福田首相辞任、県内も不安放置 沖縄密約訴訟、西山元記者の上告棄却/存在の有無判断せず など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(9月2日、3日)

2008年09月02日【朝刊】

県内も不安放置 福田首相辞任

原油高・格差・不景気・基地・・・

 福田康夫首相が突然辞意を表明した。一日夜、医療制度問題やガソリンや食品が高騰し経済問題が逼迫する中で突然の退陣表明。ちょうど一年前にいきなり辞職した前任者と同じように山積する問題を投げ出す指導者に「なぜ」「無責任だ」と県民の憤りは増幅した。格差や医療だけでなく基地問題はどう動くのか、今後への不安の声が各地で上がった。

 名護市内の大型スーパーで買い物をしていた主婦の具志堅洋子さん(50)は「政権運営が困難なのは分かっていたはずなのに、無責任。国の最高責任者が立て続けに職務を放棄したことで年金制度への不信感も増す」と怒った。

 浦添市内で山城興光さん(50)が営むパン屋では、原材料費が高騰する中、八月に一部商品の値上げに踏み切ったが、次は自身を含め従業員の人件費をカットするしかない、と覚悟を決めたところだ。「全然国民のことを考えていない。世の中が厳しい時こそ、国民と一緒に闘うのが政治家のあるべき姿ではないのか」と吐き捨てた。

 加納拓海さん(19)=沖縄市=は「年金や格差社会など、解決してほしい問題はたくさんあるが、何も改善されなかった。次の総理には、雇用や経済の活性化など、若者が期待を持てる社会づくりに取り組んでほしい」と話した。

 名護市で水泳インストラクターを務める新城裕和さん(36)は辞任のニュースを帰宅途中に知った。「びっくりの一言。どこまで進んだか分からなくなっている基地問題が、余計見えなくなる。一国のトップが一年で二人辞めたことを、子どもたちにどうやって説明しよう」と当惑の表情。

 石垣市内の居酒屋のテレビで辞任を知った門田満夫さん(49)は「人気はなかったが人柄は良かったので残念。衆議院を解散せずに辞めることは無責任だ。民主党の小沢さんにも一度、首相になってほしい」と政権交代に期待した。

 多和田美香さん(25)=沖縄市=は「何がやりたかったかみえない。消費者庁をつくると語っていたが、結果が出ていない。次の総理は、言ったことに責任を持って実現してほしい」と述べた。

 「なぜという驚きもあるし、やっぱりという感じもする」。那覇市の座間味和子さん(64)は、落ち着いた様子で退任を受け止めつつ、「原油高で農業や漁業、いろいろなところに影響が出て生活も苦しくなっている。米軍基地がある沖縄は、外交問題も無視できないので、次のリーダーには責任を持てる、冷静な人になってほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-025-1_005.html

 

2008年09月02日【朝刊】

県、対話継続を期待 福田首相辞任

普天間 交渉に暗雲/経済政策停滞を懸念

 福田康夫首相が突然の辞任を表明した一日夜、県幹部には驚きや戸惑いが広がった。米軍普天間飛行場の移設問題は、建設位置や危険性除去をめぐる政府と県の交渉が続いている。県首脳は「ようやく政府の理解が深まってきたところ。閣僚が代わると二重、三重の時間がかかる。これまでの議論を踏まえるのが信義則だ」とくぎを刺し、対話路線の継続を求めた。

 次期首相候補には麻生太郎自民党幹事長が有力視されている。麻生氏はかつて、普天間移設で下地幹郎衆院議員が提唱した「嘉手納統合案」に理解を示しており、県内部には「麻生首相になると議論が再燃しかねない」との警戒感もある。

 一方、県経済は原油高騰の影響で経済三十団体が県と国への支援を決議したばかり。県幹部は「政府は総合経済対策を粛々と進めてほしい」と経済政策の停滞への懸念を示した。

 沖縄振興計画は残り三年。ポスト振計の枠組みづくりには政府との綿密な協議が課題になる。「最近は中央の政治家の沖縄に対する理解が薄くなっていると言われる。これまで以上に沖縄に理解を持つ首相や閣僚が出てくるのを期待する。当然のことだ」と力を込めた。

 「まるで安倍さんのリプレイだ」―。福田首相の辞任会見を自宅のテレビで見た県幹部は絶句した。臨時国会中に政権を放り投げた安倍前首相に「無責任だ」との批判が上がったのが昨年の九月十二日。かつて見た光景がわずか一年足らずで繰り返された。

 支持率低迷にあえいだ福田内閣だが、景気浮揚策として八月二十九日、中小企業向け融資の信用保証枠の拡大などを盛り込んだ総合経済対策を決めた。原油や原材料価格の高騰で県内に「経済危機」への懸念が広がる中、県は政府の対策の詳細を見極めた上で対応を決め、県議会九月定例会に補正予算案を提出する道筋を描いていた。ある幹部は「首相が代わっても手続きは粛々と進めてほしい」と期待感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-002-1_001.html

 

2008年09月02日【朝刊】

嘉手納6割基準超え/基地騒音W値

昨年度県調査 普天間は3地点

 県文化環境部は一日、米軍嘉手納飛行場など県内三空港周辺の二〇〇七年度航空機騒音測定結果を発表した。騒音の度合いを示すうるささ指数(WECPNL=W値)は、嘉手納飛行場周辺で十五測定地点のうち六割の九地点、米軍普天間飛行場周辺で九地点のうち三分の一の三地点で環境基準を超えた。県文化環境部の知念建次部長らは近く米軍や沖縄防衛局など関係当局を訪ね、改善を要請する。

 測定地点は米軍の嘉手納、普天間の両飛行場と那覇空港周辺の二十八カ所。W値の平均が環境基準(七〇―七五デシベル)を超えたのは、嘉手納周辺九地点、普天間周辺三地点、那覇空港周辺一地点で計十三カ所だった。

 騒音発生回数は嘉手納飛行場周辺では、〇七年十一月から〇八年一月までのF15戦闘機の飛行停止があったこともあり、十五測定地点中十四地点で減少した。一方、普天間周辺では九測定地点すべてで増加。W値も七地点で前年度を上回るなど悪化が目立つ結果となった。

 W値が最も大きいのは、嘉手納周辺で北谷町砂辺の九一デシベル(最大値一一九・八デシベル)、普天間周辺で宜野湾市上大謝名の八五デシベル(最大値一二二・二デシベル)。嘉手納周辺では、〇二年度以降減少傾向だった夜間―早朝(午後十時―午前七時)の騒音発生回数が嘉手納町役場の測定地点で増加に転じた。

 嘉手納町基地渉外課は深夜から早朝の騒音が増えたことについて「エンジン調整音などが考えられる」とみている。

 一九九六年の日米合同委員会による「騒音規制措置」合意から十年以上たっても改善されない騒音被害。「知事が現場で爆音を実感し、問題解決に動いてほしい」。地元住民からは、いら立ちの声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-025-1_001.html

 

2008年09月02日【朝刊】

米軍発注情報 和訳して配信/建設新聞出版

 沖縄建設新聞の関連会社の建設新聞出版(那覇市、大久勝社長)は1日付で、米軍関係の建設工事関連発注情報を日本語訳してファクス配信する「米軍調達情報(建設版)」を創刊した。県庁で発表した大久社長は「言葉の壁を乗り越え、不振にあえぐ県内建設業界がチャンスをつかむきっかけになれば」と語った。

 米国防総省や軍ホームページ(HP)などに掲載される沖縄関連の発注情報を翻訳し、業務内容や入札条件、提出期限、問い合わせ先などの情報と落札結果を配信する。近日中に専用HPも開設し、過去3年分程度の入札・落札情報を検索できるようにするほか、入札登録から施工までのマニュアルとなるガイドブックも発行する予定だ。

 建設新聞出版によると、沖縄の米軍基地関連の工事は30社程度が受注実績を持つが、各社が独自に発注情報を得ているのが現状。各軍や基地ごとに発注され、県内で年間どの程度の工事発注があるかも把握されておらず、「データベースとしても貴重なものになるはずだ」(大久社長)という。

 購読料は年間2万8000円、随時発行で目標は3000部程度。軍関係の物品調達情報配信も今後、検討するという。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-013-1_005.html

 

2008年09月02日 沖縄タイムス 社説

[福田首相退陣表明(上)]

総理って、そんなものか

 福田康夫首相よお前もか―国民はそう思っているのではないか。

 自前の閣僚によって臨時国会を乗り切ろうとしていた福田首相が、突然政権を投げ出した。

 安倍晋三前首相に続く政権放棄である。どのような理由であれ国民を裏切る行為であり、政治家としての見識を疑わざるを得ない。

 首相は一日午後九時半から開いた緊急会見で、インド洋での自衛隊の給油活動の延長をめぐり、公明党と方針の違いがあることを暗に示した。

 この問題では北海道洞爺湖サミットの場で、ブッシュ米大統領に継続することを示し批判を受けた経緯がある。

 これには自民党内からも「国際公約を果たせない首相はこの秋に立ち往生せざるを得ない」という声があがっていた。

 不安が当たったということもできるが、公明党が衆院再議決への慎重姿勢を崩さなかったことが退陣を決断させた一因になった。

 首相は「大きな前進のための基礎を築くことができた」とも述べた。

 緊急経済対策の策定などを指しているのだろうが、その具体的な内容は十二日に召集する臨時国会で論議していくはずではなかったのか。

 それについての説明は十分ではなく、国民には全く分かりにくいと言うしかない。 

 責任を放棄した責任は重いのであり、安倍前首相の辞任劇に似た事態は政治に対する国民の信頼をさらに失墜させたといえよう。

 首相は「この際、新しい体制の下、政策実現を図らなければならない」と説明している。

 臨時国会を前にしたこの時期での表明については「今が政治空白をつくらない一番いい時期と考えた。新しい人に託した方がいい」と述べた。

 だが退陣を決断した背景には、臨時国会召集や定額減税の調整に首相の意向が届かなかったことも大きく影響したとみていいだろう。

 内閣改造でも内閣支持率が上がらず、自らの手で解散に踏み切るのは困難と判断したのも確かである。

 公明党はじめ「福田首相では(選挙を)戦えない」という与党内の空気もまた首相を追い詰めた。

 首相は道路特定財源の一般財源化に加えて、消費者庁の設置などに触れて「国民目線に立った」政策を実現させたと強調した。だが、それとてすべてが道半ばではないか。

 首相は昨年、安倍前首相の退陣を踏まえて「政治に対する信頼を取り戻すことが喫緊の課題だ」と表明していた。

 にもかかわらず、原油高・物価高による国民生活への深刻な影響、後期高齢者医療制度や宙に浮いた年金問題など、まさに解決を急がなければならない問題に指導力を発揮することができなかった。

 内外に課題が山積する中での退陣は、日本の政治に対する外交的信頼をも失墜させたといえる。

 自民党は早急に総裁選を実施することになるが、さらに大きな十字架を背負ったのは間違いない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-M_1-005-1_001.html

 

2008年09月02日【夕刊】

知事訪米予算1500万円/与党に説明 補正総額26億円

県は二日、日米地位協定改正や米軍基地の整理・縮小など基地問題を訴えるため、仲井真弘多知事の訪米予算として約千五百万円を県議会九月定例会に提出する補正予算案に計上することを決めた。同日午前開かれた与党代表者への議案説明で伝えた。仲井真知事は十一月に行われる大統領選後、来年一月までに訪米する方針だ。同知事の訪米は就任後初めて。

 県内産業や農業や漁業の原油高騰対策では約三千万円を計上する。今後、政府の対策を見ながら具体化させる考えだ。

 ほかに、沖縄振興対策特別調整費を活用した待機児童対策として、約十二億四千七百万円を計上し、同基金設置条例案も併せて提出する。

 また、離島遠隔教育の事業費に約八千万円を盛り込む。補正予算総額では約二十六億円の規模になる見込みだ。九月定例会は十七日に開会する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-02-E_1-001-2_003.html

 

2008年09月03日【朝刊】

西山元記者の上告棄却/存在の有無判断せず

沖縄密約訴訟

 沖縄返還交渉の取材で、日米両政府の「密約」がつづられた外務省の極秘公電を手に入れ、国家公務員法違反罪(秘密漏洩教唆)で有罪とされた元毎日新聞記者の西山太吉さん(76)が、密約を黙認した検察官の一方的な訴追で名誉を傷つけられているとして、国に密約を認めて謝罪するよう求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は二日、西山さん側の上告を棄却する決定をした。「密約」の有無を判断をしないまま、訴えを全面的に退けた一、二審判決が確定した。

 昨年三月の一審・東京地裁は、返還交渉の当事者だった吉野文六氏ら当時の外務省高官が、西山さんの刑事裁判で偽証したとする訴えなどに、除斥期間(損害賠償請求権の存続期間、二十年)を適用し、西山さん側の請求を棄却。

 今年二月の東京高裁も、一審判決を踏襲して西山さん側の控訴を棄却した。

 米側の公文書で密約が裏付けられるたびに、密約を否定する政府高官らの発言に、西山さん側は名誉棄損と訴えたが、判決は「政府の公式見解を一般的に述べただけ」で西山さんには言及していない、として退けた。

 また密約を記した米公文書の存在が報道された二〇〇〇年五月、当時の河野洋平外相が吉野氏に密約を否定するよう要請したとされる点についても「そのような要請をしたとしても、政府の公式見解に沿って報道に対応するよう働きかけたにすぎない」とした。

 西山太吉さんの話 行政と司法が完全に一体化した高度な政治的判断で、司法の自滅だ。この民事訴訟は、国家権力の存立基盤を侵害するほどの重大な問題を提起している。

 代理人の藤森克美弁護士の話 裁判官が「密約」の事実に向き合おうとしておらず、今回の最高裁の決定は裁判史上に残る汚点だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-001-1_002.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「密約」文書の公開請求/県内外記者ら63人/沖縄返還3通指定

沖縄返還直前に日米両政府高官が交わした3通の公文書について情報公開請求したジャーナリストら=2日、東京都千代田区

知る権利追求 提訴も視野

 【東京】沖縄返還に至る過程で日米の政府高官が交わした「秘密合意議事録」など三通の行政文書について、県内外のジャーナリストや学者らが二日、外務と財務両省に情報公開請求した。原則として三十日以内に回答がある。「文書不存在」という回答が予想されており、請求者らは、行政処分取り消しを求めて東京地裁への提訴も検討している。

