沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月27日より31日)

2007年10月27日(土) 朝刊 26面

不審機を想定か 小銃で囲み制圧/嘉手納基地で有事訓練

 【嘉手納】二十六日午後零時二十分ごろ、米軍嘉手納基地で、不審な航空機が侵入したことを想定したとみられる訓練が実施された。

 自動小銃を構えた兵士約十人と消防車などの緊急車両数台が同基地所属のF15戦闘機を取り囲み、同機から降りてきたパイロットに銃を向けたまま数十メートル離れた場所まで連行、うつぶせにして手錠をかけ、取り押さえた。

 訓練が行われたのは県道74号から基地と民間地を隔てるフェンスを挟んで数十メートルの場所。兵士が慌ただしく行き交う様子が有事を連想させ、通り掛かったドライバーも不安そうに見守った。

 同基地は沖縄タイムス社の取材に対し、訓練の詳細を明らかにしなかった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710271300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月27日朝刊)

[レンジ16共同使用]

負担軽減は口先だけか

 陸上自衛隊と米軍との共同使用を受け入れなければ、再編交付金はびた一文出さない―。

 そう受け取れるような説明を、沖縄防衛局が金武町、宜野座村、恩納村で構成する三町村連絡協議会にしていたことが分かった。

 金武町キャンプ・ハンセン内のレンジ16には、住宅地に近く危険だとして町民から猛反発を受けたレンジ4の都市型戦闘訓練施設が移設されることになっている。防衛省は、レンジ16一帯での陸上自衛隊の射撃訓練を地元が認めるよう求めているのである。

 十二月の二〇〇八年度予算編成までに受け入れを表明すれば来年度予算に交付金の10%、〇九年度以降に100%を交付するという。

 まさに「アメとムチ」による共同使用の押し付けであり、町民に対し負担増を強要していると言うしかない。

 防衛省は年内にも地元の合意を取り付け、その上で日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手する考えだが、「カネで脅せばなんとかなる」と思っているのだろうか。

 言うまでもないが、都市型戦闘訓練施設が移設されても実弾を使った訓練の危険性がなくなるわけではない。町民は「射撃訓練の被害の可能性はいつでもある」と厳しく見ている。

 地元が反対し翻意を促している訓練を、なぜ陸上自衛隊はあえて行おうとするのか。それが腑に落ちない。

 県内の訓練空域では航空自衛隊が米空軍と合同で訓練、海上自衛隊もリムパックなどに参加し日米間の軍事的一体化が進められている。だが、これらの訓練はいずれも県民の目に届かぬ空域や海上でのことだ。

 伊芸区の住宅地からそれほど離れていない提供施設で、自衛隊員が実弾による射撃訓練を行うこととは明らかに様相が異なる。

 同盟強化における象徴という見方もできるが、だからこそ県民感情からすれば容認するわけにはいかない。

 それだけではない。ハンセン内にはレンジ3付近にも米陸軍特殊部隊の小銃射撃訓練施設が建設されることになっている。海兵隊に移管されるレンジ4ではまた、海兵隊が実弾射撃以外の訓練に使用する可能性もあるという。

 ハンセン内の施設建設や訓練計画などを見ると、日米両政府が約束した「負担軽減」とは裏腹に、負担は急増しつつあるというのが実情だろう。

 「伊芸区民は日米両政府が強調する安全性を誰一人信用していない。新たな軍事施設は住民の生活を脅かす」。政府は住民の声に真摯に耳を傾け、まず負担軽減を実行すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071027.html#no_1

 

2007年10月27日(土) 夕刊 1面

全駐労沖縄 手当削減撤回を要求

来月21日ストも視野

 全駐労沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長)の第七十七回定期大会が二十七日午前、北谷町のサンセット美浜で開かれ、在日米軍基地の日本人労働者向け諸手当約百億円の削減を日本側が提案していることについて撤回を求めていくことを確認した。

 全駐労中央本部(山川一夫委員長)は、撤回されなければ十一月二十一日にストライキを決行する予定だ。

 與那覇委員長は「提案は雇用主の責任を放棄した労働者の生活破壊につながるもので到底、受け入れられない」と強く非難。「事態は一刻の猶予もない。今こそわれわれの魂を奮い立たせ、生活水準維持の闘いを進めていこう」と呼び掛けた。

 大会は午後、「駐留軍労働者の生活を破壊する格差給・語学手当の廃止を許さず、賃金水準の維持と労働条件の抜本的改善要求に全力で取り組む」とする宣言を採択する。

 全駐労中央本部は二十三日、防衛省との団体交渉で同省の提案を拒否。十一月二日予定の次回団交で同案が撤回されなければ、同二十一日に全国的な時限ストライキを決行することを確認している。今後、各分会でスト権確立のため投票を実施し、次回交渉に備える。

 同本部による全国規模のストが実施されれば、一九九一年以来、十六年ぶりとなる。

 同問題は、日米両政府が交渉している在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で日本側から提案された。国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」や「語学手当」などの削減を提案しているが、米側は難色を示している。


[ことば]


 思いやり予算 在日米軍駐留経費の日本側負担分。日本の物価高騰を受け、1978年度から「思いやりを持って対処する」として、従業員の一部福利費などの負担を開始。その後、特別協定で従業員の基本給や光熱水料、訓練移転費などの負担に応じるようになった。対象期間は5年間だったが、2006年4月に発効した現在の協定は「米軍再編の進展を見極めることが困難」という事情を踏まえ、2年間とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710271700_01.html

 

2007年10月28日(日) 朝刊 1・22・23面

「軍の強制」明記/執筆者坂本氏 申請へ

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、検定意見の対象になった五社のうち一社の執筆者を務める高校教諭の坂本昇さん(51)が二十七日、東京都内で記者会見し、自分が執筆する教科書に「日本軍によって『集団自決』を強いられた」との記述を明記して文部科学省に訂正申請する方向で準備していることを明らかにした。また、「集団自決」体験者による「軍から命令が出たとの知らせがあった」との証言を史料として掲載し、伝聞形式で「日本軍の命令」を明記することも検討している。

 このほか、二〇〇七年に国内で起こった話題として(1)今年の教科書検定で日本軍の強制記述が消えたことが問題になった(2)検定意見撤回を求める県民大会が、一九九五年の(米兵による暴行事件に抗議した)大会の参加者数を大きく超える規模で開催された―ことを新たに加える方針という。

 訂正申請の具体的な記述内容が明らかになったのは初めて。

 この会社の申請時期は十一月一日か二日のどちらかになる見通しだ。

 坂本さんが執筆した教科書は、申請本(白表紙本)段階では日本軍が「集団自決」を強いたことを記述していた。しかし、検定意見を受け「日本軍」の主語を「集団自決」から切り離して「住民虐殺」だけにかかるよう文脈を変更した。

 今回は「日本軍」と「集団自決」を直接つなげることで、申請本より強い表現にしたという。

 また、申請本では体験者の証言を引用した史料から「軍の命令」部分を省略していたが、「検定から現在までに新しい証言や著作があり、この記述に間違いがないと確信した」(坂本さん)ため、軍命の存在を訂正申請に盛り込む方針だ。

 坂本さんは「記述が認められるか厳しい面はあると思うが、復帰後最大の県民大会の声を伝えることが執筆者の責任だと感じている」と述べた。

 他の四社も、十一月に入ってから訂正申請する方向で調整している。関係者によると、五日に予定の執筆者懇談会後、第二週の週末までに申請が相次ぐ見通しという。


     ◇     ◇     ◇     

怒り 本土に伝わる/大会関係者、評価


 文部科学省が、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の日本軍による強制を削除した教科書検定問題で、執筆者が二十七日、記述の復活に強い意欲を示した。県民ぐるみの抗議の意思を示した県民大会についても、教科書に登場させたい考え。体験者や大会関係者は「怒りが本土に伝わった」と手応えを語った。検定意見の撤回を求めつつ、文科省や教科書会社の対応を見守る。

 県民大会で渡嘉敷島の「集団自決」体験を証言した吉川嘉勝さん(69)は、大会について記述する方針に「すごい。勇気を出して証言した意義があった」と喜んだ。一方で、「教科書会社は立場があるし、文科省もOKを出すかどうか。県民と執筆者の思いに応えてほしい」と望んだ。

 座間味島の体験者、宮城恒彦さん(73)は「なぜ県民がこれだけ怒るのか。全国の子どもが県民大会について知り、戦争で負わされた沖縄の苦しみを考えるきっかけにしてほしい」と期待した。

 大会実行委員長を務めた仲里利信県議会議長は「『軍の強制』の記述復活は当然だが、今回の記述削除問題や県民大会にまで触れる内容は一歩前進だ」と評価。同時に、「検定意見の撤回を求めていくことに変わりはない」と語気を強めた。

 「県民の怒りが本土に伝わった証拠」と歓迎した県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長。「執筆者が、消された事実を真実としてくみ取ってくれたことに感謝したい」と、共感の広がりを実感した様子で語った。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「県民大会という歴史を盛り込むことで、検定で二度と同じ過ちを繰り返さないための証しになる」。将来に向け、歯止めになることを願った。

 別の教科書会社の執筆者は「県民大会を開いた県民の思いに応えたいという考えは同じだ」と歓迎。「日本軍強制の記述をぜひ盛り込むよう努力したい」と話した。


執筆者の坂本さん 自責「辞任も覚悟」


 「沖縄の人たちの思いを受け止めることができなかった」。沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題で二十七日、「日本軍の強制」を盛り込む形で文部科学省へ訂正申請する内容を公表した教科書執筆者の高校教諭、坂本昇さん(51)。記者会見では「自責の念がある」と、歴史教科書執筆者としての苦悩をにじませた。

 教科書検定では制度上、教科書検定審議会が出した検定意見に異議を申し立てる機会が設けられている。だが日本軍の強制に触れた記述の削除を求めた検定意見に、教科書会社も坂本さんも声を上げることはなかった。

 「異議を申し立てても、判定するのは文科省の同じ調査官。検事と裁判官が一緒になったようなもの」。坂本さんは検定制度の在り方を批判する一方で、「どうせ駄目だろうというあきらめの気持ちがあった」と当時を振り返った。

 転機になったのは、沖縄の人たちから次々にわき上がった怒りの声。「その粘り強さに背中を押され、励まされるような思いがした」

 「教科書の執筆者を辞める」。教科書会社が申請内容の見直しを求めてきた場合の対応を聞かれ、坂本さんは強い覚悟を見せた。


[解説]

「透明性」確保に先手


 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、検定意見が付された五社のうち一社の執筆者が「日本軍の強制」「日本軍の命令」を、本文と証言史料で明記する方針を明らかにした。申請前に記述内容を発表した坂本昇さん(51)の異例の行動は、他の教科書会社や執筆者に弾みをつけるのは確実だ。文部科学省が申請内容に異を唱えることも予想されるが、坂本さんの事前発表で記述の修正過程の「透明性」が確保される利点も見逃せない。

 今回の教科書検定に県民が強く反発したのは、検定意見が付されるまでの審議過程に「密室性」が極めて強かったことが一因だ。

 文科省職員の教科書調査官の原案が、議論のないまま沖縄戦の専門家がいない教科用図書検定調査審議会で追認されたことは、本紙などのマスコミ報道がなければ県民に伝わらなかった。

 文科省は「静謐な検定環境の確保」を理由に審議を公開しておらず、これが検定制度の不信感増幅にもつながっている。今回の訂正申請でも文科省は検定規則の細則を根拠に、申請後の記述内容の公表を教科書会社に禁じた。

 執筆者は「軍命や軍の強制があまりにも明確だと、教科書調査官が修正を要求するだろう」と警戒している。

 記述内容が事前に公表されなければ、文科省が修正を要求した際のやりとりが、再び県民不在の「密室」で処理される懸念は強い。

 申請前に記述内容を発表した坂本さんの対応は、文科省への「抑止力」にもなり得る画期的な取り組みだ。

 他の四社は記述を公表するかどうかを明確にしていないが、内容を事前に公にして県民に伝える意義を、前向きに検討してほしい。(東京支社・吉田央)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710281300_01.html

 

2007年10月28日(日) 朝刊 3・4面

協議いまだ視界不良/米軍再編「中間報告」から2年

 日米両政府が在日米軍再編「中間報告」に合意して二十九日で二年を迎える。普天間飛行場移設をめぐって代替施設案がL字(沿岸案)からV字形滑走路案となり、現在は環境影響評価(アセスメント)手続きが着々と進む。「政府とのパイプ」への期待を集めて昨年十二月に発足した仲井真県政だが、V字案の沖合移動と普天間飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態」の要求をめぐって政府とこう着状態に陥っている。福田内閣が発足し、中断していた普天間移設に関する協議会は首相官邸主導で十一月七日に再開される。しかし、政府と地元の協議の行方は依然「視界不良」だ。(政経部・渡辺豪、東京支社・島袋晋作、北部支社・石川亮太)

沖合移動/国、合理性を疑問視


 沖合移動を求める理由について、仲井真弘多知事は二十三日の記者会見で、(1)集落への騒音軽減(2)キャンプ・シュワブ北側砂浜のウミガメの産卵地保護(3)海流の変化によるサンゴや藻場への影響(4)シュワブ内の貝塚の保護―の四点を挙げた。

 知事は「沖合移動」を求める姿勢の堅持を強調しているが、アセス手続きが進む中、方法書の受け取り保留を解除せざるを得なくなり、「アセス前の修正」にこだわってきた従来スタンスは断念を余儀なくされたのが現実だ。


新たに環境


 県はこれまで、集落への騒音や危険性など生活環境面の負荷を沖合移動の理由に挙げてきた。しかし、アセス手続きの中で沖合移動を求めるスタンスに移行したことから、新たにウミガメや海流など自然環境面の根拠を表面化させたととらえられる。

 これに対し、沖縄防衛局の鎌田昭良局長は二十五日の会見で「アセス手続きの中で客観的なデータを収集し、その結果を県など地元に丁寧に説明していく」と表明。別の防衛省幹部は「環境面を考慮するアセスの観点からは、沖合移動は環境負荷が大きくなるというのが一般的な見方」ととらえ、アセス手続きの中で検討すれば、大幅な沖合移動の可能性は低いと見ている。

 シュワブ沿岸に上陸するウミガメを保護しようと思えば相当の沖合移動が必要とみられるが、県や名護市の要求は「日米合意の範囲内」でいいから「できる限り沖合に」というものだ。しかし、具体的にどれだけ移動すれば納得がいくのかは県民に明示していない。「合格点」は知事と島袋吉和名護市長の判断に委ねられている。

 政府関係者は「県から政府に非公式に伝えられている移動距離は、当初五十メートルだったのが、途中で百メートルになり、福田内閣発足後は百五十メートルと次第に長くなった」と指摘、「際限のない要求だ。根拠があるとは思えない」と合理性を疑問視する声も上がる。


集落上飛行


 日米が合意した「キャンプ・シュワブ沿岸案(L字案)反対」を掲げ、名護市長選に当選した島袋市長が、〇六年四月に防衛省と基本合意を交わした際の主眼は「集落上空の飛行を避ける」ことだった。もともと一本の滑走路だった日米合意(L字案)を、離陸、着陸専用の二本のV字形滑走路に変更したのはこのためだ。L字案のまま沖合移動することに防衛省が難色を示し、V字案に変更した、というのが名護市と防衛省の基本合意の流れだ。

 「地元の意向を尊重する」ことを公約に掲げた仲井真知事が当選するや、V字案の沖合移動を求めた島袋市長の態度は、「L」から「V」に変更した経緯を度外視したもの、と防衛省には映る。

 一方で防衛省は当初、V字案について「集落上空は飛ばない」としていたが、「緊急時は当然除外されるし、そのほかの場合、訓練の形態によっては当然(集落上空を)飛ぶことはあり得る」(金澤博範防衛政策局長)と変化させた。

 V字案合意の前提が問われる問題だが、現段階で政府と県や名護市の間で踏み込んだ議論は行われていない。沖合移動について石破茂防衛相は、科学的なデータなど「合理的な理由がない限り変更は困難」としている。集落上空飛行の問題こそ、地元の懸念の原点であり、政府と協議する「合理的な理由」に値するのではないか。

 辺野古沖を埋め立てる従来計画がとん挫した主要因は「反対派の阻止行動」との教訓がある防衛省には、阻止行動を排除しやすいシュワブ沿岸域の第一制限区域内での作業をなるべく広範囲に確保したい意向が根強い。同省が「沖合移動」に難色を示す背景には、「実行可能性」の確保を最優先するスタンスも挙げられる。


名護市 地元意向受け修正要求


 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で、地元と政府との協議が進展するかどうかのキーポイントとなっている名護市の「沖合移動」要求の経緯をまとめた。

 二〇〇六年一月、日米合意したキャンプ・シュワブ沿岸案に反対を表明した島袋市長が当選。代替施設受け入れには柔軟姿勢を示していたため、同年四月七日、島袋市長は政府と、飛行ルートが住宅地上空を避けたV字形滑走路案で基本合意した。

 しかし、翌十一日には辺野古区行政委員会が「着陸用滑走路が辺野古集落に近過ぎる。できるだけ滑走路を集落から離れた沖合側へ移動させることを求める」方針を確認し、その後、市や国に要請した。十二日には、北部市町村会が政府と基本合意した島袋市長支援の声明を発表。

 同年十一月に「現行のままの政府案(V字案)では賛成できない」との公約を掲げた仲井真知事が誕生。知事に配慮した久間章生防衛相(当時)が「修正」を示唆すると、地元で沖合移動の期待が一気に高まった。

 市は〇七年一月の政府との第三回協議会で滑走路を南西側沖合に寄せる試案を非公式に提示。市は「基本合意はあくまで概念図で詳細な場所を合意したものではない」との立場を主張。

 同二十四日には同市議会が「可能な限り沖合に移動するよう」求める意見書を可決し、島袋市長を後押しした。

 しかし、南西移動には地元辺野古区から「滑走路が近づく」「リーフが活用できなくなる」との声が出たため、島袋市長は「試案はあくまでも最大限の範囲を示したもの。地元が南には寄せるなと言うなら沖側への平行移動だけでいい」と説明。その後は「可能な限り沖合に」に路線変更。

 市は市議会三月定例会で試案提案の根拠を明示。(1)住民生活への影響(騒音等)軽減(2)埋め立てのほとんどが浅瀬で大型ケーソン(コンクリート箱)も不要となり工事費軽減、工期が短縮できる(3)長島自体がケーソンの代わりとなり平島も利活用できる(4)政府案と同様に陸側からの施工が可能(5)地元同意を得られる―の五項目を示した。

 十一月七日に開かれる協議会開催を前に二十六日、北部市町村会が「島袋市長支援」の声明を再度発表した。


「普天間」閉鎖「3年」要求でこう着


 政府との普天間移設協議の「入り口」としてきた公約の「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」について、仲井真弘多知事は二十三日の記者会見で「ある意味で普天間そのもののことは考え方が別。即閉鎖といっても困るだろうから、三年をめどに、と言っている」と解説した。

 普天間の危険性除去の問題は、既定の工程に沿って進められている移設作業とは切り離し、現段階で政府が「取り組む」姿勢さえ示せばいい、とも聞き取れる。

 三年を「めど」に「閉鎖状態」を求めたもの、と幅のある要求をしている点を強調し、知事は決してハードルは高くない、との口ぶりだ。

 しかし一方で、知事は同じ会見の中で「ヘリの数、訓練の中身を減らせばいい」とも言及している。こうなると、米軍の運用改善に直結する要求であり、政府にとっては、官僚レベルでクリアできる問題ではなく、日米の政治レベルの決断を要する課題となる。

