沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月16日から20日)

2007年11月16日(金) 朝刊 2面

住民・観光業アセスに不満/普天間移設

 県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十五日、米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書について二回目の審議を県庁で行い、建設予定地周辺の住民やリゾート施設など六団体の代表から意見を聞いた。

 名護市辺野古の大城康昌区長は、建設予定地の沖合移動で騒音軽減が保障されると思うかとの問いに「残念ながらこれまでの経験から、米軍は(軽減保障を)守らないと思う」と述べ、運用に不安感を示した。その上で、沖合移動は「(辺野古崎沖の)平島に住民が自由に出入りできる範囲にしてほしい」と話した。

 宜野座村松田の當真嗣信区長は「米軍ヘリは今でも頻繁に飛んでいるが、これ以上頻繁に飛んだ場合どういう影響が出るのか」と話し、アセス方法書で具体的な飛行ルートや航空機の種類を提示するよう求めた。

 カヌチャベイリゾートは「基地建設で観光事業に大きな影響が生じる」として、工事中の大気質や騒音、水の汚れ、景観など十一項目にわたりアセス見直しを求めた。満園武雄顧問は「代替施設計画との関連で、予定している観光計画の実行も憂慮される。しかし方法書では当リゾートが調査対象から外れている」と不満をあらわにした。

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の推薦で発言した桜井国俊沖縄大学学長は、方法書について(1)対象事業の目的や内容が不備(2)アセス手続きを得ないままアセスに反映させる事前調査を実施している―などの点から「アセス法が定める要件を満たしていない欠陥方法書。書き直しを求めるべきだ、との答申を提出してほしい」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

沖合移動重ねて難色/外務・防衛省側が認識


 【東京】高村正彦外相と防衛省の江渡聡徳副大臣は十五日の衆院沖縄・北方特別委員会で、県と名護市が求める米軍普天間飛行場代替施設(V字形滑走路)の沖合移動に相次いで難色を示した。仲村正治氏(自民)への答弁。防衛省経理装備局の長岡憲宗局長は、大浦湾の一部を埋め立てて設置する作業ヤード置き場のケーソン(コンクリート箱)について「確かに大きなものだ」と述べ、大規模な構造物になることを認めた。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。

 高村外相は沖合移動について「よほど合理的理由がないと米国に持ち出せない」と、米側への提案さえ困難との認識を強調。一方で「今、環境影響評価(アセスメント)をしており、米国を説得できるような合理的理由が出れば、絶対にあり得ない話ではない」とも述べ、アセスで沖合移動の必要性が示されれば検討する考えを示唆した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711161300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月16日朝刊)

[守屋氏再喚問]

疑惑解明にはほど遠い

 「(宴席に)一緒にいた政治家は久間(章生)先生と額賀(福志郎)先生ではなかったかと思う」

 参院外交防衛委員会で行われた守屋武昌前防衛事務次官に対する証人喚問で、前次官は防衛庁(当時)長官経験者である二人の名前を挙げた。

 両氏は、防衛商社「山田洋行」の宮崎元伸元専務から接待を受けたのではないかといわれていた四人の長官経験者として名前が浮上していた。

 昨日の証言に額賀氏は「接待を受けたことはない」とし、久間氏は「二、三年前のことだからあるかもしれない」と述べている。だが、名前が出た以上「知らぬ存ぜぬ」で済ませてはなるまい。

 実際はどうなのか。「山田洋行」が防衛庁の装備などの売り込みにかかわる業者で、宮崎元専務が担当者であったことを知った上で接待を受けたのかどうか。久間、額賀両氏は国会の場できちんと説明する責任がある。

 午前中に参考人として招致された山田洋行社長の米津佳彦氏は、宮崎元専務による守屋氏へのゴルフ接待が一九九八年から昨年までに三百回を超えていたと証言した。

 これは衆院テロ防止特別委員会で守屋氏が証言した「二百回以上」より多い。しかも一組当たりの合計で千五百万円以上になるというから開いた口がふさがらない。

 守屋氏は「ゴルフの回数について、米津氏が話した数字を変えるだけのものを持ち合わせていない」と述べているが、当然だろう。

 守屋氏はまた、航空自衛隊の次期輸送機用エンジンに米ゼネラル・エレクトリック製を選定した際に、「山田洋行」が同社の代理店だったことを知らなかったのはおかしいと問われ、「そのような記憶はない」と答えている。

 同社の水増し請求疑惑や天下りについても「私が関与することは絶対にあってはならないこと」と述べた。

 しかし、ゴルフや酒席などの凄まじい接待ぶりを考えれば、見返りがないと思う方が不自然ではないか。

 国政調査権は憲法で認められた国会議員の権利であり、「伝家の宝刀」である。にもかかわらず、今回の証人喚問でも疑惑を解明するには至らず、むしろもやもや感だけが残った。

 追及は甘く、国民が知りたいと思っている接待の向こう側にある「便宜供与」という核心部分に手が届かなかったのは残念というしかない。

 疑惑は深まり、真相を求める国民のいら立ちは募るばかりだ。疑惑を解明するためには久間、額賀両氏からも話を聞くべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071116.html#no_1

 

2007年11月16日(金) 夕刊 2面

沖縄市議会、F15撤去求め決議/飛行停止問題

 【沖縄】米本国での墜落事故を受け、米軍嘉手納基地のすべてのF15戦闘機が飛行を停止している問題で、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は十六日午前、臨時会を開き、「欠陥機と指摘されているF15を即刻撤去せよ」とする抗議決議と意見書の両案を全会一致で可決した。

 冒頭、市議会基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は、米軍嘉手納基地広報局長の「F15は最も安全な戦闘機」発言について、「安心安全を求める市民の思いを踏みにじる発言であり、断じて許せない」と厳しく批判した。

 抗議決議文では「周辺自治体や住民はF15について以前から欠陥機と指摘しており、今回の事故で反発の声は強まるばかりだ。市民の生命、財産、平穏な生活を守る立場から厳重に抗議する」と糾弾している。

 さらに、十月三十日に強行された同基地でのF15戦闘機の未明離陸についても「米軍は例外規定を盾に未明離陸を繰り返しており、騒音防止協定が形骸化している」と指摘。軍用機などの早朝・夜間訓練の全面中止と同協定の抜本的な見直しも求めた。

 抗議決議のあて先は同基地司令官、駐日米国大使、在沖米国総領事など。意見書は首相、外務省沖縄担当大使、沖縄防衛局長ら。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711161700_02.html

 

2007年11月16日(金) 夕刊 1面

港湾機能も検討/普天間代替施設

 【東京】石破茂防衛相は十六日午前の衆院安全保障委員会で、米軍普天間飛行場の代替施設でヘリが故障した際の船舶を使った移送について、「それによって港湾施設というか、船舶に関する施設の所要も異なる。どのようなものが最も所要を満たし、かつ環境への負荷が軽減されるかということは、きちんと詰めていきたい」と述べ、代替施設の港湾としての機能も検討することを明らかにした。

 赤嶺政賢氏(共産)への答弁。

 政府はこれまで、米側が要求していた二百メートル級大型岸壁に関し、「大浦湾に建設予定の桟橋はあるが、これは普天間代替施設で使用される航空燃料のためのものだ」(鎌田昭良沖縄防衛局長)と説明。

 港湾機能について言及していなかった。

 同省防衛政策局の松本隆太郎次長は「現在の計画において、兵員や物資の恒常的な積み下ろしを行うような軍港としての機能を有するものを建設する計画はない」と従来の見解を強調しつつ、故障ヘリの輸送手段については「今後、米側と協議していく課題だと認識している」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711161700_03.html

 

2007年11月16日(金) 夕刊 7面

全駐労、手当減に抗議/防衛省前で70人アピール

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、全駐労(山川一夫委員長、約一万六千八百人)は十六日午前、防衛省前で提案見直しを求めるアピール行動を展開した。約七十人が集まり、「生活を破壊する一方的不利益変更は撤回せよ」と訴えた。

 要求に応じなければ、二十一日から四時間の時限ストを実施すると防衛省に通告している全駐労は十六日午後、同省で最後の団体交渉に臨むが、政府側は提案を見直す考えを示しておらず、決裂は必至。このためストは確実視されている。

 山川委員長は「基地従業員は国家公務員より高給であると受け止められかねない政府の今回の対応は官製の悪質なキャンペーンだ。このままではストを行うほかない。その中から打開の道を開いていこう」と連帯を呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711161700_06.html

 

2007年11月17日(土) 朝刊 1面

地元説明「必要ない」/普天間移設・民間上空飛行

V字案の意義強調

 【東京】防衛省の金澤博範防衛政策局長は十六日の衆院安全保障委員会で、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に建設が計画されている米軍普天間飛行場の代替施設(V字案)の運用について、米軍機が訓練で住宅地上空を例外的に飛ぶ可能性にあらためて言及した上で、地元への説明は「必要ない」との見解を示した。何が例外的な飛行に該当するかは、米側と具体的に協議していないことも明らかにした。名護市や宜野座村など地元からは、強い不満と反発が広がっている。

 辻元清美氏(社民)への答弁。

 金澤局長は、住宅地上空の飛行について「基本的には飛ばない」としつつも、「緊急のときには飛ぶことあるし、また、訓練の形態によっては、ないとはいえない」と答えた。

 その上で、米側との交渉について「例外的に(住宅地上空を)飛ぶ場合がどういう場合か、と細かく考えてレク(説明)するというのは今の段階で必要ないし、してもいない」と言明。

 地元説明については「大切なことはV字が、地元の要望を受けて基本的には飛ばないようにするためにつくられたということだ。わざわざ細かいことまで説明する必要はない」との考えを示した。

 今月七日に開かれた普天間移設に関する協議会で東肇宜野座村長は「陸域の飛行ルートや有事の際の飛行といったような報道があり、地域は不安を抱いている。国は建設計画の検討に必要な情報を明らかにしてほしい」と要望。

 また、仲井真弘多知事も「情報は可能な限り公開してほしい」と求めていた。

 一方、石破茂防衛相は同委員会で「地元の不安を払拭するような説明は丁寧に行っていきたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711171300_01.html

 

2007年11月17日(土) 朝刊 1面

空自 週明けにも再開/F15飛行見合わせ

 【東京】防衛省の田母俊雄航空幕僚長は十六日の定例会見で、米空軍のF15戦闘機が米国内で墜落事故を起こしたことを受け、航空自衛隊のすべてのF15が飛行を見合わせている問題について、早ければ週明けにも飛行再開する可能性を示神

した。田母神空幕長は、「米側が機体の点検要領を固めた」としており、米軍嘉手納基地のF15も近く飛行再開するものとみられる。

 田母神空幕長は、「米国で機体の点検要領が固まったようだ。十六日中に情報が得られるのではないか。それを見て点検、調整を実施して早くフライトにつなげたい。来週早めにフライトが可能になるかもしれない」と語った。

 愛知県営名古屋空港でF2支援戦闘機が墜落、炎上した事故もあり、空自は、百里基地(茨城県)に那覇基地からF4を展開するなどして領空侵犯対処をF4戦闘機だけで行っていた。

 一方、嘉手納基地報道部は十六日、「(同基地に所属するF15C、D型の)飛行再開に関する情報は入っていない」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711171300_03.html

 

2007年11月17日(土) 朝刊 2面

港湾機能も検討/普天間代替施設

故障ヘリ移送手段で

 【東京】石破茂防衛相は十六日午前の衆院安全保障委員会で、米軍普天間飛行場の代替施設について、港湾としての機能も検討する考えを示した。石破防衛相は、代替施設でヘリが故障した際の船舶を使った移送について、「それによって港湾施設というか、船舶に関する施設の所要も異なる。どのようなものが最も所要を満たし、環境への負荷が軽減されるかということは、きちんと詰めていきたい」と述べた。

 赤嶺政賢氏(共産)への答弁。

 政府はこれまで、米側が設置を要求していた二百メートル級の大型岸壁に関連し、「大浦湾に建設予定の桟橋はあるが、これは普天間代替施設で使用される航空燃料のためのものだ」(鎌田昭良沖縄防衛局長)と説明。港湾機能については否定的だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711171300_04.html

 

2007年11月17日(土) 朝刊

全駐労、21日統一スト

団交決裂16年ぶり

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、全駐労(山川一夫委員長、約一万六千八百人)は十六日、十六年ぶりとなる全国統一ストライキを二十一日に決行することを決めた。十六日、防衛省と三回目の団体交渉に挑んだが、決裂。夕方の中央闘争委員会で、今後のスト日程や対応策を確認した。

 山川委員長らによると、全駐労は防衛省に対し提案見直しを引き続き求めたが、防衛省側も国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」の削減など従来の提案を繰り返し、議論は平行線に終わったという。

 これを受け開かれた中央闘争委員会では、全国九つの地区本部、支部すべてで投票によるスト権が確立したことを確認。引き続き団体交渉を行いながら、状況に応じて第二波、第三波のストを実施する方針も決めた。

 二十一日は、職種に応じて始業時から四時間の時限ストを決行する。沖縄地区本部の與那覇栄蔵執行委員長は「今回の諸手当の削減は労働者の生活を破壊する提案で許せない。従業員数の多い沖縄では特に地域の雇用や経済への影響も懸念される」と述べ、政府の今回の対応に強い不満を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711171300_05.html

 

2007年11月18日(日) 朝刊 27面

沖縄戦継承 若者同士で/大学生、中高生向けガイド

県民大会受け「やるなら今」来月本番

 県内の中高校生に沖縄戦を見つめ直すきっかけにしてほしいと、県内の大学生が中高校生を対象にした沖縄戦戦跡ガイドを十二月十五日に行う。元ひめゆり学徒隊の女性たちと若者が語り合い、戦争の記憶を受け継ぐ活動を続ける「虹の会」(赤嶺玲子代表)が中心となり、琉球大学の「学生平和ガイドの会」のメンバーらが十七日、同大学内で勉強会を始めた。「大学生から中高校生へ」という若者たちによる沖縄戦の継承。学生らは息の長い活動にしたいと意気込んでいる。

 大学生らは、これまで主に修学旅行生を対象に戦跡を案内していたが、県内の中高校生にも沖縄戦への関心を持ってもらおうと初の取り組み。

 「虹の会」の北上田源さん(25)は、入会した三年前から県内の中高校生向けのガイドを考えていた。九月の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の後、「中高校生の問題意識が高まった。やるなら今だ」と思い立った。

 中高校生の素朴な疑問や質問に答えながら、壕や県平和祈念資料館など南部戦跡を巡るこのガイドでは、ひめゆり資料館で証言者を交えた交流会も予定している。

 琉大での勉強会は、「沖縄戦研究はどのように日本軍の『集団自決』強制を明らかにしているか」をテーマに、中高校生からの質問を想定し、新聞記事や沖縄戦関係資料を参考に一人一人に意見を求めながら進められた。

 「集団自決」の新たな証言や教科書問題の動きなどが、報道で取り上げられる機会が増え、メンバーらは「沖縄戦の歴史を語り継ぐために、もっと若い人が学んでほしい」と語る。

 昨年、初めて戦跡ガイドとして県外の修学旅行生を案内した同大四年の田真健弥さん(22)は「初めはそれほど関心がない人にも、沖縄戦の悲惨な過去と教科書問題や辺野古の基地移設など現在の沖縄とつながっていることを伝えたい」と語った。定員は三十人(先着順)。

 問い合わせは虹の会、電話090(9786)5237、メールはnijinokai2004@yahoo.co.jp

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711181300_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月18日朝刊)

[日米首脳会談]

実質的な中身が乏しい

 福田康夫首相とブッシュ米大統領は初の首脳会談を行い、日米同盟関係の重要性を確認し、北朝鮮の核計画の完全放棄、イランの核開発阻止などに協力して対処することで一致した。

 北朝鮮の核無能力化に伴う米政府のテロ支援国家指定解除問題に関連して、福田首相は「核、ミサイルと並び、拉致問題の解決が重要だ」とし、米側の解除姿勢に懸念を示したという。

 だが、ブッシュ大統領は「被害者と家族を置き去りにはしない」としつつ、「拉致問題の解決は必ずしも解除の前提条件にはならない」と述べたと伝えられている。

 実際にはどうなのか。この問題で両首脳がどのように突っ込んだ話し合いをしたのか、明白になっていない。両首脳はなぜ会見の場でその内容を伝えなかったのだろうか。

 首相同行筋は「指定解除をめぐる詳細なやりとりは公表しないことを申し合わせた」としている。だが小泉純一郎元首相、安倍晋三前首相の場合はそのようなことはなかったはずである。

 政府筋から漏れてくる会談内容は具体的内容に乏しい。もし、首相が拉致問題が最大の懸案事項と考えたのであれば、米側のスタンスとどこが隔たっていたのか。記者の質問を受けてきちっと答えてもよかったのではないか。

 両首脳は同盟関係を「死活的に重要」と確認したという。が、むしろ双方の溝が浮き彫りになったのも確かだ。首相は討議内容を国会の場で明らかにしてもらいたい。

 ブッシュ大統領が求めた米国産牛肉や牛肉製品の輸入条件撤廃に対し、首相は従来の見解を踏襲した。

 「科学的知見に基づいて対応していく」姿勢を変える必要は全くない。食の安全を維持するためにもハードルを下げなかったことは評価したい。

 県民にとっては普天間飛行場の危険性の除去や海兵隊のグアム移転などの問題がテーマに上らなかったのは残念である。

 実質的な中身の乏しい首脳会談だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071118.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月18日朝刊)

[民間上空飛行]

なぜ説明を避けるのか

 防衛省は、地元への説明責任を果たすことなく米軍普天間飛行場の移設計画を進めようしているようだ。あまりの見識のなさに怒りを通り越し、あきれてしまう。

 金澤博範防衛政策局長が名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に計画されている普天間飛行場の代替施設(V字案)で訓練する米軍機の住宅地上空を「基本的には飛ばない」としつつ、「緊急のときは飛ぶこともある」と言明、例外的に飛行する可能性を認めた問題である。

 地元説明についてはV字案の意義を強調し、「わざわざ細かいことまで説明する必要はない」と述べている。国の防衛政策を立案する防衛省の担当局長がその程度の認識しかないのか。実に情けない。

 防衛省は今年九月一日の組織改編にあたって、「防衛省は変わります―平和と安全を支えるために―」と内外に宣言していた。

 「有事の際の国民の保護、大規模災害、米軍再編などの基地問題に適切に対応するため、地方との緊密な関係を大切にします」ともうたい、地方との緊密な関係構築を柱の一つに据えていたはずである。

 言うまでもないが、地方との緊密な関係構築とは、「わざわざ細かいことまで説明する」きめの細かい対応をいう。防衛政策局長がすべきことは地元への丁寧な説明であり、「説明する必要はない」と開き直ることではあるまい。

 防衛省は、これまでも米軍再編を進める際、地元の意向に配慮することなくひたすら強行一辺倒だった。

 普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)をめぐっては、県や名護市などの反対を押し切って住民意見概要を送付、一方的に手続きに着手した。

 また、政府案の沖合への移動を求める名護市や宜野座村を再編交付金の指定対象から外したほか、本年度分の北部振興策の執行を凍結したり、キャンプ・シュワブ沿岸部の事前調査に自衛艦船を派遣するなど、地元の反発や要望を無視してきた。

 仲井真弘多知事が全国知事会議の場で福田康夫首相に対し、一連の防衛省の対応を「ひどい仕打ち」と直訴したのは、「地元無視」を続けてきた防衛省に県民の憤りと不信感が広がっていることを示すものだ。

 防衛省は、普天間飛行場の移設計画について情報を公開し、十分に説明責任を尽くす必要がある。それがなければ基地政策そのものが破たんすることを認識すべきだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071118.html#no_1

 

琉球新報 社説

基地労務費削減 思いやり予算の見直しを

 在日米軍基地で働く日本人基地従業員の格差給廃止など、諸手当の一部削減を政府が提案している問題で、全駐労中央本部(山川一夫員長)と防衛省の団体交渉は16日に決裂。これを受けて21日には全国約1万6000人の組合員が、各自の就業時から4時間の時限ストを打つことを決定した。最大の組合員数を抱える全駐労沖縄地区本部(与那覇栄蔵委員長)も、約6000人がストに参加する。全国規模のストは16年ぶりとなる。

 沖縄地区本部によると、政府の提案通りになると、県経済に年間33億円余もの経済力ダウンをもたらすという。県経済の脆弱(ぜいじゃく)性などを考えると、この額は無視できない。何より、米軍駐留経費(思いやり予算)を抜本的に見直すことをせず、削りやすいところから実施するという政府の姿勢は受け入れられない。

 思いやり予算とは、防衛省予算の在日米軍駐留経費負担の通称だ。米軍隊舎や家族住宅など施設整備を図る地位協定分と、基地従業員の労務費や米軍が使用する光熱費などの、特別協定分に分かれる。2007年度の総額は2173億円で、うち特別協定分は1409億円。基地従業員の基本給1150億円のほか、在日米軍が使用する光熱費などが含まれる。

 日米両政府の思いやり予算に関する新特別協定締結協議の中で、米側が軍事負担増を理由に電気、ガス、水道などの光熱水費の大幅な増額を求めていた。逆に、日本側は基地従業員の諸手当約100億円の削減を提案、組合に示していた。

 提案内容は(1)格差給(基本給の10%)・語学手当の廃止(2)退職手当支給率の引き下げ(3)枠外昇給制度の廃止―となっている。特に格差給の1割削減は、基地従業員にとって死活問題だ。沖縄地区本部の試算によると、現在の従業員の平均月給は約31万7000円、年収が約530万円。これから1割も削減されると、月収は29万1900円となり、国家公務員の平均月給40万円余と比べると、10万円以上の格差が生じる。勤務条件は国家公務員準拠が基本とされながら、あまりに理不尽だ。

 そもそも、地位協定では米軍への施設の提供は日本側に義務付けているが、施設を維持する費用(光熱費)や基地内で働く人の給料の提供は、何ら定めがない。つまり維持費や給与なども本来、米側が負担すべきものだ。

 日本はかつてない財政赤字を抱えている。法律的に根拠のない無駄な思いやり予算は抜本的に見直す時期だ。光熱費などは本来負担すべき米側に要求すべきだ。従業員の待遇については法律上の位置付けを明確にし、日本側が最後まで責任を持ったらどうか。国家公務員準拠も再度、確認すべきだ。

(11/18 10:06)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29038-storytopic-11.html

 

2007年11月19日(月) 夕刊 1面

陸自共同使用容認の北部3町村 再編交付金対象に指定

 【東京】石破茂防衛相は十九日、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の対象となる「再編関連特定周辺市町村」に、米軍キャンプ・ハンセンでの陸上自衛隊の共同使用受け入れを表明した金武、恩納、宜野座の三町村を新たに指定した。同日付の官報で公示した。

 三町村は、全国三十三自治体が指定された十月三十一日の官報では政府案に反対し、米軍再編推進法で規定する「再編の円滑かつ確実な実施に資する」との要件を満たしていない、として対象から外れていた。三町村は今月十三日、「受け入れ」に転じたことから、防衛省も同日中に「再編関連特定周辺市町村」に指定する方針を決めていた。

 県内では那覇港湾施設の代替施設の受け入れを容認している浦添市と合わせて四市町村が交付対象となった。普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で政府案(V字案)の沖合移動を求めている名護市と宜野座村は、指定の見通しが立っていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711191700_02.html

 

2007年11月19日(月) 夕刊 7面

環境面の影響懸念/普天間移設アセス審議

 【名護】米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)方法書について審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)は十九日午前、建設予定地の名護市キャンプ・シュワブ周辺での現地調査を始めた。津嘉山会長らメンバー五人が参加。知念建次県文化環境部長や沖縄防衛局担当者らも同行した。

 同市二見の大浦湾西岸作業ヤード設置場所の調査では、沖縄防衛局の担当者が作業ヤードについて、幅二百メートルで、陸から沖合三百メートルまでを埋め立てる計画であることを説明。委員からは「埋め立てによる生物への影響はシビアなものがある」などの指摘が出され、大規模埋め立てによる環境への影響を懸念した。その後、マングローブが群生する大浦川河口部や代替施設滑走路延長上に位置する同市安部のリゾートホテルなどを調査した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711191700_04.html

 

2007年11月20日(火) 朝刊 27面

沖縄戦研究者に意見打診/文科省、県内外2氏へ文書求める

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、沖縄戦や琉球史の研究者らに意見提出を求めていることが十九日までに分かった。教科書会社からの訂正申請を受けて開かれる教科用図書検定調査審議会での参考意見にするとみられる。人選や経過が不透明なうえ、沖縄戦の専門家が審議会に直接加わらない形での意見聴取に「また歴史解釈を歪曲する審議が繰り返されるのでは」と懸念の声も聞かれる。

 意見提出を求められているのは、沖縄戦を含めた日本の戦争責任を研究している林博史・関東学院大教授や、県内の琉球史研究者らとみられる。

 文科省は今月中旬に意見提出を打診した。文書を提出するか、文科省職員が意見を聞いて審議会に伝える方法を示したという。今月最終週までに意見提出される予定で、訂正申請の是非を話し合う教科書審議会の開催はその後になる見込み。

 二〇〇六年度の教科書検定では、林教授の著書「沖縄戦と民衆」(大月書店)も参考にされた。林教授は同書の中で、日本軍が住民に手榴弾を配って「自決」を指示していた実例などを示し、「(『集団自決』には)日本軍の強制と誘導が大きな役割を果たした」と結論付けている。

 だが、検定意見案を審議会に提出した文科省の教科書調査官は、同書の名を挙げ、ごく一部の記述だけを引用し「『日本軍から公式な命令があって起きたわけではない』となっている」と自らの意見を述べて、教科書会社に日本軍の強制を表す記述を削除させた。

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は「文科省は誰がどうやって選ばれたのか明かさない。すべて終わった後に公開されても取り返しがつかない」と心配する。「『公平性、透明性』を確保するため、人選過程を明らかにしたうえで、審議会で直接、その人から意見を聴くべきだ」と訴えた。

 山口剛史・琉球大准教授も「意見書を提出させるのではなく、審議会に招いて審議委員への説明や議論を認めるべきだ」と話す。「文書提出だけでは、読み違いが生じる恐れもある。今回の検定と同じことが繰り返されない保証はない」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711201300_04.html

 

2007年11月20日(火) 朝刊 2面

県内従業員7割参加/全駐労21日時限スト

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)特別協定協議に関連し日本側が基地従業員の諸手当削減を提案している問題で、全駐留軍労働組合(全駐労)沖縄地区本部の與那覇栄蔵委員長が十九日、県庁内で記者会見し、二十一日に行う全国統一ストの同地区本部としての対応を明らかにした。

 県内基地従業員の七割に当たる約六千三百人(保安要員除く)の組合員が、各職種ごとに始業から四時間の時限ストを実施。通常使用されている四十ゲートすべてにピケを張り、最も出入りの多い国道58号沿いの嘉手納基地第一ゲートなどでは一般県民向けにアピール行動も行う。

 與那覇委員長は「現状でも基地従業員の収入は国家公務員と比べ20%低く、削減が実施されれば格差はさらに拡大する」として、全国規模では十六年ぶり、県内でも十一年ぶりとなるスト実施に理解を求めた。

 ストによる影響について與那覇委員長は「(軍用機離発着など)軍機能には影響ないが、基地間の物資運搬や兵員の食事などはスト時間中、ほぼまひする」とした。またピケを張る関係で、二十一日朝はゲート周辺が交通渋滞する可能性があるという。

 與那覇委員長らは記者会見後、仲井真弘多知事と面会し、「諸手当削減が実行されれば県経済にも影響する」として協力を求めた。仲井真知事は「県として直接かかわる立場にないが、いろんな形で役に立てるようにしたい」と応じた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711201300_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月12日、13日、14日、15日)

2007年11月12日(月) 朝刊 2面

沖縄の理想像明確に/米軍再編シンポ

「普天間閉鎖」具体化必要

 沖縄平和協力センター(OPAC)主催の公開シンポジウム「米軍再編後の日米安全保障協力」が十一日、那覇市厚生会館で開かれ、日米関係と沖縄をテーマに、専門家が見解を報告した。大阪大学のロバート・エルドリッジ准教授は「沖縄が求める理想像を明確に示す必要がある。明確に示さないと、国が一方的に決めるしかない状況をつくってしまう」と指摘し、沖縄側のリーダーシップの必要性を強調した。

 エルドリッジ准教授は、米軍再編合意について「沖縄にとってマイナスが大きい。この二年間で県民の多くは批判的であることが分かってきた。防衛政策は、最終的に影響を受ける自治体が納得する形でなければいけない」と指摘。一方で、仲井真弘多知事が求める「普天間飛行場の三年めどの閉鎖状態」について、「具体的に示していないのは大きな問題。過去も含め、沖縄が何を求めているのか外部からは見えにくい」と主張した。