 請求した文書は、一九六九年十二月二日付で日米財務官僚が交わした「秘密合意議事録」と七一年六月十一、十二両日付で日米の外交官が交わした「秘密合意書簡」の計三通。具体的文書を指定して公開請求をしたのは初めてという。

 請求者の共同代表は、ジャーナリストの原寿雄さんと筑紫哲也さん、憲法学者の奥平康弘さんの三人。そのほか国家公務員法違反罪で訴追された元毎日新聞記者の西山太吉さんや我部政明琉大教授ら計六十三人が名を連ねた。

 沖縄返還をめぐっては、米側負担と定められた軍用地の原状回復補償費四百万ドルを日本側が肩代わりする密約など、複数の秘密合意があることが米側文書で裏付けられたが、日本政府は一貫して否定している。

 都内で行われた会見で、原さんは「日本のジャーナリズムとして放置できない問題。知る権利の新しい戦い方として情報公開請求をした」と説明。奥平さんは「日本の民主主義の根幹を問うものであり、政府が『不存在』という回答をしても、追及の手を緩めてはならない」と強調した。

 西山さんは「文書には日米の交渉責任者のサインがあり、存在しないと逃げることはできない。国民の主権を根本的に検証するものだ」と意義を語った。

 情報公開を請求した県内メンバーも二日、県庁記者クラブで会見を開いた。

 沖縄対外問題研究会の宮里政玄代表は「沖縄返還交渉も(海兵隊の)グアム移転も原理は同じ。沖縄が利用されている」と指摘。フリージャーナリストの土江真樹子氏は「沖縄で生きる私たちがまず密約を知る権利がある。沖縄の現状の基になる返還密約を明らかにしたい。多くの県民、国民の理解や支援を求めたい」と呼び掛けた。

 沖縄大学の新崎盛暉名誉教授は「米国は強引だが、一定のルールがあって何年後に情報を公開するが、日本政府は一切なく、外交姿勢に緊張感を欠いている」と政府の外交姿勢を非難した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-027-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

競技場整備に米軍難色/高校総体カヌー場

共同使用域常設認めず/宜野座

 【東京】二〇一〇年に県内で開催される高校総体で、カヌー競技が行われる宜野座村が、漢那ダム隣の日米共同使用地域(キャンプ・ハンセン)に常設の競技施設を整備する計画について、米軍が常設では認めない意向を示していることが分かった。

 計画は、ダムをカヌーレーンとして使い、ゴール地点となる共同使用地域には、記録を計測する高さ十二メートルの「決勝タワー」や観覧席、進入道路を建設。大会後、タワーは野鳥観察施設として活用する方針。しかし、大会後も活用できる常設ではなく仮設なら認めると米軍が難色を示しているため、整備に支障が出ている。

 同村の仲宗根勲副村長と県カヌー協会の下地幹郎会長(衆院議員)らは二日、関係省庁を訪ね、計画への理解と支援を要請した。

 下地会長らによると、外務省は「常設が造られるよう米側と交渉し努力する」と協力を表明。防衛省は「全面的に協力する。タワー建設費も基地交付金などを活用して予算を付けたい」と述べたという。

 仲宗根副村長は「今まで調整がはかどらなかったが一歩前進。大会に向け取り組む思いを強くした」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-027-1_003.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「円滑な推進」再確認/那覇軍港移設協で国・地元

 【東京】米軍那覇港湾施設(軍港)の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)沖合への移設に関し、第十五回同港湾施設移設、第十五回同港湾施設移設受け入れ、第十四回県都那覇市の振興に関する三協議会が二日、防衛省で開かれた。国、県、那覇市、浦添市などの関係者が出席し、事業を円滑に進める方針を再確認した。

 移設協で防衛省は、那覇港湾施設の移設・返還に向けた基本検討を現在実施中で、本年度は代替施設の建設予定水域で埋め立てに必要な測量を予定していると説明。代替施設と民港、港湾計画との整合性を図りながら円滑な移設を進め、具体的事項については引き続き事務レベルで適切に対応する方針を確認した。

 受け入れ協では、防衛省と内閣府から、二〇〇九年度の浦添市の事業計画に関する予算を概算要求で計上したことなどが報告された。県都那覇市協では、内閣府から、奥武山公園の野球場整備など那覇市の振興に関する経費を〇九年度予算概算要求に計上したことなどが報告された。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-003-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

本部町「P3C」勝利集会/建設阻止祝う

 【本部】防衛省が本部町豊原に計画していた対潜水艦作戦センター(ASWOC)用送信所の建設断念を発表したことを受け、地元で反対運動を続けてきた住民らでつくるP3C阻止対策委員会(川上親友会長)は十三日、運動の拠点となった闘争小屋前広場で集会を開く。

 川上会長は「一九八八年の上本部中学校での反対集会から二十年。長かった戦いの締めくくりが勝利に終わったことに、喜びを感じ、安堵している。多くの方々の支援があればこそ。みんなで勝ち取った勝利を祝いたい」と参加を呼びかけている。

 集会は午後六時から。交流会も予定している。問い合わせ先は豊川区(元豊原区)事務所、電話0980(48)2351。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-026-1_005.html

 

2008年09月03日【朝刊】

「司法の独立 放棄」/識者ら批判

問題意識共有に意義

 沖縄返還をめぐる「密約」の有無の判断に、司法は最後まで踏み込むことはなかった。外務省の極秘公電を入手し有罪とされた元毎日新聞記者の西山太吉さん(76)が、国に密約を認め謝罪を求めた裁判は、訴えを退ける判決が確定した。識者やジャーナリストらは「司法の独立を自ら放棄した」と批判。一方で、「現在の沖縄の基地負担とつながる密約が、本質的問題として認知された」と、意義を強調した。

 米側公文書により密約を裏付けるなど、日米交渉に詳しい我部政明琉球大学教授は、「地裁も高裁も最高裁も結局、門前払いで、実際の中身について議論はしなかったということだ」と批判。原告代理人の藤森克美弁護士は、「第三小法廷の堀籠幸男裁判官は、西山さんの刑事裁判の最高裁判決で判例解説を書いた当時の最高裁調査官。自分が書いた当時の解説と、その後に明らかになった米政府の公文書の内容を照らせば、当時の判決が誤判であったことは明らか」と指摘した。

 「西山さんの行動で、多くのジャーナリストが本質部分で問題意識を共有できたことは、有意義だ」。日本ジャーナリスト会議の亀井淳代表委員は力を込めた。裁判所に対しては失望感を示しつつ、「政府が密約を隠ぺいし、その負担を今も沖縄が背負っていることが、広く認知された。今後も真実を求める運動が展開されるだろう」と期待した。

 ジャーナリストの岡留安則さんは「裁判所と政府・与党のなれ合い関係、米側しか見ず国民を欺く外務省の体質を変えるには、世論、政治主導で大なたを振るう必要がある」と強調。しっかりした情報公開システムをつくる必要性を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-026-1_001.html

 

2008年09月03日【朝刊】

問題の本質 向き合わず/[識者評]田島泰彦上智大教授

 沖縄返還の「密約」とは何だったのかが一番に問われた裁判で、最高裁は真正面から事実に向き合わなかった。

 この国の本質にかかわる問題に、またも司法が目を背けた。

 この裁判には、西山太吉さんの名誉回復という個人的な問題にとどまらず、国会に提示された沖縄返還協定が、本当に政府の説明通りだったのかという重大なテーマが含まれていた。密約があったということになれば、国権の最高機関で唯一の立法機関たる国会に、うそが提示されたことになる。すなわち憲法違反だ。

 それを裁判所でなくしてだれが裁くか。その役割を自ら放棄してしまった司法の現実が、あらためて確認された結果と言える。

 沖縄返還をめぐる「密約」は、単なる疑いではなく、米国の公文書で何度も裏付けられ、何よりも当時の事務方の最高責任者だった吉野文六・元外務相アメリカ局長が密約を認める証言をしている。

 にもかかわらず、その事実を明らかにしなかった司法とは一体、何なのか。

 ジャーナリストら有志で行った密約に対する情報公開請求は、既に明らかになっている事実について政府に説明責任を求めるという新しい試みになる。

 この取り組みでさらに密約の実態が明らかになれば、今回の最高裁決定がいかに問題の本質に向き合わないでたらめなものであったかが、あらためて明らかになるだろう。(談、「沖縄密約訴訟を考える会」世話人)

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-002-1_005.html

 

2008年09月03日 沖縄タイムス 社説

[福田首相退陣表明(下)]

政治空白は許されない

 安倍晋三前首相に続いて今度は福田康夫首相が唐突に辞任を表明した。議院内閣制の下で最も厳粛な立場にある国政の最高責任者が、わずか一年の間に、続けて二人も、果たすべき責任を果たさずに政権を投げ出したのである。自公連立政権が完全に行き詰まった、と言うべきだろう。

 だが、自民党の中には、この事態を政治の深刻な危機だと受け止める感度が著しく欠けているように見える。

 自民党は辞任表明から一夜明けた二日、総裁選挙を十日に告示し、二十二日に投開票することを決めた。

 総裁選に複数の候補者を立て、華々しく選挙戦を戦うことによって有権者の耳目を自民党に集め、その余勢をかって、「選挙の顔になる総裁」の下で解散・総選挙に打って出る。そのような考えらしいが、有権者を甘く見るなよ、と言いたい。

 二代にわたって「職場放棄首相」を出した自民党の責任は極めて重い。

 総裁選によって自民党の新しい総裁が選ばれ、その総裁が首班指名で福田首相の後継に選ばれる。はっきり言ってこれは与党内の政権たらい回しである。

 衆議院では確かに与党が三分の二を超える圧倒的な議席を保持している。しかし、この議席は二〇〇五年九月の「郵政選挙」で得た議席だ。その後一度も総選挙の洗礼を受けないままに首相だけがコロコロ替わるのは、政権の正当性という点で問題が多い。

 この異常な事態を解消するためにもできるだけ早く総選挙を実施し民意を問うべきだ。

 福田首相が「党に迷惑をかけたくない」との一心から、タイミングを見極めて計算づくで辞任を表明したのは明らかである。

 福田首相は「新しい体制の下、政策実現を図らなければならない」と言っている。だが、新しい体制になったからといって「逆転国会」の現実が変わるわけではない。

 基本的な構図が変わらない以上、臨時国会も緊迫した波乱含みの展開になるのは避けがたい。インド洋での海上自衛隊の給油活動を継続するための衆院再可決に公明党が慎重姿勢を示しているだけになおさらだ。

 つまるところ、次期政権を選挙管理内閣と位置づけ、できるだけ早く解散・総選挙を実施する以外に混迷を打開する道はないのである。

 景気が後退局面に入り、経済運営が厳しさを増す中で、日本の政治はいよいよ「解散政局」に突入する。

 民主党が勝てば政権交代が実現する。自公政権が現有議席を減らし、過半数をかろうじて維持する結果になった場合、衆参両院のねじれ状態が解消されないまま、衆院での再可決も不可能になる。

 今後、政界再編の動きが顕在化するのは間違いないだろう。すでにその兆しが出始めている。

 警戒しなければならないのは、政治空白が長引き、肝心の国民生活が置き去りにされることだ。国政が停滞し、国民がそのしわ寄せを受けるようなことがあってはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-005-1_001.html

 

琉球新報 社説    

福田首相辞任 解散・総選挙で信を問え/無責任すぎる政権与党 2008年9月3日

 有為転変、急転直下の出来事に、国民の多くがあぜんとしたことだろう。「またか」との声も多かった。

 1年前、臨時国会で所信表明をした直後に辞任した安倍晋三前首相に次ぐ失態である。

連立内の対立鮮明に

 一国の首相が思い付きのように簡単に辞任する。安倍前首相は「健康」が理由だったが、福田康夫首相は理由も釈然としない。

 「唐突辞任」が2人も続くと日本の政治家の打たれ弱さが心配だ。ひ弱な国のひ弱な政治家、その代表がひ弱な首相である。

 原油高と物価高騰で国内景気が後退する中で、中小零細企業は政府の景気対策を最後のよりどころに踏ん張っている。

 従業員や家族を抱え、辞めるに辞められない企業経営者たちの目に「はい、辞めます」と簡単に政権を投げ出す首相は、どう映っただろうか。「無責任」のそしりは免れない。

 合従連衡の自公政権だが、中身は同床異夢の感だ。インド洋での給油活動継続、景気対策での定額減税など自公間の政策相違、対立、足並みの乱れが鮮明になってきた。

 連立を担う公明党が、首相方針に公然と異を唱え始めたことも首相退陣の決断を後押ししたとの見方もある。「呉越同舟」政権の限界も透けて見える。

 この時期の辞任に福田首相は「今が政治的空白をつくらない一番いい時期と考えた」と説明したが、堅白同異の言い訳にすぎない。一国の首相が突然辞任して空白が生まれないわけがない。

 福田内閣は発足直後から政治資金、年金記録、C型肝炎、防衛省不祥事、揮発油税の暫定税率問題、日銀正副総裁人事の難航など、次々に噴出する政治課題の大波に大揺れに揺れ続けてきた。

 後期高齢者医療制度への批判も福田内閣の支持率低迷の原因だ。原油高で急速に冷え込む景気に効果的な対策を打ち出せない内閣に、国民の不信感も増した。

 人心一新を目指し1カ月前に断行した内閣改造も直後の農相事務所費問題が浮上しイメージダウン。安倍前内閣の末期と同じ様相となった。目前の臨時国会でも「ねじれ国会」の厳しい運営と、野党からのスキャンダルと政策批判の集中砲火で「火だるま内閣」となるのは必至だった。

 いずれにせよ任期途中で政権を突然投げ出す無責任首相を生み続ける自公政権は、すでに政権担当能力を喪失している。

 総選挙で国民の信任を受けることなく党内選挙で就任した首相だ。辞めるときも国民への責任はかけらも感じないであろう。

 そもそも選挙なしで政権を党内でたらい回しにする。密室政治と同じだ。議会制民主主義が制度として正しく機能していない。今度こそ早期解散・総選挙で、しっかりと民意を問うべきだ。

内閣に必要な使命感

 福田首相の辞任表明を受け、自民党は次の首相選びとなる総裁人事に着手している。現段階では麻生太郎幹事長が有力視されている。

 加速する「年内総選挙」の流れを踏まえ、小池百合子元防衛相への待望論もあると聞く。

 福田首相の突然の辞任に仲井真弘多知事は「基地問題はじめ経済振興等に配慮してもらった」と評価した。だが、仲里全輝副知事は「経済対策や原油高騰など政府の緊急かつ重要な課題が山積する中、なぜ今の時期に辞任するのか理解できない」と率直に語っている。無責任首相に格別の配慮は無用だ。

