地に落ちたのである。責任は極めて重大だ。当然ながら守屋氏を重用してきた歴代の防衛庁長官・防衛相の責任も問われてしかるべきだ。

 次期輸送機(CX)エンジン納入などをめぐる便宜供与は「一切なかった」とした。業者の防衛庁への過大請求疑惑についても「記憶にない」とかわした。

 業者側は守屋氏をなぜ特別に厚遇してきたのか。何らかの見返りを期待する意図があった。そう疑うのが自然だ。守屋氏の説明はこの疑念に答えていない。

 宴席に防衛庁長官経験者が同席していたことも見過ごせない。だが名前の公表は拒んだ。これも腑に落ちない。

 守屋氏は、米軍普天間飛行場の移設問題に実質上の責任者として深くかかわってきた。喚問では県内の特定の業者に対し、V字形滑走路案の機密図面の提供に関する疑いも指摘された。否定はしたが、もっと詳細に語る必要がある。

 喚問では結局、疑惑は晴れなかった。元専務を含め関係者の国会招致などを通じ疑惑の解明を進めるべきだ。あいまいなままに終わらせては、防衛行政への信頼回復は遠のくばかりだ。

(10/30 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28510-storytopic-11.html

 

2007年10月30日(火) 夕刊 1面

9機強行 最大92デシベル/嘉手納・未明離陸

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計八機が三十日未明、米本国へ向け同基地を離陸した。同日午前三時五十一分に、嘉手納町屋良で九二デシベル(騒々しい工場内に相当)を記録した。周辺自治体は中止を要求していたが、米軍は「運用上の都合」を理由に強行。未明離陸は二〇〇七年に入って六回目で、繰り返される爆音被害に、首長や議会、住民の反発は一層強まっている。同日午前二時五十分ごろには、別任務とみられるKC135空中給油機も事前通告なしに離陸した。

 米軍は事前の説明で、F15に同行する空中給油機は一機としていたが、実際にはKC10空中給油機二機が離陸した。

 F15戦闘機六機は同基地南側滑走路を使用し、午前三時五十一分ごろから相次いでから北谷町方向に離陸。同五十六分には、KC10空中給油機二機が沖縄市方向に飛び立った。

 嘉手納町の職員が同町屋良の「安保の見える丘」で測定した騒音は、F15の離陸順に、八七・二デシベル、九二デシベル、八三・六デシベル、八九・四デシベル、八六・七デシベル、八五デシベル。KC10空中給油機は七九・三デシベル、七九デシベルだった。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は、同基地が未明離陸の実施を発表した二十九日、基地司令官に対し文書で抗議、中止を要求した。野国昌春会長(北谷町長)は「再三の抗議にもかかわらず、再び米軍は一方的な理由で、住民に大きな負担を強いた。未明離陸の禁止を明記した騒音防止協定の締結を国家間で交渉すべきだ」と国レベルで改善策を講じるよう訴えた。

 今回の未明離陸は、同基地の旧型F15を製造年の新しい機体に更新する「アイロン・フロー」と呼ばれる計画に伴うもの。同基地は、同計画に伴う未明離陸をあと一回実施するとしているが、日程は確定していない。


嘉手納・北谷議会 抗議へ

基地特委「容認できない」


 【嘉手納・北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計八機が三十日未明、同基地を離陸した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)と北谷町議会(宮里友常議長)は同日、基地対策特別委員会を開いた。米軍の強硬姿勢を批判する意見が相次ぎ、未明離陸の中止などを求める抗議決議と意見書の両案を提案することを決めた。

 臨時会は北谷町議会が三十一日、嘉手納町議会が十一月六日にそれぞれ開く予定。

 両町議会の委員会では、「寝静まった時間帯の飛行は容認できない」「県選出の国会議員とも連携し、国レベルで改善策を講じるよう訴える必要がある」などの意見が上がった。同問題をめぐっては、沖縄市議会(喜友名朝清議長)も三十一日午前に基地に関する調査特別委員会を開き、今後の対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301700_01.html

 

2007年10月30日(火) 夕刊 5面

闇裂く爆音 怒り沸点/6度目強行 住民憤り

 【中部】三十日未明、米軍嘉手納基地で今年六回目の未明離陸が行われ、寝静まった住宅地域に激しい爆音が響いた。周辺自治体が強く中止を申し入れているにもかかわらず、「運用上の理由」で繰り返される未明離陸。住民からは「表現できないくらいの爆音で目が覚めた」「どうにかしてほしい」と怒りの声が上がった。

 戦闘機の飛行ルート下の北谷町砂辺。寝静まった住宅街を激しい爆音が襲った。

 同区に住む砂辺スミ子さん(78)は「気分が朝からイライラしている。政府の方には一カ月くらい泊まり込みで来てもらって、どんな音なのか聞いてほしい」といら立ちをぶつけた。別の女性(65)は「表現できないくらいの音だった。頭がボーとしている。安眠妨害を通り越している。ワラビンチャー(子や孫)のためにもこんな大変な状況は早くやめてほしい」と語気を強めた。

 嘉手納基地の滑走路に近い嘉手納町屋良区を含む東区の島袋敏雄自治会長(62)は「即応訓練があったと思ったら、今度はまた未明離陸。区民からたくさんの苦情が寄せられている」と憤った。「三連協の抗議も届かない状況。区民が危険にさらされる訓練を即時にやめてほしい」と訴えた。

 屋良区の主婦宮平美代子さん(63)は爆音で目を覚ましたという。「一度起きるともう寝られない。毎日こんな状態。何とかして騒音のない生活をしたい」

 沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会は三十一日にメンバーを招集し、抗議決議や意見書の両案などを協議する。与那嶺克枝委員長は「今年に入り何度も抗議決議している。議会の決議を何だと思っているのか。最近の米軍の姿勢は異常としか思えない。いいかげんにしてほしい」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301700_02.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 2面

県、アセス方法書諮問/普天間代替

 米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書について県は三十日、県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)に諮問した。同審査会は、県のアセス条例に基づく審査を行う飛行場については十二月二十一日、国のアセス法に基づく海上埋め立て部分に関しては来年一月二十一日となっているそれぞれの知事意見提出期限までに、答申をまとめる。

 県文化環境部の友利弘一環境企画統括監は、仲井真弘多知事が方法書受け取り保留を撤回した理由について、「意見を述べないことは異議なしととらえられ、事業に関する住民等の意見や名護市長、宜野座村長の意見を踏まえないことになる。地域の環境保全に責任を持つ知事の立場が損なわれると考えた」と述べ、慎重な審議を求めた。

 この日の審査会では、代替飛行場建設をめぐり自然環境保護のため米連邦裁判所で米国防総省を相手に「ジュゴン訴訟」を提起している原告団の一人、真喜志好一さんが、傍聴席から審査の在り方への要望を述べ、県職員らから制止される場面もあった。

 真喜志さんは(1)事業者が現在、同建設予定地で実施している環境現況調査は違法であり中止させること(2)方法書の事業内容とジュゴン訴訟で米国側が提示した内容に差があり、相違点について専門家など住民が説明する場を設けてほしい―と要望した。

 同審査会の規則では、審査のために必要があると認められる場合は、専門的知識を有する者などに意見を聴くことができると定めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_04.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 2面

沖国大ヘリ墜落/首相「かすかに記憶」

 【東京】福田康夫首相は三十日の衆院テロ防止特別委員会で、二〇〇四年八月に沖縄国際大学に米軍CH53D大型輸送ヘリが墜落した事故の記憶について尋ねられたが、「かすかに覚えています」とだけ答えた。笠井亮氏(共産)への答弁。

 事故当時は官房長官を辞任して三カ月が過ぎていたものの、沖縄開発庁長官も経験し、「沖縄の課題を熟知している」(県選出国会議員)と評されていた福田首相。だが、質問された瞬間は首を横に振るなど戸惑いを隠せないしぐさも見せ、「あっ、あのっ、えー」と間を置いた上での答弁だった。

 笠井氏は「沖縄県民は本当にしんどかった。大変な屈辱的事件だった。かすかにということでなく、しっかりと沖縄県民の気持ちを受け止めて覚えておいてもらいたいと思う」と首相の認識をただした。

 沖縄に対する福田首相の“思い”の程度が浮き彫りにされた答弁に、宜野湾市の伊波洋一市長は「市民は『また落ちるのではないか』と恐怖の中で暮らしている。政府の責任者として、その程度の認識しかないのは情けない」と憤慨。「小泉、安倍内閣でも沖縄への認識が薄いと言われた。今後も沖縄側から粘り強く基地問題を訴え、現状を認識させるべきだ」と話した。

 沖国大の石原昌家教授も「日本国家にとって、沖縄は基地を置く都合のいい場所にすぎず、生命財産を守るべき住民がいるという意識のらち外にある。何げない言葉に本音が表れた」と痛烈に批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_05.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 25面

未明離陸 砂辺で109デシベル/米軍F15

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が三十日未明に同基地を離陸した際、県が北谷町砂辺に設置している騒音測定器が最大で一〇九・二デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を記録していたことが分かった。

 同町によると、測定された騒音記録は、同日午前三時五十二分に一〇三・五デシベル、同五十三分に一〇九・二デシベル、同五十四分に一〇六・九デシベルといずれも一〇〇デシベルを上回った。

 同基地では同じ時間帯に、F15六機が砂辺地域へ向けて離陸したことが確認されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月31日朝刊)

[給油活動停止]

非軍事支援、検討の時だ

 テロ対策特別措置法の期限切れを前に、福田康夫首相が突然、民主党の小沢一郎代表と会談した。

 インド洋での海上自衛隊による給油活動は、十一月一日の期限切れで法的根拠を失い停止することになるが、給油継続を盛り込んだ新テロ対策特別措置法案の成立めどはまったく立っていない。

 そんな状況の中で開かれた初めての党首会談である。

 福田首相が法案成立への協力を要請したのに対し、小沢代表はこれを拒否、議論は平行線に終わった。

 三十日の党首会談は、対テロ新法案をめぐる日本の政治状況を考える上で、極めて象徴的だ。

 国会の首相指名選挙の際、衆院は福田氏を参院は小沢氏を首相に指名した。衆院議決を優先する憲法の規定に従って福田氏が首相に選ばれたものの、ねじれ国会の構図は変わらない。