 これに対し、ブセナリゾートの比嘉幹郎社長は「沖縄の政治文化として、差別と犠牲の強要への反発がある。そういう観点から見れば、分かりやすい部分もある」と解いた。

 同志社大学の村田晃嗣教授は、福田康夫首相の初訪米の焦点について(1)インド洋給油の再開(2)米国の北朝鮮のテロ支援国家解除の時期(3)思いやり予算の削減(4)米軍再編の実施―などを挙げた。このうち、北朝鮮のテロ支援国家の指定解除の時期については、来年一月一日が有力との見方を説明。米側は、日本の国会でインド洋給油の再開に向けた新テロ対策特別措置法案の通過後、指定解除を発表する可能性がある、と指摘した。

 渡部恒雄三井物産戦略研究所主任研究員は、東シナ海のガス田開発や領土問題をめぐるトラブルは沖縄の安全に直結する問題と指摘。「日本政府として、沖縄の安全確保はきちんと考えておくべき課題」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711121300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月12日朝刊)

[瀬長・仲宗根両氏]

先人の生誕100年に学ぶ


「赤い市長」誕生で騒然

 今年は、カメさんの愛称で親しまれた「反米の闘士」瀬長亀次郎氏と、ひめゆり学徒隊を引率した言語学者仲宗根政善氏の生誕百年にあたる。

 生きてきた道筋も考え方も異なる二人を、同じ年(一九〇七年)に生まれたというだけで一緒に論じるのは、無理がある。

 けれども、今年に入って、同時代を生きた二人の名前が、半世紀前の過去から呼び戻されるという印象的な出来事があり、米軍政時代の過去が過去として完結しているわけではなく、姿形を変えて今も重くのしかかっている、ということを強く感じた。そのことを取り上げてみたい。

 瀬長氏が那覇市長に当選したのは一九五六年十二月のことである。

 軍用地問題をめぐる島ぐるみ闘争が米民政府の切り崩しにあって収束に向かいつつも、なお火種がくすぶっている時期だった。

 選挙期間中、相手陣営から激しい攻撃を受け、当選後も、執ような反瀬長キャンペーンにさらされた。

 多数を占める市議会野党議員のほとんどが瀬長市政への非協力声明を発表。市の部長、課長ら幹部もこれに同調した。

 金融機関は、都市計画事業に対する融資の中止や市の預金の凍結を伝え、「人民党員とその同調者に対しては融資せず、預金も受けつけず」の姿勢を示した。

 都計事業の停滞に危機感を持った建設業団体も「人民党の同調者を雇用しない」との声明を出した。水源地を抱える南部の自治体は那覇市への水の供給を思いとどまった。

 すさまじいまでの兵糧攻めである。選挙で選ばれた首長に対する露骨な包囲網は、復帰後に生まれた世代には想像もできないだろう。

 反瀬長キャンペーンは、米民政府が各方面に働きかけ、仕組んだものだった。

 四面楚歌の市長を支えたのは、ごく普通の庶民である。市政の窮状を救うため積極的に税金を納めたり、全国からカンパが寄せられたことは、よく知られている。

 半世紀前、米軍政下の沖縄で起きた出来事だ。


51年後に処分取り消し


 その瀬長氏の市長体験が米軍再編問題にからんで、再び想起されるようになったという。

 米空母艦載機の岩国基地への移転問題を抱える岩国市は、住民投票の結果を受けて、今も反対の姿勢を崩していない。

 政府は米軍再編交付金の交付対象から同市をはずし、新庁舎建設のための補助金支給を見送った。露骨な兵糧攻めだ。

 窮地に追い込まれた岩国市を支援するため、「沖縄の瀬長市政を思い起こそう」と、全国から激励の声が寄せられているという。

 自治体の自主性を破壊するようなアメとムチ政策が、かって米軍政に抵抗した瀬長氏の名前を歴史の過去から呼び戻したというわけだ。

 軍用地問題をめぐるデモや集会に参加したとして琉大の学生七人が除籍(六人)・謹慎(一人)処分を受けたのは、五六年のことである。

 米軍政府は大学への援助打ち切りをちらつかせ、処分を迫った。学生をかばいつつも打つ手がなく、日々、悩み続けた副学長の仲宗根政善氏は、除籍処分を受けた学生の本土大学への転学に奔走した。

 琉大は今年八月、正式に処分の不当性を認め、五十一年ぶりに七人の処分を取り消し、関係者に謝罪した。


「民族の美質」示す相貌


 作家の石牟礼道子さんは「陽のかなしみ」というエッセーの中で、沖縄の島々で出会った人々を回想し、次のように書いている。

 「ひとりの人のたたずまいが、その民族の美質を語るということがある。民族文化の質が、ひとりの人間の相貌を定めてしまうということがある」

 戦後史に大きな足跡を残した二人の先人の相貌には、石牟礼さんが指摘した「民族文化の質」と言うべきものが感じられる。

 一筋の道を愚直に歩み、多くの人たちから敬愛されてきた生涯だった。

 瀬長市政への圧力と学生処分は、地方自治、大学自治に対する米民政府の露骨な介入事件であった。軍政は消滅したものの、兵糧攻めの基地政策はまだ生き続けている。

 生誕百年を迎える二人の先人から学ぶことは多い。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071112.html#no_1

 

2007年11月12日(月) 夕刊 5面

反戦継承に使命感/南風原町・新垣さん 戦争体験本を出版

 「悲惨な戦争は絶対に繰り返してはいけないと伝えたかった」―。南風原町の新垣ミツエさん(75)が、自身の沖縄戦での避難体験をまとめた「小さな生き証人 歴史と共に」(文芸社、八百四十円)を十月に出版した。

 新垣さんは那覇市出身。十三歳当時の一九四五年二月、激しさを増す戦禍を避けて、家族と名護市数久田の山間部に移り住んだ。イモや野菜などわずかな食糧を確保し、分け合いながら、約四カ月の避難生活を送った。

 戦後は看護師になり、九八年まで務めた。退職前に心臓病で入院生活を送ったことから、「自分が生きていることに感謝し、戦争体験を語り継いでいかねばならない」という使命感を感じ、執筆を決意した。

 十人きょうだいの七番目に当たる新垣さんは、ほかのきょうだいを訪ね、当時の状況を取材。自身の記憶を埋めながら、大学ノートに毎日少しずつ書きためた。今回は、二〇〇二年に一度まとめた文章に、エピソードを書き足しての出版となった。

 新垣さんは「大勢の避難民が小さな部落に押し寄せた。食糧がなくて、飢え死にした方もいた」と振り返り、「衣食住に恵まれている、今の若い世代にぜひ読んでほしい」と言葉に力を込めた。

 新垣さんの兄、那覇市の上原武夫さん(88)は「僕ら体験者は、つらかった戦争のことは語りたくないもの。ミツエの出版にはびっくりした」と驚きながらも、「歴史の事実を隠す教科書検定問題もある中、戦争の怖さを知らない人に読ませた方がいいね」と話した。

 県内では那覇市久茂地のリウボウブックセンターなどで販売している。(又吉嘉例)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711121700_02.html

 

琉球新報 社説

対テロ新法案 日本独自の貢献策を探れ

 延長国会の最大の焦点である新テロ対策特別措置法案は、衆院特別委員会で与党の賛成多数で可決された。与党は、インド洋での海上自衛隊の給油活動を再開するための対テロ新法案を13日の衆院本会議で通過させ、参院に送る方針だ。

 だが、野党が多数を握る参院では民主党を筆頭に政府案に反対する姿勢を崩していない。民主党の小沢一郎代表は、基本的に認識が隔たっているとして「足して二で割る手法は通じない」と反対の意思をあらためて鮮明にした。

 福田康夫首相は、訪米して16日にブッシュ大統領と初の日米首脳会談に臨む。政府・与党は、首相の立場を考えて「せめて衆院だけでも通過させておきたい」と急ぎたいのだろうが、スケジュールにこだわるべきではない。

 来日したゲーツ米国防長官も給油活動の中断には「日本の政治変動の結果」との認識を示した。日本の内政問題だと一定の理解はしているのではないか。

 それよりもテロ対策やアフガンへの支援はどうあるべきか。与野党が国会で議論を尽くすことが求められる。米国への配慮を優先するあまり国会論議がおろそかになってしまっては、多くの国民の理解は得られまい。

 気になるのは自民党の伊吹文明幹事長の11日のテレビ討論番組での発言だ。新法案をめぐり参院で首相の問責決議案が可決された場合や会期内に法案が採決されない場合は、首相が衆院解散・総選挙に踏み切る可能性があると民主党をけん制した。

 ねじれ国会にあって民主党に政策協議を呼び掛ける一方で、小沢代表の辞意表明劇で勢いが弱まった民主党の足元を見るようなやり方は、国会運営の戦術としてはあり得るのかもしれないが、あまり感心しない。

 ねじれ下の国会は、国民注視の舞台で、やっと与野党が正面からぶつかり合う本来の言論の府の姿を取り戻しつつある。そう感じている有権者は多いだろう。議論が未消化のまま採決を強行する姿勢は慎しむべきだ。

 新法案には、国会承認条項の省略など文民統制の担保など重要な課題が残っている。防衛省をめぐる一連の疑惑なども解消されたとはいえない。

 一方、民主党の対案は、旧タリバン政権との停戦合意の支援、インフラ整備など民生部門に限って「文民」としての自衛隊派遣―などを盛り込んだ。平和憲法を持つ日本独自の支援はどうあるべきか。対案は議論に値するはずだ。

 日本ができる国際貢献は給油継続だけが選択肢ではない。会期内成立にこだわらず、政府・与党は最後まで合意を探る努力を続けるべきだ。

(11/13 9:49)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28893-storytopic-11.html

 

2007年11月14日(水) 朝刊 1・2・25面

ハンセン共同使用容認/金武・宜野座・恩納 3首長が姿勢転換

 【北部】在日米軍再編に基づく米軍キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊の共同使用問題で、地元の儀武剛金武町長、東肇宜野座村長、志喜屋文康恩納村長は十三日、負担増になるとして反対していた従来の姿勢を一転させ、共同使用を受け入れると発表した。三町村長は「ハンセン内の海兵隊から一部がグアムへ移転することや、三町村が求めていた金武地区消防本部の統廃合などに防衛省の協力が得られることから、受け入れを決めた」と説明した。

 この決定を受け、防衛省は同日、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の交付対象に三町村を加える方針を決めた。十九日に石破茂防衛相が「再編関連特定周辺市町村」に指定し、同日の官報で告示する予定。来年度予算に交付金の10%、再来年度以降100%が交付される見通しだ。

 訓練開始時期は「年内開始は困難」(陸自関係者)とされており、年明けになる見通し。

 防衛省は、米軍が使用しない期間を前提に、陸上自衛隊第一混成団が九州の演習場で行ってきた中隊規模程度の訓練を、キャンプ・ハンセンで実施するとしている。

 ロープ降下、警戒・防護、行進などを中心とした戦闘訓練を、二百人程度の部隊が二十一週間ほど金武町と宜野座村のエリア内で実施。また、レンジ3、4を除く金武町エリア内の既存射撃場で百人程度が九週間、小火器などを使用した射撃訓練を行う。さらに、金武町と恩納村の計二カ所の施設で最大百人が年一週間程度、不発弾処理などの訓練を行う。

 儀武町長は「グアムへの移転や消防本部の統廃合への協力が得られ、総合的に判断して受け入れを決断した」と述べた。また、再編交付金については従来のハード事業主体とは違って子育て支援や福祉などのソフト事業にも使えるため、地元にとって利用価値が高いと判断したという。


     ◇     ◇     ◇     

消防施設の整備で妥協


 「総合的に判断し、陸上自衛隊の共同使用を受け入れることにした」。在日米軍再編に基づく、米軍キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊の共同使用問題で、これまで反対の立場を示してきた儀武剛金武町長、東肇宜野座村長、志喜屋文康恩納村長の三町村長が一転、受け入れを表明した。ハンセン内の海兵隊のグアム移転という基地負担の軽減だけでなく、統合消防施設整備への協力など、防衛省から基地外の支援が得られることも大きな要因となった。一方で三町村長は当初、会見を予定しておらず、重大案件に対する三町村長の説明責任の姿勢も問われる。(北部支社・屋良朝輝、東京支社・島袋晋作)

 沖縄防衛局は、今月六日までに職員が三町村議会を回り、共同使用訓練や交付金の内容、統合消防施設整備への協力などを説明し、受け入れへの理解を求めていた。

 金武町議会には強く反対する議員がいる一方、ある与党議員には「交付金が交付されないのは、議会が反対しているからだ」という意見も寄せられた。このような声を受け、受け入れに傾く議員が増えていることは、儀武町長の耳にも届いた。

 三町村長が集まったのは八日深夜。それぞれの考えや議会の反応などを報告して、受け入れを決めた。儀武町長が九日に沖縄防衛局を訪れ、鎌田昭良局長に受け入れを伝える文書を手渡した。

 にもかかわらず、報道各社には、十三日午後になって受け入れを伝える文書をファクスしたのみだった。会見を行う予定はなく、各首長が個々で対応することをひそかに確認していた。

 各社からの強い要望で、急遽同日午後六時から会見が開かれたものの、会見を予定していなかったことは「日程調整がつかなかった」と説明された。


差し引きゼロ


 会見の場で、儀武町長は「負担増がある中で、三町村の長年の懸案であった統合消防施設(整備への防衛省の協力)との兼ね合いもあり、プラスマイナスゼロだというイメージだ」と述べた。

 共同使用が負担増であることは認めながらも、ハンセン内の海兵隊のグアム移転や統合消防施設の整備などが受け入れの決め手となった―との説明だ。一方で、負担増に伴う被害への明確な対応は最後までなく、説明は不十分なままだ。

 三町村長は各議会の十二月定例会で説明するとしているが、議会では負担増や住民への被害に対するより明確な説明が求められる。


地元配慮強調


 一方の防衛省。真部朗報道官は十三日、「共同使用の重要性を理解し受け入れことに敬意を表する」と述べ、訓練では地元住民に配慮することを強調した。

 また、「再編関連の特定周辺市町村にしたいと考えている」ことも明言。同省は近く、正式な交付額を地元に通知する予定だ。

 表明のタイミングがこの時期になったのはなぜか―。再編交付金の官報告示との関連を問う質問に、儀武町長が答えた。「統合消防施設の支援などに協力が得られることとタイミングが重なっただけ」。その表情は硬かった。


[解説]

日米軍事融合の舞台に


 米軍キャンプ・ハンセンの共同使用により、那覇市に駐屯する陸上自衛隊第一混成団の実弾射撃の訓練効率は飛躍的に高まる。当面は自衛隊のみで訓練を行うとみられるが、米海兵隊との共同訓練も実施される可能性が高く、米軍再編の目的である日米の「軍事融合化」が、沖縄を舞台に進むことになる。現在千九百人の第一混成団は旅団格上げで二千三百―三千人規模への増強方針が打ち出されており、ハンセンでの共同使用と連動する形で大幅な能力向上が図られそうだ。

 県内の陸上自衛隊射撃施設は、勝連分屯地に二十五メートル射程の射撃場しかないことから、第一混成団はこれまで熊本や大分県など主に九州の自衛隊演習場に移動して訓練していた。こうした「転地訓練」は、隷下の第一混成群で年間約六十日、第六高射特科群で年間約七十日、その他部隊で年間約四十日間(いずれも二〇〇四年度)に及ぶ。

 〇八年度以降は、陸自の小火器射撃訓練施設として整備中の沖縄市の東恩納覆道射場の使用も見込まれており、沖縄の陸自は今後、実戦的な訓練や演習の機会を大幅に増大させることになる。

 沖縄防衛局は「ハンセンでの共同使用が可能になると、中隊規模の訓練や二十五メートルを超える射程の射撃訓練が沖縄に駐留したまま実施できる。訓練環境が改善されることで、沖縄の自衛隊の即応性が高まり、ひいては災害時の安全にも資する」と説明している。しかし、ハンセンの共同使用の主眼は第一混成団の軍事能力の向上であり、「災害時」の対応を引き合いに出すことには本質を覆う意図もうかがえる。

 地元の容認を受け、陸自は近く沖縄防衛局長に共同使用手続きを依頼。防衛省は、自衛隊による在日米軍基地の使用を規定した日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手する。日米合同委員会で合意後、在沖米海兵隊と沖縄防衛局、陸上自衛隊の三者で現地協定を締結し、共同使用が開始される。

 米軍再編は米空軍嘉手納基地の共同使用も盛り込まれており、沖縄では陸と空で日米の軍事融合化が進みそうだ。(政経部・渡辺豪)


[視点]

基地負担増の歯止め策なし


 「基地負担の強化」を理由に、キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊共同使用に反対していた三首長が、一転して受け入れを表明した。

 自衛隊の不発弾処理を受け入れる志喜屋文康恩納村長は「決して負担が少ないという認識ではなく、三町村連携の下でやっていくための苦渋の選択」と語った。負担軽減ではなく、「振興策での連携」が優先されたことを象徴する言葉だ。

 射撃訓練を受け入れる金武町の儀武剛町長は「プラスマイナスゼロ」と表現。武器が小火器に限定される点や、消防本部統廃合への国の協力、再編交付金のソフト事業活用への期待も示した。

 同基地部隊のグアムへの移転も強調したが、以前から決まっていた話であり、人数や規模が示されない段階での受け入れ表明は説得力を欠く。

 米軍再編の本質は基地の北部統合・強化であり、「日米の軍事融合化」だ。

 共同使用といっても基地の管理・運用は米軍の判断に委ねられ、「使用協定」のめどはない。防衛省、自衛隊の現時点での意図を超え、使用レンジや武器の拡大、都市型戦闘訓練施設での共同訓練の可能性すら否定できない。

 振興策や再編交付金による街づくりを「総合的な判断」と集約したが、最も重要な地域住民の生活環境破壊につながる基地負担強化の歯止め策は示されなかった。(知念清張)


突然の容認 住民批判


 【北部】「金に目がくらんだ暴挙」。十三日、米軍キャンプ・ハンセンに隣接する金武町、宜野座村、恩納村の各首長が陸上自衛隊による共同使用を受け入れた。「負担増」を理由に反対していた三町村の突然の方針転換に、住民から驚きと批判が相次いだ。一方で「やむを得ない」と理解を示す声も。基地周辺の反応は複雑に揺れた。

 同問題で、金武町議会と恩納村議会は共同使用に「反対」を決議している。金武町議会軍特委員会の仲間政治議員は「町長は議会で基地機能強化に反対していた。お金をちらつかされて容認したのであれば、実に恥ずかしい。地方自治の主体性が政府の金に負けたことになる」と、強く反発した。

 恩納村の植田良介議員も「反対決議があるにもかかわらず説明もなしに容認したのは議会、村民無視だ」と決断の在り方を批判。

 近接するレンジ3に米軍の新射撃場建設が予定されている金武町伊芸区の池原政文区長は「自衛隊は(伊芸区に近い)レンジ3、4での訓練はしないとされているが、絶対にさせないという担保を国が取るべきだ。これ以上の訓練激化は許されない」。

 一方、「時勢が変わった」と容認姿勢を示すのは同町議会の松田義政議長。「議会として反対してきたが、交付金をソフト事業に使え、消防本部の統廃合にも協力するとの説明が防衛省側からあった」とし、近く全体協議会を開いて対応を決めるとしている。

 六日に全員協議会を開いた宜野座村議会の小渡久和議長は「米軍がいない時期の自衛隊訓練でそんなに負担増になるとは思えない。反対意見もあったが、最終的には首長に一任すると決めた」と説明。

 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「金が欲しければ基地を受け入れろという政府の差別的な政策に、自治体がいとも簡単に屈服した」と危機感を募らせた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141300_01.html

 

2007年11月14日(水) 朝刊 24面

名護市民投票10年/23日に名護でシンポ

 大学人九条の会沖縄は十三日、一九九七年の名護市民投票で米軍普天間飛行場代替施設の同市辺野古沖への移設反対が過半数を占めた「民意」を再確認し、新基地建設に反対するアピールを発表した。県庁で記者会見した代表の高良鉄美琉大法科大学院教授は「市民投票から十年、沖縄の民意は何かを再確認したい」と訴えた。同会は二十三日、名護市で「民意はどこにあるのか」をテーマにシンポジウムを開く。

 アピールは「沖縄の民意に反する辺野古新基地建設に反対するアピール―名護市民投票から十年を迎えて―」。米軍再編や、自衛隊の海外派遣を可能とする「恒久法」制定の動きなど基地建設につながりかねない国内の現状に、「沖縄の民意は憲法九条の『恒久平和』を志向したもので、自衛隊派兵の『恒久法』や基地の『恒久化』は、沖縄の民意をないがしろにする」としている。

 琉大大学院の高作正博准教授は「十年前の基地を造る問題が、今はどういう基地を造るかに大きく変わっている。市民や国民の民意が問われないまま推移しているのではないか」とした。

 シンポジウムは二十三日午後一時から名護市労働福祉センターで開催。沖国大の照屋寛之教授、高作准教授、沖縄大の宮城公子准教授が選挙と民意などについて報告する。入場料は三百円。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141300_07.html

 

2007年11月14日(水) 夕刊 1面

米局長「F15は最も安全」/嘉手納議会の抗議に

 【嘉手納】米ミズーリ州で今月二日起きた墜落事故を受け、米軍嘉手納基地に配備されているF15戦闘機五十三機が飛行を停止している問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)基地対策特別委員会の田仲康榮委員長ら七人は十四日、同基地を訪れ、墜落事故に抗議するとともに、同機の即時撤去を求めた。応対したジョン・ハッチソン広報局長は「F15は最も安全な戦闘機だ」と述べ、事故原因判明後に安全対策を講じ、嘉手納での飛行を再開する意向を示したという。

 田仲委員長らは「F15は事故を繰り返しており、欠陥機だ」と指摘。これに対し、ハッチソン広報局長は「飛行停止は予防的な措置。F15はこれまで安全な飛行を続けている」などと返答。イラクやアフガニスタンなどに配備されている一部のF15については、事故後も運用を継続していることを明らかにした。

 事故原因について同局長は「現在、空軍の安全調査委員会が調べているが、(嘉手納には)情報がない」と述べるにとどまり、原因を公表するかどうかについても明言しなかった。

 嘉手納基地からの未明離陸については、同基地に配備されている半分以上のF15の機体更新が終了している現状を説明。「更新計画に伴う未明離陸があと一回予定されているが、いつになるかは分からない」などと答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141700_01.html

 

2007年11月14日(水) 夕刊 5面

感情逆なで 住民怒り/F15「安全」発言

「飛行停止が欠陥証明」

 【中部】十四日、米軍嘉手納基地の広報局長が「F15は最も安全な戦闘機」と発言したことに、同機の未明離陸などで激しい爆音などに悩まされている基地周辺の沖縄市、北谷町、嘉手納町の首長や議会関係者、住民は怒り、あきれた。「墜落事故を何度も起こしているのに、住民をばかにしている」。爆音被害に加え、事故の恐怖におびえる住民らは米軍への不信感を募らせている。

 滑走路直下で騒音にさらされている北谷町砂辺地域の松田正二区長は「嘉手納基地のF15が飛行停止していることが、安全でないことを証明している。これまで県内でも墜落や事故が多発しているのに、そんな説明で住民が納得できるわけがない。住民をばかにしている」と興奮した様子で話した。

 嘉手納町東区の島袋敏雄自治会長は「安全といっても県内外で事故が多発しており、納得できない。不信感だけが募る」と憤慨。「欠陥機が頭上を飛んでいるという不安が大きい。飛行停止をした原因を解明し、飛行を中止するべきだ」と語気を強めた。

 沖縄市議会はF15の墜落問題で十六日に臨時会を開き、抗議決議する予定。同市議会の基地に関する調査特別委員会の与那嶺克枝委員長は「何度も事故を起こしているのに安全という発言が理解できない。安全でないことはすでに証明されている」とあきれた様子で話した。

 嘉手納町の宮城篤実町長は「議会からまだ何も聞いておらず、コメントのしようがない」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141700_02.html

 

2007年11月14日(水) 夕刊 1面

200メートル岸壁不記載を批判/アセス方法書

 【東京】赤嶺政賢、照屋寛徳両衆院議員らが十四日午前、防衛省に桝賀政浩地方協力企画課企画官を訪ね、同省が県に提出した米軍普天間飛行場の移設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書について「基地機能の全容を明らかにすることなく、建設ありきで手続きを強引に進めている」と撤回を求めた。

 両氏は、米側資料から明らかになった戦闘航空機弾薬搭載エリアや全長二百メートル超の岸壁整備などが、方法書に記載されていないことを問題視。その上で「新基地の機能について十分な説明責任を果たしていない。さまざまな疑義がある段階におけるアセスは全く意味をなさず、到底容認できない」と述べた。

 照屋氏によると、桝賀企画官は方法書に問題はないとした上で「住民意見をしっかり受け入れて対応する。岸壁などは米側と協議中で詳細は言えないが、準備書までに計画を作成し、県民に示したい」と答えたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711141700_03.html

 

2007年11月15日(木) 朝刊 2面

普天間移設問題「防衛省がひどい仕打ち」/仲井真知事、首相に直訴

 【東京】仲井真弘多知事は十四日、首相官邸で開かれた政府主催の全国知事会議に出席した。米軍普天間飛行場の移設問題で福田康夫首相に対して、これまでの防衛省の対応を「ひどい仕打ち」として強い不満を直訴し、地元の声に耳を傾けるよう要望した。同飛行場返還後の跡地利用では原状回復に時間がかかることを念頭に、再開発を加速するための新たな法整備などを検討するよう提案。日米地位協定の抜本的な見直しも求めた。

 福田首相は「今まで不信感を与えた点もあったようだが、それを払拭しながら、よく(地元の)意見を伺いながら協議したい。沖縄も協力を賜りたい」と述べた。

 仲井真知事は「かなり強引に県知事、市町村の納得なしに、ある省がどんどん進めた」と指摘。名指しこそ避けたが、代替施設の環境影響評価(アセスメント)手続きなどをめぐる防衛省の手法をやり玉に挙げた。

 具体的には「北部振興策みたいに蛇口を止めるとか自衛隊の船を派遣するとか、ちょっといかがなものかという状況にある」と述べ、本年度分の北部振興策の執行凍結や、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部の事前調査への自衛隊艦船派遣などを批判した。

 普天間飛行場の跡地利用では「砲弾などがかなり埋まっている可能性があり、手間がかかりそうだ。再利用するには新しい制度を入れていただかないと」と述べ、新法制定の必要性を強調した。

 仲井真知事は会議終了後、「このままアセス法上の手続きが進んでも、最後の条件がなしでは(埋め立ての許認可を)やりませんよと言っている」と述べ、V字形滑走路の沖合移動を求める考えをあらためて強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711151300_02.html

 

2007年11月15日(木) 朝刊 2面

全駐労/21日時限スト通告

手当削減反対で

 【東京】在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、全駐労(山川一夫委員長、約一万六千八百人)は十四日、組合側の提案見直し要求に応じない場合は、二十一日からストを実施するとの通告書を防衛省に提出した。

 全駐労によると、全国ストが実施されれば、一九九一年以来十六年ぶり。職種に応じて、始業時から四時間の時限ストを予定している。県内では約六千数百人の組合員がいるという。

 全駐労は十六日、防衛省前で抗議行動を行った後、同省で団体交渉するが、政府側は提案を見直す考えを示しておらず、ストは避けられない情勢。状況次第では第二波のストも辞さない構えで、今月下旬から十二月上旬にかけて八時間の時限ストを検討している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711151300_05.html

 

2007年11月15日(木) 朝刊 27面

ヘリパッド移設「騒音増大 生活できぬ」/高江区民、切々訴え

 【北部】県議会米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)のメンバーは十四日、米軍北部訓練場の一部返還に伴い、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設作業が進む東村高江区を視察した。

 約六十人の区民らが次々集まり、軍特委メンバーに、「地元の声を聞いてほしい」と訴えた。

 同訓練場内の視察を終えた軍特委のメンバーを前に、仲嶺武夫区長は「騒音被害は現在でもひどい。ヘリパッドが新設され、普天間飛行場が名護に移設されると、距離的にも騒音が近くなり、本当にここで生活が続けられるか不安だ。全体が移設されないのがベターだが、せめて住宅地に近いN―4地区だけでも遠方に移してほしい」と、切々と語った。

 親川委員長は「暑い中大勢の人が駆けつけた気持ちは十分に察する。騒音や被害が、これ以上拡大することは避けるべきだ」との認識を示した。要請後、仲嶺区長は「このまま建設が強行されるようだと区民の大半が座り込みに参加することになる」と、計画の見直し協議に応じる姿勢を見せない国を批判した。

