うるま議会抗議決議/原潜放射能漏れ 「新基地反対」に難色/沖縄相、知事・議長と会談 宜野湾市大謝名、民間地の鉄塔撤去要請/防衛局 米軍弾薬船爆発調査資料を発見/県公文書館が公開 うるま市長、寄港中止要求/原潜放射能漏れ ヘリ墜落4年、危険との同居に終止符を など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(8月9日から13日)

沖縄タイムス 社説(2008年8月9日朝刊)

[原潜放射能漏れ]

あろうことか二年間も


 微量とはいえ二年間も放射能漏れに気付かないなんて、こんなずさん極まりない話があるだろうか。

 米海軍の攻撃型原子力潜水艦ヒューストンから、微量の放射性物質を含む冷却水が、二〇〇六年六月から〇八年七月まで、二年一カ月も漏れ続けていたというのだ。

 放射能漏れのあった二年一カ月の間にヒューストンは、長崎県・佐世保基地に五回(十六日間)、神奈川県・横須賀基地に一回(五日間)、うるま市のホワイトビーチにも五回(九日間)寄港した。

 それぞれの寄港先で放射能漏れを起こしていたというのだから、開いた口がふさがらない。原潜からの放射能漏れは過去に何度かあったが、今回のような事例は聞いたことがない。前代未聞の不祥事だ。

 ホワイトビーチへの五回の寄港の際、放出された放射能の量は、合計六・三キロベクレル未満。米側は「人体や環境への影響は全くない」と説明している。

 「日本へのすべての寄港の間に漏れた放射能の量をすべて合わせても、一般家庭用煙探知機に含まれる放射性物質の量よりも少ない」

 私たちの身の周りには天然の放射性物質もあり、日常的に微量の放射線を浴びているのは確かだ。妊婦などは注意が必要である。

 しかし、原子炉を抱える原潜から、微量とはいえ放射性物質を含む冷却水が漏れ続け、それとも知らずに日本やサイパン、マレーシアなどに寄港していたことは、それ自体、重大なことだ。安全を強調するだけの米側の説明は納得できるものではない。

 なぜ冷却水が漏れたのか。二年間も気付かなかったのは管理態勢に問題があったからではないのか。

 放射能漏れが始まったという具体的な始期はどのように特定されたのか。公表されていない類似のケースが過去になかったのかどうか。

 次々に疑問がわいてくる。

 ホワイトビーチでは一九八〇年三月、原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチの寄港で普段より高い放射能が検出され、漁業者が風評被害を受けた。今年に入ってホワイトビーチへの原潜寄港が相次いでいる。現時点ですでに、過去最多だった昨年を上回る二十六回を記録しているが、その理由については、地元に何の説明もない。

 国民の目の届かないところで起きた放射能漏れに、住民の不安は募る一方であり、米軍は速やかに原因を究明し、公表する義務がある。

 外務省の対応にも緊張感が感じられない。

 佐世保基地での放射能漏れの事実が米側から日本政府に伝えられたのは一日である。だが、外務省は米国のテレビ報道で明らかになるまで佐世保市に連絡していなかった。

 ことの重大性に対する認識が完全に欠如しているというほかない。

 住民の不安を解消するためには、過去の寄港事例の総点検、ホワイトビーチ周辺海域の環境調査が必要だ。寄港が急増しているのはなぜなのか、情報開示にも、もっと前向きに取り組むべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080809.html#no_1

 

琉球新報 社説    

放射能漏れ 危険な原潜寄港の禁止を 2008年8月9日

 2年間も放射能を垂れ流し、その原因も不明。公表するときは「微量で人体を危険にさらすものではない」と釈明する。そんな話を誰が信じるであろうか。

 米原子力潜水艦「ヒューストン」が、放射性物質を含む冷却水漏えい事故を起こしながら、沖縄、長崎、神奈川と寄港を繰り返していた。

 しかも、その期間が2006年6月から08年7月と長期間だ。

 漏れた原因は不明。なぜ2年間も気付かず放射能をまき散らしてきたのか。

 人類のみならず地球環境全体に大きな影響を与える原子力、放射性物質を、最も多く保有し、活用、移動する米軍である。

 米軍の原子力管理、放射能漏れ時の危機管理能力のあまりのずさんさに、危機感を通り越し、恐怖を感じざるを得ない。

 今回も含め対米軍問題では、いつもながら、日本政府・外務省の対応には、がっかりさせられる。

 政府は、放射能漏れを起こす原潜を2年間もチェックできず、この間、11回、延べ30日間も国内に寄港、停泊させている。

 原潜寄港のたびに、停泊水域や原潜近くのモニタリング調査を実施しながら、漏れをチェックできなかった文部科学省の放射能チェック態勢のずさんさにもあきれる。

 原潜寄港反対の世論を、寄港時モニタリングの徹底を条件に容認した日本政府だ。

 放射能の漏れは「ない」が大前提である。「微量だから」は言い訳にはならない。「漏れ」が出た時点で、国民の安全を最優先するならば、政府は当然、原潜の寄港禁止措置を取るべきである。

 沖縄県の対応も甘い。2年間も放射能を垂れ流す原潜を寄港させ、県民を危険にさらしながら原因究明と安全対策、再発防止を求める程度で事を済ます。

 なぜ原潜の寄港禁止を求めないのか。県民の命や安全より「日米安保」を優先する。そんな姿勢が垣間見える。

 しかも政府への要請も電話で東京の外務省北米局長へである。沖縄に常駐している沖縄大使、沖縄事務所の出番は、ここにもない。

 放射能漏れに対するケビン・メア在沖米総領事の7日の説明も県民のみならず国民を愚弄(ぐろう)している。

 2年間も放射能を垂れ流し続けた果てに日本に通知しながら「米海軍の安全基準が、機能しているということを示すものだ」と、記者会見で豪語している。

 沖縄への米原潜寄港はことし26回を数え、過去40年で最多となっているのはなぜか。

 「問題は放射能漏れが隠されていたこと。これからも隠される可能性がある」との指摘もある。再発防止には原潜寄港禁止しかない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135033-storytopic-11.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年8月10日朝刊)

[原爆症認定]

基準の再見直しが急務


 二歳で被爆して十年後に白血病を発症し、病が治ることを信じて包み紙などで鶴を折り続け、「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さんの話はよく知られている。

 歌とスポーツが大好きで、小学校に入学後は病気で学校を休むこともなかった禎子さんは小学六年で白血病と診断され、入院から八カ月で十二歳の生涯を終える。

 あまりにはかなく、悲しい少女の物語は原爆の残酷さと、後遺症の恐ろしさをあらためて教えてくれる。

 広島、長崎への原爆投下から六十三年になる。なのに迫り来る死の恐怖に耐えながら、亡くなる数日前まで鶴を折り続けた少女の思いを、この国はまだ受け止めきれていないようだ。

 福田康夫首相は、各地で集団訴訟が続く原爆症認定問題について、国の審査委員に司法関係者を増員するなど、「被爆者が納得できる認定作業を進める」との考えを明らかにしたが、被爆者が強く求めている認定基準見直しについては具体策を示していない。

 町村信孝官房長官に至っては、六日の会見で「(認定基準は)大議論をして改正した。今すぐ見直すという議論は果たしてあるのか。ちょっと疑問だ」と述べている。

 基準見直しに否定的というしかない。これでは、原爆症の認定問題は解決できまい。

 首相は平均年齢が七十五歳を超え、今なお深刻な後遺症に悩む被爆者の救済を最優先に考え、一刻も早く認定基準を見直すべきである。

 一連の原爆症認定訴訟で、行政は「連敗」を続けている。

 海外に住む被爆者が、被爆者援護法に基づく健康管理手当の支給を求めた在外被爆者訴訟では、広島高裁が地方自治法上の時効(五年)を理由に、手当を支払わなかった広島県を「時効主張は権利の乱用で、時効適用は著しく正義に反する」と指弾。在外被爆者勝訴の判決を言い渡し、二〇〇七年二月に最高裁で確定している。

 厚生労働省は今年三月に「科学的知見」重視だった認定基準を見直し、「被爆者救済の立場」から一定の条件を満たせば積極的に認定する方針に転換した。

 しかし、その後の原爆症認定訴訟では、申請疾病が新基準で積極認定の対象となっていなかった肝機能障害が原爆症と認定されてもいる。

 「積極認定」と言いながら、依然として消極的な行政の対応を裁判所が厳しく指摘したと言わざるを得ない。

 広島市の秋葉忠利市長は、平和宣言で原爆症認定について、こう述べている。「高齢化した被爆者の実態に即した温かい援護策の充実を要請します」。温かい援護策は被爆者の心情に寄り添うことから始まる。

 大議論をしたからすぐに基準見直しはできない、あるいは裁判所の事実認定を条件に慰謝料を支払う、などといった政治、行政の論理だけで組み立てた対策では被爆者は救えないのではないか。

 六十年以上も原爆症で苦しんできた被爆者を救済するためにも、福田首相は「政治決断」を急ぐべきだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080810.html#no_1

 

2008年8月11日(月) 朝刊 2面

沖縄の復興・発展に意欲/林沖縄相

 【糸満】林幹雄沖縄担当相は十日、就任後初めて沖縄入りし、糸満市摩文仁の国立戦没者墓苑を参拝し献花、平和の礎や県平和祈念資料館などを視察した。視察後、「戦争は悲惨で、絶対に起こしてはいけない。沖縄の復興、発展にしっかりと取り組まないといけないという決意を新たにした」と述べた。

 沖縄の米軍基地問題について林沖縄相は「(在日米軍基地の)75%が集中しており、縮小・負担軽減に一生懸命、取り組まなければいけないと感じている」と語った。

 林沖縄相は、県内外やアジア諸国の中高生らが参加している「アジア青年の家」事業(主催・内閣府)が行われている県立糸満青年の家も訪問。学生たちに拍手で迎えられ、「環境という国境を越えた問題を議論している皆さんの中から、ノーベル賞を取るような人材が出ることを期待している。合宿を通して沖縄の魅力を存分に味わい、帰ってほしい」と激励した。

 学生を代表して、宮城由貴さん=開邦高一年=「私たち参加者は環境問題のスペシャリストから多くのことを学び、毎日が驚きの連続です」と合宿の様子を報告。「環境問題についてアジア各国の参加者から現地の実情を聞き、多くのことを学びたい」と抱負を述べた。

 林沖縄相は十一日、仲井真弘多知事や、市町村、地域団体の代表とそれぞれ会談し、普天間飛行場移設問題や沖縄振興策などをめぐり意見交換する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808111300_05.html

 

2008年8月11日(月) 朝刊 21面

伊江の180人 感謝の訪問/渡嘉敷・座間味

 【伊江】伊江村民約百八十人は十日、沖縄戦で捕虜となった村民が、米軍により強制移住させられた渡嘉敷、座間味の両村を訪れ、厳しい時代を共に過ごした移住先の人々に感謝の意を伝えた。戦争体験者の高齢化が進む中、平和を願う島同士の親交を次世代につなげようと伊江村村制百周年事業の一環として企画された。

 一九四五年五月、伊江村の住民は渡嘉敷村の渡嘉敷島に約千七百人、座間味村の慶留間島に約四百人が強制移住させられた。両島の住民がまだ山中で生活していたころで、終戦後集落に戻ってからは、共に生活したという。

 渡嘉敷島に渡った与那城彦興さん(78)は「苦しかった当時のことは思い出したくないが、両村の住民にはお世話になった。気持ちを伝えるためにきた」と語る。

 伊江村は一九九六年、両島に「伊江村民収容地跡記念碑」を建立しており、村挙げての訪問はそれ以来十二年ぶり。フェリーを貸し切り、半日かけて二カ所を訪れた。

 両島で式典が行われ、それぞれ約四十人の住民が集まり、再会に顔をほころばせた。大城勝正伊江村長は「これからも交流が続いてほしい」とあいさつした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808111300_10.html

 

2008年8月11日(月) 夕刊 1面

うるま議会抗議決議/原潜放射能漏れ

 【うるま】米原子力潜水艦「ヒューストン」が、うるま市勝連のホワイトビーチに寄港した際、微量の放射能漏れを起こしていた問題で、うるま市議会(島袋俊夫議長)は十一日午前、臨時会を開き、関係機関に事故の原因究明と詳細な説明責任を求める抗議決議と意見書案を全会一致で可決した。

 抗議決議は米国国防長官、駐日米国大使、在日米軍司令官など、意見書は衆参両院議長、首相、外相、沖縄県知事などあて。

 抗議決議では「ヒューストン」の冷却水漏れが二〇〇六年六月に始まったとの公表について、同期間内にうるま市勝連のホワイトビーチに同原潜が五回寄港している事実を問題視。

 米海軍の日本政府への事故の報告遅れや、外務省の公表の遅れを「日米両政府の住民軽視と言わざるを得ない」と糾弾している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808111700_01.html

 

2008年8月11日(月) 夕刊 1面

「新基地反対」に難色/沖縄相、知事・議長と会談

 就任後初めて来県した林幹雄沖縄相は十一日午前、県庁で仲井真弘多知事と会談した。仲井真知事は、原油価格の高騰に関する緊急対策や米軍普天間飛行場代替施設の沖合移動の実現などについて要請した。

 会談には高嶺善伸議長も同席。六月定例会で野党の賛成多数で可決した「名護市辺野古沿岸域への新基地建設反対」、「後期高齢者医療制度の廃止」などを求めた。林沖縄相は会談後、新基地建設反対について「それは難しい」と述べ、県議会決議の実現に否定的な姿勢を示した。

 仲井真知事は原油高騰について「沖縄は島々で成り立っており、あらゆる面に影響を及ぼしている。医療などユニバーサルサービスの実現が難しい」として、支援を求めた。

 また林沖縄相は、那覇市内のホテルで県内主要経済団体代表らと懇談。経済団体からは、原油や原材料高騰への国の支援策を求める声が相次いだ。

 林沖縄相は「皆さんの意見を沖縄振興に役立たせていただきたい」と述べた。

 県経済団体会議議長の知念榮治県経営者協会会長は(1)那覇空港の滑走路拡張(2)科学技術大学院大学開学へのさらなる支援―などを求めた。

 JA沖縄中央会の赤嶺勇会長は、WTO農業交渉で砂糖の重要品目への位置付けを求め、同時に国内対策の充実を要求した。このほか、公共工事の県内企業への優先発注などの要望が出された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808111700_02.html

 

2008年8月11日(月) 夕刊 5面

先輩 安らかに/阿嘉島沖米艦船爆発事故50周忌

 【伊江】一九五八年に座間味村阿嘉島沖で起きた米艦船爆発事故に巻き込まれた伊江島のスクラップ回収船で、奇跡的に一人生き残った伊江村の長嶺勝俊さん(67)=当時十七歳=が十日、事故から五十年ぶりに阿嘉島を訪れた。「阿嘉という言葉を聞くのもつらい。でも生きているうちに現場で供養をしたいとずっと思っていた」。半世紀にわたり、胸に封印してきた記憶と向き合い、涙ながらに手を合わせた。(新垣晃視)

 五八年六月三十日、阿嘉島近くの海で、沈没した米軍の艦船から金属類を回収しようとした伊江島の船が、同艦に積まれていた爆弾の爆発に巻き込まれ、乗組員全十三人が死亡した。

 前日の二十九日、長嶺さんは島の先輩らと伊江島を出発し阿嘉島に到着した。三十日朝、全員で海に出る予定だったが、炊事係の女性が島に着いておらず、一番若い長嶺さんが「今日は炊事をしてほしい」と先輩に頼まれ、島に残り、助かったという。

 事故後、伊江島に戻ると、ラジオですでに惨事を知っている遺族たちが港で待っていた。「本当か」と尋ねる姿に、うなずくのがやっとだったという。長嶺さんはそれから海に出なくなった。

 その後、島内の基地で軍雇用員として働き、二男三女に恵まれた。

 伊江村は十日、戦後米軍により強制移住させられた渡嘉敷村と座間味村を村民約百八十人で訪問する行事を企画。長嶺さんは爆発事故で兄二人を失った同郷の亀里敏郎さん(65)と共に阿嘉島を訪ねることを決意した。亀里さんも事故以来、五十年ぶり。「長嶺さんと一緒だから決心がついた」と語った。

 二人は阿嘉島の岬で、先輩たちが好きだったというビールなどを供えた。「五十年間来られなくてごめん。これからも伊江島のみんなを見守っていてください」と、声を詰まらせながら語り、海に手を合わせた。

 訪問前は、不安で仕方がなかったという長嶺さん。「あの海に向かい供養ができて、少し胸のつかえが取れた気がします」。五十年間の苦しみが緩和したのか、帰りは、安堵の表情も浮かんだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808111700_03.html

 

2008年8月11日(月) 夕刊 4面

戦争への歯止め鈍化/アジアプレス野中章弘さん 沖大講座で指摘

 戦争とメディアの役割などについて考える第四百三十六回沖縄大学土曜教養講座「沖縄戦は終わらないPart2」が十日、那覇市の同大で開かれ、学生や一般の受講生ら約八十人が参加した。

 講師の一人でアジアプレスインターナショナル代表の野中章弘さんは、戦争を知らない学生が増えていることについて「歴史をきちんと教えない教育の問題。戦争の記憶が『風化』しているのではなく、戦争を学んだ記憶そのものがない」と指摘した。

 また、ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止騒動や、イラク戦争の死者数がほとんど知られていないことに触れ、「過去にあった沖縄戦だけでなく、今起きている戦争にも反応していない。戦争に傾斜するような動きに対する社会の歯止めが非常に弱くなっている」と危機感を示した。

 沖縄タイムス編集委員の謝花直美さんは、沖縄の新聞社は軍に加担した戦争報道の反省が出発点だったと説明。沖縄戦時に慶良間諸島で起きた「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書問題などについて、「平和を希求する沖縄の人たちの心をねじ曲げるような動きを許してはならない」と強調した。