 対テロ新法案について、国会が割れているだけでなく、国民世論も賛否がせめぎ合っている。

 つまり党首会談は、対テロ新法案をめぐって国論が真っ二つに割れ、にっちもさっちもいかない状況を象徴しているのである。異例の事態といっていい。国民の中にも、どう判断していいか、迷いがあるのではないだろうか。与野党とも、総選挙を横目でにらみながら、世論調達に懸命だ。

 実は、インド洋での海上自衛隊による給油量は二〇〇三年度以降、激減している。今年八月末までに実施した給油全量の60%が、〇一年十二月のスタートから〇三年三月までの十六カ月間に集中しており、現状はピーク時の十分の一程度だ。

 給油継続に執拗にこだわる理由がはっきりしないのである。強いて言えば、「アメリカの機嫌を損ねたくない」ということなのだろう。

 このような状況の中で取るべき賢明な策は、もう一度、原点に立ち返り、十分な時間をかけて徹底した議論を重ねることだと思う。

 テロ特措法に基づく給油活動については、「不朽の自由作戦」(OEF)の正当性・合法性や、イラク作戦への燃料流用疑惑、給油量の誤りの隠ぺい疑惑など、問題が噴出している。

 だとすれば与党はこの際、テロ特措法の期限切れを奇貨として、衆院での再可決による法案成立を断念し、議論の時間を確保すべきである。

 米国が本格的な軍事作戦を開始して以降、テロが拡散している現状を踏まえ、非軍事面、民生面の支援拡大という、もう一つの選択肢を真剣に検討してはどうか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071031.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15未明離陸 実効ある騒音規制必要だ

 米空軍は30日、県や地元自治体の中止要請を無視し、嘉手納基地でF15戦闘機による未明離陸を強行した。住民の安眠を妨げ、平穏な生活を脅かす暴挙であり、到底容認できない。米軍は、地元の切実な声に耳を傾け、深夜・未明の飛行を見合わせるべきだ。

 住民そっちのけの行為がまかり通る背景として、1996年に日米合同委員会で合意された「嘉手納飛行場における航空機騒音規制措置」の不完全さを指摘しなければならない。

 「午後10時―(翌日)午前6時の間の飛行および地上での活動は、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される」という内容だが、実際上、米国が必要と判断すればいつでも飛行できるようになっている。

 「規制措置を守ってほしい」とどんなに要望しても、米軍は「規制措置の範囲内で(離陸は)行われている」との認識を示すばかりで、らちが明かない。今年の未明離陸は今回で6回目だ。

 深夜・未明の飛行自粛を米軍に促すはずの日米合意が、逆に未明離陸を正当化する根拠として利用されているのが実情だ。合意から11年が経過し、本来の趣旨が吹き飛んでしまっている。

 米軍の勝手放題の基地運用を許しているのは、日本政府の怠慢としか言いようがない。

 あらためて米国と協議し、深夜・未明の飛行を原則として禁止するといった、実効性のある規制に改めることが不可欠だ。

 未明離陸は、嘉手納基地にある旧型のF15を、より高性能な機体に更新することが目的とされる。

 これまで米軍は「米国に日中に到着させるため嘉手納基地を早朝に離陸する必要がある」と説明してきたが、経由する基地を増やすなど米本国に戻る飛行ルートを工夫すれば、人々が寝静まっている時間帯に飛ばなくても済むはずだ。

 この間の米軍の言動を見ていると、未明離陸を避けようと努力した形跡がうかがえない。

 それどころか、嘉手納基地の司令官は、9月に嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会から抗議を受けた際「三沢、岩国では早朝や未明離陸を繰り返しても抗議はない。沖縄はなぜ抗議してくるのか」と言ってのけた。

 基地の運用のためなら住民生活の平穏など全く顧みない態度だ。

 米軍は今後あと1回、未明離陸の計画があると発表している。

 日本政府は、米軍によって国民生活が脅かされている状況を放置してはならない。

 地元から中止要請があることを「取りあえず米国に伝える」というような及び腰の姿勢ではなく、強い態度で未明離陸の回避を米国に迫るべきだ。

(10/31 9:57)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28548-storytopic-11.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 1面

再編交付金、名護外れる/官報告示

 【東京】石破茂防衛相は三十一日までに、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」に全国三十三自治体を指定、同日付の官報で告示した。普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動を主張している名護市や宜野座村、陸上自衛隊とのキャンプ・ハンセン共同使用を容認していない金武町、宜野座村、恩納村は従来、候補とされていたものの指定から漏れた。一方、那覇港湾施設(那覇軍港)の代替施設の受け入れを容認している浦添市は指定された。

 四市町村の指定漏れについて防衛省の担当者は、政府案に反対していることなどを理由に、米軍再編推進法で規定する「再編の円滑かつ確実な実施に資する」との要件を満たしていないと指摘。さらに、「今後協力が得られるということが現時点で判断できないため」とも説明している。

 一方で、「今後、自治体の理解と協力が得られれば交付対象に随時追加していく」と説明。V字案やハンセン共同使用についての理解と協力が得られれば、財務省と協議した上で交付対象に指定する考えを示した。

 この時期の指定については、指定を受けた自治体が交付金の助成対象となる事業計画を作成し、各議会の十二月定例会などで承認を経る必要があることを指摘。担当者は、「受け入れを表明している自治体の都合上、指定をこれ以上先延ばしできない」としている。

 「再編交付金」は、再編に伴う負担の増減を(1)防衛施設面積の変化(2)施設整備状況(3)航空機、艦船の数や種類の変化(4)人員数の変化(5)防衛施設の使用態様の変化―を基礎として点数化。

 一方で、再編事業の進ちょく率を(1)受け入れ(10%)(2)環境影響評価(アセスメント)の調査着手(25%)(3)工事(埋め立てなど主要部分)の着工(66・7%)(4)再編の実施(100%)と分類。

 旧来交付されていた日米特別行動委員会(SACO)交付金の交付額を参考に、一点当たりの交付の基準となる額を算定し、これに市町村の負担の点数を掛け合わせて交付額を決定する。

 防衛省は十一月上旬にも交付金の内示額について、財務省の承認を経た上で関係自治体に通知。自治体は、事業計画の議会承認を経て防衛省に交付を申請し、正式に決定される見通しだ。


県が防衛省批判

「やり方おかしい」


 県の上原昭知事公室長は、名護市が再編交付金の交付対象に含まれなかったことについて「名護市は政府と基本合意し、新たな基地建設を受け入れると言っている。基地負担が生じるにもかかわらず、交付の対象外とする防衛省のやり方はおかしい」と批判した。


「内容確認する」

名護市長


 【名護】米軍普天間飛行場移設先の名護市の島袋吉和市長は三十一日午前、市内の公務先で「内容を確認してからコメントしたい」と述べた。島袋市長はこれまで「政府と名護市で基本合意している。協力していないわけではない」として、対象外とされていることに反論していた。


「反対変わらず」

恩納村長


 米軍キャンプ・ハンセンで陸上自衛隊との共同使用を打診されている「三町村連絡協議会」の志喜屋文康恩納村長は「三連協で共同使用を受け入れていないのだから当然だろう。村内のハンセン内で爆破訓練するという説明は受けたが、それ以上の明確な説明は受けていない。負担増であり、反対に変わりはない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_01.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 1面

未明離陸/北谷議会が抗議決議

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が三十日未明に同基地を離陸した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は三十一日午前、臨時会を開き、騒音防止協定の順守やF15戦闘機の即時撤去などを求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。あて先は同基地司令官、首相、防衛相ら。同基地から未明離陸は今年に入り、今回で六回目。嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十一月六日に臨時会を開き、抗議決議、意見書の両案を可決する。沖縄市議会(喜友名朝清議長)も三十一日午前、基地に関する調査特別委員会で、対応を協議。近日中に再度委員会を開き、文案などを調整する。

 嘉手納基地からは、三十日午前三時五十一分ごろからF15戦闘機六機とKC10空中給油機二機が本国へ向けて飛び立った。午前二時五十分ごろには、別任務とみられるKC135空中給油機も離陸した。

 同基地に隣接する同町砂辺地域では、F15戦闘機が離陸した三十日午前三時五十二分から同五十四分にかけて、最大で一〇九・二デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を記録した。

 抗議決議は、騒音防止協定が午後十時から午前六時まで航空機の飛行を制限しているものの、「運用上の必要性」を理由に未明離陸を繰り返す米軍に対し、「運用を工夫すれば未明離陸の回避は十分可能であり、米軍はその努力を怠っている。配慮に欠けた基地運用に怒りを禁じ得ない」と強く抗議。

 今年に入り二回強行された同基地でのパラシュート訓練や、サイレン音や拡声器放送が鳴り響き、住民から苦情の声が上がった即応訓練などを指摘した上で、「周辺住民は我慢の限界であり、いかなる理由でも到底容認できない」としている。

 意見書では国や関係機関に対し、問題の解決に向けた国レベルでの協議を行い、その内容を公開することを求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_02.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 5面

戦中つづった日記寄贈/平和資料館に

 那覇市出身の故與儀達清さんが、沖縄戦時中の避難生活や心境をつづった日記や二女の幸子・ウィルセン(旧姓・與儀)さん(63)が戦中着ていた着物が三十一日、幸子さんらから糸満市の平和祈念資料館に寄贈された。二十五日にきょうだい四人で米国カリフォルニアやハワイから来沖した。幸子さんは「戦争の悲惨さ、平和の大切さを多くの人に知ってほしい」と願っている。(宮城貴奈)

 「今日も激しい爆撃だ」「毎日が不幸だ」。手帳には小さな文字で、一九四四年の十・十空襲から四五年六月までの戦中の状況や達清さんの心境が克明につづられている。極端に厳しい食糧事情の中、北部や南部を逃げ惑う日々だったが、ガマの中でも日記を書き続けた。二十七年前、達清さんは「苦しい体験を忘れないでほしい」と二男の隆さん(65)に手帳を託していた。

 與儀さん一家は、家族七人で北部や南部を逃げ回り、祖父と長男を亡くした。疎開船に家族全員で乗船しようとしたこともあったが、直前に隆さんが負ったやけどの病院探しのため、出発時間に間に合わず乗れなかった。長女のエミ・トーイさん(71)は「後でその疎開船は米軍に撃沈されたと聞いた。危ないところだった」と振り返った。

 戦中ずっと同じ着物を着続けた幸子さんは、当時幼かったため戦中の記憶はないが、戦後も母親から毎日のように沖縄戦の話を聞いたという。母親は、幼子を連れながら家族五人が生き残った証しとして、幸子さんの着物を長年大切に保管していた。