 普天間飛行場の運用改善については沖国大への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米が協議していた飛行ルートの再検討で、北東側の飛行ルートの優先使用などで合意。

 この際、防衛施設庁(当時)は「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との見解を既に示している。

 政府は三年の閉鎖状態を「非現実的」として取り合わず、一貫してシュワブ沿岸部への代替施設建設によって普天間の危険性除去に対応するとのスタンスだ。

 現段階では政府が「引き続き危険性除去に取り組む意思表示」さえ示せば、県は代替施設の移設作業に協力して取り組む考えとみられるが、県の要求がヘリや部隊の運用にかかわる「抜本的な運用改善」である以上、政府にとってハードルは決して低くはない。

 仮に県との間で形式的な「口約束」が成立しても、実質的に米側との協議を進めなければ政府が批判の的となる。

 一方で、県側にとっても、知事就任から一年近くが経過し、公約実現の期限は二年後に迫っている。「三年がたったときに『閉鎖状態のめどを付けた』と言えばいい」(与党国会議員)と楽観できる状況ではない。

 閉鎖状態の要求は、時間との勝負であり、政府から迅速な対応を引き出せなければ意味を成さない。二年後に少しでも危険性除去の議論が進んでいればいい、との判断が現時点で知事の心中にあるのだとすれば、公約の「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」という言葉との乖離はあまりに大きい。

 知事が政府に課そうとしているハードルを、県民にも分かりやすく提示し直す必要があるのではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710281300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月28日朝刊)

[普天間移設協]

政府の強行姿勢が問題だ

 米軍普天間飛行場の移設に関する協議会が十一月上旬に開かれる見通しとなった。実現すれば今年一月の第三回協議会から約十カ月ぶりに、政府と県が同じテーブルにつくことになる。

 仲井真弘多知事は「これまでのような(政府側の)我田引水の会合では意味はないが、内閣も変わってこちらの主張にも耳を傾ける姿勢があればいい」と出席に前向きだが、果たしてそうだろうか。

 確かに内閣は変わった。だが、参加する関係閣僚は前内閣とほぼ同じ顔ぶれである。

 額賀福志郎財務相は防衛庁長官在任中の二〇〇六年四月、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部にV字形滑走路を建設することで島袋吉和名護市長と基本合意を交わした本人だ。

 高村正彦外相も防衛相時には「現在の案は最も理想的。合理的理由がない限り変えられない」と県や名護市が求めていた沖合移動に否定的な見解を表明。名護市が「再編交付金」の交付対象に含まれることにも否定的な見方を示していた。

 「V字案」を積極的に推進してきた二人の閣僚が加わった移設協議会で、「沖縄の声」に耳を傾ける環境が整ったとは思えない。むしろ、県や名護市が求める代替施設の沖合移動に否定的な閣僚がそろい、政府の強行姿勢がより鮮明になった感すらある。

 移設協議会は開けばいいというものではない。普天間飛行場の移設に伴うさまざまな問題について政府と県、名護市などが率直に意見を述べ合う場でなければなるまい。

 政府は地元の懸念や不安の解消に誠意を持って対応すべきであり、「沖縄に譲歩するべきではない」(石破茂防衛相)という姿勢では問題が複雑化するだけで、とんでもない住民無視と言わざるを得ない。

 県は環境や騒音などの問題に加え、環境影響評価(アセスメント)の方法書や住民意見概要の送付などを頭越しで進める政府の対応を問いただし、県民に明らかにすべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071028.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月29日朝刊)

[「再編合意」から2年]

機能強化だけが目立つ

 日米両政府が在日米軍再編に合意してからきょうで二年。だが、その実態は基地施設の削減ではなく、機能強化だけが目立つと言っていいのではないか。

 もともとが自衛隊と在沖米軍の役割分担と連携に主眼が置かれていたのであれば、いまさらの感がなくもない。

 しかし、当時の小泉純一郎首相はじめ外務相、防衛庁長官は国会などで「沖縄県民の過重な基地負担を軽減するためのもの」と述べていたはずである。しかも「そのために最善の努力をする」とも強調していたはずだ。

 実態はどうだろうか。金武町キャンプ・ハンセン内にあるレンジ16での陸上自衛隊の共同使用を求めたり、米陸軍特殊部隊が使う都市型戦闘訓練施設の新設を決めるなど、負担はこれまで以上に増しているとしか思えない。

 名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設で合意した普天間飛行場代替施設も不明な点が多い。

 政府は当初、V字形滑走路を持つ代替施設では住宅地上空は飛ばないという説明を繰り返していた。

 それが「緊急時は当然除外されるし、そのほかの場合、訓練の形態によって(集落上空を)飛ぶことはあり得る」(金澤博範防衛政策局長)と言うようになっている。県民だけでなく米側にも詭弁に聞こえるのではないか。

 「米側から聞いていない」と言い張る垂直離着陸機「MV22オスプレイ」の配備計画は進み、二〇一四年度から始めて一六年度までに二個中隊が配備されることが明らかになっている。

 政府は二言目には「基地の運用に口は挟めない」と言うが、米軍が提示できる事実をなぜ隠すのか。県民の信頼を損ねている理由がそこにあることを、政府は認識する必要があろう。

 代替施設では新たな問題も出てきている。米軍が普天間飛行場にはない装弾場を設ける計画を打ち出していることだ。もう一つは、大浦湾側にある二百十四メートルの岸壁である。

 ホワイト・ビーチや天願桟橋からも明らかなように、二百メートルを超えれば輸送艦だけでなく潜水艦も着岸できる。岸壁をどう使うつもりなのか、両政府にはきちんと説明してもらいたい。

 基地が完成すれば、その後は「運用の問題」として片付けられるのは目に見えている。だからこそ、その実態を明確に示してほしいのである。

 県民は、在沖米軍の再編計画について政府が米軍の計画を知っていて隠しているという疑いを持っている。説明責任を果たすのは政府の務めであり、政府は県民の疑問に対し誠意を持って対応すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071029.html#no_1

 

2007年10月29日(月) 夕刊 1面

F15あす未明離陸/嘉手納基地

 米空軍嘉手納基地は、三十日未明にF15戦闘機六機と空中給油機一機が米本国に向けて離陸すると発表した。周辺自治体は強く反発、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は二十九日午後にも幹事会を開いて、今後の対応を協議する。

 同基地によると、製造年の新しい機体への更新の一環。F15の機体更新は今回実施すれば、あと一回で完了するという。同基地の未明離陸は九月十一日に続くもので、今年に入って六回目になる。

 同基地は「周辺住民へ騒音の影響が及ぶことを認識しながらも、運用上の必要性と安全面を注意深く考察し、行うことにした」としている。

 三連協の野国昌春会長(北谷町長)は「嘉手納基地は米軍にとって使い勝手のいい基地なのだろうが、周辺住民にとって騒音被害は我慢の限界だ」と批判した。「リリースではアイロンフロー計画はあと一回で終わるというが、未明離陸そのものがなくなるということではないだろう」と懸念を示した。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「即応訓練が終わったばかりなのに」とあきれた表情。「深夜、未明の騒音被害は、住民の健康にも影響を与える。絶対に容認できない」と述べた。

 同町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は「(未明離陸の)間隔が短くなってきている。米軍の軍事的都合ばかりが優先されており、無神経さに怒りを覚える」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710291700_01.html

 

2007年10月29日(月) 夕刊 4面

射撃場建設「許さず」/金武町伊芸区

 【金武】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の射撃場建設が計画されている問題で、同レンジに近接する金武町伊芸区の住民が二十八日、断固反対を訴える看板を設置した。

 池原政文区長は「レンジ4への都市型訓練施設建設にあれだけ反対したのに、また近くのレンジ3に建設するというのは金武町全体が愚弄されているとしか思えない」と怒りをにじませた。「米軍再編で日米が合意した時から計画されていたはずだ」と話し、機能強化、負担増大にいら立ちを見せた。今後、英語の看板も設置し、米軍関係者にも訴えていく。

 草刈り作業などで中学生も協力。瑞慶村和喜君(金武中三年)は「今でさえ大砲の大きな音や山火事で大変なのに、弾が飛んでこないか怖い」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710291700_06.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 2面

未明離陸 基地司令官に抗議

三連協「住民無視の運用」

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計七機が三十日未明、同基地から米本国に向け離陸を予定している問題で、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は二十九日午後、同基地司令官や外務省沖縄事務所、沖縄防衛局に対し未明離陸を中止するよう文書で抗議・要請した。

 基地司令官あての抗議文では「運用を工夫すれば日中の離陸も可能であり、米軍はその努力を怠っている。住民を無視した基地の運用であると言わざるを得ない」と厳しく指摘している。

 その上で、一九九六年に日米合同委員会で合意した深夜、早朝(午後十時―翌日午前六時)の飛行を制限している騒音防止協定の順守などを強く求めている。

 沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に対しては、「国レベルで深夜、早朝飛行の中止に向けた協議を行い、内容を明らかにすること」を要求した。

 同問題で、嘉手納町議会と北谷町議会が三十日午前にそれぞれ基地対策特別委員会を、沖縄市議会は三十一日午前に基地に関する調査特別委員会を開き、今後の対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_02.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 2面

フェアな運営なら必要/知事、普天間協に前向き

 【宜野湾】仲井真弘多知事は二十九日夜、来月七日の開催が固まった米軍普天間飛行場の移設に関する協議会について「これまでと違うフェアな運営の仕方であれば、むしろ必要なことだ」と述べ、出席に前向きな姿勢をあらためて示した。宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで開かれた九州・沖縄地区防衛協会連絡協議会に出席後、記者団に答えた。

 石破茂防衛相が同飛行場の移設先が変更された過程を公表すると明言したことついて、仲井真知事は「どうしてあそこ(政府案)が理想なのか。変えられた経緯や中身、その理由が分からない。はっきり公表したほうがいいと思う」と述べた。

 守屋武昌前事務次官の証人喚問については「証人喚問の最中なのでコメントできない」と述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_03.html

 

2007年10月30日(火) 朝刊 24面

実行委存続を確認/教科書問題

 「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は二十九日、那覇市の教育福祉会館で会議を開き、日本史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除させた文部科学省の検定意見を撤回させるまで同実行委の存続を確認した。

 会議では、今月十五、十六日に東京で行われた検定意見撤回と教科書への記述復活を求める要請行動の結果報告や、同実行委の運動方針が話し合われた。

 参加者からは「国会での審議が新テロ対策特措法や防衛省不祥事が中心となり、『集団自決』教科書検定問題への注目が下火となっている」「教科書会社からの訂正申請受け入れで終わらせようとする動きが強まっている」など危機感を訴える意見が相次いだ。

 実行委の存続が全会一致で認められ、署名集めや福田康夫首相らへはがき、寄せ書きを送る運動への協力、県民大会やその後の要請行動の結果を報告し、各政党が県民大会決議の達成のために新たに決意を述べる集会の開催などが提案された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月30日朝刊)

[守屋氏証人喚問]

疑惑はいっそう深まった

 ゴルフ接待が始まった十二年前から数えると、回数は二百回を超えるという。正規料金を支払ったことはなく、夫人同伴でプレーすることもしばしばだった。夫婦丸抱えの、すさまじい接待攻勢である。

 接待を受けているという認識を持ちながら、業者に「これからはこの名前でやってほしい」と言われて、ゴルフ場でもゴルフバッグのタグにも偽名を使っていたというのだから、開いた口がふさがらない。

 守屋武昌前防衛事務次官に対する衆院テロ防止特別委員会での証人喚問。防衛事務次官といえば防衛省の事務方のトップである。就任の際には栄誉礼を受けるほどの身分で、一般の隊員からみれば雲の上の人だ。

 自衛隊員倫理規程は、利害関係者と「遊技またはゴルフをすること」を禁じている。明らかな倫理規程違反だ。国家公務員倫理法にも反する。

 守屋氏は一時期、倫理管理官を務めていた。倫理規程の周知徹底を呼び掛け、部下を指導する立場にある人が業者と癒着し、夫婦同伴のずぶずぶの接待にはまっていたのだ。

 職業倫理の欠如は驚くばかりである。調達実施本部の汚職事件や防衛施設庁の談合事件など、過去の教訓がどれだけ生かされているのか、疑わしい。

 業者との癒着を生みやすい組織体質がないかどうか、天下りの問題を含めてこの際、徹底的に洗い直すべきだ。

 航空自衛隊の次期輸送機(CX)のエンジン調達をめぐって守屋氏は、業者に「便宜を図ったことは一切ない」と全面否定した。だが、疑惑が晴れたとはいえない。

 業者は何らかの見返りを期待して、長期にわたる接待攻勢を続けたのではないのか。この業者がヘリコプターの装備品納入の際、防衛庁(当時)に対して過大請求をしながら処分を受けていないのは腑に落ちない。

 海上自衛隊による米艦船への給油量の訂正問題が起きたとき、守屋氏は防衛局長だった。守屋氏は証人喚問で「後で報道で知った」と関与を否定したが、にわかには信じがたい。

 普天間飛行場の辺野古移設をめぐって、沖合浅瀬案を拒否し、沿岸V字形滑走路案を強く主張したのは守屋氏である。

 照屋寛徳議員(社民)は「基地建設が利権の対象にされている」と事実関係をただした。質問時間が短く、しり切れトンボに終わったこの問題の解明も欠かせない。

 守屋氏に対する再喚問だけでなく、関係者の国会招致も必要だ。疑惑解明に手を抜いてはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071030.html#no_1

 

琉球新報 社説

守屋前次官喚問 疑惑は晴れていない/真相究明は国会の責務だ

 防衛省への装備納入業者との癒着疑惑が取りざたされる同省の守屋武昌前事務次官に対する証人喚問が、衆院テロ防止特別委員会で行われた。

 前次官と親密な関係にあった元専務が経営を取り仕切っていた防衛商社「山田洋行」から受けていた利益供与は、どの程度の頻度で行われていたのか。その見返りに業者に何をしたのか。守屋氏は、利害関係者とのゴルフについて「大変不適切な行為だった」と述べ、業者とのゆがんだ関係が明らかになった。

 だが接待を受けた防衛商社に対しては、装備品調達などで便宜を図ったことは「一切ない」と疑惑の核心部分を全面否定した。

記憶たどる努力を

 喚問の様子は、約2時間半にわたってテレビで中継された。守屋氏の説明を聞いて、どれだけの国民が納得しただろうか、大いに疑わしい。

 守屋氏は「責任を痛切に感じている」のであれば、もっと積極的に実態に踏み込んで説明すべきだった。肝心な部分については、なるべくぼかし、あいまいに済ませたい。そんな姿勢に映った。

 「承知していない」「記憶にない」と逃げるのではなく、むしろ記憶をたどる努力をし、誠実に語ってほしい。

 能吏、実力者とうたわれ、防衛省の事務方トップに上り詰めた守屋氏である。自分に向けられた疑惑の数々を、たとえ否定するにしても、その根拠を示すなど論理的に言葉を尽くして説明しない限り説得力を持ち得ない。

 証人喚問で問われたポイントは3点だ。業者とのゴルフ疑惑、海自補給艦が2003年に米補給艦に給油した量の訂正問題への関与、業者への便宜供与はあったのかどうかの3つである。

 守屋氏は、喚問前に既に元専務とのゴルフ交際については認めている。自費であっても防衛省の利害関係者とのゴルフを禁じている「自衛隊員倫理規程」に違反するとの認識を持っていたことも明らかにしている。

 そのせいか、守屋氏のゴルフ接待についての説明は、比較的よどみがなかった。

 元専務とゴルフを始めたのは防衛政策課長だった12年前にさかのぼることや、回数は「200回を超える」ことを明かした。この5年間では「多い時は月に4回、100回を超えた」と語った。

 ゴルフは守屋氏の妻も一緒にプレーすることが多く、その際に偽名を使い、ゴルフセットを夫人分も含めて二度もらっていた。元専務と賭けゴルフや賭けマージャンをし、旅行の接待も受けていた。

 それにしても、公務員の倫理に触れる行為がこれほど頻繁に安易に繰り返されていたとはいまさらながら驚かされる。公務員の基本中の基本に目もくれなかったことになる。

地に落ちた信頼

 巨額の防衛装備をめぐる契約が不正にゆがめられることへの危惧はどうなっていたのか。あきれるほかない。

 守屋氏は自身の問題が新テロ対策特別措置法の障害になっていることへの責任に言及したが、それ以上に深刻な問題が別にある。

 実力部隊を抱える防衛行政への信頼が地に落ちたのである。責任は極めて重大だ。当然ながら守屋氏を重用してきた歴代の防衛庁長官・防衛相の責任も問われてしかるべきだ。

 次期輸送機(CX)エンジン納入などをめぐる便宜供与は「一切なかった」とした。業者の防衛庁への過大請求疑惑についても「記憶にない」とかわした。

 業者側は守屋氏をなぜ特別に厚遇してきたのか。何らかの見返りを期待する意図があった。そう疑うのが自然だ。守屋氏の説明はこの疑念に答えていない。

 宴席に防衛庁長官経験者が同席していたことも見過ごせない。だが名前の公表は拒んだ。これも腑に落ちない。

 守屋氏は、米軍普天間飛行場の移設問題に実質上の責任者として深くかかわってきた。喚問では県内の特定の業者に対し、V字形滑走路案の機密図面の提供に関する疑いも指摘された。否定はしたが、もっと詳細に語る必要がある。

 喚問では結局、疑惑は晴れなかった。元専務を含め関係者の国会招致などを通じ疑惑の解明を進めるべきだ。あいまいなままに終わらせては、防衛行政への信頼回復は遠のくばかりだ。

(10/30 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28510-storytopic-11.html

 

2007年10月30日(火) 夕刊 1面

9機強行 最大92デシベル/嘉手納・未明離陸

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計八機が三十日未明、米本国へ向け同基地を離陸した。同日午前三時五十一分に、嘉手納町屋良で九二デシベル(騒々しい工場内に相当)を記録した。周辺自治体は中止を要求していたが、米軍は「運用上の都合」を理由に強行。未明離陸は二〇〇七年に入って六回目で、繰り返される爆音被害に、首長や議会、住民の反発は一層強まっている。同日午前二時五十分ごろには、別任務とみられるKC135空中給油機も事前通告なしに離陸した。

 米軍は事前の説明で、F15に同行する空中給油機は一機としていたが、実際にはKC10空中給油機二機が離陸した。

 F15戦闘機六機は同基地南側滑走路を使用し、午前三時五十一分ごろから相次いでから北谷町方向に離陸。同五十六分には、KC10空中給油機二機が沖縄市方向に飛び立った。

 嘉手納町の職員が同町屋良の「安保の見える丘」で測定した騒音は、F15の離陸順に、八七・二デシベル、九二デシベル、八三・六デシベル、八九・四デシベル、八六・七デシベル、八五デシベル。KC10空中給油機は七九・三デシベル、七九デシベルだった。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は、同基地が未明離陸の実施を発表した二十九日、基地司令官に対し文書で抗議、中止を要求した。野国昌春会長(北谷町長)は「再三の抗議にもかかわらず、再び米軍は一方的な理由で、住民に大きな負担を強いた。未明離陸の禁止を明記した騒音防止協定の締結を国家間で交渉すべきだ」と国レベルで改善策を講じるよう訴えた。