 次期首相に求めるのは責任感だ。どんなに困難でも途中で政権を投げ出さず、国民と最後まで苦難を共に乗り切る。強い使命感を持った首相の誕生を望みたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135873-storytopic-11.html

航跡調査/普天間・米軍機離着陸ルート 米が最終報告/原潜放射能漏れ、バルブから染み出す 防衛省、「普天間」調査2億円/概算要求 米大統領選、米軍「変革」で沖縄再生を など 沖縄タイムス関連記事、琉球新報 社説(8月28日から31日) 

2008年08月28日【朝刊】

きょうから航跡調査/普天間・米軍機離着陸ルート

沖縄防衛局が設置した航跡調査のアンテナ(中央)とGPS(右)=27日午後、北中城村・大城配水池

 【中部】防衛省は二十八日から、米軍普天間飛行場の場周経路の航跡調査を始める。沖縄防衛局が二十七日、宜野湾市や北中城村など同飛行場周辺の五市町村に観測装置を設置。九月三日まで、衛星利用測位システム(GPS)などを使用し同飛行場を離着陸する米軍機の飛行ルートを二十四時間観測する。これに合わせ、宜野湾市も同期間、市内二カ所で目視調査を行う。

 場周経路の見直しは、同飛行場周辺の市街地への米軍機墜落防止を目的に、二〇〇七年八月に日米で合意した。しかし、宜野湾市は日常的な「はみ出し飛行」を指摘。国は今月五日の県との危険性除去に関するワーキングチームで航跡調査の実施を発表していた。

 観測装置が設置されたのは宜野湾市、北中城村、北谷町、浦添市、西原町の五カ所。報道陣に公開された北中城村の大城配水池では、タンクの上にGPSと航空機からの電波を受信するアンテナの二本が設置された。

 五カ所の観測地の範囲内で米軍機が飛行した場合、航空機が発する電波を受信。衛星を通して位置を割り出し、飛行ルートを測定する。

 調査結果の公表について、沖縄防衛局は「調査データは国と県のワーキングチームへの提供を考えている。その他への公表は今のところ予定していない。調査終了後に検討したい」としている。

 宜野湾市は、同飛行場の南北に位置する同市野嵩と嘉数で目視調査を行う。調査時間は午前九時から午後十時までで、市職員が米軍機の機種や飛行ルートをチェック。防衛局の調査結果を入手次第、目視調査の結果と照らし合わせるという。

 同市基地政策部の山内繁雄部長は「国の調査は、市の要望が少しずつ実現しているということで、歓迎したい。通年の調査の話もあるが、調査だけでは意味がない。結果を基に実現性のある危険性除去策を求める」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-M_1-002-1_001.html

 

2008年08月28日【朝刊】

北京でベストを 沖・米選手誓い/基地内で代表ら交流

米国代表選手と交流する日本代表の上与那原寛和さん(右)や県内の競技者=27日午後、嘉手納基地リュウキュウミドルスクール

 九月六日開幕の北京パラリンピックに向け、米軍嘉手納基地で合宿している陸上競技の米国代表六人と、県内の障害者アスリートが二十七日、基地内のリュウキュウミドルスクールで交流した。

 陸上の上与那原寛和選手(37)や車いすラグビーの仲里進選手(31)ら県内の北京出場組も参加。互いの調整具合を聞いたり、米国側が代表チームのバッチやサイン入りポスターを贈る場面もあった。

 上与那原選手は、共に初出場でフルマラソンなど三種目で競うスティーブン・トヨジ選手(22)に「カーブや障害物があって難しいコースだが、パンクや事故がないよう一緒に頑張ろう」とエール。

 仲里選手は「北京に行くんだという気持ちが高まった」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-M_1-028-1_001.html

 

琉球新報 社説    

放射能「密約」 国民を危険にさらす行為だ 2008年8月28日

 「飲酒運転がばれるから、検知器は50メートル以内では使わないで」。そんな申し入れを、警察が内緒で受け入れていたら、どうだろうか。犯罪を野放しにし、国民を危険にさらす背信行為として糾弾されるべきだ。

 実際の事件は飲酒運転の話ではない。もっと重大な米海軍の原子力艦船の放射能モニタリング(監視)での日米両政府の「密約」だ。

 米原潜など日本に寄港する米原子力艦船については、寄港時に大気中の放射能の有無を確認する空中モニタリング(監視)の実施が義務付けられている。

 だが、その空中モニタリングの際に「(原子力艦船から)50メートル以内では行わない」との密約を、日米が1971年11月と12月に交わしていたことが分かった。

 「ドーキンズ・メモ」と呼ばれる「秘密口頭了解」の密約は、当時の米国務省東アジア局日本課のドーキンズ氏が交わしたものだ。

 メモには「沖縄密約」でも知られる外務省の「ミスター密約」の異名も持つ吉野文六アメリカ局長らの名前も出てくる。

 密約締結は一つの「事件」がきっかけだ。ドーキンズ・メモによると、69年11月に米原潜サーゴが横須賀に寄港した際に、モニタリングのため5メートルまで接近したところ、「放射能の増加が記録されたが、離れると数値は下がった」という。

 放射能漏れと思われる事態だ。だが日米政府が取った対応は「50メートル以内でモニタリングを行えば、原子力推進装置の秘密データをらせることになる」という軍事機密保持を理由にした日本の放射能監視業務の「骨抜き化」だった。

 米公文書には「極秘 無期限」の判が押されていたが、米政府が解禁。昨年、国際問題研究者の新原昭治氏が入手し、密約の存在が表面化した。

 信じ難いことには米大使館が日本政府から「絶対に秘密を守るようにとの訓令を受けた」との記述もある。放射能漏れの隠ぺいに手を貸し、国民を危険にさらす密約を結び秘密厳守を米に求める。その上、米国が密約を開示してもなお「密約は存在しない」と政府は否定し続けている。

 今年になって米原潜の沖縄寄港が頻繁化している。寄港した原潜の一部は、放射能漏れを起こしながら2年間も寄港を繰り返していた。放射能漏れは米側が自発的に日本に通報し初めて表面化した。

 政府の放射能チェック体制のずさんさにはあきれ果てる。9月下旬には被爆国日本に、初の原子力空母ジョージ・ワシントンが配備される。

 政府は国民を欺く「密約」の存在を認め、その上で即刻破棄し、原潜や空母艦内への立ち入りチェックも含め、確実で効果的な放射能監視体制の確立を急ぐべきだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135665-storytopic-11.html

 

2008年08月28日【夕刊】

ヘリ航跡 調査開始/国と宜野湾市

 【宜野湾】国が観測装置を使用して米軍普天間飛行場の航跡調査を始めた二十八日午前、宜野湾市も目視調査を開始した。同市職員が午前九時から宜野湾市野嵩の宜野湾市民会館、嘉数高台公園の二カ所から双眼鏡やビデオカメラを使用し、米軍機の飛行ルートをチェックした。衛星利用測位システム(GPS)などを使用した航跡調査を行う沖縄防衛局も嘉数高台公園に職員を配置し、目視調査を行っている。県も担当職員が同所での国の調査開始を確認した。

 宜野湾市の調査期間は国と同じく九月三日までの七日間。午前九時から午後十時まで待機し、確認した米軍機の機種や飛行ルート、時間を地図付きの調査用紙に記入。防衛局が実施中の航跡調査の結果と照らし合わせる予定。県の確認作業は二十八日だけという。

 この日は午前九時十五分ごろにKC130空中給油機が南向けに離陸。その後、CH53大型輸送ヘリやCH46中型輸送ヘリなどが飛行場内でホバリングを繰り返した。

 同市職員は「米軍が調査を意識しているのか、いつもより高い高度を取って海側へ離陸していた。期間中は飛行ルートのチェックと同時に、市民から苦情の多い夜間の飛行実態も把握したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-28-E_1-005-2_003.html

 

琉球新報 社説    

邦人殺害 再考したいNGOの安全 2008年8月29日

 国際貢献に汗を流してきた若者が、凶弾に倒れた。あまりにむごすぎる犠牲である。新たな犠牲を生まないためにも、「安全」に対する過信はないか、危険に対する警戒は十分か、あらためて確認したい。

 アフガニスタン東部ジャララバード近郊で、非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(本部・福岡市)の伊藤和也さんが、旧タリバン系武装勢力とみられるグループに拉致、殺害された。

 地元に溶け込み、真っ黒に日焼けし、荒れ地となったアフガニスタンで、20キロの用水路建設など大事業に取り組んできた。同会は第1回沖縄平和賞も受賞している。

 住民と一緒に汗を流す。その中で、地元の厚い信頼も得てきた。

 それが、何の因果で拉致殺害されなければならなかったのか。伊藤さんの無念を思うとたまらない。

 地元警察に拘束された拉致殺害の実行犯らは「アフガンの治安悪化を印象付け、外国人を追い出したかった」と供述しているようだが、それが理由だとするならば、あまりに軽率で浅はかな行為だ。

 「われわれの活動を知っていれば、あり得ないこと。活動を知らない人物がやったんだろうとしか言えない。悔しい」とのペシャワール会事務局長の福元満治さんの言葉に、無念さも募る。

 今回の拉致殺害事件で気になるのは安全に対する認識や対応など海外貢献での危機管理の甘さだ。

 同会現地代表の中村哲医師は「アフガンは今、ほとんどの地域が無政府状態にあり、いずれ日本人が狙われる」との危険性を指摘していた。「夏までには日本人全員を撤退させたい」としていたが、伊藤さんらの撤退は先延ばしになった。そして心配が現実になった。

 治安悪化の裏には、民間人を巻き込む米軍の空爆に対する反米感情の高まりに加え、インド洋での海上自衛隊による給油活動、自衛隊の本土派遣検討などへの対日感情の悪化、その結果としての「日本への報復」も指摘されている。

 日本の軍事的貢献の在り方に問題はなかったか。民間支援団体に安全に対する過信はなかったか。いま一度、検証と検討を急ぎたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135697-storytopic-11.html

 

2008年08月30日【朝刊】

米が最終報告/原潜放射能漏れ、バルブから染み出す

 【東京】在日米国大使館は二十九日、外務省に、米原子力潜水艦ヒューストンの冷却水漏れ事故に関する調査結果を報告した。事故原因について「閉じられたバルブの一つから、放射能を含む水が染み出した」と説明。再発防止に向けては「ヒューストンが再出港する前に、バルブの厳格な性能基準が満たされることを確実にすべく措置を講じている」と述べるにとどめた。原因などの詳細について「原子力潜水艦の設計や構造、米軍の運用にかかわることは安全保障上の理由から明らかにできない」と説明。「さらなる情報提供を行う予定はない」としている。

 放射能を含む水の染み出しについて「海軍の厳格な設計基準を上回るもので、こうした例は過去五十年以上存在しない」としながらも、「日本への寄港の際に放出された可能性のある放射能の総量は、一回のX線胸部撮影から受ける放射能の量を下回る」などと安全性を強調している。

 同大使館のズムワルト首席公使は同日、外務省の西宮伸一北米局長に「すべての原子力艦について具体的な措置、厳格な基準を維持することをあらためて確約する」と述べた。外務省は「政府としては今回の報告で、米原子力艦の安全性が再確認されたと考えており、引き続き安全性確保のため万全を期する」としている。

 米側の最終報告を受け、仲里全輝副知事は同日、西宮局長に口頭で「微量であっても、放射能を含む冷却水の漏洩は県民に大きな大きな不安を抱かせる」と指摘。これまで以上に再発防止に万全を期すよう求めた。

 知念恒男うるま市長は「従来の発表と何ら違いはなく、原潜の入港を拒否する地元の意見が聞き入れられていない。安全性などについて、もっとはっきりさせてほしかった」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-30-M_1-001-1_002.html

 

2008年08月30日【朝刊】

防衛省、「普天間」調査2億円/概算要求

 【東京】防衛省は二十九日、二〇〇九年度予算の概算要求を正式に決定した。沖縄関係では米軍普天間飛行場の航空機の飛行状況を年間を通して調査する経費約二億八百万円や、嘉手納基地の運用実態を調査する経費約千四百万円を要求。泡瀬ゴルフ場の移転工事完了を目指し、四十二億円余を計上した。

 そのほか、那覇市の陸上自衛隊第一混成団の旅団化に約二十五億円。糸満市与座岳に新型地上警戒管制レーダー(FPS―5)を整備、運用開始するため、二百二億円をそれぞれ求めた。普天間飛行場のヘリコプターの飛行状況をめぐっては、宜野湾市が日米合意した場周経路を守っていないと指摘。これを受け、今月二十八日から観測作業が始まっている。本年度は九月三日までの七日間、外部委託して実施しているが、来年度は航跡測定器を購入し、年間を通じて実施できるようにする。

 嘉手納基地の調査は、沖縄防衛局の嘉手納町移転に伴い、独自で運用状況を確認する必要があるとの判断から、防衛局が入居するビルの屋上にカメラを設置する。

 米軍再編関係では、在沖米海兵隊のグアム移転に関連し、日本が直接的に財政支援する司令部庁舎などの整備や民活事業による米軍家族住宅、インフラなどの整備事業を開始。事業推進を強化するため、同省にグアム移転事業室(仮称)を新設する。

 防衛省の防衛関係費は四兆八千四百四十九億円(前年度予算額比2・2%増)、SACO関係経費は百八十億円(前年度予算と同額)、米軍再編関係経費の地元負担軽減分は百九十一億円(同)。防衛関係費の増額分の半分は、原油高による油購入費の増大によるもの。

沖縄関係の総額1・7%増1608億円

 【東京】防衛省の二〇〇九年度予算概算要求で、基地対策などの推進に係る経費の沖縄関係分の総額(歳出ベース)は前年度比1・7%増の千六百八億五千八百万円だった。

 生活環境施設などに補助する民生安定や騒音防止対策など基地周辺対策経費は同12・5%減の百三十七億六千百万円。那覇市の奥武山球場の整備工事が〇九年度で完了するため。

 補償経費関係は、軍用地の借料に同1%増の約九百七億八千百万円を要求。軍用地の返還に伴う借り上げ面積は減少したが、借料の単価アップを盛り込み、ほぼ前年度並みとなった。