 戦後、幼少時にハワイに移住、日本語が話せなかった隆さんは、達清さんから渡された手帳を訳すために大学で日本語を学んだ。寄贈について、隆さんは「(天国の)父も喜んでくれると思う」と語った。着物は幸子さんにとっても大切な品だが「自分の手元にあるより、沖縄戦の歴史の一つとして残してほしい」と涙ながらに語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_04.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(11月24日、25日、26日)

2007年10月24日(水) 朝刊 1・29面

米が陸上調査勧告/「普天間」アセス

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐる環境影響評価(アセスメント)について二〇〇六年四月当時、水域でのみ行う計画だった防衛庁(当時)に対し、米側が埋め土として掘削される辺野古ダムやシュワブ陸上区域でも(希少生物などの)生息調査をするよう勧告していたことが二十三日分かった。自然環境保護のため米連邦裁判所で米国防総省を相手に「ジュゴン訴訟」を提起している沖縄在住の原告団が同日、名護市内で会見し、裁判で示された米政府の文書を公開した。

 同文書で米側は、「もしアセスが不十分ならば、建設や将来の運用により、環境や生息地への予想外の影響が生じた場合、米国海兵隊が責任を負わされるだろう」と強く危惧。移設を支持する米側ですら、日本側の拙速な計画に疑念を呈していた形だ。

 額賀福志郎防衛庁長官(当時)と島袋吉和名護市長らが、V字形滑走路建設で基本合意した〇六年四月七日の直後の十九日に当局者の話し合いを記録した文書で、二十日付。

 普天間飛行場にはない弾薬装備場を滑走路北側に設置するという記述もある。同項目には「解決済み」とあり日米間で合意したとみられる。

 また、日本側が騒音コンター(分布図)を示していないのに対し、米側は「新しい滑走路の形状・配置ならびに、運用に関係する騒音コンターを示す必要がある」と指摘している。米側は当時から、陸地上空の飛行はあり得るとの立場で、「集落地区上空の飛行ルート回避」を強調する日本側を、けん制した内容だ。

 さらに米側は、二〇〇一年の運用要求書に基づき、艦船の寄港に使用されるとみられる全長二百十四メートルの岸壁を図面で示すよう要求。米側の勧告後に、地上でのアセスは実施されることになったが、施設の具体的な内容は、政府の環境影響評価方法書には記載されていない。


     ◇     ◇     ◇     

「情報隠し」国批判/原告「県民だまし」


 【名護】「政府は市民や県民をだまそうとしている」「名護市長や知事は(滑走路を)沖合に出せといっているが、それで解決する問題ではない」―。二十三日、名護市内の公民館で開かれた米国ジュゴン裁判報告会。普天間飛行場の代替施設に二百メートル以上の岸壁や弾薬装備場設置などで米側と詳細な協議をしているにもかかわらず環境影響評価書では、施設の内容に触れない政府の姿勢を強く批判する声が相次いだ。

 原告団の真喜志好一さんは米側文書で、現在嘉手納基地で行われている航空機の弾薬装備施設を代替施設にも設置することで日米が合意している記述に注目。「実弾射撃は鳥島射爆場などでしか行われていないが、伊江島の射爆場が再び使われるようになる。名護市や東村高江上空を実弾を装備したヘリやオスプレイが、飛び交うようになる」と危機感を表明。二百メートルを超える岸壁は「天候次第では強襲揚陸艦エセックスも寄港が可能になる」と指摘した。

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団団長の東恩納琢磨さんは「強い怒りを感じる」と感情を抑えきれない表情。ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「賛成派が納得しているのは(危険な)情報が隠されているからだ。本来政府が出すべき資料が出されていない。知事も市長もだまされている」などと名護市長らに、白紙撤回を求めていく考えを示した。

 フロアからも発言が相次いだ。ヘリ基地いらない二見以北十区の会共同代表の浦島悦子さんは「地元も本土のマスコミも、滑走路の沖合側移動を要求する知事や市長を『頑張っている』と評価する論調はおかしい。市民は基地が造られることを望んではいない」と、「地元対政府」の構図で伝えがちな報道を批判した。

 参加者からは、基地建設を進めるために、地域住民の生活環境への悪影響を公表しない“本末転倒”ともいえる日本政府への批判が相次いだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241300_02.html

 

2007年10月24日(水) 朝刊 1面

知事、アセス保留解除/普天間代替

 米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局が方法書に対する住民らの意見概要を県に送付したことを受け、仲井真弘多知事は二十三日、県庁で記者会見し、「環境アセス手続きの一つとして受け取らざるを得ない」とし、方法書の受け取り保留を解除し、知事意見の提出手続きに踏み切る考えを表明した。県は今月中にも環境影響評価審査会に諮問する見通し。知事はまた、「県や地元の意向が無視されている」と防衛省の対応を厳しく批判した。

 知事意見の手続きを進める理由については、(1)知事意見を述べないと、異議なし、ととらえられ、住民や関係市村長の貴重な意見を踏まえないことになり、地域の環境保全に責任を持つ知事の立場が損なわれる(2)地元の意向を踏まえ、できるだけ沖合に寄せてほしいというこれまでの主張を放棄したとも見なされかねず、大変不本意―と説明。「アセス前の修正」を断念し、アセス手続きを進める中で引き続き「滑走路の沖合移動」を求める意向を示した。

 沖合移動を求める理由として、住宅地への騒音のほか、海流の変化によるサンゴや藻場への影響、さらにキャンプ・シュワブ沿岸部にあるウミガメの産卵地や貝塚が破壊される―と指摘。防衛省の騒音データについては「あの数値はまったく信用していない。データ上極めて疑義が強い」と切り捨てた。「騒音から言えば、かなりまだ(沖合に)出すべきだ」としたが、「事業を進めるのは防衛省」とし、今後も移動距離など県側から具体的要求を打ち出す考えがないことを明らかにした。

 知事が権限を持つ埋め立て申請への対応については、このまま防衛省から「沖合移動」などに前向きな回答が得られない場合は「無論ノーだ」と表明。「アセス手続きのやり直しなど移設作業に遅れが生じても、すべて防衛省の責任」と突き放す一方で、「(埋め立て申請は)これから二年半くらいかかる。その中で政府が考え方を変えてくれば、頭からノーとは言っていない。私は米軍再編を進めるべきだと思っているから今の段階で二年半先の最終結論をなかなか出せない」とし、アセス手続きの中での政府の軟化に期待を寄せた。


沖合移動は堅持/名護市長


 【名護・宜野座】島袋吉和名護市長は二十三日、「県や名護市と協議を行うことなく、意見概要書が提出されたことは極めて遺憾」と防衛省の対応を批判。しかし、「市長意見を出さないとなれば、異議なしととらえられる懸念があるため、受け取らざるを得ない」と話した。移設先地元として政府側に求めてきた「アセス前」の滑走路沖合移動の事実上断念を意味し、今後はアセス手続きと同時並行で「沖合移動」を求めていく。島袋市長は、「方法書を精査するとともに住民生活や自然環境に著しい影響を与えないという観点から、可能な限り沖合に寄せるよう今後とも強く主張する」と述べた。

 県外出張中の東肇宜野座村長は、「概要書はまだ見ていないが、県や名護市と歩調をあわせていきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241300_03.html

 

2007年10月24日(水) 朝刊 1面

全駐労、手当減拒否/次回決裂なら来月スト

 日米両政府が交渉中の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で、日本人労働者向けの諸手当約百億円の削減を日本側が提案している問題について、全駐労中央本部(山川一夫委員長)は二十三日、防衛省と団体交渉し、同省の提案を拒否、次回交渉で撤回がなければ、十一月中旬から下旬にかけて時限ストライキを決行することを伝えた。ストが行われれば、同本部による全国規模のストは一九九一年以来、十六年ぶり。

 同本部は二十三日、交渉前に執行闘争委員会を開き、交渉が決裂した場合のストの方針を確認。十一月二日に予定している次回交渉までに、各支部でスト権の確立を目指す。

 同本部によると、団体交渉は防衛省で約二時間行われた。同省が提案事項を説明した後、同本部が再考を求めたが受け入れられなかったという。

 全駐労沖縄地区本部の與那覇栄蔵委員長は「一方的で不利益な提案であり、労働者の権利が侵害されていることに憤りを感じる」と防衛省の対応に不満を示した。

 削減が提案されているのは、国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」ほか「語学手当」など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241300_04.html

 

琉球新報 社説

辺野古アセス 独断専行は理解得られない

 在日米軍再編合意に基づき、米軍普天間飛行場代替施設が建設される名護市辺野古沿岸部の環境影響評価(アセスメント)で、沖縄防衛局が環境アセス方法書に対する住民意見の概要書を県に提出した。

 代替施設のV字形滑走路を可能な限り沖合に寄せるよう求める県、名護市に対し、防衛省は「日米で合意した案を着実に進める」との見解を繰り返しており、修正の可能性を否定し続けている。

 この間、政府は、県や名護市の了承も得ないままに、環境アセス方法書の公告・縦覧、そして今回の住民意見概要書提出と着々と手続きを進めてきた。

 何が何でも現行の政府案で押し切ろうとする姿勢は独断専行そのものであり、県民無視も甚だしい。

 アセス方法書の受け取りを保留してきた仲井真弘多知事は23日の記者会見で「これ以上、受け取りを保留し、知事意見を述べないことは異議なしととらえられる。受け取らざるを得ない」と表明するとともに、「地元の意向が無視されている」と強い調子で政府を批判した。

 知事は環境アセス方法書に対する知事意見の中で、環境保全の見地から、現行政府案に反対する姿勢を明確に打ち出すべきである。

 それにしても理解し難いのは、県や名護市と話し合おうともせずに、米国と合意した移設案をごり押しする政府の態度だ。

 米国の顔色だけを気にして、肝心の国民をないがしろにしているとしか言いようがない。

 当初、政府内には「譲歩すれば沖縄は増長する」「受け入れないと振興策がなくなると分かれば沖縄は折れるだろう」と高をくくる見方もあったようだ。

 この間、足元を見られるような要素が沖縄側にあったとすれば、残念なことである。

 仲井真知事は昨年11月の県知事選で「現行のV字形案のままでは賛成できない」と訴えて当選した。政府案を丸のみしたのでは公約違反との批判を免れない。政府に対し最後まで毅然(きぜん)とした態度で臨んでもらいたい。