 今回の未明離陸は、同基地の旧型F15を製造年の新しい機体に更新する「アイロン・フロー」と呼ばれる計画に伴うもの。同基地は、同計画に伴う未明離陸をあと一回実施するとしているが、日程は確定していない。


嘉手納・北谷議会 抗議へ

基地特委「容認できない」


 【嘉手納・北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計八機が三十日未明、同基地を離陸した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)と北谷町議会(宮里友常議長)は同日、基地対策特別委員会を開いた。米軍の強硬姿勢を批判する意見が相次ぎ、未明離陸の中止などを求める抗議決議と意見書の両案を提案することを決めた。

 臨時会は北谷町議会が三十一日、嘉手納町議会が十一月六日にそれぞれ開く予定。

 両町議会の委員会では、「寝静まった時間帯の飛行は容認できない」「県選出の国会議員とも連携し、国レベルで改善策を講じるよう訴える必要がある」などの意見が上がった。同問題をめぐっては、沖縄市議会(喜友名朝清議長)も三十一日午前に基地に関する調査特別委員会を開き、今後の対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301700_01.html

 

2007年10月30日(火) 夕刊 5面

闇裂く爆音 怒り沸点/6度目強行 住民憤り

 【中部】三十日未明、米軍嘉手納基地で今年六回目の未明離陸が行われ、寝静まった住宅地域に激しい爆音が響いた。周辺自治体が強く中止を申し入れているにもかかわらず、「運用上の理由」で繰り返される未明離陸。住民からは「表現できないくらいの爆音で目が覚めた」「どうにかしてほしい」と怒りの声が上がった。

 戦闘機の飛行ルート下の北谷町砂辺。寝静まった住宅街を激しい爆音が襲った。

 同区に住む砂辺スミ子さん(78)は「気分が朝からイライラしている。政府の方には一カ月くらい泊まり込みで来てもらって、どんな音なのか聞いてほしい」といら立ちをぶつけた。別の女性(65)は「表現できないくらいの音だった。頭がボーとしている。安眠妨害を通り越している。ワラビンチャー(子や孫)のためにもこんな大変な状況は早くやめてほしい」と語気を強めた。

 嘉手納基地の滑走路に近い嘉手納町屋良区を含む東区の島袋敏雄自治会長(62)は「即応訓練があったと思ったら、今度はまた未明離陸。区民からたくさんの苦情が寄せられている」と憤った。「三連協の抗議も届かない状況。区民が危険にさらされる訓練を即時にやめてほしい」と訴えた。

 屋良区の主婦宮平美代子さん(63)は爆音で目を覚ましたという。「一度起きるともう寝られない。毎日こんな状態。何とかして騒音のない生活をしたい」

 沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会は三十一日にメンバーを招集し、抗議決議や意見書の両案などを協議する。与那嶺克枝委員長は「今年に入り何度も抗議決議している。議会の決議を何だと思っているのか。最近の米軍の姿勢は異常としか思えない。いいかげんにしてほしい」と怒りをあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710301700_02.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 2面

県、アセス方法書諮問/普天間代替

 米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書について県は三十日、県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)に諮問した。同審査会は、県のアセス条例に基づく審査を行う飛行場については十二月二十一日、国のアセス法に基づく海上埋め立て部分に関しては来年一月二十一日となっているそれぞれの知事意見提出期限までに、答申をまとめる。

 県文化環境部の友利弘一環境企画統括監は、仲井真弘多知事が方法書受け取り保留を撤回した理由について、「意見を述べないことは異議なしととらえられ、事業に関する住民等の意見や名護市長、宜野座村長の意見を踏まえないことになる。地域の環境保全に責任を持つ知事の立場が損なわれると考えた」と述べ、慎重な審議を求めた。

 この日の審査会では、代替飛行場建設をめぐり自然環境保護のため米連邦裁判所で米国防総省を相手に「ジュゴン訴訟」を提起している原告団の一人、真喜志好一さんが、傍聴席から審査の在り方への要望を述べ、県職員らから制止される場面もあった。

 真喜志さんは(1)事業者が現在、同建設予定地で実施している環境現況調査は違法であり中止させること(2)方法書の事業内容とジュゴン訴訟で米国側が提示した内容に差があり、相違点について専門家など住民が説明する場を設けてほしい―と要望した。

 同審査会の規則では、審査のために必要があると認められる場合は、専門的知識を有する者などに意見を聴くことができると定めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_04.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 2面

沖国大ヘリ墜落/首相「かすかに記憶」

 【東京】福田康夫首相は三十日の衆院テロ防止特別委員会で、二〇〇四年八月に沖縄国際大学に米軍CH53D大型輸送ヘリが墜落した事故の記憶について尋ねられたが、「かすかに覚えています」とだけ答えた。笠井亮氏(共産)への答弁。

 事故当時は官房長官を辞任して三カ月が過ぎていたものの、沖縄開発庁長官も経験し、「沖縄の課題を熟知している」(県選出国会議員)と評されていた福田首相。だが、質問された瞬間は首を横に振るなど戸惑いを隠せないしぐさも見せ、「あっ、あのっ、えー」と間を置いた上での答弁だった。

 笠井氏は「沖縄県民は本当にしんどかった。大変な屈辱的事件だった。かすかにということでなく、しっかりと沖縄県民の気持ちを受け止めて覚えておいてもらいたいと思う」と首相の認識をただした。

 沖縄に対する福田首相の“思い”の程度が浮き彫りにされた答弁に、宜野湾市の伊波洋一市長は「市民は『また落ちるのではないか』と恐怖の中で暮らしている。政府の責任者として、その程度の認識しかないのは情けない」と憤慨。「小泉、安倍内閣でも沖縄への認識が薄いと言われた。今後も沖縄側から粘り強く基地問題を訴え、現状を認識させるべきだ」と話した。

 沖国大の石原昌家教授も「日本国家にとって、沖縄は基地を置く都合のいい場所にすぎず、生命財産を守るべき住民がいるという意識のらち外にある。何げない言葉に本音が表れた」と痛烈に批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_05.html

 

2007年10月31日(水) 朝刊 25面

未明離陸 砂辺で109デシベル/米軍F15

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が三十日未明に同基地を離陸した際、県が北谷町砂辺に設置している騒音測定器が最大で一〇九・二デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を記録していたことが分かった。

 同町によると、測定された騒音記録は、同日午前三時五十二分に一〇三・五デシベル、同五十三分に一〇九・二デシベル、同五十四分に一〇六・九デシベルといずれも一〇〇デシベルを上回った。

 同基地では同じ時間帯に、F15六機が砂辺地域へ向けて離陸したことが確認されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月31日朝刊)

[給油活動停止]

非軍事支援、検討の時だ

 テロ対策特別措置法の期限切れを前に、福田康夫首相が突然、民主党の小沢一郎代表と会談した。

 インド洋での海上自衛隊による給油活動は、十一月一日の期限切れで法的根拠を失い停止することになるが、給油継続を盛り込んだ新テロ対策特別措置法案の成立めどはまったく立っていない。

 そんな状況の中で開かれた初めての党首会談である。

 福田首相が法案成立への協力を要請したのに対し、小沢代表はこれを拒否、議論は平行線に終わった。

 三十日の党首会談は、対テロ新法案をめぐる日本の政治状況を考える上で、極めて象徴的だ。

 国会の首相指名選挙の際、衆院は福田氏を参院は小沢氏を首相に指名した。衆院議決を優先する憲法の規定に従って福田氏が首相に選ばれたものの、ねじれ国会の構図は変わらない。

 対テロ新法案について、国会が割れているだけでなく、国民世論も賛否がせめぎ合っている。

 つまり党首会談は、対テロ新法案をめぐって国論が真っ二つに割れ、にっちもさっちもいかない状況を象徴しているのである。異例の事態といっていい。国民の中にも、どう判断していいか、迷いがあるのではないだろうか。与野党とも、総選挙を横目でにらみながら、世論調達に懸命だ。

 実は、インド洋での海上自衛隊による給油量は二〇〇三年度以降、激減している。今年八月末までに実施した給油全量の60%が、〇一年十二月のスタートから〇三年三月までの十六カ月間に集中しており、現状はピーク時の十分の一程度だ。

 給油継続に執拗にこだわる理由がはっきりしないのである。強いて言えば、「アメリカの機嫌を損ねたくない」ということなのだろう。

 このような状況の中で取るべき賢明な策は、もう一度、原点に立ち返り、十分な時間をかけて徹底した議論を重ねることだと思う。

 テロ特措法に基づく給油活動については、「不朽の自由作戦」(OEF)の正当性・合法性や、イラク作戦への燃料流用疑惑、給油量の誤りの隠ぺい疑惑など、問題が噴出している。

 だとすれば与党はこの際、テロ特措法の期限切れを奇貨として、衆院での再可決による法案成立を断念し、議論の時間を確保すべきである。

 米国が本格的な軍事作戦を開始して以降、テロが拡散している現状を踏まえ、非軍事面、民生面の支援拡大という、もう一つの選択肢を真剣に検討してはどうか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071031.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15未明離陸 実効ある騒音規制必要だ

 米空軍は30日、県や地元自治体の中止要請を無視し、嘉手納基地でF15戦闘機による未明離陸を強行した。住民の安眠を妨げ、平穏な生活を脅かす暴挙であり、到底容認できない。米軍は、地元の切実な声に耳を傾け、深夜・未明の飛行を見合わせるべきだ。

 住民そっちのけの行為がまかり通る背景として、1996年に日米合同委員会で合意された「嘉手納飛行場における航空機騒音規制措置」の不完全さを指摘しなければならない。

 「午後10時―(翌日)午前6時の間の飛行および地上での活動は、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される」という内容だが、実際上、米国が必要と判断すればいつでも飛行できるようになっている。

 「規制措置を守ってほしい」とどんなに要望しても、米軍は「規制措置の範囲内で(離陸は)行われている」との認識を示すばかりで、らちが明かない。今年の未明離陸は今回で6回目だ。

 深夜・未明の飛行自粛を米軍に促すはずの日米合意が、逆に未明離陸を正当化する根拠として利用されているのが実情だ。合意から11年が経過し、本来の趣旨が吹き飛んでしまっている。

 米軍の勝手放題の基地運用を許しているのは、日本政府の怠慢としか言いようがない。

 あらためて米国と協議し、深夜・未明の飛行を原則として禁止するといった、実効性のある規制に改めることが不可欠だ。

 未明離陸は、嘉手納基地にある旧型のF15を、より高性能な機体に更新することが目的とされる。

 これまで米軍は「米国に日中に到着させるため嘉手納基地を早朝に離陸する必要がある」と説明してきたが、経由する基地を増やすなど米本国に戻る飛行ルートを工夫すれば、人々が寝静まっている時間帯に飛ばなくても済むはずだ。

 この間の米軍の言動を見ていると、未明離陸を避けようと努力した形跡がうかがえない。

 それどころか、嘉手納基地の司令官は、9月に嘉手納飛行場に関する3市町連絡協議会から抗議を受けた際「三沢、岩国では早朝や未明離陸を繰り返しても抗議はない。沖縄はなぜ抗議してくるのか」と言ってのけた。

 基地の運用のためなら住民生活の平穏など全く顧みない態度だ。

 米軍は今後あと1回、未明離陸の計画があると発表している。

 日本政府は、米軍によって国民生活が脅かされている状況を放置してはならない。

 地元から中止要請があることを「取りあえず米国に伝える」というような及び腰の姿勢ではなく、強い態度で未明離陸の回避を米国に迫るべきだ。

(10/31 9:57)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28548-storytopic-11.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 1面

再編交付金、名護外れる/官報告示

 【東京】石破茂防衛相は三十一日までに、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」に全国三十三自治体を指定、同日付の官報で告示した。普天間飛行場代替施設案(V字案)の沖合移動を主張している名護市や宜野座村、陸上自衛隊とのキャンプ・ハンセン共同使用を容認していない金武町、宜野座村、恩納村は従来、候補とされていたものの指定から漏れた。一方、那覇港湾施設(那覇軍港)の代替施設の受け入れを容認している浦添市は指定された。

 四市町村の指定漏れについて防衛省の担当者は、政府案に反対していることなどを理由に、米軍再編推進法で規定する「再編の円滑かつ確実な実施に資する」との要件を満たしていないと指摘。さらに、「今後協力が得られるということが現時点で判断できないため」とも説明している。

 一方で、「今後、自治体の理解と協力が得られれば交付対象に随時追加していく」と説明。V字案やハンセン共同使用についての理解と協力が得られれば、財務省と協議した上で交付対象に指定する考えを示した。

 この時期の指定については、指定を受けた自治体が交付金の助成対象となる事業計画を作成し、各議会の十二月定例会などで承認を経る必要があることを指摘。担当者は、「受け入れを表明している自治体の都合上、指定をこれ以上先延ばしできない」としている。

 「再編交付金」は、再編に伴う負担の増減を(1)防衛施設面積の変化(2)施設整備状況(3)航空機、艦船の数や種類の変化(4)人員数の変化(5)防衛施設の使用態様の変化―を基礎として点数化。

 一方で、再編事業の進ちょく率を(1)受け入れ(10%)(2)環境影響評価(アセスメント)の調査着手(25%)(3)工事(埋め立てなど主要部分)の着工(66・7%)(4)再編の実施(100%)と分類。

 旧来交付されていた日米特別行動委員会(SACO)交付金の交付額を参考に、一点当たりの交付の基準となる額を算定し、これに市町村の負担の点数を掛け合わせて交付額を決定する。

 防衛省は十一月上旬にも交付金の内示額について、財務省の承認を経た上で関係自治体に通知。自治体は、事業計画の議会承認を経て防衛省に交付を申請し、正式に決定される見通しだ。


県が防衛省批判

「やり方おかしい」


 県の上原昭知事公室長は、名護市が再編交付金の交付対象に含まれなかったことについて「名護市は政府と基本合意し、新たな基地建設を受け入れると言っている。基地負担が生じるにもかかわらず、交付の対象外とする防衛省のやり方はおかしい」と批判した。


「内容確認する」

名護市長


 【名護】米軍普天間飛行場移設先の名護市の島袋吉和市長は三十一日午前、市内の公務先で「内容を確認してからコメントしたい」と述べた。島袋市長はこれまで「政府と名護市で基本合意している。協力していないわけではない」として、対象外とされていることに反論していた。


「反対変わらず」

恩納村長


 米軍キャンプ・ハンセンで陸上自衛隊との共同使用を打診されている「三町村連絡協議会」の志喜屋文康恩納村長は「三連協で共同使用を受け入れていないのだから当然だろう。村内のハンセン内で爆破訓練するという説明は受けたが、それ以上の明確な説明は受けていない。負担増であり、反対に変わりはない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_01.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 1面

未明離陸/北谷議会が抗議決議

 【北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が三十日未明に同基地を離陸した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は三十一日午前、臨時会を開き、騒音防止協定の順守やF15戦闘機の即時撤去などを求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。あて先は同基地司令官、首相、防衛相ら。同基地から未明離陸は今年に入り、今回で六回目。嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十一月六日に臨時会を開き、抗議決議、意見書の両案を可決する。沖縄市議会(喜友名朝清議長)も三十一日午前、基地に関する調査特別委員会で、対応を協議。近日中に再度委員会を開き、文案などを調整する。

 嘉手納基地からは、三十日午前三時五十一分ごろからF15戦闘機六機とKC10空中給油機二機が本国へ向けて飛び立った。午前二時五十分ごろには、別任務とみられるKC135空中給油機も離陸した。

 同基地に隣接する同町砂辺地域では、F15戦闘機が離陸した三十日午前三時五十二分から同五十四分にかけて、最大で一〇九・二デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を記録した。

 抗議決議は、騒音防止協定が午後十時から午前六時まで航空機の飛行を制限しているものの、「運用上の必要性」を理由に未明離陸を繰り返す米軍に対し、「運用を工夫すれば未明離陸の回避は十分可能であり、米軍はその努力を怠っている。配慮に欠けた基地運用に怒りを禁じ得ない」と強く抗議。

 今年に入り二回強行された同基地でのパラシュート訓練や、サイレン音や拡声器放送が鳴り響き、住民から苦情の声が上がった即応訓練などを指摘した上で、「周辺住民は我慢の限界であり、いかなる理由でも到底容認できない」としている。

 意見書では国や関係機関に対し、問題の解決に向けた国レベルでの協議を行い、その内容を公開することを求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_02.html

 

2007年10月31日(水) 夕刊 5面

戦中つづった日記寄贈/平和資料館に

 那覇市出身の故與儀達清さんが、沖縄戦時中の避難生活や心境をつづった日記や二女の幸子・ウィルセン(旧姓・與儀)さん(63)が戦中着ていた着物が三十一日、幸子さんらから糸満市の平和祈念資料館に寄贈された。二十五日にきょうだい四人で米国カリフォルニアやハワイから来沖した。幸子さんは「戦争の悲惨さ、平和の大切さを多くの人に知ってほしい」と願っている。(宮城貴奈)

 「今日も激しい爆撃だ」「毎日が不幸だ」。手帳には小さな文字で、一九四四年の十・十空襲から四五年六月までの戦中の状況や達清さんの心境が克明につづられている。極端に厳しい食糧事情の中、北部や南部を逃げ惑う日々だったが、ガマの中でも日記を書き続けた。二十七年前、達清さんは「苦しい体験を忘れないでほしい」と二男の隆さん(65)に手帳を託していた。

 與儀さん一家は、家族七人で北部や南部を逃げ回り、祖父と長男を亡くした。疎開船に家族全員で乗船しようとしたこともあったが、直前に隆さんが負ったやけどの病院探しのため、出発時間に間に合わず乗れなかった。長女のエミ・トーイさん(71)は「後でその疎開船は米軍に撃沈されたと聞いた。危ないところだった」と振り返った。

 戦中ずっと同じ着物を着続けた幸子さんは、当時幼かったため戦中の記憶はないが、戦後も母親から毎日のように沖縄戦の話を聞いたという。母親は、幼子を連れながら家族五人が生き残った証しとして、幸子さんの着物を長年大切に保管していた。

 戦後、幼少時にハワイに移住、日本語が話せなかった隆さんは、達清さんから渡された手帳を訳すために大学で日本語を学んだ。寄贈について、隆さんは「(天国の)父も喜んでくれると思う」と語った。着物は幸子さんにとっても大切な品だが「自分の手元にあるより、沖縄戦の歴史の一つとして残してほしい」と涙ながらに語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710311700_04.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(11月24日、25日、26日)

2007年10月24日(水) 朝刊 1・29面

米が陸上調査勧告/「普天間」アセス

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐる環境影響評価(アセスメント)について二〇〇六年四月当時、水域でのみ行う計画だった防衛庁(当時)に対し、米側が埋め土として掘削される辺野古ダムやシュワブ陸上区域でも(希少生物などの)生息調査をするよう勧告していたことが二十三日分かった。自然環境保護のため米連邦裁判所で米国防総省を相手に「ジュゴン訴訟」を提起している沖縄在住の原告団が同日、名護市内で会見し、裁判で示された米政府の文書を公開した。

 同文書で米側は、「もしアセスが不十分ならば、建設や将来の運用により、環境や生息地への予想外の影響が生じた場合、米国海兵隊が責任を負わされるだろう」と強く危惧。移設を支持する米側ですら、日本側の拙速な計画に疑念を呈していた形だ。