 米軍が公務で高速道路を使用する場合の通行料を肩代わりする経費は一億八千五百万円を要求。

 基地従業員関係は同0・8%減の四百六十七億六千四百万円を要求。在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の新特別協定改定に合わせ、〇九年度から格差給などが廃止されるため減少した。

 提供施設の整備は、同五・八倍の二十六億六千三百万円、提供施設の移設は86・2%増の四十二億二千二百万円を計上。それぞれの大幅な伸びは、過年度の契約による歳出によるもの。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-30-M_1-002-1_001.html

 

琉球新報 社説    

米大統領選 米軍「変革」で沖縄再生を 2008年8月31日

 米大統領選挙は28日に民主党がオバマ上院議員を大統領候補として正式に指名。共和党も29日に大統領候補のマケイン上院議員が副大統領候補にペイリン・アラスカ州知事を選出。9月1日には共和党大会も予定され、米大統領選は11月の本選に向けて一気に加速する。

 地理的には遠い米国だが、国内最大の米軍基地を抱える沖縄にとって最も身近で最も影響力のある国である。次期米大統領がどのような政策を持っているか。県民の未来にも大きな影響を与える。

 民主党の正式な大統領候補となったオバマ氏は28日夜行われた指名受諾演説で、8年間のブッシュ共和党政権の失策を厳しく批判、さまざまな変革による「米国の再生」を打ち上げた。

 オバマ氏の演説は、25日に発表された米民主党の党綱領に沿っている。党綱領にはイラクからの16カ月以内の米軍戦闘部隊の完全撤退、アフガンには戦闘部隊二個旅団を増派、国防に関しては陸軍6万5000人、海兵隊2万7000人の増強計画が盛り込まれている。

 アジア政策では「日本など同盟国との強固な関係維持が基礎」と強調しているが、軍事増強路線が色濃い民主党のオバマ氏が大統領に選出されても、在沖米軍基地の整理縮小は望めそうにもない。

 だからと言って、あきらめるわけにはいかない。米国はブッシュ政権下で、巨額の赤字財政と景気後退の二重苦にあえいでいる。

 アフガン、イラクと続く戦争で軍事費は膨れに膨れ、年間50兆円を超える巨額になっている。民主、共和を問わず次期大統領にとって財政赤字の削減は重要課題だ。

 ノーベル賞経済学者でコロンビア大学のジョセフ・E・スティグリッツ教授は「戦争は経済を上向かせない」として、イラク戦費に3兆ドル(約327兆円)を投じたブッシュ政権を断罪している。

 沖縄が基地依存経済からの脱却を目指すように米国も軍事経済からの脱却が課題だ。

 次期大統領には、脱軍事、脱戦争経済も「変革」の主要課題と位置付け、米軍基地を抱える沖縄の再生にも思いをはせてほしい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135761-storytopic-11.html

普天間代替・沖合移動、林防衛相、困難さ強調 海軍と初、図上訓練/日米合同 シュワブ立ち入り要請/市民団体 対馬丸犠牲者慰霊祭/16人に卒業証書 陸自第1混成団を増強/防衛省 海上保安庁11管44人を増員/尖閣警備など強化 など  沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(8月21日から27日)

2008年08月21日【朝刊】

「合理的理由なし」/普天間代替・沖合移動

林防衛相、困難さ強調

 就任後、初めて沖縄を訪れ、仲井真弘多知事や島袋吉和名護市長らと会談した林芳正防衛相は二十日午後、那覇市内のホテルで会見し、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設位置の沖合移動について、「合理的な理由なしに変更は困難」と繰り返し述べた。

 林防衛相は、沖縄の印象について「在日米軍の四軍が集中しているとあらためて感じた」と語った。その上で、「米軍再編はチャンス。この機会をきちっとつかまえて、実現する努力をしていかなければならない」と強調した。

 仲井真知事や島袋名護市長との会談については、「一緒に仕事をするための関係を築くコンセンサスを得られた。同じ姿勢でのスタートが切れた」と自信を見せた。

 島袋名護市長との会談は同日午前、冒頭以外は非公開で行われた。島袋市長は沖合移動のほか、地元企業の優先発注、細切れ返還が決まっているキャンプ・ハンセンの一部土地の継続使用など四項目を要望。防衛省によると、市長は「使用協定を精力的に協議したい」とも述べたという。

 島袋市長は会談後、「ワーキングチームができた。より具体的に互いの言い分を認め合いながら進めて、移設協議会で確認し合うことになると思う」と期待をにじませた。

 北部首長との昼食懇談会では、儀武剛北部市町村会会長(金武町長)が基地従業員について、北部地域からの優先雇用などを求めた。

 林防衛相はそのほか、普天間第二小学校周辺や嘉数高台公園から同飛行場や飛来したFA18戦闘攻撃機の離陸を視察。同飛行場の危険性除去に伴う飛行航測調査や四年前にCH53が墜落した沖縄国際大学の位置などについて、真部朗沖縄防衛局長の説明を受けた。

 伊波洋一宜野湾市長との会談を設定しなかったことについて、林防衛相は会見で「時間の制約もあり、至らなかった。あらゆる機会をとらえて、いろいろな方と意見交換することは大事。今後考えていきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-21-M_1-002-1_002.html

 

2008年08月21日【朝刊】

組織の立て直し確認/社大党大会

 社大党(喜納昌春委員長)は二十日、那覇市内の教育福祉会館で、第七十二回定期大会を開き、平和憲法の堅持、沖縄特別自治州に向けた道州制確立、米軍基地の整理縮小・撤去、普天間飛行場の即時撤去と名護市辺野古への新基地建設反対など十六項目の重点政策を決めた。

 六月県議選は公認当選二人という過去最低の結果になった結党以来の危機を迎え、党再生に向けた政治活動の強化、組織の立て直しを確認した。

 役員体制は、喜納委員長が再任、書記長には前浦添市議の当山勝利氏を選んだ。副委員長は参院議員の糸数慶子氏と、県議の大城一馬、比嘉京子両氏を選出した。

 喜納委員長は「自公の『改革』の名の下で国民に痛みを強要し、格差が拡大した。結党以来、最大の危機を迎え、土着政党を担うために、県民とともに党勢を拡大強化する」と述べた。

 党活動では、那覇市長選や西原町長選、浦添市長選などの首長選挙の取り組み強化、支部との連携強化などを挙げた。

 基本政策として「自立する沖縄社会の形成」を打ち出し、(1)医療保障制度の改悪反対、財源確保(2)年金記録不備問題の解決(3)後期高齢者医療制度の廃止(4)子育て環境の拡充―などを掲げた。基地問題は、最終的な米軍基地ゼロを目指し、返還に向けて「沖縄米軍基地返還基本法案(仮称)」の制定を提起した。

 大会宣言では、「後期高齢者医療制度の強行や燃料高騰などで、あらゆる産業、国民生活は混乱を来し、離島県の本県の苦悩は極めて厳しい。福田自公政権への不安、反撃は高まり、解散総選挙は秒読み段階」と自公政権を批判。「沖縄の自治、自立、平和を目指し、共生、平等などヒューマニズムを基調とした政策を実行し、土着政党の可能性と展望を切り開く」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-21-M_1-002-1_001.html

 

2008年08月22日【朝刊】

海軍と初 図上訓練/日米合同

 米軍機の墜落事故を想定した日米合同の図上訓練が二十一日、米海軍キャンプ・シールズ内の海軍会議室で行われ、日米の関係機関約六十人が参加した。これまで空軍や海兵隊との訓練は三度実施したが、海軍と行うのは初めて。

 図上訓練を基に来年一月か二月をめどに実動訓練を行う予定。

 訓練の冒頭が報道陣に公開され、在沖米海軍艦隊活動司令部のマイケル・ビズカラ司令官(大佐)は「今後の協力体制を強化するため、(訓練は)歴史的に意味がある」とあいさつ。「初期対応に携わる地元との連携を日米双方が理解するのはとても重要だ」と述べた。

 訓練はうるま市のホワイトビーチ内で米海軍のボート同士が接触事故を起こし負傷者が発生。救助するため同ビーチから離陸した海軍所属のヘリコプターが南原漁港周辺に墜落し、搭乗員ほか飛散物で地上の地元住民が負傷、駐車中の車両が損傷したと想定した。

 日本側の代表者として、出席した萱嶋満津保内閣官房沖縄危機管理官は終了後、県庁で記者会見を開き、通報連絡や消火、救出活動、立ち入り規制など一連の初動対応を日米双方で確認したと説明。「相互理解と信頼を深めることができた」と述べた。

 日本側は「搭乗人員や燃料などを搭載している危険物を迅速に伝えてほしい」と要望。米軍側は事故発生現場などの情報を「早く伝えてほしい」と求めたという。萱嶋氏は「海軍は消防隊を持っていないので、海兵隊や空軍の連携が必要。軍が二つ、三つになるので、実際に(地元の)警察や消防とどれだけ迅速に連携できるか、実動訓練で検証していく」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-22-M_1-002-1_002.html

 

2008年08月22日【朝刊】

シュワブ立ち入り要請/市民団体

 ジュゴンネットワーク沖縄事務局長の土田武信さんらは二十一日、沖縄防衛局を訪れ、名護市のキャンプ・シュワブで進む造成工事や埋蔵文化財調査の検証を目的に、市民三人と十二の市民団体の代表者の立ち入り許可を要請した。

 同局は受理する窓口が決まっておらず調整中として、申請書の受け取りを拒んだ。土田さんらは「粘り強く交渉したい」と話した。

 土田さんらは日米合同委員会の合意事項に基づき、二十人以内で申請日から十四日後の九月十七日に立ち入りたいと要望。市民団体の米軍施設への立ち入り申請は珍しいという。

 同局報道室の島尻明朝室長は土田さんらの要望について、防衛省や外務省沖縄事務所、在日米軍、現地米軍間で調整していると説明。調整中なので受け取れないと繰り返した。

 さらに、造成工事の現場視察について、同局管理部移設整備室の豊里利行室長補佐は「事業者として、作業員など関係者以外の立ち入りは認められない」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-22-M_1-028-1_005.html

 

2008年08月22日【夕刊】

沖縄戦直後の日常写す/米兵の孫87枚寄贈

 沖縄戦中から終戦直後の約一年間、米海軍の工兵隊員として沖縄に滞在したハロルド・フォーセットさん(享年65)が所有していた写真八十七枚を、ハロルドさん(40)の孫のスコットさんが二十二日午前、糸満市の県平和祈念資料館(宮城智子館長)に寄贈した。

 炊き出しを待つ人々、ござを編む老人、破壊された軽便鉄道や建物、整地される飛行場―。ハロルドさんがプライベートで撮影したとみられる写真には、戦後の収容所での生活や読谷飛行場の建設風景などが収められ、資料的価値が高い。

 ニューヨーク出身のハロルドさんは一九四五年三月初旬に沖縄に到着。四六年一月まで飛行場建設の任務に就きながら、趣味のカメラで本島内を撮影した。

 ニュージャージー州で沖縄空手、古武道道場を経営するスコットさんは、沖縄をテーマにした写真集も制作した。「沖縄の人や歴史、文化を知れば知るほど尊敬の念がわく。沖縄を含めた日本と米国は大いに協力し合うべきだ」と、写真の活用に期待した。

 宮城館長は「戦後混乱期の貴重な画像資料」と感謝した。

 同館は戦後の復興をテーマにした特別企画展(十月十日―十二月二十一日)で写真の一部を公開する。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-22-E_1-001-2_001.html

 

2008年08月23日【朝刊】

対馬丸犠牲者慰霊祭/16人に卒業証書

 一九四四年八月二十二日に米潜水艦に撃沈された疎開船「対馬丸」の犠牲者の慰霊祭が二十二日、那覇市若狭の「小桜の塔」であった。

 慰霊祭に続き、命を落とした甲辰国民学校六年生への卒業証書授与式が行われ、十六人の遺族に証書が手渡された。

 卒業証書は、四五年春に卒業予定だった同窓生たちが九一年に作成。対馬丸で犠牲になった三十三人の証書は同級生の大城正樹さん(76)が長年保管していたが、昨年末、対馬丸記念会に寄贈された。

 慰霊祭の後に行われた授与式では、義父が同校教師だったという同会の高良政勝会長(68)から、名乗り出た十六人の遺族に証書が手渡された。

 高江洲清一さんの証書を受け取った妹の清子さん(70)は「兄の名前が呼ばれたとき、たまらない気持ちになった」と涙を流した。二十二年前に亡くなった母カメさんはことあるごとに「自慢の息子だった」と振り返り、暇さえあれば慰霊塔に足を運んでいたという。「母が生きていたら、この証書をどんな思いで受け取っただろう。これから平和の礎へ行き、兄に『卒業』を報告します」と話した。

 甲辰国民学校は現在のパレットくもじ(那覇市久茂地)付近にあったが、沖縄戦の前に日本軍の兵舎として接収され、そのまま廃校となった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-23-M_1-026-1_004.html

 

2008年08月24日 沖縄タイムス 社説

[インド洋給油継続]

首相の「約束」は軽率だ

 国の根幹にかかわる外交が国会や与党内の手続きもなしに進められようとしているのだろうか。福田康夫首相は七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)に合わせて行われた日米首脳会談で、インド洋での海上自衛隊による給油活動の来年一月以降の継続を「約束する」とブッシュ米大統領に明言したという。

 福田首相は、給油活動の根拠となる新テロ対策特別措置法を来年一月の期限切れ以降も継続させる方針を米大統領に「約束」していたことになる。しかも、九月中旬とされる臨時国会召集の二カ月前にである。

 新テロ特措法は、今年一月に参院で民主党などの反対多数で否決され、その後衆院で出席議員の三分の二以上の賛成多数で再議決、成立した。

 国論を二分した法案の取り扱いは慎重の上にも慎重を期さねばならないはずなのに、福田首相は国会審議はおろか、与党内の調整すら終わっていない法案の継続を米大統領に約束していたことになる。

 事実だとすれば、福田首相の「約束」は国会軽視、さらに言えば国民無視と言わざるを得ない。新テロ特措法の継続が重要と考えるなら、国会での徹底した真摯な議論が先だ。他国の大統領との約束を優先し、国会審議や国民への説明を後回しにしようとするのは本末転倒で、とても理解できない。

 福田首相は、早急に日米首脳会談の内容をつまびらかにし、真相を明らかにすべきだ。

 米政府がインド洋での給油活動継続に強い関心を寄せていることは、シーファー米駐日大使が二十日、麻生太郎幹事長を自民党本部に訪ね、活動継続を要請したことからもうかがえる。