 沖縄は、去る大戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が繰り広げられ、戦後は住民の意思に反し広大な土地が米軍基地として強制的に接収された。

 現在も、全国の米軍専用施設面積の4分の3が集中し、県民は基地から派生する事件・事故、騒音被害などに脅かされている。

 在日米軍再編が基地負担軽減につながる可能性があると期待されたが、日米合意の中身は普天間飛行場の県内移設を大前提としており、期待外れに終わった。

 政府は、沖縄の苦渋の歴史を十分に踏まえ、基地負担の軽減に本腰を入れて取り組むべきだ。

(10/24 10:00)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28340-storytopic-11.html

 

2007年10月24日(水) 夕刊 1面

米原潜、炉の検査怠る/7月うるま市寄港

 【うるま】今年七月、うるま市勝連の米軍ホワイトビーチに寄港した米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦ハンプトン(六〇八二トン)の乗員が、原子炉の定期検査を怠った上、記録を偽造して検査を行ったように見せかけ、将校と兵士六人が処分されていたことが二十四日までに分かった。米紙USAトゥデー(電子版)などが報道した。

 報道によると、乗員は「(化学、放射線学上の観点から)毎日実施すべき原子炉の安全検査を一カ月以上行わず、それを隠ぺいするために記録を偽造していた」という。場所は不明。

 米海軍の広報担当者は「ハンプトンの行動と記録が海軍の要求する高い水準を満たさなかった。ただ、乗員や環境に危険はなかった」と米紙に説明。ハンプトンは九月十七日にカリフォルニア州サンディエゴに寄港したという。同紙は「核兵器を積んだB52が本土上空を飛んだことも判明しており、軍の核関連物質の取り扱いに新たな疑問が投げ掛けられるのは必至だ」としている。

 在沖米海軍報道部は「情報は何も入っていない」、沖縄防衛局は「何も連絡は入っていない」としている。県基地対策課は「初めて聞いた。ハンプトン寄港時の放射能調査では異常はなかった」とし、特に対応は考えていないという。

 知念恒男うるま市長は「現在詳しい状況が分からず、担当課に調査させた上でコメントしたい」とした。同市議会は七月、寄港に反対する抗議決議と意見書案を全会一致で可決している。

 ハンプトンは七月二十八日にホワイトビーチに入港、八月一日に出港した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241700_01.html

 

2007年10月24日(水) 夕刊 5面

早朝からサイレン・騒音/嘉手納・即応訓練

 【嘉手納】米空軍第一八航空団による米軍嘉手納基地での即応訓練は二十四日も引き続き行われ、早朝から英語の拡声器放送やサイレン、航空機の騒音が民間地域に響いた。F15戦闘機などの航空機が離着陸を繰り返し、嘉手納町屋良では同午後一時現在、八〇デシベル(地下鉄の車内の音に相当)以上を三十回計測。最高値は、午前六時四十二分に、九六・三デシベルを記録。嘉手納町には即応訓練と航空機騒音の相乗被害を訴える苦情が相次いだ。

 同町は苦情を添え「多くの町民が不安と恐怖に陥っている。即応訓練は、過去にも再三トラブルを起こしており、断じて容認できるものではない。今後、訓練の中止を強く望む」との抗議文を同基地司令官に送付した。

 住民からの苦情は同午後一時現在で九件。「昔の空襲警報を思い出す」「放送の内容が意味不明でさらに恐怖を感じた。戦場の嘉手納町になってしまった」「このサイレンは何か。逃げなくていいのか」など、不安を訴えている。

 読谷村に住む男性は「一睡もできなかった。音を下げるように米軍に訴えてくれ」と切実な思いを伝えた。

 訓練は基地が攻撃を受けたことを想定し、軍を含む各部門が迅速に対応できる態勢づくりを図るのが目的。

 二十六日まで予定されている訓練では模擬爆発音や発煙、拡声器放送、サイレンなどを使用するが、同町には午後十時から翌日午前六時まで音の発生する訓練は控えるとの事前説明があったという。同町は二十二日にも「地域住民に配慮するよう」申し入れていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241700_03.html

 

2007年10月25日(木) 朝刊 1面

調査官と審議委員 半数、「つくる会」と関係

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書問題で、検定意見の原案を作成する教科書調査官の日本史担当者と、教科用図書検定調査審議会日本史小委員会の近現代史担当委員の計八人のうち半数の四人が、「新しい歴史教科書をつくる会」が発行した教科書を監修・執筆した伊藤隆東京大名誉教授と関係があることが二十四日、分かった。伊藤氏の門下生がいるほか共同研究や共著の実績があった。衆院文部科学委員会で石井郁子氏(共産)が明らかにした。

 石井氏の調べによると、日本史担当の教科書調査官四人のうち、主任調査官の照沼康孝氏、調査官の村瀬信一氏は東京大在学中、助教授だった伊藤氏の教え子だった。

 近現代史担当の審議委員四人のうち駿河台大教授の広瀬順皓氏、九州大大学院教授の有馬学氏は一九九六―二〇〇〇年度にかけ、文科省の科学研究費補助金を活用して伊藤氏を統括者とした共同研究に従事していた。この研究には村瀬氏も加わっていた。

 また、村瀬、照沼、有馬の三氏らは「近代日本の政治構造」という著書を共同で執筆しており、有馬氏はあとがきで「執筆者はいずれも先生(伊藤氏)が在学中、学恩に浴し」と伊藤氏への謝意を示していた。

 伊藤氏は「つくる会」の発足に携わり、〇六年まで理事を務めた。

 石井氏は「今回の検定意見は文科省の片寄った人選がある。歴史を逆行させる地下水脈のようなものが一貫して流れていると言わざるを得ない」と指摘し、調査官と審議委員の選考の在り方を厳しく批判した。

 渡海紀三朗文科相は「一部の方にそういう色合いが見えるということだけで、物事が流れていると断定するのはいかがか」と述べ、問題視しない考えを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251300_03.html

 

2007年10月25日(木) 朝刊 2面

普天間協 来月前半に/開催方針 政府固める

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十四日、首相官邸で町村信孝官房長官と会談し、米軍普天間飛行場の移設に関する協議会を早期に開催する方針で一致した。町村氏が協議会の早期開催に同調したのは初めて。政府はこれを踏まえ、十一月中旬に予定されている福田康夫首相の訪米前に開催する方針を固めた。岸田氏は会談終了後、記者団に「十一月の前半に開きたい」と意欲を示した。

 岸田氏は、防衛省が県に普天間移設に伴う環境影響評価(アセスメント)の住民意見概要書を送付したことや、仲井真弘多知事が記者会見で防衛省への強い不快感を表明したことなどを受け、沖縄の現状を説明するため官邸を訪れた。

 町村氏は県と防衛省の溝が深まっている現状を踏まえて「移設協議会は早期に開催するべきだ」と述べた。

 岸田氏は防衛省の対応について記者団に「(県側から)反発の声が上がっていると聞いているので、その点は心配している」と懸念を表明。

 「関係者が同じテーブルに着いて意見交換し、意思の疎通を図るのはどんなテーマでも重要。基地移設ではなおさらだ」と述べ、県と防衛省が協議会で率直に意見交換する必要性を強調した。

 これに先立ち、県選出の嘉数知賢衆院議員(自民)も官邸で町村氏と会談。嘉数氏は「住民感情や県民の気持ちをもっとくみ取って(移設作業を)進めてもらわなければ困る、という知事の考え方を伝えた」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251300_04.html

 

2007年10月25日(木) 朝刊 2面

ハンセン強化に反対決議/金武町軍特委 臨時議会提案へ

 【金武】金武町議会の米軍基地問題対策調査特別委員会(知名達也委員長)は二十四日、会合を開き、米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場の建設計画や陸上自衛隊の共同使用などについて協議。基地機能強化に反対する抗議決議を、十一月九日に開かれる臨時議会に提出することを決めた。

 抗議決議にはハンセン内レンジ4の都市型戦闘訓練施設の暫定使用の即時中止も盛り込む。全会一致で可決される見通し。

 軍特委では、レンジ3、4に隣接する並里区の池原政文区長と登川松栄区行政委員会議長から、現在の被害状況や射撃場建設問題などに対する意見を聞いた。池原区長は射撃場建設について、「都市型戦闘訓練施設の建設、使用に反対する県民大会を開いたのに、夜間訓練の実施など暫定使用による被害が続いている。さらなる施設の建設は、区民だけでなく、町民全体を愚弄する行為だ」と、日米両政府を批判し、町挙げて建設反対を訴えるよう求めた。

 知名委員長は「射撃場の建設については、区だけでなく議会や町も反対の意思を示している。再度強い抗議の意思を示したい」と話した。同議会は、八月に射撃場建設、九月に共同使用に対する抗議決議をしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251300_05.html

 

2007年10月25日(木) 朝刊 27面

爆発音・煙 基地緊迫/嘉手納訓練

 【嘉手納】米空軍第一八航空団による米軍嘉手納基地での即応訓練は二十四日午後も引き続き行われ、同三時十五分ごろには、爆発音一発が響き、発煙筒を使用した訓練が実施された。

 同時刻には、機銃を積んだHH60救難ヘリ三機が着陸した。嘉手納町には同日午後五時までに、サイレンや英語での放送、航空機の離陸の騒音被害を訴える住民からの苦情が十件寄せられた。

 同基地によると、訓練は二十六日まで。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251300_08.html

 

琉球新報 社説

普天間代替施設 計画隠しまだあるのでは

 在日米軍再編に伴い、米軍普天間飛行場の名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設で米側が代替施設に普天間飛行場にはない214メートルの岸壁や戦闘機装弾場を要求し、日本側も基本的に同意していたことが米公文書で分かった。

 2006年5月の最終合意では、これらの事項は一切、明らかにされていない。

 代替施設への次期主力輸送機オスプレイ配備、民間地上空の飛行も米側は要求していることがこれまでに分かっている。計画隠しはまだまだあるのでは、と疑わざるを得ない。

 県民に詳細を知らせないまま建設工事を強行することで、既成事実を次々と積み重ね、米側の思い通りの基地を建設することだけに、政府は腐心しているように見える。

 代替施設が完成すれば、周辺住民をはじめ県民は、基地被害を受ける危険性の中で生活することを余儀なくされる。当事者である県民に必要な情報を提供し、十分に説明することは政府の責務である。