 額賀福志郎防衛庁長官(当時)と島袋吉和名護市長らが、V字形滑走路建設で基本合意した〇六年四月七日の直後の十九日に当局者の話し合いを記録した文書で、二十日付。

 普天間飛行場にはない弾薬装備場を滑走路北側に設置するという記述もある。同項目には「解決済み」とあり日米間で合意したとみられる。

 また、日本側が騒音コンター(分布図)を示していないのに対し、米側は「新しい滑走路の形状・配置ならびに、運用に関係する騒音コンターを示す必要がある」と指摘している。米側は当時から、陸地上空の飛行はあり得るとの立場で、「集落地区上空の飛行ルート回避」を強調する日本側を、けん制した内容だ。

 さらに米側は、二〇〇一年の運用要求書に基づき、艦船の寄港に使用されるとみられる全長二百十四メートルの岸壁を図面で示すよう要求。米側の勧告後に、地上でのアセスは実施されることになったが、施設の具体的な内容は、政府の環境影響評価方法書には記載されていない。


     ◇     ◇     ◇     

「情報隠し」国批判/原告「県民だまし」


 【名護】「政府は市民や県民をだまそうとしている」「名護市長や知事は(滑走路を)沖合に出せといっているが、それで解決する問題ではない」―。二十三日、名護市内の公民館で開かれた米国ジュゴン裁判報告会。普天間飛行場の代替施設に二百メートル以上の岸壁や弾薬装備場設置などで米側と詳細な協議をしているにもかかわらず環境影響評価書では、施設の内容に触れない政府の姿勢を強く批判する声が相次いだ。

 原告団の真喜志好一さんは米側文書で、現在嘉手納基地で行われている航空機の弾薬装備施設を代替施設にも設置することで日米が合意している記述に注目。「実弾射撃は鳥島射爆場などでしか行われていないが、伊江島の射爆場が再び使われるようになる。名護市や東村高江上空を実弾を装備したヘリやオスプレイが、飛び交うようになる」と危機感を表明。二百メートルを超える岸壁は「天候次第では強襲揚陸艦エセックスも寄港が可能になる」と指摘した。

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団団長の東恩納琢磨さんは「強い怒りを感じる」と感情を抑えきれない表情。ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「賛成派が納得しているのは(危険な)情報が隠されているからだ。本来政府が出すべき資料が出されていない。知事も市長もだまされている」などと名護市長らに、白紙撤回を求めていく考えを示した。

 フロアからも発言が相次いだ。ヘリ基地いらない二見以北十区の会共同代表の浦島悦子さんは「地元も本土のマスコミも、滑走路の沖合側移動を要求する知事や市長を『頑張っている』と評価する論調はおかしい。市民は基地が造られることを望んではいない」と、「地元対政府」の構図で伝えがちな報道を批判した。

 参加者からは、基地建設を進めるために、地域住民の生活環境への悪影響を公表しない“本末転倒”ともいえる日本政府への批判が相次いだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241300_02.html

 

2007年10月24日(水) 朝刊 1面

知事、アセス保留解除/普天間代替

 米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局が方法書に対する住民らの意見概要を県に送付したことを受け、仲井真弘多知事は二十三日、県庁で記者会見し、「環境アセス手続きの一つとして受け取らざるを得ない」とし、方法書の受け取り保留を解除し、知事意見の提出手続きに踏み切る考えを表明した。県は今月中にも環境影響評価審査会に諮問する見通し。知事はまた、「県や地元の意向が無視されている」と防衛省の対応を厳しく批判した。

 知事意見の手続きを進める理由については、(1)知事意見を述べないと、異議なし、ととらえられ、住民や関係市村長の貴重な意見を踏まえないことになり、地域の環境保全に責任を持つ知事の立場が損なわれる(2)地元の意向を踏まえ、できるだけ沖合に寄せてほしいというこれまでの主張を放棄したとも見なされかねず、大変不本意―と説明。「アセス前の修正」を断念し、アセス手続きを進める中で引き続き「滑走路の沖合移動」を求める意向を示した。

 沖合移動を求める理由として、住宅地への騒音のほか、海流の変化によるサンゴや藻場への影響、さらにキャンプ・シュワブ沿岸部にあるウミガメの産卵地や貝塚が破壊される―と指摘。防衛省の騒音データについては「あの数値はまったく信用していない。データ上極めて疑義が強い」と切り捨てた。「騒音から言えば、かなりまだ(沖合に)出すべきだ」としたが、「事業を進めるのは防衛省」とし、今後も移動距離など県側から具体的要求を打ち出す考えがないことを明らかにした。

 知事が権限を持つ埋め立て申請への対応については、このまま防衛省から「沖合移動」などに前向きな回答が得られない場合は「無論ノーだ」と表明。「アセス手続きのやり直しなど移設作業に遅れが生じても、すべて防衛省の責任」と突き放す一方で、「(埋め立て申請は)これから二年半くらいかかる。その中で政府が考え方を変えてくれば、頭からノーとは言っていない。私は米軍再編を進めるべきだと思っているから今の段階で二年半先の最終結論をなかなか出せない」とし、アセス手続きの中での政府の軟化に期待を寄せた。


沖合移動は堅持/名護市長


 【名護・宜野座】島袋吉和名護市長は二十三日、「県や名護市と協議を行うことなく、意見概要書が提出されたことは極めて遺憾」と防衛省の対応を批判。しかし、「市長意見を出さないとなれば、異議なしととらえられる懸念があるため、受け取らざるを得ない」と話した。移設先地元として政府側に求めてきた「アセス前」の滑走路沖合移動の事実上断念を意味し、今後はアセス手続きと同時並行で「沖合移動」を求めていく。島袋市長は、「方法書を精査するとともに住民生活や自然環境に著しい影響を与えないという観点から、可能な限り沖合に寄せるよう今後とも強く主張する」と述べた。

 県外出張中の東肇宜野座村長は、「概要書はまだ見ていないが、県や名護市と歩調をあわせていきたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241300_03.html

 

2007年10月24日(水) 朝刊 1面

全駐労、手当減拒否/次回決裂なら来月スト

 日米両政府が交渉中の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で、日本人労働者向けの諸手当約百億円の削減を日本側が提案している問題について、全駐労中央本部(山川一夫委員長)は二十三日、防衛省と団体交渉し、同省の提案を拒否、次回交渉で撤回がなければ、十一月中旬から下旬にかけて時限ストライキを決行することを伝えた。ストが行われれば、同本部による全国規模のストは一九九一年以来、十六年ぶり。

 同本部は二十三日、交渉前に執行闘争委員会を開き、交渉が決裂した場合のストの方針を確認。十一月二日に予定している次回交渉までに、各支部でスト権の確立を目指す。

 同本部によると、団体交渉は防衛省で約二時間行われた。同省が提案事項を説明した後、同本部が再考を求めたが受け入れられなかったという。

 全駐労沖縄地区本部の與那覇栄蔵委員長は「一方的で不利益な提案であり、労働者の権利が侵害されていることに憤りを感じる」と防衛省の対応に不満を示した。

 削減が提案されているのは、国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」ほか「語学手当」など。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241300_04.html

 

琉球新報 社説

辺野古アセス 独断専行は理解得られない

 在日米軍再編合意に基づき、米軍普天間飛行場代替施設が建設される名護市辺野古沿岸部の環境影響評価(アセスメント)で、沖縄防衛局が環境アセス方法書に対する住民意見の概要書を県に提出した。

 代替施設のV字形滑走路を可能な限り沖合に寄せるよう求める県、名護市に対し、防衛省は「日米で合意した案を着実に進める」との見解を繰り返しており、修正の可能性を否定し続けている。

 この間、政府は、県や名護市の了承も得ないままに、環境アセス方法書の公告・縦覧、そして今回の住民意見概要書提出と着々と手続きを進めてきた。

 何が何でも現行の政府案で押し切ろうとする姿勢は独断専行そのものであり、県民無視も甚だしい。

 アセス方法書の受け取りを保留してきた仲井真弘多知事は23日の記者会見で「これ以上、受け取りを保留し、知事意見を述べないことは異議なしととらえられる。受け取らざるを得ない」と表明するとともに、「地元の意向が無視されている」と強い調子で政府を批判した。

 知事は環境アセス方法書に対する知事意見の中で、環境保全の見地から、現行政府案に反対する姿勢を明確に打ち出すべきである。

 それにしても理解し難いのは、県や名護市と話し合おうともせずに、米国と合意した移設案をごり押しする政府の態度だ。

 米国の顔色だけを気にして、肝心の国民をないがしろにしているとしか言いようがない。

 当初、政府内には「譲歩すれば沖縄は増長する」「受け入れないと振興策がなくなると分かれば沖縄は折れるだろう」と高をくくる見方もあったようだ。

 この間、足元を見られるような要素が沖縄側にあったとすれば、残念なことである。

 仲井真知事は昨年11月の県知事選で「現行のV字形案のままでは賛成できない」と訴えて当選した。政府案を丸のみしたのでは公約違反との批判を免れない。政府に対し最後まで毅然(きぜん)とした態度で臨んでもらいたい。

 沖縄は、去る大戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が繰り広げられ、戦後は住民の意思に反し広大な土地が米軍基地として強制的に接収された。

 現在も、全国の米軍専用施設面積の4分の3が集中し、県民は基地から派生する事件・事故、騒音被害などに脅かされている。

 在日米軍再編が基地負担軽減につながる可能性があると期待されたが、日米合意の中身は普天間飛行場の県内移設を大前提としており、期待外れに終わった。

 政府は、沖縄の苦渋の歴史を十分に踏まえ、基地負担の軽減に本腰を入れて取り組むべきだ。

(10/24 10:00)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28340-storytopic-11.html

 

2007年10月24日(水) 夕刊 1面

米原潜、炉の検査怠る/7月うるま市寄港

 【うるま】今年七月、うるま市勝連の米軍ホワイトビーチに寄港した米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦ハンプトン(六〇八二トン)の乗員が、原子炉の定期検査を怠った上、記録を偽造して検査を行ったように見せかけ、将校と兵士六人が処分されていたことが二十四日までに分かった。米紙USAトゥデー(電子版)などが報道した。

 報道によると、乗員は「(化学、放射線学上の観点から)毎日実施すべき原子炉の安全検査を一カ月以上行わず、それを隠ぺいするために記録を偽造していた」という。場所は不明。

 米海軍の広報担当者は「ハンプトンの行動と記録が海軍の要求する高い水準を満たさなかった。ただ、乗員や環境に危険はなかった」と米紙に説明。ハンプトンは九月十七日にカリフォルニア州サンディエゴに寄港したという。同紙は「核兵器を積んだB52が本土上空を飛んだことも判明しており、軍の核関連物質の取り扱いに新たな疑問が投げ掛けられるのは必至だ」としている。

 在沖米海軍報道部は「情報は何も入っていない」、沖縄防衛局は「何も連絡は入っていない」としている。県基地対策課は「初めて聞いた。ハンプトン寄港時の放射能調査では異常はなかった」とし、特に対応は考えていないという。

 知念恒男うるま市長は「現在詳しい状況が分からず、担当課に調査させた上でコメントしたい」とした。同市議会は七月、寄港に反対する抗議決議と意見書案を全会一致で可決している。

 ハンプトンは七月二十八日にホワイトビーチに入港、八月一日に出港した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241700_01.html

 

2007年10月24日(水) 夕刊 5面

早朝からサイレン・騒音/嘉手納・即応訓練

 【嘉手納】米空軍第一八航空団による米軍嘉手納基地での即応訓練は二十四日も引き続き行われ、早朝から英語の拡声器放送やサイレン、航空機の騒音が民間地域に響いた。F15戦闘機などの航空機が離着陸を繰り返し、嘉手納町屋良では同午後一時現在、八〇デシベル(地下鉄の車内の音に相当)以上を三十回計測。最高値は、午前六時四十二分に、九六・三デシベルを記録。嘉手納町には即応訓練と航空機騒音の相乗被害を訴える苦情が相次いだ。

 同町は苦情を添え「多くの町民が不安と恐怖に陥っている。即応訓練は、過去にも再三トラブルを起こしており、断じて容認できるものではない。今後、訓練の中止を強く望む」との抗議文を同基地司令官に送付した。

 住民からの苦情は同午後一時現在で九件。「昔の空襲警報を思い出す」「放送の内容が意味不明でさらに恐怖を感じた。戦場の嘉手納町になってしまった」「このサイレンは何か。逃げなくていいのか」など、不安を訴えている。

 読谷村に住む男性は「一睡もできなかった。音を下げるように米軍に訴えてくれ」と切実な思いを伝えた。

 訓練は基地が攻撃を受けたことを想定し、軍を含む各部門が迅速に対応できる態勢づくりを図るのが目的。

 二十六日まで予定されている訓練では模擬爆発音や発煙、拡声器放送、サイレンなどを使用するが、同町には午後十時から翌日午前六時まで音の発生する訓練は控えるとの事前説明があったという。同町は二十二日にも「地域住民に配慮するよう」申し入れていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710241700_03.html

 

2007年10月25日(木) 朝刊 1面

調査官と審議委員 半数、「つくる会」と関係

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書問題で、検定意見の原案を作成する教科書調査官の日本史担当者と、教科用図書検定調査審議会日本史小委員会の近現代史担当委員の計八人のうち半数の四人が、「新しい歴史教科書をつくる会」が発行した教科書を監修・執筆した伊藤隆東京大名誉教授と関係があることが二十四日、分かった。伊藤氏の門下生がいるほか共同研究や共著の実績があった。衆院文部科学委員会で石井郁子氏(共産)が明らかにした。

 石井氏の調べによると、日本史担当の教科書調査官四人のうち、主任調査官の照沼康孝氏、調査官の村瀬信一氏は東京大在学中、助教授だった伊藤氏の教え子だった。

 近現代史担当の審議委員四人のうち駿河台大教授の広瀬順皓氏、九州大大学院教授の有馬学氏は一九九六―二〇〇〇年度にかけ、文科省の科学研究費補助金を活用して伊藤氏を統括者とした共同研究に従事していた。この研究には村瀬氏も加わっていた。

 また、村瀬、照沼、有馬の三氏らは「近代日本の政治構造」という著書を共同で執筆しており、有馬氏はあとがきで「執筆者はいずれも先生(伊藤氏)が在学中、学恩に浴し」と伊藤氏への謝意を示していた。

 伊藤氏は「つくる会」の発足に携わり、〇六年まで理事を務めた。

 石井氏は「今回の検定意見は文科省の片寄った人選がある。歴史を逆行させる地下水脈のようなものが一貫して流れていると言わざるを得ない」と指摘し、調査官と審議委員の選考の在り方を厳しく批判した。

 渡海紀三朗文科相は「一部の方にそういう色合いが見えるということだけで、物事が流れていると断定するのはいかがか」と述べ、問題視しない考えを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251300_03.html

 

2007年10月25日(木) 朝刊 2面

普天間協 来月前半に/開催方針 政府固める

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十四日、首相官邸で町村信孝官房長官と会談し、米軍普天間飛行場の移設に関する協議会を早期に開催する方針で一致した。町村氏が協議会の早期開催に同調したのは初めて。政府はこれを踏まえ、十一月中旬に予定されている福田康夫首相の訪米前に開催する方針を固めた。岸田氏は会談終了後、記者団に「十一月の前半に開きたい」と意欲を示した。

 岸田氏は、防衛省が県に普天間移設に伴う環境影響評価(アセスメント)の住民意見概要書を送付したことや、仲井真弘多知事が記者会見で防衛省への強い不快感を表明したことなどを受け、沖縄の現状を説明するため官邸を訪れた。

 町村氏は県と防衛省の溝が深まっている現状を踏まえて「移設協議会は早期に開催するべきだ」と述べた。

 岸田氏は防衛省の対応について記者団に「(県側から)反発の声が上がっていると聞いているので、その点は心配している」と懸念を表明。

 「関係者が同じテーブルに着いて意見交換し、意思の疎通を図るのはどんなテーマでも重要。基地移設ではなおさらだ」と述べ、県と防衛省が協議会で率直に意見交換する必要性を強調した。

 これに先立ち、県選出の嘉数知賢衆院議員(自民)も官邸で町村氏と会談。嘉数氏は「住民感情や県民の気持ちをもっとくみ取って(移設作業を)進めてもらわなければ困る、という知事の考え方を伝えた」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251300_04.html

 

2007年10月25日(木) 朝刊 2面

ハンセン強化に反対決議/金武町軍特委 臨時議会提案へ

 【金武】金武町議会の米軍基地問題対策調査特別委員会(知名達也委員長)は二十四日、会合を開き、米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場の建設計画や陸上自衛隊の共同使用などについて協議。基地機能強化に反対する抗議決議を、十一月九日に開かれる臨時議会に提出することを決めた。

 抗議決議にはハンセン内レンジ4の都市型戦闘訓練施設の暫定使用の即時中止も盛り込む。全会一致で可決される見通し。

 軍特委では、レンジ3、4に隣接する並里区の池原政文区長と登川松栄区行政委員会議長から、現在の被害状況や射撃場建設問題などに対する意見を聞いた。池原区長は射撃場建設について、「都市型戦闘訓練施設の建設、使用に反対する県民大会を開いたのに、夜間訓練の実施など暫定使用による被害が続いている。さらなる施設の建設は、区民だけでなく、町民全体を愚弄する行為だ」と、日米両政府を批判し、町挙げて建設反対を訴えるよう求めた。

 知名委員長は「射撃場の建設については、区だけでなく議会や町も反対の意思を示している。再度強い抗議の意思を示したい」と話した。同議会は、八月に射撃場建設、九月に共同使用に対する抗議決議をしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251300_05.html

 

2007年10月25日(木) 朝刊 27面

爆発音・煙 基地緊迫/嘉手納訓練

 【嘉手納】米空軍第一八航空団による米軍嘉手納基地での即応訓練は二十四日午後も引き続き行われ、同三時十五分ごろには、爆発音一発が響き、発煙筒を使用した訓練が実施された。

 同時刻には、機銃を積んだHH60救難ヘリ三機が着陸した。嘉手納町には同日午後五時までに、サイレンや英語での放送、航空機の離陸の騒音被害を訴える住民からの苦情が十件寄せられた。

 同基地によると、訓練は二十六日まで。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251300_08.html

 

琉球新報 社説

普天間代替施設 計画隠しまだあるのでは

 在日米軍再編に伴い、米軍普天間飛行場の名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設で米側が代替施設に普天間飛行場にはない214メートルの岸壁や戦闘機装弾場を要求し、日本側も基本的に同意していたことが米公文書で分かった。

 2006年5月の最終合意では、これらの事項は一切、明らかにされていない。

 代替施設への次期主力輸送機オスプレイ配備、民間地上空の飛行も米側は要求していることがこれまでに分かっている。計画隠しはまだまだあるのでは、と疑わざるを得ない。

 県民に詳細を知らせないまま建設工事を強行することで、既成事実を次々と積み重ね、米側の思い通りの基地を建設することだけに、政府は腐心しているように見える。

 代替施設が完成すれば、周辺住民をはじめ県民は、基地被害を受ける危険性の中で生活することを余儀なくされる。当事者である県民に必要な情報を提供し、十分に説明することは政府の責務である。