 同委員会は、名護市のキャンプ・シュワブ内から普天間飛行場代替施設の予定地も視察した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711151300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月15日朝刊)

[共同使用容認]

行政不信を招く対応だ

 陸上自衛隊による米軍キャンプ・ハンセンの共同使用に反対していた金武、宜野座、恩納の三町村首長は、従来の姿勢を改め、受け入れを表明した。

 三町村にとって懸案だった統合消防施設の整備について、防衛省の協力が得られることになったのが理由の一つだという。

 日米合意を一方的に押し付けられ、対応に苦慮したであろうことは容易に想像がつく。しかし、それを差し引いたとしても、今回の方針転換は行政としてあまりにもお粗末である。

 首長が公に受け入れ反対の姿勢を明らかにし、議会も撤回を決議するということは、いわば住民に対する行政・議会の約束であり、決して軽いものではないはずだ。

 それがいとも簡単に破られるようでは、住民の行政不信を高めるだけである。

 やむを得ず方針変更をするのであれば、変更の理由を議会や住民にきちんと説明し、理解を求めた上で相手側(防衛省)に伝えるのが筋だ。今回はその手続きも取っていない。

 沖縄から見ると、在日米軍再編は、政府が強調した「負担軽減」の側面よりも、米国が求めた「抑止力維持」の側面が目立つ。

 再編の中身を一言で言えば、「中北部地域への基地の集約化」と「米軍・自衛隊の一体化」だ。

 一九七八年に「日米防衛協力のための指針」(旧ガイドライン)が策定されて以来、レンガを一個一個積み上げるように着実に、米軍と自衛隊の一体化が進んできた。

 今回の米軍再編は、緊密化・一体化をさらに推し進め、すき間のない連携関係を目指すもので、従来とは質の異なる取り組みであることを米軍自身も認めている。

 神奈川県のキャンプ座間には、米陸軍第一軍団司令部を改編した統合作戦司令部を配置し、陸上自衛隊も中央即応集団司令部を同じ基地に設置する。

司令部機能を一体化させる試みだ。

 キャンプ・ハンセンの共同使用は、那覇の陸上自衛隊第一混成団にとって旧ガイドライン策定以来の懸案だった。一混団はこれまで、中隊規模以上の大掛かりな訓練の場合、大分県の日出生台演習場など九州の演習場を利用していた。

 共同使用が実現すれば、自衛隊単独の訓練だけでなく、いずれ同演習場を使った在沖米海兵隊との合同訓練も実施されることになるだろう。

 中北部地域にとっては、容易ならざる事態が進みつつあると理解すべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071115.html#no_1

 

琉球新報 社説

陸自使用受け入れ 将来見据えた決断なのか

 金武、宜野座、恩納の3町村長が在日米軍再編合意に基づく米軍キャンプ・ハンセンの陸上自衛隊の共同使用受け入れを正式に表明した。

 自衛隊の共同使用が打ち出された直後から3町村長は「負担増」を理由に、一貫して「反対」姿勢を示してきた。

 政府に従う自治体は厚遇し、従わない所は冷遇するという露骨な米軍再編交付金が影響したのだろう。儀武剛金武町長は否定するものの、交付対象から除外されたことで方針を転換せざるを得なかったのではないか。

 このような「アメとムチ」の制度は、地方自治体の独立性を否定するものである。それを公然と立法化したこと自体問題である。

 防衛省の説明によると、ハンセンで訓練している米軍の実動部隊がグアムに移転する。儀武町長は「負担減につながるのではないかと思った」と述べたが、移転の規模などは明確でない。

 「負担増」の懸念が払拭(ふっしょく)されているとは言えない状況での方針転換である。自衛隊の共同使用で「負担増」とならないようにする責任が3首長にはある。

 3町村の長年の懸案だった消防・医療救急体制づくりのための緊急指令機能を備えた新たな統合消防施設の整備で、政府の協力が得られることが受け入れ理由の一つである。

 住民の生命にかかわる重要な施設であり、3首長がその整備を急ぎたいとの考えは理解できる。そこに、付け込むような政府の姿勢はいかがなものか。

 統合消防施設は自衛隊共同使用の受け入れとは関係なく、国民の安全を確保するため、政府としても3町村を支援することは当然のことである。基地負担との引き換えで協力を持ち出すべきものではない。

 志喜屋文康恩納村長は「負担が少ないという認識はない。3町村で連携しなければならず、苦渋の選択だった」と述べた。

 名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部への普天間代替施設建設をはじめ、県内の首長は政府によって「苦渋の選択」をせざるを得ない状況に追い込まれてきた。

 米軍再編の目的の一つとされた「地元負担の軽減」を実現する意志が果たして政府にあるのか疑問だ。政府の負担押し付けの圧力は強まる一方である。

 在沖米軍が訓練を本土で分散実施し、グアムへの部隊移転が進んだとしても、その一方で自衛隊の県内基地での訓練などが増えることが予想される。ハンセンの共同使用はその前例にされかねない。

 肝心の住民や議会への説明は後回しにされた。

 3首長の方針転換は将来を見据えた決断と言えるのだろうか。

(11/15 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28952-storytopic-11.html

 

2007年11月15日(木) 夕刊 1面

宜野湾市長が撤去要求/墜落同型ヘリ

 【北中城】二〇〇四年八月、沖縄国際大学に墜落した米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリコプターと同型の四機が普天間飛行場に配備された問題で、宜野湾市の伊波洋一市長は十五日午前、北中城村のキャンプ瑞慶覧に米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね「老朽化したヘリが住宅地上空を飛行することは許されない」などとする抗議文を手渡し撤去を要求した。

 伊波市長によると、応対したラリー・ホルコム部長は撤去要求に対し「上司に伝える」と返答。同型機による訓練再開時期は明言しなかった。四機の飛来はローテーションの部隊配備計画(UDP)に基づくもので、米海兵隊は日本国内で同型機十機の運用を予定。残る六機と要員が普天間飛行場に配備される可能性を否定しなかった。

 伊波市長は「危険な普天間飛行場は閉鎖し、早期返還するべきだ。CH53Dヘリの老朽化は米連邦議会でも証言されており、住宅密集地での運用はおかしい」と強調。

 その上で「(所属機ですら)日米間で合意した飛行ルートを守っておらず、午後十一時以降の飛行も恒常化している。米軍は少なくとも、日本政府に約束したことは守るべきだ」と抗議した。

 抗議文は、米海兵航空計画で、CH53Dヘリの平均使用年数が三十七年の古い機体だと指摘。

 CH53Dヘリと要員の配備は、新たな基地機能の強化につながりかねず「市民の精神的苦痛を無視している。(配備は)断じて容認できず、怒りを持って強く抗議し早急な撤退を強く求める」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711151700_01.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月8日、9日、10日、11日)

2007年11月8日(木) 朝刊 1面

「普天間」移設 国、北部振興再開を検討

来月の協議会で判断

 【東京】米軍普天間飛行場の移設に関する協議会が約十カ月ぶりに再開されたことを受け、政府は七日、予算が凍結されている北部振興事業の執行再開について、十二月中旬に予定されている次回の第五回協議会で判断する方針を固めた。同事業をめぐって昨年の第一回協議会で承認された「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進む状況の下、着実に実行する」との配分条件を満たすかどうかが今後の焦点となる。

 協議会が再開されたものの、政府と沖縄側には、普天間代替施設案(V字案)の沖合移動をめぐってなお隔たりがあり、「協議が円滑」とはいえない状況だ。

 予算を所管する内閣府は「次回協議会で何らかの歩み寄りがあれば執行の条件を満たせる」(幹部)と期待感をにじませる。一方、防衛省は「県が合理的な根拠のない沖合修正を求め続けるなら、予算執行はおろか、二〇〇八年度分の予算計上も難しい」(幹部)と厳しい姿勢。同問題を取り仕切る内閣官房の対応が注目される。

 七日の協議会で、仲井真弘多知事が北部振興事業の凍結に不快感をあらわにしたことを受け、町村信孝官房長官は、次回協議会までに予算執行のめどが付くよう、環境整備を急ぐ考えを示した。

 仲井真知事は沖合移動については「環境影響評価(アセスメント)前の修正」を求めるスタンスから、「アセス内の修正」へと柔軟姿勢に転じた。

 しかし、「融通むげに沖合に持っていく性格のものではない」(町村官房長官)、「(移設協議は沖合移動を)前提としない」(石破茂防衛相)などと厳しい姿勢を崩しておらず、先行きは依然不透明だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081300_01.html

 

2007年11月8日(木) 朝刊 1面

専門家から意見聴取へ/日本史小委

沖縄戦 審議公開も議論

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、教科書会社からの訂正申請を受けて記述を再審議する教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会が五日に開かれていたことが七日、分かった。関係者によると、審議に際して沖縄戦の専門家から意見を聞く必要性で一致。二〇〇六年度の審議会が検定意見の決定過程で密室性が強かったとの批判を受け、審議の公開の在り方も議論した。訂正申請後、同委員会が開かれたのは初めて。

 沖縄戦専門家の選定は現在、四―五人の候補が挙がっており、最終的な人選を委員長に一任することになったという。

 五日の日本史小委は、〇六年度の教科書検定で検定意見が付いた五社のうち、二日までに四社が訂正申請を終えたことを受け、「予備的な会合」(関係者)として開かれた。記述内容の審議はまだ始まっていないという。十一月中に再度、会合を開く見通しだ。

 同小委での結論は、審議会の第二部会(社会科)を開いて決定する段取りも確認した。

 「集団自決」記述に関する訂正申請は、一日に東京書籍と実教出版が文部科学省に初めて提出。二日には清水書院と山川出版が申請した。

 教科書会社関係者によると、文科省は五社に対して「五日までに申請してほしい」と要望していたが、七日時点で三省堂がまだ申請していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081300_02.html

 

2007年11月8日(木) 朝刊 23面

執筆者懇「検定撤回を」声明発表

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、教科書会社の執筆者や編集者でつくる「社会科教科書執筆者懇談会」は七日、文部科学省で記者会見し、同省に(1)訂正申請された記述の受け入れ(2)検定意見の速やかな撤回―などを求める声明を発表した。検定意見の決定に強い影響力を持つ教科書調査官と、教科用図書検定調査審議会委員の人選の透明化・公正化など、検定制度の改善を文科省に求めていく考えも盛り込んだ。

 声明は執筆者や教育研究者ら十七人が呼び掛けて作成した。

 「集団自決」に関する二〇〇六年度の教科書検定で、文科省が検定意見の根拠に大阪で係争中の「『集団自決』訴訟」を挙げていることを指摘。「係争中の裁判での一方の側の主張を教科書に記述してはならないと言ってきた、文科省自身のこれまでの言明とも明らかに反する」と批判している。

 記者会見した執筆者の石山久男さんは「訂正申請がきちんと受け止められることと、訂正申請によって検定意見の撤回があいまいにされないよう願っている」と述べた。

 子どもと教科書全国ネット21の俵義文事務局長は、一九九一年度の検定で教科書に引用された著書の記述に検定意見が付き、後に文部省(当時)が作者に謝罪した事例などを報告。「文科省は『制度上、検定意見の撤回はできない』と言うが、事実上、撤回した経緯はある」と指摘した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081300_03.html

 

2007年11月8日(木) 朝刊 23面

「自決」の負傷者 写真に/山梨学院大の我部教授入手

 沖縄戦の慶良間諸島で軍命によって起きた「集団自決(強制集団死)」の負傷者を撮影した写真二枚が七日までに見つかった。座間味島の病院で、子どもたちが首に包帯を巻いた姿で撮影されている。我部政男山梨学院大学教授が米国立公文書館で入手した資料の中にあった。写真を託された沖縄女性史研究家の宮城晴美さんは「国の都合によって、いたいけな子どもたちまでが犠牲を強いられたことを示した写真だ」と話した。(編集委員・謝花直美)

 我部教授が二〇〇四年十二月に米公文書館から持ち帰った資料を整理する中で見つけた。記録では撮影日付「一九四五年四月二十一日」、撮影者「E・C・サッカーソン大尉」とあり、「座間味島の病院にいた子どもたち。親が子どもたちののどを切ろうとしたことが分かる」と説明がある。

 四五年三月二十六日、米軍は座間味島に上陸、島を制圧する一方で病院を設置、軍人や民間人の治療に当たった。渡嘉敷島からもけが人が運ばれた。当時病院は二カ所あり、集落内に焼け残った建物を接収した病院が重傷者用、ヒナヌカーと呼ばれる浜辺にテント張りで設置されたのは軽傷者用だった。写真にはテントが写っているため軽傷者用の病院とみられる。

 宮城さんがこの写真に関し、聞き取り調査したが、病院の場所以外の情報は得られていない。「最も信頼する親から傷つけられなければならなかった子どもたちの悲鳴が聞こえてきそうだ。心身の傷は生涯癒えることはなく、あらためて日本軍、国家に対し、はらわたが煮えくり返る思いを禁じ得ない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月8日朝刊)

[「普天間」移設協]

住民の目線に立ってこそ

 米軍普天間飛行場の移設に関し政府と地元が話し合う「普天間飛行場移設協議会」が首相官邸で開かれた。

 福田新政権になって初の協議会で、約十カ月ぶりの開催である。

 仲井真弘多知事は、代替施設の建設計画について「まずは(政府が)自主的に沖合に寄せ、アセス手続きの中で、さらに沖合に寄せるよう知事意見が出た場合は、誠実に対応してほしい」と、政府の譲歩を求めた。

 政府は「現行案が基本」との姿勢を崩していないが、「地元の意見を受け止め、誠意をもって協議していきたい」(町村信孝官房長官)と答えている。

 政府はこれまで地元の声を無視し、米軍基地再編交付金をちらつかせながら受け入れを迫ってきた。米国と合意した現状のV字形滑走路案に固執してきたこれまでの姿勢を考えれば、話し合い路線への転換といえるだろう。

 膠着状態が続いていた「普天間」問題が大きな転機を迎えたのは間違いない。

 しかし、輸送ヘリの陸域上空飛行や装弾場などの付帯施設について情報開示が不十分という自治体首長らによる訴えに、関係閣僚は十分な説明をしなかった。

 米軍が配備を決めている垂直離着陸機MV22オスプレイ、大浦湾側に整備されるという二百メートルを超える護岸についてもしかりである。

 政府に対し県民が不信感を抱くのは情報を小出しにするか封印し、新たな情報が常に米側から漏れてくることにある。

 地元への情報開示が不足しているという北部の首長らの指摘を、政府は重く受け止めなければならない。

 県は代替施設の沖合移設を求めているが、それによって実際に何が変わるのか。周辺住民の暮らしへの影響はどうなのか。詳細な情報を提示する責務がある。

 知事の公約である普天間飛行場の危険性除去については、この日の協議会でもゼロ回答に近かった。

 もし、移設まで普天間飛行場をそのままにしておくのなら、場周経路に関する日米合意によっても危険性が除去されるとは思えない。

 次回協議会は十二月中に開かれるが、県、名護市などが歩み寄れば凍結した北部振興事業予算を解除し、基地交付金も検討する方針だという。

 対話路線に隠れた露骨な「アメとムチ」の手法と言うしかない。協議に当たっては、住民の目線に立って不安を解消していくことが国や県、関係自治体の責務である。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071108.html#no_1

 

琉球新報 社説

普天間移設協議会 住民の安全最優先に/地元要求実現は政府の責務

 政府と県、関係市町村が米軍普天間飛行場代替施設の建設計画などを話し合う普天間移設措置協議会が十カ月ぶりに開かれた。

 仲井真弘多知事は名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設するV字形滑走路を沖合へ寄せるよう求めたが、政府は環境への影響などを理由に応じなかった。

 普天間移設問題が地元の理解と協力なしには前進しないことは、海上基地建設が頓挫したことからも明らかである。

 地元は、県外移設がベストだと考えながらも、苦渋の選択で県内移設に基本合意したのである。

 そのような経緯からしても、少なくとも騒音の軽減、危険性の除去に向けた県や関係市町村の要求を実現することが政府の在り方である。

過剰な期待禁物

 移設措置協は、第3回まで防衛相と沖縄担当相が主宰してきたが、今回から官房長官主宰に格上げされた。

 これまでの協議会は、防衛省が主導権を握り、政府案を地元に押し付ける場でしかなかった。地元の要望に耳を貸さず、話し合いとは程遠い実態になっていた。

 仲井真知事は協議会後、「(政府は)これまでは既定路線で展開したいという強い思いがあったが、今回は沖縄の意見に耳を傾ける姿勢と気持ちがあった」と評価した。「ここで解決できないものはない印象を受けた。コミュニケーションは緊密、率直にできるようになった」とも述べた。

 協議会に変化の兆しがあったことで、県や関係市町村が期待感を抱くことも理解できる。

 しかし、この日の協議会でも県など地元要求に対して、前進は一切なかった。過剰な期待は禁物である。

 実際、石破茂防衛相は「政府として今の形(政府案)が最も適切だと考えている」と、これまでの姿勢を崩してはいない。

 防衛省はこの間、米軍再編交付金をちらつかせ、交付金の対象となる「再編関連特定周辺市町村」の指定から名護市など4市町村を外すなど、圧力をかけてきた。移設先の環境現況調査(事前調査)では自衛艦まで動員した。

 防衛省は日米合意を最優先に推し進めることに終始し、協議会を形骸化(けいがい)させてきたと言っていい。

 政府全体の姿勢が変わったのかを、今後の協議を通してしっかり見極める必要がある。

 仲井真知事が沖合への修正を求めたのに対し、政府は沖合修正によるジュゴンや藻場など、自然環境への影響増大を指摘し、政府案への理解を求めた。

 普天間代替施設は160ヘクタールもの埋め立てを伴う。環境にいくら配慮しても、環境が破壊されることは確実である。

 現行案に固執する政府が環境への配慮を持ち出すことは、説得力を欠く。

情報すべて開示を

 日米合意で最も問題なことは、地域住民の安全が確約されていないことだ。

 新設される基地には次世代兵員輸送機MVオスプレイが配備されることが確実視されている。同機は開発、試験飛行段階で4回墜落し、うち3回で計30人が死亡している。同機の危険性は依然として解消されてはいない。

 普天間移設は、危険性の除去が大きな目的だった。そのことからして、地域住民の安全保障を最優先することがまず求められる。その視点が政府には欠落している。

 町村信孝官房長官は沖合への修正について「日米の合意が必要。日本の事情で勝手に変えられるものではない」と述べた。

 そもそも地元の頭越しに米側と勝手に合意したのは政府の方である。政府には米側に修正合意を取り付ける責任がある。

 県内移設そのものに反対する声は根強い。沖縄だけに負担を押し付ける姿勢を政府が大きく転換しない限り、県民大多数の理解を得ることはできない。

 政府はそのことをまず認識し、12月上旬に予定されている次回の協議会に臨むべきである。

 全長約180メートルの艦船が停泊できる岸壁や戦闘機装弾場など建設計画の全容が政府から地元に一切伝えられていない。地元には重要な事項にもかかわらずである。

 これまでに明らかになっている米側の公文書からは、単なる移設ではなく、より強化された基地が新設されることが分かっている。

 情報をすべて開示しないままで協議がうまくいくはずはない。

(11/8 9:55)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28766-storytopic-11.html

 

2007年11月8日(木) 夕刊 5面

対馬丸の悲劇 映画化

 大阪府門真市で劇団ARK代表を務める齋藤勝さん(48)は七日、那覇市若狭の対馬丸記念館で会見し、先の大戦で米軍に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の悲劇を題材にした映画を製作すると発表した。齋藤さんは約八年前から対馬丸事件をテーマにしたオリジナル戯曲「銀の鈴」を舞台化、府内で上演しており、これから撮る作品はその映画版となる。すでに撮影を開始している。一般公開は二〇〇九年四月を予定している。

 齋藤さんは、対馬丸の生き残りの上原妙さん(76)から聞いた「生き残ってからが本当の戦争でした」との言葉に衝撃を受け、映画化を決意したと説明した。


証言基に構成


 その上で「表現者としてどうしても伝えたい話だと思った。沖縄戦の悲劇の象徴である対馬丸を風化させてはならない」と熱い思いを語った。

 「銀の鈴」は対馬丸へと、子どもたちを送り出した教師と奇跡的に助かった人たちが織り成す物語。沖縄に残った教師や疎開先での子どもたちの生活を描きながら、生き延びた後も戦争に翻弄され続ける人々の姿を描いた。登場人物や疎開先のエピソードは架空の話だが、「対馬丸」生存者の証言を基に構成・脚本化した。


関係者も期待


 会見には上原さんのほか、高良政勝同記念館会長も同席。高良会長は「教科書検定問題のように対馬丸も軍命ではなく自由な意思で疎開したと史実を書き換えられることに危機感を覚える。そうならないよう多くの人に対馬丸の悲劇を知ってもらう作品になれば」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711081700_01.html

 

2007年11月9日(金) 朝刊 1面

米、沖合移動に強い難色/国内議論牽制か

国防長官来日/官房長官に言明

 【東京】米国のゲーツ国防長官が八日、町村信孝官房長官と首相官邸で会談し、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設について、「どこか一カ所を変えると、(米軍再編の)全体が崩壊する」と述べ、県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動に強い難色を示していたことが分かった。複数の日米外交筋が明らかにした。

 ゲーツ長官は、今年五月、ワシントンで久間章生防衛相(当時)と会談した際、沖合移動に柔軟だった久間氏に「一部を変えたりすることなく、そのままの形で実現していくことが重要だ」と牽制しており、日米合意案を堅持する米政府の姿勢があらためて浮き彫りとなった。

 会談で町村長官は、政府と県、名護市など関係自治体による普天間移設協議会を自ら主宰して七日に開催したことを報告しており、同協議会で県や名護市から要望があった沖合移動についても紹介したとみられる。

 ゲーツ長官の今回の発言は沖合移動をめぐり、日本国内でなお議論がくすぶっていることへの不満と、修正は認められないとする強い意思を重ねて示したものといえる。

 ゲーツ長官は町村長官との会談後、石破茂防衛相とも会談。米軍再編に関し、個別の基地に関する発言は控えつつも、「2プラス2(日米安全保障協議委員会)で合意されたロードマップ(米軍再編最終報告)が大事だ。パッケージとして大事で、交渉された通りに履行されるべきだ」と述べ、普天間移設を日米合意に沿って進めるべきだとの考えを示唆した。

 また両氏は、テロ対策特別措置法の期限切れに伴って中断している海上自衛隊のインド洋での給油活動について、早期に再開する必要があるとの認識で一致した。

 会談後、石破防衛相とゲーツ長官は共同記者会見し、米軍再編について「昨年五月のロードマップに従い、普天間飛行場の移設返還、海兵隊のグアム移転などを着実に進めていくことを確認した」と発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711091300_01.html

 

2007年11月9日(金) 朝刊 1面

墜落同型ヘリ新たに6機/普天間計10機

 【宜野湾】米海兵隊報道部は八日、部隊配備計画(UDP)の一環として、沖縄国際大学に墜落したCH53D大型輸送ヘリコプターの同型機十機と約百五十人の兵士らを普天間飛行場にローテーション配備することを明らかにした。

 ローテーション配備されるのは同機を含む第一海兵航空団第四六三海兵重ヘリ中隊。六カ月で兵士らを交代させる。

 同報道部によると、同部隊は「イラクの自由作戦」の支援任務から帰還し、「日米安保条約を遂行する能力を維持するため」に訓練を行うとしている。

 このうち、四機と約六十人の兵士らは既に「普天間」に到着。残る六機の飛来時期については「後日、到着する」としている。

 宜野湾市の伊波洋一市長は「人口密集地の『普天間』に配備することは住民に大きな不安を与える。断じて許されない。米軍に即時撤去を求める」と強調。週明けにも米海兵隊外交政策部(G5)や外務省沖縄事務所、沖縄防衛局などに抗議行動を行う考えを明らかにした。

 同部隊は通常、山口県の岩国基地に展開しているが、二〇〇五年からイラクの作戦支援で派遣されていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711091300_02.html

 

2007年11月9日(金) 朝刊 1面

訂正申請出そろう/教科書検定

 二〇〇八年春から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付いた三省堂が八日、文部科学省に訂正申請を提出した。これで記述を削除された五社七冊の訂正申請が出そろった。三省堂は日本軍強制を示す記述を明記したとみられる。文科省は、今月中にも教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会で訂正を認めるかどうか結論を出す見込み。

 三省堂は日本史A、B二冊の教科書の訂正申請を提出。検定時は「日本軍に『集団自決』を強いられた」との記述だったが、検定で「追い詰められて『集団自決』した」との記述で合格していた。

 関係者によると、記述内容は執筆者同士が合意した案では「『集団自決』は自発的な死ではなく、日本軍が強いたという趣旨が分かる記述になっている」としている。「集団自決」以外にも、近現代史で沖縄や北海道に本土からの差別や偏見があったことに関する記述を増やした。「集団自決」関連の訂正だけが突出しないよう配慮したという。

 「集団自決」に関する訂正申請は東京書籍と実教出版が一日、文科省に提出。二日には清水書院と山川出版が続いた。東京書籍、実教出版、清水書院の三社も日本軍の強制を示す記述内容になっているとみられる。検定規則では、申請を承認するか、結論が出るまでは教科書会社、文科省とも申請内容を公表できない。

 訂正申請が出そろったことに琉球大学の山口剛史准教授は「教科書会社、執筆者の努力を評価したい。だが、文科省が検定意見を撤回しないままでは記述がそのまま認められるのか分からない。学術的に公正・中立な審議がなされることを期待したい」と話した。


     ◇     ◇     ◇     

大江・梅澤氏きょう出廷/「集団自決」訴訟


 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決」をめぐり、「沖縄ノート」などの書籍に自決を命じたと記され、名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の戦隊長らが著者の大江健三郎氏(72)と発行元の岩波書店に、出版の差し止めなどを求めている訴訟の本人尋問が九日、大阪地裁で開かれる。原告で座間味島の元海上挺進第一戦隊長の梅澤裕氏(90)と、渡嘉敷島の海上挺進第三戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟秀一氏(74)が出廷。大江氏も自ら証言に立つ。

 同訴訟の提起は、沖縄戦の「集団自決」に対する日本軍の強制性が削除された、二〇〇六年度の高校歴史教科書検定に多大な影響を及ぼした。

 梅澤氏は自決命令は出しておらず、軍命は援護法の適用を受けるための虚偽だったなどと主張。岩波側は、多くの書籍や資料などの記録から軍や戦隊長による命令は明らかと反論している。

 原告側が名誉棄損だと主張している「沖縄ノート」の各記述について、大江氏側は「集団自決」の責任者個人を批判してはいないと主張しており、尋問では大江氏が各表現を用いた経緯や狙いについて自ら語る。

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2007年11月9日(金) 朝刊 2面

共同使用受け入れ検討/金武町長

 【北部】在日米軍再編に基づく、米軍キャンプ・ハンセンでの陸上自衛隊の共同使用問題について、金武町、宜野座村、恩納村で構成する三町村連絡協議会会長で金武町の儀武剛町長は八日、沖縄タイムス社の取材に対し「負担の増大につながるか見極めた上で判断したい」と述べ、これまでの反対の姿勢を軟化させ、共同使用の受け入れも視野に検討していく考えを示した。

 これまで三連協は、共同使用が新たな基地負担の増加につながるとして反対の意思を示していたが、儀武町長は「どのように負担が増えるのか、もう一度検証して判断する必要がある」と述べた。

 儀武町長は、共同使用問題について「金武町だけで決められることではないが、想像以上の訓練ではないように感じている」とした上で、「宜野座村や恩納村と話し合い、それぞれの考えをまとめながら結論を出していく」と、三町村の協議を経て、結論を出すとした。

 沖縄防衛局では十月二十二日に金武町役場を訪れ、三連協に対して、ハンセン内のレンジ1、2や、都市型戦闘訓練施設が移設されるレンジ16一帯を使用したいとして、受け入れを要望。さらに同二十六日には、恩納村、宜野座村当局と村議会、五日には金武町議会にそれぞれ説明している。

 防衛省は三町村を、共同使用の受け入れに反対しているとして、米軍再編交付金の交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」から外している。しかし、三町村が共同使用の受け入れや協力が得られれば、財務省と協議した上で交付対象に指定する考えを示している。

 恩納村議会と金武町議会はこれまでに、共同使用について反対の決議を行っている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711091300_10.html

 

2007年11月9日(金) 夕刊 1面

軍命めぐり当事者主張/「集団自決」訴訟

 沖縄戦時に慶良間諸島での「集団自決(強制集団死)」をめぐり、ノーベル賞作家、大江健三郎氏の「沖縄ノート」や故家永三郎氏の「太平洋戦争」で住民に自決を命じたと記され、名誉を傷つけられているとして、島に駐屯していた部隊の元戦隊長らが大江氏と書籍発行元の岩波書店に、出版の差し止めなどを求めている訴訟の本人尋問が九日、大阪地裁(深見敏正裁判長)で始まった。午前は座間味島に駐屯していた元海上挺進第一戦隊長の梅澤裕氏(90)が出廷。「私は自決命令なんか絶対に出していない。村民が『集団自決』で亡くなったことは気の毒だと思うが、自決しないよう厳しく止めたし(自決用の)弾薬はやれないと言った」などと述べた。