 政府は、県民から反発を受ける計画の詳細については最後まで覆い隠すつもりなのだろうか。説明責任を果たそうとしない政府の姿勢は許し難い。

 岸壁については、日本側が地図に明示していないことから、米側から地図に示すよう要求されるありさまである。岸壁の必要性は既に01年の会議で日米が確認しており、約6年も政府はこの事実を隠していたことになる。

 岸壁は、全長約180メートルの艦船が停泊できる。海兵隊員とヘリを海上輸送する揚陸艦も着岸できる規模である。

 普天間基地にはなかった軍港を併設するもので、基地機能強化以外の何物でもない。代替施設ではなく、格段に強化された基地が新たに建設されることが、米公文書であらためてはっきりしたと言っていい。

 海上埋め立て用土砂を採取する予定の辺野古ダム地域や、移設でつぶれるシュワブの陸域部分についても、米側は環境影響評価(アセスメント)を実施するように求めている。

 防衛省が進めるアセス方法書にはそれを含め、岸壁や装弾場には触れていない。方法書は不備としか言いようがない。

 方法書が計画に即したものでない以上、アセスは無効であるのは自明の理である。

 県や名護市、宜野座村は06年5月、普天間代替施設について政府と基本合意した。しかし、岸壁の建設や民間地上空の飛行などはその際には明らかにされていなかった。

 それらの基本合意も、政府の隠ぺい体質によって無効になったと言えるだろう。

(10/25 9:47)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28374-storytopic-11.html

 

2007年10月25日(木) 夕刊 1面

「レンジ16一帯」使用/ハンセン日米共同訓練

金武町長は「反対」堅持

 【北部】在日米軍再編で日米合意した米軍キャンプ・ハンセンでの陸上自衛隊との共同使用問題で、沖縄防衛局の担当者が金武町、宜野座村、恩納村で構成する三町村連絡協議会(三連協、会長・儀武剛金武町長)に対し、ハンセン内レンジ4の都市型戦闘訓練施設の移設先となっているレンジ16一帯などを使用したい意向を伝えていたことが二十五日までに分かった。担当者は早期に受け入れを表明するよう促した。防衛省は年明けにも共同使用を始めたい考えで、実弾射撃を伴う本格的な訓練は二〇〇八年四月以降になる可能性がある。三連協はそれぞれの町村に持ち帰り、対応を検討するとしているが、儀武会長は「反対の意向は変わらない」としている。

 沖縄防衛局の担当者らが二十二日、金武町役場を訪れ、三連協に説明した。訓練場所については、ハンセン内の都市型戦闘訓練施設のあるレンジ4や射撃場の建設が予定されているレンジ3は使用せず、実弾射撃訓練が行われているレンジ1、2やレンジ16一帯を使用すると説明。恩納村側では爆破訓練を実施したい考えであることなどを伝えた。

 さらに共同使用の受け入れや訓練開始が再編交付金の対象となると説明し、十二月の〇八年度予算編成までに受け入れを表明すれば、来年度予算に交付金の10%、再来年度以降100%交付するとした。

 訓練の開始時期については明言しなかったが、防衛省は、年内にも地元の合意を得たい考えで、合意が得られ次第、自衛隊による在日米軍基地の共同使用を規定した日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手。手続きが完了し次第、訓練を開始したい意向だ。

 説明では、資料などは配布されなかった。

 儀武会長は「従来の説明と大きな変化はない。負担増であることは変わらず、まずは負担軽減をどうするか示してほしい。資料も配布されておらず、これまで通り反対だ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251700_01.html

 

2007年10月25日(木) 夕刊 1面

県、普天間協出席前向き/知事 新内閣に期待

 米軍普天間飛行場の移設に関する協議会を政府が十一月前半に開きたい、との意向を示していることについて、仲井真弘多知事は二十五日午前、沖縄タイムスの取材に応じ、「これまでのような(政府側の)我田引水の会合では意味はないが、内閣も変わって、こちらの主張にも耳を傾ける姿勢があるのであればいい。協議会が開かれることは悪いことではない」と述べ、出席を前向きに検討する考えを明らかにした。

 仲里全輝副知事も同日午前、「従来のように国のシナリオに従って、国の考えを押し付けてくるのか、会合がどういう形になるのかを見極めないといけない」とした上で、「ただ、今回は防衛省ではなく内閣官房が取り仕切るようなのでやり方が変わることも期待している。もっと明確に内閣府と調整する必要はあるが、原則(協議会に)臨む必要はある」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251700_02.html

 

2007年10月25日(木) 夕刊 5面

海兵隊と実動訓練/県警など 米軍機墜落を想定

 米軍航空機の墜落事故を想定した日米の合同訓練が二十五日午前、浦添市のキャンプ・キンザーで行われた。民間地に航空機が墜落し、負傷者が出たと想定。米海兵隊と沖縄防衛局、県警、消防が連携し、消火活動や負傷者の救急搬送など初動態勢の手順を確認した。

 二〇〇四年の沖縄国際大学ヘリ墜落事故を受け、日米が米軍施設・区域外での米軍機事故に関するガイドラインを策定。今年二月に米空軍と実動訓練を行ったが、海兵隊との訓練は初めて。

 訓練では、事故を目撃した日米両国の通行人が通報し、浦添署員と浦添消防隊員らが航空機の乗員や横転した車から民間人を救助。海兵隊消防と連携して航空機の火災を消し止めた。

 また、事故現場近辺では日米の合同指揮所が設けられ、規制線の設置などを協議し、消火後の連携を確認した。

 萱嶋満津保内閣官房沖縄危機管理官は「今回は新たに現場連絡調整所を設置し、日米双方で小まめな連絡を取れるようになった。通訳の数が足りないなどの課題を今後は検討したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251700_03.html

 

2007年10月26日(金) 朝刊 1面

文科省 来月末にも訂正可否結論

 来年春から使用される高校歴史教科書の検定で、文部科学省が沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除した問題で、文科省は教科書会社からの訂正申請を受け、記述訂正の可否について十一月末までに結論を出すことが二十五日、教科書会社の関係者の話で分かった。検定意見が付いた教科書会社五社のうち四社は、二十九日以降に訂正申請する方針。残る一社も申請する方針を決めている。

 同省は、十一月末までに教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会を開き、各社の記述内容を審議し、訂正を認めるかどうかを判断する。

 検定で日本軍強制の記述を削除されたのは、東京書籍、実教出版、清水書院、三省堂、山川出版。訂正申請の時期を公表しない山川出版を除く四社は、今月二十九日から十一月九日ごろまでに申請することを決めた。

 文科省が、申請結果をまとめるまで記述内容を公表しないよう指示しているため、五社とも「記述内容は公表できない」とした。しかし、山川出版を除く四社の執筆者は、「日本軍強制」に関する記述を明記することを決めている。

 ある社の担当者は「遅くとも来週末までに申請する」と説明しながら、「日本軍強制の記述が認められるか不安も残る」と話した。

 別の会社は十一月五日以降に申請する予定。文科省が十一月末にも結論を出す方針で作業を進めていることを聞いた担当者は「十二月上旬の印刷期限に間に合わせることができそうだ」と安堵。一方で、「検定意見が撤回されずに日本軍強制の記述が認められるかどうか、文科省の動向を見ながら申請ぎりぎりまで文言を調整する」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710261300_02.html

 

2007年10月26日(金) 朝刊 2面

普天間代替に弾薬搭載場/防衛局長、設置認める

 沖縄防衛局の鎌田昭良局長は二十五日の定例記者懇談会で、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に建設予定の米軍普天間飛行場代替施設に、普天間飛行場にはない「戦闘航空機弾薬搭載エリア」を設置することを明らかにした。

 一方で代替施設は、普天間飛行場の現行機能のうち「ヘリ基地機能」のみを移設し、軍港機能は保持しないとする従来の説明を繰り返した。

 米側が同エリアの設置を日本側に要求していた問題について、鎌田局長は「現在の普天間飛行場においては嘉手納基地を利用して弾薬搭載を行っているが、辺野古崎への移設に伴い、運用上の支障を来すことになる」として設置予定であることを認めた。

 一方、同様に米側が設置を要求していた二百メートル級の大型岸壁に関しては「われわれの計画の中に軍港としての機能を有するような岸壁を建設する予定はない」と否定。「大浦湾に建設予定の桟橋はあるが、これは普天間代替施設で使用される航空燃料のためのものであり、兵員や物資の恒常的な積み降ろしを行うような軍港としての機能を有するものではない」と説明した。

 仲井真弘多知事が二十三日の会見で、代替施設の沖合移動を求める理由にウミガメ産卵地保護などを挙げたことに関しては、アセス方法書の中で▽那覇防衛施設局(当時)の一九九七年の聞き取り調査で、過去にキャンプ・シュワブ北側砂浜でウミガメの足跡または産卵のために掘った穴を確認▽シュワブ内に四カ所の埋蔵文化財を確認―していると報告。その上で「アセス手続きの中で客観的なデータを収集し、その結果を県など地元に丁寧に説明していく」とし、アセス結果を踏まえて修正も検討していくとの従来姿勢を繰り返した。


     ◇     ◇     ◇     

普天間協 来月7・8日か


 【東京】政府は二十五日、米軍普天間飛行場の移設に関する協議会の次回会合を十一月七、八日のいずれかで開催する方向で調整に入った。しかし、ゲーツ米国防長官の訪日が八日前後に予定されるため、石破茂防衛相や高村正彦外相ら関係閣僚が協議会に対応できない場合は六日か九日で再調整する可能性もある。

 従来は防衛相と沖縄担当相が共催したが、普天間移設問題を首相官邸が主導することを明確化するため、次回会合から町村信孝官房長官が主宰することも検討している。

 政府は、県と名護市に十一月第二週で仲井真弘多知事、島袋吉和名護市長が上京できる日程を打診。七、八日であれば可能との感触を得た。

 内閣府と防衛省は二十六日以降、議題など詳細を詰める。町村官房長官や高村外相、額賀福志郎財務相ら関係閣僚との日程調整も本格化させる。

 防衛省は「県側が譲歩しなければ開いても意味がない」と難色を示してきたが、同省幹部は二十五日、「他の閣僚が参加する中、防衛省だけ参加しないとは言えない」として応じる姿勢だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710261300_03.html

 

2007年10月26日(金) 夕刊 1面

普天間協/官房長官に主宰変更

 【東京】政府は十一月七、八日のいずれかで開催を調整中の米軍普天間飛行場の移設協議会で会則変更を議題に上げ、防衛相と沖縄担当相の共催だった同協議会の主宰を官房長官にする方針を二十六日までに固めた。県側を含めた出席者の同意を得て、官邸主導を明確にする。官房長官主宰となれば、政府内での協議会の位置付けが「格上げ」されることになる。