 政府は、県民から反発を受ける計画の詳細については最後まで覆い隠すつもりなのだろうか。説明責任を果たそうとしない政府の姿勢は許し難い。

 岸壁については、日本側が地図に明示していないことから、米側から地図に示すよう要求されるありさまである。岸壁の必要性は既に01年の会議で日米が確認しており、約6年も政府はこの事実を隠していたことになる。

 岸壁は、全長約180メートルの艦船が停泊できる。海兵隊員とヘリを海上輸送する揚陸艦も着岸できる規模である。

 普天間基地にはなかった軍港を併設するもので、基地機能強化以外の何物でもない。代替施設ではなく、格段に強化された基地が新たに建設されることが、米公文書であらためてはっきりしたと言っていい。

 海上埋め立て用土砂を採取する予定の辺野古ダム地域や、移設でつぶれるシュワブの陸域部分についても、米側は環境影響評価(アセスメント)を実施するように求めている。

 防衛省が進めるアセス方法書にはそれを含め、岸壁や装弾場には触れていない。方法書は不備としか言いようがない。

 方法書が計画に即したものでない以上、アセスは無効であるのは自明の理である。

 県や名護市、宜野座村は06年5月、普天間代替施設について政府と基本合意した。しかし、岸壁の建設や民間地上空の飛行などはその際には明らかにされていなかった。

 それらの基本合意も、政府の隠ぺい体質によって無効になったと言えるだろう。

(10/25 9:47)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28374-storytopic-11.html

 

2007年10月25日(木) 夕刊 1面

「レンジ16一帯」使用/ハンセン日米共同訓練

金武町長は「反対」堅持

 【北部】在日米軍再編で日米合意した米軍キャンプ・ハンセンでの陸上自衛隊との共同使用問題で、沖縄防衛局の担当者が金武町、宜野座村、恩納村で構成する三町村連絡協議会(三連協、会長・儀武剛金武町長)に対し、ハンセン内レンジ4の都市型戦闘訓練施設の移設先となっているレンジ16一帯などを使用したい意向を伝えていたことが二十五日までに分かった。担当者は早期に受け入れを表明するよう促した。防衛省は年明けにも共同使用を始めたい考えで、実弾射撃を伴う本格的な訓練は二〇〇八年四月以降になる可能性がある。三連協はそれぞれの町村に持ち帰り、対応を検討するとしているが、儀武会長は「反対の意向は変わらない」としている。

 沖縄防衛局の担当者らが二十二日、金武町役場を訪れ、三連協に説明した。訓練場所については、ハンセン内の都市型戦闘訓練施設のあるレンジ4や射撃場の建設が予定されているレンジ3は使用せず、実弾射撃訓練が行われているレンジ1、2やレンジ16一帯を使用すると説明。恩納村側では爆破訓練を実施したい考えであることなどを伝えた。

 さらに共同使用の受け入れや訓練開始が再編交付金の対象となると説明し、十二月の〇八年度予算編成までに受け入れを表明すれば、来年度予算に交付金の10%、再来年度以降100%交付するとした。

 訓練の開始時期については明言しなかったが、防衛省は、年内にも地元の合意を得たい考えで、合意が得られ次第、自衛隊による在日米軍基地の共同使用を規定した日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手。手続きが完了し次第、訓練を開始したい意向だ。

 説明では、資料などは配布されなかった。

 儀武会長は「従来の説明と大きな変化はない。負担増であることは変わらず、まずは負担軽減をどうするか示してほしい。資料も配布されておらず、これまで通り反対だ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251700_01.html

 

2007年10月25日(木) 夕刊 1面

県、普天間協出席前向き/知事 新内閣に期待

 米軍普天間飛行場の移設に関する協議会を政府が十一月前半に開きたい、との意向を示していることについて、仲井真弘多知事は二十五日午前、沖縄タイムスの取材に応じ、「これまでのような(政府側の)我田引水の会合では意味はないが、内閣も変わって、こちらの主張にも耳を傾ける姿勢があるのであればいい。協議会が開かれることは悪いことではない」と述べ、出席を前向きに検討する考えを明らかにした。

 仲里全輝副知事も同日午前、「従来のように国のシナリオに従って、国の考えを押し付けてくるのか、会合がどういう形になるのかを見極めないといけない」とした上で、「ただ、今回は防衛省ではなく内閣官房が取り仕切るようなのでやり方が変わることも期待している。もっと明確に内閣府と調整する必要はあるが、原則(協議会に)臨む必要はある」との見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251700_02.html

 

2007年10月25日(木) 夕刊 5面

海兵隊と実動訓練/県警など 米軍機墜落を想定

 米軍航空機の墜落事故を想定した日米の合同訓練が二十五日午前、浦添市のキャンプ・キンザーで行われた。民間地に航空機が墜落し、負傷者が出たと想定。米海兵隊と沖縄防衛局、県警、消防が連携し、消火活動や負傷者の救急搬送など初動態勢の手順を確認した。

 二〇〇四年の沖縄国際大学ヘリ墜落事故を受け、日米が米軍施設・区域外での米軍機事故に関するガイドラインを策定。今年二月に米空軍と実動訓練を行ったが、海兵隊との訓練は初めて。

 訓練では、事故を目撃した日米両国の通行人が通報し、浦添署員と浦添消防隊員らが航空機の乗員や横転した車から民間人を救助。海兵隊消防と連携して航空機の火災を消し止めた。

 また、事故現場近辺では日米の合同指揮所が設けられ、規制線の設置などを協議し、消火後の連携を確認した。

 萱嶋満津保内閣官房沖縄危機管理官は「今回は新たに現場連絡調整所を設置し、日米双方で小まめな連絡を取れるようになった。通訳の数が足りないなどの課題を今後は検討したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710251700_03.html

 

2007年10月26日(金) 朝刊 1面

文科省 来月末にも訂正可否結論

 来年春から使用される高校歴史教科書の検定で、文部科学省が沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除した問題で、文科省は教科書会社からの訂正申請を受け、記述訂正の可否について十一月末までに結論を出すことが二十五日、教科書会社の関係者の話で分かった。検定意見が付いた教科書会社五社のうち四社は、二十九日以降に訂正申請する方針。残る一社も申請する方針を決めている。

 同省は、十一月末までに教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会を開き、各社の記述内容を審議し、訂正を認めるかどうかを判断する。

 検定で日本軍強制の記述を削除されたのは、東京書籍、実教出版、清水書院、三省堂、山川出版。訂正申請の時期を公表しない山川出版を除く四社は、今月二十九日から十一月九日ごろまでに申請することを決めた。

 文科省が、申請結果をまとめるまで記述内容を公表しないよう指示しているため、五社とも「記述内容は公表できない」とした。しかし、山川出版を除く四社の執筆者は、「日本軍強制」に関する記述を明記することを決めている。

 ある社の担当者は「遅くとも来週末までに申請する」と説明しながら、「日本軍強制の記述が認められるか不安も残る」と話した。

 別の会社は十一月五日以降に申請する予定。文科省が十一月末にも結論を出す方針で作業を進めていることを聞いた担当者は「十二月上旬の印刷期限に間に合わせることができそうだ」と安堵。一方で、「検定意見が撤回されずに日本軍強制の記述が認められるかどうか、文科省の動向を見ながら申請ぎりぎりまで文言を調整する」とした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710261300_02.html

 

2007年10月26日(金) 朝刊 2面

普天間代替に弾薬搭載場/防衛局長、設置認める

 沖縄防衛局の鎌田昭良局長は二十五日の定例記者懇談会で、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に建設予定の米軍普天間飛行場代替施設に、普天間飛行場にはない「戦闘航空機弾薬搭載エリア」を設置することを明らかにした。

 一方で代替施設は、普天間飛行場の現行機能のうち「ヘリ基地機能」のみを移設し、軍港機能は保持しないとする従来の説明を繰り返した。

 米側が同エリアの設置を日本側に要求していた問題について、鎌田局長は「現在の普天間飛行場においては嘉手納基地を利用して弾薬搭載を行っているが、辺野古崎への移設に伴い、運用上の支障を来すことになる」として設置予定であることを認めた。

 一方、同様に米側が設置を要求していた二百メートル級の大型岸壁に関しては「われわれの計画の中に軍港としての機能を有するような岸壁を建設する予定はない」と否定。「大浦湾に建設予定の桟橋はあるが、これは普天間代替施設で使用される航空燃料のためのものであり、兵員や物資の恒常的な積み降ろしを行うような軍港としての機能を有するものではない」と説明した。

 仲井真弘多知事が二十三日の会見で、代替施設の沖合移動を求める理由にウミガメ産卵地保護などを挙げたことに関しては、アセス方法書の中で▽那覇防衛施設局(当時)の一九九七年の聞き取り調査で、過去にキャンプ・シュワブ北側砂浜でウミガメの足跡または産卵のために掘った穴を確認▽シュワブ内に四カ所の埋蔵文化財を確認―していると報告。その上で「アセス手続きの中で客観的なデータを収集し、その結果を県など地元に丁寧に説明していく」とし、アセス結果を踏まえて修正も検討していくとの従来姿勢を繰り返した。


     ◇     ◇     ◇     

普天間協 来月7・8日か


 【東京】政府は二十五日、米軍普天間飛行場の移設に関する協議会の次回会合を十一月七、八日のいずれかで開催する方向で調整に入った。しかし、ゲーツ米国防長官の訪日が八日前後に予定されるため、石破茂防衛相や高村正彦外相ら関係閣僚が協議会に対応できない場合は六日か九日で再調整する可能性もある。

 従来は防衛相と沖縄担当相が共催したが、普天間移設問題を首相官邸が主導することを明確化するため、次回会合から町村信孝官房長官が主宰することも検討している。

 政府は、県と名護市に十一月第二週で仲井真弘多知事、島袋吉和名護市長が上京できる日程を打診。七、八日であれば可能との感触を得た。

 内閣府と防衛省は二十六日以降、議題など詳細を詰める。町村官房長官や高村外相、額賀福志郎財務相ら関係閣僚との日程調整も本格化させる。

 防衛省は「県側が譲歩しなければ開いても意味がない」と難色を示してきたが、同省幹部は二十五日、「他の閣僚が参加する中、防衛省だけ参加しないとは言えない」として応じる姿勢だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710261300_03.html

 

2007年10月26日(金) 夕刊 1面

普天間協/官房長官に主宰変更

 【東京】政府は十一月七、八日のいずれかで開催を調整中の米軍普天間飛行場の移設協議会で会則変更を議題に上げ、防衛相と沖縄担当相の共催だった同協議会の主宰を官房長官にする方針を二十六日までに固めた。県側を含めた出席者の同意を得て、官邸主導を明確にする。官房長官主宰となれば、政府内での協議会の位置付けが「格上げ」されることになる。

 岸田文雄沖縄担当相は同日午前の閣議後会見で、主宰者変更について「次回はより多くの関係者が納得していただける会にしたいと考えており、誰が主宰するのが一番いいのかも含めて検討している」と述べ、町村信孝官房長官を主宰者にする意向を示唆した。協議会の在り方にも言及し、「(過去は)関係者が自分たちの思いを十分に申し上げる機会が乏しかったと聞く。それぞれが言うべきことを言える雰囲気づくり、時間も確保しなければいけない」との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710261700_03.html

 

2007年10月26日(金) 夕刊 1・6面

「検定意見の撤回が民意」/大城さん、都内で講演

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」訴訟の被告側支援や教科書検定問題に取り組む「沖縄戦首都圏の会」は二十五日、連続講座「沖縄戦の真実と歪曲」を都内で開き、沖縄戦研究者で沖縄平和ネットワーク代表世話人の大城将保さんが講演した。

 大城さんは教科書問題で政府が訂正申請による決着を図ろうとしていると指摘。「検定意見の撤回を絶対に譲れない沖縄の気持ちを理解してほしい」と支援を呼び掛けた。

 大城さんは沖縄戦体験者への聞き取りなど独自調査を基に「私が把握しているだけで三十三件・一千百二十二人の『集団自決』と、四十六件・百六十八人の軍による住民虐殺があった」と指摘。

 「住民虐殺で恐怖感を植え付けられ、住民の心が凍り付いたことで『集団自決』が起こった。この二つは表裏一体を成している」と述べた。


「はがき運動」高教組も賛同

現場で呼び掛け


 高教組(松田寛委員長)は二十五日の評議員会で、教科書検定意見の撤回を求めるはがきや寄せ書きを政府に送る運動に賛同し、現場の教職員や生徒に参加を呼び掛けることを決めた。運動は県子ども会育成連絡協議会などが呼び掛けており、福田康夫首相、渡海紀三朗文科相らにあてて送る。


     ◇     ◇     ◇     

記述回復は年内に結論/文科相


 【東京】渡海紀三朗文部科学相は二十六日午前の閣議後会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書問題で教科書会社から訂正申請があれば、教科用図書検定調査審議会の再審議を経て「(記述回復の可否について)年内に結論を出す」と述べた。

 審議会の再審議に沖縄戦の専門家を加えるかどうかは「新たなメンバーは入れなくても、いろんな方々の意見を聞くこともないではない」と指摘。審議委員に専門家を加えるか、専門家からの意見聴取をするか、いずれかを検討しているとの考えを説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710261700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月21日、22日、23日)

2007年10月21日(日) 朝刊 1面

衆院選 社民県連が擁立決定

2区 照屋氏 3区 新川氏

 社民党県連(照屋寛徳委員長)は二十日、沖縄市内で定期大会を開き、次期衆院選の沖縄2区に現職で同党副党首の照屋寛徳氏(62)、3区に元沖縄市長で県議の新川秀清氏(70)の擁立を正式に決定した。党本部に申請し、常任幹事会で公認が決定する。

 照屋氏は「米軍基地の機能強化や沖縄戦の『集団自決(強制集団死)』の歴史改ざんを許さず、あらゆる知恵と力を結集し、衆院選を勝ち抜きたい」とあいさつ。新川氏は「社民党がしっかりとやらないといけない。米軍再編は、基地を嘉手納基地以北の中北部に集中させ、基地の掃きだめにする狙いだ。阻止するため、全力を挙げて議席を獲得したい」と訴えた。

 照屋氏は一九四五年七月生まれ。うるま市(旧具志川市)出身。琉大卒。県議二期、参院議員一期を経て二〇〇三年に衆院議員初当選。二期目。

 新川氏は一九三七年一月生まれ。沖縄市出身。コザ高校卒。沖縄市の福祉、経済部長を経て九〇年沖縄市長に初当選。二期務めた。県議二期目。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710211300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月21日朝刊)

[ゴルフ接待疑惑]

国会は事実究明怠るな

 八月末に退任した守屋武昌前防衛事務次官は、四年以上も事務方のトップに君臨し続けてきた。

 中央官庁の慣行を破る異例の「長期政権」だった。官邸や自民党国防族に深く食い込み、省内では「守屋天皇」とも呼ばれた。

 日米両政府が普天間飛行場の移設返還に合意して以来、十年以上も沖縄の基地問題にかかわり続けた。

 移設問題をめぐる省内の路線対立では終始、強硬派として振る舞い、現行の「V字形案」をまとめた。沖合移動を求める県や地元名護市に対して「合理的な理由がない」と突っぱね続けてきたのも守屋氏である。

 その守屋氏にゴルフ接待疑惑が浮上している。

 在職中、防衛省業務の受注実績を持つ防衛専門商社の元専務と百回以上にわたってゴルフを行い、その上にマージャンや飲食も繰り返していたというのだ。

 事実であれば、とんでもないことである。

 二〇〇〇年に施行された「自衛隊員倫理規程」は、利害関係者から供応接待を受けることなどのほか、「利害関係者と共に遊技またはゴルフをすること」も禁じている。

 いわゆる背広組の守屋氏も法律上、自衛隊員として位置づけられ同規程の適用を受けることになっており、倫理規程施行以降にゴルフをしたとすれば明確な違反行為となる。

 仮に規程適用前の行為だとしても問題は残る。

 守屋氏に関しては、ゴルフ接待疑惑のほかにも、二つの問題が持ち上がっている。一つは、給油量訂正問題、もう一つは航海日誌廃棄問題だ。

 海上自衛隊がテロ対策特措法に基づいて米艦船に給油した燃料の量を大幅に訂正した問題は、守屋氏が防衛局長の時に起きている。

 米艦船に給油した燃料の転用疑惑が依然として晴れないだけに、守屋氏本人からの聴取が欠かせない。

 海自の給油艦が、四年間保存するという内部規則に違反して航海日誌を五カ月分廃棄したことも明らかになっている。この問題に守屋氏がかかわっているのかいないのか、解明が必要だ。

 国会では新テロ対策特措法の法案審議が週明けから始まるが、法案の実質審議に入る前に、まずこれらの疑惑について徹底的に事実関係を明らかにすべきである。

 防衛省は軍事力を発動する組織であり、組織運営にあたっては、いささかもやましいことや疑惑があってはならない。あいまいなまま幕引きを図るのは危険だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071021.html#no_2

 

琉球新報 社説

前事務次官に疑惑 真相の究明こそ第一

 「最も政治家らしい官僚」と称された守屋武昌防衛省前事務次官に、自衛隊倫理規定違反の疑いが出てきた。特別背任などの容疑で東京地検特捜部が防衛・航空分野の専門商社「山田洋行」の元専務や関係者から事情聴取を進めているが、元専務と在職中の守屋前事務次官がゴルフやマージャン、会食を頻繁に繰り返していたという。

 石破茂防衛相は、この問題に関し「防衛省全体の信用にかかわること。先月まで事務方トップにいた方なので、必要な確認はする」と表明している。調査の結果、事実が判明すれば同省としても国民に納得のいく説明、対処が求められる。折しも、国会では対テロ新法案の審議入りを週明けに控えており、それへの影響も懸念される。決してあいまいに済まされるべきではない。

 これまで明らかになった事実を見ると、守屋前次官は元専務と最近まで、100回以上ゴルフをしていた。また、マージャンや会食も何度もあった。プレーは山田洋行の関連会社が経営するゴルフ場など。多いときには毎週のようにあり、前次官の妻も同席していたこともある。山田洋行側が料金を負担したこともあったという。

 自衛隊倫理規定は、自衛隊員が利害関係者から供応接待を受けたり、費用を相手持ちでゴルフをしたりした場合、減給または戒告処分となる。自費でも一緒にゴルフしただけで戒告処分の対象だ。今回のケースはこの規定に違反するのは明白だ。

 守屋前次官は8月末、接待疑惑を記者会見で問われて「職権を特定の人のために行使したことはない」と答えている。しかし、倫理規定は(職権の行使の有無を問わず)利害関係者と、一緒にプレーしただけで処分の対象としているのだ。苦しい言い訳にすぎない。ましてや、「職権の行使」とは論外。だとすると、規定違反どころか、汚職になりかねない。

 確かに、前次官はすでに退職しており処分には異論もあろう。だが、捜査当局とは別に防衛省には事実を究明する責務がある。国民の信頼を回復する唯一の道だ。

(10/21 10:37)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28259-storytopic-11.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 1面

落下傘訓練に抗議決議/沖縄市議会

 【沖縄】在沖米空軍によるパラシュート降下訓練が県や周辺自治体の中止要請を押し切り、嘉手納基地で十九日に強行された問題で、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は二十二日、臨時会を開き、「市民の平穏な生活を守る立場から、断じて容認できない」とする抗議決議と意見書両案を全会一致で可決した。抗議文のあて先は駐日米国大使、在日米軍司令官ら。