 また梅澤氏は「手榴弾を防衛隊員に配ってはいないし、隊員に配ることを許可してもいない」と強調。梅澤氏の許可なく手榴弾が住民に渡ることはないとし、忠魂碑前で日本兵が住民に渡したとの指摘に対し「全然知らないし、あり得ないと思う」とした。

 「集団自決」については、当時はまったく予想しておらず、昭和三十三(一九五八)年ごろ、週刊誌で大々的に報じられるまで知らなかったと述べ、原因については「(多くの玉砕者が出た)サイパンの前例などもあるし、ああいう小さな島で米軍が上陸したら大変なことになると思っていたのではないか」などと述べた。「(軍ではなく)行政の上司から指示を受けていたのだと思う」とも語った。

 また座間味島で米軍の上陸を控えた一九四五年三月二十五日夜、兵事主任だった村役場の宮里盛秀助役から村民の「集団自決」のために弾薬を求められたが、梅澤氏は「何で自決する必要があるのかと厳しく言った。大事な場面で、はっきりと覚えている」とした。

 「沖縄ノート」については「去年、念のために読んだ」という。

 被告の岩波側はこれまで、梅澤氏は部隊の最高指揮官で、住民に「集団自決」を命じていたことは多くの書籍や資料の記録から明らかと反論。「沖縄ノート」については、梅澤氏ら戦隊長個人を特定して批判・論評しておらず、名誉棄損には当たらない、としている。

 また梅澤氏が、「集団自決」のための弾薬を求められたが断ったとしていることについては、その場にいた故宮城初枝氏の手記や、初枝氏の話を著作にまとめた娘の晴美氏の証言を基に、自決に追い込まれることは承知の上で、貴重な戦備を渡さなかったにすぎないと反論している。

 戦後、援護の担当者が梅澤氏に「軍命は援護法の適用を受けるためだった」として謝罪、執筆・押印したとされる書面についても、担当者の意志により作成されたものではないと指摘している。

 午後は大江氏が証言。原告側は渡嘉敷島に駐屯していた元海上挺進第三戦隊長、故赤松嘉次氏の弟秀一氏(74)も証言に立つ。

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2007年11月9日(金) 夕刊 6・7面

元隊長、関与を否定/命令は「那覇から」

 沖縄戦時、渡嘉敷、座間味両村で起きた「集団自決(強制集団死)」に対する戦隊長命令をめぐり、「沖縄ノート」の著者で作家の大江健三郎さん(72)や発行元の岩波書店を相手に大阪地裁に起こされた「集団自決」訴訟は九日、原告の座間味島・海上挺進第一戦隊の元隊長、梅澤裕さん(90)や大江さんらへの本人尋問でヤマ場を迎えた。

 「集団自決」教科書検定問題の原因ともなった訴訟に注目は高まり、原告、被告双方の多くの支援者らが見守る中、緊迫した尋問が始まった。

 静かな緊張感が漂う法廷で、十時半すぎ、本人尋問が始まった。梅澤さんと、渡嘉敷島・海上挺進第三戦隊の元戦隊長・故赤松嘉次さんの弟、赤松秀一さん(74)が証言台に並び、宣誓した。

 最初に灰色のジャケットを着た梅澤さんが、証言台前のいすに座った。

 「住民に手榴弾を配ったり、配るのを許可したことは」、「ありません」。「住民があなた方がいた壕を訪ねたとき、なんと言ったのか」、「とんでもないこと言うんじゃない。死んではいけない」。原告側弁護士のゆっくりとした質問に、歯切れよく答え続けた。

 村助役らが「老人、婦女子ら足手まといになるものは死んでくれと言われている」と話したことも証言したが、「だれから言われていたのか」と問われると「行政の上司、那覇あたりからの」と説明し、「集団自決」への軍命や強制に自らかかわったことは一貫して否定した。

 一方、被告側弁護士が、梅澤氏が故宮城初枝さんに最初に会った時期などを尋ねると、これまでの証言や示された証拠と矛盾する答えをする場面もあった。

 自らの陳述書に引用した宮城さんの手紙の一文「忠魂碑の前集合は住民にとっては軍命令と思い込んでいたのは事実でございます」について、「同じ気持ちか」と尋ねられると肯定し、後で「われわれの部隊が駐留したという程度の意味」と付け加えた。


     ◇     ◇     ◇     

大江氏、表情崩さず


 尋問を終え、梅澤さんが法廷を後にした約十五分後、大江さんが地裁に到着した。岩波書店関係者らに付き添われ、正面玄関につけた車から降りた。

 約八十人の支援者や報道陣が見守る中、拍手に出迎えられた。紺色のスーツを着た大江さんは、一瞬、支援者の方に顔を向けたが、口を結んだ真剣な表情は崩さず、正面を向き直してまっすぐ建物の中に入っていった。


抽選会場に700人列/原告側が気勢 騒然


 「集団自決」教科書検定問題の原因ともなった訴訟に注目は高まり、原告、被告双方の支援者らが集まって、大阪地裁は騒然とした雰囲気に包まれた。

 開廷は午前十時半だったが、傍聴抽選会場となった大阪地裁北側駐車場には午前八時前から傍聴希望者が並び始めた。六十五席の傍聴席に対し、同訴訟ではこれまでで最も多い六百九十三人が列をなした。

 抽選会場付近では、「戦隊長による軍命はなかった」と主張する原告側支援者が、「大江健三郎の人権侵害を許すな」と書かれたビラを配り、ハンドマイクで「九月二十九日の県民大会には慶良間諸島からの参加者はいなかった」、「渡嘉敷、座間味の住民に日本軍を恨んでいる人はいない」などと気勢をあげた。

 被告側には沖縄などからも支援者が駆けつけ、静かに開廷を待った。兵庫県宝塚市から訪れた大森悦子さん(65)は「沖縄の体験者のおじいさん、おばあさんたちが話していることが、なぜ(原告側に)分からないのか。人間の気持ちに立ち戻り、素直に考えてほしい」と話した。

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2007年11月9日(金) 夕刊 1面

知事、年内決着を期待/普天間移設

 仲井真弘多知事は九日午前の定例記者会見で、米軍普天間飛行場移設問題について、年内に開催される政府との次回協議会での決着に期待感を示した。知事は地元が求めている代替施設の沖合移動などについて「(政府に)どこまで受け止められるかはまだ分からない」としながらも、「(次回協議会が)開催されれば無条件で参加しようと思っている。意見調整できるなら(協議会は)一番いい場だ」と述べ、政府との協議加速に前向きな姿勢を強調した。

 普天間飛行場の閉鎖状態については「政治判断が必要」との認識を示す一方、代替施設の沖合移動は「技術論と受け止めている。文字通りの微調整」と指摘。その上で、ゲーツ米国防長官が八日の町村信孝官房長官らとの会談で、沖合移動に強い難色を示したことに「(地元の要求は)日米合意をはみだしていないと思う。われわれの主張を理解してもらっているのか」と疑問を呈した。

 沖縄国際大学に墜落した米海兵隊ヘリと同型のCH53D大型輸送ヘリが普天間飛行場にローテーション配備されることには「閉鎖状態の実現を求めている流れに逆らっている」と不快感を示した。

 県が来年度から予定している宮古・八重山両支庁を廃止・改編する方針について「行財政改革の流れの中で既定路線に沿っていきたいと考えている」と述べ、地元の意向を見極めた上で最終判断する考えを示した。

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2007年11月9日(金) 夕刊 7面

防衛局「誤飲ない」/ジュゴンの藻場にクギ

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、ジュゴンの餌場となる藻場に、短いくぎが使われ自然保護団体が「ジュゴンが誤飲する危険がある」と指摘した問題で沖縄防衛局は沖縄タイムス社の取材に対し、九日までに「約九センチの鉄製ピン」を使用していることを認めた。専門家は「無害の実証がない」と批判している。

 防衛局は「海底の砂の層が薄く、その下層が硬い場合には、鉄製の棒の設置ができないことから鉄製のピンを採用しているが、設置の際、海底の砂にできるだけ深く埋め込むようにしていることから、容易に抜けることはなく、ジュゴンが誤飲することはないと考えている」との見解を示した。

 ジュゴンの生態に詳しい元帝京科学大学教授の粕谷俊雄さんは「ジュゴンの餌場にくぎ(ピン)が配置されているということ自体、聞いたことがない。ジュゴンに決していい影響はない。無害が実証されない限り、この種の実験は行うべきではない」と、国の説明不足を批判した。

 防衛局は取材に対し当初、「長さ六十―八十センチ程度の棒」を使用していると回答していた。

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2007年11月9日(金) 夕刊 6面

米に最大規模返還要求/キャンプ瑞慶覧

 【東京】自民党国防部会、安全保障調査会、基地対策特別委員会の合同会議が九日午前、党本部であり、防衛省が八日の日米防衛首脳会談について報告した。金澤博範防衛政策局長は、在日米軍再編の「嘉手納以南六基地」の全面・一部返還で、米側との調整が難航しているキャンプ瑞慶覧の返還規模について、「最大限の規模での返還」を米側に求めたことを明らかにした。

 合同会議では、安次富修衆院議員が、「細切れではなく、一括で返還できるようにしてもらいたい」などと要望。

 これに対し金澤局長は「在沖米海兵隊のグアム移転の詳細が固まっていない中で、何とも言えないが、そのように進めていきたい」などと述べ、「最大限の規模での返還」に積極的に取り組む考えを示した。安次富氏はそのほか、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が米軍基地従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、県内基地従業員が国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」廃止案を撤回するよう求めていると指摘。

 これに対し防衛省側は「従業員の生活をしっかり考えて検討する」などと述べるにとどめた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711091700_08.html

 

2007年11月10日(土) 朝刊 1・26面

大江氏「軍命」主張/「集団自決」訴訟

 【大阪】沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、大江健三郎氏の「沖縄ノート」などの書籍に住民に自決を命じたと記され、名誉を傷つけられているとして、島に駐屯していた部隊の元戦隊長らが大江氏と著作発行元の岩波書店に、出版の差し止めなどを求めている訴訟の本人尋問が九日、大阪地裁(深見敏正裁判長)であった。午後から大江氏が出廷。「集団自決」について「軍による命令と考えている」と語った。

 「沖縄ノート」の記述などをめぐって原告と被告双方の質問に約一時間ずつ答えた。

 大江氏は「集団自決」について「太平洋戦争下の日本軍、現地の第三二軍、島の守備隊をつらぬくタテの構造によって、島民に強制された」とし、「日本軍による責任は明確で、『沖縄ノート』の記述を訂正する必要は認めていない」と述べた。

 原告側が戦隊長らの名誉棄損を主張している「沖縄ノート」の各記述について、大江氏は「日本軍の命令系統の最先端にいる責任者として、責任を負っている」としたが、「注意深く、隊長個人の名を書くことはしなかった。個人の名を挙げるよりも、問題が明確になる」とし、隊長個人は非難していない、との認識を示した。

 原告側は、大江氏が語った「タテの構造」の話は、「沖縄ノート」では説明されておらず「一般読者の注意と読み方に照らし、そうは読めない」と反論。各記述についてそれぞれ「戦隊長個人を非難している」などとただしたが、「文章を読み違えている」とする大江氏と平行線をたどった。

 大江氏は「『集団自決』が美しく、清らかだという欺瞞に反対するのが私の仕事だと思う」とし、「愛国心のために自ら命を絶った、国に殉じて美しい心で死んだと、事実をゆがめること自体が人間をおとしめている」と語った。

 午後の尋問では、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟秀一氏(74)も証言。「兄は尊敬の対象」だったとした上で、沖縄タイムス社の「鉄の暴風」で、嘉次氏が住民に「集団自決」を命じたと書かれ、「ショックだった。人殺しの大悪人と書かれているわけだから」と述べた。曽野綾子氏の著作「ある神話の背景」で、「兄の無罪がはっきりし、兄への親近感を取り戻せた。家族も戦隊の方々も心の支えになっていると思う」などと語った。

 被告側の反対尋問では、命令を出したことを生前、嘉次氏に確かめたことはないと述べた。


     ◇     ◇     ◇     

大江氏、身乗り出し反論


 書き上げたのは個人への断罪ではなく、琉球処分以後、大和世、戦世、アメリカ世と続き、施政権返還後も続きそうな沖縄への抑圧とそこに暮らす人々の苦しみ。それに対する日本本土の人々の無関心さ、無自覚さ。そうした自分を含む「日本人」への反省と問いかけだった。「沖縄ノート」(岩波新書)の著者、作家・大江健三郎さん(72)は、なぜこの本を書き、なぜ「集団自決(強制集団死)」を取り上げたのか、法廷で言葉を紡いだ。

 濃紺のスーツ姿で証言台に立った。

 「集団自決」を命じた日本―日本軍―三二軍と連なる「タテの構造」と、「その先端にいた渡嘉敷島の元戦隊長(海上挺進第三戦隊の戦隊長・故赤松嘉次さん)の沖縄再訪」に、沖縄と本土にある差異に無知、無自覚な日本人の意識が表れているとの考えを述べた。

 「いまでも慶良間諸島の『集団自決』に日本軍の軍命、強制があったと考えるか」との問いには「沖縄の新聞、本土の新聞にそれを示す新たな証言が掲載され、確信を強くした」と答えた。

 原告側は反対尋問で、「沖縄ノート」の記述の解釈や、根拠について詳細な説明を求めた。

 「罪の巨塊」という言葉で、個人を断罪しているのではないか。作家・曽野綾子さんが著作「ある神話の背景」などで「沖縄ノート」の記述を批判しているのと同様の主張を尋問でぶつけた。

 大江さんは「罪とは『集団自決』を命じた日本軍の命令を指す。『巨塊』とは、その結果生じた多くの人の遺体を別の言葉で表したいと考えて創作した言葉」「私は『罪の巨塊の前で、かれは…』と続けている。『罪の巨塊』というのは人を指した言葉ではない」と説明、「曽野さんには『誤読』があり、それがこの訴訟の根拠にもつながっている」と指摘した。

 原告側は、別の記述を引用し「赤松さんらの個人の責任を追及しているように読める」などと、何度も詰め寄った。

 大江さんの反論にも熱が入った。顔を紅潮させ、身を乗り出すように「それは誤読です」「そうは読めません」と強く否定した。繰り返される原告側の主張を諭すように「説明しましょうか」と申し出て、「個人に対してではなく、『集団自決』を慶良間諸島の人々に命じ、強いた構造への責任を問う」ことが記述の主眼であることなどを説いた。

 「赤松隊長はどの時点で『集団自決』を予見できたと考えるのか」との質問には、「手榴弾が住民に配られた時点」と答え、体験者の金城重明さんや吉川勇助さんの証言を根拠に挙げた。

 二時間にわたる尋問を終えた大江さんは、大きく肩を上下させてシャンと背を伸ばし、正面を見据えて証言台を後にした。


原告と被告、溝鮮明に/解説


 「集団自決」訴訟の本人尋問は、民事訴訟の被告になったノーベル賞作家が法廷に立つことで、注目を集めた。ただ、戦隊長命令の有無をめぐる訴訟で、むしろ意味合いが大きいのは、戦後手だてを尽くして自決命令を否定してきた元戦隊長が、自らの言葉で何を語るかだった。

 原告側は、米軍の上陸を控え、村の幹部らが梅澤裕氏を訪ねて来た一場面に絞り、梅澤氏による命令を全面否定。皇民化教育を背景に、日本軍が島に駐屯した経緯をたどり、軍や戦隊長による強制・命令の実態をとらえる被告側との擦れ違いは鮮明になった。

 梅澤氏の主張は従来通りだったが、部隊の最高指揮官としての責任を否定した証言は印象深い。主尋問で「責任はない」と明言し、反対尋問や会見でも「一番の責任は米軍にある」「命令を出したのは軍ではなく県」とするなど、多くの犠牲者が出た「集団自決」という事実からの“逃避”をうかがわせた。

 七月にあった宮城晴美氏の証人尋問で、原告代理人は「梅澤さんは責任がないとはひと言も言ってない」と明言していただけに、梅澤氏の発言は、弁護団とのずれをのぞかせる場面ともなった。

 同訴訟の提起は二〇〇五年八月だが、原告側が名誉棄損の主たる対象にしている「沖縄ノート」を「去年になって初めて読んだ」と話す梅澤氏。赤松嘉次・渡嘉敷島元戦隊長の弟も、訴訟を起こしたきっかけを、嘉次氏の陸軍士官学校同期生から誘われたと述べた。

 軍の命令と戦隊長による命令を明確に区別し、原告側が元戦隊長ら個人の名誉回復を強調する一方、岩波側の支援者は「狙いは日本軍そのものの名誉回復」とみる。本人尋問では、訴訟の提起が少なくとも原告本人の発意ではなかったことを事実上、裏付けた。

 同訴訟は、係争中でも高校の歴史教科書検定の主たる根拠となった。判決は将来の検定に影響を与えるのに十分な可能性をはらんでいる。(社会部・粟国雄一郎)

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2007年11月10日(土) 朝刊 26・27面

元戦隊長発言転換/「自決」指示は県 強調

 【大阪】「『集団自決』を指示したのは、軍でなく県だ」―。九日、大阪地裁で開かれた「集団自決」訴訟の本人尋問。沖縄戦時に座間味島で指揮を執った元戦隊長の梅澤裕さんは、閉廷後の記者会見で持論を展開した。尋問では「集団自決(強制集団死)」への日本軍の責任を「ありません」と明言した後、「関係ないとは言えない」と軌道修正する迷走ぶり。日本軍の責任を県に押し付ける責任転嫁の手法に、被告側支援者は「あきれてものが言えない」と言葉を失った。

 約二年三カ月に及ぶ訴訟はこの日、本人尋問で大詰めを迎えた。静まり返る二〇二号法廷。よわい九十の“元軍人”は背筋をぴんと伸ばして着席した。

 「自決命令なんか絶対に出していない」「死んだらいけないと厳しく言った」

 島の住民に命令を出したかを問われ、何度も語気を強めた。

 海上挺進第一戦隊の最高指揮官を務めたが、一九四五年三月二十五日に、日本兵が忠魂碑前で手榴弾を配ったとの今年九月に出た住民証言について「全然知らない」「あり得ないと思う」と自身の指示や関与を否定した。

 午前中の尋問では自決命令の主体を「村の助役」としていた従来の主張から「行政側の上司の那覇あたりからの指令」と大きく飛躍。夕刻の会見では記者団に「(指示は)軍ではなく県なんだ。みんなぼかしてるけど、重大な問題だ」とし、当時の島田叡知事に責任があるとした。

 一方、訴訟を起こすきっかけになった大江健三郎さんの著書「沖縄ノート」を初めて通読したのは昨年だったことを法廷で明かした。訴訟前に大江さんや発行元の岩波書店に抗議したこともなかった。

 大江さんの証言については、会見で「くだらん話」と一蹴。

 「集団自決」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、教科書会社から訂正申請が相次いでいることには「沖縄でワーワー大騒ぎして十一万人だとか言って、また元の悪い教科書に戻ろうという運動がどんどん出てる」と不快感を表明した。

 渡嘉敷島に駐屯した故・赤松嘉次元戦隊長の弟の赤松秀一さんは被告側尋問で、訴訟提起のきっかけが嘉次さんの陸軍士官学校同期からの誘いだったかを問われ「そういうことになりますかね」と認め、支援者らの強い意向があったことをうかがわせた。

 渡嘉敷島での「集団自決」を「(嘉次さんから)直接聞いたことはない」とも明らかにした。

 被告側支援者で大阪歴史教育者協議会の小牧薫委員長は「日本軍の責任を県に押し付けるつもりなのか、と昼休みに支援者と話していたところだった。今日の尋問で元戦隊長がいかに無能だったかを梅澤氏自身が証明した」と厳しく批判した。


訴訟は成り立たぬ/被告側


 【大阪】「集団自決」訴訟で本人尋問が終わった九日午後、被告側代理人の弁護団が大阪司法記者クラブで記者会見した。元戦隊長らから名誉棄損で訴えられている作家・大江健三郎さんの著書「沖縄ノート」について、渡嘉敷島、座間味島の戦隊長の実名を挙げていないことを指摘。秋山幹男弁護士は「梅澤裕氏も隊長が命令したとは書かれていないことを認めており、訴訟として成り立たないのが実情だ」として、名誉棄損が成立していないとの認識を示した。

 秋山弁護士は「沖縄ノート」での「集団自決(強制集団死)」記述について「日本軍―三二軍―慶良間諸島の守備隊という全体構造で、軍の命令・強制があったとの考えで書かれている」と説明。両元戦隊長を個人としてひぼう・中傷したものではないと強調した。


問題点のすり替え/原告側


 【大阪】「集団自決」訴訟で原告側は九日午後、被告側代理人に続いて、大阪司法記者クラブで記者会見した。座間味島に駐屯していた梅澤裕元戦隊長は、被告で作家の大江健三郎さんの尋問について「要点を外してだらだら話し、何てくだらん話をするなと思って聞くのが嫌になった」と批判した。

 渡嘉敷島に駐屯していた故・赤松嘉次元戦隊長の弟の赤松秀一さんも「本で明らかな個人攻撃をしているのに、三二軍を出して問題点のすり替えをしている」と不満をあらわにした。

 原告側代理人の徳永信一弁護士は「大江さんは軍命について軍隊による実行行動の総称としたが、『沖縄ノート』にそんなことは一言も書かれていない。私などではついていけない有名な『大江ワールド』が法廷で展開された」と皮肉った。


     ◇     ◇     ◇     

支援団体、大阪で報告集会


 沖縄戦本人尋問報告集会(主催・大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会ほか)が九日、大阪市内で開かれ、県内外の支援団体から約二百人が参加した。弁護団が、本人尋問の内容を報告。琉球大学の山口剛史准教授が「沖縄戦の真実は消せない―島ぐるみの闘い」、歴史教育者協議会の石山久男委員長が「著書が語る教科書検定問題」をテーマに講演。

 山口准教授は教科書検定問題を取り上げた県内紙を資料として配り、「県民の願いはあくまで検定意見の撤回。全国に連帯の輪が広がっている。さらなる攻勢を政府、文科省へとかけていきたい」と語った。

 石山委員長は「この裁判は検定問題と連動し、計画的に行われたもの」と指摘。「責任を明らかにし、再び同じ過ちを犯さぬよう検定制度を改めてほしい」と話した。


検定意見撤回へ全国集会を開催/来月3日東京


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」から日本軍の強制を示す記述を削除させた文部科学省の教科書検定意見を撤回させようと「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会(沖縄戦首都圏の会)」は十二月三日午後六時半から、東京都の九段会館で全国集会を開く。

 教科書会社六社から文科省に記述の訂正申請が提出される一方で、検定意見撤回に応じない文科省に対し抗議の意思を示す取り組み。千五百人規模の集会を目指し、東京沖縄県人会にも協力を呼び掛けていく。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711101300_02.html

 

2007年11月10日(土) 朝刊 1・2面

検定合格社も訂正申請/全6社「軍の強制」記述

 二〇〇八年春から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付かず、修正せずに合格していた第一学習社(広島市)が九日、文部科学省に訂正申請を提出した。日本軍強制に関する記述を新たに盛り込んだとみられる。これで、二〇〇六年度検定を受けた六社すべてが訂正申請をした。

 第一学習社の教科書は、県内で最も多い十八校で使用される予定。「高校日本史A」では「沖縄戦では、一般住民を含む県民十二万人が犠牲となった(「沖縄県援護課資料」)。この中には、『集団自決』のほか、スパイ容疑や、作戦の妨げになるなどの理由で日本軍によって殺された人もいた」と記述している。この部分に検定意見は付かず、そのまま合格していた。

 渡海紀三朗文科相の要請を受けた教科用図書検定調査審議会は、五日に日本史小委員会をすでに開催し、沖縄戦の専門家に意見を聞くことを決めている。現在、四、五人の候補が挙がっており、人選は委員長に一任されている。同委員会は早ければ今月中にも訂正を認めるかどうか結論を出す見込みだ。


     ◇     ◇     ◇     

撤回と記述回復を/文科省に九州市議長会


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、九州市議会議長会の代表は九日午後、文部科学省を訪ね、検定意見の速やかな撤回と記述の回復を求めた。文科省側は、教科用図書検定調査審議会で審議されることを強調し、具体的な対応方針には言及しなかった。

 要請は、議長会のメンバーである安慶田光男那覇市議会議長が行った。議長会が十月に決議した「教科書検定に関する要請」を、銭谷真美事務次官や初等中等教育局の金森越哉局長らに手渡した。

 安慶田議長は「『集団自決』は軍の命令、強制、誘導なしには起こりえず、今回の削除・修正は容認できない。沖縄県民は検定意見の撤回を求めている」などと理解を求めた。

 銭谷事務次官らは「沖縄県民の気持ちは重く受け止めている」とした上で、民間の教科書会社からの訂正申請を受け、審議会で再び審査されることを説明。来春からの教科書使用に向けて、手続きを進める考えを強調したという。

 議長会は、小・中学校の耐震化を含めた校舎整備の予算確保を求めたほか、内閣府に対して那覇空港の拡張整備に政府の配慮を要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711101300_03.html

 

2007年11月10日(土) 朝刊 2面

普天間代替/防衛局、新たに調査せず

 米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価(アセスメント)方法書について審議する県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)が九日、宜野湾市で開かれ、実質的な審議がスタートした。アセス方法書の概要説明の中で沖縄防衛局は、滑走路の沖合移動を求める仲井真弘多知事が、実際に航空機を飛ばして騒音データを収集する必要性を提案したことに関し、「現在の普天間飛行場の状況から推測し、シミュレートする形で予測する」として、新たなデータ収集はしない考えを示した。

 審議の中で津嘉山会長は、県が滑走路の沖合移動など修正を求めていることに言及。「滑走路を沖合にずらすと、アセスの周辺海域評価も変わってくる。(建設位置の)詰めをしていない段階で、どうして方法書を出したのか理解できない」とただした。

 同局は「今のところは、政府案の実現性が高いということで提出した。仮に位置が変わったとして(アセスは)変更の程度にもよる。日米合意に基づく二〇一四年の完成時期に伴う手続き期間を考えると、この時期に(方法書を)出さないといけなかったということだ」と説明した。

 方法書の中身について委員からは、工事による生態系への悪影響を評価する方法に具体性が欠けていることや、工事段階でも必要な作業ヤードとして大浦湾の大規模埋め立てが計画されていることの影響を懸念する指摘が相次いだ。

 会議は、施設建設の近隣地区の住民など約四十人が傍聴。「方法書はでたらめだ」「基地建設は環境破壊」などの声が飛び交う場面もあった。

 審査会は次回十五日の会議で、環境団体など八団体が要望していた住民などの意見聴取の場を設けることを全会一致で決めた。


沖合移動「相当難しい」/町村氏


 【東京】町村信孝官房長官は九日午後の記者会見で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で、県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について、「相当難しいことだ」と、従来よりも厳しい見解を示した。

 町村氏は七日に再開した普天間移設に関する協議会後の記者会見では、「可能性はないとは言わない」と述べ、修正の可能性を初めて示唆していた。

 しかし、八日にゲーツ米国防長官に「どこか一カ所を変えると(米軍再編の)全体が崩壊する」と指摘され、九日の会見では「そう簡単に日米間で話がつく性格のものと仲井真知事が理解されているなら、そこは違うのではないか」と県の要望を厳しく指摘した。

 町村氏は、県が「日米合意の範囲内」の微修正を求めていることにも、「そういう解釈をしているようだがどうか。微という範囲によりけりだが、(V字案は)相当煮詰めた議論をして決めた経緯がある。百パーセント不可能と言い切るつもりはないが、相当難しいことだ」と困難視した。


墜落同型ヘリ再配備に抗議


 沖縄国際大学に墜落した米海兵隊ヘリと同型のCH53D大型輸送ヘリが普天間飛行場にローテーション配備される問題で、普天間基地爆音訴訟団と基地の県内移設に反対する県民会議の代表らは九日、県庁記者クラブで会見し、抗議声明を発表した。

 会見した普天間基地爆音訴訟団の新垣清涼副団長は「再配備は市民、県民を蔑視したものであり、軍事優先の米軍の横暴である」と批判。「連日、深夜から早朝に至るまで、爆音に苦しめられている宜野湾市民を愚弄するものだ」と、今回の配備の即時中止を求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711101300_05.html

 