 岸田文雄沖縄担当相は同日午前の閣議後会見で、主宰者変更について「次回はより多くの関係者が納得していただける会にしたいと考えており、誰が主宰するのが一番いいのかも含めて検討している」と述べ、町村信孝官房長官を主宰者にする意向を示唆した。協議会の在り方にも言及し、「(過去は)関係者が自分たちの思いを十分に申し上げる機会が乏しかったと聞く。それぞれが言うべきことを言える雰囲気づくり、時間も確保しなければいけない」との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710261700_03.html

 

2007年10月26日(金) 夕刊 1・6面

「検定意見の撤回が民意」/大城さん、都内で講演

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」訴訟の被告側支援や教科書検定問題に取り組む「沖縄戦首都圏の会」は二十五日、連続講座「沖縄戦の真実と歪曲」を都内で開き、沖縄戦研究者で沖縄平和ネットワーク代表世話人の大城将保さんが講演した。

 大城さんは教科書問題で政府が訂正申請による決着を図ろうとしていると指摘。「検定意見の撤回を絶対に譲れない沖縄の気持ちを理解してほしい」と支援を呼び掛けた。

 大城さんは沖縄戦体験者への聞き取りなど独自調査を基に「私が把握しているだけで三十三件・一千百二十二人の『集団自決』と、四十六件・百六十八人の軍による住民虐殺があった」と指摘。

 「住民虐殺で恐怖感を植え付けられ、住民の心が凍り付いたことで『集団自決』が起こった。この二つは表裏一体を成している」と述べた。


「はがき運動」高教組も賛同

現場で呼び掛け


 高教組(松田寛委員長)は二十五日の評議員会で、教科書検定意見の撤回を求めるはがきや寄せ書きを政府に送る運動に賛同し、現場の教職員や生徒に参加を呼び掛けることを決めた。運動は県子ども会育成連絡協議会などが呼び掛けており、福田康夫首相、渡海紀三朗文科相らにあてて送る。


     ◇     ◇     ◇     

記述回復は年内に結論/文科相


 【東京】渡海紀三朗文部科学相は二十六日午前の閣議後会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書問題で教科書会社から訂正申請があれば、教科用図書検定調査審議会の再審議を経て「(記述回復の可否について)年内に結論を出す」と述べた。

 審議会の再審議に沖縄戦の専門家を加えるかどうかは「新たなメンバーは入れなくても、いろんな方々の意見を聞くこともないではない」と指摘。審議委員に専門家を加えるか、専門家からの意見聴取をするか、いずれかを検討しているとの考えを説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710261700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月21日、22日、23日)

2007年10月21日(日) 朝刊 1面

衆院選 社民県連が擁立決定

2区 照屋氏 3区 新川氏

 社民党県連(照屋寛徳委員長)は二十日、沖縄市内で定期大会を開き、次期衆院選の沖縄2区に現職で同党副党首の照屋寛徳氏(62)、3区に元沖縄市長で県議の新川秀清氏(70)の擁立を正式に決定した。党本部に申請し、常任幹事会で公認が決定する。

 照屋氏は「米軍基地の機能強化や沖縄戦の『集団自決(強制集団死)』の歴史改ざんを許さず、あらゆる知恵と力を結集し、衆院選を勝ち抜きたい」とあいさつ。新川氏は「社民党がしっかりとやらないといけない。米軍再編は、基地を嘉手納基地以北の中北部に集中させ、基地の掃きだめにする狙いだ。阻止するため、全力を挙げて議席を獲得したい」と訴えた。

 照屋氏は一九四五年七月生まれ。うるま市(旧具志川市)出身。琉大卒。県議二期、参院議員一期を経て二〇〇三年に衆院議員初当選。二期目。

 新川氏は一九三七年一月生まれ。沖縄市出身。コザ高校卒。沖縄市の福祉、経済部長を経て九〇年沖縄市長に初当選。二期務めた。県議二期目。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710211300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月21日朝刊)

[ゴルフ接待疑惑]

国会は事実究明怠るな

 八月末に退任した守屋武昌前防衛事務次官は、四年以上も事務方のトップに君臨し続けてきた。

 中央官庁の慣行を破る異例の「長期政権」だった。官邸や自民党国防族に深く食い込み、省内では「守屋天皇」とも呼ばれた。

 日米両政府が普天間飛行場の移設返還に合意して以来、十年以上も沖縄の基地問題にかかわり続けた。

 移設問題をめぐる省内の路線対立では終始、強硬派として振る舞い、現行の「V字形案」をまとめた。沖合移動を求める県や地元名護市に対して「合理的な理由がない」と突っぱね続けてきたのも守屋氏である。

 その守屋氏にゴルフ接待疑惑が浮上している。

 在職中、防衛省業務の受注実績を持つ防衛専門商社の元専務と百回以上にわたってゴルフを行い、その上にマージャンや飲食も繰り返していたというのだ。

 事実であれば、とんでもないことである。

 二〇〇〇年に施行された「自衛隊員倫理規程」は、利害関係者から供応接待を受けることなどのほか、「利害関係者と共に遊技またはゴルフをすること」も禁じている。

 いわゆる背広組の守屋氏も法律上、自衛隊員として位置づけられ同規程の適用を受けることになっており、倫理規程施行以降にゴルフをしたとすれば明確な違反行為となる。

 仮に規程適用前の行為だとしても問題は残る。

 守屋氏に関しては、ゴルフ接待疑惑のほかにも、二つの問題が持ち上がっている。一つは、給油量訂正問題、もう一つは航海日誌廃棄問題だ。

 海上自衛隊がテロ対策特措法に基づいて米艦船に給油した燃料の量を大幅に訂正した問題は、守屋氏が防衛局長の時に起きている。

 米艦船に給油した燃料の転用疑惑が依然として晴れないだけに、守屋氏本人からの聴取が欠かせない。

 海自の給油艦が、四年間保存するという内部規則に違反して航海日誌を五カ月分廃棄したことも明らかになっている。この問題に守屋氏がかかわっているのかいないのか、解明が必要だ。

 国会では新テロ対策特措法の法案審議が週明けから始まるが、法案の実質審議に入る前に、まずこれらの疑惑について徹底的に事実関係を明らかにすべきである。

 防衛省は軍事力を発動する組織であり、組織運営にあたっては、いささかもやましいことや疑惑があってはならない。あいまいなまま幕引きを図るのは危険だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071021.html#no_2

 

琉球新報 社説

前事務次官に疑惑 真相の究明こそ第一

 「最も政治家らしい官僚」と称された守屋武昌防衛省前事務次官に、自衛隊倫理規定違反の疑いが出てきた。特別背任などの容疑で東京地検特捜部が防衛・航空分野の専門商社「山田洋行」の元専務や関係者から事情聴取を進めているが、元専務と在職中の守屋前事務次官がゴルフやマージャン、会食を頻繁に繰り返していたという。

 石破茂防衛相は、この問題に関し「防衛省全体の信用にかかわること。先月まで事務方トップにいた方なので、必要な確認はする」と表明している。調査の結果、事実が判明すれば同省としても国民に納得のいく説明、対処が求められる。折しも、国会では対テロ新法案の審議入りを週明けに控えており、それへの影響も懸念される。決してあいまいに済まされるべきではない。

 これまで明らかになった事実を見ると、守屋前次官は元専務と最近まで、100回以上ゴルフをしていた。また、マージャンや会食も何度もあった。プレーは山田洋行の関連会社が経営するゴルフ場など。多いときには毎週のようにあり、前次官の妻も同席していたこともある。山田洋行側が料金を負担したこともあったという。

 自衛隊倫理規定は、自衛隊員が利害関係者から供応接待を受けたり、費用を相手持ちでゴルフをしたりした場合、減給または戒告処分となる。自費でも一緒にゴルフしただけで戒告処分の対象だ。今回のケースはこの規定に違反するのは明白だ。

 守屋前次官は8月末、接待疑惑を記者会見で問われて「職権を特定の人のために行使したことはない」と答えている。しかし、倫理規定は(職権の行使の有無を問わず)利害関係者と、一緒にプレーしただけで処分の対象としているのだ。苦しい言い訳にすぎない。ましてや、「職権の行使」とは論外。だとすると、規定違反どころか、汚職になりかねない。

 確かに、前次官はすでに退職しており処分には異論もあろう。だが、捜査当局とは別に防衛省には事実を究明する責務がある。国民の信頼を回復する唯一の道だ。

(10/21 10:37)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28259-storytopic-11.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 1面

落下傘訓練に抗議決議/沖縄市議会

 【沖縄】在沖米空軍によるパラシュート降下訓練が県や周辺自治体の中止要請を押し切り、嘉手納基地で十九日に強行された問題で、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は二十二日、臨時会を開き、「市民の平穏な生活を守る立場から、断じて容認できない」とする抗議決議と意見書両案を全会一致で可決した。抗議文のあて先は駐日米国大使、在日米軍司令官ら。

 決議では「パラシュート訓練が嘉手納基地で恒常化されることは明白であり遺憾だ」と批判。今回の訓練で隊員二人が着地点である滑走路内の緑地帯から外れ、そのうち一人が基地内の林の中に降下したことを挙げた上で「嘉手納基地周辺は住宅街や交通量も多いことから、一歩間違えば事故を誘発することも予測される」と指摘。伊江島補助飛行場での同訓練移転が合意された一九九六年のSACO(日米特別行動委員会)最終報告の厳守を強く求めている。

 また、同議会は同日午前の臨時会で、米軍嘉手納基地内に住む米軍人の息子(21)による強姦致傷事件について「人権を踏みにじる非人道的な犯行は断じて許されるものではない」とする抗議決議と意見書の両案を同じく全会一致で可決した。被害者への謝罪と補償、米軍人・軍属・家族への綱紀粛正と教育の徹底など実効ある再発防止策を求めている。

 抗議決議のあて先は駐日米国大使や在日米軍司令官ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_01.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 5面

真実宿る 戦世の傷跡/沖縄戦特別展

 【糸満】県平和祈念資料館(宮城智子館長)の第八回特別企画展「沖縄戦と戦争遺跡―戦世(イクサユー)の真実を伝えるために」が二十一日、糸満市摩文仁の同資料館で始まった。ガマや壕など県内に残された代表的な戦争遺跡百五十カ所を、写真パネルや遺品を交えて紹介している。十二月二十四日まで。