 このほか講座では、同大の学生でつくる壕プロジェクトのメンバーが、戦時中に当時の島田叡知事や荒井退蔵県警察部長らが避難した那覇市の県庁・警察部壕の内部をスライドなどを使って紹介。

 終盤では、野中さんと謝花さんのほか、早稲田大学ジャーナリズム教育研究所長の花田達朗さん、ジャーナリストの岡留安則さんが加わり、フロアの質問に答える形で議論を進めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808111700_06.html

 

2008年8月12日(火) 朝刊 1面

民間地の鉄塔 撤去要請/防衛局

宜野湾市大謝名/米軍機の安全で

 【宜野湾】宜野湾市大謝名に設置された個人所有の高さ約四十メートルの電波塔に対し、沖縄防衛局が隣接する米軍普天間飛行場を離着陸する米軍機の事故防止を理由に、撤去を求めていたことが十一日、分かった。専門家によると、法律に違反しない建物に、米軍基地運用の妨げとなるとして国が撤去を求めるのは異例だという。

 電波塔は普天間飛行場滑走路の南側延長線上にあり、滑走路先端から約六百メートル離れている。地上四階建てのビルの屋上に設置され、建物と合わせた高さは地上約四十メートル。同市の建築確認、県景観形成条例の審査に合格。昨年四月に完成し、業務用無線の中継局として、複数の民間企業と使用契約を結ぶ予定だった。

 所有者によると沖縄防衛局は昨年五月、米軍機の事故防止を理由として撤去を要請。現在、両者は交渉中だが、所有者は「事故防止のためなら協力するが、中継局として運用しようとした矢先にストップがかかり、完成から一年以上放置したままの状態」と困惑している。

 防衛省は「基地外での強制的規制はなく、事故防止のため所有者に協力を求めた」と説明。米軍からの申し入れではなく、自発的に取った措置だという。

 航空軍事評論家の青木謙知氏は「米軍基地は国内法が適用されず、同市内では航空法による建造物の高さ規制は存在しないため、電波塔に法律上の問題はない。航空法に違反しない建造物の撤去を国が求めるのは珍しい」と話した。

 米軍が定めたマスタープランのクリアゾーン内に、普天間第二小学校や住宅が密集しているとして、同飛行場の欠陥を指摘する伊波洋一宜野湾市長は「米軍が無視し続けるクリアゾーン(土地利用禁止区域)の裏付けとなる事例だ。鉄塔だけでなく、クリアゾーン内のほかの建物も危険なはず。本来ならば撤去されるのは基地だ」と危険性を放置する国と米軍を批判した。(中部支社・銘苅一哲)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808121300_01.html

 

2008年8月12日(火) 朝刊 25面

米軍弾薬船爆発調査資料を発見/県公文書館が公開

 60年前の米軍占領下の8月に伊江島で起きた、最大規模の不発弾事故「伊江島米軍弾薬処理船爆発事故(波止場事件)」を詳細に調べた米軍事故調査報告書がこのほど米国立公文書館で発見された。事故後の写真が初めて見つかったほか、船や現場の見取り図、関係者証言などが含まれており、関係者は「事件の全体像が明らかになる貴重な資料」と話している。(安里真己)

 事故は、一九四八年八月六日、伊江島の波止場で起こり、米軍の不発弾輸送船が大爆発した。波止場は直前に入った連絡船からの到着客や出迎えの人でごった返しており、犠牲者は死者百人以上、負傷者七十人以上に上った。

 同報告書は、「琉球軍高級副幹部一般書簡1947?1956年」の一部で、二〇〇六年三月に県立公文書館が入手した。事故からちょうど六十年たった六日から、県立公文書館で公開されている。

 当時、伊江島には、不発弾の集積所があり、たびたび爆発事故が起きていた。輸送船爆発事故は、島外で処理するために積み込んだ不発弾五インチロケット砲弾約五千発(百二十五トン)が爆発、船は四散した。

 同報告書では、地元住民九十四人、黒人兵二人、フィリピン人乗員十一人、計百七人が死亡となっている(伊江村資料では、村内六十三人、村外三十九人が死亡)。事故原因は「荷崩れ」などとされてきたが、同報告は、二度にわたる関係者の聞き取りなどを踏まえても原因を特定できない、としている。

 体験者の証言などを集め、同事故に詳しい沖縄国際大学の石原昌家教授は「写真が見つかったのは初めて。加害者側からの調査が明らかになることで、事故の全体像がより明らかになるのではないか。大変貴重な発見」と話している。「事故は世界的に見ても最大規模の被害」と石原教授は指摘。しかし、当時は米軍の事件・事故が頻発しており「この事故の重大さが、県民にも十分に認識されていない。資料の発見を機に事故そのものをとらえ直すべきではないか」と話している。

 伊江村では、港に「被爆慰霊碑」を建立している。事故を風化させないために、今年度中に被害者氏名を刻む作業を進めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808121300_02.html

 

2008年8月12日(火) 朝刊 2面

ヒューストン寄港拒否/県「安全性確認求め」

 米海軍の原子力潜水艦ヒューストンが約二年間にわたり、放射性物質を含んだ冷却水を漏らしていた問題で、県の上原昭知事公室長は十一日、「原因究明と再発防止策の対応が明らかにされない限り、ヒューストンの寄港を認めるわけにはいかない」として、長崎県に次いで、寄港を容認しない方針を明確にした。共産党県委の要請に対して述べた。

 しかし、外務省日米地位協定室は、米軍の入港は地位協定五条で認められており、地方自治体に米軍船舶の入港を拒否する権限はない―としている。

 上原公室長はヒューストンについて、「安全性の確認をきちんと求めていきたい」と述べた。しかし、ほかの原潜の寄港については「原潜そのものの寄港を停止する立場にはないので、申し上げない。今回の事故に関しては、県民の不安を解消するために原因究明や安全防止を求めている」と説明した。

 県は日米安全保障条約を容認する立場から、ホワイトビーチへの原潜寄港を容認する姿勢を示している。

 ホワイトビーチへの原潜入港は今年に入って二十六回。過去最多の年間寄港数に達していることに、上原公室長は「減らすように、さらに、(寄港が)増えている理由を明らかにするように申し入れている。残念ながら外務省から回答はないが、粘り強く臨んでいきたい」と述べた。

 共産党県委は、すべての原子力艦船の寄港禁止措置やホワイトビーチ周辺の環境調査など五項目を要請。古堅宗嘉書記長らは「抜本的な環境調査をやるべきだ」と強調した。外務省沖縄事務所では抗議した。


     ◇     ◇     ◇     

原潜の寄港中止を

うるま議会 防衛局に抗議


 【うるま】米原子力潜水艦ヒューストンが、うるま市勝連の米軍ホワイトビーチに寄港した際、微量の放射能漏れを起こしていた問題で、うるま市議会(島袋俊夫議長)は十一日、在沖米海軍艦隊活動司令部や沖縄防衛局などを訪ね、原潜の寄港中止、原因究明などを求めて抗議した。沖縄防衛局への抗議で、島袋議長は「放射能漏れの心配が現実味を帯びてきた。米軍に基地を提供するのなら、まず住民に安心と安全を提供するべきだ」と、今後の原潜寄港中止を要求した。

 対応した坂野祥一次長は「米軍は日米安保条約の下で活動しており、基地を提供する防衛局から寄港するな、とは言いづらい」などと回答。原潜の安全性に関する事案については、「迅速な通報体制を確立し、住民に不安を与えないよう説明責任を果たしたい」と答えた。

 嘉手納基地にある在沖米海軍艦隊活動司令部では、ホワイトビーチ監督官のマイケル・カズバ少佐に抗議文を手渡した。同少佐は放射能漏れについて「大変申し訳ない」としたが、寄港中止については「回答する立場になく、上司に伝えたい」と答えたという。

 外務省沖縄事務所の久野和博副所長は「地元に多大な心配をかけたことを重く受け止めている」と話したものの、米原潜の寄港については、「米軍のプレゼンスはわが国、アジア太平洋の安全保障にとって不可欠」と述べるにとどめた。

 在沖米国総領事館で対応したカネシロ首席領事は「要望は駐日大使館に伝える。必要な情報は外務省を通じて自治体に伝達したい」と述べたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808121300_03.html

 

2008年8月12日(火) 朝刊 25面

嘉手納基地内に太平洋最大学校

 米軍嘉手納基地内に新設の中学校「リュウキュウミドルスクール」(生徒数約六百人)が建設され、二十五日に開校することが十一日までに分かった。米国防総省教育局太平洋地区米国学校教育局によると、同校の用地面積は太平洋最大の約十六万千八百平方メートル。沖縄防衛局によると、学校の総工費約四十億円は日本政府が負担した。

 近隣の沖縄市では今年四月、比屋根小学校(児童数六百四十五人)が開校したが、総面積約二万五千五百平方メートルで、リュウキュウミドルスクールはその六倍余の面積。比屋根小の総工費は本年度整備予定の体育館などを含め約二十五億円。

 同局によると、日米地位協定二四条二項の規定に基づく「提供施設整備」の施設として二〇〇四年十二月に着工。今年三月に完成した。学校の建物面積は一万四千平方メートル。

 中学校は米軍人、軍属の子ども十一―十三歳が六―八学年の生徒として通う。

 同教育局によると、在沖米軍基地内の生徒登録数は約四千二百人で、特に増加はしていないが、学校建設の認可は一九九〇年代初頭に下りたという。「生徒の意欲に応えるために多様なニーズに対応できる教授法を備えている」と説明。

 「リュウキュウ」には既存のカデナ、レスターの両ミドルスクールから一部生徒が校区を変更して通う。新設により、在沖米軍基地内の中学校は三校になる。

 四百メートルトラックや水泳プール、ソフトボール場、フットボールサッカー場など付帯施設も整備された。観覧席や夜間照明付きの運動施設は同校だけでなく、クバサキハイスクールなど基地内他校や米軍人も使用するという。(吉田伸)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808121300_04.html

 

2008年8月12日(火) 朝刊 24面

千羽鶴姿変え平和の象徴に/民間団体が再生紙作り

 慰霊碑に捧げられる千羽鶴をリサイクルし、戦災地に再生紙として寄付する取り組みが県内でも始まっている。昨年から、県平和祈念資料館と関係者が連携し、同館に保管されていた七十万羽を活用。再生紙第一号は、同館主催の児童・生徒の平和メッセージ展の表彰状に生まれ変わり、十一日の表彰式で、子どもたちに手渡された。(嘉数浩二)

 中心となったのは、五月に発足した千羽鶴未来プロジェクト沖縄事務局(川端良治事務局長、本部・広島市)。川端さんが数年前から、賛同者と準備を進めてきた。

 県平和祈念資料館には毎年、県内外から多くの千羽鶴が届くが、倉庫は満杯。「心を込めた鶴を処分するのはしのびない」という同館と、「平和の象徴として再利用したい」という川端さんらの理念が一致し、動き出した。

 昨年九月には、同館で千羽鶴の糸や針金などを外すイベントを企画。川端さんの呼び掛けで、知的障害者更生施設てだこ学園(勝連但博施設長)の入所者が、地域住民の協力を得ながら半年以上かけて、準備作業を担った。

 「地球に優しい、広い意味での平和貢献」(同資料館)、「戦災地の子どもたちのためと、入所者もやりがいを感じていた」(てだこ学園)と関係者にも好評だ。

 川端さんは「戦没者への思いに、善意の輪がつながった。最初の再生紙が、平和を一生懸命考えた子どもたちの表彰状になるのは象徴的だ」と喜んだ。

 同プロジェクトは、広島市の平和公園に寄贈された年間十トンの千羽鶴のほとんどが焼却されていたため二〇〇二年、活動を開始。リサイクル品を戦災地に寄付するほか、資金調達のため名刺作りなども行う。県内では、三年前からNAHAマラソンの表彰状に使われている。

 沖縄事務局では賛同者を募っている。問い合わせは電話098(995)0001、川端(金城印刷内)。


     ◇     ◇     ◇     

メッセージ展30人を表彰

県庁で作品93点展示


 二〇〇八年度「児童・生徒の平和メッセージ展」(主催・県平和祈念資料館)の最優秀、優秀賞受賞者三十人の表彰式が十一日、県庁であった。また同日から県庁一階県民ホールで、図画、作文、詩の作品九十三点の展示も始まった。十五日まで。小学の部図画で最優秀、詩で優秀賞となった上原晴美さん(高良小四年)は「亡くなった祖父が教えてくれた『命どぅ宝』の意味を考えて描いた」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808121300_07.html

 

2008年8月12日(火) 朝刊 24面

激動の時代写す85点/名護市で「あんやたん」展

 【名護】沖縄タイムス創刊六十周年企画「タイムスアーカイブ あんやたん」移動写真展(主催・沖縄タイムス社)が十日から、名護市立中央図書館で開かれている。十七日まで。入場無料。

 一九四五年の終戦から七〇年まで、復興期における激動の沖縄を写した八十五枚の写真が展示されている。

 白旗の少女を写した写真をじっと見つめていた市内の菊池幸代さん(29)=作業療法士=は「その瞬間を後世にまで伝えることができる写真ってすごい。戦争体験のない私にも記憶がよみがえってくるようだ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808121300_08.html

 

2008年8月12日(火) 夕刊 7面

沖国大「飛行禁止」要求/普天間ヘリ墜落4年

 【宜野湾】二〇〇四年八月に米軍のCH53D大型輸送ヘリが墜落、炎上してから十三日で満四年を迎える沖縄国際大学の富川盛武学長は十二日午前、隣接する米軍普天間飛行場の閉鎖と離発着する米軍機の一切の飛行停止を求める声明文を発表した。大学上空を飛行する米軍機に抗議の意志を表すため本館屋上に「NO FLY ZONE」(飛行禁止区域)の文字をペイント、常時表示する。

 富川学長は、ヘリ墜落後に飛行中止を米軍や国の関係機関に求めたにもかかわらず、大学の上空を飛行する現状を指摘。

 「いかなる国際政治論、安全保障論で飛行を正当化しても、大学の静寂、安寧を脅かし、生命すらも脅かす飛行は認められない」とし同飛行場の閉鎖、返還とともに、米軍機の飛行停止を求めている。

 同学長は十二日までに首相、防衛相、駐日米国大使、在日米軍司令官など国と米軍の関係機関十一カ所に飛行中止を要求する抗議文を送付したことも明らかにした。

 「NO FLY ZONE」のペイントは縦約八メートル、横約十九メートル。

 墜落後に新設された六階建ての本館屋上に塗装された。

 同大はこれまで横断幕やアドバルーンによる「NO FLY ZONE」の掲示を期間限定で行ってきたが、常に表示をするのは初めての取り組み。

 十一日、大学職員らが屋上に塗装した。今年三月に同大を卒業した高橋正太郎さん(22)も訪れ、「今年も学生が秋の学園祭に合わせた取り組みを計画していると聞いた。大学、学生がそれぞれの立場で事故の記憶を残していってほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808121700_01.html

 

2008年8月13日(水) 朝刊 2面

うるま市長、寄港中止要求/原潜放射能漏れ

 【うるま】 米原子力潜水艦ヒューストンが、うるま市勝連のホワイトビーチに寄港した際、微量の放射能漏れがあった問題で、知念恒男うるま市長は十二日、嘉手納町の沖縄防衛局を訪ね、原潜の寄港中止、迅速な通報体制の確立、再発防止などを求め抗議した。

 知念市長は「米側に抗議しても、市民の意思がきちんと実現されない。後押しをお願いしたい」と寄港中止を要請。放射能漏れがあったヒューストンの入港前後と入港中の水中の放射性物質の値を比較し、情報を公開することも求めた。

 真部朗局長は「米側に原潜を寄港させるなとは言えないが、安全性は確保しないといけない。周辺住民の不安は当然で、できる限り情報開示する必要がある」との認識を示した。

 また知念市長は、うるま市石川楚南と同市栄野比にまたがる嘉手納弾薬庫地区の返還予定地(約三十五ヘクタール)について「谷間や傾斜地で利用価値が少なく、米軍戦闘機の飛行ルート下にあり跡地利用は困難」とし、地主約五十人の意思をくみ、継続使用するよう求めた。


寄港抗議決議へ県市長会が方針/うるま市長提案で


 県市長会(会長・翁長雄志那覇市長)は十二日、那覇市内で定期総会を開き、うるま市の知念恒男市長の提案を受け、放射能漏れ事故を起こした米原子力潜水艦「ヒューストン」などの原潜寄港に反対する抗議決議を行う方針を確認。知念市長は「効果的な再発防止を求めていきたいと考えており、市長会としても統一した意思表示をお願いしたい」と話した。

 十月に福岡県で開催される九州市長会には日米地位協定の見直しに関する継続議案に加え、後期高齢者医療保険料制度に関する財政措置と改正建築基準法に伴う建築着工件数減少への対策などを求める議案を提出する。


放射能は平常値/県が調査結果説明


 米海軍の原子力潜水艦ヒューストンが約二年間にわたり、放射性物質を含んだ冷却水を漏らしていた問題で、県文化環境部の友利弘一環境企画統括監は十二日、ホワイトビーチを抱える金武中城港で行っている政府や県の調査結果を説明し、海産物に問題ないとの見解を示した。同日開かれた県議会米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)で、中川京貴氏(自民)への答弁。

 友利環境企画統括監は文科省が年間四回実施している魚類やナマコ、海草類、貝類などの海生生物に含まれるコバルト60や亜鉛65、セシウム137などの放射能調査を紹介。また県衛生環境研究所が実施している海水や海底土、グルクンの調査を挙げ、「検出されないか、一般環境のレベル」と説明した。

 また新垣清涼氏(社大・ニライ)の質問に対し、原潜寄港時や平常時に文科省と県が海水や大気の調査を継続していることを挙げ、ヒューストンの五回の寄港について数値を並べて「平常値と同様の結果だった」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808131300_03.html

 