 決議では「パラシュート訓練が嘉手納基地で恒常化されることは明白であり遺憾だ」と批判。今回の訓練で隊員二人が着地点である滑走路内の緑地帯から外れ、そのうち一人が基地内の林の中に降下したことを挙げた上で「嘉手納基地周辺は住宅街や交通量も多いことから、一歩間違えば事故を誘発することも予測される」と指摘。伊江島補助飛行場での同訓練移転が合意された一九九六年のSACO(日米特別行動委員会)最終報告の厳守を強く求めている。

 また、同議会は同日午前の臨時会で、米軍嘉手納基地内に住む米軍人の息子(21)による強姦致傷事件について「人権を踏みにじる非人道的な犯行は断じて許されるものではない」とする抗議決議と意見書の両案を同じく全会一致で可決した。被害者への謝罪と補償、米軍人・軍属・家族への綱紀粛正と教育の徹底など実効ある再発防止策を求めている。

 抗議決議のあて先は駐日米国大使や在日米軍司令官ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_01.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 5面

真実宿る 戦世の傷跡/沖縄戦特別展

 【糸満】県平和祈念資料館(宮城智子館長)の第八回特別企画展「沖縄戦と戦争遺跡―戦世(イクサユー)の真実を伝えるために」が二十一日、糸満市摩文仁の同資料館で始まった。ガマや壕など県内に残された代表的な戦争遺跡百五十カ所を、写真パネルや遺品を交えて紹介している。十二月二十四日まで。

 戦争体験者が少なくなる中、沖縄戦を後世に正しく伝えるため、戦争遺跡の保存活用の重要性を考えるのが狙い。

 戦争遺跡の分布図とともに、さびた機関銃や鉄かぶと、手榴弾、火炎放射器や病院壕から出土した手術器具などの実物約二百点を紹介。沖縄戦最後の激戦地・摩文仁周辺については、住民の避難場所などを示した立体模型を展示した。

 南部戦線で捕虜となり、本島北部の収容所で死亡した糸満出身者の墓碑、共同墓地に埋葬されていた入れ歯や鑑札、指輪などの遺品も。来場者は、ガラス越しに展示物を熱心にのぞき込み、住民を巻き込んだ地上戦の悲惨さに思いをはせた。

 宮城館長は「戦争遺跡は、戦争体験者の証言と一体となって沖縄戦の実相を伝えていく歴史的史料として極めて重要だ。企画展を通して戦争遺跡の重要性と平和の尊さを考える機会にしてほしい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_02.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 5面

新たに4団体参加/検定撤回はがき運動

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除した文部科学省の高校歴史教科書検定問題で、県婦人連合会、県老人クラブ連合会、県遺族連合会、元女子学徒隊でつくる「青春を語る会」は二十二日、検定意見撤回の意思を福田康夫首相や渡海紀三朗文部科学相に寄せ書きやはがきで送る運動に参加することを発表した。

 すでに運動に取り組んでいる県子ども会連絡協議会に続くもので、各団体の代表が同日午前、県議会で会見し、県民への協力を呼び掛けた。

 今後、五団体以外の団体にも協力を呼び掛けていく。

 沖子連の玉寄哲永会長は「検定意見を撤回しない政府に対し、『有力な審判者は県民の声である』との呼び掛けで県民運動を展開したい」と協力を呼び掛けた。沖婦連の小渡ハル子会長は「なぜ、真実を真実として伝えようとしないのか。県民一人一人がはがきを送り、声を届けよう」と訴えた。五団体は街頭で県民に寄せ書きを募る考えも示した。問い合わせは沖子連、電話098(941)4766。または沖婦連、電話098(884)5333。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_03.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 5面

全駐労、強く反発/軍雇用員の手当減提案

 日米両政府が交渉している在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で、日本側が日本人労働者向けの諸手当約百億円の削減を提案していることについて、全駐労中央本部の照屋恒夫書記長は二十二日、「米軍再編に掛かる費用を、労働者の手当を削って捻出するのは、労働者をないがしろにした行為だ」と、強い不快感を示した。

 同本部では二十三日、全国の各支部委員長らを集め、削減案拒否の姿勢で防衛省との団体交渉に臨む。

 同本部によると、二〇〇六年四月一日現在の従業員の平均給与は月額二十五万四千三百三十四円。国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」だけでも、削減額全体の67%に当たり、一人当たり月額約二万五千円、年間約三十万円が削られることになる。

 照屋書記長は「『公務員にない手当』だといわれるが、その逆もあり、実際の給料は公務員よりも低い。財政難という理由一つで、手当を削り、しわ寄せを労働者に押し付けるやり方はいかがなものか」と、強く反発している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_04.html

 

2007年10月22日(月) 夕刊 5面

きょうから即応訓練/嘉手納基地 あすGBS使用

 【嘉手納】嘉手納基地の米空軍第一八航空団は二十二日から二十六日にかけ、同基地で、GBS(地上爆発模擬装置)やサイレン音、英語の拡声器放送などを伴う即応訓練を実施する。GBSを用いた訓練は、二十三日から行う予定。

 同基地報道部が二十二日午前発表した。

 報道部によると、「地元へ影響が生じないよう、GBSや発煙装置の設置場所は事前に基地幹部の承認を得る」などとしている。沖縄防衛局から連絡を受けた嘉手納町は同日午前、「地域住民に影響が及ばないよう配慮」するよう同局に求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710221700_05.html

 

2007年10月23日(火) 朝刊 1面

防衛局、住民意見を提出 「普天間」アセス

知事きょう抗議表明

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、沖縄防衛局は二十二日、方法書に対する住民らの意見の概要を県、名護市、宜野座村に送付した。県は同日から六十日以内の十二月二十一日までに知事意見の提出を迫られる。仲井真弘多知事は二十三日に記者会見し、地元との協議が整わない段階でアセス手続きを進める国への抗議を表明した上で、方法書の受け取り保留を解除し、名護市が求める「滑走路の沖合移動」を知事意見で要求する考えを打ち出す見通しだ。

 防衛省の辰己昌良地方協力企画課長らが二十二日午後三時、県庁に上原昭知事公室長を訪ねた。約二十分間の協議後、辰己課長は「その(意見書概要提出の)ために来たことは認める。(置いていったという)議論に意味はない。届けたら終わり。名護市と宜野座村も含めて郵送する」と話した。

 上原公室長は「決裁印のないコピー文書を事前説明ということで持ってきた」と説明、同日段階では正式な受理ではないとの考えを示したが、午後五時ごろ、沖縄防衛局職員があらためて県庁を訪れ、決裁印の付いた概要書を提出した。

 仲井真弘多知事は二十二日夕、記者団に対し「あすコメントすることになっている」とのみ繰り返した。県は、郵送分の概要書が県に到着する二十三日に知事の声明を正式表明する方針だ。

 沖縄防衛局は、郵送分を合わせて計四百八十七通の住民らの意見を受理。意見概要は、方法書の確定前に実施している現況調査(事前調査)の中止要求など三百五十七件にまとめられている。アセス手続きでは、意見概要の受理後、県は名護市など関係市町村長の意見を聴取した上で知事意見を六十日以内(国のアセス法は九十日以内)に沖縄防衛局に提出する。県アセス条例は、知事意見をまとめるために必要があれば県環境影響評価審査会の意見を聴くことができると規定している。同局は知事意見などを踏まえて、方法書を確定する。


名護市長も意見提出へ


 【名護】防衛省は二十二日、公告縦覧したアセス方法書への住民らの意見をまとめた概要書を名護市にも提出した。午後六時ごろ、沖縄防衛局職員が市役所基地対策室に提出した。

 島袋吉和名護市長は「(意見概要が)提出されたということは(知事意見の提出への)カウントダウンだ。意見を言わないわけにはいかない」と述べ、知事意見の材料となる市長意見を出す考えを示した。二十三日に今後の対応に関するコメントを発表する。

 これに先立ち同日午後、末松文信副市長や玉城政光政策推進部長らが県庁に仲里全輝副知事らを訪ね、今後の対応を協議した。県と名護市で歩調を合わせて対応することを確認したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231300_01.html

 

2007年10月23日(火) 朝刊 25面 

意見大半 撤回を要求/「普天間」アセス

 米軍普天間飛行場の代替施設建設をめぐり、沖縄防衛局の環境影響評価(アセスメント)方法書に対する住民の意見が二十二日、公表された。「法の形骸化であり撤回すべき」など、五百通近くのほぼすべてが手続きのやり直しを求め、調査の非科学性の指摘も目立った。県は今後、手続き保留の解除と知事意見提出に動くが、専門家は「違法なアセスを追認してはならない」とくぎを刺した。

 「法の手順を逆転させ、自然を破壊する違法な環境現況調査は中止すべき」

 「大気質、生態系など評価項目の選定理由が抽象的で意味不明」

 意見を提出したWWF(世界自然保護基金)ジャパンの花輪伸一さんは「事前調査で環境を攪乱した後のアセスは、科学的でない。県の意向を無視し、市民参加も形骸化させた」と批判する。

 「飛行機の種類や数量も示さずに予測するのは不可能」

 「軍港を建設するのか明らかにすべき」

 基地のアセスに、秘密主義の壁が立ちふさがる。沖縄大学学長の桜井国俊教授(環境学)も意見書を出し、「防衛省は米軍が基地をどう使うか、情報提供させると確約すべきだ。そうでなければ、手続きはただの免罪符になる」と強調する。

 県が知事意見を提出することについて、「建設予定地が県の自然環境保全指針でランク1に指定されていることが、今回の方法書では抜け落ちている。アセス審査会を開いて専門家の意見を聞くべきだ」と求めた。

 「ジュゴンの絶滅危惧種指定を記述しないなど客観性に欠け、生息状態を無視している」

 「調査は最も海草藻場の多様性が高いエリアが空白になっている」

 環境の専門的な立場からも意見が相次いだ。グリーンピース・ジャパンの星川淳事務局長は「本島東海岸の命の多様さは奇跡。海洋生態系の価値を再評価してほしい」と訴える。アセス手続きを認めない立場から意見を出さず、代わりに国内外から三万人の署名を集めた。「世界の目が注がれている。事業中止を選択肢に含め、アセスをやり直すべきだ」と求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231300_02.html

 

2007年10月23日(火) 朝刊 24面

「水と緑 アフガン救う」/ペシャワール会 中村医師

 パキスタンやアフガニスタンで医療活動などを行う非政府組織「ペシャワール会」(事務局・福岡市)の現地代表、中村哲医師が二十二日、「いのちを救え!武器なき国際貢献?アフガニスタンの医療の現場から?」をテーマに那覇市民会館で講演。「平和を達成するのは軍事力ではなく、地域に溶け込んだ国際貢献だ」と訴えた。沖縄ベンチャークラブが主催、うないフェスティバル実行委などが共催した。

 中村医師は、一九八四年にパキスタンで医療活動を始めた。アフガニスタンでは二〇〇〇年から井戸や水路を整備し、相次ぐ内戦や干ばつなどで飢えに苦しむ六百万人の農民の飲料水や農業用水の確保に取り組んだ。

 講演では干ばつで砂漠化が進む農地や水源確保事業の進む状況を写真や地図で紹介。約九百人の聴衆に、アフガニスタンで暮らす住民の過酷な現実を伝えた。

 「ペシャワール会」は国境紛争の影響で、十一月に診療拠点をパキスタンからアフガニスタンに移す。中村医師は「移転後も、現地に土着化して医療や水源確保事業を続ける会の本質は変わらない。両国で半永久的に活動したい」と意気込んだ。

 その上で、「二十三年間、地元の人から襲撃されたことは一度もなく、武器さえあれば身を守れるという『妄想』から自由になれた。アフガニスタンを救うのは水と緑だ」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月23日朝刊)

[思いやり予算]

原則踏まえた見直しを

 思いやり予算をめぐる日米協議が難航している。

 光熱水料などの大幅増額を要求する米側に対し、日本側は難色を示している。基地従業員の手当削減案を示した日本側に対しては、米側が難色を示すという展開だ。

 平たく言えば、総額を減らしたい日本側と増額を図りたい米側が、お互いの主張をぶつけ、妥協点をどこに求めるかで腹の探り合いを演じている、ということだろう。

 それにしてもこの構図は分かりにくい。一体、誰が誰の味方なのか。

 在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)について定めた日米特別協定は来年三月末で期限切れを迎える。現在、日米の間で進められているのは、新協定案づくりのための交渉だ。

 思いやり予算は、地位協定で日本政府の負担が義務付けられていないにもかかわらず、日米同盟の安定維持のために支出しているもので、(1)施設整備費(2)従業員の労務費(3)在日米軍の光熱水料(4)訓練移転費、に大別される。

 特別協定の対象になっているのは、労務費、光熱水料、訓練移転費の三項目。政府は今回初めて、労務費の削減案を打ち出した。

 日本側が負担している基本給、諸手当などの労務費のうち、国家公務員の基本給に10%を上乗せしている「格差給」や「語学手当」などを削減する意向だ。

 財政事情が厳しく国民に負担を転嫁するような施策が相次いでいる中で、思いやり予算だけが聖域であっていいわけがない。

 日本の「ホスト・ネーション・サポート」(駐留国受け入れ支援)は世界の中でも突出しており、住民感情からしても見直しは当然である。

 ただ、「格差給」を削減しても米側が補てんする必要がないから「日米同盟に傷がつかない」(政府高官)という姿勢は、あまりにも安易に過ぎないか。

 「格差給」という名の手当がほんとに必要で妥当な手当かどうかについては、確かに議論の余地がある。

 その一方で、長期にわたって「格差給」が支給され、生活給として固定化されてきた事実も重い。

 「格差給」を問題にするなら、思いやり予算削減の文脈ではなく、もっと別の場で議論し、国民の理解が得られるような結論をだした方がいい。

 政府は、米軍のグアム移転経費を肩代わりすることになっているが、その額は膨大である。むしろ今こそ、地位協定で定められた米軍負担の原則に立ち返って、負担の見直しを進めるべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071023.html#no_1

 

琉球新報 社説

海自給油量隠し 文民統制に危うさないか

 文民統制(シビリアンコントロール)は、今のままで本当に大丈夫なのか。国民にそんな疑念を抱かせかねない問題が新たに浮上した。

 海上自衛隊の補給艦がインド洋で米補給艦に給油した量が20万ガロンではなく、実際は80万ガロンだったと訂正された問題について、海自は約4年前から間違いに気付いていたことが判明した。事実を掌握していたにもかかわらず、当時の石破茂防衛庁長官(現防衛相)らに報告されていなかったというのだから、事は重大である。

 政府・与党は、23日の衆院本会議で海自の給油活動継続のための新テロ対策特別措置法案について趣旨説明と質疑を実施し、24日から衆院テロ防止特別委員会で本格的に質疑をスタートさせたい意向である。

 しかし、防衛省をめぐって問題が多すぎる。今回、判明した給油量の実態隠しのほか、給油燃料のイラク戦への転用問題、航海日誌の破棄問題、装備調達関係の業者とのゴルフが浮上している守屋武昌前防衛事務次官の癒着疑惑など次々に明らかになっている。

 問題が頻発するのは、防衛省の基本的な体質と関係しているのではないか。そんな疑いの目を向けられても仕方ない。

 いずれにせよ、看過できない問題ばかりだ。新法案の審議に入る前にやるべきことは、まずこれら疑惑の解明が先決だ。

 防衛省が提出した報告書によると、海自が給油量の誤りを発見したのは、2003年5月9日だった。当時の福田康夫官房長官が給油量を発表した日である。

 当然、ミスは速やかに訂正して報告するのが筋である。だが海上幕僚監部の防衛課長(当時)らはそうはしなかった。重要事項だというのに、認識の欠如ぶりには目を覆いたくなる。

 4年前の実態を知らされた福田首相は「とんでもないことをしてくれる」と記者団に述べたが、そのとんでもないことが実際に行われていたのだ。

 文民統制が危うくなるようでは新法の前提が揺らぐ。再発防止策を含め防衛省の改革を急ぐべきだ。

(10/23 9:42)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28305-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

基地労務費削減 削るべき費用はほかにある

 今秋から本格化している日米両政府の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する新特別協定締結協議で、日本側が在日米軍基地で働く日本人労働者向けの諸手当の削減を提案していることが分かった。

 削減理由は財政難だ。政府は協議を年内に決着させ、新協定案に基づく経費を来年度予算案に計上するシナリオを描く。日本人労働者でつくる全駐留軍労働組合と既に交渉に入っているようだ。

 全駐労は県内の従業員が圧倒的に多い。提案に組合側は「米軍再編に資金がいるからと言って、労働者に負担を課せるのは言語同断。本末転倒」と反発、受け入れを拒否する姿勢を示している。

 諸手当が削られることは、働く者にとっては死活問題だ。諸手当を含む給与に基づいて収支の見通しを立て、その上でそれぞれの生活設計が成り立っている。

 財政問題を振りかざされ、政府提案をのむよう迫られて「そうですか。はい、分かりました」というわけにはいくまい。

 思いやり予算は、在日米軍の隊舎や家族住宅など施設整備を図る地位協定分と、基地従業員の労務費や米軍が使用する光熱水費などの特別協定分に分かれる。

 2007年度の思いやり予算総額は2173億円。うち約3分の2を労務費が占めている。政府は削減額を約100億円と設定、従業員に支給される「格差給」の廃止によって削減額の67%は達成できると踏んでいるようだ。

 そもそも削減幅にも無理がある。格差給は国家公務員の基本給に10%上乗せされている手当だが、これがなくなれば基本給は1割程度減ることになるからだ。

 政府が格差給を「時代遅れ」としてやり玉に上げるのに対し、組合側は「実際には基本給が高いわけではなく公務員の平均給与より低い」と異を唱える。

 削減提案の背景には、締結協議の中で米側が電気、ガス、水道代などの光熱水費の大幅増額を求めていることがある。光熱水費などと違い、諸手当削減なら米側には補てんの必要がない。痛みが伴わないから受け入れられる、そんな理屈だ。

 海上自衛隊によるインド洋での給油活動の一時中断が危ぶまれる状況を念頭に、日米同盟に傷がつくことを回避する狙いもある。

 しかし、それだと一種の「弱い者いじめ」にならないか。合理性に乏しく、説得力を欠くと言わざるを得ない。

 思いやり予算については、娯楽施設の整備など米側の要求通りに手厚く振る舞い、国税の無駄遣いと再三、指摘されてきた。そこに手を付けずに削りやすいところに踏み込むやり方は、安易すぎないか。

(10/23 9:43)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28306-storytopic-11.html

 

2007年10月23日(火) 夕刊 1面

米軍落下傘訓練 嘉手納議会、抗議決議

 【嘉手納】在沖米空軍が県や地元の反対を押し切り、米軍嘉手納基地でパラシュート降下訓練を強行した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は二十三日午前、臨時会を開き、「例外的措置を認めれば、米軍の都合が優先され、訓練が恒常化する」などとして、米軍の姿勢を批判。同基地での降下訓練に反対する抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。また、北谷町議会は同日午前、基地対策特別委員会(照屋正治委員長)を開き、二十五日の臨時会で、パラシュート降下訓練と強姦致傷事件に対する抗議決議と意見書を提出することを決めた。

 嘉手納町議会の決議、意見書は「例外を盾に訓練が恒常する意図がうかがえる」として、同訓練を伊江島補助飛行場で実施することで決まった一九九六年のSACO(日米特別行動委員会)合意の形骸化を指摘。今回の訓練で隊員二人が着地点から大きく外れ、うち一人が基地内の林の中に降下したことについて「周辺住民に危険があることが証明された」と糾弾した。