2007年11月10日(土) 朝刊 2面

F15飛行停止/沖縄市議会が抗議へ

 【沖縄】米本国での墜落事故を受け、米軍嘉手納基地のすべてのF15戦闘機が飛行を停止している問題で、沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会(与那嶺克枝委員長)は九日、「欠陥機と指摘されているF15を即刻撤去せよ」とする抗議決議と意見書の両案を十六日の臨時会に提案することを決めた。全会一致で可決される見通しだ。

 抗議決議文では、十月三十日に強行された同基地でのF15戦闘機の未明離陸にも触れ、「米軍は例外規定を盾に未明離陸を繰り返しており、騒音防止協定が形骸化している」と指摘。軍用機などの早朝・夜間訓練の全面中止と同協定の抜本的な見直しも求めている。


「異例の事態」/空幕長が懸念


 【東京】防衛省の田母神俊雄航空幕僚長は九日の定例会見で、米空軍のF15戦闘機が米国で墜落事故を起こしたことにより、国内すべてのF15が飛行を見合わせている問題について、「米軍がこれだけ何日もグローバルに戦闘機を飛行停止するのは、たぶん初めてのこと。非常に異例の事態だ」との認識を示した。

 飛行再開の見通しについては「米軍の技術に空自も頼っている以上、米軍が何らかの動きに出なければ結論が出せない状況にある。ただ、二週間も一カ月も止まるということはないとは思うが、現状ではよく分からない」との見通しを示した。

 F15が飛行を見合わせている間、代わりにF4戦闘機が領空侵犯対処に当たることについては「F4は古くなってきているので、F15並みの稼働率を維持するためには相当の労力がいるが、領空侵犯対処に穴が開かないよう、部隊は懸命に頑張っている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711101300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月10日朝刊)

[元専務逮捕]

防衛利権の徹底糾明を

 防衛装備品調達をめぐる官業癒着、防衛利権の糾明へ向け、東京地検特捜部が強制捜査に着手した。

 逮捕された防衛商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者は、頻繁なゴルフ接待など守屋武昌前防衛事務次官と親密な交際を続けていた。

 直接の逮捕容疑は、業務上横領、有印私文書偽造・同行使だが、特捜部の主眼がその先にある防衛利権の不正の解明にあるのは明らかだ。

 一九九八年には旧防衛庁調達実施本部の装備品納入をめぐる背任、汚職事件が発覚し、元副本部長や元防衛施設庁長官らが逮捕、起訴されている。

 防衛省が調達する装備品については防衛上の秘密や装備の特殊性から、特定業者に発注が集中する傾向があると指摘されてきた。着服された約一億円の使途や資金の流れ、宮崎元専務と政官の癒着の全容解明を期待したい。

 元専務はオーナー側と対立し、二〇〇六年に新会社「日本ミライズ」を設立するまで、政官工作を担ってきた。

 山田洋行は航空自衛隊の次期輸送機(CX)に搭載予定の米国メーカー製エンジンの販売代理権を持っており、施策機用の五基(計約三十九億円)を受注している。

 日本ミライズは今年七月末に代理権を獲得しており、山田洋行側との裁判にまで発展していた。

 守屋前次官は国会の証人喚問で、二百回以上のゴルフ接待を受けていたことや、夫婦でゴルフセットをもらったり、飲食や旅行の接待を受けていたことなどを認めた。

 逮捕された宮崎元専務と守屋前次官の癒着ともいえる異常な交際にはあきれるばかりである。

 エンジンの販売代理権をめぐる対立を背景に、部下に対して「日本ミライズと随意契約できないのか」と口出ししたとの疑惑を守屋前次官は全面否定した。元専務側に対する便宜供与についても否定している。

 しかし、一般常識から考えて、これだけの接待を受けて何もなかったというのはにわかには信じ難い。ゴルフで偽名を使用したことも認めており、後ろめたさがあったのは確かだろう。

 山田洋行が六年前、敵のレーダーなどをかく乱させる「チャフ・フレア・ディスペンサー」について水増し請求をしていたが、契約変更による減額措置になっていたことについても疑惑の目が向けられている。

 守屋前次官は接待の場に防衛庁長官を歴任した政治家が同席していたと語った。癒着の根は想像以上に深いかもしれない。特捜部は徹底的にメスを入れ、疑惑解明に全力を挙げてほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071110.html#no_1

 

琉球新報 社説

「検定」訂正申請 審議会の透明性を求める

 高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)をめぐる検定問題で、検定意見を付けられ日本軍の「強制性」に関する記述を削除・修正した教科書出版社5社が、文部科学省に訂正申請を行った。文科省は、教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会に諮って年内に結論を出す。

 執筆者らによると、新たに申請した記述は、日本軍の強制性を明記し、書き換えられる前と同じ趣旨の記述が盛り込まれた。住民を集団自決に追いやった日本軍の存在、9月の県民大会が要求した「主語」が復活した。

 それにしても不可解なのは文科省の姿勢だ。検定意見の撤回には頑として応じようとしないのは理解に苦しむ。今回の問題は調査意見書からすべてが出発していることを見落としてはならない。

 検定審議会が仮に今回の訂正申請を認めるとすれば、検定意見も当然変わらなければならない。審議会の新たな判断と検定意見は不可分の関係にあるからだ。前提はそのままで、結論だけ変えるのは理屈に合わない。

 文科省の教科書調査官が作成した調査意見書が検定審議会に諮問され、その意見に沿って「沖縄戦の実態について誤解されるおそれのある」記述である、と審議会も判断したのである。

 記述の修正については訂正申請どおり了承するが、検定意見は撤回しない。それは論理矛盾だ。明らかに整合性を欠く。

 審議会の論議がいまだに十分説明されていないのもおかしい。責任放棄に等しい。

 批判されなければならないのは審議会委員の感度の鈍さだ。調査意見書は、これまで容認された内容の重大な変更である。なぜ変更なのか。それを問うのが常識ではないか。沖縄戦の専門家の不在を理由に基本的事項の誤りに気付かないようでは、委員の資質が問われかねない。

 県民大会への配慮から訂正されるのではない。間違いだから正さねばならないのだ。審議会は、今度こそ議論の内容を公開し、結論に責任を持たなければならない。

(11/10 12:31)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28832-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

宮崎元専務逮捕 防衛利権の不正徹底解明を

 守屋武昌前防衛事務次官と親密な交際を続けていた「山田洋行」の元専務宮崎元伸容疑者が8日、東京地検特捜部に業務上横領などの容疑で逮捕された。山田洋行の米国子会社から約1億1700万円を着服した疑いである。もちろん、特捜部の真の狙いは防衛関連装備調達をめぐる疑惑の解明であろう。宮崎元専務の逮捕は、そのための第1歩とみているのではないか。

 特捜部が注目しているのは守屋前次官との関係である。200回以上にも上るゴルフ接待は尋常ではない。守屋前次官は偽名を使ってプレーしたことも認めている。さらに賭けゴルフや賭けマージャンをし、接待旅行も受けていた。「自衛隊員倫理規程」違反が異常なほどに繰り返されていたわけだ。

 その灰色の関係から生みだされたものは何か。そこが今後の捜査の焦点となろう。

 つまり接待への「見返り」の可能性である。守屋前次官が公務に絡んで宮崎容疑者側が有利となるよう働き掛けをしなかったのかどうか。その延長線上にあるのは贈収賄容疑であり、特捜部は同容疑での立件も検討するとみられている。

 宮崎容疑者は昨年9月に、新しい防衛商社「日本ミライズ」を設立した。同社は、航空自衛隊の次期輸送機(CX)に搭載する予定だった米国メーカー製エンジンの販売代理権を今年7月末までに獲得した。同エンジンに関して、事務次官在任中の守屋氏が日本ミライズと「随意契約できないか」と部下に口出ししたことが関係者の証言で分かっている。

 親密な関係を越えた宮崎容疑者と守屋前次官との癒着。CX搭載予定のエンジン契約に関する口出し。守屋前次官は便宜供与を否定しているが、常識を超えた両者の関係からすれば、疑惑を持たれるのは自然の流れではないだろうか。

 宮崎容疑者と政治家との関係も表に出てきた。守屋前次官の接待の場に、防衛庁長官経験者が同席していたことを、10月29日に行われた証人喚問で前次官が認めたのだ。癒着の疑惑は、政界にまで広がりかねない様相を見せている。

 宮崎容疑者が着服したとされる1億1700万円はどこへ、どのように流れたのか。倫理規程に違反するゴルフ接待がなぜ、10年余りも続けられてきたのか。防衛商社と政官界は果たしてどこまで結びついているのか。

 特捜部は九日、日本ミライズの本社などを家宅捜索した。防衛利権に絡む不正は、どろどろと底なしのように広がっているように見える。宮崎容疑者逮捕を機に官業癒着に鋭く切り込み、徹底的に解明してほしい。

(11/10 12:35)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28833-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

墜落ヘリの再配備 「普天間」の県外撤去を

 米軍の無神経さにはあきれるほかない。彼らにとって、沖縄はいまだ植民地、との感覚でしかないのだろう。「良き隣人」などとは、どう考えて噴飯ものだ。やはり、基地の県外移転、地位協定の改定。これが必要だ。そのことを、県民に再認識させる、反面教師としての役割を、あらためて見せつけてくれた。

 米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリコプターが、沖縄国際大学に墜落したのは2004年8月。県警は現場検証もできず、乗組員の責任、事故原因も追及できなかった。結局、県警は今年の8月、整備兵4人を氏名不詳のまま書類送検。那覇地検が不起訴処分にしている。果たして、これが独立国家での出来事なのかという屈辱と恐怖を多くの県民が味わったことだろう。いまだ記憶に新しい。

 ところが、事故同型機が、普天間飛行場に、再び常駐化される可能性がでてきた。在沖海兵隊報道部によると合計10機のヘリと兵員約150人が、来年1月までに同飛行場に配備され、訓練飛行するという。具体的な駐留期間は不明だが、常駐化で同型機の訓練飛行が恒常化する、と専門家は指摘する。ヘリは岩国基地(山口県)所属だが、「形式的に岩国に所属させ、実態は普天間に置きたいのではないか」とも言う。

 同型機は墜落から1年半後の05年12月までにE型と入れ替わり、同飛行場から姿を消していた。事故のほとぼりも冷めたと考えたのか、2年ぶりに舞い戻ってきたことになる。

 伊波洋一宜野湾市長は「再び市民の上空を飛ぶのは許されない。絶対に反対」と抗議するが、当然だろう。仲井真弘多知事も「感覚的におかしい。戻ってくるべきではない」と述べる。「(普天間の)3年内の閉鎖状態」との公約を掲げる知事にとっても、今回の動きは閉鎖状態どころか、逆に基地の強化につながるものだ。到底認められないだろう。

 現場から県警など沖縄側を完全に閉め出して、米軍の捜査当局が出した事故報告書は「整備兵がヘリ尾部の接続器具コッター・ピンの装着を忘れたのが事故原因」と結論付けた。しかし、同ヘリは開発から40年以上もたつ。老朽化も指摘されており、単なる装着忘れが原因、とは納得できない。構造的な欠陥を疑うのが自然だ。

 県民は、米軍の一方的な事故報告で決着、とはみていない。ヘリの再配備は、事故再発への不安をいっそうかきたてるだけだ。

 日米地位協定上、第1次裁判権は米側にある。米軍はそう主張する。ならば、やはり地位協定の改定が不可欠だろう。さらに危険なヘリはどこであれ県内への配備は認められない。普天間飛行場とともに県外にもっていくしかない。

(11/11 10:55)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28854-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月4日から7日)

2007年11月4日(日) 朝刊 1面

北部振興策 再開へ意欲/岸田沖縄相来県

普天間移設 議論継続を強調

 【本部】岸田文雄沖縄担当相は三日、凍結状態となっている本年度北部振興策について「早期に予算執行できるようにしたい」と、振興策の凍結解除に尽力する考えを示した。就任後二度目の来県で本部町の海洋博記念公園などを視察した後、記者団に述べた。七日に開かれる普天間飛行場の移設協議会については「お互いの意見を交換し、今後も継続していくことが大事だ」と強調した。

 北部振興策について岸田沖縄相は「関係者のさまざまな意見交換や意思疎通を積み重ねることによって、関係省庁にも検討してもらい、予算執行にこぎつけたい」と述べた。しかし、凍結解除の時期については「明確にどの時期からというのではないが、できるだけ早く執行しなければいけないと認識している」と述べるにとどまった。

 仲井真弘多知事や島袋吉和名護市長らが求める、代替施設の沖合移動については「協議会の場で、県や名護市の意見をしっかり述べていただきたい」として、解決に向けて率直に話し合うことの重要性を説いた。

 また、福田康夫首相が小沢一郎民主党代表との党首会談で連立を持ち掛けたことについては「連立は拒否されたが、いろいろ意見交換されたと聞いている。一つでも具体的な成果につながることがあれば、会談も意味があったと思う」と述べ、事態の推移を注視する姿勢を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711041300_01.html

 

2007年11月4日(日) 朝刊 25面

藻場のくい 実際は短い8センチくぎ/ジュゴン誤飲の恐れも

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、沖縄防衛局が天然記念物ジュゴンの餌場となる藻場に設置した目印用の鉄くいを「六十―八十センチの鉄製の棒」と説明していたが、実際には八センチのくぎが使われていたことが三日までに分かった。自然環境保護団体は「外れやすく、ジュゴンが誤飲してしまう危険性がある」と批判している。

 「北限のジュゴンを見守る会」(鈴木雅子代表)のメンバーが、移設先周辺の名護市東海岸を調査して明らかになった。

 メンバーが一部海域を調査したところ、軽く触れただけで動いたり、外れたりする目印を確認。八センチのくぎにビニールテープでロープを固定したものや十センチのくぎも複数確認された。

 藻場には、百カ所前後の目印が設置されているが、少なくとも十―二十カ所以上がこうした短いくぎを使用しているとみられる。

 体重が平均で二、三百キロ以上あるジュゴンは、一気に口で海草を根元から掘り起こし、食べながら前進する。調査に参加したジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎事務局次長は「打ち上げられたジュゴンの体内から釣り糸が見つかった例もある。餌場に不安定な八センチから十センチのくぎとロープがあると、飲み込んだ場合、命にかかわる。絶滅が心配されるジュゴンの調査としては、あまりにもずさんだ」と批判した。

 同調査は環境影響評価の対象外とされている。あらためて沖縄防衛局の調査手法や業者への監督責任が問われそうだ。

 同局はこれまでの取材に対し、「自然環境に十分配慮している」とし、「できるだけ鉄筋が海中に出ないよう海底面に打ち込んでいる」と説明していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711041300_06.html

 

2007年11月4日(日) 朝刊 2面 

決裂なら21日スト/全駐労

 在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の特別協定協議で、日本側が日本人従業員の諸手当約百億円の削減を提案している問題で、撤回を求めて防衛省と団体交渉をしている全駐留軍労働組合(全駐労、山川一夫委員長)は三日、東京都内で中央委員会を開き、次回十六日の交渉が決裂した場合、二十一日にも四時間の時限ストライキを決行する方針を確認した。

 山川委員長は「提案は生活破壊につながるもので、受け入れられない。労働者として正当な闘争行動に、不退転の決意で臨む」と、全国各地区本部から集まった約百人に決起を促した。

 防衛省は、二日の団交で国家公務員の基本給に10%上乗せしている「格差給」の廃止などをあらためて提案してきたが、全駐労は拒否した。一九九一年以来、十六年ぶりとなる全国的なストは避けられない情勢だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711041300_08.html

 

琉球新報 社説

「連立」提案 党利党略の政治はやめよ

 「談合」あるいは「野合」と非難されても仕方がなかろう。福田康夫首相(自民党総裁)が2日、民主党の小沢一郎代表との党首会談で、政策実現のため連立政権樹立に向けた協議開始を提案した。これに対し、小沢代表は回答を保留。役員会で検討した結果、拒否した。

 いくら自民党が政権運営で行き詰まりを見せていたとはいえ、提案はあまりに唐突だ。政権維持こそが最優先と見られかねない姿勢に、国民の理解は得られまい。小沢代表の対応にも疑問が残る。なぜ、提案を即座に拒否できなかったのか。先の参院選でも「選挙による政権交代」を掲げてきただけに、その態度には一貫性を欠く。「政権にいたいだけなのか」との指摘も避けられまい。

 海上自衛隊の給油活動を継続する新テロ対策特別措置法案をはじめ、衆参で与野党の多数が異なる「ねじれ国会」では、多くの法案の成立のめどが立っていない。事実、福田政権となってから約1カ月の臨時国会で、一つの法案も成立していない。首相としては、民主党を政権に取り込むことで、このような事態を打開したい、との思惑があったのだろう。

 しかし、それは筋道が違う。もし、政策が実現できず、政権の維持が難しいというのであれば、総辞職するか、衆院解散・総選挙で国民の信を問うのが筋だ。それが「憲政の常道」というものだ。

 もちろん、国民生活に対する大きな支障を回避するため、与野党が協議を重ねることは必要なことだ。だが、その過程を飛び越して、いきなり連立政権の樹立、とは唐突に過ぎる。自らの協議能力を否定するようなものだ。

 そもそも、先の参院選で民主党が第1党になったことを、どう説明するのだろうか。選挙の「民意」は「政権交代が可能な2大政党制の実現」ではなかったのか。そうであるなら、今回の行為はこの国民の意思に反し、大政翼賛会の実現を目指すもの、と批判されてもしょうがない。

 共同通信社が10月末に実施した世論調査によると、「民主党中心の政権」を望む声が42・4%と、「自民党中心の政権」の39・8%を上回った。国民は政党の離合集散ではなく、政権を任せられる政党を求めているのだ。

 民主党もこの事実をあらためて認識すべきだ。安易に政権にすりよるべきではない。先の参院選で「自公政権の打倒」「政権交代で議会制民主主義の定着」を訴えて国民の共感を得たことを、いま一度思い起こしてほしい。

 政党、政治不信がなぜ、やまないのか。国民の意をくまない、党利党略に過ぎる政治に要因はないのか。国民の目線に沿った政治がなにより求められている。

(11/4 10:01)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28651-storytopic-11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月4日朝刊)

[普天間爆音訴訟]

司法は被害救済を急げ

 米軍普天間飛行場の周辺住民四百人余りが、ヘリコプターなど航空機の夜間飛行差し止めなどを求めた普天間爆音訴訟が那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で事実上、結審した。

 司法は、国内の米軍基地をめぐる騒音訴訟で一定レベルの騒音について違法性を指摘するが航空機などの飛行差し止めは認めていない。政府に米軍の活動を制限する権限はなく、飛行差し止め請求は成り立たないとする「第三者行為論」を根拠に、住民の訴えをことごとく退けてきた。

 騒音の違法性を指摘しながら、違法な騒音をまきちらす米軍機の飛行は黙認するという分かりづらい構図だ。結果、基地周辺住民の騒音被害は続いている。米軍の活動を制限する権限のない政府に、住民の被害救済を求めても問題が解決しないのである。

 裁判所は、難解な法理論を展開する前にまず基地被害の実態に目を向けるべきだろう。

 普天間飛行場を離着陸する米軍ヘリは騒音に加え、波長が長く人間の耳に聞こえにくい低周波音を発生させている。低周波音の被害は頭痛などの症状となり、不眠、圧迫感などさまざまな影響を及ぼす。

 原告住民の証言によると「ヘリコプターが家の上を飛ぶとき、体も心も押しつぶされそうになる。音が壁になって上から押さえ込まれる感じになる」という。

 被告の国は、低周波音が人体に及ぼす影響については認めているが「その影響が低周波によるものか否かの見極めが大切で、方法論が確立しているとは言い難い」などと主張。住民の被害についても個別的には立証されていない、と反論している。

 同訴訟で、那覇地裁沖縄支部は同飛行場周辺を現場検証した。短時間とはいえ、米軍ヘリが発する騒音を聴き、低周波音を直接、体に感じたはずだ。

 違法な騒音を出し続ける基地と、騒音に苦しむ人々が見捨てられるようなことがあってはならない。司法は住民の被害救済を優先すべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071104.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月4日朝刊)

[党首会談]

大連立は民意にそむく

 参院選での与野党逆転は、福田康夫首相の政権運営を厳しい局面に追い込んでいる。衆参両院の第一党が異なる「ねじれ国会」がもたらした効果はかくも絶大であり、自民、民主両党に国民の厳しい目が向けられている。

 福田首相と民主党の小沢一郎代表の党首会談で、第一党と第二党による「大連立構想」が飛び出した。

 しかし、大連立構想は論理が飛躍しており、違和感を抱かざるを得ない。最大の問題点は、参院選の民意をないがしろにしてしまうことだ。

 党首会談で福田首相は連立政権樹立へ向け協議することを提案した。小沢氏は回答を留保したが、党役員会は国民の理解を得られないと拒否した。

 民主党が拒否するのは当然だろう。なぜ即座に拒否しなかったのか、疑問がわく。小沢氏が大連立に前向きだったとすれば従来の言動とは矛盾する。

 福田首相は会談で新テロ対策特別措置法案の成立に協力を求めたが、小沢氏は憲法違反で認められないと反論。自衛隊海外派遣を随時可能にする「恒久法」の必要性を訴え、民主党の主張を取り入れて検討するなら、新テロ対策法成立に協力する考えを伝えた。

 民主党は政権公約「マニフェスト」を発表し、政権交代可能な二大政党の実現を主張してきた。参院選では「国民の生活が第一」と訴え、有権者の支持を集めたことを忘れたのか。

 大連立は自民党政権の延命、民主党の崩壊にもつながりかねない。もろ刃の剣であることに気付かなかったとすれば、小沢氏の指導力が問われよう。

 福田首相は会談後、「今の国会、政治状況を打開するため、政策を実現するための新体制をつくることもいいのではないかと話した」と語った。

 手詰まり状態に陥った首相の危機感の表れだろう。与野党で調整しなければ法案が一本も成立しない可能性もある。民主党に協力を求めるしかない。

 自公政権は衆院で三分の二以上の絶対多数を確保しているが、衆院での再議決にも限界がある。しかし、党首会談を経たことで、新テロ対策法成立へ向け衆院の再議決という強硬手段を取る可能性が高まったともいえる。

 自民、民主両党は表舞台である国会論戦でそれぞれの政策を訴え、対立軸を明らかにしていくことが先決である。その上で、政策面の一致点を見いだしていく努力も求められる。

 ねじれ国会の下での新たな国会運営の在り方について、双方とももっと知恵を絞っていくべきだ。党利党略では有権者に見透かされる。事態の打開が困難になれば、衆院解散・総選挙で国民に信を問うしかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071104.html#no_1

 

2007年11月5日(月) 朝刊 2面

移設協議進展に期待/岸田沖縄相

北部振興策「意思疎通を」

 岸田文雄沖縄担当相は四日午後、那覇市内のホテルで帰任会見した。七日に再開される米軍普天間飛行場の移設協議会について「関係者の皆さまに忌憚のない意見交換をしていただける環境づくりに努力してきたので、実りある協議会にしたい。さらなる議論の成果につなげなければいけない」と述べ、協議進展に期待感を表明した。

 凍結状態になっている本年度の北部振興策については「移設協など、さまざまな場を活用して関係者が意思疎通を図っていただくことが(早期の)予算執行につながる」との認識を示した。

 教科書会社から文部科学省に訂正申請が出ている高校歴史教科書の検定問題については、所管していないため具体的に言えないと前置きした上で、「地元沖縄の皆さま方と思いを共有し、理解を深めることは大変重要で、文科省が丁寧に対応することを期待している」と述べるにとどめた。

 文科省が実施した全国学力テストで、沖縄県が最下位となったことに「一般論で言うなら、教育分野における一つの調査結果ではないかと思う」との認識を示した。今後の対応は県が検討しているだろうとし、沖縄担当相の立場でできることは支援する考えを示した。

 岸田沖縄相は同日、名護市キャンプ・シュワブの普天間飛行場代替施設建設予定地などを視察した。


「理解される調査を」

ジュゴン藻場調査で沖縄相


 【名護】岸田文雄沖縄担当相は四日、米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う名護市キャンプ・シュワブの海域調査で、沖縄防衛局が実施するジュゴンの藻場調査が自然保護団体から危険だと指摘されている問題について、「多くの皆さんに理解してもらえるよう、調査が適切に進められなければいけないと思う」と述べた。視察後、記者団の取材に答えた。

 また、「大変素晴らしい自然環境があるとあらためて感じた。海の青さ、自然環境の一端も見ることができた。課題(移設問題)を解決する上で、頭に入れておかなければいけない要素だ」と語った。


忌憚ない意見 言える環境に

沖縄相が知事に


 岸田文雄沖縄相は四日午後、那覇市内で仲井真弘多知事と会談し、七日に再開される米軍普天間飛行場の移設協議会などをめぐって意見を交わした。岸田沖縄相によると、「(協議会では)忌憚のない意見を言える環境づくりに努力したい」と協力を求めたのに対し、仲井真知事も「努力したい」と応じたという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711051300_05.html

 

琉球新報 社説

パキスタン戒厳令 民主化に逆行する愚挙

 主権在民を何と心得るのだろうか。パキスタンのムシャラフ大統領が3日、非常事態を宣言、現行憲法を停止して暫定憲法命令を発令した。事実上の戒厳令で、国民の基本的権利停止などが盛り込まれている。

 ムシャラフ氏はテレビ演説で理由を説明し、テロや過激派の脅威で「行動を起こさなければ統合が保たれなくなる」として、国民に理解を求めた。非常事態宣言を正当化する内容だ。

 確かに、自爆テロなど治安悪化の情勢はある。発端は首都イスラマバードで今夏起きた神学生らのモスク(イスラム教礼拝所)立てこもり事件だ。治安部隊が強行突入し、100人以上が死亡した。

 その後、イスラム過激派による軍や治安部隊への報復攻撃が続発し、武装勢力が兵士200人以上を人質に取った事件も、解決のめどが立っていない。しかし、こうした情勢だけをもって、大統領が事実上の戒厳令布告を出す決断に至ったとは思えない。ほかに大きな理由があるとみるべきだろう。

 指摘されているのが、大統領選の出馬資格をめぐる訴訟でムシャラフ氏に不利な判決を出すと予想される最高裁の封じ込めである。実際、政権内には「裁判所の中に政府の政策に反対する者がいる」との不満がくすぶっていた。

 ムシャラフ氏が、非常事態宣言を「権力の座にとどまる唯一の手段」と考えたとすれば、恣意(しい)的な強権発動である。進みつつあった民主化プロセスを止め、逆行させる愚挙と言わざるを得ない。

 問題はまだある。パキスタンが核保有国という点だ。民主化の公約を、あっさりほごにするような政権は危なっかしい。ムシャラフ氏には1999年、当時のシャリフ首相を失脚させ実権を掌握した「クーデター」歴もある。

 あれから8年。今回の非常事態宣言も、兼務する陸軍参謀長名で出された。軍のトップであれば、何をしても構わないというスタンスは危険極まりない。

 国民を失望させれば、反政府運動が活発化しよう。民主化しか政権維持の道はないことを、ムシャラフ政権は知るべきだ。

(11/5 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28678-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

小沢代表辞任表明 「政治は生活」の看板が泣く

 福田康夫首相(自民党総裁)との二度目の党首会談から2日。民主党の小沢一郎代表が緊急記者会見し、代表辞任の意向を表明した。首相から提案された連立政権樹立に向けた政策協議を、持ち帰った党役員会で否定され、政治的混乱が生じたことへの「けじめ」だという。

 どんなに失態を演じても、責任を取ろうとしない政治家が多い時代に潔いとの見方もあろうが、こと今回の件に関しては、不可解としか言いようがない。

 党内の混乱を反省するなら、まずは説明を尽くし、混乱の収拾に努めるのが党首の役目だろう。それもせずに辞めては、混乱に拍車を掛けるだけではないのか。所信表明直後に突然辞任した安倍晋三前首相と何ら変わりがない。

 小沢氏は、自由党党首だった1998年に自民党と連立合意し、「以前から考え方が合えば、どことでも協力すると言っていた」と話したことがある。しかしその後、連立を離脱し、2003年に民主党と合併した際には「総選挙に勝たないといかん、その一点だ」と方針を転換。06年4月の民主代表選では、党内に自身の政治手法への懸念があることを念頭に「まず私自身が変わらなければならない」と言明していた。

 その一つが代表選を戦った菅直人氏を代表代行に、鳩山由紀夫氏を幹事長に据えて挙党態勢を印象付けたことだろう。かつての「剛腕」「独断」は影を潜め、今年7月の参院選では「国民の生活が第一」と訴えて躍進、参院での野党による過半数を実現させた。

 “変身”ぶりは8月上旬、シーファー駐日米大使との会談で際立った。インド洋で海上自衛隊が米艦船などに給油活動するためのテロ対策特別措置法の期限切れが近いことを踏まえ、大使が延長に同意するよう求めたのに対し、小沢氏は「米国中心の活動は国連安保理からオーソライズ(承認)されていない」と突っぱねた。会談は小沢氏の意向で報道陣に公開され、実に分かりやすかった。