2008年8月13日(水) 朝刊 24面

高江住民が意見陳述/ヘリパッド移設

 県議会米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)は十二日、東村高江区周辺の米軍北部訓練場内ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設工事に反対している地元団体「ヘリパッドいらない住民の会」を参考人に招き、意見聴取を行った。会からは安次嶺現達、伊佐真次の両共同代表や専門家ら計六人が出席し、それぞれの観点から「ヘリパッドはつくるべきではない」と訴えた。

 同会から県議会に提出された、ヘリパッドの建設中止と計画撤回の決議を求める陳情書の審議の一環として行われた。

 高江区に住む石原理絵さんは「高江区が訓練場の中へ取り残されてしまうとの不安を覚える。私たちはただ静かに生活したいのです」と住環境面での不安を切々と陳述。

 沖縄大学の桜井国俊学長は、那覇防衛施設局(現沖縄防衛局)が行った環境影響調査について、アセスの方法を示す方法書の段階でヘリパッドの位置や大きさなどが明示されていないなど、手続き面での数々の不備を指摘し、「那覇防のやり方は後出しじゃんけんであり、環境アセスとして成立していない」と厳しく批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808131300_04.html

 

2008年8月13日(水) 朝刊 2面

米軍再編合意で実施の方向一致/防衛相、駐日米大使と

 【東京】シーファー駐日米大使は十二日、防衛省に林芳正防衛相を訪ね、在日米軍再編などについて意見交換した。普天間飛行場移設への言及はなかったが、シーファー大使は「合意した(在日米軍再編の)ロードマップをモメンタム(勢い)を維持して履行することが大切だ」との見解を述べたという。

 林防衛相も「順々にモメンタムを持って進めないといけない」と述べ、合意の実施を着実に取り組む方向性で一致した。

 林防衛相は「早い時期に沖縄へ行く予定だ」とした上で、「少なくとも沖縄の人々と率直にオープンな話ができる環境をつくることが大事だ」と強調した。

 またシーファー大使は、来年一月に期限が切れる海上自衛隊によるインド洋での給油の継続を求めた。林防衛相は明言を避けた。大使は給油活動に関して「アフガニスタンへの支援には国際社会の多数の国々が参加しており、日本も将来にわたって貢献を続けることを期待している」と要請。

 林防衛相は「国際社会全体がテロと戦っている。何かしなければいけないという点では党派を超え、認識は一致している」と述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808131300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年8月13日朝刊)

[ヘリ墜落4年]

問題は未解決のままだ


 沖縄国際大学に普天間基地所属の米軍ヘリが墜落してからきょうで四年になる。一人の死者も出なかったのが不思議なくらいの事故だった。

 比較的規模の小さなヘリ事故はそれ以前からあった。「このままほって置いたら、いつか」―二〇〇四年八月十三日、事故は、いつ起きても不思議ではないという環境の中で、起きたのである。

 日常的な騒音被害とヘリ墜落の不安―事故以前もそれ以降も、事情はほとんど変わっていない。

 事故報道や事故対応などを通してあらわになったのは「米軍」「政府」「本土マスコミ」と沖縄側の、目もくらむような深い溝だった。

 その日夕方のNHKニュースも全国紙の翌日朝刊も、巨人軍・渡辺恒雄オーナーの辞任やアテネ五輪のニュースを大きく取り上げ、墜落事故の扱いは小さかった。

 夏休み中の小泉純一郎首相の反応は至って鈍く、稲嶺恵一知事に会ったのはずっと後になってからだった。

 ワスコー在日米軍司令官は現場を視察した後、「パイロットは良い仕事をした」と発言し、ひんしゅくを買った(肩書はいずれも当時)。

 県警は米軍に対し墜落現場の検証を求めた。民間地域に落ちたのだから当然である。だが、米軍は地位協定に基づく日米合意議事録を盾に日本側の検証を拒否した。

 この事故ほど、さまざまな点で基地問題の構図を明瞭に浮かび上がらせた事例は、少ない。事故は四年前の過去の話だが、提起された問題は依然として未解決のままだ。

 県民の中に今も、温度差という言葉だけでは片付けられない不信感がくすぶっているのは、基地政策が「差別的」だと受け取られているからだ。与党の政治家や中央省庁の役人は、往々にして、政府に対する県民の根強い不信感を「基地に反対する人たちの声」だと受け取りがちだが、その見方は正しくない。

 事故発生後の〇四年九月、沖縄タイムス社と朝日新聞社が共同で実施した世論調査によると、小泉首相の当時の対応を「評価しない」と答えた人は81%に達した。

 米軍が県警の現場検証を認めなかったことについては、自・公支持層を含め九割以上が「納得できない」と答えていた。

 「もし米軍ヘリが東京の都心の大学に墜落していたら、どうなっていただろうか」。今なお県民の中にくすぶるこのような声は、実は、与党野党に関係ない。

 普天間基地の危険性をいかに取り除くか。それが最大の問題だ。

 日米両政府は〇七年八月、危険性を軽減するため飛行ルートの変更などに合意した。

だが、宜野湾市は住宅地上空の「はみだし飛行」が目立ち、合意は守られていない、と指摘する。沖縄防衛局は近く、観測装置を使ってヘリの飛行実態を調査し、その結果を見て必要な措置を米軍に申し入れるという。

 「住民を危険にさらして一体、なんの安全保障か」という問いに、政府は正面から向き合うべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080813.html#no_1

 

琉球新報 社説    

ヘリ墜落4年 危険との同居に終止符を 2008年8月13日

 世界で最も危険な米軍基地。それが、普天間基地である。米軍トップの国防長官すら認める危険な基地が、日米の首脳間で返還が合意されながら、12年間も放置されている。

 基地が居座る根拠は、日米安保である。国民を守るはずの安保が、市民の命を危険にさらす。一体、安保は何から何を守っているのか。

 日米特別行動委員会(SACO)合意が移設条件付きで普天間返還が難航する中、アテネ五輪に国内がわいた4年前のきょう、宜野湾市の沖縄国際大構内に普天間基地所属のCH53D大型輸送ヘリが墜落した。午後2時15分ごろの事だ。

 操縦不能に陥った米軍大型ヘリは沖国大本館に激突し、爆発・炎上した。住宅密集地だ。飛散したヘリの破片は周辺のアパート、民家、車両など50カ所を直撃した。

 破片の一部は乳児が眠る住宅の寝室を襲い、巨大なローターの破片はミニバイクを破壊し、住宅の壁や水タンクに突き刺さった。

 ヘリ乗員3人が重軽傷を負ったが、住民や学生たちは奇跡的に死傷を免れている。

 「一体、返還までにあと何回、このような事故を待てばいいのか」。重大事故に伊波洋一宜野湾市長は憤怒をぶつけたが、あれから4年、「日米安保の円滑な推進」のため普天間基地は、まだ宜野湾の市街地の中にある。

 ヘリ事故で県民は米軍優先の基地・沖縄の現実を思い知らされた。

 事故は日本国内、しかも民間地で起きた。にもかからず、日本警察の捜査権は米軍に奪われ、大学私有地は米軍に制覇・占拠され、立木や土壌は許可なく伐採、採取された。消火活動すら不自由を強いられ、現場を視察した日本政府高官すらも米軍に制された。

 日本の主権、私権、基本的人権を米軍はことごとく侵害したが、政府は米軍の権利とさえ追認した。

 事故後、米軍は再発防止や綱紀粛正を誓ったが、その後も米軍機事故は多発。この3年間で130件を超え、最近は増加傾向にある。

 ヘリ事故は、米軍基地との共存の危うさ、国民の命を危険にさらす日米安保の矛盾を実感させた。事故の「教訓」を思い返したい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135181-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説    

資料非公開 国家ぐるみの隠蔽工作だ 2008年8月13日

 日本に駐留する米兵事件に関し、事実上の裁判権放棄を指示した通達が掲載された法務省資料を国立国会図書館が6月上旬から閲覧禁止にしていたことが明らかになった。

 1990年に資料を入手した後、閲覧できる状態になっていたが、法務省が「米国との信頼関係に支障を及ぼす恐れがある」として5月下旬に閲覧禁止を要請。国会図書館がこれを受け入れた。

 くさい物にふたをする、国家ぐるみの隠蔽(いんぺい)工作としか言いようがない。

 資料には「実質的に重要と認められる事件のみ裁判権を行使する」と記載した53年の通達などが収められていた。

 「裁判権の放棄はない」という政府の説明を根底から揺るがす証拠資料だから、法務省としては一刻も早く人目に触れないところに隠しておきたかったのだろう。「米国との信頼関係」は、いかにも取って付けたような理由だ。

 法務省から閲覧をやめてほしいと求められ、唯々諾々として従った国会図書館の対応にも大いに問題がある。

 日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」は「図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく、自らの責任にもとづき(中略)収集した資料と整備された施設を国民の利用に供するものである」とうたっている。

 文書を作成した機関からの要請とはいえ、これまで公開していた資料を一転して非公開にしたことは、「図書館の自由」の原則にもとるのではないか。

 「宣言」は、戦前の図書館が「思想善導」の機関として国民の知る自由を妨げる役割さえ果たした反省を踏まえ、国民の知る自由を守り、広げていく責任に言及している。

 国民の知る権利を抑えつけるのではなく、知る自由を保障するのが図書館の本来の役割であり、使命であるはずだ。いま一度原点に立ち返り、再確認する必要がある。

 今回、閲覧の対象から除外された「合衆国軍隊等に対する刑事裁判権関係実務資料」は72年に作成された。53年以降、法務省刑事局や最高検察庁が作成した通達などを掲載し、解説を加えている。

 日本側が第一次裁判権を行使できない「公務中の事件」の定義を拡大して解釈するよう促すなど、国民への背信行為と言っても過言ではない中身が含まれている。

 「主権国家」として恥ずべき内容だから表に出したくないのだろうが、国にとって外聞の悪い事柄はすべて秘密にするというのなら戦前と何ら変わらない。

 法務省は資料を隠蔽するのではなく、むしろ積極的に公開し、その趣旨等について、きちんと説明責任を果たすべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135182-storytopic-11.html

 

2008年8月13日(水) 夕刊 1・7面

放射能漏れ発覚後初 原潜が入港/うるま市ホワイトビーチ

 米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦コロンブス(六、〇八二トン)が十三日午前、うるま市勝連平敷屋の米軍ホワイトビーチに入港、海軍桟橋に接岸した。同型のヒューストンが約二年間にわたり原子炉から放射性物質を含む冷却水が漏れていたのが七日に発覚して以来、県内に初めての寄港。地元の知念恒男うるま市長や同市議会が寄港中止を求めている中での寄港で、反発が強まるのは必至だ。

 県によると、文部科学省と県が入港時の放射能の値を調査している。出港日時や目的は不明。県は二〇〇一年の米同時多発テロ以降、外務省の要請を受け、「一時的、例外的な措置」として二十四時間前の事前通告を報道陣に公表しておらず、非公表での入港が続いている。

 原潜の寄港は七月二十八日以来、今年に入って二十七回目で年間最多寄港数を更新。復帰後三百五回となった。ヒューストンの放射能漏れ発覚以来、国内では同型のラ・ホヤが佐世保基地(長崎県)に入港していた。

 コロンブスは午前九時すぎに浮上したまま岸に近づくと、十時すぎに接岸した。米海軍の警備艇と中城海上保安部の特殊警備救難艇「かつれん」、巡視艇「ゆうな」が見守る中、二隻のタグボートに曳航され接岸する様子が確認された。


     ◇     ◇     ◇     

反対の声無視 原潜接岸


 【うるま】旧盆初日の十三日午前九時すぎ、うるま市勝連のホワイトビーチに現れた原子力潜水艦「コロンブス」。同じ原潜の「ヒューストン」が放射能漏れを起こしていたことが明らかになってから一週間足らずでの入港。寄港反対の抗議決議も聞き入れられない状況に、地元では怒りが高まっている。

 十三日午前九時ごろ、ホワイトビーチ沖合に現れた黒い船体の「コロンブス」。うるま市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「あれだけ寄港反対を訴えたのに、このような行動をとることは許せない」と憤る。同議会は十一日に、原潜の寄港反対や情報公開を求める抗議決議を可決したばかり。「米軍や国は、もっと沖縄県全体の問題として真摯にとらえるべきだ」と訴えた。

 地元平敷屋区の西新屋光男区長は「住民は日々の生活で精いっぱいの状況。早く普段の平穏な状態に戻ってほしい」と話す。

 十二日、沖縄防衛局で原潜の寄港中止などを訴えた知念恒男うるま市長は「また同じことの繰り返し。放射能が人体に影響がないといっても、目に見えないだけに市民は安心できない。少なくとも(国や米軍は)放射能漏れの具体的な対策を示すべきだ」と強調した。

 ホワイトビーチが見える同勝連平敷屋の現場では、平和運動センターや自治労などが緊急の抗議集会を開き、「沖縄を原潜の母港にするな」と寄港反対の声を上げた。同センターの山城博治事務局長は「原潜寄港は地域住民の声に背く行為。放射能漏れの原因究明がなされないままの寄港は許されない」と話した。


県、点検求める


 県の上原昭公室長は十二日午後、外務省日米地位協定室の船越健裕室長に対し、「県民は大きな不安と米軍の安全管理体制に疑念を抱いている」と指摘。県内に寄港するすべての原子力艦の点検、安全対策を求めた。ホワイトビーチへの寄港が大幅増加していることについても、増加要因の説明を求めた上で、今後の寄港についても、必要最小限にとどめるよう申し入れた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808131700_01.html

 

2008年8月13日(水) 夕刊 6面

壕から水筒 持ち主判明か/栃木出身兵と符号

 沖縄戦の激戦地だった那覇市真嘉比の丘陵で、旧陸軍の陣地壕から「西田」と記名のある水筒が見つかり、栃木県出身の西田宇吉さんという兵士の所持品だった可能性が高いことが、十三日までに分かった。

 水筒を今月上旬発見した那覇市の遺骨収集ボランティア団体「ガマフヤー」が、元自衛官の小倉暁さん(67)=那覇市=の協力を得て調査した。

 水筒に刻まれた「西田」「二ノ三ノ三」の文字を手掛かりに、防衛省に残る部隊編成資料を調べたところ、この地域で戦闘に参加した可能性が極めて高い西田姓の兵士は二人。このうち宇吉さんは独立混成第一五連隊の第二大隊第三小隊第三分隊に所属。刻まれた数字と符合した。

 ガマフヤー代表の具志堅隆松さん(54)は「戦後六十年以上経過してから遺品が出土し、持ち主につながる情報が残されていることは異例。ぜひ遺族の手にお返ししたい」と、身元特定につながる情報提供を呼び掛けている。

 第一五連隊は一九四四年六月、関東出身者を中心に二千人余りが千葉県で編成され、山口県を経由して沖縄に入った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808131700_05.html

米軍バスか、無断駐車/那覇バスターミナル 知事、林防衛相と初会談/「普天間」で協議継続 「普天間」作業班への宜野湾市参加に難色/防衛省 沖縄でも放射能漏れ/米原潜、ホワイトビーチで など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(8月4日から8日)

2008年8月4日(月) 夕刊 7面

米軍バスか 無断駐車/那覇バスターミナル

 三日午後、那覇市泉崎の那覇バスターミナル内に米軍のものとみられるマイクロバスが進入し、ターミナル内中央付近にある路線バス待機駐車場に二時間以上無断駐車していたことが四日、目撃者や関係者の話で分かった。同駐車場は路線バスの関係車両以外は進入禁止エリアになっている。注意した警備員によると、米軍関係者らしき約十人は「国際通りでエイサー祭りを見ていた」と話していたという。運行などに支障はなかった。

 目撃した沖縄バス会社の乗務員によると三日午後五時五十分ごろ、同バスの駐車エリアに停車していた米軍車両を発見。白のマイクロバスで車体には「NAVI」と書かれ、鍵は閉まった状態だったという。

 米軍車両発見から約二時間後の午後七時十分ごろ、通行人や警備員が国際通り方面から米軍車両に戻ってくる米軍関係者十人を確認。警備員が注意したところ、Tシャツや短パンなどの軽装姿でお土産袋を持った米軍関係者は「駐車場と思い間違った。国際通りのエイサー祭りに行っていた」と話したという。

 沖縄バスの大田孝運行管理者は「運行が多い平日ではなかったので支障はなかったが、こんなことはかなり困る。警察に通報しようと思ったところに戻ってきた」と困惑した表情。

 那覇バスターミナル株式会社の田中正美次長は「警備員の交代時間に進入したと思う。レンタカーがターミナル内に迷い込むことはあるが、駐車した話は聞いたことがない。学校に米軍車両が進入するニュースがあったが、まさかバスターミナルでも起きるなんて」と驚いていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808041700_03.html

 

2008年8月4日(月) 夕刊 7面

「守る会」が座り込み/泡瀬埋め立て

 【沖縄】泡瀬干潟を守る連絡会のメンバーは四日午前五時ごろから中城湾港泡瀬沖合を埋め立てる国の事業に反対し、工事車両の搬入を阻止するため、沖縄市泡瀬の工事現場仮設橋梁前で座り込みを始めた。事業者の沖縄総合事務局や沖縄署が移動を求めたが応じず、午後一時現在も座り込みを続けている。

 国は四月から始めた護岸の内側の工事に引き続き、八月からは囲まれた護岸の外側の工事に着手する。同会は「環境への影響がさらに大きくなる」として座り込みを行った。同会が用意した横断幕やモニュメントなどもあり、工事機材などを運ぶトラックが現場に入れない状況。

 同事務局や沖縄署は「工事車両が通行できないのでどかしてほしい」「業務妨害になる恐れがある」と求めたが、メンバーは譲らず、座り込みを継続。また、沖縄市が、座り込み場所が市道の一部であることを資料で示し、口頭で移動を要請したが、同会は東門美津子沖縄市長名の正式な排除命令を求めている。