 今年一月にも周辺自治体、議会が反対したにもかかわらず、同訓練を強行した上、わずか九カ月で再び実施した米軍について「地域住民の声を無視した姿勢、行為であり激しい怒りをもって抗議する」と訴え、今後一切、同基地でパラシュート降下訓練を行わないよう求めている。

 あて先は同基地司令官、駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米国総領事、総理大臣、防衛相、外相、沖縄防衛局長ら。また、嘉手納基地内に住む米軍人の息子による強姦致傷事件についても「女性の人権を踏みにじる非人道的で、悪質な犯行は断じて許されるものではない」とする抗議決議、意見書の両案について全会一致で可決。被害者への謝罪や補償、再発防止の徹底を求めている。あて先は同基地司令官、駐日米国大使、在沖米国総領事ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231700_01.html

 

2007年10月23日(火) 夕刊 1面

「北部振興を推進」/岸田沖縄相が所信表明

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十三日午前の衆院沖縄・北方特別委員会で就任後初めて所信表明し、本年度の配分が凍結されている北部振興事業について「地元の要望を踏まえながら着実に推進する」と予算執行に意欲を示した。

 教科書検定意見撤回を求める県民大会が開かれたことにも言及。「県民の深い思いをしっかり受け止めながら沖縄の振興に精いっぱい努力する」と述べた上で、「多くの方々が参加した。沖縄戦で悲しいつらい経験をされたことへの県民の深い思いを示すものだ」と十一万人余が参加した重みを強調した。

 沖縄の自立型経済の構築は「現場主義」の考えで、観光と情報技術(IT)関連産業の振興に重点的に取り組む考えを示した。観光振興では「良質な観光リゾート地の形成を進める」と質の重視を強調。IT分野では「IT津梁パーク構想などを進め、アジア最先端の高度情報通信産業の集積を目指す」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231700_02.html

 

2007年10月23日(火) 夕刊 4面

教科書検定の撤回求める/国際反戦デー集会に300人

 国際反戦デー沖縄県集会(主催・沖縄平和運動センター)が二十二日、那覇市の県民広場で開かれ、労組や市民団体、政党関係者など約三百人が参加した。二十三日に衆院で審議入りする新テロ対策特別措置法案の廃止や、教科書検定意見の撤回を求めた。

 大浜敏夫副議長は「私たち労働者、市民の連帯で戦争被害を終わらせよう」と訴え、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「教科書の改ざんを撤回させるまで、一緒に行動していこう」と呼び掛けた。集会後、参加者が国際通りをデモ行進し、「テロ特措法反対」などのシュプレヒコールを繰り返した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710231700_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月18日、19日、20日)

2007年10月18日(木) 朝刊 1・2面

「軍強制」明記 申請へ/教科書検定

4社執筆者が一致/「軍命」伝聞記述も

 【東京】二〇〇六年度の教科書検定で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付された教科書の執筆者による「社会科教科書執筆者懇談会」の第二回会合が十七日、東京都内で開かれた。対象五社のうち出席した四社、約二十五人の執筆者と編集者が訂正申請の準備状況を報告。主語の「日本軍」と軍の強制性を明記した上で、今月末から十一月前半の申請を目指すことで一致した。

 このうち二社の執筆者によると、編集責任者との協議で軍強制の明記を会社の判断として決定したという。

 出席者は(1)「日本軍による」という主語の明記(2)日本軍の強制の明確化(3)添付資料の活用で「集団自決」体験者の新証言を記載―などの原則に基づいて訂正申請する方針を確認。

 ある社の執筆者は「軍命を聞いたという体験談を載せれば、伝聞資料だが、軍命の記述が復活する教科書が出てくるかもしれない」と述べ、軍命が明記される可能性を指摘した。

 懇談会では四社の申請が出そろった段階で各社の記述内容を公表することや、執筆者の声明を発表する方向で調整することも決めた。今回の懇談会に欠席した山川出版にも働き掛ける。

 歴史教育者協議会の石山久男委員長(実教出版執筆者)は「国民にオープンにすることで、記述内容を文部科学省に認めさせたい」と指摘。

 声明については「文部科学省が(表現を弱めるなど)曖昧な決着を図る方向に訂正申請が利用されないよう、検定意見の撤回が本筋という県民の考えに配慮しつつ、執筆者の考えを発表する」と説明した。執筆者は十一月五日に次回会合を開き、訂正申請した会社の記述の内容や、申請していない会社の準備状況などを情報交換する。


     ◇     ◇     ◇     

文科省が不公表指示/訂正申請記述


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除した教科書検定問題で、教科書会社が文部科学省に訂正申請をする際の記述内容について、同省が申請に対する結果をまとめるまで、記述内容を公表しないよう教科書会社に指示していることが十七日、分かった。教科書会社関係者が明らかにした。文科省は現在、教科用図書検定調査審議会の審議過程の透明性を高める方向で検討しているが、その実効性が問われそうだ。

 教科書会社側が訂正申請の手続きを聞くため十七日に文科省を訪れた際、「記述内容を公表してもいいか」と質問。これに文科省の担当者が答えた。教科書会社によると、担当者は根拠法として教科用図書検定規則の細則を挙げたという。

 訂正申請の手続きの説明は各社個別で行われ、十七日は清水書院、実教出版、山川出版の順に行われた。十八日は三省堂、東京書籍に説明をする。


県民に「疑義生じ反省」/渡海文科相「撤回」は否定


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、渡海紀三朗文部科学相は十七日、「(県民に)疑義が生じたことは、われわれも反省しなければいけない」と述べ、沖縄側の訴えに一定の理解を示した。一方で、今回の検定手続きの正当性も主張し、検定意見の撤回には応じられない考えを重ねて強調した。参議院予算委員会で山内徳信氏(社民)の質問に答えた。

 山内氏は県民大会の総意が、検定意見の撤回と記述の回復にあると指摘。渡海文科相は「すでに(教科書会社の)数社から、修正を出すときにはどういう手続きになるのか相談もある。それには真摯に対応し、中身は再度審議会で審議していただく。準備を進めている」と、意見書撤回の可能性を否定した。

 文科省の検定調査官主導の検定意見だったとの問いには「検定制度は歴史の反省から民間の教科書会社が提出し、(政治の)介入を行わない制度を築いてきた。今回もその仕組みの中で中立・公正に行われたと報告を受けている」との認識を示した。

 また、教科用図書検定調査審議会の透明性確保に向け、「議事録は全面公開していないが、一部を紹介するなど、今後、しっかりやらないといけない。それをやることで職責を果たしたい」と理解を求めた。

 福田康夫首相は、在日米軍専用施設の約75%が集中する沖縄の現状認識をただされ、「基地の集中で県民は多くの負担をされ、経済、社会でも厳しい状況がある」とした上で、「地元の切実な声に耳を傾け、地域振興に取り組みを進め、負担の軽減に向けて政府として全力を挙げたい」と述べた。

 一方で、「普天間飛行場の移設・返還をはじめとする米軍再編を着実に進めることを通じ、負担軽減に努めたい」とし、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設合意した計画を進める考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710181300_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月18日朝刊)

[対テロ新法案]

国際貢献の在り方論じよ

 政府はインド洋上での海上自衛隊の給油活動を継続させる「新テロ対策特別措置法案」を閣議決定し、国会に提出した。

 現行のテロ特措法が十一月一日に期限切れを迎えるための措置だが、給油活動については国民にも賛否がある。

 本当に必要なのかどうか。国際貢献はどうあるべきかも含めて、国会で徹底的に議論してもらいたい。

 活動地域をペルシャ湾を含むインド洋などの「非戦闘地域」にした新法案は、海上自衛隊の活動内容を「給油・給水」に限定している。

 だが、気になることも一つある。文民統制(シビリアンコントロール)とも関連する「国会承認条項」を削除したことだ。政府は「法の成立自体が国会承認の代わりになる」と説明するが、到底納得できるものではない。

 自衛隊を海外に派遣する以上、その活動状況を国会は把握する責務があるはずだ。いざというときに政治によるコントロールが効かなくなれば、それこそ道を誤りかねないからだ。

 参院での与野党逆転で承認が得られない事態を避けようとしたようだが、姑息な手法を取ればそれこそ国民の信頼を損ねる。

 現行法は二〇〇一年九月十一日の米中枢同時テロを受けて二年間の時限立法として制定された。同法はこれまで三回延長され、活動期間は約六年にも及んでいる。

 にもかかわらず、活動情報が十分に開示されてきたとは言い難い。

 この問題ではまた、米補給艦への燃料供給量が大幅に訂正されたり、イラク戦争にも利用されたのではないかという疑惑も持ち上がっている。

 海自の給油艦が、四年間保存するという内部規則に違反して航海日誌を五カ月分廃棄したことも判明している。これでは「証拠隠し」と言われても仕方がない。

 政府は新法案を審議する前にこれらの疑問に答える責任があり、情報をきちんと開示し国民の疑惑を晴らすことが求められよう。

 民主党の小沢一郎代表は政権を取った場合、国連決議に基づいてアフガニスタンで活動する国際治安支援部隊(ISAF)への参加を打ち出しているが、党内には異論もある。

 そのまま対案として出せるのか疑問だが、政府・与党案に反対するだけでは国民も納得すまい。

 米国に追随した貢献ではなく、日本が主体となった国際貢献策はないのかどうか。憲法との整合性を含めた案を国会に提示し、国民を巻き込んだ重厚な論議にしていくべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071018.html#no_1

 

2007年10月18日(木) 夕刊 1・5面

あすパラシュート訓練/嘉手納今年2回目

 【東京】米空軍が十九日午後三時三十分ごろ、嘉手納基地でパラシュート降下訓練を実施することが十八日午前分かった。「人命救助のための態勢維持」を目的に、救難隊員十二―十四人が参加して行われる。同基地でのパラシュート降下訓練は日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、伊江島補助飛行場で実施することとされており、嘉手納基地周辺住民の反発は必至だ。同基地での訓練は今年一月以来、約十カ月ぶり、復帰後四度目となる。沖縄、嘉手納、北谷の三市町は十八日午後、「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)幹事会を開き、対応を協議する。

 日米両政府は今年一月の合同委員会で、SACOで伊江島補助飛行場での実施が合意されたパラシュート降下訓練について、「例外的な場合に限って」嘉手納基地を使用することで合意。同月二十六日、八年ぶりに嘉手納基地で訓練を実施し、地元の猛反発を招いた。

 また、嘉手納での訓練に先立つ一月十六日には、うるま市の津堅島訓練水域で実施したことが後に明らかになるなど、伊江島以外でのパラシュート訓練が相次いでいた。

 一月の同訓練をめぐっては、周辺市町村議会が抗議決議したほか、嘉手納基地を抱える三市町でつくる三連協や県が中止を求めて同基地に抗議している。

 日本政府によると、米軍は伊江島補助飛行場での訓練が悪天候などで制約されることが多く、訓練所要を満たさない米軍兵士が多数生じているとして、嘉手納基地の使用を求めている。

 日本側は、「日米安保条約の目的達成のため、米軍が訓練を通じて即応体制を維持する必要性があることは理解している」として、今回の訓練を容認した。

 一方で、「政府としてはSACO最終報告に沿ってパラシュート降下訓練を伊江島補助飛行場で実施するよう、今後も米側に働き掛けていく」としている。

 防衛省沖縄防衛局と外務省沖縄事務所は十八日午前、嘉手納町役場に宮城篤実町長を訪ね、同訓練の実施について説明した。


     ◇     ◇     ◇     

常態化懸念 地元憤り/「基地強化許さぬ」


 【中部】「日米合意の枠を超えて、嘉手納基地を運用するのか」―。嘉手納基地でパラシュート降下訓練が実施されることについて、地元自治体の首長らは十八日、本来なら認められない訓練の実施に「基地機能の強化だ」と一斉に反発した。

 沖縄、嘉手納、北谷の三市町の首長らで組織される「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)会長の野国昌春北谷町長は同日午前、町役場を訪れた外務省沖縄事務所と沖縄防衛局の職員から直接、訓練の内容を聞いた。

 野国町長は同日午後一時三十分から幹事会を開いて対応を協議することを指示。「基地の負担軽減と言いながら、まったく負担軽減の形が見えない。恒常化することへの不安があり、きちんと抗議することが必要だ」と語気を強めた。

 嘉手納町役場にも同日午前、沖縄防衛局の職員らが訪れ、宮城篤実嘉手納町長に訓練概要を説明した。宮城町長は「伊江島飛行場で実施するはずの訓練が、嘉手納基地で行われることは納得できない」と米軍を批判した。

 嘉手納町議会の田仲康榮基地対策特別委員長は、伊江島の天候不良を理由に、嘉手納基地での訓練の常態化を狙っていないか―と懸念。「基地機能の強化は許されない。降下訓練は中止するべきだ」と言い切った。十九日の基地特委で対応を協議する。

 隣接する同町屋良の島袋敏雄東区自治会長は「米軍再編で負担軽減がいわれる中で、訓練が増えることは地域にとって許されない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710181700_01.html

 

2007年10月19日(金) 朝刊 1面

教科書検定 要望決議を採択/九州知事会全会一致で

 第百三十回九州地方知事会(会長・金子原二郎長崎県知事)が十八日、那覇市内のホテルで開かれ、沖縄戦での「集団自決(強制集団死)」の日本軍の強制を削除した高校歴史教科書検定問題に関し、県が特別決議として提案した「沖縄県の教科書検定問題に関する要望」についての決議を全会一致で採択した。

 会議後の記者会見で、金子会長は「一地域一県の問題ではなく、全国的な問題として取り上げていかなくてはいけない、というのが大方の知事の意見」と説明した。

 決議採択について、仲井真弘多知事は「県民大会の趣旨や県民の平和に対する強い思いを、九州・山口の各県知事にもご理解ご賛同いただいた。大変心強く感じた」と述べ、検定意見の撤回と記述回復に向けて、引き続き関係団体と連携して対応する考えを示した。

 決議では、県議会や県内全市町村議会で、検定意見の撤回と記述回復を求める意見書が可決されたことや、九月二十九日に開かれた県民大会で意見撤回を求める決議が決議されたことを明記。沖縄戦については「史上まれにみる激烈な地上戦を体験し、一般県民を含む多くの尊い生命を失った」として、国に対し「筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた沖縄県民の心情を重く受け止め、沖縄県の教科書検定意見に関する要望に対して真摯に対応することを強く要望する」とした。

 ほかに、「水俣病問題の早期解決を求める決議」「原爆症認定制度の見直しに関する決議」も全会一致で採択した。

 政策連合の検討報告では救急医療体制の整備、ドクターヘリの効率的導入・共同運航などについて、来年三月までにまとめることを決定。県は米軍基地問題の解決促進も要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710191300_01.html

 

2007年10月19日(金) 朝刊 1面

オスプレイ2014年県内配備

 【宜野湾】米普天間飛行場に配備されている主力のCH46中型輸送ヘリの後継として、米海兵隊が垂直離着陸機「MV22オスプレイ」を二〇一四年度から県内に配備する計画を進めていることが十八日、分かった。同年までにCH46をすべて撤退させ、オスプレイは一六年度までに配備を完了させる。すべての航空計画書に優先される最新の「海兵航空計画」で明らかになった。

 オスプレイの県内配備については、在沖米軍トップのジョセフ・ウェーバー四軍調整官や在沖海兵隊基地司令官のジョセフ・メディナ准将が、昨年夏に「一四年から一六年の間に配備する」と発言していた。同計画が明らかになったことで、オスプレイの県内配備がより現実的になった。

 日本政府はこれまで、オスプレイの県内配備は「現時点で具体的な予定はない」などと否定しており、政府の説明責任も問われそうだ。

 同計画によると、同飛行場所属のCH46E二十四機は一四年度までに順次撤退。代わって、二個中隊のオスプレイが配備される。

 在日米軍再編で日米両政府は、普天間飛行場の代替施設を一四年までにキャンプ・シュワブ沿岸部に移設することで合意している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710191300_02.html

 

2007年10月19日(金) 朝刊 1面

きょうパラシュート訓練/県、中止を要請

 米空軍嘉手納基地は十八日、パラシュート降下訓練について「基本的に伊江島で行うが、天候面の悪条件および運用上の諸条件により例外的に嘉手納基地で訓練を行う必要性が生じることになった」として、十九日午後三時半ごろから同基地内で訓練を強行する声明を発表した。仲井真弘多知事は同日、「中止を要請してきたが、一月に引き続き実施するのは誠に遺憾」とのコメントを発表、保坂好泰基地防災統括監が外務省沖縄事務所と沖縄防衛局に中止を要請した。

 沖縄、嘉手納、北谷の三市町の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)も同日、「訓練の恒常化を図る狙いがうかがえ、断じて容認できない」と、抗議文を同基地のブレット・ウィリアムズ司令官らに送付した。

 仲井真知事は「県としては県民の生命、生活および財産を守る立場から、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を実施しないよう、米軍をはじめ日米両政府に強く要請していきたい」として、今後も継続して嘉手納基地での同訓練中止を求める考えを表明した。

 嘉手納町議会は十九日、沖縄市議会は二十二日、北谷町議会は週明けの基地対策特別委員会で対応を協議する。

 一方、嘉手納基地報道部は「基地施設の境界線より内側に位置する、日本政府に了承された着地点を暫定的に使用する。周辺地域の住民に安全面で配慮するとともに、万全の安全態勢で訓練を行う」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710191300_03.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月19日朝刊)

[落下傘降下訓練]

通用しない「例外規定」

 嘉手納基地で十九日、救難隊員によるパラシュート降下訓練が実施される。今年一月の訓練に続き二回目、復帰後は四回目である。

 当然ながら、地元は「訓練の恒常化が狙いだ」と猛反発だ。沖縄、嘉手納、北谷の三市町で組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は訓練は容認できないと強い姿勢を見せ、中止を求める決議文を嘉手納基地司令官に送付した。

 嘉手納基地報道部によると、今回の訓練も一月と同様、伊江島補助飛行場で行うべき降下訓練が悪天候で制約されたため、例外的に実施するという。

 一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)で読谷補助飛行場から伊江島補助飛行場に訓練を移転することが合意されたはずだ。ところが、今年一月の日米合同委員会で「例外的な場合」を理由に嘉手納基地の使用を合意、八年ぶりに実施された経緯がある。

 「例外」を振りかざして訓練をするなら、SACO合意とはなんだったのだろうか。形骸化と言ってもいい。

 嘉手納基地の機能は確実に強化されている。F15戦闘機訓練が本土移転されたが、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備され、最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターの一時配備もあった。F15戦闘機の未明離陸が相次ぎ、クラスター爆弾、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77使用の訓練も明らかになった。

 未明離陸についても、騒音防止協定の「例外規定」を盾に実施している。降下訓練も未明離陸も、「日米安保の目的達成」に「例外規定」を持ち出す。これでは合意も協定も有名無実だ。負担軽減どころか、やりたい放題の訓練がまかり通ることになる。

 福田康夫首相は衆院本会議で未明離陸について「周辺住民にとって大変深刻な問題だ」と語り、騒音防止協定順守を米軍に働き掛ける考えを示した。

 住民の立場に立つならば、福田首相はパラシュート降下訓練の中止を米軍に強く申し入れるべきだ。「例外規定」は通用させてはならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071019.html#no_2