 ところが先月、首相から“密室会談”を持ち掛けられたところから雲行きが怪しくなる。一度は拒否した対テロ特措法案だが、二度目の会談で「連立協議」が持ち出され、ぐらついた。国際貢献の在り方に持論のある小沢氏は、前のめりになり、窮地の自民党に助け舟を出す格好となった。

 辞任表明会見で、小沢氏は「政権の一翼を担い、政権運営の実績を示すことが民主党政権を実現する近道だ」と指摘したが、政権交代を繰り返し訴えてきたことと矛盾する。国民生活を左右する重要課題は、国会で議論を戦わせてこそである。民意に背く安易な政権すり寄りでは「政治は生活」の看板が泣くというものだ。

(11/5 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28679-storytopic-11.html

 

2007年11月5日(月) 夕刊 5面

読谷議会が落下傘抗議/訓練の中止を要求

 【読谷】読谷村議会(前田善輝議長)は五日午前、臨時会を開き、嘉手納基地内に住む米軍人の息子による強姦致傷事件と同基地の即応訓練、爆音激化、パラシュート降下訓練、F15戦闘機などの未明離陸についての抗議決議と意見書の計六議案を全会一致で可決した。

 パラシュート降下訓練に対する抗議決議、意見書は同基地での訓練の恒常化を懸念、「基地周辺は住宅街や交通量も多いことから事故を誘発することも予測され、断じて容認できない」と指摘。

 十月三十日に実施された未明離陸については「周辺住民の安眠は妨げられ、平穏な日常生活は完全に破壊されている」と訴えている。

 同基地でのパラシュート降下訓練、未明離陸、即応訓練については今後、一切行わないよう求めている。

 嘉手納基地内に住む米軍人の息子による強姦致傷事件については、被害者への謝罪や補償、再発防止を徹底するよう要求している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711051700_03.html

 

2007年11月5日(月) 夕刊 4面

学童疎開の映像に大賞/県平和資料館制作 映文連アワード

 県平和祈念資料館が二〇〇五年に戦後六十周年記念事業の一環で疎開学童らの証言を映像にまとめた作品「やーさん ひーさん しからーさん」がこのほど、映像文化製作者連盟主催の映像作品コンクール「映文連アワード2007」で応募総数百三十七点の中からグランプリに選ばれた。同館で四日、受賞報告と作品の上映があり、関係者らが喜びを語り、平和な世の中を願った。

 作品は四十一分のドキュメンタリー。九州などへ疎開した学童や引率教諭などの証言を集め、「やーさん(ひもじい) ひーさん(寒い) しからーさん(さみしい)」という体験者の心情を明らかにし、「もう一つの戦争と呼ばれた疎開」の実態を浮かび上がらせている。

 あいさつで、宮城智子館長は「作品は疎開の厳しさが象徴的に表現され、映像としても説得力がある」とたたえた。制作を担当したシネマ沖縄の吉田尚子さんは「たくさんの平和に対する熱い思いが結集し、受賞に結び付いたと確信している。この賞を励みに今後も映像を通し、後世に真実を残していけるよう頑張りたい」と語った。

 出演した元学童らは「決して忘れてはならない記憶。特に若い人に見てもらいたい」などと語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711051700_04.html

 

2007年11月6日(火) 朝刊 1・23面

F15構造的欠陥か/米軍、飛行停止措置

空自200機 嘉手納53機も/米国墜落事故受け

 【嘉手納】米ミズーリ州空軍所属のF15戦闘機が今月二日、同州で墜落する事故があり、米軍嘉手納基地報道部は五日、「事故原因が特定されるまで嘉手納基地所属のF15戦闘機の飛行を停止する措置を取った」と発表した。事故原因について米空軍は「航空機に構造上の欠陥が起きた可能性」を指摘している。嘉手納基地周辺自治体の首長らは「F15は欠陥機であり、即時撤去するべきだ」と反発しており、六日にも米側への申し入れなど対応を検討する。この事故を受け、航空自衛隊のF15約二百機も飛行を見合わせていることが五日分かった。

 飛行停止措置は米本土だけでなく、米国外の基地でも取られている。F15は嘉手納基地には五十三機が配備されている。

 米空軍公式ホームページ(HP)は、事故原因について「初期段階の調査は、航空機に構造上の欠陥が起きた可能性を示している」と指摘したが、具体的な言及はない。

 嘉手納基地報道部は「事故原因のさらなる検査、分析を終えるまで」停止措置は続くと説明。期間は明らかにしていない。

 同基地での停止措置は四日に始まり、仮に戦闘任務が発生した場合は、飛行するという。

 航空自衛隊航空幕僚監部によると、在日米軍から四日午前、F15の飛行停止措置の連絡があった。この後、小松(石川県)、新田原基地(宮崎県)などで飛行を見合わせている。

 防衛省は二〇〇八年度予算概算要求で航空自衛隊那覇基地の旧型主力戦闘機F4部隊(約二十機)と百里基地(茨城県)のF15部隊(約二十機)の入れ替えに約一億九千万円を盛り込み、同年度中の入れ替えを目指している。

 AP通信などによると、墜落したF15は一対一の戦闘訓練を行っていたが、米ミズーリ州ボス近くの森林地帯に墜落した。操縦士一人が緊急脱出したが、腕の骨を折るなどの大けが。近隣の建物や人身への被害はなく、同行した三機は無事に帰還したという。

 嘉手納基地を抱える嘉手納、北谷、沖縄の三自治体には五日、同基地や沖縄防衛局から連絡があった。同飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「三連協でF15は欠陥機と指摘してきたことが証明された。F15は即時撤去するべきで、六日にも何らかの措置を講じるよう事務局に指示したい」と話した。

 嘉手納基地のF15の飛行停止措置に伴い、航空自衛隊小松基地(石川県)で五日から始まる予定だった訓練移転は実施されなかった。小松基地によると訓練移転の日程は「未定」という。

 米空軍は一九七五年にF15を採用し、四百機以上を保有。現在は米本土やアラスカ、ハワイ、英国、中東などにも配備されている。


     ◇     ◇     ◇     

「欠陥機」一斉に反発/住民、即撤去求める


 【中部】「飛行停止でなく、撤去すべきだ」。F15戦闘機が米本国で墜落事故を起こし、嘉手納基地での運用を停止していることが明らかになった五日、周辺の首長や住民らは一斉に反発し、同機の早急撤去を求めた。同基地に配備されているF15戦闘機は過去にも墜落事故などを繰り返し、そのたびに飛行を再開。住宅地上空を飛行している。「いつ事故が起きるか分からない欠陥機が、嘉手納基地に配備されているとは恐ろしい」。住民の不安と不信感は高まっている。

 F15戦闘機の撤去を求めてきた嘉手納町の宮城篤実町長は「事故の頻発具合から、F15には重大な欠陥があるのではと懸念していた。今回の事故で地域住民の不安や不信感は一層高まった。あらためて三連協としてF15の撤去を求めていきたい」と述べた。

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は、墜落した機体がかつて嘉手納基地に所属していた可能性もあると指摘した上で「米軍が国内外に向けて停止措置を講じざるを得ない大きな欠陥が見つかったのではないか」と懸念した。

 滑走路に隣接する同町屋良地区に住む伊波勝雄さん(68)は「住民は以前から欠陥機と指摘していた。F15は普段から未明離陸などで騒音をまき散らしている」と批判。

 北谷町砂辺区の松田正二区長は「運用停止ということは、墜落の恐れがあるということだ。そんな飛行機が嘉手納基地に配備されているのなら恐ろしいことだ」、沖縄市知花の田島清信自治会長も「F15は騒音もひどいが、過去にエンジンの一部が落ちた事故もあった。いつ飛行再開されるか心配だ」と不安を語った。


飛行停止は重大 根本的に問題か


 航空評論家青木謙知さんの話 米本土の事故で嘉手納基地のF15にも飛行停止を命じるとは重大だ。通常発生するようなトラブルと異なり、F15の根本にかかわる問題があったのではないか。戦闘訓練中の墜落であれば目撃した操縦士が証言でき、どのような問題が発生したか米軍は分かるはずだ。航空機の安全確保は重要で、飛行停止は必要な措置だろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061300_01.html

 

2007年11月6日(火) 朝刊 2・23面

社「軍の強制」明記/教科書検定

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、検定意見が付された五社七冊の訂正申請が六日にも出そろうことが五日、分かった。また、同日夜に東京都内で開かれた「社会科教科書執筆者懇談会」の第三回会合に、五社のうち山川出版を除く四社六冊の執筆者や編集担当者約二十人が出席し、訂正申請時の記述に各社が日本軍の強制性を明記しているとの認識で一致した。

 東京書籍、実教出版、清水書院、山川出版の四社は今月一、二日に申請を終えており、最後に残った三省堂も六日に申請する見通しだ。

 申請理由には五社とも、教科用図書検定規則十三条二項の「学習を進める上に支障となる記載」を挙げているもようだ。

 執筆者懇談会の会合では、今まで訂正申請時の記述が明らかになっていなかった二社の執筆者が、内容を説明した。

 このうち、日本史A・Bの二冊に検定意見が付いた会社の執筆者は、執筆者同士が合意した案として「『集団自決』は自発的な死ではなく、日本軍が強いたという趣旨が分かる記述になっている」と述べた。「集団自決」以外にも、近現代史で沖縄や北海道に本土からの差別や偏見があったことに関する記述を増加。「集団自決」関連の訂正だけが突出しないよう配慮したという。

 申請に際して会社側から記述を変更する説明がないため、「(案段階から)記述は変わっていないと思う」としている。

 もう一社の執筆者は、「集団自決」関連の写真説明文を検定前より具体的で詳細な記述に改め、巻末の年表にも教科書検定問題を明記する方向を明らかにした。

 会合では、執筆者が七日に文部科学省などで記者会見し、懇談会としての見解を声明の形で発表することを確認。県内に訂正申請だけでなく、あくまで検定意見の撤回を求める声が強いとの認識に立ち、今後の課題や取り組みを表明する。


     ◇     ◇     ◇     

沖縄条項 新設要請/高嶋教授ら、検定撤回も


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、高嶋伸欣琉球大教授、赤嶺政賢衆院議員(共産)らが五日、文部科学省に初等中等教育局教科書課の松木秀彰課長補佐を訪ね、検定意見の撤回や沖縄条項の新設などを要請した。

 高嶋教授によると、松木課長補佐は検定意見撤回については「上司に伝える」と述べるにとどめた。沖縄条項については「広島、長崎(への原爆投下)、東京(大空襲)の例もあり、(沖縄だけの条項をつくるのは)なかなか難しい」と難色を示したという。

 高嶋教授は、同省の布村幸彦大臣官房審議官が十月三十日の参院内閣委員会で、教科書検定意見について「手続き的に撤回ということはない」と述べたことを問題視。

 「検定規則に撤回を盛り込んでこなかった不作為の責任が文科省にあるのではないか」と指摘したが、松木課長補佐から回答はなかったという。

 要請では高嶋教授と山口剛史琉球大准教授が個人名で検定意見撤回を求めた要請書と、「沖縄戦首都圏の会」など三団体名の要請書の二種類を提出した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061300_02.html

 

2007年11月6日(火) 朝刊 2面

基地割合1位 所得最下位/「100の指標からみた沖縄県」

 県企画部は、「100の指標からみた沖縄県のすがた」の二〇〇七年度改訂版をこのほど発刊した。経済や社会、教育、福祉、財政など十一分野における全国ランキングを示した。県土に占める米軍基地・施設面積の割合は断トツの一位。一方で、一人当たりの県民所得は依然として最下位、現金給与総額(常用労働者)も最も低い。年間の収入に対する負債比率も全国一で、家計の厳しい状況が浮き彫りになった。一九八六年の発刊から、おおむね三年ごとに改訂し、今回が七回目。全百六十六項目のうち、全国一位が十七、四十七位が三十一項目あった。

人口


 人口増加率(自然増加率+社会増加率)は三位と高く、出生率の高さから自然増加率はトップ。社会増加率は三位だった。年少人口(〇―十四歳)も全国最高で、全国的な人口減少傾向とは逆に、社会活性力が高いのが特徴といえる。


労働


 完全失業率が7%台で全国一で、有効求人倍率は四十六位。高校・大学の新規学卒者の無業者(就職・進学もしない)比率はともに一位だった。新規卒業者の初任給は、高校・大学の男女ともに全国で最も低く、雇用・労働情勢の厳しさが裏付けられる。月間総実労働時間は、男性が前回の四位から三十二位に、女性も二位から十四位と下がり、長時間労働の傾向は改善された。


産業・経済


 開業・廃業率がともに全国一。小規模零細企業が多数を占める県内の状況を反映している。製造業出荷額は最下位に転落した。第三次産業の割合は全国二位。一方で第二次産業は四十七位と、観光などのサービス産業中心の構造となっている。


財政


 県の自主財源の割合は約27%で、最下位から脱して四十五位。ただ、県と市町村分を合わせた地方税(一人当たり)は約十五万四千円で四十七位で、財政基盤の脆弱さが目立つ。


その他


 高齢化の動向を把握するため、今回新たに単独世帯割合の項目が設けられた。全国十八位と全国平均より若干低い。「高齢化の度合いは全国に比べて低いものの着実に進展している」(企画部)状況となっている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061300_03.html

 

2007年11月6日(火) 朝刊 23面

山の景観台無し」/シュワブで野焼き実施

 【名護】名護市の米軍キャンプ・シュワブの久志岳ふもとの「レンジ10」付近で、米海兵隊が不発弾処理のために“野焼き”することについて沖縄防衛局は五日、沖縄タイムス社の取材に対し「過去にシュワブで野焼きが行われたとは承知していない」と回答、同演習場で初めて行われる可能性が高いことを認めた。

 久志区の森山憲一さん(65)は「十月末にも爆弾がさく裂し頂上近くまで燃える着弾があった。迫撃砲や爆破訓練などこれまで以上の訓練が行われている可能性がある」と訓練強化との関連を指摘。「地元では『久志富士』と呼ばれるほど美しい山の景観が台無しになる上、山の保水力が下がり赤土被害も増える」と環境への悪影響を心配する。訓練内容について同局は、「米軍の運用にかかわる事であり承知していない」と説明している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061300_08.html

 

2007年11月6日(火) 夕刊 1面

嘉手納53機 撤去要求/F15飛行停止

 【中部】米本国での墜落事故を受け、嘉手納基地のF15戦闘機が飛行を停止していることについて嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は六日午前、臨時会を開き、同基地所属のF15全五十三機の即時撤去を求める意見書案と抗議決議案を全会一致で可決した。また、同基地を抱える嘉手納、北谷、沖縄の三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は同日午後、北谷町役場で幹事会を開き、F15の即時撤去などを求める方向で協議する。

 嘉手納町議会は六日午前に開いた臨時会で、米軍嘉手納基地に配備されているF15全五十三機を即時撤去するよう求める意見書と抗議決議の両案を全会一致で可決した。

 臨時会は当初、同基地所属のF15など計八機が十月三十日に未明離陸を強行した問題で、抗議決議と意見書を審議する予定だったが、今月二日に米国内でF15が墜落、同基地に配備されているF15が飛行を停止していることが五日、明らかになったことを受け、「欠陥機F15戦闘機を撤去すること」の一文を急きょ盛り込んだ。

 同町議会は後日、同基地など関係機関を訪れ、F15撤去を求めて直接抗議する予定。

 未明離陸に対しては、同基地の騒音防止協定は深夜早朝(午後十時―翌日午前六時)の飛行を制限しているが、米軍は「運用上必要」として「例外規定」を盾に未明離陸を繰り返しており、協定そのものが形化している実態を指摘。骸 「例外規定」廃止のため、地元自治体、県、県議会、県選出国会議員の連携の必要性を強調。「同協定の抜本的見直しを働き掛けることが強く求められている」と訴えている。

 日米両政府に対しては深夜早朝飛行の中止に向けた協議を行い、内容を明らかにすることを要求している。


即時撤去要請へ三連協が幹事会/北谷町役場で午後


 三連協は六日午後、北谷町役場で幹事会を開き、嘉手納基地所属の「F15戦闘機の即時撤去」などについて協議する。

 野国昌春会長(北谷町長)は、昨年一月に伊計島沖で起きたF15の墜落事故を挙げ、「沖縄だけでなく、至る所で事故を起こしている欠陥機が、われわれの上空を飛んでいること自体許せない。即時撤去すべきだ」と強調した。


     ◇     ◇     ◇     

領空侵犯F4で代替/那覇から派遣 空自「支障ない」


 【東京】米空軍のF15戦闘機の墜落事故を受け、航空自衛隊は千歳(北海道)、小松(石川県)、百里(茨城県)の各基地で対応する対領空侵犯措置でもF15の飛行を見合わせ、F4戦闘機で対応措置を取っていることが六日、分かった。空自那覇基地から五日、F4八機を百里基地に派遣した。

 航空幕僚監部は事故原因が判明するまでF15の飛行を当面見合わせる方針。対領空侵犯措置に関してはF4戦闘機で対応するとしており、「特に支障はない」と説明した。

 飛行見合わせについて空幕は「自衛隊が使用しているF15は米国からライセンスを取得して生産している。今回は安全を重視し、(墜落事故の)原因が分かるまで飛行を見合わせることにした」としている。

 空幕によると、四日に米軍から「米空軍のF15に不具合があった」との連絡を受け、航空総隊司令官などから各部隊長に飛行を見合わせるように指示したという。

 墜落事故原因についての外務省の照会に対し、駐日米国大使館は「調査中」としているという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061700_01.html

 

2007年11月6日(火) 夕刊 1面

文科相、予算支援前向き/「学テ」最下位

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は六日午前、同省の全国学力テストで最下位となった沖縄県への対応について「県側からも要請を受けており、テスト実施の目的が生かされる支援は当然」と述べ、予算支援を含め学力向上に積極的に取り組む考えを明らかにした。閣議後の会見で答えた。

 仲村守和県教育長が五日、文部科学省を訪ね、学力調査官の派遣や小規模校の教員増、学力改善推進モデル事業への指定などを求めていた。渡海文科相は「すでに富山県の検証改善委員会から要請があり、調査官を派遣している。(沖縄については)具体的な日程調整や詳細を詰めて対応したい」と述べた。

 また、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、教科書会社の訂正申請後の審議について「教科用図書検定調査審議会の開催を求めているが、審議が終わる段階までは静かな審査をお願いしており、結果が出た段階で審議経緯をできるだけ皆さんに説明したい」との認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061700_02.html

 

2007年11月6日(火) 夕刊 1面

クラスター弾訓練 政府「必要」

 【東京】米海兵隊がクラスター爆弾や、ナパーム弾と同様の性能を持つ焼夷弾MK77を使った訓練を沖縄周辺で実施している問題で政府は六日、「使用される爆弾の種類、訓練内容などの詳細は承知していないが、必要な訓練を実施していると認識している」とする答弁書を閣議決定した。照屋寛徳衆院議員(社民)への答弁。

 答弁書は、国連人権委員会の差別防止・少数者保護小委員会が大量破壊兵器や無差別に影響を与える兵器の製造、拡散を制限するよう求めた決議について「各国に法的な義務を課するものではなく、特定の兵器を使用した訓練の制限などを求めるものではない」と指摘。

 その上で、「米軍が沖縄で行う訓練について、同決議との関係で問題があるとは考えていない」との見解も示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061700_06.html

 

2007年11月6日(火) 夕刊 5面

「カメさん」の軌跡 資料・写真細かに

 那覇市長や衆院議員を務め、「カメさん」の愛称で親しまれた故瀬長亀次郎氏(一九〇七―二〇〇一年)の遺品を紹介する資料・写真展が六日、那覇市ぶんかテンブス館で始まった。瀬長さんの生誕百周年を機に実行委員会(代表・田港朝昭琉球大学名誉教授)が主催した。十一日まで。入場無料。

 〇一年十月五日に九十四歳で亡くなるまでの瀬長さんの軌跡をくまなく公開。戦前に医師を志した七高(現鹿児島大学)時代の様子や、数々の書籍に論文を残し著作を執筆したジャーナリスト時代など、民衆運動の象徴的存在だった瀬長さんの違った一面も見ることができる。

 開場を前にオープニングセレモニーが開かれ、村山純日本共産党県委員会委員長代理、中村文子一フィート運動の会顧問、小松直幸日本民主青年同盟県委員会委員長がテープカット。

 瀬長さんの遺品を保管・管理する二女の内村千尋さん(62)は「多くの人が来場しうれしい。『カメさんを語る会』の企画も用意しており、今まで知らなかったエピソードなどを集めたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711061700_07.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 29面 

墜落同型ヘリ普天間に/米、定期配備も示唆

 【宜野湾】二〇〇四年八月に沖縄国際大学に墜落した米海兵隊のCH53D大型輸送ヘリコプターと同型のヘリ二機が六日、宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備された。米海兵隊報道部は、ローテーションの部隊配備計画(UDP)に基づく措置としており、同ヘリを定期的に配備する可能性を示唆している。伊波洋一市長は「製造から四十年近くたつ老朽化したヘリが、市街地上空を飛ぶことは許されない。米軍に直接抗議することも検討している」と反発を強めている。

 CH53D二機は六日午後三時ごろ、米空軍のC5大型輸送機に積み込まれ普天間飛行場に到着した。残る二機は七日に運び込まれる予定。同市には六日、沖縄防衛局から「『普天間』に到着した」との連絡があった。

 米海兵隊報道部は、沖縄タイムス社の取材に対し、同ヘリの配備について「『イラクの自由作戦』の支援のため、UDPを延長する」と回答。同ヘリがローテーションで配備される可能性を示唆している。

 四機はすべて米海兵隊岩国基地(山口県)の所属で「イラクの自由作戦」から帰還した、という。

 ヘリ墜落事故が起きた沖縄国際大学がある宜野湾区の仲村清自治会長は、CH53Dヘリの老朽化にあらためて懸念を示した上で、「事故と同型のヘリ配備に住民の不安は大きい。飛行場に到着するだけでも、心の平安が脅かされる」と不安を口にした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_01.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 1・2面

県、沖合移動を正式要請/普天間協きょう再開

 【東京】米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会が七日午前、約十カ月ぶりに首相官邸で開かれる。県と名護市は「滑走路の沖合移動」を協議会の公式の席で初めて正式要請する。仲井真弘多知事は、環境影響評価(アセスメント)とは別に、政府の自主的な判断で沖合移動することも要請する方針。一方、防衛省は政府案を前提に、アセス手続きを進める考えをあらためて示すとみられる。

 福田政権初の協議会となる今回は、主宰者が防衛相、沖縄担当相の共催から官房長官に格上げされ、沖合移動をめぐる地元との溝を埋められるかが焦点になる。

 仲井真知事は協議会で、沖合移動について(1)事業者の自主的な判断(2)アセス手続きの中での修正―の二段階で実施するよう要請。一方で、移動範囲はキャンプ・シュワブ沖の平島にかからないことなど、大幅移動を求めていないことも明確化し、移設計画が「円滑に進むことを前提に政府と協議」する姿勢を打ち出す。具体的な移動距離は政府が決めることとし、地元からは要望しない方針だ。

 また、飛行ルートが集落上空に差し掛かることや戦闘航空機装弾場の設置など、運用計画に対する地元への説明が不十分な点も指摘する。

 福田康夫首相は六日夕、官邸で記者団に「協議会をきっかけに(移設への)沖縄の理解が進み、われわれも前進できるように具体的な案が出ればいい」と述べ、地元の理解獲得に全力を挙げる考えを示した。

 町村信孝官房長官も会見で「政府と県、名護市との関係が必ずしも順調ではないが、協議会を何度か開くことでアセスが順調に進み、本格着工がスムーズにできるようにしたい」と強調した。

 また、岸田文雄沖縄担当相は四日に来県した際の記者会見で、凍結状態になっている本年度の北部振興事業の取り扱いについて「移設協など、さまざまな場を活用して関係者が意思疎通を図っていただくことが(早期の)予算執行につながる」との認識を示し、協議会再開が同事業継続にも寄与することを明確にしている。


     ◇     ◇     ◇     

政府配慮引き出し狙う


 米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会が七日、約十カ月ぶりに再開される。県側は「一年近く政府から前向きな回答が得られなかったものを今回、一気に解決できるとは考えていない」(県幹部)と楽観視していない。ただ、主宰者が官房長官に格上げされ、官邸主導となったことで「政治決着」への期待も広がる。「互いにあと半歩近づけばいい」(同)。もともと「日米合意の範囲内」の修正を求めてきた県は沖合への大幅移動は念頭にない。県にとって、実際の移動距離に勝るとも劣らず重要なのは、沖縄側の強い要望が「政府の配慮」を引き出したという形にすることだ。

 「今回は『正常化協議会』だ」(県幹部)。県は七日の協議会を一月以来の交渉停滞を解き、互いの主張に耳を傾ける「キック・オフ」と位置付けている。

 アセス方法書の住民意見概要の送付を受け、仲井真弘多知事は方法書の受け取り保留を解除。知事意見提出に向け、手続きを進める方針を打ち出した。これは県が「アセス前の修正」を事実上断念し、アセス手続きの中で沖合移動を求めていく姿勢への転換と受け止められる。

 アセス手続きで定められた「軽微な修正(変更)」でも、理屈の上では数百メートル単位の移動は可能だ。それでも県が「アセス前」にこだわったのは、「アセス手続きの中での知事意見は法的拘束力を持たず、沖合移動の明確な担保が得られない」(県幹部)からだ。

 法的拘束力のない知事意見で沖合移動を求めても、事業者の国が従う保障はない。むしろ、自然環境に与える負荷を抑制する面から検討するアセスでは、沖合移動は自然環境にマイナスと判断される可能性が高い、との懸念が県にはある。

 「日米合意案がベスト」との立場の政府には、「移動ありき」で議論することへの抵抗は強い。県側にもアセス手続きの中で沖合移動を求める以上、「事業者がアセスを踏まえて決めることを事前に県がやれとは言えない」(同)との認識がある。具体的な移動距離の要請が先行する形になれば、防衛省から「アセス制度を無視するもの」と付け入られることへの警戒もある。

 一方で県は「合理的な科学的データが得られれば、沖合移動を踏まえてもらえるかということは、事前に主張できる」(同)と指摘。しかし、これでは県にとって「担保」にはなり得ない。このため県は、アセスとは別に、政府から沖合移動に前向きな言質を協議会で引き出したい考えだ。

 地元にとっては、なるべく沖合に移動した方が集落への影響は低減されるが、県や名護市が「日米合意の範囲内」で要求している以上、おのずと限界がある。知事は実際にヘリを飛ばして現地で騒音調査を実施するよう求めているが、客観的なデータを基にするとしても、「合格点」の判断は最終的には知事や名護市長の主観に委ねられる。

 政府がアセス手続きとは切り離し、「地元の意向に配慮し、自主的に沖合に移動した(する)」という形式を踏まえることが、容認に向けた「地元の決断」を後押しする展開につながりそうだ。(政経部・渡辺豪)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_02.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 2面

旧軍飛行場用地問題/「団体方式」方針決定

 戦時下に接収された旧軍飛行場用地問題の解決促進を協議する県と市町村の第三回連絡調整会議(主宰・仲里全輝副知事)が六日、県庁で開かれた。同問題解決に向けた今後の方針として、(1)団体方式での解決策(2)条件の整った市町村から先行的に事業実施に取り組む(3)個人補償を求める地主会への団体方式での合意形成の呼び掛け―などを了承した。

 具体的には、本年度中に国に対して、各市町村と地主会から取りまとめた事業案の説明や担当窓口の設置を求める。また、国会議員や県議会議員へ支援を依頼。二〇〇九年度の予算獲得に向け、国との検討を進める。

 仲里副知事は「振興計画もあと四年しか残されていない。国に解決を求めるには、市町村と県が連携して取り組むことが必要。戦後処理の大変重要な問題で、解決のために連携を密にしたい」と述べた。

 会議には那覇、石垣、宮古島の三市、嘉手納町、読谷、伊江両村の六市町村の代表らが出席。嘉手納町の當山宏総務部長は「地主会が個人補償を求めており、『団体方式』で取り組む方針を決めてしまうと個人補償の可能性が閉ざされてしまうのではないか」と指摘した。

 このほか「個人補償を求める地主会に対して、市町村だけでなく、県が積極的に合意形成を図ってほしい」「振計の期限も迫り、先行しているところから取り組むことが必要だ」などの意見が出された。


[解説]

折衝戦略いまだ白紙


 旧軍飛行場用地問題について、県と市町村の連絡調整会議で「団体方式を解決策とする」との方針が固まったことで、遅々として進まなかった同問題が解決に向けてようやくスタートラインについた格好となった。