 シーファー大使は会談後、記者団に「日本の給油活動は日米同盟だけでなく、日本と国際社会の関係でも重要だ」と述べ、新テロ特措法改正法案の臨時国会での成立に強い期待感を示したという。

 他国の法案成立にここまで期待する背景には、日本のインド洋での給油活動が米軍の行動に欠かせなくなっていることを意味する。

 新テロ特措法改正案の論議は、インド洋で進む海上自衛隊と米軍との一体化など、憲法や国の安全保障にかかわる重要で複雑な問題を含んでいる。

 国会は、首相の「約束」の真相究明と平行し、十分に法案審議を尽くすべきだ。

 国民は、高騰する物価高に苦しみ、景気低迷で日々の生活に不安を抱いている。共同通信社の世論調査では福田改造内閣が優先して取り組むべき課題として国民の七割が、年金など社会保障、景気・雇用、格差問題を挙げている。

 福田首相は今月一日の内閣改造にあたって「物価高、景気低迷を解決する決意だ」と強調し、「安心実現内閣」と位置付けた。

 それなら、臨時国会では国民の暮らしを最優先に、具体的な対策を示すべきである。不用意な言動での混乱や審議への影響はあってはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-24-M_1-005-1_001.html

 

琉球新報 社説    

不発弾事業 処理費の全額国負担は当然 2008年8月26日

 63年前の沖縄戦で日・米両軍が使用した爆弾、砲弾類は20万トンといわれ、うち地下に埋没した不発弾は約1万トンとみられている。未処理不発弾はまだ2300トン存在すると推定されている。

 沖縄戦の「負の遺産」は今も県民生活に大きな影響を及ぼしている。その意味で沖縄の「戦後」はまだ終わっていない。

 不発弾対策に関しては2つの制度がある。探査・発掘事業のため内閣府が9割補助する「不発弾等処理交付金」と、総務省が特別交付税として5割を補助する「不発弾処理事業」だ。残り半額は当該市町村の負担で、自治体財政を圧迫している。

 不発弾が見つかった場合、市町村は陸上自衛隊に撤去要請を行う一方、住民の安全のため、不発弾の周辺に土のうを積み、住民への広報、処理時の住民の避難、交通規制などの対策を講じる。

 それらに要した費用は、2003年度以降は2000万円前後で推移している。それを県市町村課を通して、総務省へ申請。半額が特別交付税として支出される。

 これまでも県や県市長会、県町村会は処理事業を全額国庫負担で行うよう国に要請してきたが、先送りされてきた。

 やっと国が重い腰を上げた。沖縄県だけの特例として、政府がほぼ全額負担する制度の創設を検討しているという。

 09年度の概算要求で、内閣府が9割補助している「不発弾等処理交付金」を「処理事業」にも充てるよう2000万円増額(計4億6000万円)して盛り込む。一部、自治体負担も残す方向だが、それでも自治体負担はだいぶ軽減されることになるという。

 10年度以降は、制度化を目指して関係省庁間で検討を進めるという。遅きに失した感はぬぐえないが、検討だけで終わることなく実現してもらいたい。

 不発弾事故では1974年、那覇市小禄の下水道での排水工事中に爆発し、園児ら4人が死亡、34人負傷し、家屋の全半壊は46棟に上り県民を震撼(しんかん)させた。

 それ以降も伊良部町(75年、現宮古島市)や那覇市長田(87年)、伊江村東江上(89年)などで3人が死亡、10人余が負傷する事故が発生している。

 今回の国の方針に、南部市町村会会長の城間俊安南風原町長は「国が理解を示してくれたこと」を歓迎する。伊波洋一宜野湾市長は「当然の処置だ」とした上で、「(市町村の)負担がなくなる仕組みをつくり上げてほしい」と求めた。

 不発弾処理事業に係る新制度を創設し、全額国庫負担とするのは当然である。だが、それにより他の沖縄関連予算の規模を縮減することがないよう政府には求めたい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135602-storytopic-11.html

 

2008年08月26日【夕刊】 政治

陸自第1混成団を増強/防衛省

300人増 2100人体制に/唯一の離島対応型

 【東京】防衛省は二十六日、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)を二〇〇九年度中に「第一五旅団」に格上げし、定員を約三百人増強、約二千百人体制とする方針を固めた。関係予算を〇九年度予算概算要求に盛り込む。事態対処能力を向上させるため、混成団の混成群を廃止して普通科連隊を新編する。そのほか、敵情を視察する偵察隊や化学防護隊もそれぞれ新編するなど、大幅に組織を改編する。

 第一混成団の旅団化は、〇四年に閣議で決定された中期防衛力整備計画(〇五―〇九年度)に基づく措置。

 第一混成団は「離島タイプの即応近代化旅団」に変容。島しょ侵攻への対応が重視される中、「離島タイプ」と位置付けられる国内唯一の旅団となる。

 機動性の向上を図るため、軽装甲機動車、高機動車を新たに導入。そのほか、航空運用能力を向上させるため、現有の航空機の数は維持しながら、待機体制を強化する方針だ。

 旅団化をめぐって〇八年度は、陸上自衛隊那覇基地内に旅団の中枢機能を果たす司令部庁舎のほか、隊舎を建設中。

 県内では一方で、航空自衛隊が那覇基地の旧型主力戦闘機F4部隊を茨城県百里基地のF15部隊と入れ替える計画もある。〇八年度は施設整備と整備機材の取得が進められており、年度末にも那覇基地へのF15移駐が始まる見通しだ。

 第一混成団の旅団化や那覇基地のF15配備は、軍備力を急速に増強させている中国などをにらんだ「西方シフト」の象徴的な動きといえる。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-26-E_1-001-2_001.html

 

2008年08月26日【夕刊】

国・県に遺骨鑑定要請/遺族の会

 那覇市真嘉比で発見された日本兵とみられる遺骨や複数の遺品について、県外の遺族でつくる真嘉比壕戦死者遺族の会(秋山格之助代表)は二十五日までに、厚生労働省と県に対し、遺骨のDNA鑑定と、遺品に記された名字などから遺族を特定し、返却するよう求める要請書を提出した。

 厚労省援護企画課外事室は「発掘状況など県と情報交換しながら今後の方針を決めたい」とし、DNA鑑定や遺品調査を行うかどうかを含めて「検討中」とした。県福祉・援護課は「国の方針が決まってから対応したい」と話した。

 秋山代表は「民間では調査に限界がある。高齢化している遺族の気持ちを考えて、早急に対応してほしい」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-26-E_1-005-2_006.html

 

2008年08月27日【朝刊】

ドクターヘリに21億円/厚労省概算要求

 【東京】厚生労働省は二十六日、二〇〇九年度の概算要求をまとめ、ドクターヘリ導入促進事業として二十一億円を盛り込んだ。〇八年度の当初予算に比べて七億円の増額。来年度は全国八カ所に導入する。沖縄を含め、どこに配備するかは特定していない。

 県内への二機目導入について、厚労省は「可能性はなくはないが、沖縄配備分として概算要求したものではない」と指摘。二機目を求める県の要望があるかどうかや、受け皿となる病院施設の整備状況などを基に、導入地域を決めるという。

 沖縄では今年十二月から浦添総合病院で一機目が導入される見通し。舛添要一厚労相は今月十三日、名護市を訪れた際に「来年度、沖縄に二機目を入れようと思っている」と述べていた。

 厚労省は、全国からの要望を踏まえ、現在は昼間だけに限られているヘリの運航を夜間も利用できるよう経費の補助も行う。

「ふるさと納税」県人会に要請へ/五ノ日の会 ヘリ財源で

 【東京】県選出・関係の自民党国会議員でつくる五ノ日の会(会長・仲村正治衆院議員)は二十六日、都内で会合を開いた。北部地区の救急ヘリの財源などについて協議し、在京の県人会にふるさと納税への協力を求めることを決めた。

 救急ヘリの財源については、舛添要一厚労相が、ふるさと納税や在日米軍再編交付金の活用を提案していた。仲村会長らは二十七日に舛添厚労相と会い、財源の在り方について意見交換する予定だ。

 また同会は、国発注工事について県内企業への優先発注などの配慮を求め、二十八日にも内閣府、国土交通、防衛などの関係府省に要請する方針も決めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-M_1-002-1_003.html

 

2008年08月27日【朝刊】

「政策正直に伝えた」/米総領事、「沖縄退島」要求に

 【宜野湾】「普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団」(通称・普天間爆音訴訟団)の島田善次団長らは二十六日午前、在沖米国総領事館を訪ね、ケビン・メア総領事に対し「反県民的な言動に抗議し、即刻、沖縄から退島するよう要求する」決議書を手渡した。これに対し、メア総領事は「私の役割は、米国の政策を正直に住民に伝えること。個人的に発言しているわけではない」と述べたという。

 決議文では宜野湾市の米軍普天間飛行場周辺に住宅地が隣接する状況について、メア総領事が七月十一日の会見で「なぜ宜野湾市が建設を許しているのか疑問」と発言したことに抗議。メア総領事は、福岡空港などと周辺の人口密度や飛行回数を比較した場合、普天間飛行場周辺の危険性は低いと主張し、住民から反発の声が上がっていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-M_1-026-1_002.html

 

琉球新報 社説

返還跡利用構想 「攻め」の行政に転換を 2008年8月27日

 嘉手納基地から南にある米軍基地の返還をにらんだ跡利用構想に、県が着手している。待ちから攻めの県政に転換を図り、県民の夢と希望をかなえる新都市づくりを実現してほしい。

 構想は、「駐留軍用地跡地に係る有効利用ビジョンの検討基礎調査」報告書で明らかにされた。

 2年前の5月に最終合意された嘉手納基地より南の5つの米軍施設・区域の返還を前提に、返還跡地を沖縄の自立的発展に寄与する空間として、新しい経済・産業活動の拠点化を図るというものだ。

 沖縄は復帰後36年間にわたり実施されてきた「沖縄振興(開発)計画」が2011年度で期限切れを迎える。過去の沖縄振興策は、国が「後見人」となり人、モノ、カネ、情報の大半を提供し、策定し、実施してきたと評される。

 しかし、3年後からはそうはいかない。今、沖縄は自前で計画を作り、財政力を強化し、民間活力を高め、基地経済や財政投資に依存しない自立できる地域経済・社会を構築しなければならない。

 残念ながら沖縄の現状は、全国一の高失業、高財政依存度に加え、県予算の1年分を超える6000億円超の借金(県債残高)を抱え、自主財源は3割を切る低水準にあえいでいる。

 一方で、36年間の政府の沖縄振興策で9兆円を超す振興予算が投入されたが、目標とする沖縄の自立経済は手にできていない。

 国のカネ、国の汗、国の努力という「国任せ」の振興策の限界がそこにある。

 県民主体の振興策にどう転換するか。今回の構想はその端緒の一つだ。構想の先には2050年をめどとする県の将来展望「沖縄21世紀ビジョン(仮称)」がある。

 かつて、沖縄県は米軍基地全廃後の県づくりのグランドデザインとなる「国際都市形成構想」を策定した。13年前の話だ。同構想は、15年までに基地を3段階で全廃する「基地返還アクションプログラム」と、脱基地経済を目指す「産業創造アクションプログラム」と3点セットで展開された。

 「返還されるのを待つのでなく、豊かな県づくりに必要なら米軍基地でも奪い取る」との姿勢が、当時の県庁の中にはあふれていた。

 今回の構想は、普天間飛行場の代替施設への移転を大前提に返還が合意されたキャンプ瑞慶覧、キャンプ桑江、牧港補給基地、那覇港湾施設の跡利用計画である。

 そこには「返還待ち」の姿勢が顕著だ。必要なら「奪い取る」という攻めの姿勢は、まだまだ弱い。

 跡利用には膨大な資金、地主の理解と合意、自治体の協力、民間企業の知恵とカネが必要になる。

 人、モノ、カネ、情報を集め、動かす力は「情熱」にある。まずは県職員の情熱を見せてほしい。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135637-storytopic-11.html

 

2008年08月27日【夕刊】

海上保安庁11管 44人を増員/尖閣警備など強化

 【東京】海上保安庁は二十七日午前、総額千九百六十五億七千九百万円の二〇〇九年度予算概算要求をまとめ、自民、公明両党の国土交通関係会議に報告した。日本周辺海域での治安対策の強化や船舶交通の安全確保などを図るため、同庁全体で三百四十七人の増員を要求した。このうち沖縄関係では、尖閣諸島や東シナ海のガス田周辺の警備強化などを目的に、巡視船艇の乗組員を五十六人増員。そのほか、第十一管区海上保安部の定員を四十四人増員することを求めている。

 尖閣諸島や東シナ海周辺の警備強化などを目的とした巡視船艇乗組員の増員は、巡視船艇の高機能化に伴う定員増による措置で、船や人員の具体的な配置は決まっていない。

 第十一管区海上保安部関係では、事件・事故に対する初動の遅れを解消し、外国船舶の監視を継続して実施するため、巡視艇の乗組員を二十五人増員。人命救助体制を強化するため、那覇航空基地の機動救難士など十人を増員。司法制度改革に対応するため、犯罪情報技術解析官を二人、首相官邸における情報機能強化のため、分析官を一人、それぞれ増やす。

 そのほか、領海・排他的経済水域(EEZ)調査の実施や、海洋情報の一元管理に関する体制を強化するため、海洋調査官を一人増員。船名、速力などの情報を自動的に送受信する装置(AIS)を活用し、船舶の衝突事故などを防ぐため、AIS運用官を五人置く。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-E_1-001-2_002.html

 

2008年08月27日【夕刊】

糸満に管制レーダー整備

 【東京】防衛省は二十七日午前、二〇〇九年度予算概算要求をまとめ、自民党国防部会・安全保障調査会・基地対策特別委員会合同会議に報告した。要求案には、弾道ミサイルの探知追尾能力の向上を目的として、糸満市与座岳に地上警戒管制レーダー(FPS―5)を整備し、〇九年度中の運用開始を目指す要望も盛り込んだ。

 自動警戒管制システム(JADGE)も〇九年度に就役する予定で、すでに配備が始まっている地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などの迎撃システム、センサー、指揮統制、通信システムを連接した弾道ミサイル防衛(BMD)システム全体としての運用を開始する予定。