 同会の小橋川共男共同代表は「環境に配慮されていない事業の在り方はおかしい。沖縄の自然を取り戻すため県民として行動を決めた」と話した。同会が座り込みの実力行使をするのは初めて。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808041700_07.html

 

2008年8月4日(月) 夕刊 6面 

遺骨収集 4体発見/市民参加 真嘉比の壕で

 那覇市と沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」(具志堅隆松代表)は三日、市土地区画整理事業が行われている「市真嘉比古島第二地区」で市民参加型遺骨収集を行った。県内外から約四十人が参加。新たに日本兵とみられる一体と、日本兵の可能性が高い三体の遺骨を発見した。

 同地区での収集活動は、六月二十二日に続き二回目。参加者たちは軍手にシャベルなどを持ち、土を丁寧に掘って遺骨を探した。午前中、まず壕の入り口の外で三体分の大腿骨とみられる骨を発見。午後には壕の中からも一体が見つかった。壕からは鉄かぶとなど日本軍の装備品も見つかり、遺体のそばにあった飯ごうのふたには漢字で「久我」と書かれていた。

 この日は、同地区で戦死したとみられる大川惣太郎さん、小峯太郎吉さんの遺族も参加した。四歳の時に父を見送ったという小峯さんの娘・杉浦栄さんは「どの骨を見ても父ではないかと思えてしまう。真嘉比の山に入り、父の最期を少しでも実感できて良かった」と話した。

 同地区では今後、丘の西側での造成工事が始まる予定。具志堅代表は「工事の進行を見ながら三回目の収集活動を行いたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808041700_08.html

 

2008年8月5日(火) 朝刊 2面

米訓練水域廃止を/共産党県委4省に要請

 【東京】共産党県委の議員団は四日、防衛、外務など四省を訪ね、沖縄本島周辺の米軍訓練水域廃止などを要請した。防衛省は「地方公共団体などから要求があれば、返還や使用方法について検討したい」と回答したという。

 議員団は「制限水域を迂回して漁場に行かねばならず、原油高騰で燃料代が大きな負担となっている」と指摘した。

 また、原油高騰対策として、省エネに取り組む五人以上の漁業者グループに燃料費増加分の九割を国が補てんする緊急支援について、農水省は「(グループの条件は)省エネに取り組むなら県内の各漁連単位でもいい」と回答したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808051300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年8月5日朝刊)

[原潜放射能漏れ]

住民本位の通報態勢に


 あってはならない事故が起きた。米海軍のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦ヒューストン(六〇八二トン)が三月下旬、米海軍佐世保基地(長崎県)に寄港した際、微量の放射性物質を含む水が漏れていたことが明らかになった。

 この原潜は今年三月から六月までグアムやハワイにも寄港。漏れた放射性物質の総量は一万八千五百ベクレル以下と推定される。佐世保に寄港する前の三月十二日には、うるま市のホワイトビーチにも「補給・維持」を目的に二十四分間、沖合停泊していた。

 漏れた放射性物質について米海軍は、極めて微量で周辺環境や乗組員の健康への影響は認められなかったとする。

 量が問題ではない。放射性物質が外部に出たことが大問題なのである。米軍が放射能漏れを確認したのは、七月のハワイでの定期検査だった。少なくとも佐世保入港から四カ月間、放射能は漏れっぱなしだったということになる。

 米軍では、五月に原子力空母ジョージ・ワシントンで、喫煙が原因による火災事故があり、その後、艦長が更迭された。六月には核兵器や関連物資が粗雑に扱われ、空軍のトップが事実上更迭された。

 軍全体で、綱紀の乱れが指摘される中での今回の事故。気の緩みがトップから下位の兵士にまで、容易に改善できぬほどに広がっているのではないか、との疑念を抱かざるを得ない。

 事故への不安が払拭されないにもかかわらず、四日には佐世保に原潜が寄港した。米軍の無神経ぶりにあきれる。

 外務省は、米海軍から一日に事故の報告を受けていたが、佐世保市や沖縄県などには二日に連絡した。担当者は「人体に影響がないから即時通報する必要はないと判断した」というが、危機管理への意識のなさやまずいものを隠そうとする姿勢が見て取れる。

 米原子力艦船が日本に立ち寄る際には、日米双方が放射能調査を行い事故時の相互通報を定めているが、どういうレベルの事故から通報義務が派生するかなど、日米間の取り決めはあいまいだ。

 放射能調査自体、外部からは見えぬ洋上のことだけに、周辺住民から「沖縄でも漏れたのではないか」と声が上がるのも当然のことだ。

 「原潜の寄港回数の増減は世界情勢を反映する」といわれる。沖縄近海で一体何が起きているのか、十分な情報がないままでは、疑惑や懸念は深まるばかりだ。

 県内では今のところ、ヒューストンの放射能漏れは確認されてない。しかし、ホワイトビーチへの原潜寄港は今年すでに二十六回で過去最多となった。横須賀基地には空母ジョージ・ワシントンが国内で初めて配備されることになっており、原子力艦船の安全管理が強く求められる。

 あす八月六日は広島県に原爆が投下された日。唯一の被爆国として、日本国民には原子力に対する繊細で敏感な感情がある。そういう気持ちを酌もうとしない日米政府の通報態勢は、あまりに杜撰で不愉快極まりない。速やかに国民に知らせるような態勢に改善すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080805.html#no_1

 

2008年8月6日(水) 朝刊 1面

普天間上空 飛行航跡調査へ/防衛省意向

 【東京】米軍普天間飛行場の危険性除去と、代替施設の建設計画・環境影響評価(アセスメント)について協議するワーキングチームが五日夕、防衛省で開かれた。「危険性除去」のワーキングチームで防衛省は、昨年八月に公表した場周経路が守られていないという宜野湾市や県の指摘を踏まえ、航空機の飛行ルートを外部に委託して調査する意向を示した。

 防衛省は「まず地元の不安を解消することが重要」として調査の必要性を説明。月内にも業者との契約手続きに入り、速やかに調査を開始する意向を示した。観測装置を使って航空機が発する電波を受信し、航跡を把握するという。

 そのほか、クリアゾーン(無障害地帯)拡充や滑走路末端識別灯新設など、普天間飛行場の安全対策として昨年八月に公表した内容を説明し、現在の進ちょく状況を報告した。

 「建設計画・アセス」のワーキングチームでは、政府、県、名護市が密接に意見交換しながら移設返還を進める方針を確認した。

 県の上原昭知事公室長は「沖合移動を求める地元の意向を最大限尊重して実現を図ってほしい」と要望。政府側は「知事意見が提起された場合、地元の意向を念頭に置くとともに、代替施設の二〇一四年までの完成目標に留意して誠実に対応する」との従来見解を示すにとどまった。

 伊波洋一宜野湾市長の話 場周経路は守られておらず、データがあれば日米で合意されたことを米国に守るよう強く申し入れる材料になる。一定の評価はできるが、なぜワーキングチームに宜野湾市を加えないのか疑問だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808061300_01.html

 

2008年8月6日(水) 朝刊 29面

高嶺県議会議長に委員長就任要請/教科書検定撤回 実行委

 「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」の玉寄哲永実行委副委員長らが五日、県議会の高嶺善伸議長に実行委員長への就任を要請した。高嶺議長は「できるだけ効果がある形にするため、各派に諮って考えたい」と述べ、超党派での参加を模索する考えを示した。

 県議会を訪れた玉寄副委員長は「教科書執筆者たちが九月に再訂正申請をする予定であり、中学教科書の検定も始まる。議長には県民党の代表として再び先頭に立っていただきたい」と要望した。

 高嶺議長は「私たちも思いは同じ」と前向きな姿勢をにじませつつ、「各派の一致を見て引き受けるのが筋。九月議会の招集前に代表者会議に諮りたい」と述べた。

 県議会は二〇〇七年八月、同県民大会に超党派での参加を全会一致で決め、仲里利信前議長が実行委員長に就任した。

 しかし、今年六月の県議選後、仲里前議長が勇退と同時に実行委員長も辞任したため、空席が続いている。

 玉寄副委員長は面会後、「検定制度の見直しや再訂正申請など、東京では九月ごろから動きが活発になる。今また県民一体で動かなければ沖縄の声が取り残されてしまう。県議会には再び一つとなって参加してほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808061300_04.html

 

2008年8月6日(水) 朝刊 2面

知事、林防衛相と初会談/「普天間」で協議継続

 【東京】上京中の仲井真弘多知事は五日、防衛省内で、林芳正防衛相と初めて会談した。米軍普天間飛行場移設問題について「意見が違っても、意思疎通を丁寧に図ることが重要だ」と述べた仲井真知事に、林防衛相も「互いにパイプをつくって対応していく必要がある」と応じ、政府と地元の協議を定期的に続けることで一致した。

 仲井真知事は、これまで求めている普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動について、「今までの協議会とかの内容を大臣がよく説明を受けた後がいい」として、同日の会談では求めなかった。林防衛相に早期来県を要請したが、林防衛相は即答を避けた。

 仲井真知事は会談後、防衛省で同日開かれた普天間飛行場移設に関するワーキングチームについて、「大臣が集まってテクニカルな話をしても限界がある。どう意見が違うのか、違わないのかを詰めるためのチームだ。きちんと課題と焦点を絞って解決できるよう期待したい」と述べた。

 ワーキングチームで沖合移動を検討するかどうかについては、「技術的、事務的な意見交換というのは、(移動できるかどうか)ある程度、分かるものは分かっている。これは環境とは別にやったほうがいい」と述べ、環境影響評価調査とは切り離して技術的に検討する必要性を指摘した。

 仲井真知事はそのほか、二〇〇九年度の国庫支出金要請で、谷垣禎一国交相らとも会談。那覇空港拡張整備の早期実現、地元企業への優先発注などを要請した。


国庫支出金で沖縄相へ要請


 【東京】仲井真弘多知事は五日、内閣府に林幹雄沖縄担当相を訪ね、二〇〇九年度国庫支出金への配慮を求めた。旧軍飛行場用地対策を初めて要望に盛り込んだことを強調した仲井真知事に対し、林沖縄相は「問題があることは聞いている。知恵を出していければ、と思う」と述べた。

 要請書では旧軍飛行場用地対策について、沖縄特別振興対策調整費の活用による事業費確保を求めた。

 仲井真知事は、那覇空港の拡張について「もう一本の滑走路を早めに完成してほしい」と要望。

 林沖縄相は「沖縄振興計画も残り三年なので、気合を入れて取り組む。財政は厳しいが、沖縄の特殊事情を踏まえて対応したい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808061300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年8月6日朝刊)

[広島「原爆の日」]

もっと核廃絶の声を


 一九四五年八月六日午前八時十五分、一瞬の閃光が街を覆った。熱線と爆風と、大量の放射能。原子爆弾による犠牲者は、その年だけで十四万人を数える。

 米軍爆撃機から投下された一発の原子爆弾によって広島市は廃虚と化した。

 三日後の八月九日午前十一時二分、長崎市も、原爆によって壊滅的な被害を受けた。

 六十三年後の今なお、多くの被爆者が後遺症に苦しんでいる。

 核廃絶の訴えを「きれいごと」だと冷笑してはならない。原爆がもたらした惨状を世界の人々に伝え、後世に語り継いできた人々の、血のにじむような努力を過小評価すべきではない。

 国際司法裁判所は九六年、「核兵器による威嚇と使用は一般的に国際法に違反する」との勧告的意見をまとめた。核廃絶が地球規模の課題として認識されるようになったのは、被爆者の痛切な訴えを正面から受け止めてきた世界のNGOや市民の力によるところが大きい。

 だが、その一方で、世界的に核抑止論が後を絶たず、核軍縮は進んでいない。核開発そのものが容易になり、核開発を外交カードとして利用する動きも目立ってきた。

 NPT(核拡散防止条約)体制は、核拡散という深刻な試練に立たされている。

 北朝鮮やイランの核開発だけが問題なのではない。核保有国の核軍縮に向けた取り組みの弱さや、核超大国アメリカの「二重基準」、被爆国日本のあいまいな核政策も問われなければならない。

 NPT体制は、六七年一月一日以前に核兵器を取得した国を核兵器国とみなし、それ以外の非核兵器国が核武装することのないよう義務付けている。

 非核兵器国から見れば、明らかな差別条約なのである。

 加盟義務がない半面、脱退は可能である。事実上の核保有国とみなされているインド、パキスタン、イスラエルは加盟していない。

 大きな欠点を持った条約であるにもかかわらず、今のところNPT体制は核軍縮を進める上でもっとも大事な体制である。

 NPTの実効力を上げるためには、核兵器国が率先して核軍縮に取り組むことが何よりも重要だ。

 世界には米ロを中心に依然として二万六千発の核弾頭が存在するといわれる。核保有国がまず大幅な削減に着手しなければ、非核保有国に対し説得力は持ち得ないだろう。

 日本の核政策もあいまいだ。フランスやインド、パキスタンなどの核実験に対して日本側が抗議をした際、これらの国から持ち出されたのは、米国の「核の傘」の存在だった。自らは米国の「核の傘」の下で安全保障を確保していながら他国の核実験に抗議するのは虫が良すぎる、というわけだ。

 国際政治の冷厳な現実を打破していくためには、まず日本政府の核政策を転換していく必要がある。転換を可能にするための北東アジアの非核地帯構想を練り上げていくことが大切だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080806.html#no_1

 

琉球新報 社説    

広島・原爆忌 被爆の教訓を平和の礎に 2008年8月6日

 8月6日は、広島・原爆忌。約14万人が一瞬で爆死し、後遺症で10万人余が犠牲になった。原爆投下から63年を迎える。だが、いまなお被爆者は病に苦しみ、無情な差別と闘い続けている。被爆は、過去の話ではない。

 1945年8月6日午前8時15分。米国は人類史上初の核兵器・原子爆弾を広島に投下した。

 「悪魔の兵器」は35万市民の半数近くの命を一瞬にして奪い風光明媚(めいび)な街並みを廃虚と化した。

 「終戦を早め、100万人の米国の若者を救うため」。原爆投下を決断した当時のトルーマン米大統領はそう語り、核兵器による大量虐殺を正当化しようとした。

 ポツダム宣言の終戦勧告の受諾を渋り「1億総玉砕」を掲げる軍国日本への実力行使である。

 原爆投下の理由は、ほかにも3つの見方がある。対日戦線へのソ連参戦の動きへのけん制、20億ドルもの膨大な開発費を使った原爆開発の国内世論向けの正当化、原爆という新兵器の実戦での威力の確認などだ。米国を知る者なら、どの理由にもうなずくであろう。

 しかし、被爆者のみならず人類にとって、どれもが許すことのできない「悪魔の選択」であり、批判、非難されるべき行為である。

 米国は3日後、長崎にも原爆を投下し、約15万人を死傷させた。

 広島はウラン型、長崎はより強力なプルトニウム型。2種の原爆を使い、投下前後に被爆地に軍用機を飛ばし、戦果を撮影している。

 3カ月余をかけた目標都市の選定、原爆模擬弾の投下など周到な投下準備、終戦後の綿密な被爆調査など一連の米国の動きは、原爆の人体実験の印象すら受ける。

 あれから63年。国民を戦争に駆り立てた日本政府は、現在に至るまで被爆認定を渋るなど被爆者救済にあまりに消極的だ。

 加えて、世界最大の被爆国でありながら、核兵器の廃絶、開発阻止、拡散防止に十分な政治力すら発揮できていない。

 30万人を超す被爆犠牲を人類の教訓とし、政府は核兵器廃絶と平和主義を世界に伝え、広げる義務をもっと積極的に果たしたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134922-storytopic-11.html

 

2008年8月6日(水) 夕刊 4面

「普天間」作業班への宜野湾市参加に難色/防衛省

 【東京】宜野湾市議会の伊波廣助議長ら代表十人は六日午前、防衛省に地方協力局の井上源三局長と「普天間飛行場の危険性除去に関するワーキングチーム」を主宰する山内正和次長を訪ね、同飛行場の危険性除去と早期返還を求める意見書を手渡した。

 防衛省側はワーキングチームに地元の意向を反映させる方策を検討する考えを示した。

 伊波議長らは、ワーキングチームに、宜野湾市も加えるよう要請したが、防衛省側は「普天間移設協議会の下部組織なので協議会のメンバーに基づいて構成している」として、同市の加入に難色を示した。

 これに対し、伊波議長は夜間の騒音に市民が墜落の恐怖を感じている現状を訴え、「地元の声をうまく反映させる方法を何とかとってほしい」と要望。防衛省側が何らかの方策を検討する考えを示した。

 一方、同飛行場の早期返還については、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設を進めるとの既定方針を説明するにとどめた。

 要請には安次富修衆院議員(自民)も同行した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808061700_03.html

 

2008年8月7日(木) 朝刊 1面

総事局の存続必要/林沖縄相

 【東京】林幹雄沖縄担当相は六日、沖縄タイムスなどのインタビューに応じ、国の出先機関見直しの対象となっている沖縄総合事務局について、「沖縄の特殊性を背負って意義ある体制の中にある」と述べ、組織存続が必要だとの認識を示した。

 総合事務局については、政府の地方分権改革推進委員会が、年内にまとめる第二次勧告に存廃を盛り込む方針。林沖縄相は「特殊事情ゆえに総合事務局ができた。そこを踏まえて分権委が方向性を出すと思う」と話した。

 在日米軍再編で返還が予定される基地の跡地利用に関しては、「汚染物質の調査や処理は国が責任を持つべきだと考える」と述べ、跡地利用促進に向けて県や市町村が求める国の財政負担に理解を示した。

 県が検討している沖縄型カジノ構想については「県民のコンセンサスを得ることが第一だろうと思うので、推移を見守りたい。コンセンサスがまとまれば協力したい」と述べた。

 沖縄科学技術大学院大学の構想に関しては「わが国初の試みなので、法的なものも含めて成功させられるよう努力したい」と意欲を見せた。来週早々の来県に向けて最終調整していることも明らかにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808071300_03.html