 

琉球新報 社説

米兵降下訓練 県民無視の例外認められぬ

 原則は原則だ。恣意(しい)的で説得力を欠いた理由を安易に持ち出してくる姿勢は、いい加減にしてほしい。危険性の高い訓練など到底認めるわけにはいかない。

 米軍が19日午後に嘉手納飛行場でパラシュート降下訓練を実施すると通告してきた。

 嘉手納飛行場では今年1月末にも県や地元自治体の反対を押し切って、8年ぶりに降下訓練が実施された。

 外務省・防衛省によると、今回の訓練目的は「人命救助のための態勢維持」で、救難隊隊員約10人が降下する予定だ。

 降下訓練では過去、何度も降下ミスなどの事故が起きている。人命救助を目的とする訓練で嘉手納基地周辺に住む住民の生活が脅かされ、危険にさらされる。間尺に合わない矛盾した話だ。

 伊江島での訓練は、天候面での悪条件により制約が多く、過去半年間訓練が思うように実施できずに「訓練所要を満たさない兵士が多数生じている」というのが米軍側の説明である。1月末の訓練も同じ理由だった。

 パラシュート降下訓練については、1996年のSACO(日米特別行動委員会)最終報告で、読谷補助飛行場から伊江島補助飛行場への移転が決まった。

 ただ問題なのは、日米合同委員会で「基本的に伊江島飛行場を使用することとし、嘉手納飛行場はあくまでも例外的な場合に限る」と確認したことだ。

 米軍の場合、「基本的」と「例外的」の線引きが緩く、原則はあってなきがごとしだ。県民の常識とはあまりにも懸け離れすぎている実態を、これまでさんざん見せつけられてきた。

 嘉手納基地での8年ぶりの降下訓練の際にも私たちは「例外を認めれば、基地や訓練を自らの都合に合わせて拡大解釈しつつ、使い勝手の良い『便法』として、後々まで利用することになる」と批判した。

 案の定である。県民の意向をないがしろにして、1年もたたないうちに一方的に押し付けようとしている。

 SACO合意は、国と国との約束ではないか。約束は何のために交わされるのか。原則は不断に守られ、尊重されることで意味を持つ。政府には、そのことを米側に強く申し立てる責務がある。

 訓練の通告を実施の前日に行うやり方も問題だ。県や地元の抗議を最小限に封じ込め、訓練を強行したい狙いだろうが、横暴すぎる。地元への配慮はみじんも感じられない。

 これ以上の「危険の拡散」は許されない。政府は、県民無視の訓練をやめさせるよう米側に強く働き掛けるべきだ。

(10/19 9:50)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28198-storytopic-11.html

 

2007年10月19日(金) 夕刊 1面

全5社から訂正申請照会/内容 審議委に一任

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は十九日午前の閣議後会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題について、同日までに検定意見を付けられた教科書会社の五社すべてから訂正申請の手続きに関する照会が文科省にあったことを明らかにした。

 一方、五社のうち四社が訂正申請で軍の強制性を明記する方針を示していることに関しては、「(申請の)内容の問題については、(教科用図書検定調査)審議会の先生方の意見を聞くということになろうかと考えている」と述べ、審議委員の判断に一任する考えを示した。

 会見後、衆院文部科学委員会に臨んだ渡海文科相は所信表明で同問題について「県民の思いを重く受け止めるとともに、教科書検定の公正中立の確保に十分意を用いつつ、検定制度に基づき真摯に対応してまいります」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710191700_02.html

 

2007年10月19日(金) 夕刊 1面

民間上空飛行を防衛局長が明言/普天間代替

 【東京】防衛省の金澤博範防衛政策局長は、十九日の衆院安全保障委員会で、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部で計画されている米軍普天間飛行場の代替施設(V字案)の運用について、米軍機の訓練で住宅地上空を飛行する可能性を明らかにした。訓練で住宅地上空の飛行を日本政府が国会で認めるのは初めて。

 金澤局長は、V字案をめぐる日米協議における日米両国の認識について「一切陸上の上は飛ばないという認識が共にあったわけではない」と説明。その上で「(住宅地上空を飛行しないのは)緊急時は当然除外されるし、その他の場合、訓練の形態によっては当然飛ぶことはあり得る。それは当然の前提だ」と明言した。

 代替施設の運用について米側からは、ケビン・メア在沖米国総領事は昨年十二月、住宅地上空の飛行が想定されていることを明らかにしていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710191700_04.html

 

2007年10月19日(金) 夕刊 7面

地元抗議無視 午後にも強行/米軍パラ訓

 【中部】嘉手納基地の米空軍第一八航空団第三一救難中隊は十九日午後三時半ごろ、同基地でパラシュート降下訓練を実施する。同訓練は、八年ぶりに行われた今年一月に続くもの。

 同基地を抱える沖縄、嘉手納、北谷の三市町の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は十八日、訓練中止を求める抗議文を同基地や沖縄防衛局などに送付しており、強行されれば反発が強まるのは必至だ。

 外務、防衛両省によると、救難隊員十二―十四人が降下訓練を実施する。嘉手納基地報道部は今回の訓練は「即応能力の維持が目的」で、「基地施設の内側に位置する着地点を使用し、周辺地域へ安全面で配慮する」と発表している。

 同訓練は、一九九六年のSACO(日米特別行動委員会)合意で、読谷補助飛行場から伊江島補助飛行場への移転が決まった。嘉手納基地で実施する理由について同基地報道部は「天候面の悪条件などにより、例外的に訓練を行う必要性が生じた」と説明している。

 「例外」的な措置が今年に入り二度目となることから、三連協は「訓練の恒常化を図る狙いがうかがえ、断じて容認できない」として訓練中止を求めている。


周辺に市街地「中止すべき」/上原公室長


 米空軍嘉手納基地所属の第一八航空団第三一救難中隊が同基地内で十九日午後、パラシュート降下訓練を実施する問題で、上原昭知事公室長は、同日午前の県議会決算特別委員会で「パラシュート降下訓練は、SACO(日米特別行動委員会)で伊江島で行うと基本合意されている。嘉手納基地は周辺に市街地があり住民も不安に思っている。即刻中止すべきだと考えている」と述べた。

 十八日に第一八航空団司令官、在沖米国総領事、沖縄防衛局などに中止要請したことを報告した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710191700_05.html

 

2007年10月20日(土) 朝刊 1面

落下傘訓練 再び強行/嘉手納基地で米軍

強風2人コース外に/知事「不安与え遺憾」

 米空軍嘉手納基地所属の第三一救難中隊の九人が十九日午後四時前、県や周辺自治体の中止要請を押し切り、同基地内でパラシュート降下訓練を強行した。強風のため、二人は予定地点から数百メートル離れた滑走路外に降下。うち一人は基地内の林に降り、基地内のレスキュー隊が出動する事態となった。同基地によると、二人はかすり傷で済んだという。同部隊のチャールズ・ブリスボイ副司令官は「伊江島での訓練だけで錬度が維持できなければ、今後も嘉手納基地を使うことは重要と考える」との認識を示した。

 仲井真弘多知事は同日、「米軍が訓練を実施したことは、周辺住民をはじめ県民に多大な不安を与えるもので誠に遺憾。今後、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を実施することがないよう、日米両政府に強く求める」とのコメントを発表した。

 一方、同基地報道部は同日、「今回の訓練は、隊員の技能維持と日米の安全保障同盟の責務遂行を支援するため、同訓練の必要性を示すものとなった」との声明を発表した。

 C130輸送機に搭乗していた九人は同日午後三時四十八分、嘉手納基地の上空約三千メートルから一斉に降下。当初は、五人と四人の二組に分かれる予定だったが、強風のため同時に降下した。降下時間も天候の影響で予定より約二十分遅れた。

 米軍によると、降下予定地点は滑走路近くの芝生を中心に半径三十メートル。民間地との境界のフェンスまで約二千メートル離れた位置に設定していた。

 兵士らは医療器具を装着の上、手動で着陸地点への誘導操作が可能なパラシュートを使用していたが、二人は風にあおられるなどして目標地点を大きくそれた。

 同訓練は日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、伊江島補助飛行場での実施が合意されている。日米両政府は、一月に八年ぶりに嘉手納基地での同訓練を実施した際、日米合同委員会で「例外的」措置とすることを確認したが、わずか九カ月足らずで再実施に踏み切った。ブリスボイ副司令官は今後、嘉手納基地で同訓練を実施する際も、機材の降下は行わないことを明言した。


     ◇     ◇     ◇     

強風実施「米説明合わぬ」/地元3首長、反発


 【中部】在沖米空軍によるパラシュート降下訓練が強行されたことに、嘉手納基地を抱える嘉手納、北谷、沖縄の三自治体首長は十九日、「強風の中での訓練で、天候を理由に挙げた米軍の説明はつじつまが合わない」などと反発。嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の中止要請直後の訓練とあって、「負担軽減を強く求めたい」と怒りを募らせた。

 嘉手納基地に隣接するニライ消防本部から訓練を確認した三連協会長の野国昌春北谷町長は「三連協の抗議にもかかわらず実行され遺憾だ。戦闘機の未明離陸、最新鋭の地対空誘導弾(PAC3)配備と負担軽減は実現していない。さらにパラシュート訓練恒常化の不安が高まった。負担軽減が実感できるよう強く求める」と述べた。県外出張中の東門美津子沖縄市長はコメントを発表し、「三連協の抗議を無視した形の訓練実施は、国がSACO合意の形骸化を黙認しているといわざるを得ない」と指摘。「例外的な場合を理由に何ら有効な対策を打ち出さないことは、訓練の恒常化と嘉手納基地の機能強化に加担するものだ」と日本政府を批判した。

 宮城篤実嘉手納町長は「米軍にとって使い勝手のいい基地という実態があらためて明らかになった。パラシュート降下訓練は黙認できない。今後の訓練の動向も冷静に見極めたい」と述べた。


嘉手納、抗議決議へ


 【嘉手納】嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十九日、基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)を開き、嘉手納基地での在沖米空軍のパラシュート降下訓練について「住民の危険と負担が増加する」などとして、同訓練の今後一切の中止を求める抗議決議と意見書の両案を二十三日の臨時会に提案することを決めた。

 委員会では、今年一月に続き、地元の反対を押し切って訓練を強行する米軍を批判する声が相次いだ。

 田仲委員長は「米軍の都合ばかりが優先され、今後も嘉手納基地で強行される恐れがある。負担は増加する一方だ」と怒りをあらわにした。

 また、同基地内に住む米軍人の息子(21)が強姦致傷容疑で沖縄署に逮捕された事件についても、米軍に被害者への謝罪や補償、再発防止の徹底などを求める抗議決議と意見書の両案を臨時会に提案する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710201300_01.html

 

2007年10月20日(土) 朝刊 28・29面

着地失敗 不安あおる/「事故怖い」住民怒り

 【中部】「訓練では何が起きるか分からない」「事故が起きないか怖い」―。米兵二人が、目標地点から外れて着地した嘉手納基地でのパラシュート降下訓練。林の中に落ちた兵士は軽傷、緊急車両が現場へと向かった。かつて読谷補助飛行場で行われたパラシュートによる物資投下訓練での事故を思い出す人も。「伊江島では海に落ちた兵士もいる。訓練はやめた方がいい」。目撃者や基地周辺住民には怒りと不安の声が噴き出した。

 雲の間から現れた兵士の大半は、パラシュートを調整しながら同基地南側滑走路周辺の着地点辺りに倒れ込んだ。しかし、一人の兵士は風に流されるように幅六十一メートルの南側滑走路を越え、さらに数百メートル南西の林の中へ突っ込んだ。

 また、もう一人の兵士は、事前に設定された着地点から東側の駐車場周辺に着地。いずれも基地内だが、着地点からは大きく外れた。

 飛行ルートの真下に位置する北谷町砂辺の松田正二区長は「住民の声を無視して毎日騒音をまき散らす米軍は、パラシュート訓練など何の問題もないと考えているのだろう。着地点からずれた兵士もいるが、民間地でない限り米軍は何とも思わないはずだ」と憤った。

 砂辺区に住む女性(74)は「騒音だけでも迷惑なのに、なぜわざわざ近くに住宅地のある嘉手納基地で訓練を行うのか」と米軍を批判した。

 昨年返還された読谷補助飛行場で一九六五年、パラシュートでつり下げた小型トレーラーが民家近くに落下、小学五年の女児が死亡した事件などを思い出すといい「訓練中の事故の話を聞いたことがあるので怖い。迷惑だ」と顔をしかめた。

 同基地に隣接する嘉手納町屋良の島袋敏雄東区自治会長は「米軍は周辺住民に迷惑を掛けないというが、計算通りにいかないのが訓練だ。地域に不安を与える降下訓練は絶対に反対だ」と言い切った。


     ◇     ◇     ◇     

雲の中から姿 緊迫/道の駅かでな


 【嘉手納】嘉手納基地が見渡せる嘉手納町屋良の「道の駅かでな」では十九日、パラシュート降下訓練を見ようと観光客や地元住民ら数十人が展望台に詰め掛けた。予定時間が過ぎても訓練する様子がなかったものの、一部が引き上げた直後、突然雲の中から九人が現れた。

 「降りてきた」

 集まった人の間から声が上がった。逆光のため、黒い影となったパラシュートがゆっくり地上に近づく。突然の出現に、全員がかたずをのんだようにしばらく静まり返った。訓練の様子を撮影しようと、カメラやビデオなどを向ける人も多かった。

 伊江島補助飛行場で働いていたという沖縄市の与座正夫さん(73)は「伊江島では風向きによって集落やきび畑、海に落ちることも多かった。訓練は危ないからやめた方がいい」と強調した。

 観光で訪れ、たまたま訓練に遭遇した長野県の宮坂実枝子さん(60)は「基地の中に着地したけど、そうじゃなかったら大変なこと。(訓練は)島の人からするとあまりいいことじゃないと思う」と興奮気味に話した。


自宅屋上から監視/嘉手納町知念さん


 【嘉手納】曇り空を、九つのパラシュートが降下した十九日午後三時五十分ごろ、嘉手納町屋良の知念正直さん(72)の二階建ての自宅屋上では、知念さんの帽子が飛ばされそうになるほどの北風が吹いていた。訓練終了後、二人が強風のため予定地点から大きく外れて着地したと聞き、「やっぱり自然が大きく影響する訓練だけに、民間地に着陸する被害がないとは言い切れない」と不安そうな表情を浮かべた。

 一九六五年、読谷補助飛行場で行われた、米軍のパラシュート訓練のため、一人の少女の命が奪われた。「当時は嘉手納基地でも、住民に通知がないままパラシュート訓練が行われており、人ごとでは済まされない恐怖感があった」。子どもたちに「パラシュートが落ちてきたらすぐに逃げるように」と口うるさく注意したことを振り返る。

 訓練予定時間の午後三時三十分ごろ、何度も航空機の音が聞こえてきた。知念さんが双眼鏡を片手に上空を探すが、厚い雲に覆われ、機体は見えない。約二十分後、突如ゆっくりと落下するパラシュートが視界に入る。

 「住民を軽視し、米軍の都合を最優先に運用されている基地の実態は復帰前と変わらない」。パラシュートに視線を向けたまま、言い切った。

 「例外」として一月に実施されたパラシュート降下訓練は、わずか九カ月後に再び強行された。

 危機感は強くなる一方だ。「最初は『一時的』『例外』を理由にしておきながら、いつの間にか当たり前のように恒常的に行うのが米軍の手段。パラシュート訓練も同じことが言えるのでは」。日米両政府に訴えたいことを尋ねると「平和に暮らしたいだけ」と言葉少なにつぶやいた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710201300_02.html

 

2007年10月20日(土) 朝刊 29面

検定撤回意見書 都内で相次ぐ/3自治体で可決

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制が削除された教科書検定問題で、東京都千代田区議会(高山肇議長、議員数二十五人)は十九日、教科書記述の回復を求める意見書を全会一致で採択した。「悲惨な戦争を再び起こさないためにも、沖縄戦の歴史を正しく伝えるよう、『集団自決』に関する記述の回復が適切に行われることを強く求める」と指摘している。与野党間の調整で、検定意見撤回の明記は見送った。

 「沖縄戦首都圏の会」事務局の渡辺勝之次長は「東京の中枢である千代田区で、記述回復の意見書が採択された意義は大きい」と評価している。

 また、十八日は立川市議会(矢口昭康議長)が「集団自決」への軍関与を否定する教科書検定意見の撤回を求める意見書を、全会一致で採択。

 十七日は杉並区議会(河野庄次郎議長)が、「国会と政府が沖縄戦の教科書記述に速やかに対策を講じる」ことを求める意見書を採択するなど、都内で意見書採択が相次いだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200710201300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年10月20日朝刊)

[オスプレイ配備]

「隠蔽」が過ぎないか

 米海兵隊は普天間代替施設に垂直離着陸機「MV22オスプレイ」の沖縄配備計画を着々と進めているようだ。この問題について日本政府は今なお具体的な情報開示をしておらず、地元軽視の強引な手法が目立つ。

 オスプレイは普天間飛行場に配備されているCH46中型輸送ヘリの後継機である。海兵航空計画によると、二〇一四年度から県内配備が始まり、一六年度までに二個中隊の配備を完了。同飛行場所属のCH46E二十四機は一四年度までに撤退させる計画だ。

 オスプレイの沖縄配備計画は今回初めて明らかにされたものではない。一九九六年十二月の日米特別行動委員会(SACO)最終報告後から配備が取りざたされてきた。

 今年四月、SACO最終報告の草案では代替施設へのオスプレイ配備が明記されていたが、最終局面で沖縄側の反発を懸念した日本政府が反対し、オスプレイへの具体的な言及が削除されていたことが明らかになった。

 しかし、その後も政府は「SACOや米軍再編による普天間移設はオスプレイの沖縄への配備を前提にしたものではない」など、木で鼻をくくったような説明を続けている。

 代替施設建設へ向けた環境影響評価(アセスメント)手続きでも、航空機の種類は具体的に明記されなかった。政府の姿勢は何ら変わっていない。

 日米両政府は普天間飛行場の代替施設を二〇一四年度までにキャンプ・シュワブ沿岸部に移設することで合意した。新たなヘリパッドを含め、新基地がどのように運用されるのか、地元住民が不安を抱くのは当然ではないか。

 オスプレイ配備をめぐっては米国政府と日本政府の説明があまりにも食い違っている。政府の情報隠蔽も度を越している。このまま不誠実な態度で米軍再編を強行するつもりなのか。

 これでは県民の政府不信は募り、地元住民の反発が強まるだけである。地元にとって重大な問題をあいまいにした強権的手法には限界がある。政府は説明責任をきちんと果たすべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071020.html#no_2

10.27緊急デモ 辺野古への基地建設・高江へのヘリパッド建設を許さない!

お知らせです

「辺野古への基地建設・高江へのヘリパッド建設を許さない!10.27緊急デモ」

10月27日(土)17:00集合、17:30出発。

場所:水谷橋公園(東京都中央区銀座1-12-6)。

銀座線「京橋」駅、有楽町線「銀座一丁目」駅、
都営浅草線「宝町」駅徒歩5分。

主催:辺野古への基地建設を許さない実行委員会、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、市民のひろば。詳細は「基地建設阻止」ブログの「10/25の情報」をご覧ください。