 同問題は二〇〇二年度にスタートした沖縄振興計画(一一年度終了)で「戦後処理の課題」として初めて位置付けられながら、手付かずの状態が続いていた。

 具体的な解決策が見いだせなかった背景には、個人補償と団体補償を求める地主会の態勢の違いもあるが、行政側と地主会が一緒になった強力な態勢を整えられなかったことも要因に挙げられる。

 県は調査検討委員会が〇四年に提言した「団体補償による早期解決」を基本スタンスとしてきた。だが、同問題に取り組む責任の所在のあいまいさが残ったままだった。

 六日の第三回の調整会議は約三年ぶりに開催。仲里全輝副知事は「振興計画も残り四年で、時間的に厳しい」と繰り返し、市町村の連携と協力を求めた。

 ただ、戦後処理事案としての事業規模や予算措置、仕組みづくりなどはまだ白紙の状況。今後、国への説明や事業案の精査、検討作業に着手する。

 県と市町村の連携は当然ながら、事業案を具体化するためにも、国との折衝への戦略づくりが求められる。戦後処理問題という共通認識を再確認し、解決に向けた実行力が試されている。(政経部・赤嶺由紀子)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_05.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 2面

F15欠陥恐れ/三連協が即時撤去要請

 【中部】米本国での墜落事故を受け、米軍嘉手納基地のすべてのF15戦闘機が飛行を停止している問題で、同基地を抱える沖縄、北谷、嘉手納の三自治体の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は六日、「欠陥機の飛行は基地周辺住民の生命を軽視した基地の運用と言わざるを得ない」などとして、F15の即時撤去を求める要請書を同基地司令官あてに送付した。

 同基地では六日午後五時現在もF15の飛行は確認されておらず、米軍は事故原因や、「構造上の欠陥の可能性」について具体的に明らかにしていない。

 要請書は米本国で墜落した同機種が、県内では一九九四年から現在までに四件の墜落事故を起こしていると指摘。同基地内での緊急着陸の約65%がF15を含む戦闘機であることを踏まえた上で、「(事故のたびに)原因の早急な究明と公表および再発防止を求めてきたが、一向に改善の兆しが見られない」と強く反発。

 F15の構造上の欠陥が疑われる米本国の事故を問題視し、「一歩間違えば嘉手納基地周辺でも同様な事故が発生する可能性は大であり、住民を巻き込む大惨事につながるものである」として即時撤去を求めている。

 三連協は同じ内容の要請書を外務省沖縄事務所、沖縄防衛局へも送付した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_06.html

 

2007年11月7日(水) 朝刊 29面

「集団自決」訴訟/那覇で被告支援集会

 大阪地裁で九日に行われる「集団自決」訴訟の原告と被告の本人尋問を前に、那覇市の教育福祉会館で六日、被告側の支援集会が開かれた。沖縄平和ネットワークの津多則光・沖国大非常勤講師が「梅澤裕・赤松嘉次戦隊長の罪状を追及する」と題して講話し、原告の戦隊長側が「証言や証拠をねつ造している」などと批判した。

 津多さんは、座間味島の戦隊長だった梅澤氏が役場助役(兵事主任)に対し、「死ぬでない」「最後まで生き残って軍とともに戦おう」などと自決を止めたとしていることについて、その場にいた生存者の記録や当時の状況に照らして整合性がつかないと指摘。

 また援護法の適用を受けるために軍命令があったことにしたという原告側の主張について、同法適用の問題を一緒くたに「集団自決」に絡めていると批判。原告側の主張の根拠に疑問を呈した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月7日朝刊)

[F15飛行停止]

構造上の欠陥とは何か

 米空軍の主力戦闘機F15イーグルがまたしても米国内で墜落事故を起こし、米軍嘉手納基地所属の五十三機を含む全機が飛行を停止している。

 米軍の措置にあわせて航空自衛隊も、保有する二百機余の飛行を当分見合わせることを決定。対領空侵犯措置(スクランブル出動)のため、空自那覇基地のF4が百里基地に派遣されるなどその波紋は日本にも及んでいる。

 F15は製造から三十年余が経過し、その老朽化が指摘されている。県内での同機の事故件数は、一九七九年の嘉手納基地配備後、優に百件を超える。

 中でも昨年一月、伊計島の東約七十五キロの洋上で、同基地所属機が墜落したのは記憶に新しい。このほか緊急着陸、不時着、部品落下、空中接触、エンジン火災、車輪パンク、燃料漏れなど枚挙にいとまがない。

 今回、事故原因について米空軍は「航空機に構造上の欠陥が起きた可能性」を指摘しているだけで、詳細は明らかにしていない。だが、それは今に始まったことではない。

 一連の事故について、これまで県民の納得のいく原因の公表がなされたことがあるだろうか。軍事機密を理由に、県民、国民は常に自らの安全に関する情報の外に置かれている。

 今回の米国内での事故後、即座に対応した空自の飛行停止の措置は、F15が抱える構造上の問題の大きさを示しているように思える。事故の原因究明と調査結果の公表なしには、住民の不安を解消することができない。

 事故を受けて嘉手納町議会は六日、急きょF15の全機即時撤去を求める意見書と抗議決議を採択した。また沖縄、北谷、嘉手納三市町首長による「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)も同日幹事会を開き、即時撤去の要請行動を決めた。

 米軍の言う「構造上の欠陥」とはいったい何なのか。果たして今回も住民を無視したまま、うやむやにされるのだろうか。まず国は事故原因と対策について詳細な情報を入手し、国民に知らせるべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071107.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月7日朝刊)

[党首会談の怪]

国民への説明が不十分だ

 民主党は、辞任表明した小沢一郎代表について、自民党との連立はしないという条件付きで慰留する方針を確認した。

 「小沢氏続投」を党内の一致した見解にまとめ上げ、小沢氏に翻意を促し辞任騒動の早期収拾を図りたいという狙いだろう。

 鳩山由紀夫幹事長らが五日、小沢氏に代表辞任を撤回するよう要請したのに対し、小沢氏は当初、回答を留保。夜になって党三役が再度慰留したところ小沢氏は辞意を撤回する考えを明らかにした。

 今回の辞任劇の背景に何があったのか、不明な点があまりにも多い。党首会談の真相はやぶの中で、どんなやりとりがあったのかを説明すべきだ。

 最も解せないのは、福田康夫首相と小沢代表の言い分が大幅に食い違っていることである。

 小沢氏は辞任表明で、福田首相が(1)国際平和協力に関する自衛隊の海外派遣は、国連安全保障理事会か国連総会の決議によって認められた国連の活動への参加に限る(2)自民、民主両党の連立が成立するなら、新テロ対策特別措置法案の成立にはこだわらない―と述べたと説明した。

 しかし、首相は自衛隊の海外派遣について「国連決議が出て、何でもかんでもやるかはよく詰めなければならない」とし、検討すべき課題が多いとの認識を示している。

 対テロ新法案については「給油活動は国際協力の一環としてぜひやりたいと一貫して考えている」と、小沢氏の言い分を全面的に否定した。

 連立に絡む問題で、双方の認識がここまですれ違うことがあり得るのか。

 「大連立構想」をどちらが最初に持ち掛けたのかという点も説明が違う。

 小沢氏は「わたしが持ち掛けたとか『小沢首謀説』までが報道されている。まったくの事実無根だ」と述べ、首相が持ち掛けたとの認識を強調した。

 これに対し、首相は「あうんの呼吸という感じではないか」と述べ、町村信孝官房長官によると、小沢氏から持ち掛けたと言いたげな説明である。

 大騒動の割には原因が釈然としない。双方が都合よく解釈した「同床異夢だった」では説明になっていない。

 両党の連立は極めて重要な問題であり、国民に見える形での議論が前提になる。いやしくも衆院第一党、参院第一党の党首が二度にわたって突っ込んだ話し合いをしたのである。国民への説明責任をきちんと果たすべきだ。

 国民不在の密室会談は有権者への背信行為ではないか。肝心の中身をうやむやにしたまま放置することはできない。このままでは国民は納得しない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071107.html#no_1

 

琉球新報 社説

F15飛行停止 欠陥あるのか徹底究明を

 米国でF15C戦闘機の墜落事故が発生したことを受け、米空軍は嘉手納基地所属のすべてのF15戦闘機の飛行を実戦任務を除き停止した。機体の構造的な故障が墜落の原因となった可能性があるためだ。

 構造上の欠陥を抱えているかもしれない戦闘機が、長年にわたって嘉手納基地から飛行を繰り返していたと考えると背筋が寒くなる。

 欠陥機である可能性が少しでも残っている間は、飛行停止措置を継続すべきだ。

 事故は2日に発生。操縦士1人が乗った米ミズーリ州空軍州兵部隊所属機が民有地の森林地帯に墜落した。パイロットは脱出したものの重傷という。

 構造的な故障の可能性は初期段階の検査で指摘されていた。米軍が飛行停止を命じるほどだからただごとではない。予想以上に深刻な欠陥が見つかるかもしれない。

 米軍は今回起きた事故の原因を徹底的に究明し、県民に公表してもらいたい。

 米空軍が保有するF15は700機以上あり、嘉手納基地にも50機余が駐留している。

 嘉手納基地報道部は「運用停止は予防措置。さらなる検査、分析が完了するまで運用停止期間は未定」と説明している。

 2005年度末現在203機のF15を保有している航空自衛隊も、米軍の措置を受け、同型機の飛行を停止させた。

 構造上の欠陥がないことがはっきりしない限り飛行を見合わせるのは当然の措置だ。

 嘉手納基地所属のF15戦闘機は1982年以来、8機が沖縄近海などに墜落している。

 94年には嘉手納弾薬庫地区内の黙認耕作地に墜落・炎上、一歩間違えば県民を巻き込んだ大惨事につながりかねなかった。

 06年1月に伊計島の北東70キロの海上に墜落した事故は記憶に新しい。

 米空軍は同事故について「右側エンジンの損傷の影響で航空機の飛行コントロールシステムの維持ができなくなったことが原因」と発表したが、エンジン損傷の原因は不明と説明していた。

 過去の事故も構造的な故障が原因となった可能性はないのか。疑念は尽きない。

 嘉手納基地のF15戦闘機は、ほとんどが製造後20年以上経過し老朽化している。墜落には至らないまでも、緊急着陸を余儀なくされたケースは枚挙にいとまがない。今年5月には離陸のため移動中に前輪が折れる事故も起きたばかりだ。

 米軍が「安全」と発表したとしてもにわかには信用し難い。

 本当に安全を確保するには部隊の全面撤去しか方法はない。

(11/7 10:00)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28736-storytopic-11.html

 

2007年11月7日(水) 夕刊 1・4面

県・政府 協議加速へ/普天間協10カ月ぶり再開

 【東京】米軍普天間飛行場の移設について政府と地元が話し合う「普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会」の第四回会合が七日午前、約十カ月ぶりに首相官邸で開かれた。滑走路の沖合移動について、仲井真弘多知事は「(移設を)円満に進める前提として、まず政府が自主的に沖合移動を進めた上で、アセス手続きの知事意見を踏まえ、誠実に対応してもらいたい」と主張。環境影響評価(アセスメント)手続きの中で(1)事業者の自主的な判断による沖合移動(2)知事意見を踏まえた沖合移動―の二段階の修正を要請した。これに対し、政府は「現行案が基本」との姿勢は崩さなかったものの、協議を加速することで県などと一致した。次回協議会は十二月中旬に開かれる予定。

 協議会が再開されたことを受け、政府は本年度分の北部振興事業予算の凍結解除の検討に着手する。

 協議会は約四十分間。沖合移動について、島袋吉和名護市長は「政府との基本合意で、建設計画については誠意を持って協議を継続するとある。住民に著しい影響を与えない範囲で沖合移動を求める」と主張した。

 石破茂防衛相は協議会後、「政府としては今の形が最も適切であると考えている。すべてを満足するのはあり得ないが、何ができるか知恵を出すことが大事ではないか」との見解にとどめた。

 仲井真知事は、北部振興事業凍結や名護市を再編交付金の対象から外したことに「地元の反発を招く」と批判。町村信孝官房長官は「誠意を持って協議することが可能であることが確認された。北部振興事業や再編交付金もあるので、年内に開催を調整したい」と述べ、次回協議会までに政府内で調整を進める考えを示した。

 北部首長からは、ヘリが陸域上空も飛行することや戦闘航空機装弾場などの付帯施設設置に関し、政府の地元への情報開示が不十分だとの指摘も出た。

 普天間飛行場の危険性除去については、石破防衛相が米側との場周経路などに関する合意内容を説明し、「現時点で最大限の措置だ」と強調した。これを受けて仲井真知事は「それは一つの方策だが、抜本的改善が必要」と主張。久間章生元防衛相が、普天間移設が進めば普天間の閉鎖状態について米側と協議する用意がある―との趣旨の発言をしたことも挙げ、努力を求めた。しかし、石破防衛相は「今後とも最大限の努力をしたい」との回答にとどめた。


官房長官、修正の可能性示唆


 【東京】町村信孝官房長官は七日午前の閣議後会見で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で県や名護市が求めるV字形滑走路の沖合移動について、「可能性はないとは言わない」と述べ、修正の可能性を初めて示唆した。

 政府は従来、「政府案が最良」などと修正に否定的な見解だった。町村氏の発言は、環境影響評価(アセスメント)手続きの過程での修正を念頭にしたものとみられる。

 町村氏は「(同移設案は)大変な紆余曲折を経て決まった内容だし、いったんは地元も合意した経緯がある。仲井真知事が誕生する等々の状況の変化もあるので、そういうことも踏まえながら適切な答えを出していく必要があると考える」と述べ、慎重に対応する考えを示した。


     ◇     ◇     ◇     

「沖合移動」焦点に違和感


 米軍普天間飛行場移設に関する協議会の再開は、地元と政府の利害が一致した結果だ。政府にとっては、インド洋給油が中断している中、日米防衛首脳会談や福田康夫首相訪米の際、普天間移設の順調ぶりをアピールするのが米側への唯一の「お土産」となる。一方、名護市は北部振興事業継続のためにも政府との協議のテーブルに着く必要に迫られていた。今回は目立った進展はなかったが、仲井真弘多知事はアセス手続きの中での沖合移動を求める方針を明示。「大幅移動」を求めない考えを打ち出したことで、次回以降、接点を模索する展開も予想される。

 普天間移設と「パッケージ」とされる嘉手納基地より南の基地返還や在沖海兵隊八千人のグアム移転を評価する仲井真知事にとって、自らの判断で普天間移設の停滞を招くことは避けたいのが本音だ。

 しかし、知事は公約の「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」、名護市が求める「代替施設の滑走路の沖合移動」について成果は得られておらず、政府との協調関係をアピールして就任した保守県政の面目をつぶされているのが実情だ。

 知事周辺では、来月の知事就任一年で「政府ペース」との批判を避けたい意向が強い。県は今回、事業者の自主的判断による沖合移動を「円満に進める」前提と位置付け、沖合移動の「担保」にしたい意向を明らかにした。

 一方、政府内では次回協議会を年内に開き、歩み寄りが図られれば名護市を再編交付金の交付対象に盛り込むことも検討している。ただ、対米関係の観点からは、首相訪米を終えれば、政府が県や名護市に譲歩するメリットは少ない。防衛省内には、当面はアセス手続きを粛々と進めればいい、との思惑もあり、今後の進展は不透明だ。

 知事は今回、普天間の閉鎖状態についても政府に検討を要求したが、協議会の焦点が「沖合移動」への政府対応に集約されつつある状況に、違和感は否めない。知事公約の「普天間の三年閉鎖」の道筋が明確でなくても、「沖合移動の担保さえ得られれば解決」とのシナリオが県にあるのだとすれば本末転倒だ。(政経部・渡辺豪)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071700_01.html

 

2007年11月7日(水) 夕刊 5面

知事、政府軟化を評価/閉塞打開に手応え

 【東京】「耳傾ける姿勢が見えた」。七日午前、十カ月ぶりに開かれた米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会を終えた仲井真弘多知事は、閉塞状況だった政府との関係が修復され、問題解決への道筋に一定の手応えを感じた様子だった。会合の場では従来の政府対応に不満をあらわにし、居並ぶ政府閣僚から「今後も誠意を持って協議したい」との言質を取ったことへの期待の表れだが、滑走路の沖合移動など、双方が抱える考え方の隔たりは次回以降へ先送りとなった。

 会合は約四十分。仲井真知事は事務方が用意した文書を読まず、自身でメモした表現で口にした。「住民生活や自然環境に十分配慮する」ことを念頭に、現行のV字形滑走路を可能な限り住民区域から遠ざける沖合への移動などを訴えた。

 名護市辺野古沖の現況調査に自衛艦を出したことや振興策の凍結、再編交付金の問題も切り出し、「国民に対して軍隊を出すのはあまりに乱暴だ。振興策などでバルブを閉めるようなやり方は反発が出る」と従来の政府姿勢を批判した。

 今年一月の協議会では、議事録の残らない懇談会形式で進められ、県側の要望が具体的に聞き入れられなかったという思いも強かった。この日の会合で政府は「忌憚のない意見を交換する」姿勢を貫き、県側の要望に耳を貸した。

 会合後の会見で、仲井真知事は「これだけの大臣がそろい、解決できないものはないと感じた。(政府との)コミュニケーションが緊密になった印象だ」と述べ、政府側の軟化姿勢を評価している。

 政府側は出席した石破茂防衛相や岸田文雄沖縄担当相らが「最大限の努力」「地元意向に配慮」と口をそろえた。島袋吉和名護市長は「大変有意義だった。(政府は)今後も誠意を持って対応することが確認できた。今日の会合を機会に北部振興策も当然動くものと理解している」と手応えを感じた様子だった。

 一方で、政府から具体論への言及は乏しく、課題は残ったまま。今回から協議会の主宰者となった町村信孝官房長官は冒頭、「普天間飛行場は早く移設させなければならない。日米安保の根幹をなす重要な問題なので、最大限の努力をお願いしたい」とし、地元側譲歩の必要性も示唆した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071700_02.html

 

2007年11月7日(水) 夕刊 5面

高江ヘリパッド/移設容認を東村長が陳謝

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設計画が進む東村高江区の公民館で六日、行政懇談会があり、伊集盛久村長は「皆さんの意見に沿うことができないことはおわびしたい」と陳謝、移設容認への理解を求めた。区民からは「今以上の基地負担を強いられる」などと移設反対を求める意見が相次いだ。

 伊集村長は四月の村長選で移設反対を公約していたが、就任後は容認の立場に転換。この日初めて同区民に直接、経緯を説明した。

 公約との整合性について、伊集村長は「北部訓練場の返還合意やさまざまな事業との関連もあり、現実的な問題を考えると、一村長の立場で反対できるものではない」と釈明。その上で「騒音が激しいときはその都度防衛局に抗議し、住民の生活に影響が出ないよう運用改善を求める」と述べた。

 区民からは「子どもたちの上にヘリ機が落ち、被害が出てからでは遅い」「運用改善では問題は解決しない」など反対を求める意見が出た。一方で「(ヘリパッド移設に)賛成の人は一人もいないが、予定地は国有地でもあり、どうにもできない村長の立場も分からなくもない。区民への迷惑を最小限にするよう防衛局に要請してほしい」と、補償制度に言及する声も上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711071700_04.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(11月1日、2日、3日)

2007年11月1日(木) 朝刊 1面

首相、関係修復に意欲/知事と初会談

沖縄の考え聞き交渉/普天間代替・教科書問題

 【東京】仲井真弘多知事は三十一日夕、首相官邸で福田康夫首相と初めて会談し、米軍普天間飛行場の移設問題や沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題などで意見交換した。仲井真知事は、普天間移設に向けた政府の丁寧な対応を要望。福田首相は会談後、記者団に「沖縄の方々の考えを取り入れながら、しっかりと交渉していきたい」と述べ、関係修復に意欲を示した。

 仲井真知事は会談で、普天間飛行場移設問題について「地元の意見にちゃんと耳を傾けて、丁寧に進められるように円満な解決をお願いしたい」と要望した。

 知事によると福田首相は「(知事の考えは)よく理解できる」と応じたという。

 関係者によると、首相は「協議会で沖縄の声をよく聞くよう、関係閣僚に指示しているので、具体的な話はよく相談してほしい。決めるときは私と決めましょう」と述べ、自ら主導する形で問題解決に取り組む姿勢を示したとされる。

 また、教科書検定問題についても福田首相は「今まであったもの(日本軍の強制)を三月に急に(削除した)というのはね」などと、記述の回復を求める沖縄側に理解を示したという。

 仲井真知事は会談後、普天間移設問題解決に向けた福田首相の意欲について「非常に驚くくらい感じた」と述べ、好感触が得られたことを明らかにした。

 一方、仲井真知事は首相との会談後、町村信孝官房長官とも約三十分間、意見交換した。しかし官房長官との会談については会談後、周囲に「まだ隔たりがある」などと不満を漏らした。

 移設問題をめぐっては、政府案(V字案)を堅持する政府と、滑走路の沖合移動を求める県などの意見が食い違い、移設に関する協議会は今年一月以来中断している。

 普天間移設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、方法書提出などを強行する手法を取り続けた政府と沖縄の溝は深まっていたが、福田首相が協調姿勢を示したことで、七日に再開予定の協議会で事態が進展するか注目される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_01.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 1面

きょうにも訂正申請/「集団自決」強制削除

 文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する日本軍の強制を示す記述を削除した教科書検定問題で、同省が各教科書会社に対して今週内に訂正申請をするよう要望していたことが三十一日、分かった。これを受け、検定で記述を削除された教科書会社五社の一部は一日にも訂正を申請するとみられる。

 関係者によると、記述訂正の対象となる教科書は来春には全国の高校に配られることから、各教科書会社は十二月上旬までに印刷を始める。文科省は訂正申請があった場合、教科用図書検定審議会を開き、申請内容の是非を検討した上で訂正を認めるかどうかを判断する。

 このため、今月中旬までには審議会を開きたい意向で、教科書会社各社に「今週内には訂正を申請してほしい」との要望を伝えていたという。

 文科省は訂正申請を受けるかどうかの決定前に訂正内容を明かさないよう教科書会社に求めており、執筆者が訂正内容の抱負を述べたことに、銭谷真美事務次官が記者会見で慎重な対応を求めるなどしていた。

 教科書会社は文科省の要望も考慮した上で訂正申請の日程を決めるとみられている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_02.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 29面

石西礁湖 死滅深刻/サンゴ白化現象要因

 【八重山】九州大学大学院理学府附属臨海実験所は三十一日までに、石垣島と西表島の間に広がる国内最大のさんご礁「石西礁湖」の三十三地点で、今年七月以降のサンゴの白化現象が原因でクシハダミドリイシの約53%、ハナガサミドリイシの約39%が死滅したことを明らかにした。他の種類のサンゴも甚大な影響を受けており、海底の面積に占める生きたサンゴの割合(サンゴ被度)は急激に低下したとしている。同実験所の野島哲准教授は「石西礁湖のサンゴは幼生を広範囲に供給する役割があるだけに、周辺海域の生態系にも影響を及ぼす可能性がある」と指摘している。(福元大輔)

 サンゴは、高海水温などのストレスを受けると共生している褐虫藻が離れ、白くなる。栄養の大半を褐虫藻の光合成で補給しているため、白化した状態が長く続けば死滅する。

 野島准教授は、石西礁湖の内側二十六地点、外側七地点の計三十三地点で、十一種類のサンゴを七日間かけて潜水調査。そのうち同礁湖で優先種とされるクシハダミドリイシ、ハナガサミドリイシの二種類の結果を発表した。

 クシハダミドリイシは五百七十三群体を調べ、内側で66%、水温が低い傾向にある外側で13%、全体で53%が死滅。ハナガサミドリイシは五百五十三群体を調べ、内側で47%、外側で13%、全体で39%が死滅していた。今年九月の調査では、いずれのサンゴも約60%が白化しており、その大半が回復せずに、死滅したとみられる。三十三地点のサンゴ被度は平均で内側10%、外側70%程度。野島准教授によると、昨年まで内側でも25%程度はあったという。

 県内では、一九九八年の大規模白化の際、沖縄本島近海で九割、石西礁湖で四割近いサンゴが死滅。その後も白化のほか、オニヒトデ、台風、病気などでサンゴ被度は低下している。新たなサンゴが卵を産めるようになるには五―十年が必要とされ、さんご礁の回復は困難な状況にある。

 野島准教授は「九八年の白化で生き残った大きなサンゴが、今年の白化で死滅した。幼生を供給するサンゴが死ぬと減り続ける一方で危機的状況にある」と懸念を示した。

 石西礁湖では、今年七月下旬から海水温が三〇度を超える日が続き、サンゴの白化現象が起きていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_03.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 29面

アルジャジーラ検定問題を特集

 中東を本拠に全世界に放送網を持つ放送局「アルジャジーラ」の特派員らが三十一日、座間味島を訪れ、「集団自決(強制集団死)」体験者の宮平春子さん(82)を取材した。同局は文部科学省が高校の日本史教科書から沖縄戦の集団自決に対する日本軍の強制を示す記述を削除した教科書検定問題をめぐり、十一万六千人を集めた県民大会が開かれるなど、日本で大きな議論となっている状況を取材している。

 座間味島を訪れたのはクアラルンプール支局のデイビッド・ホーキンス特派員ら。宮平さんから、沖縄戦当時の村助役兼兵事主任だった兄・宮里盛秀さんが「集団自決」が起きる直前に、「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するよう言われている」と、父・盛永さんに伝えていたことなどを聞いた。

 取材陣は平和祈念資料館や、高校の授業風景なども取材する予定。ホーキンス特派員は「日本で改憲などへの動きが進む中、なぜこの問題が大きな論争になったのかに興味を抱いた」という。「現地で取材して、沖縄の人々は、沖縄戦時に日米両国の軍隊から被害を受けていたのではとの印象を持った」と話した。

 取材結果は特集番組として、来週以後に同局の英語チャンネルで放送される予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_08.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 29面

ジュゴン藻場にクイ/名護海岸に防衛局設置

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、沖縄防衛局が天然記念物ジュゴンの餌場となっている藻場に調査ポイントを示す標識とみられる鉄クイとナイロン製のロープを設置していたことが三十一日、分かった。自然保護団体や専門家は「ジュゴンが餌を食べに来なくなる」と危惧している。

 「北限のジュゴンを見守る会」の鈴木雅子代表らによると、水中の砂地に差し込む鉄クイは三十―四十センチ。水面に出ているわっかに、約五十センチのナイロン製の浮きロープを結び付けている。ジュゴンの食み跡近くに設置され二、三メートルから十メートルほどの間隔で、九十ほど設置されているという。

 二十七日に確認され、自然環境保護団体から「ジュゴンの体を傷つける恐れがある」との指摘を受け、沖縄防衛局は三十一日までに、鉄クイをプラスチックのクイに変更したもようだ。鈴木代表は「ジュゴンは同じ場所に餌を食べに戻ってくる。今のままでは、ジュゴンが来る障害になる」と批判。沖縄防衛局は「事実関係を調査中」とコメントしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_09.html

 

2007年11月1日(木) 朝刊 29面

汚水1・9トン民間地へ/嘉手納基地排水管破損

 【北谷】米軍嘉手納基地第一ゲート近くの下水道の排水管が破損し、約五百ガロン(約一・九トン)の汚水が民間地域へつながる排水溝へ流出していたことが三十一日、分かった。

 同基地渉外課は「住民への危害の恐れはない」としており、破損の原因などは明らかにしていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011300_10.html

 

2007年11月1日(木) 夕刊 5面

名護市、装弾場を認識/普天間代替

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、日米が普天間飛行場にはない航空機弾薬搭載場を代替施設に建設することで合意していたことを名護市が昨年十二月の段階で把握していたことが三十一日、分かった。弾薬搭載場の建設については、日米の自然保護団体などが米国防総省の公文書に記載されていることを公表、沖縄防衛局も認めている。名護市の末松文信副市長は三十一日、「昨年十二月に(政府から)説明を受けた際に、装弾場があるとの説明があった」と述べ、装弾場整備を把握していたことを認めた。ヘリ基地反対協議会の大西照雄代表委員らによると「移設合意の白紙撤回と協議会への出席中止を求める」要請に対し、明らかにした。

 末松副市長は沖縄タイムス社の取材に対し、「建設計画については協議会の場で協議することになっている。政府との合意は基本合意で、詳しい説明は受けていない」と述べた。

 その上で、米公文書で揚陸艦寄港も可能な全長二百メートルを超える岸壁の整備については「聞いていない」とし、「把握していない計画が次から次と明るみに出ているのはよくない。協議会の場でわれわれに分かるように説明していただきたい」とした。また、代替施設のオスプレイ配備計画について政府に文書で回答を求める考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011700_04.html