 戦争体験者が少なくなる中、沖縄戦を後世に正しく伝えるため、戦争遺跡の保存活用の重要性を考えるのが狙い。

 戦争遺跡の分布図とともに、さびた機関銃や鉄かぶと、手榴弾、火炎放射器や病院壕から出土した手術器具などの実物約二百点を紹介。沖縄戦最後の激戦地・摩文仁周辺については、住民の避難場所などを示した立体模型を展示した。

 南部戦線で捕虜となり、本島北部の収容所で死亡した糸満出身者の墓碑、共同墓地に埋葬されていた入れ歯や鑑札、指輪などの遺品も。来場者は、ガラス越しに展示物を熱心にのぞき込み、住民を巻き込んだ地上戦の悲惨さに思いをはせた。

 宮城館長は「戦争遺跡は、戦争体験者の証言と一体となって沖縄戦の実相を伝えていく歴史的史料として極めて重要だ。企画展を通して戦争遺跡の重要性と平和の尊さを考える機会にしてほしい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_02.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 5面

新たに4団体参加/検定撤回はがき運動

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除した文部科学省の高校歴史教科書検定問題で、県婦人連合会、県老人クラブ連合会、県遺族連合会、元女子学徒隊でつくる「青春を語る会」は二十二日、検定意見撤回の意思を福田康夫首相や渡海紀三朗文部科学相に寄せ書きやはがきで送る運動に参加することを発表した。

 すでに運動に取り組んでいる県子ども会連絡協議会に続くもので、各団体の代表が同日午前、県議会で会見し、県民への協力を呼び掛けた。

 今後、五団体以外の団体にも協力を呼び掛けていく。

 沖子連の玉寄哲永会長は「検定意見を撤回しない政府に対し、『有力な審判者は県民の声である』との呼び掛けで県民運動を展開したい」と協力を呼び掛けた。沖婦連の小渡ハル子会長は「なぜ、真実を真実として伝えようとしないのか。県民一人一人がはがきを送り、声を届けよう」と訴えた。五団体は街頭で県民に寄せ書きを募る考えも示した。問い合わせは沖子連、電話098(941)4766。または沖婦連、電話098(884)5333。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_03.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 5面

全駐労、強く反発/軍雇用員の手当減提案

 日米両政府が交渉している在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で、日本側が日本人労働者向けの諸手当約百億円の削減を提案していることについて、全駐労中央本部の照屋恒夫書記長は二十二日、「米軍再編に掛かる費用を、労働者の手当を削って捻出するのは、労働者をないがしろにした行為だ」と、強い不快感を示した。

 同本部では二十三日、全国の各支部委員長らを集め、削減案拒否の姿勢で防衛省との団体交渉に臨む。

 同本部によると、二〇〇六年四月一日現在の従業員の平均給与は月額二十五万四千三百三十四円。国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」だけでも、削減額全体の67%に当たり、一人当たり月額約二万五千円、年間約三十万円が削られることになる。

 照屋書記長は「『公務員にない手当』だといわれるが、その逆もあり、実際の給料は公務員よりも低い。財政難という理由一つで、手当を削り、しわ寄せを労働者に押し付けるやり方はいかがなものか」と、強く反発している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_04.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 5面

きょうから即応訓練/嘉手納基地 あすGBS使用

 【嘉手納】嘉手納基地の米空軍第一八航空団は二十二日から二十六日にかけ、同基地で、GBS(地上爆発模擬装置)やサイレン音、英語の拡声器放送などを伴う即応訓練を実施する。GBSを用いた訓練は、二十三日から行う予定。

 同基地報道部が二十二日午前発表した。

 報道部によると、「地元へ影響が生じないよう、GBSや発煙装置の設置場所は事前に基地幹部の承認を得る」などとしている。沖縄防衛局から連絡を受けた嘉手納町は同日午前、「地域住民に影響が及ばないよう配慮」するよう同局に求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_05.html

 

2007年10月23日(火) 朝刊 1面

防衛局、住民意見を提出 「普天間」アセス

知事きょう抗議表明

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局は二十二日、方法書に対する住民らの意見の概要を県、名護市、宜野座村に送付した。県は同日から六十日以内の十二月二十一日までに知事意見の提出を迫られる。仲井真弘多知事は二十三日に記者会見し、地元との協議が整わない段階でアセス手続きを進める国への抗議を表明した上で、方法書の受け取り保留を解除し、名護市が求める「滑走路の沖合移動」を知事意見で要求する考えを打ち出す見通しだ。

 防衛省の辰己昌良地方協力企画課長らが二十二日午後三時、県庁に上原昭知事公室長を訪ねた。約二十分間の協議後、辰己課長は「その(意見書概要提出の)ために来たことは認める。(置いていったという)議論に意味はない。届けたら終わり。名護市と宜野座村も含めて郵送する」と話した。

 上原公室長は「決裁印のないコピー文書を事前説明ということで持ってきた」と説明、同日段階では正式な受理ではないとの考えを示したが、午後五時ごろ、沖縄防衛局職員があらためて県庁を訪れ、決裁印の付いた概要書を提出した。

 仲井真弘多知事は二十二日夕、記者団に対し「あすコメントすることになっている」とのみ繰り返した。県は、郵送分の概要書が県に到着する二十三日に知事の声明を正式表明する方針だ。

 沖縄防衛局は、郵送分を合わせて計四百八十七通の住民らの意見を受理。意見概要は、方法書の確定前に実施している現況調査(事前調査)の中止要求など三百五十七件にまとめられている。アセス手続きでは、意見概要の受理後、県は名護市など関係市町村長の意見を聴取した上で知事意見を六十日以内(国のアセス法は九十日以内)に沖縄防衛局に提出する。県アセス条例は、知事意見をまとめるために必要があれば県環境影響評価審査会の意見を聴くことができると規定している。同局は知事意見などを踏まえて、方法書を確定する。


名護市長も意見提出へ


 【名護】防衛省は二十二日、公告縦覧したアセス方法書への住民らの意見をまとめた概要書を名護市にも提出した。午後六時ごろ、沖縄防衛局職員が市役所基地対策室に提出した。

 島袋吉和名護市長は「(意見概要が)提出されたということは(知事意見の提出への)カウントダウンだ。意見を言わないわけにはいかない」と述べ、知事意見の材料となる市長意見を出す考えを示した。二十三日に今後の対応に関するコメントを発表する。

 これに先立ち同日午後、末松文信副市長や玉城政光政策推進部長らが県庁に仲里全輝副知事らを訪ね、今後の対応を協議した。県と名護市で歩調を合わせて対応することを確認したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231300_01.html

 

2007年10月23日(火) 朝刊 25面 

意見大半 撤回を要求/「普天間」アセス

 米軍普天間飛行場の代替施設建設をめぐり、沖縄防衛局の環境影響評価(アセスメント)方法書に対する住民の意見が二十二日、公表された。「法の形骸化であり撤回すべき」など、五百通近くのほぼすべてが手続きのやり直しを求め、調査の非科学性の指摘も目立った。県は今後、手続き保留の解除と知事意見提出に動くが、専門家は「違法なアセスを追認してはならない」とくぎを刺した。

 「法の手順を逆転させ、自然を破壊する違法な環境現況調査は中止すべき」

 「大気質、生態系など評価項目の選定理由が抽象的で意味不明」

 意見を提出したWWF(世界自然保護基金)ジャパンの花輪伸一さんは「事前調査で環境を攪乱した後のアセスは、科学的でない。県の意向を無視し、市民参加も形骸化させた」と批判する。

 「飛行機の種類や数量も示さずに予測するのは不可能」

 「軍港を建設するのか明らかにすべき」

 基地のアセスに、秘密主義の壁が立ちふさがる。沖縄大学学長の桜井国俊教授(環境学)も意見書を出し、「防衛省は米軍が基地をどう使うか、情報提供させると確約すべきだ。そうでなければ、手続きはただの免罪符になる」と強調する。

 県が知事意見を提出することについて、「建設予定地が県の自然環境保全指針でランク1に指定されていることが、今回の方法書では抜け落ちている。アセス審査会を開いて専門家の意見を聞くべきだ」と求めた。

 「ジュゴンの絶滅危惧種指定を記述しないなど客観性に欠け、生息状態を無視している」

 「調査は最も海草藻場の多様性が高いエリアが空白になっている」

 環境の専門的な立場からも意見が相次いだ。グリーンピース・ジャパンの星川淳事務局長は「本島東海岸の命の多様さは奇跡。海洋生態系の価値を再評価してほしい」と訴える。アセス手続きを認めない立場から意見を出さず、代わりに国内外から三万人の署名を集めた。「世界の目が注がれている。事業中止を選択肢に含め、アセスをやり直すべきだ」と求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231300_02.html

 

2007年10月23日(火) 朝刊 24面

「水と緑 アフガン救う」/ペシャワール会 中村医師

 パキスタンやアフガニスタンで医療活動などを行う非政府組織「ペシャワール会」(事務局・福岡市)の現地代表、中村哲医師が二十二日、「いのちを救え!武器なき国際貢献?アフガニスタンの医療の現場から?」をテーマに那覇市民会館で講演。「平和を達成するのは軍事力ではなく、地域に溶け込んだ国際貢献だ」と訴えた。沖縄ベンチャークラブが主催、うないフェスティバル実行委などが共催した。

 中村医師は、一九八四年にパキスタンで医療活動を始めた。アフガニスタンでは二〇〇〇年から井戸や水路を整備し、相次ぐ内戦や干ばつなどで飢えに苦しむ六百万人の農民の飲料水や農業用水の確保に取り組んだ。

 講演では干ばつで砂漠化が進む農地や水源確保事業の進む状況を写真や地図で紹介。約九百人の聴衆に、アフガニスタンで暮らす住民の過酷な現実を伝えた。

 「ペシャワール会」は国境紛争の影響で、十一月に診療拠点をパキスタンからアフガニスタンに移す。中村医師は「移転後も、現地に土着化して医療や水源確保事業を続ける会の本質は変わらない。両国で半永久的に活動したい」と意気込んだ。

 その上で、「二十三年間、地元の人から襲撃されたことは一度もなく、武器さえあれば身を守れるという『妄想』から自由になれた。アフガニスタンを救うのは水と緑だ」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月23日朝刊)

[思いやり予算]