 そのほか、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)を〇九年度中に「第一五旅団」に格上げし、定員を約三百人増強、約二千百人体制とするための関係予算も盛り込んだ。旅団化に伴い、混成群を廃止して普通科連隊を新編する。また、敵情を視察する偵察隊や、化学防護隊も新たに編成するなど、大幅に組織を改編する。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-E_1-001-2_004.html

 

2008年08月27日【夕刊】

沖縄戦伝える本土紙、眞嘉比さん入手/目立つ戦況美化

 【名護】沖縄戦の様子を伝える当時の本土の新聞四十二部を名護市で民俗資料博物館を運営する眞嘉比朝政さん(71)が、二十六日までに入手した。米軍機に空爆される伊江島の様子を伝える記事も含まれている。一方、戦局は大本営発表に基づく旧日本軍に有利な報道も目立ち、眞嘉比さんは、資料を整理し、来年の慰霊の日に合わせて公開することにしている。(知念清張)

 名護市消防長を務めた眞嘉比さんは、一九八三年と九二年に消防大学校(東京都)で学んだ際の全国の同期生に「当時の新聞を探してほしい」と呼び掛けた。先週までに百部余りが届き、沖縄戦の記事が見つかったのは四十二部だった。

 四五年五月一日付の中部日本新聞(当時)は、旧日本軍偵察機から撮影した米軍機の伊江島空爆を「激戦展開中の伊江島」と題する写真記事で掲載した。

 また、四月十三日付の毎日新聞は「敵兵五千、戦車百両が名護村(当時)に新たに上陸したが、わが部隊は目下果敢なる反撃を実施中」とし「戦車三両を炎上せしめ、人員多数を殺傷している」と伝えている。

 戦局悪化に伴い「一億、沖縄の軍民に続け」(四月二十八日付中部日本新聞)、「沖縄に我新兵器出現 翼持つロケット爆弾」(五月一日付朝日新聞)、「還らぬ報道班員 カメラを抱いて散華」(六月一日付同紙)など読者を鼓舞し、戦争を美化する論調が目立つ。戦争当時、八歳だった眞嘉比さんは名護で米軍の空襲などを体験した。眞嘉比さんは「当時は米兵はヒージャーミー(ヤギの目)で夜はよく見えないと教えられ、竹やりを備えたが、いざ戦争が始まると圧倒的な兵力差で名護の市街地は焼け野原になった。敵の被害を大きく伝えるなど、旧軍に有利な報道の流れが読み取れる」と話している。

 沖縄戦を伝える新聞は激しい地上戦のため、県内ではほとんど残らなかった。本土でも厳しい物資統制が敷かれたこともあり戦後六十三年経て見つかることは珍しく貴重な資料となりそうだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-08-27-E_1-005-2_001.html

ペシャワール会伊藤和也さんを心から惜しむ

31歳の理想に燃える青年が殺されました。彼の死を心から惜しみ悲しむものです。また、ご両親をはじめ関係の方々、ペシャワール会みなさまの悲しみがいかばかりかとお察し申し上げます。また、伊藤一也さんのために泣いてくださっているであろう、アフガンのみなさまに心からの感謝と共感と連帯の気持ちを表明したたいと思います。
 
伊藤和也さんこそ世界の青年の誇りであるとともに、日本民衆
の誇りでもあります。
 
伊藤和也さんのご冥福を心から祈ります。「冥福」とは死後の幸福という意味です。日本政府関係者場合によっては、米政府やNATO関係者も「伊藤和也さんの冥福を祈る」と言うかもしれません。しかし、もし、米帝国とその同盟諸国がアフガンに兵を出し続けるのならば、その言葉は、いかにもむなしいものです。日本政府が自衛隊をアフガンに派兵しろという米帝国の意向に沿って、軍事協力や派兵を強行するならば、「アフガンの子供たちにパンを食べさせたい」という思いでアフガンでの活動に献身した伊藤和也さんの思いに真っ向から敵対するものです。
ましてや、憲法9条に反して、戦争に協力するならば、広島長崎東京大空襲、沖縄戦などで殺された、幼い子供を含む320万人の日本人、2000万人のアジア人の死後の幸福「冥福」を祈ることに真っ向から反するものです。
 
残念きわまるこの一人のかけがえのない日本の青年の死にたいする言葉としたいと思います。

ドクターヘリ追加導入/舛添厚労相方針示す 新基地建設ノー/県内の大学教授ら18人 抗議決議2週連続/うるま市議会 中部市町村会が抗議決議/原潜放射能漏れ など 沖縄タイムス関連記事・社説、琉球新報 社説(8月14日から20日)

2008年8月14日(木) 朝刊 1面

ドクターヘリ追加導入/舛添厚労相方針示す

 【北部】来県中の舛添要一厚生労働相は十三日、名護市内で会見し、国と県が財政支出するドクターヘリ事業について「来年度、沖縄県に二機目のドクターヘリを入れようと思っている」と述べた。舛添厚労相が、二機目の県内導入の方針を示したのは初めて。今後、財政支出など県の対応を見極めた上で判断を下すとみられる。また、舛添厚労相は資金難から一時運休している北部地区の「救急ヘリ」について、在日米軍再編計画に協力する自治体に支給される米軍再編交付金を活用すべきだとの考えを示した。

 厚労省のドクターヘリ事業ではヘリ一機年間約八千万円の県負担が発生する。県は「財政難で予算一律カットを余儀なくされている現状で、二機目の導入は困難」との見方を示した。

 舛添厚労相は、資金難から一時救急ヘリを運休しているNPO法人「MESH(救急ヘリ搬送事業)サポート」設立準備委員会の名護市内のヘリポートを視察した。

 その後の会見で舛添厚労相は、二機目のドクターヘリについて「北部がいいのか、宮古・八重山なのか、どの地域へ配備されるかは地元の決定に従う」とした。

 また、「県民の命が助かるためなら何でもやる、そういう姿勢があっていい」と述べ、ドクターヘリの指定に必要な救命救急センターが整備されるまでの間、救急ヘリの運航再開に向け地元が再編交付金の活用を検討するよう求めた。

 島袋吉和名護市長は、「再編交付金の活用を庁内で検討しているが、北部十二市町村としてどんな支援ができるか、検討している段階だ」と述べた。

 小濱正博同委員会代表は、視察した舛添厚労相に救急ヘリ運航再開へ向け、個人や企業の寄付を募っているが「民間だけの力では限界」と述べ、米軍再編交付金やふるさと納税制度活用も、含めた行政から支援を求めていることも説明した。


[ことば]


 ドクターヘリ事業 国の補助事業で医師や看護師が搭乗したヘリコプターが事故現場などに出向き、早期救命治療に当たる仕組み。県内では浦添総合病院が指定。MESHサポート設立準備委員会が運営する救急ヘリは民間資金で運営されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808141300_01.html

 

2008年8月14日(木) 朝刊 27面

「ぜひ北部に」住民歓迎/厚労相ヘリ導入発言

 【北部】「二機目の配置をぜひ北部に実現してほしい」―。来県した舛添要一厚労相が十三日、来年度予算で県内に二機目のドクターヘリ導入の検討を明言したことを受け、救急ヘリ存続を望む北部では歓迎の声が上がった。一方、厚労相が運休中の救急ヘリの運航再開に米軍再編交付金の活用を促したことに対し、米軍基地の県内移設に反対する市民団体などから「命の問題まで、基地に預けてしまうのか」と反発する声も上がった。

 医療と基地移設を絡めた大臣発言が議論を呼びそうだ。

 離島村の大城勝正伊江村長は「沖縄は離島が多く、救急ヘリはどうしても必要。大臣の発言は頼もしい」と歓迎した。二機目導入に慎重姿勢を崩さない県に対しては「離島の現状を理解し、ぜひ協力してほしい」と要望する。

 国頭地区消防本部の親川守洋消防長は「ドクターヘリは空飛ぶ救急車。北部への配置が実現すれば、全県民にとって大変喜ばしいことだ」と必要性を訴えた。

 国頭村奥では八月中に二度、区民が浦添総合病院のドクターヘリを利用した。ヘリを命綱と頼る状況は変わらないと訴える玉城壮区長(66)は「どこに配置するかは県が決めるというが、北部地域が指定されるものと信じている」と期待感をにじませた。

 これに対し、名護市辺野古への米軍普天間飛行場移設を前提とした米軍再編交付金の活用に慎重な対応を求める声もある。十二日に救急ヘリ存続の陳情書を名護市などに提出した沖縄医療生協名護支部の東江英明支部長(61)は「ドクターヘリの問題は国、県がきちんと制度をつくって進める問題だと思う。命の問題に、基地負担の見返りを充てるのは、基地がなくなればヘリもなくなるということにつながる。筋違いではないか」と指摘。

 東恩納琢磨名護市議は「ドクターヘリが必要なことは、誰もが認める。しかし、命まで基地のお金に頼っていいのか。きれい事かもしれないが、それでは沖縄の自立につながらない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808141300_02.html

 

2008年8月14日(木) 朝刊 2面

場周経路 28日から調査/普天間飛行場

防衛局説明「7日間」/伊波市長「長期的観測を」

 【宜野湾】国が実施を発表していた米軍普天間飛行場の場周経路の実態把握調査について、沖縄防衛局は十三日、調査開始を今月二十八日から九月三日までの七日間予定していることを宜野湾市に説明した。二〇〇四年八月の米軍ヘリ墜落から十三日で満四年を迎えて会見した伊波洋一宜野湾市長が明らかにし、「七日間では飛行場の実態を正確に把握するのに不十分だ」とし、長期的な調査を求めている。

 場周経路は〇四年八月十三日、沖縄国際大学に米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリが墜落、炎上した事故を発端に、同飛行場周辺への米軍機墜落を防ぐために日米で合意された飛行ルート。宜野湾市はこれまで、米軍機の日常的なはみ出し飛行を訴えている。

 指摘を受けた国は、今月五日に同飛行場の危険性除去を協議した県とのワーキングチームで、航空機航跡観測装置による実態調査を実施すると発表した。

 十三日に沖縄防衛局から説明を受けた同市によると、調査は地上の航空機航跡観測装置で米軍機から発信される信号を受信すると同時に、GPS(衛星利用測位システム)で衛生から米軍機の位置を把握し、航跡を観測するという。装置は宜野湾市と飛行場周辺の市町村への設置を検討している。

 会見した伊波市長は「普天間飛行場の危険性は極限状態で、場周経路が守られていないことは特に指摘すべき点。国は飛行場の飛行実態を把握し、改善するよう強く米軍に求めるべきだ」として危険性除去と同飛行場の閉鎖、返還を求める声明を読み上げた。

 国の調査については七日間では不十分とした上で、「期間中に米軍が飛行を自粛すれば、彼らのアリバイづくりに利用されてしまう可能性もある。飛行場の実態を明らかにするためには、観測装置を常設した長期間の調査が必要だ」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808141300_04.html

 

2008年8月14日(木) 朝刊 27面

放射能は「平常値」/原潜、13日夕も停泊

 【うるま】十三日午前、うるま市勝連平敷屋のホワイトビーチに入港した米海軍ロサンゼルス級原子力潜水艦コロンブスは、同日夕も同港に停泊した。文部科学省沖縄対策本部から県基地対策課に入った放射能調査結果は「平常値と同様」としている。県によると、同艦の入港は同日午前十時十七分。出港の日時は不明。

 うるま市は旧盆明けにも沖縄防衛局など関係機関に対し抗議行動する方針を決めた。

 同日午後、沖縄平和運動センターや自治労の関係者らがホワイトビーチを見下ろせる同市平敷屋で抗議行動を展開。同センターの山城博治事務局長は「先祖を迎える旧盆の初日に、まさか原潜が来るとは。寄港は絶対に許されない」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808141300_05.html

 

2008年8月14日(木) 朝刊 27面

爆音、団らん裂く

静かな盆を 市が抗議

 【宜野湾】旧盆迎え日(ウンケー)の十三日、米軍普天間飛行場で軍用機が終日激しく飛行訓練し、市街地に騒音をまき散らした。この日は二〇〇四年八月の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落から満四年。宜野湾市は飛行の即時停止を求め、米軍に文書で抗議した。市民からは「住民感情を逆なでしている」と反発の声が上がった。(銘苅一哲)

 一九九六年に日米が合意した騒音防止協定では「慰霊の日など地域社会にとって特別に意義のある日については、訓練飛行を最小限にするよう配慮する」と規定されている。

 この日は午前中からKC130空中給油機がごう音を響かせ、午後からはCH46中型輸送ヘリ、AH1軽攻撃ヘリが市街地上空を旋回。先祖を迎えるため、多くの家庭で親類が集う日没後の午後八時すぎまで飛行が続き、団らんをかき乱した。

 同飛行場の滑走路延長線上にある野嵩二区の新城清子自治会長は「市内の住民は日ごろから爆音に悩まされているのに、厳かに旧盆を過ごしたいという願いもかなわない。四年前に他界した父を静かに迎えたかった」と不満を漏らした。

 沖国大がある宜野湾区。旧盆で親類をもてなす料理の準備をしていた糸数ミツ子さん(72)は「大切な行事のウンケーで忙しいのに、こんな日に飛ぶ米軍は何を考えているのか。事故が起きてから何も変わっていない」と危険が放置される現状に憤った。

 在沖米海兵隊に抗議した宜野湾市の山内繁雄基地政策部長は「住民の感情を無視する訓練は許されない。旧盆期間中は飛行しないよう強く申し入れた」と話した。


沖国大の学生 写真を校舎に


 【宜野湾】米軍ヘリ墜落事故から四年目の十三日、墜落現場の沖縄国際大学では学生たちが、ヘリの激突で焼け焦げた校舎の壁の写真をプリントした大型シートを、事故後に新築された校舎に掲げた。事故を風化させてはならない、との思いから同大総合文化学部社会文化学科四年の阿波根優斗さん(21)=読谷村=が中心になって行った。

 シートの大きさは約二メートル×三メートル。昨年の同事故三周年に学内で開催した「ノーフライ・ゾーン・コンサート」の実行委員会の学生らが、資料写真を使って製作した。

 この日に掲げた理由について実行委のメンバーだった阿波根さんは「事故があったことを伝えていってほしい、との先輩たちの願いを形にしなければならないと思った」と話した。シートは一週間掲げる予定。阿波根さんらは十月の学園祭で同事故をモチーフにした演劇も計画している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808141300_08.html

 