 

琉球新報 社説    

「普天間」危険除去 政府の本気度が試される 2008年8月7日

 米軍普天間飛行場の危険性除去を検討する政府と県のワーキングチーム(作業班)の初会合が開かれた。防衛省は米軍機の運用実態について客観的データを収集するため、飛行航跡の観測調査を外部委託することを明らかにした。

 「客観的なデータ」の収集は大いに結構なことである。

 だが裏を返せば、政府はこの間、客観的なデータもないまま、米側の説明をうのみにしてきたと言えないか。

 普天間飛行場の危険性除去の方策として場周経路の見直しで米側と2007年8月に合意した際、政府は県や宜野湾市など関係自治体に、客観的データに基づかずに安全性向上や騒音軽減などを強調してきたと言わざるを得ない。

 普天間飛行場を「3年をめどに」閉鎖状態とするとの公約を掲げている仲井真弘多知事は「根本的には危険性の除去にはならない」とし、場周経路見直しを評価していない。

 当然である。危険性除去は普天間飛行場の即時閉鎖でしか実現できない。場周経路の見直し程度で、同飛行場の「3年内閉鎖状態実現」への回答になるわけがない。

 宜野湾市は、普天間所属ヘリが市全域を飛んでいると指摘している。日米合同委員会で合意した場周経路でさえ、米軍は守っていない現状がある。

 県は作業班の会合で「米軍機が場周経路を逸脱しているとの報告が地元から上がっている」と、安全対策として見直した経路を米軍機が守っていないと指摘した。

 現状を防衛省がしっかりと認識することが、危険性除去の出発点である。

 作業班の今後の会合では、県の話にもしっかりと耳を傾け、地元が十分に納得できる結論を出すことを政府には求めたい。

 米軍ヘリ沖国大墜落事故からやがて4年になる。今も、住宅地上空を米軍機が飛び交っている。危険性は事故当時と何ら変わっていない。

 作業班は早急に飛行航跡調査に着手し、結論を急ぐべきだ。

 ただ、客観的なデータを収集するだけでは意味がない。そのデータをどう評価し、普天間飛行場の危険性除去と騒音防止に結び付けるかである。正確な観測調査だったかの検証も必要だ。

 林芳正防衛相は「ワーキングチームの中で誠意を持って協議を進めたいというのが基本スタンスだ」と述べている。

 だが、危険性除去を目的とする以上、最終的には普天間飛行場を閉鎖することでしか、目的が達成されることはない。

 国民の命と暮らしを守る上での政府の本気度が試されているのである。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134950-storytopic-11.html

 

2008年8月7日(木) 夕刊 5面

大型輸送機が大挙飛来/嘉手納に8機 五輪警護用か

 【嘉手納】米軍嘉手納基地で六日までに、米空軍のC17大型輸送機七機とE4国家緊急空中指揮機一機の飛来が確認された。嘉手納町によると、大型輸送機の大挙飛来は「珍しい」という。

 目撃者によると、E4は五日、C17は三日から五日までに七機が相次いで飛来したという。同町によると、米軍から事前通知や目的などの説明はない。

 E4は、有事の際に米大統領や国防長官が搭乗し、国家空中運用センターとして、指揮、管制など通信中枢としての機能を果たす。同機やC17の飛来は、ブッシュ大統領が北京五輪開会式に出席することに伴うとみられる。

 同基地報道部は「太平洋地域における任務支援のために飛来した。運用警備上の理由で、到着機数や滞在期間についての情報は提供できない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808071700_03.html

 

2008年8月8日(金) 朝刊 1面

沖縄でも放射能漏れ/米原潜、ホワイトビーチで

2年余り冷却水流出

 【東京】米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)での放射能漏れが判明した米原潜「ヒューストン」は、二〇〇六年六月から〇八年七月までの間、うるま市のホワイトビーチと神奈川県横須賀基地に寄港した際にも微量の放射能漏れを起こしていたことが七日、米側の調査で明らかになった。同日、在日米国大使館から連絡を受けた外務省が発表した。

 米側によると、漏出した放射能はごく微量で、人体や環境に影響はないという。これまでの文部科学省による調査でも異常値は検出されていない。

 米側は、佐世保基地への寄港の際に放射性物質を含む冷却水が漏れていたことを日本側に通報した今月一日、「いつから漏れていたのか分からない」としていた。その後の調査で、〇六年六月から〇八年七月にホノルルの乾ドックに入った時点までに、冷却水漏れがあったことを新たに確認したという。

 〇六年六月以降の「ヒューストン」のホワイトビーチへの寄港は、〇七年が三月十七日、三月二十三日、十二月七―十一日、十二月十五日、〇八年は三月十二日の計九日間。佐世保基地は十六日間、横須賀基地は五日間だった。

 米側は、寄港日数や米政府によるコンピューター分析に基づき、この期間に周辺環境へ漏れたと推定される放射性物質の放出量の合計は、ホワイトビーチで六・三キロベクレル未満と説明。佐世保が十三キロベクレル未満、横須賀が三・五キロベクレル未満とした。

 その上で、「漏れた放射性物質の全体量は極めて少なく、人体、海洋生物、環境を危険にさらすものではない。日本へのすべての寄港の間に漏れた放射能の量をすべて合わせても、一般家庭用煙探知機に含まれる放射性物質の量よりも少ない」と説明している。

 これら三基地で放射性物質の放出量を常時観測している文部科学省は「今までの調査で異常値が検出されていないことから、人体や環境に影響を与える量が漏れていたとは考えていない」との見解を示した。


     ◇     ◇     ◇     

再発防止策の徹底を


 仲井真弘多知事の話 人体への影響がないとしても、極めて遺憾だと言うしかない。原子力潜水艦の放射能漏れはあり得ないと思っていた。驚きに近い。原潜については厳重な安全管理が必要だ。副知事から外務省北米局長に対し、遺憾の意と徹底した再発防止策を申し入れた。(通報の遅れなど)基本動作に問題がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808081300_01.html

 

2008年8月8日(金) 朝刊 26・27面 

放射能不安 現実に/死活問題 住民怒り

 「毎回異常なしと報告されていたのに」「人体への影響は」「風評被害が心配」。米原子力潜水艦がうるま市のホワイトビーチに寄港した時にも放射能漏れがあった。地元住民や漁業関係者らに怒りと不安がわき上がった。年間の寄港回数が、ここ四十年で過去最多になったばかり。安全を強調する米側、異常値はないと繰り返す日本政府に対し、地元は不安を募らせる。

首長ら「なぜ黙ってた」/うるま・沖縄市


 【中部】ホワイトビーチが所在する、うるま市の知念恒男市長は「人体に影響はないというが、(米軍が)いままで黙っていたのはなぜか」と疑問を抱く。沖縄市の東門美津子市長は「海はどこもつながっている。とんでもない話だ」と不安の声を上げた。

 知念市長は七日午後、外務省から文書で報告を受けた。三月の寄港から約五カ月を過ぎて明らかになった「ヒューストン」の放射能漏れの事実に、知念市長は「これまで異常なし、というだけの報告だった。地域住民の生活にもかかわるため、数値をきちんと示してもらいたい」と憤った。

 東門市長は「人体には影響がないと言われても海の生態系への影響も懸念され、すごく不安だ。原潜寄港のたびに異常はないと報告を受けたが、一体何を検査していたのか」と日本側の検査体制を疑問視した。

 うるま市議会は十一日に臨時議会を開き、原潜寄港に反対する抗議決議を提案する予定。同議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「文科省と米軍側の測定結果に二重の基準があるのではないか。発表される測定値に疑問を持たざるを得ない」と話す。

 知念市長は「抗議が一向に聞き入れられていない状況だ。市としても、米軍側にきちんとした情報公開を求めていきたい」と強調した。


総領事「透明性」を強調


 ケビン・メア在沖米国総領事は七日の定例会見で、原潜の放射能漏れについて、「日本側の調査で異常は検出されなかったが、(冷却水が)染み出ているのを見つけたのは米海軍の安全基準が機能していることを示すもの。なぜ米側が日本政府に通告したかというと、透明性を維持するためだ」と強調した。

 メア総領事は、米海軍の調査の最終報告のめどについて「いつ出るか分からないが、新しい情報が出れば日本側に通告するつもりだ」と述べた。米側は海軍を含め、原子力専門家と共に調査を進めているという。

 ホワイトビーチなど国内の港へ原潜が入港する際は、文部科学省などが大気中と海水に含まれる放射線レベルを測定している。

 総領事は「日本側の調査で異常な値は検出されていないが、米海軍の原潜の基準は特に厳しいので染み出ているのが見つかった」と述べた上で、「私の目から見ると米海軍の安全基準が機能しているのを示すことになる」と断言した。

 今年は原潜のホワイトビーチへの寄港が過去四十年間で最多の二十六回に及んでいることに「潜水艦のスケジュールは公表しないのは当たり前だが、米軍の艦船は民間の港にも入っている。米海軍が西太平洋の安全と平和に貢献するため、活躍しているということだ」との見解を示した。


健康・風評被害 漁業者強い懸念


 【うるま】原潜寄港が急増する中で明るみになったホワイトビーチでの放射能漏れ。地元うるま市勝連平敷屋区民や近隣の漁業関係者らは放射能のイメージによる風評被害を懸念、「死活問題にもなりかねない」と不安を募らせた。

 中城湾を囲む沖縄市漁協の小嶺仁組合長は「原油高で息の根を止められようとしているところに、追い打ちをかける知らせだ」と声を落とした。「漏れた量が小規模だったのは結果論だ。事故は起こり得ると実証されたことが重大。漁師や住民、消費者の不安は取り除けず、風評被害も心配。原子力艦船の寄港を認めるべきではない」と怒りをあらわにした。

 平敷屋区の西新屋光男区長は「人体への影響を含め、米軍や国はちゃんとした情報を流すべきた。区のイメージダウンを含め、生活に支障が出ないか心配だ」と表情を曇らせた。

 同区の大工、島袋智明さん(45)は同桟橋まで約一キロの距離に自宅があり、寄港する原潜を何度も見ているという。「微量だから大丈夫という問題ではない。体に悪い影響が出ないか気になる」と話した。

 モズクの生産が盛んな同地では風評被害も危惧される。生産、加工を含めモズク漁を生活の糧にする区民も多く、同区の漁業関係者は「このようなことが起これば、信頼回復に時間がかかり、死活問題だ」と声を荒らげた。

 ホワイトビーチに近い津堅島でも、モズクは大切な収入源。同区の新屋功区長は「モズクにもしものことがあれば、津堅島の経済は成り立たなくなる。万が一でも大きな事故につながったら大変だ」と危機感を抱く。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808081300_02.html

 

2008年8月8日(金) 朝刊 27面

軍の車盗み放置→軽盗み基地へ/容疑米兵を拘束

 【沖縄】七日午前十一時ごろ、沖縄市上地の民間契約駐車場に海兵隊の車両が放置されていると、駐車場の一部を管理する不動産会社から沖縄署に通報があった。米海兵隊報道部や沖縄防衛局から沖縄市に入った情報によると、車両はキャンプ瑞慶覧の修理工場から海兵隊員が盗んだものとみられ、米海兵隊が隊員の身柄を拘束した。

 現場は中の町小学校近くの住宅街。民間地に迷彩色の軍車両が放置され、助手席のドアが開けっ放しだった。車両は同日午後、憲兵隊が捜査後に移動した。海兵隊報道部は、隊員の所属や年齢などを公表していない。

 車両を見掛けたという女性は「何だろうと思ったが、怖くて近寄れなかった」と驚いた様子で話した。

 また同日朝、盗難届が出ていた軽自動車で同基地内に入ろうとした海兵隊員を米軍が拘束。沖縄署などは軍車両を窃盗した隊員と同一人物の可能性があるとして捜査する方針。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808081300_07.html

 

2008年8月8日(金) 夕刊 1・7面

うるま議会 抗議決議へ/米原潜放射能漏れ

 【うるま】うるま市議会の基地対策特別委員会(東浜光雄委員長)が八日午前開かれ、十一日に臨時会を開き、米原潜「ヒューストン」がうるま市勝連のホワイトビーチ寄港時に微量の放射能漏れを起こしていた件で、日米両政府などへの抗議決議案と意見書案を提出することを決めた。

 決議案では、米軍に対し、緊急時の施設内への立ち入り調査も要求。両案には原潜の寄港反対や事故の原因究明、安全性についての情報提供を求めることなどを盛り込んだ。

 両案の可決後、十一日中にも外務省沖縄事務所や沖縄防衛局、在沖米国総領事館などへ抗議行動を行う予定。委員会では市側にも独自の放射能調査実施を要望する。

 同議会はホワイトビーチへの原潜寄港が過去最多に上った件で、先月三十日に抗議決議案を可決したばかり。

 八日の委員会では、米軍などに対し非常時の危機管理や説明責任を求めるほか、地元漁業関係者への風評被害対策、安全性確保が議題の中心となった。

 同委員会では放射能漏れの報告が遅れたことを問題視しており、東浜委員長は「人体に影響がないという報告があったが、市民の安全を守る立場として、あってならないことだ」と憤った。


     ◇     ◇     ◇     

軍事優先 政府に怒り

米原潜放射能漏れ


 米原潜「ヒューストン」が、二年間にわたり、うるま市のホワイトビーチ、神奈川県横須賀基地、長崎県佐世保基地で放射能漏れを起こしていたことが発覚したことを受け、県内、全国の平和団体は八日、怒りの声を上げた。各地で連携し、住民生活より軍事優先の日米政府の姿勢に抗議する必要性を訴えた。

 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は同日午前、長崎市で開かれている原水爆禁止世界大会長崎集会に参加した。「全国の平和団体から、住民生活を脅かす米軍に対して何も言えない日本政府に批判が集中している。連携し、国会を動かす方向で機運が高まっている」と話した。

 県平和委員会の大久保康裕事務局長は、ロサンゼルス級原潜が大量生産されていることを挙げ、「構造的欠陥なら、同じ事故が起きる可能性がある。日米安保条約の当事者(政府)でなく、第三者による客観的調査が必要。被爆国として、寄港そのものの中止を求めるべきだ」と訴えた。

 米原子力空母配備問題で揺れる横須賀市にも衝撃が走った。神奈川県内数十団体でつくる原子力空母配備の是非を問う住民投票を成功させる会は同日午前、横須賀市に事故の真相究明を求める要請書を提出。米海軍にも公開質問状を送付した。新倉裕史共同代表は「空母配備問題を控える繊細な時期にもかかわらず、立て続けに事故が起きる。配備されれば、日常的に被害を受けるということだ」と述べた。

 米軍の活動を監視している佐世保軍事問題研究会の篠崎正人事務局長は「二年も放射能を漏らしながら平然と入港を繰り返していたとは、あきれて言葉が出てこない」と語気を強める。「米軍はいつでも自分たちの事情を優先させる。沖縄、横須賀の市民と連携して声を上げなければ」と力を込めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808081700_01.html

 

2008年8月8日(金) 夕刊 7面

名入りの水筒など発見/真嘉比の旧日本軍壕

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」(具志堅隆松代表)などが那覇市真嘉比の土地区画整理地区で行っている収集作業で、旧日本陸軍兵のものとみられる「西田」「真木」と書かれた水筒やせっけん箱など多くの遺留品が七日までに見つかった。

 六、七の両日に旧日本軍壕の中から見つかった。比較的状態が良い海軍所有の水筒三個のうち二個には実際に水が入っていた。軍靴や鉄かぶと、未使用の手りゅう弾や小銃弾、七五ミリ砲弾なども多数あった。

 具志堅代表は「西田」と書かれた水筒について、四四旅団独立混成十五連隊第二大隊の所属兵の所有物だった可能性を指摘。「一カ所からこれだけ多くの名前の手掛かりが出るのはめったにない。何とか遺族に返還したい」と話す。

 同大隊は、真嘉比に隣接する同市おもろまち一帯で、戦時中はシュガーローフと呼ばれた激戦地の守備を担っていた。収集作業で、これまでに四人の旧日本兵とみられる名前が書かれた遺品が見つかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808081700_04.html

米側、県外移設は「不可能」/反対決議県議要請 新基地建設 野党4党に反対訴え/県議会要請団 沖縄相は林幹雄氏 米原潜放射能漏れ/4カ月後発覚、渦巻く不信 など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(7月30日から8月3日)

2008年7月30日(水) 朝刊 2面

米側、県外移設は「不可能」/反対決議県議要請

 【東京】県議会の野党五会派の代表は二十九日午後、在日米国大使館、在日米軍司令部をそれぞれ訪れ、県議会六月定例会で可決した名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議を手渡し、同建設計画の撤回を求めた。米側の担当者は「作戦上沖縄以外への移設は不可能」(司令部)、「海兵隊のグアム移転とパッケージ」(大使館)などと従来の否定的な姿勢を崩さなかった。

 新里米吉団長ら要請団は「基地の固定化や環境破壊につながる新基地建設には断固反対し、世界に誇れる自然環境後世に残し引き継ぐことこそが県民の責務」とする決議文を提出し、「決議は民意だ」と建設計画の撤回を要求。

 米国大使館で対応したレイモンド・グリーン安全保障政策課長は「普天間飛行場の移転は、日米両政府が合意した在日米軍再編最終報告で、在沖海兵隊のグアム移転、嘉手納以南六基地の返還とパッケージとなっている」と理解を求めたという。

 横田基地の在日米軍司令部では、企画・政策担当のバーンサイド中佐が対応。(1)充実した日米安全保障関係は日本の安全のために必要(2)普天間飛行場は抑止力のために必要(3)普天間飛行場周辺の県民に配慮して辺野古移設を決めた(4)米軍再編は最終的に基地を減らすものとして県民のためになる―と指摘したという。

 これらに対し、要請団からは「米軍再編は県民の意思を無視して日米両政府が合意した。それを押しつけられている県民は納得していない」などの意見が上がったが、両機関の担当者は「責任者に伝える」と述べるにとどめたという。