原則踏まえた見直しを

 思いやり予算をめぐる日米協議が難航している。

 光熱水料などの大幅増額を要求する米側に対し、日本側は難色を示している。基地従業員の手当削減案を示した日本側に対しては、米側が難色を示すという展開だ。

 平たく言えば、総額を減らしたい日本側と増額を図りたい米側が、お互いの主張をぶつけ、妥協点をどこに求めるかで腹の探り合いを演じている、ということだろう。

 それにしてもこの構図は分かりにくい。一体、誰が誰の味方なのか。

 在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)について定めた日米特別協定は来年三月末で期限切れを迎える。現在、日米の間で進められているのは、新協定案づくりのための交渉だ。

 思いやり予算は、地位協定で日本政府の負担が義務付けられていないにもかかわらず、日米同盟の安定維持のために支出しているもので、(1)施設整備費(2)従業員の労務費(3)在日米軍の光熱水料(4)訓練移転費、に大別される。

 特別協定の対象になっているのは、労務費、光熱水料、訓練移転費の三項目。政府は今回初めて、労務費の削減案を打ち出した。

 日本側が負担している基本給、諸手当などの労務費のうち、国家公務員の基本給に10%を上乗せしている「格差給」や「語学手当」などを削減する意向だ。

 財政事情が厳しく国民に負担を転嫁するような施策が相次いでいる中で、思いやり予算だけが聖域であっていいわけがない。

 日本の「ホスト・ネーション・サポート」(駐留国受け入れ支援)は世界の中でも突出しており、住民感情からしても見直しは当然である。

 ただ、「格差給」を削減しても米側が補てんする必要がないから「日米同盟に傷がつかない」(政府高官)という姿勢は、あまりにも安易に過ぎないか。

 「格差給」という名の手当がほんとに必要で妥当な手当かどうかについては、確かに議論の余地がある。

 その一方で、長期にわたって「格差給」が支給され、生活給として固定化されてきた事実も重い。

 「格差給」を問題にするなら、思いやり予算削減の文脈ではなく、もっと別の場で議論し、国民の理解が得られるような結論をだした方がいい。

 政府は、米軍のグアム移転経費を肩代わりすることになっているが、その額は膨大である。むしろ今こそ、地位協定で定められた米軍負担の原則に立ち返って、負担の見直しを進めるべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071023.html#no_1

 

琉球新報 社説

海自給油量隠し 文民統制に危うさないか

 文民統制(シビリアンコントロール)は、今のままで本当に大丈夫なのか。国民にそんな疑念を抱かせかねない問題が新たに浮上した。

 海上自衛隊の補給艦がインド洋で米補給艦に給油した量が20万ガロンではなく、実際は80万ガロンだったと訂正された問題について、海自は約4年前から間違いに気付いていたことが判明した。事実を掌握していたにもかかわらず、当時の石破茂防衛庁長官(現防衛相)らに報告されていなかったというのだから、事は重大である。

 政府・与党は、23日の衆院本会議で海自の給油活動継続のための新テロ対策特別措置法案について趣旨説明と質疑を実施し、24日から衆院テロ防止特別委員会で本格的に質疑をスタートさせたい意向である。

 しかし、防衛省をめぐって問題が多すぎる。今回、判明した給油量の実態隠しのほか、給油燃料のイラク戦への転用問題、航海日誌の破棄問題、装備調達関係の業者とのゴルフが浮上している守屋武昌前防衛事務次官の癒着疑惑など次々に明らかになっている。

 問題が頻発するのは、防衛省の基本的な体質と関係しているのではないか。そんな疑いの目を向けられても仕方ない。

 いずれにせよ、看過できない問題ばかりだ。新法案の審議に入る前にやるべきことは、まずこれら疑惑の解明が先決だ。

 防衛省が提出した報告書によると、海自が給油量の誤りを発見したのは、2003年5月9日だった。当時の福田康夫官房長官が給油量を発表した日である。

 当然、ミスは速やかに訂正して報告するのが筋である。だが海上幕僚監部の防衛課長(当時)らはそうはしなかった。重要事項だというのに、認識の欠如ぶりには目を覆いたくなる。

 4年前の実態を知らされた福田首相は「とんでもないことをしてくれる」と記者団に述べたが、そのとんでもないことが実際に行われていたのだ。

 文民統制が危うくなるようでは新法の前提が揺らぐ。再発防止策を含め防衛省の改革を急ぐべきだ。

(10/23 9:42)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28305-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

基地労務費削減 削るべき費用はほかにある

 今秋から本格化している日米両政府の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で、日本側が在日米軍基地で働く日本人労働者向けの諸手当の削減を提案していることが分かった。

 削減理由は財政難だ。政府は協議を年内に決着させ、新協定案に基づく経費を来年度予算案に計上するシナリオを描く。日本人労働者でつくる全駐留軍労働組合と既に交渉に入っているようだ。

 全駐労は県内の従業員が圧倒的に多い。提案に組合側は「米軍再編に資金がいるからと言って、労働者に負担を課せるのは言語同断。本末転倒」と反発、受け入れを拒否する姿勢を示している。

 諸手当が削られることは、働く者にとっては死活問題だ。諸手当を含む給与に基づいて収支の見通しを立て、その上でそれぞれの生活設計が成り立っている。

 財政問題を振りかざされ、政府提案をのむよう迫られて「そうですか。はい、分かりました」というわけにはいくまい。

 思いやり予算は、在日米軍の隊舎や家族住宅など施設整備を図る地位協定分と、基地従業員の労務費や米軍が使用する光熱水費などの特別協定分に分かれる。

 2007年度の思いやり予算総額は2173億円。うち約3分の2を労務費が占めている。政府は削減額を約100億円と設定、従業員に支給される「格差給」の廃止によって削減額の67%は達成できると踏んでいるようだ。

 そもそも削減幅にも無理がある。格差給は国家公務員の基本給に10%上乗せされている手当だが、これがなくなれば基本給は1割程度減ることになるからだ。

 政府が格差給を「時代遅れ」としてやり玉に上げるのに対し、組合側は「実際には基本給が高いわけではなく公務員の平均給与より低い」と異を唱える。

 削減提案の背景には、締結協議の中で米側が電気、ガス、水道代などの光熱水費の大幅増額を求めていることがある。光熱水費などと違い、諸手当削減なら米側には補てんの必要がない。痛みが伴わないから受け入れられる、そんな理屈だ。

 海上自衛隊によるインド洋での給油活動の一時中断が危ぶまれる状況を念頭に、日米同盟に傷がつくことを回避する狙いもある。

 しかし、それだと一種の「弱い者いじめ」にならないか。合理性に乏しく、説得力を欠くと言わざるを得ない。

 思いやり予算については、娯楽施設の整備など米側の要求通りに手厚く振る舞い、国税の無駄遣いと再三、指摘されてきた。そこに手を付けずに削りやすいところに踏み込むやり方は、安易すぎないか。

(10/23 9:43)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28306-storytopic-11.html

 

2007年10月23日(火) 夕刊 1面

米軍落下傘訓練 嘉手納議会、抗議決議

 【嘉手納】在沖米空軍が県や地元の反対を押し切り、米軍嘉手納基地でパラシュート降下訓練を強行した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は二十三日午前、臨時会を開き、「例外的措置を認めれば、米軍の都合が優先され、訓練が恒常化する」などとして、米軍の姿勢を批判。同基地での降下訓練に反対する抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。また、北谷町議会は同日午前、基地対策特別委員会(照屋正治委員長)を開き、二十五日の臨時会で、パラシュート降下訓練と強姦致傷事件に対する抗議決議と意見書を提出することを決めた。

 嘉手納町議会の決議、意見書は「例外を盾に訓練が恒常する意図がうかがえる」として、同訓練を伊江島補助飛行場で実施することで決まった一九九六年のSACO(日米特別行動委員会)合意の形骸化を指摘。今回の訓練で隊員二人が着地点から大きく外れ、うち一人が基地内の林の中に降下したことについて「周辺住民に危険があることが証明された」と糾弾した。

 今年一月にも周辺自治体、議会が反対したにもかかわらず、同訓練を強行した上、わずか九カ月で再び実施した米軍について「地域住民の声を無視した姿勢、行為であり激しい怒りをもって抗議する」と訴え、今後一切、同基地でパラシュート降下訓練を行わないよう求めている。

 あて先は同基地司令官、駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米国総領事、総理大臣、防衛相、外相、沖縄防衛局長ら。また、嘉手納基地内に住む米軍人の息子による強姦致傷事件についても「女性の人権を踏みにじる非人道的で、悪質な犯行は断じて許されるものではない」とする抗議決議、意見書の両案について全会一致で可決。被害者への謝罪や補償、再発防止の徹底を求めている。あて先は同基地司令官、駐日米国大使、在沖米国総領事ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231700_01.html

 

2007年10月23日(火) 夕刊 1面

「北部振興を推進」/岸田沖縄相が所信表明

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十三日午前の衆院沖縄・北方特別委員会で就任後初めて所信表明し、本年度の配分が凍結されている北部振興事業について「地元の要望を踏まえながら着実に推進する」と予算執行に意欲を示した。

 教科書検定意見撤回を求める県民大会が開かれたことにも言及。「県民の深い思いをしっかり受け止めながら沖縄の振興に精いっぱい努力する」と述べた上で、「多くの方々が参加した。沖縄戦で悲しいつらい経験をされたことへの県民の深い思いを示すものだ」と十一万人余が参加した重みを強調した。

 沖縄の自立型経済の構築は「現場主義」の考えで、観光と情報技術(IT)関連産業の振興に重点的に取り組む考えを示した。観光振興では「良質な観光リゾート地の形成を進める」と質の重視を強調。IT分野では「IT津梁パーク構想などを進め、アジア最先端の高度情報通信産業の集積を目指す」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231700_02.html

 

2007年10月23日(火) 夕刊 4面

教科書検定の撤回求める/国際反戦デー集会に300人

 国際反戦デー沖縄県集会(主催・沖縄平和運動センター)が二十二日、那覇市の県民広場で開かれ、労組や市民団体、政党関係者など約三百人が参加した。二十三日に衆院で審議入りする新テロ対策特別措置法案の廃止や、教科書検定意見の撤回を求めた。

 大浜敏夫副議長は「私たち労働者、市民の連帯で戦争被害を終わらせよう」と訴え、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「教科書の改ざんを撤回させるまで、一緒に行動していこう」と呼び掛けた。集会後、参加者が国際通りをデモ行進し、「テロ特措法反対」などのシュプレヒコールを繰り返した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231700_04.html