2008年8月14日(木) 朝刊 26面

亡き友に卒業の証しを/対馬丸犠牲者33人に

 対馬丸記念会(高良政勝会長)は、一九四四年八月に撃沈された学童疎開船「対馬丸」に乗船し、犠牲になった旧甲辰国民学校六年生三十三人への卒業証書授与式を二十二日に那覇市若狭の対馬丸記念館で開催する。同会によると、うち三十一人の遺族ら関係者と連絡が取れておらず、心当たりのある人からの連絡を呼び掛けている。

 甲辰国民学校は日本軍の兵舎として接収され、戦後に廃校となった。

 卒業証書は九一年、対馬丸沈没時に六年生だった大浜千代さん(76)=東京都渋谷区=の発案で作成された。授与式を開催し、同級生や遺族ら五十八人分の証書を授与した。渡せなかった証書を同級生の大城正樹さん(76)=那覇市=が昨年十二月、同会に寄贈。慰霊祭に二度目の授与式を催すことにした。

 大浜さんは巡洋艦「鹿島」で対馬丸より四日早く出港し、戦禍を逃れた。「そのころも夏休み。みんなさよならも何も言わずにバラバラになった。何とか一緒に卒業したかった」と声を落とした。

 自身も対馬丸生存者の高良会長は「心ならずも卒業できずに犠牲となった子どもたちの霊を慰めるために、一人でも多くの関係者に卒業証書を渡したい」と訴えた。

 証書授与の問い合わせは同記念館、電話098(941)3515。

 二十二日の卒業証書授与予定者は以下の通り。

 ▽森哲二▽山里昌永▽山城重夫▽屋良利重▽阿嘉広一▽与古田清春▽田頭恵昭▽石垣長英▽宇良昌益▽久場毅▽国吉順子▽金城ヤス▽大田義子▽運天サヨ子▽上原規子▽宮城信次郎▽宮城信太郎▽又吉義清▽又吉ミツ▽比屋根安忠▽比嘉安雄▽比嘉啓宜▽比嘉実▽百名朝喜▽長嶺由広▽当銘喜勝▽知念政枝▽知念永成▽高嶺トミ子▽高江洲清一▽後藤悦子▽小橋川正信▽瑞慶覧昌徳

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808141300_09.html

 

2008年8月15日(金) 朝刊 2面

新基地建設ノー/県内の大学教授ら18人

 大学教授でつくる「いまこそ発想の転換を!実行委員会」は十四日、県庁で記者会見し、作家や弁護士ら十八人の賛同者名で「沖縄における新基地建設に反対する声明」を発表した。日米両政府が米軍普天間飛行場の移設策として合意した名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設反対を求めている。

 声明文は首相、外相、防衛相、沖縄担当相、県知事、米大統領、米国務長官、米国防長官、米大統領選候補者のオバマ、マケイン両上院議員に送付した。

 沖縄対外問題研究会代表の宮里政玄氏は「沖縄の政治は思考停止している。辺野古の基地建設が当然で、振興策も出来高払いというのは思い違いがある」と批判。十一月の米大統領選や流動化する国内の政局を挙げ、「変わり目であることに間違いはない。県民の誤った常識を覆し、日米両政府に要請したい」と趣旨を説明した。

 会見に参加したのは宮里氏ほか新崎盛暉沖縄大名誉教授、桜井国俊同大学長、佐藤学沖縄国際大教授、我部政明琉球大教授、星野英一同大教授の六氏。

 同委員会は今年二度にわたって、安保・開発・環境・経済の各分野の専門家を集め、シンポジウムやティーチインを開催した。桜井学長は「沖縄の世論を喚起したい」と述べ、年内に再びシンポジウムを開催する考えを示した。

 六氏以外の賛同者は以下の通り。(敬称略)

 東江平之(琉大名誉教授)、大城立裕(作家)、大城光代(弁護士)、来間泰男(沖国大教授)、照屋寛之(同)、砂川恵伸(元琉大学長)、仲地博(琉大教授)、比嘉幹郎(政治学者)、新川明(フリージャーナリスト)、三木健(同)、宮里昭也(同)、由井晶子(同)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808151300_09.html

 

琉球新報 社説    

終戦記念日 節目の日に「非戦」を考える/恒久平和誓う「国民宣言」を 2008年8月15日

 きょう、63回目の終戦記念日。軍国主義の反省と恒久平和の尊さを実感し、武力と戦争の放棄を掲げる平和憲法の理念を再確認したい。

 日本の本当の終戦記念日は1945年「9月2日」との主張が、今なおある。その日は、米英中など連合国と日本政府・軍代表が米戦艦ミズーリ艦上で、降伏文書の調印をした日である。

 実際、講和条約発効前の51年ごろまでメディアも9月2日を「降伏の日」「敗戦記念日」と報道してきた。

「ポツダム宣言」受諾の日

 では、なぜ8月15日か。この日は、旧日本軍の大元帥である昭和天皇がラジオ放送を通し、肉声で国民に「ポツダム宣言」の受諾を伝えた日。つまり「玉音放送」の日である。

 米英中による対日降伏勧告「ポツダム宣言」の受諾をもって終戦とするならば、前日の8月14日がその日である。日本政府は、同宣言受諾と天皇の終戦の詔書を、14日に発布しているからだ。

 そのポツダム宣言は、45年7月26日に通告された。しかし、政府はさまざまな事情から、8月14日まで受諾を先送りした。

 受諾を拒む日本に米英中の三国は対日攻撃を激化。8月6日に広島、9日には長崎に原爆を投下している。ポツダム宣言は三条で戦争継続なら「軍事力の最高度の使用」で、日本の軍隊と全土を壊滅すると、原爆投下も示唆していた。

 降伏をためらう政府の判断ミスが、原爆による多くの国民の犠牲を生んだともいわれるゆえんだ。

 だが、いかなる事情があるにせよ、米軍が行った原爆投下による民間人の大量虐殺の罪は、容認されるものではない。

 天皇は、玉音放送で「加之敵は新に残虐なる爆弾を使用して頻(しきり)に無辜(むこ)を殺傷し惨害の及ぶ所、真に測るべからざるに至る」と原爆投下の悲劇に触れている。

 その上で「而も尚、交戦を継続せむか、終に我が民族の滅亡を招来する」と、戦争継続による民族滅亡の強い危機感を吐露している。

 ポツダム宣言は、戦争継続が全国土の「迅速かつ完全な壊滅」を招くとどう喝し、軍国主義勢力の除去、カイロ宣言が求める満州、台湾など第一次大戦以後の占領地の返還、軍隊の完全武装解除、戦争犯罪人の処罰などを求めていた。

 同六条は「日本国民をだまし、世界征服をたくらむという過ちを犯した権力者や政治勢力は、永久に除去されなければならない」と、軍国主義勢力の除去を強く求めた。

 同七条は日本占領は「日本の戦争遂行能力が破砕されたことが確証されるまで」と明記している。

 占領終結は「日本国民が表明した意思に従い、平和的傾向を持つ責任ある政府が樹立した段階」で、「占領軍はただちに日本国より撤収される」と確約している。

国際法上は講和発効日

 日本に軍国、帝国主義との決別を求めるポツダム宣言は、現在の自由と民主主義を基本とする国づくりの基本も示していた。

 例えば「日本政府は、日本国民の間の民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障害の除去」「言論、宗教、思想の自由。基本的人権の尊重の確立」などだ。

 終戦の日を境に、日本は連合軍の占領下に置かれる。占領は1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約発効の日まで続く。

 国際法上は、講和条約発効の日が「第二次大戦終結」の日とされる。もう一つの終戦記念日だ。

 講和による「終戦」で日本本土は占領を解かれ、主権国家として国際社会に復帰した。

 しかし、講和条約の発効の日、沖縄は日本から切り捨てられ、米軍統治下に置かれた。以後本土復帰までの27年間、自治権、基本的人権、財産権も奪われる「屈辱の日」となった。

 ポツダム宣言で日本に民主主義を求め、基本的人権の尊重を主張した連合国だが、沖縄では住民自治を否定し、軍事独裁政権下のような占領を自ら行った。

 戦後63年。日本はいまポツダム宣言が破壊した「戦争遂行能力」を持つ軍隊を復活させ、有事法制を整え、海外に派兵し、平和憲法の改悪すら射程に入れる。

 「本当の終戦記念日はいつか」を問う前に、いま「新たな戦争」を回避し、恒久平和を誓う「国民宣言」が必要な時期を迎えている。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135250-storytopic-11.html

 

2008年8月16日(土) 朝刊 27面

旧盆中日、騒音273回/米軍飛行

 【宜野湾】旧盆中日の十四日、米軍普天間飛行場を離着陸するヘリや米軍機の飛行訓練が午後十一時ごろまで続き、宜野湾市新城地区で騒音が二百七十三回発生。上大謝名地区では一〇二・一デシベル(電車通過時の線路脇に相当)が計測された。日米合意の騒音防止協定で米軍が「地域への配慮を行う」と規定される旧盆中の騒音に、市民からは「今年の旧盆は特にひどい。許せない」など怒りの声が上がった。

 県が同市内に設置する航空機騒音測定器は十四日、市内八カ所中、新城、宜野湾、真志喜、上大謝名、愛知の計五カ所で百回以上の騒音を記録した。

 同飛行場に隣接する新城地区では、午前七時半から午後十時五十六分ごろまで騒音が発生。滑走路延長線上の上大謝名地区の騒音発生回数は百三十回に上った。

 ウークイの十五日も、午前中からCH46中型輸送ヘリがタッチ・アンド・ゴーを繰り返した。

 十四日夜、道ジュネーで地域を練り歩いたという新城青年会の南風里修平さん(21)は「エイサーがヘリの音にかき消された。ただでさえ毎日うるさいのに、一年で一番大切な日に飛ぶのは許せない」と憤った。

 公民館の真上を米軍機が飛行する上大謝名の津波古良一自治会長は「先祖の霊を迎えて厳かな気持ちで過ごすはずの日に、空ではヘリが飛ぶ異常な事態はいつまで続くのか」と国や県に危険性の除去を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808161300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年8月16日朝刊)

[救急ヘリ導入]

問題点の整理が必要だ


 一見するといいアイデアのように思えるが、よくよく考えてみるとおかしい。

 資金難から一時運休している北部地区のドクターヘリの再開について、舛添要一厚生労働相は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸域移設の進捗状況に応じて国から関係自治体に支出される再編交付金を活用するべきだとの考えを示した。

 ドクターヘリの指定に必要な救命救急センターが整備されるまでの間、との条件が付いてはいるが、地元には再編交付金を使うのに根強い反対がある。

 交付金の使い道は最終的には自治体と住民が決定するのが筋であり、国が自治体に指図するのは本末転倒だ。

 厚労相の発言に対し、地元から疑問の声が上がっているのは、命を逆手に取るような形で米軍基地建設を受け入れさせようとしているとみているからだ。

 命に勝るものはない。反論する者は誰もいないだろう。ただ、それを人質にして米軍基地建設の受け入れを促すのは厚労省の役割を逸脱するものではないか。

 名護市は再編交付金を充てるか庁内で検討している。あくまで選択肢の一つではあるが、活用に当たっては慎重さを求めたい。辺野古移設をめぐっては依然反対が大きいからだ。

 ドクターヘリを運休しているNPO法人「MESHサポート」設立準備委員会は、近くNPO法人認可申請を県に提出するという。関係者は順調にいけば、年内にも認可されると期待している。

 一方で、舛添厚労相は来年度、沖縄県に二機目のドクターヘリを導入する考えを初めて明らかにした。

 現時点では拠点がどこになるのか決まっておらず、年間約八千万円の負担をしなければならない県は、財政難を理由に二機目の導入にはむしろ消極的だ。北部十二市町村にしても足並みがそろっているわけではない。

 中・南部の都市部に近い自治体と、離島や北端の自治体では切迫感に違いがある。北部地区の中でも微妙に格差が生じている。

 先日の本紙オピニオンで、那覇市の薬剤師は「(北部地域のダムのおかげで)上水道の恩恵にあずかっている県民がその料金に多少上乗せして、広義のふるさと納税を考えてみてはいかがか」と提言している。

 ふるさと納税、寄付と組み合わせる方法もあり、一考に値するのではないか。

 命は本来、住む場所で差別があってはならない。

 とはいうものの、現実をみると、過疎化の進む離島や僻地から医療施設が充実した病院は遠い。

 沖縄は離島が多く他府県と違う特殊性がある。それだけに、医療格差を是正するのは厚労省の役割といえよう。

 ドクターヘリについてはその必要性を含め、二機目の拠点となる場所、さらにMESHの資金調達の在り方などクリアすべき課題が山積している。

 県は問題点を早急に整理する必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080816.html#no_1

 

琉球新報 社説    

靖国神社参拝 政治家の歴史認識を問う 2008年8月16日

 靖国神社とは何か。ことしも現職閣僚をはじめ小泉純一郎元首相、安倍晋三前首相らが、終戦記念日に参拝した。

 「公式参拝」は違憲の判決もある。政教分離(憲法20条)や玉串料など宗教組織への公金支出の禁止(同89条)などが、その論拠となっている。

 憲法違反の疑いがあっても、閣僚たちは靖国参拝を行う。そこに、日本の保守政治家の歴史観や価値観が垣間見える。

 戦後、首相として終戦記念日に靖国神社を参拝したのは、三木武夫、中曽根康弘、そして小泉純一郎の3氏である。

 いずれも中国や韓国を中心に「過去の軍国主義を美化するもの」などの反発を買った。

 2001年8月の小泉元首相の参拝は、「靖国公式参拝訴訟」として福岡地裁に提訴された。

 司法は「参拝は公的な性格で、憲法が禁ずる宗教活動に当たる」と、違憲判決を出している。

 それでも当時の小泉首相は「国のために尊い犠牲になった方々に対する追悼は自然なこと」と、参拝を続け、中国の反日感情を刺激して、日中関係を冷え込ませた。

 米国に次ぐ最大の貿易相手国に成長した中国との関係悪化にたまらず、06年5月には経済同友会が小泉首相に参拝中止を提言したほどだ。

 外務省は、首相の靖国参拝を「過去の植民地支配と侵略を正当化しようとするものではない」と釈明したが、アジアの懸念を打ち消すには不十分だった。

 靖国参拝問題には、もう一つ「A級戦犯合祀」問題もある。

 1978年、極東国際軍事裁判(東京裁判)で侵略戦争の責任を問われた東条英機元首相ら14人が靖国神社に合祀された。

 戦後数年ごとに靖国参拝を続けていた昭和天皇も合祀に不快感を示したとされ、75年を最後に合祀後は現天皇も含め参拝を中止している。参拝を続ける閣僚、政治家らはA級戦犯合祀問題をどう受け止めているのか。