 要請団は三十日、衆参両院議長あてに同様の内容の意見書を提出。そのほか、野党各党の幹部らにも要請する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301300_06.html

 

2008年7月30日(水) 朝刊 2面

米の禁止区域は「厳格」/宜野湾市長、ホノルル市助役から情報収集

 米軍普天間飛行場の早期返還や危険性除去を要請するため米国ハワイ州を訪問中の伊波洋一宜野湾市長は二十九日(現地時間二十八日)、ホノルル市のウェイン・ハシロ助役を訪ね、米軍と住民との関係や軍への要請方法などについて意見交換した。

 宜野湾市によると、ハシロ助役はホノルル市が年に四回、騒音など基地から派生する問題について軍と話し合う場を設けていることを説明。海兵隊や陸、海、空軍の四軍すべてが地域住民との定期会合を開いていることにも触れ、「通常は住宅地上空で飛行訓練は行われない。特別な訓練の場合は軍から住民へ事前に告知がされる」と述べた。

 普天間飛行場のクリアゾーン(利用禁止区域)に約三千六百人が生活する宜野湾市の現状を聞き、「ハワイでは危険な地域への住宅の建築を許可することはあり得ない。日米がどのような協議をしたか分からないが、米本国ならば軍主導で対策を講じる」と米軍の対応の違いに驚いたという。

 面談後、伊波市長は「米本国ではクリアゾーンが認知され、厳格に守られていることが明確になった。同時に、沖縄では住民がないがしろにされていることもはっきりした」と述べた。

 要請団は三十日(現地時間二十九日)、米国連邦議会議員のニール・アバクロンビー下院議員事務所やハワイ大学沖縄センターを訪れる予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301300_07.html

 

2008年7月30日(水) 朝刊 24面

沖縄を極める/検定委が公式ガイド発刊

 十月十三日に実施される第一回「沖縄大好き検定」を前に、同検定の公式ガイドブック(沖縄大好き検定委員会編、ぴあMOOK)がこのほど発刊された。沖縄の自然、歴史、文化の各分野を十二ジャンルに分け、「首里城」「沖縄学」「ひめゆりの塔」などの解説や重要項目を付した内容。

 同検定の阿南満三事務局長は「読んで知識が身に付く内容。意外と知らないことが多く、あらためて沖縄のことが勉強できる」と話している。

 ガイドブックは二百五十ページ余りの分量。本番の検定の問題の約70%が同書から出題される。監修には検定委員会の尚弘子氏(委員長)、田名真之氏(委員)が当たり、巻末には琉球・沖縄の略年表や検定の想定問題も収められている。ガイドブックの問い合わせはぴあ、電話03(3265)1424。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301300_08.html

 

2008年7月30日(水) 夕刊 5面

宜野湾議会が決議/普天間危険除去

 【宜野湾】宜野湾市議会(伊波廣助議長)は三十日午前、臨時会を開き、米軍普天間飛行場の危険性除去と早期返還を求める意見書を全会一致で可決した。八月一日に与野党議員十人で構成する要請団が県、四軍調整官、沖縄防衛局などに要請行動を展開し、同五日は上京して外務省、防衛省に危険性除去を訴える。

 同議会の危険性除去、返還を求める意見書を可決するのは二〇〇六年三月以来。議会運営委員会で意見書案提案を協議、臨時会を開いた。

 意見書は一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)返還合意から十二年が経過しても二〇〇四年八月に沖縄国際大学で米軍ヘリ事故が起きるなど、同飛行場の危険性が放置されていると強調。今年六月の普天間爆音訴訟で同飛行場の騒音が違法と認定されたことにも触れ、「いつ大惨事を引き起こすか予断を許さない状況での飛行場運用を放置することは許されない」とし、危険性除去と早期返還を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301700_03.html

 

2008年7月30日(水) 夕刊 4面

参院議長「努力する」/辺野古新基地反対意見書

 【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設計画撤回などを求め、要請行動を展開する県議会野党会派の要請団は三十日午前、参議院に江田五月議長を訪ね、六月定例会で可決した「辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書」を手渡し、理解を求めた。

 江田議長は「県民の多大な苦労を忘れるわけにはいかない。県民の中には本土とどうしてこんなに格差があるのかという沈痛な気持ちがあると思うので、基地問題を含めて努力していきたい」と述べた。

 要請団はそのほか六月定例会で可決した「後期高齢者医療制度の廃止等に関する意見書」を提出。江田議長は「日本中で高齢者を中心に疑問の声が上がっているが、議長の立場としては、国会で議論を深めてほしいし、皆さんの中でもしっかり議論してほしい」と述べるにとどめた。

 要請団は同日午後、民主、共産、社民、国民新の野党四党の幹部と面談し、普天間飛行場の移設計画の撤回や後期高齢者医療制度の廃止に向けた協力を求める予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301700_07.html

 

2008年7月30日(水) 夕刊 4面

うるま議会 抗議決議/原潜寄港年間最多

 【うるま】うるま市議会(島袋俊夫議長)は三十日午前、臨時会を開き、米原子力潜水艦のホワイトビーチ寄港が年間最多の二十六回に上ったことについて「長年、市民を不安に陥れている行為は人権軽視だ」とする抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。

 抗議決議は「例年に比べ、ホワイトビーチへの寄港頻度が突出している状況は異常だ。原因については『運用上の理由』で明らかにされないままだ」と日米両政府を批判。その上で「いかなる理由があるにせよ、原子力を用いるすべての軍艦を寄港させないよう要求する」とし、原潜寄港の禁止、寄港理由について明確に説明する―ことなどを求めている。あて先は首相、防衛相、在日米軍司令官、四軍調整官など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807301700_08.html

 

2008年7月31日(木) 朝刊 2面

新基地建設 野党4党に反対訴え/県議会要請団

 【東京】県議会野党会派の要請団は三十日午後、都内で民主党の鳩山由紀夫幹事長と面談し、六月定例会で可決した「辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書」、「後期高齢者医療制度の廃止等に関する意見書」を手渡し、今後の協力を要請した。

 要請団は「参院での決議は、全会一致は困難だろうが、何らかの形で民意を反映できるようにお願いしたい」と要望した。

 鳩山氏は「基地を国内に常時置く必要はない。普天間飛行場の返還を急ぐとともに、県外や国外に移設地を早く見つけるべきだ」と持論を展開したが、意見書の取り扱いについては「考えさせていただく」とするにとどめた。

 要請団は、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首、国民新党の自見庄三郎副代表らとも面談し、同様に要請した。

 三十一日は外務省、防衛省、厚生労働省、内閣府などを訪ね、意見書を手渡す予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807311300_04.html

 

2008年7月31日(木) 朝刊 24面

日弁連が中止要求/泡瀬埋め立て

 日本弁護士連合会(宮〓誠会長)は、沖縄市や県、国が進める泡瀬干潟埋め立て事業の中止を緊急に求める意見書を二十八日、内閣府に提出した。県、沖縄市にも同日付で郵送した。三十日、同会公害対策・環境保全委員会委員が県庁で会見し、公表した。

 意見書では、護岸内への土砂搬入が始まり、埋め立てが本格化していることに「工事が進めば、海草の消滅、サンゴの死滅など生態系に回復困難な損害を与える」と危機感を示し、事業の即刻中止を求めた。

 理由として(1)泡瀬干潟がラムサール条約登録湿地となる基準を満たす国際的に重要な湿地である(2)環境アセスメント後に希少種が発見されている(3)事業がバブル期に策定され、二〇〇一年度以降の企業進出予測の資料がなく、経済的な合理性にも疑問が残る―などと指摘した。

 また東門美津子沖縄市長が昨年示した「第一区域は継続、第二区域は推進困難」との方針に対し、第一区域の必要性の根拠となる市の土地利用計画が、第二区域の存在が前提になっていることや、計画変更に伴う新たなアセス予定がないことを批判した。

 意見書提出は二〇〇二年に次いで二度目。同連合会が今年三月に行った現地聞き取り調査などを基に、今月十八日の理事会で採択された。

※(注=〓はへんが「山」でつくりが「竒」)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807311300_08.html

 

2008年8月1日(金) 朝刊 2面

新規に島尻養護改築/09年度国庫支出金要請

 県は三十一日の庁議で、二〇〇九年度国庫支出金の要請方針を決めた。旧軍飛行場用地の対策事業について、特別調整費の活用による事業費の確保を盛り込んだ点が特徴だ。沖縄振興計画の期間内(一一年度まで)に事業完結する考えを示している。主な新規事業としては、糸満市・豊見城市清掃施設組合の灰溶融施設の整備、老朽化している島尻養護学校の増改築など、ハードを中心に十二事業を挙げた。来週にも仲井真弘多知事らが上京し、内閣府に要請する。

 八月末の各省庁への概算要求までに、雇用対策や観光振興、IT関連分野などで新規事業が盛り込まれるとみられる。

 要請では、沖縄振興計画に基づく諸施策を総合的に推進し、「中長期にわたる沖縄の将来像を展望しつつ、残された課題への対応と発展に向けた取り組みを力強く推進する」と強調。高率補助など特例措置の継続も求めている。

 新たに盛り込んだ旧軍飛行場用地問題の対策については、「同用地の存在によってコミュニティーが分散され、地域の伝統・文化の進展が阻害された地域で活性化を図る」と特別な振興策の必要性を強調。特別調整費の枠内での対応を要請する。

 新規事業では、糸満市・豊見城市清掃施設組合で灰溶融施設を整備する。高温で焼却灰を処理して生成される「溶融スラグ」は、建築資材として再資源化できるという。また、島尻養護学校の増改築、竹富町立竹富診療所に勤務する看護師の住宅を新たに整備し、医療環境の維持を目指す。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808011300_04.html

 

2008年8月2日(土) 朝刊 27面

増す負担 切実訴え/改造内閣

 「年金を滞りなくもらえる体制を」「安心して出産できるように」「新基地建設はいらない」。福田首相が一日、初めて断行した内閣改造。年金問題や医療格差、食料品・燃料の値上げに加え、基地の過重負担にあえぐ県民からは、切実な訴えが相次いだ。

 那覇市の下地勇さん(65)は六月から年金をもらい始めたばかり。「年金が、滞りなく受け取れる体制を整えてほしい」と求める。留任が決まった舛添要一厚労相については「言っていることとやっていることが違い、がっかりすることも多いが、継続的に責任を持って問題に対応してほしい」と要望した。

 那覇市内で買い物をしていた同市の会社員、儀間真弓さん(34)は、「ガソリンはまだしも、食料品の値上がりは事前に対策が打てたのではないか。もっと庶民の視点に立ってほしい」と訴えた。「沖縄担当相がしょっちゅう変わるのも問題。沖縄を理解してくれる、地元の人がなればいいのに、と思う」と話した。

 主婦の宮城礼子さん(58)=名護市=は、医療の地域格差是正を望む。「娘が出産するとき、中部の病院まで行き、移動に時間がかかって大変心配だった。安心して出産できる環境になってほしい」と話した。

 公務員の内間和昭さん(42)=名護市=も「子どもが三人おり、北部の医療過疎化を懸念している。自然を壊し、米兵の犯罪が増える辺野古への新基地建設は反対。沖縄担当相には基地の負担を理解し、離島・へき地の事情に配慮した政治を行ってほしい」と話した。

 栄養士の屋良智子さん(28)=同=は「職業柄、限られた予算の中で栄養あるものを作る努力をしているが、最近の値上げには参っている。北部病院の産婦人科問題など、地方行政だけでは解決困難なものに取り組み、女性に優しい政治をしてほしい」と期待した。

 那覇市の会社経営、竹内博さん(62)は、「女性が少ないし、新鮮味に欠け、官僚に流されている感じがする。国民の一人一人が好景気の実感を持てるようにしてほしかった」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808021300_01.html

 

2008年8月2日(土) 朝刊 1面 

沖縄相は林幹雄氏

 【東京】福田改造内閣で防衛相と沖縄相に決まった二人は一日午後、首相官邸で相次いで会見した。

 防衛相に就任する林芳正氏は米軍普天間飛行場の移設について「普天間周辺の危険性除去や航空機の騒音軽減を図るなど、県民の負担を軽減させるという意味で、ぜひともやっていかなければならない」と述べ、解決に意欲を示した。

 林氏は「(普天間問題は)協議会を設けて何回も協議を重ねてきた。協議会の下には二つのワーキングチームもつくって事務方にも入ってもらってやっている。その中で誠意を持って進めるというのが基本的なスタンスだ」との見解を強調した。

 一方、沖縄相に決まった林幹雄氏は、沖縄問題に対する姿勢について「自立型経済の構築に向けた取り組みを進めるとともに、在日米軍施設の集中による県民の負担を軽減したい」と述べた。

 普天間飛行場移設問題についても「全力を尽くす決意だ」との見解を示した。


     ◇     ◇     ◇     

空港拡張へ知事期待感


 仲井真弘多知事は一日、内閣改造に伴うコメントを発表し、沖縄担当相に就任する林幹雄氏に沖縄科学技術大学院大学の設置に向けた取り組み強化や、那覇空港拡張整備の早期実現などへの期待感を強調した。

 「できるだけ早い時期に直接お会いしたい」として、早期の会談に意欲を示した。

 観光・情報通信産業のさらなる振興や雇用の安定、新石垣空港と伊良部架橋の整備促進なども挙げ、「沖縄振興計画に基づく諸施策の推進に尽力賜りたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808021300_02.html

 

2008年8月2日(土) 朝刊 2面 

米海兵隊訓練受け入れ確認/下地氏要請に比大統領

 下地幹郎衆院議員は一日、フィリピン・マニラ市内のマラカニアン宮殿(大統領府)でアロヨ大統領と会談し、在沖米海兵隊の訓練移転の受け入れを要請した。下地氏によると、アロヨ大統領は「受け入れたい。フィリピン側に何も問題はない」との見解を示した。下地氏は二〇〇二年にも同様にアロヨ大統領と会談したが、同大統領は「受け入れるという意見は変わっていない。法的にも最高裁の見解を確認しており、問題ない」と説明したという。

 その上で大統領は〇三年六月、小泉純一郎元首相との首脳会談の際、「小泉総理から在沖米海兵隊の話を持ち出した」と明かした。一方で同年十月の米比首脳会談でブッシュ大統領は「日本政府から聞いていない」と述べたと言い、アロヨ大統領は日米比で訓練移転の構想を共有できていない現状を指摘。実現に向けて「日本政府が米政府に実務的に話し掛け、具体的に進めるべきだ」と述べたという。

 下地氏は「県民の負担軽減につながる新たな米軍再編が生まれる」と会談の手応えを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808021300_04.html

 

2008年8月2日(土) 夕刊 5面

「微量でも看過できぬ」/米原潜放射能漏れ

うるま市長 海水検査を要望

 米国のテレビ報道で二日、明らかとなった米海軍原子力潜水艦の放射能漏れ。米側から通報を受けた外務省は、報道されるまで原潜が寄港していた長崎・佐世保に連絡していなかった。「なぜ公表しないのか」。米軍施設がある各地の市民たちは不信感を募らせた。神奈川・横須賀に配備される原子力空母でも五月に火災が発生したばかりで、専門家は規律の緩みを指摘した。

 放射能漏れを起こした米原子力潜水艦ヒューストンが沖合に一時停泊していたうるま市の知念恒男市長(67)は二日、「重大な問題で看過できない。放射能漏れは微量でもあってはならないことだ」と懸念を示した。

 県基地対策課によると、ヒューストンは三月十二日に補給などのため米海軍基地のホワイトビーチ沖に二十四分間停泊。その際の放射能調査は平常値だったという。

 ホワイトビーチでは今年に入って原潜の寄港回数が急増。過去最多だった昨年の二十四回をすでに上回る二十六回を記録。うるま市議会は七月三十日、原潜寄港に反対する抗議の決議と意見書を可決している。

 知念市長は「放射能漏れや海洋汚染が起きたとしたら重大な問題だ。微量であっても(一度)看過されれば歯止めが利かなくなってしまう」と指摘。急増するホワイトビーチへの寄港に関しても「米軍は回数急増についての説明責任を果たし、海水の検査をきちんと行ってほしい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808021700_01.html

 

2008年8月3日(日) 朝刊 1・27面

米原潜放射能漏れ/4カ月後発覚 渦巻く不信

発表信用できない/沖縄でも・・・

 米原子力潜水艦ヒューストンが佐世保基地で放射能漏れを指摘されたのは、うるま市の米海軍ホワイトビーチに寄港してから、わずか十日後だった。四カ月後の発覚と通報の遅れ。「米軍も日本政府も信用できない」、「沖縄でも事故があったのではないか」。生活を脅かす「危険な兵器」と隣り合わせの日常を、あらためて突き付けられた地元では、怒りと不信感が渦巻いた。

 「重大な問題で看過できない。放射能漏れは微量でも、あってはならないことだ」。知念恒男うるま市長は強い懸念を示した。原潜の寄港回数が過去最多を更新、市議会は三十日に抗議決議をしたばかり。「米軍は回数急増の説明責任を果たし、海水検査をきちんと行ってほしい」と求めた。

 市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「米軍が事実を隠していたことは問題。外務省の公表遅れを見ても、もっと覆い隠された部分はたくさんあるだろう」と怒る。「寄港反対を求め、事実を明らかにしたい」とし、議会として抗議を含めた今後の対策を検討する予定。

 ホワイトビーチを抱えるうるま市平敷屋区の西新屋光男自治会長は、「入港のたび放射能漏れが気になる。安全に生活するために、米軍はちゃんとした情報を公開してほしい」と訴えた。

 県平和委員会の大久保康裕事務局長は、ヒューストンが米政府から核攻撃の認証を受け、特殊部隊と連動して動く「特別な原潜」と指摘。県内基地がすでに米軍の即応体制に組み込まれているとし、「憲法より日米安保、住民生活より軍事を優先する体質が、危険物質のずさんな管理、情報隠蔽を生む」と批判した。