 

2007年11月1日(木) 夕刊 5面

最終準備書面を提出/普天間爆音訴訟

 【沖縄】米軍普天間飛行場の周辺住民が、国に夜間飛行の差し止めと損害賠償を求めている普天間爆音訴訟の最終弁論が一日、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)で開かれた。原告の住民と被告の国がそれぞれ、これまでの主張をまとめた最終準備書面を提出した。双方の主張が出そろったことで、原告側は今回の弁論を事実上の結審ととらえている。同訴訟は十二月十四日に意見陳述が行われ正式に結審し、来年三月をめどに判決が言い渡される見通し。

 原告の住民らは「高い信用性のある県の健康調査で騒音による健康被害は明らか。すべての周辺住民が低周波音による人体への悪影響、生活妨害などを含めた広義的な被害を受けている」と主張。

 その上で「国は危険への接近などを理由に、自らの責任を覆い隠している。飛行差し止めを含めた画期的な判決を下してほしい」と訴えた。

 一方、国は住民の危険への接近のほか、被害対策として基地周辺の公共施設や住宅に国の費用で防音工事を施し、効果を上げていることなどを理由に、原告の請求を棄却するよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711011700_06.html

 

2007年11月2日(金) 朝刊 1面

「日本軍の強制」明記 2社が初の訂正申請

中旬までに審議会開催「内容許可」に期待

 【東京】二〇〇六年度の高校歴史教科書の検定で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付いた五社のうち、東京書籍と実教出版の担当者が一日、文部科学省を訪れ、訂正申請をした。「集団自決」問題で教科書会社が訂正申請したのは初めて。東京書籍は「日本軍によって『集団自決』においこまれた」と日本軍の強制を記述した。関係者によると、実教出版も軍強制を明記して申請しており、文部科学省や教科用図書検定調査審議会の判断が注目される。

 訂正申請は最初の一社が文科省を訪れた際、冒頭が報道陣に公開された。この会社は編集部長が同省応接室で、初等中等教育局教科書課の担当官に書類を手渡した。

 編集部長は手続き終了後、記者団に「審議会が開かれると聞いているので、申請した内容がそのまま許可されるということを願っている」と期待感を示した。結論の時期については「一日も早く許可されることを願っているが、何も分からない」と述べるにとどめた。

 文科省は五社に対して今週内に訂正申請をするよう要望しており、二日も申請が続く可能性がある。関係者によると、記述訂正の対象となる教科書は来春には全国の高校に配られることから、各教科書会社は十二月上旬までに印刷を始める。

 文科省は訂正申請があった場合、審議会を開き、申請内容の是非を検討した上で訂正を認めるかどうかを判断する。日本史小委員会で審議し、審議会の第二部会(社会科)で決定する見通しだ。このため、今月中旬までには審議会を開きたい意向で、各社に「今週中には訂正を申請してほしい」との要望を伝えていたという。

 一方、文科省は教科書会社側に「静謐な環境の確保」を理由に、訂正申請に関する審議が終了するまで記述内容を公開しないよう求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_01.html

 

2007年11月2日(金) 朝刊 31面

検定撤回へ「正念場」/2社訂正申請

 「軍強制を示す記述修正への動きは歓迎するが、正念場はこれからだ」。文部科学省が高校の日本史教科書から、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に対する軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で一日、教科書会社二社が文科省に訂正を申請した。九月二十九日に開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の関係者は、検定意見撤回の必要性をあらためて訴えた。

 県議会議長の仲里利信・大会実行委員長は「訂正申請は喜ばしいことだが、執筆者や教科書会社の動きであり文科省の対応がどうなるかだ」と警戒心を崩さない。県議の平良長政・実行委幹事は「検定意見は、沖縄戦の専門家もいない審議会で決められた。訂正内容の可否を決める審議会には沖縄戦の専門家を加えて、きちんと議論をするべきだ」と指摘した。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「一部の社だけではなく全社が記述修正を申請すれば、文科省も認めざるを得なくなるのでは」と教科書会社の動きに期待。「軍の強制を示す記述をきちんと書いてほしい。なぜ県民大会が起きたかについても触れてほしい」と話した。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は、「真実を伝えるのが使命」として、記述修正に踏み切った執筆者らの姿勢を評価した上で「検定意見撤回と記述回復は表裏一体で動かせない。文科省がこの要求を受け止めた上で、記述修正に応じるのであれば大きな意義がある」

 沖教組の大浜敏夫委員長と県高教組の松田寛委員長もそれぞれ、「限られた時間で、軍の強制を明記した内容での訂正申請にこぎ着けた」「前進として受け止める」と執筆者、教科書会社を評価する。

 一方で、「検定意見がそのまま残れば、何年か後に同じことが起こる」と懸念を示し、検定意見撤回や検定規則に沖縄戦への記述について配慮を求める条項を設置する必要性を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_02.html

 

2007年11月2日(金) 朝刊 2面

アセスの進め方など議題/普天間協 政府方針

 【東京】七日に再開する米軍普天間飛行場の移設に関する協議会に向け、政府は一日までに、(1)代替施設の建設計画(2)普天間飛行場の危険性の除去(3)主宰者の変更―を議題にする方針を固めた。建設計画では代替施設の環境影響評価(アセスメント)の進め方を協議。主宰者は防衛相、沖縄担当相の共催から官房長官に切り替える。従来の協議会で批判が強かった、議事録に残らない非公式の「懇談会」は実施しない方向で調整している。

 政府は二日に、協議会の開催を正式発表する。

 福田政権初の協議会ということもあり、「関係者の忌憚のない意見交換」(内閣府幹部)に主眼を置き、県と防衛省、内閣府などがそれぞれの立場で意見表明するとみられる。

 協議会は冒頭の議題で、主宰者の変更を審議。出席者の承認が得られれば、その時点で官房長官主宰に「格上げ」する。これに伴い、今回から議事の事前調整を内閣官房が担当している。

 首相官邸の主導が鮮明になったことで、仲井真弘多知事は十月三十一日、協議会の出席について「無論ですよ。私もメンバーのはずですから」と明言した。

 町村信孝官房長官は三十一日、協議会について「必要ならさらにもう一度くらい開いていい」と述べ、沖縄側との対話を加速させる考えを示している。


2市民団体が不参加を要請


 米軍普天間飛行場の移設に関する協議会が七日に開催されることを受け、市民グループが一日、県庁に保坂好泰基地防災統括監を訪ね、県の協議会への出席中止などを要請した。保坂統括監は協議会について「具体的な建設計画や普天間の危険性除去のために設置された重要な協議機関。率直な意見交換がなされ、協議できることが出席の前提」と述べ、参加の意向を示した。

 要請したのは「沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会」と「辺野古新基地建設を許さない市民共同行動」のメンバー。代替施設へのオスプレイ配備や戦闘航空機装弾場設置についても、政府に問いただし、毅然とした対応を取るよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_04.html

 

2007年11月2日(金) 朝刊 30面

カメさん語る遺品を初公開/6日から「写真・資料展」

 六日の瀬長亀次郎生誕百年記念「写真・資料展」を前に、瀬長さんの遺品を管理する二女の内村千尋さん(62)は一日、那覇市内の自宅で瀬長さんが獄中でつづった日記帳や出獄時に着用した背広などを報道各社に公開した。内村さんは「父の遺品から祖国復帰運動など素晴らしい歴史を思い起こし、いまだ実現していない基地撤去などの運動に生かしてほしい」と話している。

 資料展では、背広や革靴、妻フミさんにプレゼントした洋服などを初めて一般公開。(1)米軍の思想弾圧時(2)那覇市長時(3)衆院議員時―を中心にした貴重な資料のほか、闘病生活時の様子、写真やオリジナルの介護用品なども展示される。

 二〇〇一年十一月五日に瀬長さんが亡くなるまで十四年余り看病した内村さん。死後、父の遺品を整理するうち、数々の貴重な資料に感動し、「多くの人に知ってほしい」と思いたった。資料展に向け、「『カメさん』の愛称で親しまれた父・瀬長亀次郎の人柄に触れてほしい」と来場を呼び掛けた。

 六日から十一日まで那覇市ぶんかテンブス館三階で開かれる。入場無料。問い合わせは内村さん、電話098(886)0277。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021300_11.html

 

琉球新報 社説

知事首相会談 政府の「聞く耳」は本物か

 福田康夫首相は10月31日、就任後初めて仲井真弘多知事と会談し、普天間飛行場の移設について「沖縄の方々の考えも取り入れ(移設措置協議会で)交渉する」と記者団に明言、沖縄側の要望を踏まえる考えを示唆した。

 「代替施設の建設位置を可能な限り沖合に寄せてほしい」との県や名護市の要求に対し、安倍内閣は一切聞く耳を持たない姿勢だったが、福田内閣に代わり、柔軟な対応が示される可能性が出てきた。

 だが政府にとって、沖縄側のハードルは決して低いものではない。

 仲井真知事は10月23日の記者会見で、沖合移動を求める理由について(1)ウミガメの産卵地が全滅する(2)文化財、貝塚も駄目になる(3)騒音も防衛省の数字は極めて疑義が強く全く信用していない―などと指摘している。

 昨年の知事選で「現行のV字形案のままでは賛成できない」と公約して当選しているだけに、沖合修正の実行は譲れない一線だ。

 しかも10メートルや20メートルずらす程度では現行計画と大差がなく、知事が指摘した環境問題、騒音問題などをクリアできるとも思えない。

 政府は、一定程度以上の修正方針を示さない限り県や名護市の同意が得られないことを肝に銘じるべきだ。

 県にとっても、お茶を濁す程度の微修正を容認するわけにはいかない。そうなれば県民の目から見ると選挙公約の帳尻合わせとしか映らず、批判は免れないだろう。

 そもそも、ウミガメの産卵地を保全しながら、新たな基地を造ることが本当にできるのか。

 政府案は名護市のキャンプ・シュワブにある辺野古崎を覆う形で約160ヘクタールを埋め立ててV字形に2本の滑走路を建設する計画になっている。施設の全長は約1800メートル、滑走路の長さは約1600メートルだ。

 環境への負荷を最小限に抑えたとしても、広大な藻場が埋め立てによって失われる。これほど大規模な施設を環境破壊を伴わずに建設することは不可能だ。

 県は、どの位置に建設すれば自然環境を最大限に保全でき、近隣住民の騒音被害も軽減できるのか、具体案とその根拠を示す必要があるだろう。

 在日米軍再編合意は県の同意を得ることもなく、県民の頭越しに決まった経緯がある。いくら修正を加えても、すべての県民を納得させることはできない。

 普天間飛行場を、国土の0・6%にすぎない狭い県土の中でたらい回しにするという計画自体に無理があるからだ。

 福田首相は、沖縄だけに不当に米軍基地を押し付けてきたこれまでの政府の姿勢を改め、基地負担の軽減に本腰を入れて取り組むべきだ。

(11/2 9:55)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28601-storytopic-11.html

 

2007年11月2日(金) 夕刊 1面

沖合移動に根拠必要/普天間移設

騒音データ収集意向

 仲井真弘多知事は二日午前の定例記者会見で、米軍普天間飛行場代替施設協議で県などが求めている滑走路の沖合移動の範囲について「耳で聞き、実感として大丈夫と判断することは必要と思う」と述べ、名護市辺野古沖を埋め立てる従来案で沖合二・二キロの位置に滑走路を設定した際と同様に、実際に航空機を飛ばした上で騒音データを収集するなど、科学的根拠に基づいて移動距離を決めるべきだとの考えを示した。

 また、沖合移動の距離に関し、政府に具体的な数値を示した要求はしていないとした上で「政府がもう一回抜本的に協議をやり直すところまでは求めない。大幅に、というわけにはいかないという思いがないわけではない。地元の意見を尊重する姿勢を持ってもらえばどんな形で収めていくかはこれからのことだ」とし、七日に開催される普天間飛行場の移設に関する協議会の場でも、日米合意の範囲内で修正を求めていく考えをあらためて示した。

 文部科学省が四月に実施した全国学力テストで沖縄県が最下位の結果となったことに、仲井真知事は「誠に残念。沖縄の子どもたちは、文化芸能、スポーツは全国並みだろうと思う。学力も全国レベルに到達していると思っていたので、ちょっと意外な感じを受けた」と述べた。

 その上で「いろんな原因、理由があると思うが、専門の先生方も含めて意見をまとめてみたい」と早急な対策が必要との認識を示した。


再編案を容認で北部の追加示唆

交付金で官房長官


 【東京】町村信孝官房長官は二日午前の閣議後会見で、在日米軍再編への協力度合いに応じて支払われる再編交付金の交付対象から名護市などが外れたことについて、「地元との話がうまく整えば、それは弾力的に追加されるということだ」と述べ、普天間飛行場代替施設の日米合意案をはじめとする現行の再編案を受け入れれば柔軟に対応するとの考えを示した。

 対象漏れによる米軍普天間飛行場移設問題への影響については「影響はないと思う」との認識を示した。


協議会 7日開催を決定


 【東京】政府は二日午前、米軍普天間飛行場の移設に関する協議会の第四回会合を七日午前八時から首相官邸で開くと発表した。(1)代替施設の建設計画(2)普天間飛行場の危険性の除去(3)設置要綱の改正(主宰者の変更)―を議題にする。冒頭で主宰者を防衛相、沖縄担当相の共催から官房長官に格上げすることを審議。建設計画は環境影響評価(アセスメント)の進め方を中心に、沖縄側が最初に意見表明し、その後に関係省庁が見解を述べる。

 同日午前の閣議後会見で町村信孝官房長官は、協議会が今年一月以降、開催されていないことに「その間にアセスメントの手続きは始まったが、(政府と沖縄側が)何となくギクシャクしている状況がある。それでは普天間の早期移設、ロードマップ通りに物事が運ばなくなる」と現状への危機感を強調。「政府と地元がいい関係を保ちながら進めていくため、久方ぶりの会合をやろうではないかということだ」と開催の意義を説明した。

 岸田文雄沖縄担当相は「官房長官が主宰することによって防衛省をはじめ、それぞれの立場で忌憚のない意見交換ができる」と歓迎した。

 石破茂防衛相も「首相官邸の強いリーダーシップで、日本政府としての強い意志で動かしていこうとするなら、官房長官の主宰が望ましい」と評価した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_01.html

 

2007年11月2日(金) 夕刊 1面

宮古へ陸自誘致表明/商工会議所中尾会頭

先島の国防強化で

 【宮古島】宮古島商工会議所(会員・約千四百事業所)の中尾英筰会頭(70)は一日、宮古島市内で開かれた臨時議員総会の再任あいさつの中で、「宮古島は防衛上も重要な場所。島民の生命・財産を守る立場からも国に防衛体制を強化してほしい」と述べ、陸上自衛隊の誘致に積極的に取り組む考えを表明した。

 中尾会頭は宮古地区自衛隊協力会長を務めており、陸自誘致にはこれまでも賛成の意向を示していたが、会頭として公の場で明らかにするのは初めて。

 中尾会頭は陸自誘致に伴う経済効果に期待しつつも主な理由として(1)先島地区の国防の強化(2)急患輸送ヘリや不発弾処理隊が常駐することによる対応の迅速化―などを挙げた。

 下地島空港については「仲井真知事も(軍事利用に)ノーと言っている。現時点では考えていない」と語り、同空港は誘致場所として念頭にないとした。

 この時期に誘致表明した理由について、中期防衛力整備計画(二〇〇五―〇九年度)に盛り込まれた陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の旅団化へ向けた動きがあると指摘。「今がチャンスであり、タブー視することはできない」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_04.html

 

2007年11月2日(金) 夕刊 1面

審議会開催を要請/教科書訂正申請

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、教科書会社二社から日本軍の強制を示す記述を復活させる内容の訂正申請を受けた文部科学省は二日午前、申請内容を検討する教科用図書検定調査審議会の開催を求める文書を同審議会会長あてに送付した。閣議後会見で渡海紀三朗文部科学相が明らかにした。審議会は今後、教科書会社残り三社の訂正申請を待った上で、今月中旬にも会長名で日本史小委員会を招集。沖縄戦に係る新たな資料提出など審議方法を検討し、申請への対応を判断する見込み。

 一日に訂正申請した教科書会社のうち、東京書籍は「日本軍によって『集団自決』に追い込まれた」と日本軍の強制を記述。渡海文科相は「真摯に受け止め、対応したい」と、文科省として今月中に最終判断するとしている。

 従来、申請後の審議会審議について「疑義を生じさせてはいけない」と繰り返しており、訂正申請が出そろった後、審議会の透明性確保も課題になる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711021700_06.html

 

2007年11月3日(土) 朝刊 1面

新たに2社 訂正申請/教科書検定

 【東京】二〇〇六年度の高校歴史教科書の検定で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付いた五社のうち、清水書院と山川出版が二日、文部科学省を訪れ、新たに訂正申請した。申請は一日の東京書籍、実教出版を合わせ合計四社になった。残る一社も「来週半ばにも申請したい」との意向で、来週中には五社の訂正申請が出そろう。清水書院は日本軍の強制性を記述したとみられるが、山川出版は「一切答えられない」としている。

 関係者によると、文部科学省は教科書会社に「十一月中に結論を出したいので、(教科用図書検定調査)審議会の日程を考慮して五日までに訂正申請してほしい」と要望しているという。

 文科省によると、訂正申請の手続きを事前に照会してきたのは、検定意見が付いた五社のみ。ほかにも一社が申請を検討していたが、教科書課は「申請はこの五社と理解している」としている。

 一方、すでに訂正申請を終えた四社のうち一社の執筆者が二日に記者会見し、同社が十月五日に開いた執筆者会議で決まった記述内容(訂正案)を明らかにした。

 執筆者によると、この会社は日本史Aで「日本軍は、住民に手榴弾をくばって集団自害と殺しあいを強制した。犠牲者はあわせて八百人以上にのぼった」と日本軍の強制を明記した。日本史Bでも「日本軍により、戦闘の妨げになるなどの理由で県民が集団自決に追いやられたり」との表現で強制性を示した。

 執筆者は「訂正申請された記述は確認していないが、記述を変更する場合は会社から説明があるのが普通だ」と述べ、会議で決まった文案がそのまま採用されたとの認識を示した。

 日本史Aで「集団自決」の表現を使っていないことには「『集団自決』には自らの意思による死という意味がある。沖縄戦の研究者は近年、強制集団死という言葉を使っており、教科書では『殺しあい』で家族同士の悲惨な現実があったことを示した」と説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_02.html

 

2007年11月3日(土) 朝刊 27面

戦見詰める学徒の勇気/82歳、白梅之塔訪問

 【南部】兵庫県尼崎市在住で元白梅学徒看護隊の比嘉光子さん(82)=那覇市久茂地出身=が二日、糸満市真栄里にある白梅学徒隊員や同窓生らを鎮魂する「白梅之塔」を初めて訪れた。自身が勤務していた野戦病院跡の壕を巡った比嘉さんの脳裏に悲惨な記憶が鮮明によみがえり、胸を強く締め付けられた様子だった。比嘉さんは壕の奥に続く“闇”をただ静かに、じっと見詰めていた。

 県立第二高等女学校の四年生だった一九四五年三月二十三日から白梅学徒看護隊として野戦病院に駆り出された。戦後は東京などで着物を取り扱う卸問屋などに勤めていたという。

 比嘉さんは現在、尼崎市内の特別養護老人ホームに入所。同施設の中村大蔵施設長が比嘉さんと会話する中で、元白梅学徒隊だということが分かった。それがきっかけとなり、同市内の大学で開かれたフォーラムで体験を語った。自身の体験を公の場で語るのは初めてだった。

 二日に帰郷した比嘉さんを白梅同窓会の中山きく会長らが出迎えた。学友らの名前が刻まれた白梅之塔で、比嘉さんは線香が手向けられた刻銘版を真っすぐに見据え、そっと手を合わせた。

 勤務地だった八重瀬町の新城分院(ヌヌマチガマ)では悲惨な記憶がよみがえった。「日本軍の将校が切腹した」「(患者兵士の)枕元には『敵が来たら飲むように』と毒薬が置かれた」。壕の大きさやその特徴、生活の様子など堰を切ったように語りだした。

 「ここに来るのは勇気が必要だった。あまりに悲惨で思い出すのが嫌でつらかった」とこれまでを振り返った比嘉さんは、四日に開かれる白梅同窓会の総会に出席する予定。「ほかの友人と会えるのを楽しみにしている」と話した。


[ことば]


 白梅学徒看護隊 県立第二高等女学校(那覇市)の4年生56人で編成。第24師団(山部隊)の衛生看護教育隊に入隊。八重瀬町富盛の第一野戦病院に配置され傷病兵の看護に専念した。白梅之塔には教職員や白梅隊員、同窓生149柱が合祀されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_03.html

 

2007年11月3日(土) 朝刊 2面

北谷議会、米軍に抗議/F15未明離陸

 【沖縄】米軍嘉手納基地のF15戦闘機の機体更新を目的とした「アイロンフロー計画」を理由に、同基地所属のF15戦闘機など軍用機計九機が十月三十日未明に同基地を離陸した問題で、北谷町議会の宮里友常議長ら議員十一人は二日、同基地広報局長のジョン・S・ハッチソン少佐を訪ね直接抗議した。

 宮里議長らは「他の基地を経由するなど運用を改善し、軍用機の深夜、未明の離陸を即時に中止すべきだ」などと抗議した。

 同少佐は「住民への影響は理解している。抗議は上司に伝えるが、未明離陸の中止は考えていない」と述べた。

 その上で、「騒音の継続時間を短くするため、まとまった機数で連続して離陸している。離陸後はすぐに高度を上げ、住宅地の真上を飛行しないよう努めている」と同基地の騒音対策を説明したという。

 次回が最後だと説明する「アイロンフロー計画」の日時や、対象機体数は明らかにしなかった。

 同議会基地対策委員会の照屋正治委員長は「米軍は軽減の努力をしていると説明するが、未明に離陸すること自体が問題だ。認識のずれを痛感した。住民の我慢は限界にきており、今後も強く中止を訴える」と話した。

 同議会は、同基地で強行されたパラシュート降下訓練、沖縄市で起きた米軍人の息子による強姦致傷事件についても、司令官あての抗議文を手渡した。


隣接3市町議会 初の意見交換会/問題解決で一致


 【中部】米軍嘉手納基地の未明離陸問題で、基地に隣接する沖縄、嘉手納、北谷の三市町議会の基地担当委員会の意見交換会が二日、嘉手納町役場で開かれた。同問題について、三市町議会が意見交換会を開くのは初めて。

 非公開で行われたが、複数の出席者によると、未明離陸問題の解決を目指す方針で一致した。

 今後、組織や活動について具体的に協議を進める方針を確認したという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_04.html

 

2007年11月3日(土) 朝刊 2面

「騒音被害を重視」/高村外相 米軍に働き掛け継続

 【東京】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機などが未明に離陸を強行した問題で、高村正彦外相は二日の衆院外務委員会で「われわれは(機体の更新より)住民の騒音被害を重く考える」と明言。地元への影響を最小限にとどめるよう引き続き働き掛ける考えを強調した。照屋寛徳氏(社民)への答弁。

 高村氏は「(十月)二十六日の夕刻、未確定ながらその可能性があり得るとの情報を得た」と明らかにし、在日米国大使館や同基地司令官に「運用の調整等により、できるだけ早朝離陸を行わないよう」求めた経緯を説明した。

 また、米空軍が先月、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を強行した問題について、防衛省の地引良幸地方協力局長は、米側が伊江島補助飛行場の訓練過密化や利便性の悪さなどを理由に挙げていることを明らかにした。

 地引局長によると、米側は「伊江島は各軍がさまざまな訓練を実施し、過密状態であり、緊急を要する救難隊員の訓練を消化できない」と説明した。

 さらに「救難艇や航空機、または地上での要員の待機など事前に周到な準備が必要で、当日の天気が良いからといってただちに計画を変更することは困難」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711031300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年11月3日朝刊)

[「検定」の訂正申請]

審議会の審査見守りたい

 高校歴史教科書の沖縄戦の項目から「集団自決(強制集団死)」への旧日本軍の関与が削除された問題で、検定意見が付いた五社のうち四社が文部科学省に訂正を申請した。

 「集団自決」には旧日本軍の強制があった、という記述を復活させる内容になっている。

 文科省は、申請内容を検討する教科用図書検定調査審議会に開催を要請した。残る一社の申請を待って、今月中旬にも日本史小委員会を招集する方針だ。

 文科省は「集団自決」への旧日本軍の「関与」を認めているが、「検定意見の撤回」を拒否する姿勢は崩していない。

 教科書検定の目的が「客観的で公正、適切な教育的配慮の確保」にあるのなら、政治が口を挟むべきでないのは論をまたない。

 だが、例えば「日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という記述が「日本軍に壕から追い出されたり、自決した住民もいた」と書き換えられると、主語があいまいになり沖縄戦の全体像がぼやけてしまう。

 これでは、軍の関与を消すための政治的意図を疑われても仕方がない。

 記述の修正は「旧日本軍」という主語を打ち出す動きであり、文科省はきちんと受け止めてもらいたい。

 言うまでもないが、「集団自決」における「軍の強制」は沖縄戦の本質にかかわってくる。

 「軍の強制」が教科書に明記されなければ記述を回復したことにはならず、文科省も責任を果たしたことにはならない。

 もし、文科省が検定意見を撤回せず教科書会社による修正で解決を図るのなら、教科書への記述と文科省の考えが整合性を欠くことになる。

 そうなれば、同じような混乱が今後も繰り返される可能性もあるはずだ。

 それを避けるためにも検定意見の撤回は不可欠であり、決着を政治的判断に委ねてはなるまい。

 検定の在り方に対する国民の不信についてはまた、教科用図書検定調査審議会にも責任がある。審議会が閉鎖的なため、国民にはその実態がつかめないからだ。

 今回のような問題が起きたとき、正常に議論できる仕組みをどう築いていくか。審議会は知恵を出すべきであり、それには審査議事録を公開して透明性を高め、検定過程を誰もが知ることができるようにすべきだろう。

 訂正の申請には県民の願いも込められている。審議会がどのような判断を下すのか、審査の行方を見守りたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071103.html#no_1

 

琉球新報 社説

給油活動停止 国際貢献の徹底論議が必要

 テロ対策特別措置法が1日で期限切れとなり、海上自衛隊はインド洋での5年11カ月の給油活動を停止し、補給艦、護衛艦を撤収させた。政府は、活動再開へ向けて新テロ対策特別措置法案の早期成立を目指すため、福田康夫首相が2日、小沢一郎民主党代表との党首会談で協力を求めるなど、成立へ躍起になっている。

 福田首相は、活動停止について「国際社会で役割を果たしていないと肩身の狭い思いをする。長期的に見て日本にとって良くないこと」と懸念を示した。しかし、この事態を招いたのはほかでもなく、与党や政府ではないか。

 テロ特措法は、米同時中枢テロを受けて、アフガニスタンでの米英軍などの軍事行動を後方支援するため2001年10月に成立した。その過程では、憲法違反と指摘する声も強かったが、論議はうやむやになり、多数与党が押し切った形だ。集団的自衛権に絡む憲法論議に深く踏み込むことをせず、グレーゾーンでやりくりしてきたツケが今回の措置法期限切れという結果に表れたといえよう。

 その上、国民の不信を買う問題も相次いだ。米補給艦に行われた給油量の誤りの隠ぺい、燃料のイラク戦争転用疑惑、内規に反する航海日誌の廃棄などである。この状態のままで、特措法の延長、もしくは新法の成立などについて国民の理解は到底得られない。

 とりわけ転用疑惑は重大な問題である。事実ならアフガニスタンでのテロ阻止行動を目的とした特措法の趣旨を逸脱する恐れがあるからだ。政府は事実を否定するが、疑惑は晴れない。国民が納得できる資料を提示するべきだ。

 米側は、ケーシー国務省副報道官が1日、給油活動停止について「失望した」と不満を明確に表明した。早期再開を求める圧力とみていい。しかし、米国に追従する必要はない。

 共同通信社が10月末に行った全国世論調査によると、新テロ特措法案について賛成は45・0%、反対39・3%で、世論は二分に近い。一方、無党派層では41・9%が反対の意思を示し、賛成としたのは34・1%。自民、公明党支持層では反対が20%を超えた。

 活動停止は、あらためて日本の国際貢献の在り方について深く論議するチャンスであろう。従来のようにその場しのぎ的な対応ではなく、国民の理解を得、確たる理念に裏打ちされた貢献策を打ち出す必要がある。

 日米同盟など外交で重視する問題もあろうが、それにも増して大切なのは、一般の人々に支援の手を差し伸べることだろう。地道な非軍事の民生支援こそ、憲法の理念にかなう。国際的な評価にもつながるに違いない。

(11/3 12:26)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-28636-storytopic-11.html