 今年は靖国神社を舞台にしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が、国会議員や右翼団体の抗議で上映が中止になるなど、表現の自由とも絡んで波紋を広げた。

 福田康夫首相は、近隣諸国への配慮から参拝を控えた。しかし、保岡興治法相、太田誠一農相、野田聖子消費者行政担当相ら閣僚が参拝している。

 靖国参拝問題は、日本の政治家にとって侵略戦争に対する歴史認識を問う「踏み絵」の感すらある。

 福田首相はアジア諸国の信頼を損なうことがないよう、A級戦犯分祀や宗教色のない新追悼施設の建設など、抜本的な解決に前向きに取り組む時期に来ている。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135279-storytopic-11.html

 

2008年8月17日(日) 朝刊 24面

学童疎開船 悲劇伝える/秋篠宮ご一家が見学

 【東京】一九四四年八月、米潜水艦に撃沈された対馬丸などの学童疎開船の悲劇を伝える企画展(主催・同実行委)が十六日、都内の新宿文化センターで始まり、秋篠宮ご一家が展示された遺品のランドセルなどを見学した。

 開会セレモニーで、対馬丸記念館の高良政勝館長は「船が沈み、メモリアルだけが残った。少ない展示物の中で、古ぼけたランドセルは対馬丸を象徴する遺品です」と静かに話した。

 主催者を代表して、こども王国首脳会議の松平恒忠総裁は「二度とあってはならない悲しい出来事だと世界中の人の心に刻んでほしい」とあいさつした。

 二十一日まで続く企画展では、九七年に対馬丸の船体が海底で発見された経緯を説明するパネルや沖縄戦関連の書籍などが展示。四四年に奄美大島から鹿児島へ向かう途中、米軍の魚雷で沈没した疎開船「武州丸」に関する資料もある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808171300_07.html

 

琉球新報 社説    

新基地にノー 「思考停止」にならずに 2008年8月17日

 「ゆでガエル理論」というのがある。熱いお湯の中にカエルをいきなり入れると、びっくりして器の外に飛び出してしまう。しかし、水の中に入れて少しずつ熱していくと、その水温に慣れていく。そして熱湯になった時には、すでに考える力も失い、さらに飛び出ることもできなくなりゆで上がってしまう。

 沖縄に新しい軍事基地は不要だとして、これまでの「常識」を覆そうと活動する学識者らが、普天間代替建設などに反対する声明を発表した。組織の代表を務める沖縄対外問題研究会の宮里政玄氏は「日米で(政権に)変化が起こりつつある。声明を出すタイミングは非常にいい。だが沖縄だけがさっぱり動かない。声明は日米両政府あてだが、県民に対するものでもある」と述べている。

 沖縄県民は基地問題に関して思考停止に陥っていないか、またゆでガエルになってはいないか、との警告と受け止めた。これは果たして考え過ぎだろうか。

 「米国に逆らってもしょうがない。日米関係の維持が何よりも重要だ」「北朝鮮が攻めてきたらどうする」「基地を受け入れて財政支援を得るしか、沖縄が生きる道はない」―。これらの「常識」がまかり通った結果、「基地の県内建設は避けられない」と信じ込んだ人が多いのが現状だろう。

 しかし、果たして「常識」とされる、その考えは正しいのだろうか。ほかに取るべき道はないのかどうか。名護市辺野古への普天間飛行場代替施設建設が既成事実として進んでいるが、引き返す選択肢がないわけでもあるまい。

 芝健介・東京女子大学教授は「システムはできあがったら、抜け出せない。その前に手を打たないと」と警告する。さらに「大きな流れにのみ込まれそうなときに『待てよ』という感覚を持てるか」「過去に実際に起きた事実とは別にあったはずの選択肢が、なぜ実現しなかったのか、検証する必要がある」(本紙13日付文化面)とも。沖縄の現状を考える上でも、示唆に富む指摘だ。

 歴史を学ぶということは、過ちを繰り返さない、ということでもある。身近な事例は、いくらでもあろう。なぜ、先の大戦に突入せざるを得なかったのか。なぜ、理想とは大きく異なる本土復帰となったのか。別の選択肢はなかったのか。その都度、「待てよ」という意識の営みが必要だ。声明は県民一人一人にこう呼び掛けている。

 すでに、私たちが熱湯の中にいるとは思えない。考える力も、ぬるま湯の外に飛び出す力も残っていると信じたい。とはいえ、徐々に温まっていくときが人間にとっては一番、気持ちがいい。今が、まさにその時期だとしたら、残された時間はそれほどない。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-135318-storytopic-11.html

 

2008年8月19日(火) 朝刊 2面

抗議決議2週連続/うるま市議会

 【うるま】うるま市議会(島袋俊夫議長)は十八日、臨時会を開き、米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦「コロンブス」が十三日に同市勝連のホワイトビーチに寄港、接岸した件について、関係機関に寄港反対と寄港の明確な説明責任を求める抗議決議、意見書案を全会一致で可決した。

 抗議決議のあて先は米国防長官、駐日米国大使、在日米軍司令官など。意見書は衆参両院議長、首相、外相、県知事などにあてた。

 抗議決議では、同型の原潜「ヒューストン」がホワイトビーチ寄港時に放射性物質を含む冷却水漏れ事故を起こし、原因が究明されないまま、新たな原潜が寄港したことを「住民感情を踏みにじる行為であり、到底許されない」と糾弾した。

 同議会は十一日、「ヒューストン」の事故に対して寄港反対、原因究明を求める抗議決議案を可決したばかり。今回の原潜寄港について「市民や県民の声を無視する形で原潜が寄港したことに強い憤りを覚える」として、寄港反対や日米地位協定の抜本的改定を関係機関に求めている。


コロンブス出港

停泊5日


 県基地対策課によると、うるま市勝連平敷屋のホワイトビーチに十三日から入港していた米海軍ロサンゼルス級原子力潜水艦コロンブス(六、〇八二トン)が十八日午後一時五十九分、出港した。寄港時間は五日間三時間四十二分。文部科学省沖縄対策本部の放射能調査結果によると、平常の値と同様だった。寄港目的は休養・補給・維持で、同型潜水艦ヒューストンの冷却水漏れが発覚後、県内に初めて寄港していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808191300_06.html

 

2008年8月19日(火) 朝刊 2面

米軍、県議会視察断る

 県議会米軍基地関係特別委員会(渡嘉敷喜代子委員長)は十八日、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ内から、米軍普天間飛行場の代替施設建設予定地を視察した。軍特委が希望していた東村高江周辺の北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)やキャンプ・ハンセンのレンジ3、4の視察は米軍の許可が下りなかった。

 渡嘉敷委員長はヘリパッド予定地が不許可となったことについて「米軍は『反対している人々が過激になって、議会の車両の安全を守れない』という理由で、視察を断ってきた。議会の権威がなくなる」と米軍の対応を批判した。

 シュワブでは沖縄防衛局幹部の説明を受けながら、建設予定地を視察。与野党の委員らはそれぞれ環境への影響やオスプレイ配備の有無、沖合移動した場合の騒音などについて質問した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808191300_07.html

 

2008年8月19日(火) 夕刊 1面

中部市町村会が抗議決議/原潜放射能漏れ

 【中部】中部市町村会(会長・知念恒男うるま市長)は十九日の定例会で、うるま市のホワイトビーチに寄港した米原子力潜水艦「ヒューストン」から微量の放射能漏れが確認された問題について、情報開示の遅れに抗議し、同ビーチへの寄港を中止するよう求める抗議決議と要請決議を全会一致で可決した。

 抗議決議は「人体に影響がないとの理由で公表がされなかったことは許されず、極めて重要な情報を速やかに通報・公表しなかったことは日米両政府の住民軽視であると言わざるを得ない」と指摘。米軍の危機管理意識の低さに不信感と憤りを覚えるとしている。

 あて先は抗議決議が米国防長官、駐日米国大使、在日米軍司令官など。要請決議は衆参両院議長、首相、外務相など。各あて先に送付する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808191700_01.html

 

2008年8月19日(火) 夕刊 7面 

再生ピアノで環境教育/調律師の仲村さん

宜野湾市でピアノの調律や修理を手掛けるクリエイト代表のピアノ調律師・仲村和也さん(49)が、那覇市のリサイクルプラザにある再生ピアノを10年間、無償で調律、調整している。リサイクルの大切さを伝える同プラザの趣旨に賛同した活動で、コンサートや子どもたちの職場体験にも活用。ピアノ調律の現場から、地道に環境教育を続けている。(上間正敦)

 同プラザのピアノは、一九五三(昭和二十八)年製造の国産グランドピアノ。米軍の将校クラブで使われていた年代物で、那覇市内の男性の提供を受け、リサイクル運動のシンボルとして導入。知人を介して仲村さんが無償で修理、調律に当たっている。

 同ピアノの誕生五十年を記念したコンサートを開いたり、仲村さんが引き受けた小中学生の職場体験でも活用。立派に鳴り響く五十年前のピアノに「子どもたちも、長くもたせることに価値を感じてくれる」(仲村さん)と効果を挙げている。 仲村さんの活動は、十数年前、埋め立て廃棄処分される中古ピアノの話題を月刊誌で知ったことが契機。「ピアノ製作の修行で渡ったイタリアでは、孫子の代までピアノを引き継ぐ。壊れたり、古くなっただけでピアノを捨てる日本や沖縄の現状はどこかおかしい」と仲村さん。

 「県内でも車庫や屋外に放置され、事実上廃棄されたピアノもある。このままでは沖縄の魂でもあるサンシンさえも捨てられかねない。物を大切にする、手を掛ければきちんと応えてくれる楽器は生き物と同様だ」と話す。十三日の職場体験に参加した大山小五年の友利譲司君(11)は、鍵盤から弦をたたくハンマーに力が伝わり、音が出る複雑な仕組みに驚き、「五十年たってもいい音が出る。大事にしてあと百年はもたせた方がいい」と再生ピアノに興味津々だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808191700_02.html

 

2008年8月19日(火) 夕刊 7面

国の合祀関与指摘/沖縄靖国訴訟で遺族

 沖縄戦の遺族ら県内の五人が靖国神社と国に、肉親の合祀の取り下げと慰謝料を求めている訴訟の第二回口頭弁論が十九日、那覇地裁(大野和明裁判長)であった。

 遺族側は、昨年三月に国立国会図書館がまとめた「新編 靖国神社問題資料集」に基づき、戦没者情報の提供など国の積極的な関与がなければ合祀は不可能だったと指摘。

 国は主導的に靖国神社の合祀に援助・協力してきたと訴えた。

 国や地方が膨大な労力をかけた戦没者情報の提供や、靖国神社側に働き掛けて行われた度重なる打ち合わせなど、国の協力がなければ靖国神社が戦没者を知ることも、合祀祭の執行もあり得なかった、としている。

 国側は「靖国神社から戦没者氏名などの照会を受け、一般的な調査回答業務の一環として情報を提供したにすぎない」などと主張。

 遺族らの信仰を何ら干渉せず、信教の自由を侵害したことにはならないなどとしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808191700_04.html

 

2008年8月20日(水) 朝刊 2面 

沖合移動「難しい」/林防衛相が初来県 知事と会談

 林芳正防衛相は十九日、就任後初めて来県し、県庁で仲井真弘多知事と会談した。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設について、林防衛相は「地元の理解と協力なしでは進まない」と述べつつ、県が求める建設位置の沖合移動については「合理的理由なしに(計画を)変えるのは難しいと何度も申し上げてきた」と従来の見解を繰り返すにとどめた。

 仲井真知事は、沖合移動など普天間飛行場の移設や嘉手納基地より南の基地返還、日米地位協定改定など基地から派生する諸問題の解決促進、不発弾処理の負担軽減、与那国島上空の防空識別圏の抜本解決―の五項目を盛り込んだ要望書を手渡した。

 普天間飛行場の三年をめどとした閉鎖状態をあらためて求めた知事は「米側と交渉する取り組みが必要だ」と訴えた。

 しかし、林防衛相は「必要があれば、やっていかないといけないが、まずはワーキングチームの航跡調査でどういう結果が出るか。それに応じて、対策が必要であれば考えないといけない」と慎重な姿勢を示した。

 知事はさらに不発弾処理について、「国が主体的積極的に対応してほしい」と述べ、全額国庫負担とする新たな財源措置制度創設などを要望した。

 二度目の会談となった林防衛相と仲井真知事は互いに「率直に意見交換したい」と述べ、緊密に連携を取る必要性を確認した。

 林防衛相は同日、航空自衛隊那覇基地を視察。二十日はキャンプ・シュワブ内や嘉数高台公園から普天間飛行場などを視察する。また、島袋吉和名護市長ら北部市町村長と面談する。

 防衛相の来県は、昨年九月の高村正彦氏(現外相)以来。防衛省の井上源三地方協力局長や高見澤將林防衛政策局長も随行した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808201300_02.html

 

2008年8月20日(水) 夕刊 1面

防衛相、名護市長と会談/「普天間」代替 慎重姿勢崩さず/

 来県中の林芳正防衛相は二十日午前、恩納村内のホテルで、名護市の島袋吉和市長と会談し、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設移設について意見交換した。島袋市長は「可能な限り沖合に出してほしい」と建設位置の沖合移動を求めたのに対し、林防衛相は「合理的な理由がなければ、なかなか難しい」と述べ、前日の仲井真弘多知事との会談同様、慎重姿勢を崩さなかった。

 会談は冒頭のあいさつ以外、非公開。島袋市長は沖合移動のほか、建設工事の地元企業の優先発注を要望。返還が予定されているキャンプ・ハンセン西側については「傾斜地で細切れ返還となるので、地元区から反対の声が上がっている」として、現在の返還計画を見直すなど四項目を要望した。

 会談後、林防衛相は報道陣に対し、政府と地元でつくる移設協議会が設置したワーキングチームの一員に名護市が入っていることを指摘。「そこで綿密に議論してほしいと申し上げた」と説明した。

 防衛相は会談前、キャンプ・シュワブを訪れ、「ビップ・ヒル」と呼ばれる小高い丘から建設予定地の海域を視察。周辺集落や米軍再編前の辺野古沖二・二キロを埋め立てる「従来案」との位置関係などの説明を受けた。「海が非常にきれい」との印象を述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200808201700_01.html