 平和運動センターの山城博治事務局長は、横須賀に入港予定だった米原子力空母の火災を例に「日米政府の発表をうのみにできない。県や地方自治体、第三者機関が調査するべきだ」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

米原潜放射能漏れ/県、迅速な説明要望


 米海軍のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦ヒューストン(六〇八二トン)から微量の放射性物質を含む水が漏れていた問題で、外務省北米局の西宮伸一局長は二日、仲里全輝副知事に対し電話で冷却水漏れの状況を説明した。仲里副知事は、情報提供を速やかに行うよう要望した。

 西宮局長はハワイで冷却水漏れが検出されたが、寄港した佐世保基地(長崎県)や、うるま市勝連のホワイトビーチで漏れた事実は確認できておらず、漏れていても微量で人体や環境に影響はないと説明したという。

 仲里副知事は「沖縄でも長崎でも何の異常も見つかっていないと聞いた」とした上で、「微量でも漏れたのは管理に問題があるのではないか。こういう場合は迅速に説明してほしい」と述べ、米海軍の管理と外務省の通報態勢に疑問を投げ掛けた。

 米軍によると、ヒューストンは七月にハワイで行った定期検査で水漏れが発覚し、放射性物質が検出された。三月十二日午後にホワイトビーチにも入港し、二十四分間沖合に停泊。その後、佐世保基地に寄港した。ホワイトビーチへの原潜寄港年間回数は今年七月末で、過去四十年間最多の二十六回に達している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808031300_01.html

 

2008年8月3日(日) 朝刊 1面

白化の危機免れ/宜野湾沖にサンゴ群落

 一九九八年に沖縄のサンゴ礁を壊滅的状態に陥れた白化現象。その影響を免れ、成長し続ける大規模なサンゴ群落が宜野湾市沖の「大山長瀬」で見つかった。

 同群落を保全しようと、NPO法人県ダイビング安全対策協議会が二日、調査を行った。かなり潮の流れがあったが、二回の潜水で、根全体を覆う長さ九十メートル余りのサンゴを撮影。一メートル四方に仕切り、種類などを調べた。

 調査に同行した琉球大学熱帯生物圏研究センターの酒井一彦准教授は「とても貴重な群落。サンゴの大きさや枝ぶりから白化以前の可能性が極めて高い。卵の供給源になっている」とし、早い潮流がサンゴを白化から守ったのではと推測する。浅場から深い場所までサンゴが密生する景観に、近年沖縄本島では少なくなった「沖縄本来の海だ」と強調し、保護を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808031300_02.html

 

2008年8月3日(日) 朝刊 2面

沖縄関係大臣 初の閣議後会見

沖合移動は困難/林芳正防衛相

 【東京】林芳正防衛相は二日の初閣議後の会見で、米軍普天間飛行場の代替施設の沖合移動について「今の政府案は、安全性や騒音、環境への影響など、いろいろ考慮しながら米側と合意したもの。合理的な理由なく変更するのは難しいと思っている」と述べ、環境影響評価(アセスメント)の結果を踏まえて判断するとの従来見解を踏襲した認識を示した。

 その上で「それをきちっと詰めていくために協議会を八回やっている。その下にワーキングチームもつくり、さらに詳細を詰めていく。地元の方も入っているので、きちっと詰めた議論をしていきたい」と述べた。また、沖縄視察については「政治家個人としては委員会の視察等で沖縄に行っており、ある程度、沖縄の感じは肌で分かっているつもりでいる。行ってただ勉強するという立場でなくなったので、そういうことも踏まえてどうしたらいいのか考えたいと思う」と述べるにとどめた。


国際約束 変えられない/高村正彦外相


 【東京】外相に留任した高村正彦氏は二日の閣議後会見で、米軍普天間飛行場代替施設の沖合移動について「よほど合理的な理由がない限り、国際約束を安易に変えることはできない。私が合理的であると思う理由がないと、相手方を説得することだってできない」と述べ、自身が納得しない限り困難との見解を示した。高村氏は「絶対にノーというわけではないかもしれない」と沖合移動の可能性に含みを持たせつつ、「日米合意案は、地元の要望を受けた上で、米側と交渉した。自然環境、生活環境、実行可能性を総合的に判断して国際約束ができている」と否定的な見解を重ねて強調した。

 一方、普天間飛行場の危険性除去については、「(昨年八月時点で)すでに精いっぱいのものを出している」と、昨年八月に日米合意した危険性除去策を指摘。日米合意の履行を日本側が検証した上で、必要があれば米側と交渉するとの立場を示した。


那覇空港増設 国交省と協力/林幹雄沖縄担当相


 【東京】林幹雄沖縄担当相は二日、初閣議後に会見し、那覇空港の滑走路増設について「地元の声を十分に聞き入れながら、国土交通省とも積極的に進めていきたい」と述べ、現滑走路からの間隔を千三百十メートル以上離すことを求めている県の要望に配慮する考えを示唆した。

 沖縄訪問については「百聞は一見にしかずということもあり、一日も早く訪れたい。できれば八月は国会がないと思うので日程調整したい」と述べ、今月中の来県に意欲を見せた。

 米軍普天間飛行場の移設問題に関して「基本的にわれわれは地元と政府との橋渡し役だと認識している」との見解を示した。

 その上で、二〇一四年の完成目標に向けて「地元の意見を真摯に受け止めながら、誠意を持って協議を進めていきたい」と述べた。

 県内の振興策については「沖縄科学技術大学院大学の構想を進めていくことと同時に、インフラの整備を着実に進めていきたい」との考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808031300_03.html

 

2008年8月3日(日) 朝刊 2面

伊波宜野湾市長の訪米/要請効果に疑問の声

 米軍普天間飛行場の危険性除去を要請するため七月二十八日から私費で米ハワイ州を訪れていた宜野湾市の伊波洋一市長が一日、帰国した。現地では州議員や市民団体と意見交換したが、同飛行場を管轄する米太平洋軍総司令部への直訴は門前払いに終わった。一方、同市議会は同日、超党派の要請団で県や沖縄防衛局を訪ね、危険性除去と返還を求めたが、従来通りの回答しか得られていない。市長と市議会がそれぞれの思惑で要請活動を続けるが、市民からは、効果を疑問視する声も上がっている。(中部支社・銘苅一哲)

 今回の訪米で市長は、出発前に司令官の面談を断られていた。現地でも要請書の受け取りを拒否されたものの、伊波市長は「米軍が無視したいほどの問題。今後もクリアゾーンに焦点を絞り矛盾を追及する」と今後も安全基準の面から米側に対して早期返還を求めていく考えを強調した。

 一方、市議会は七月三十日に飛行場問題の解決を求める意見書を全会一致で可決。一日は超党派で県内要請行動を展開し、五日からは上京して政府や自民、公明などの政党へ直訴する予定だ。

 伊波市長の訪米の効果を疑問視する市議会野党はこれまで、三月定例会で市が提案した訪米費用を募る基金条例を否決。六月定例会でも提案された一般会計補正予算からも訪米予算を削除し、伊波市長は私費で渡米した。

 ある野党議員は「市長は米側への要請よりも日本政府への働き掛けに力を入れるべきだ」と批判。同時に「危険性除去は全市民の願い。市長の訪米を否定したままでは市民に示しがつかないため、議会での要請行動を計画した」と明かす。

 早稲田大学の江上能義教授(行政学)は「市長と議会がバラバラに行動するのでは要請先へのインパクトは小さい」と指摘。両者の政治的な立場の違いに理解を示した上で、「市民の代表ならば壁を越えて協力し、共に行動を起こすべきだ」と要請行動の在り方に疑問を投げ掛けている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808031300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年8月3日朝刊)

[福田改造内閣(下)]

「県外移設」の道を探れ


 福田改造内閣で沖縄政策に何らかの変化は出てくるだろうか。ほとんどないというのが大方の見方ではないか。

 福田康夫首相には当初から、過重な米軍基地の負担軽減や経済振興策にかける「特別な思い」が感じられず、改造内閣の沖縄関係閣僚の布陣で、この姿勢が変わったとは見えないからだ。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸域への移設計画で、政府と県、地元の協議会を主宰する官房長官の町村信孝氏、対米交渉に当たる外相の高村正彦氏はともに留任。町村氏は県との妥協を模索する「協調派」、高村氏は対米関係重視の「強硬派」とされる。

 防衛相は石破茂氏から初入閣の林芳正氏に代わった。外交・内政に精通するといわれ、日米地位協定の改定に積極姿勢を示したことがある。

 林氏にはまず、戦後六十三年がたっても、依然として米軍基地が沖縄に集中する現実を実際に訪れて肌で感じ、認識してもらいたい。

 沖縄のどこに新しい基地をつくる余地があるのか。県議会は辺野古沿岸域への移設に反対する決議と意見書を野党の賛成多数で可決している。直近の県議選で示された民意であり、尊重するべきだ。

 先の移設に関する協議会では、普天間飛行場の危険性除去と代替施設の建設計画・環境影響評価(アセスメント)を円滑に進めるための二つのワーキングチームを設置することで合意した。ワーキングチームは政府、県、地元で構成するが、早くも思惑の違いが露呈している。

 これまで町村氏が県寄りの姿勢を示していることもあって、県は町村氏残留に安堵しているようだ。滑走路の沖合移動を求めている仲井真弘多知事は「移動させますよ、という暗黙の了解があるから協議がスタートする」と期待感をにじませている。これに石破前防衛相は「沖合移動に道を開いたということにはつながらない」と即座に否定。高村氏も強硬な否定派だ。政府と県は「同床異夢」ともいえるような状況だ。

 移設予定地の辺野古沿岸域は、「自然環境の保全に関する指針」で、県自ら「評価ランク1」に分類している。

 国の天然記念物で国際保護獣のジュゴンが生息。新たなサンゴ群落も確認され、これらを破壊して新たな基地をつくることが沖縄の負担軽減につながるのか。

 海洋環境は世界に誇る沖縄の生命線といえる。多くの観光客が訪れるのも、海の素晴らしさにひかれてのことだ。

 一度失われた自然環境は元に戻せない。かけがえのない環境を大規模に破壊して新しい基地を建設することになれば、沖縄は自ら宝を壊してしまうことに等しい。

 解散・総選挙、米大統領選挙が近づく。政治状況の変化の可能性も見据え県外移設の選択肢を捨ててはならない。

 沖縄担当相は岸田文雄氏から初入閣の林幹雄氏へ。原油高騰で県内各業界は危機的だ。六月の完全失業率は8・4%。十四カ月ぶりの8%台で深刻さを増している。離島県に配慮した政策が必要であり、早急に取り組んでほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080803.html#no_1

 

琉球新報 社説    

原潜放射能漏れ 日米両政府は説明責任を 2008年8月3日

 恐れていたことが現実になった。米原潜の放射能漏れが明らかになったのだ。環境や人体に影響はないほど微量(米海軍)とはいうものの、量の問題ではなかろう。漏れたこと自体が絶対あってはならないことで、憂慮すべきことだろう。

 米軍の原子力艦船は沖縄のホワイトビーチにも頻繁に寄港しており、今回の事故は県民にとっても人ごとではない。日米両政府は事故原因を詳しく調べて結果を速やかに公表すべきだ。また、事故の再発防止策を徹底すべきだ。

 米海軍は1日、グアムを母港とする米攻撃型原子力潜水艦ヒューストンが今年3月下旬、米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)に寄港した際、放射性物質を含む水が漏れていたと明らかにした。同船は3月12日にはうるま市のホワイトビーチにも寄港している。原潜の寄港後、国や県が合同で放射能調査を実施しているが、その際に異常はなかったという。

 しかし、額面通りには受け取れない。漏れてはいるが微量で検査に引っ掛からない、という可能性もあろう。第一、少ない量でも何十年も続けば拡散・蓄積するという可能性はないのか。うるま市の知念恒男市長が「微量であっても(一度)看過されれば歯止めが利かなくなってしまう」と指摘するのも、当然のことだ。両政府には国民に説明する責任がある。

 ホワイトビーチへの米原潜の寄港は、過去最多を更新している。今年に入って26回。県が統計を取り始めた1968年以降最多だった昨年の24回を、既に7月時点で上回っている。さらに、64年以降、原子力艦船の日本各地への寄港は1200隻以上にも上る。こうした状況を見れば、安全性への国民の懸念は全国に及ぶことになる。うるま市議会でも7月30日、寄港に反対する抗議決議を全会一致で可決したばかりだ。

 今回の事故を米海軍が把握したのは7月24日。日本政府に通報したのが同31日(日本時間8月1日)だから、1週間も遅れたことになる。しかも、米CNNが報じた後に仕方なく確認している。もし、報道がなければ公表していたかどうか。米側の不誠実な態度は許されるものではない。

 「臭いものにはふた」。こんな体質をまたもや見せつけてしまったのが外務省だ。1日に米側から通報を受けていながら、官邸はもちろん地元の佐世保市やうるま市には伝えていない。「人体に影響がないから」が理由というのだから、あきれるほかない。「問題になるレベルのものではない」(日本政府高官)という発言と合わせて、危機管理意識のお粗末さには、りつぜんとするばかりだ。

 安保の土台を危うくしているのは、外務省自身ではないのか。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-134840-storytopic-11.html

新基地断念を要請/県議会代表が外務省などに 踏み込んだ方向性を/教科書検定審議会部会 宜野湾市長がハワイへ出発/普天間返還要請行動へ など  沖縄タイムス関連記事・社説(7月24日から29日)

2008年7月24日(木) 夕刊 1面

新基地断念を要請/県議会代表が外務省などに

 六月定例会で名護市辺野古沿岸部への新基地建設に反対する決議・意見書を可決した県議会(高嶺善伸議長)の代表は二十四日午前、外務省沖縄事務所や在日米軍沖縄調整事務所を訪ね、「新基地は過重な負担や固定化になり、周辺海域の環境破壊につながる」とした決議の趣旨を伝え、新基地建設計画断念を求めた。

 外務省沖縄事務所には、米軍基地関係特別委員会の渡嘉敷喜代子委員長をはじめ、社民・護憲ネット、共産党、民主党、社大・ニライの会、無所属クラブの野党五会派の代表が参加した。改革の会と、決議・意見書に反対した自民、公明県民会議は参加しなかった。

 県議らは「県民世論は辺野古への新基地建設反対が常に半数を超える。県議選の結果を受けた反対決議の可決は民意の反映。新基地建設反対は県民の総意だ」と訴えた。

 対応した外務省沖縄事務所の山田俊司事務官は「重く受け止めている」としながらも、「辺野古への移設は、再編協議で日米両政府が合意した訓練の移転、海兵隊のグアム移設、嘉手納基地以南の返還とパッケージになっている。合意を進めることが沖縄の負担軽減になる」という従来方針を示すにとどまった。

 在日米軍沖縄調整事務所では、バーノン・ボーン所長(大佐)が「私たちのレベルで解決できることではない」と述べ、四軍調整官のリチャード・ジルマー中将や在日米軍司令部に伝える意向を示すにとどめたという。

 県議団は同日午後、仲井真弘多知事や沖縄防衛局、在沖米国総領事館に要請する。週明けに上京し、外務省や防衛省、在日米軍司令部などに要請する予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807241700_04.html

 

2008年7月26日(土) 朝刊 31面

母国が手紙 支援を約束/米兵暴行事件被害の豪女性

 【東京】二〇〇二年に神奈川県で在日米海軍兵から性的暴行を受け、加害者に謝罪と補償を求めているオーストラリア出身の四十歳代女性のジェーンさん=仮名=が二十五日、都内の外国特派員協会で会見し、オーストラリア政府が米政府との交渉で全面的に支援する意向を示していることを明らかにした。支援を求めたジェーンさんの手紙に返事があったという。ジェーンさんは同日、在日米国大使館に手紙の写しと勝訴した民事訴訟の判決文などを提出し、迅速な対応を求めた。

 ジェーンさんは「オーストラリア政府から全面的に協力するとの返事をもらい、とても勇気づけられた。政府同士で早めに交渉し、犯人に謝罪と補償をさせてほしい」と訴えた。

 ジェーンさんは、行方が分からなくなっている加害者が米本国に居住しているとの情報が六月に知人から寄せられたことも明らかにした。ジェーンさんが加害者を相手に慰謝料を求めて起こした民事訴訟では性的暴行の事実が認定されている。ただ、加害者は審理中に出国し所在が分からず、本人からの支払いは実現していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807261300_03.html

 

2008年7月26日(土) 朝刊 2面

踏み込んだ方向性を/教科書検定審議会部会

 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題を受け、検定手続きの透明化を検討している教科書検定審議会の作業部会は二十五日、都内で会合を開いた。文部科学省は今後の議論の方針を示したが、委員からは、手続き改善の方向性が不明確だとの指摘が相次いだ。

 方針は(1)教育基本法で示す目標を踏まえた教科書改善(2)知識・技能の習得、活用、探究に対応する教科書の質・量での充実(3)正確かつ公正・中立で多面的・多角的な考察に資する教科書(4)子どもたちが学習しやすいよう配慮・工夫がなされた教科書づくり―の四点。

 委員側から「検定の仕組みをどうするか見えてこない。踏み込んだ方向性を出さないと(部会に求められる)議論の期待に応えられない」などの批判が出た。

 同省は「(方針は)検定に求められる基本理念を整理したもの。具体論は別途議論する」と説明した。

 手続きの透明化について委員から「何が公正・中立かは時代や事象によって変わる。教科書の記述は学校の先生に自信と確信を与えるものであり、そのためには検定プロセスをできる限り公開していくことが大事」との意見もあった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807261300_04.html

 

2008年7月27日(日) 朝刊 1・3面

返還地対策 国に責任/米軍再編シンポ

協定改め環境条項を/第二軍転法求め決議

 中部の市町村長や大学教授らが基地問題について議論する「米軍再編とどう向き合うか?沖縄中部地区の課題PART2」(主催・沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会、後援・沖縄中部市町村会)が二十六日、ちゃたんニライセンターで開催され、日米両政府で合意された嘉手納以南の基地の返還で、環境問題や跡地利用などの課題について議論を交わした。基地を抱える市町村長が直面する深刻な基地被害の現状を報告、日米地位協定の改定を軸に返還に向けた早急な対策の必要性を訴えた。

 沖大客員教授で軍事評論家の前田哲男氏は「返還に向けた出口戦略を構想する」と題して基調講演した。

 前田氏は憲法九五条(特別法の住民投票)を根拠に、佐世保や横須賀、呉、舞鶴の四市が一九五〇年、住民投票で「旧軍港都市転換法」を定め、国有財産だった旧軍施設を地元自治体に無償譲与されたと説明した。

 九五条に基づく法制定を活用し、返還後の在沖米軍基地の跡地対策を政府が担うような取り組みを提案。「県内の自治体には提起する権利がある」と呼び掛けた。

 また韓米地位協定や北大西洋条約機構(NATO)とドイツのボン協定が改定された事例を説明し、地位協定改定で環境条項を盛り込む重要性を説いた。

 シンポジウムでは、沖縄国際大学の照屋寛之教授が、第二次軍転法の制定を盛り込む決議文を読み上げた。

 (1)米軍に対し、有害物質の土壌汚染地域を容易に特定するため基地使用履歴情報の提供(2)返還前に政府が基地内の土壌汚染調査を実施(3)原状回復中、政府が地権者に給付金交付(4)基地従業員の雇用確保―などを盛り込むよう求めた決議文を参加者の拍手で採択した。決議文は県議会に提出する。

 シンポには二百人余が参加した。


     ◇     ◇     ◇     

返還前の調査必要/使用履歴の開示も


 【中部】「米軍再編とどう向き合うか」をテーマにしたシンポジウムは二十六日、沖縄、浦添の両市長や主催者である沖縄の「基地と行政」を考える大学人の会の教授らが、返還跡地が直面する環境汚染問題の解決策などについてパネルディスカッションを行った。(1面参照)

 米軍再編と沖縄中部地区自治体の課題と題して議論を展開。沖縄大学の桜井国俊学長は「現行の地位協定は米軍に浄化責任もなければ土地の利用履歴の提供義務もない。返還前の事前調査などで時間と経費を削減することは、地権者や地元自治体だけでなく税金を払う国民のためになる」と強調した。

 さらに県議会で「県生活環境保全条例」が基地内にも適用されるべきだと異論が出た事に対し、「県の条例を基地内に適用することは難しい。しかし地元の自治体が住民の命と暮らしを守るためにアクションを取ることは可能だ。返還に至る前にできることはやっていくべきだ」と訴えた。

 沖縄大学の前田哲男客員教授は「地位協定の問題は運用する政府が制度疲労を起こしているからだ。自民党の体制疲労が地位協定の問題をあらわにしてきた点を見逃してはならない」と指摘した。

 キャンプ・キンザーを抱える浦添市の儀間光男市長は「環境影響評価で三年かかり跡地利用は五年あっても足りない。地位協定を完全に見直さないといけない」と主張。嘉手納基地のある沖縄市の東門美津子市長は「県民が一つになり国民全体に問題を広げ、訴え続けることが必要」と来場者に呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807271300_01.html

 

2008年7月27日(日) 朝刊 1面

米原潜寄港 年最多に/ホワイトビーチ

 県基地対策課に入った連絡によると、二十六日午前九時四十七分、うるま市勝連のホワイトビーチに米海軍原子力潜水艦ロサンゼルス級プロヴィデンス(六、〇八二トン)が寄港した。県が統計を取っている過去四十年間で、年間最多の二十五回に達した。

 また第七艦隊報道部は沖縄タイムスの取材に対し、米海軍横須賀基地(神奈川県)で行われている港湾工事が影響し、潜水艦部隊がホワイトビーチを含む他基地を使用していると回答、寄港増の理由の一つが明らかになった。

 プロヴィデンスは病人移送を目的に入港、十一分後に出港した。

 ホワイトビーチには二十二日に入港した同級アッシュヴィル(六、〇八二トン)が依然として接岸している。

 文部科学省の調査によると、二隻とも放射能の値は平常値と同じだった。

 今年に入り同ビーチへの原潜寄港が増えたことに、同報道部は「潜水艦部隊の日程の詳細には言及できない」と前置きした上で、「日本を含むアジア太平洋地域への寄港はルーティンで、運用上の任務になっている」と説明。沖縄近海での訓練増加の質問には明言を避けた。

 一方、横須賀基地では原子力空母「ジョージ・ワシントン」の母港化に備え、昨年八月から港湾の浚渫工事が進んでおり、工期は今年八月までとなっている。

 同報道部は「ジョージ・ワシントンを受け入れる建設プロジェクトが進む間、潜水艦の乗員は沖縄を含む他の日本の基地を訪れていた」と述べ、ホワイトビーチや佐世保基地に寄港していたことを明かした。

 さらに報道部は、ホワイトビーチを「優れた施設があるだけでなく、素晴らしい文化や温暖な気候のため、第七艦隊の乗員にとって、沖縄は寄港地の中で最も訪れたい港の一つだ」ととらえていると説明した。

 一方、寄港増に危機感を募らせる地元のうるま市議会は二十五日、基地対策特別委員会(東浜光雄委員長)を招集し、三十日に臨時議会を開いて、寄港反対の抗議決議と意見書提案を決めた。(吉田伸)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807271300_02.html

 

2008年7月28日(月) 朝刊 3面

宜野湾市長がハワイへ出発/普天間返還要請行動へ

 【宜野湾】米軍普天間飛行場の早期返還と危険性除去を目的に、伊波洋一宜野湾市長は二十七日、米国ハワイ州への直訴行動に出発した。伊波市長は「市民の声を携え、墜落の危険性を一日も早くなくすよう米軍に要請する」と述べた。

 出発前に那覇空港で会見した伊波市長は、民間地への米軍機墜落事故を防ぐために日米で合意された飛行ルートが守られず、騒音は増加傾向にある現状を説明。米軍自らが事故危険地域に設定した滑走路近くのクリアゾーンに約三千六百人が生活する矛盾を指摘し、「危険性は極限状態に達している。米軍司令部や連邦議員に、運用停止による危険性除去を求める」と訪米の意図を述べた。

 米太平洋総司令官、米太平洋海兵隊司令官との面会が困難視されていることについては、「ハワイ滞在中も調整を続ける。面会が実現しなければ、現地の議員や学識経験者に今後の対応を相談する」とした。

 要請団には同市区選出県議の渡嘉敷喜代子氏、新垣清涼氏が同行した。ホノルル市助役や米国連邦議会議員などと面会し、八月一日に帰国する予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807281300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年7月28日朝刊)

[基地の跡利用]

新規立法へ対応を急げ


 日米両政府が合意した沖縄の米軍基地再編計画には決定的な盲点がある。

 普天間飛行場の辺野古移設を前提に返還が決まった嘉手納飛行場以南の六施設は(1)普天間飛行場(全面返還、約四百八十一ヘクタール)(2)キャンプ桑江(全面返還、約六十八ヘクタール)(3)キャンプ瑞慶覧(一部返還)(4)陸軍貯油施設・第一桑江タンクファーム地区(全面返還、約十六ヘクタール)(5)牧港補給地区(全面返還、約二百七十四ヘクタール)(6)那覇港湾施設(全面返還、約五十六ヘクタール)である。

 ところが、これらの施設をいつの時点でどのように返還するのか、土地の供給過剰がもたらす混乱にどう対応するのか、跡利用に国はどのようにかかわるのか―肝心な部分は具体的には何一つ決まっていないのである。

 どのような事業を実施するにせよ県や市町村の財政負担は避けられない。しかし、正直言って今の市町村に負担できるだけの財政力はない。

 過去の返還跡地は、返還から事業完了までに平均十四年三カ月もかかっている。これをどう短縮するか。地権者との合意形成も時間のかかる難題だ。

 途方もない課題が山のように立ちふさがっているのである。

 はっきりしているのは、現行の法制度ではこれだけの大規模な基地返還には全く対応できない、ということだ。

 二十六日、北谷町で開かれた米軍再編をめぐるシンポジウムで、沖縄本島中部五市町の首長は、口をそろえて窮状を訴え、国の財政支援を求めた。

 米軍は地位協定によって基地返還の際の原状回復義務を免除されている。土壌を汚染しても、浄化する責任がないのだ。その結果、何が起きているか。

 恩納通信所は、返還後に汚水処理槽からPCBなどの有害物質が検出され、地権者への土地引き渡しが遅れた。キャンプ桑江(北側地区)でも返還後に鉛、ヒ素などの有害物質が見つかった。「掘ったら何が出てくるか分からない」(野国昌春北谷町長)のが実情だ。

 跡地利用計画を策定するためには文化財調査が必要だが、事前の立ち入り調査は認められていない。「不透明な再編スケジュールが利用計画策定の障害となっている」(東門美津子沖縄市長)のである。

 返還後三年間の給付金支給を定めた駐留軍用地返還特措法(軍転特措法)や、大規模跡地、特定跡地への給付金支給を盛り込んだ沖縄振興特別措置法だけでは不十分だ。

 跡利用に当たって優先的に確立すべき原則は「国の責任の明確化」である。その作業を後回しにして移設作業だけを先行させると、県や市町村は政府との交渉カードを失い、財政負担を嫌う政府に押し切られることになりかねない。

 六施設の跡利用事業を円滑に進めるためには、新規立法が欠かせない。県と市町村は、これを「戦後処理・復帰処理事業」として位置付けてはどうだろうか。

 早急に問題点を整理し、県内の合意形成と世論喚起を図る必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080728.html#no_1

 

2008年7月29日(火) 朝刊 1面

空自那覇基地 給油機駐機場を整備

訓練想定 配備は否定

 【東京】航空自衛隊小牧基地(愛知県)へ今年三月に初めて配備されたKC767空中給油輸送機の運用性向上を目的に、防衛省が、空自那覇基地と千歳基地(北海道)の既存駐機場を補強整備する予定であることが二十八日、分かった。那覇基地では九月から測量などの調査を開始し、二〇〇九年度末ごろまでに整備する予定。

 防衛省は、同機が訓練などで飛来した際に使用することを想定しており、「格納庫を整備する予定はない。同機を那覇基地に配備するわけではない」と説明している。

 駐機場の整備目的については「南北に長い国土の中央に位置する小牧基地のみで運用することは不経済で非効率的」としている。整備費用は約三億円。

 軍事評論家の前田哲男氏(沖縄大学客員教授)は、「空中給油機により、戦闘機などの滞空時間は長くなり、活動範囲も広くなるが、自衛隊の『自衛』目的のために必要かどうかは疑問だ」と指摘した。

 KC767は、民間旅客機のボーイング767をベースに開発された新型機。現在小牧基地に二機が配備されており、〇九年度までに計四機体制となる予定。

 現在、同基地の空中給油・輸送機実用試験隊が実用試験を実施。今年十月ごろまでに実用試験を終え、運用試験に移行。一〇年一―三月ごろまでに本格的な部隊運用が始まる見通しだ。

 KC767の運用を想定し、今年三月と四月に空自のF15戦闘機が那覇基地や周辺空域で、米空軍嘉手納基地の空中給油機KC135から給油を受ける訓練を実施している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807291300_01.html

 

2008年7月29日(火) 朝刊 2面

嘉手納の諸問題訴え

来月三連協が上京

 【中部】沖縄、嘉手納、北谷の三市町でつくる嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十八日、北谷町役場で幹事会を開き、八月三日から五日の日程で、在日米軍のエドワード・ライス司令官の表敬訪問や米軍三沢基地(青森県)を視察することなどを確認した。三市町長が参加する。

 当初、三連協はライス司令官に嘉手納飛行場から派生する諸問題の解決促進について要請する予定だったが、在日米軍から「司令官が市町村長から要請書を受け取ることはできない」という旨の返答がきたため、表敬という形をとることにした。口頭で未明離陸など騒音問題について要請するとみられる。

 また、青森県内では、同基地のほか、三沢市役所や東北防衛局三沢防衛事務所を訪れ、基地から派生する事件事故への対応や運用状況などについて担当者と情報交換する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807291300_02.html

 

2008年7月29日(火) 夕刊 1面

要請書受け取り総司令部が拒否/宜野湾市長申請に

 【宜野湾】宜野湾市によると、米軍普天間飛行場の早期返還や危険性除去を要請するため米国ハワイ州を訪問中の伊波洋一宜野湾市長は二十九日(現地時間二十七日)、米太平洋軍総司令部のあるキャンプ・スミスを訪ねたが要請書の受け取りを拒否された。

 伊波市長は訪米前に同司令部司令官のティモシー・J・キーティング海軍大将との面談を断られていたため、同基地のゲートで要請書の提出を申請。対応したハインス同司令部渉外官は「米国防総省などを通じ提出してほしい」として受け取りを拒んだという。

 二〇〇四年の訪米で同司令部の戦務支援部長が対応し、要請書を直接手渡せたという伊波市長の指摘に対し、ハインス渉外官は「現在は正式なルートを通じて受け取ることがルールとなっている」と説明したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807291700_05.html

 

2008年7月29日(火) 夕刊 5面

米陸軍、在沖米兵立件へ/比女性暴行

 在日米陸軍は二十九日までに、沖縄市でフィリピン人女性を暴行したとして、在沖縄米陸軍のロナルド・ホプストック伍長(25)を強姦に関する罪などで立件することを決めた。

 在日米陸軍によると、今後は予備審問を開くなどして、百二十日以内に実際に軍法会議にかけるかどうかを決める。

 伍長は二月十八日、沖縄市内のホテルで二十一歳だったフィリピン人女性に暴行、けがをさせたとして県警が四月に強姦致傷容疑で書類送検。だが、那覇地検は五月、「十分な証拠がない」として嫌疑不十分で伍長を不起訴処分としていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200807291700_06.html

終戦63周年の決意 – 真の独立と平和を、生活向上を、民主主義を、環境を?敗戦

 今日は、敗戦・終戦記念日です。

 私は、当時6歳でした。今日と同じように晴れ上がった暑い夏の日でした。栃木県の矢板という小さな町の小さな教会に付属する牧師館にいました。

 牧師館の畳の部屋でした。縦型の真空管式ラジオ、茶色のラジオを大人たちが囲んでいました。そのラジオを今でもはっきり覚えています。敗戦の玉音放送(天皇の放送を「玉音」というのです!)が流されたのは、このラジオからでした。36歳の若い父はいませんでした。もちろん徴兵でとられ、中国戦線にいたからです。それから63年。

 私は、今年の敗戦記念日を、ひと月後に70歳を迎える年齢で迎えました。

 戦争と重なった、学齢前の時期を除けば、私の人生はほとんど、「戦後」と重なっています。その人生をふまえて、敗戦63年を記念する今日、私は、何を決意したでしょうか。私の決意は、平凡ではありますが、日本の真の独立を回復することと再び戦争をする国にはしない、平和憲法を守る、ということでした。

 [マスメディアと9条]しかし、マスメディアの状況を見ると、この決意は決して平凡ではないことに気づかされます。「戦争は二度としない」ということは、63年前は当たり前のことでした。その2年後に制定された日本国憲法、特に9条は、その当たり前の国民の感情を国の基本法に反映したものでした。しかし、今や、マスメディアや日本社会では、そのことが「当たり前のこと」ではなくなっています。社説で「憲法9条を守ろう」と旗色鮮明にしている新聞は地方紙にはかなりありますが、全国紙はそうではありません。東京新聞の今日の社説は、「人間中心主義に帰れー終戦記念日に考える」と題した、なかなかいい社説でした。オリンピックで言えば入賞ということになるでしょう。しかし、メダルの色は、残念ながら「金」とは行きませんでした。「銅」というところでしょうか。なぜなら、人間中心主義を政治的に反映しているものは、日本国憲法特に第9条であることへの言及がなかったからです。

 [憲法9条を守ること]戦後63年、沖縄県をふくむ日本は米「帝国」の従属下におかれています。「戦争をする国」米「帝国」に対して、日本は、「戦争をしない国」であることを国の基本法である憲法で定めています。しかるに、宗主国の政策に、従属国は国の基本的あり方をあわせようとしています。それが9条を中心とする憲法の改悪です。

 日本の対米従属の象徴であり実体であるものは、在沖日米軍基地です。この基地は現実に戦争状態です。1959年東京地裁は、伊達判決において、日本における米軍の存在は憲法ととうてい両立し得ない、と判示しました。

(なお、ここで、「在沖日米軍基地」と表記するのは、沖縄県における米軍基地(専用施設)が、施設数で全日本の41%、面積で75%を占める状況を考慮するとき、単に在日米軍基地と表記するだけでは、沖縄県をふくむ全日本国における米軍基地の異常な実態をうまく反映できないからです)

 戦後63年間、日本は戦争をしなかった、ということは、ある意味では当たっています。しかし、現実には当たっていません。日本は在沖日米軍基地の存在によって、国の基本法に反して「戦争をしてきた国」「戦争をしている国」なのです。それに加えるに、「自衛隊」の参戦と軍隊化が執拗に米日支配層によって追求され、恒久法まで立法しようとしています。

 日本310万人、アジア2000万人というとてつもない数の人命によってあがなわれ、今も被爆者などの苦しみによって生き続けている憲法を守ることは、米軍基地をなくす運動と相まって、日本を「戦争をしない国」であり続けさせるだけでなく世界を「戦争をしない国ぐに」にかえ、在沖日米軍基地と自衛隊派兵によって「戦争をしている国」であることをやめさせ、日本を真に独立した国にすることにつながると確信します。このことは、また、生活向上と、民主主義と、環境保全につながります。それを実現する統一・共同戦線結成のために生涯をかけて努力する決意です。

 これが私の敗戦・終戦63年の決意です。

(2008年8月15日)