沖縄タイムス 関連記事・社説(7月10日夕刊、7月11日)

2007年7月10日(火) 夕刊 1面

 

調査官、住民聴取せず/「集団自決」修正

 

 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除された教科書検定問題で、政府は十日、閣議決定した答弁書で教科用図書検定調査審議会に提出する調査意見書を取りまとめた文部科学省の教科書調査官が、住民の証言を聴取していなかったことを明らかにした。検定決定後の表現については「日本軍の関与がなかったと誤解される恐れがある記述はない」とし、記述内容を正当化した。赤嶺政賢氏(共産)の質問主意書に答えた。

 

 

 「集団自決」が慶良間諸島だけでなく県内各地で発生したことの見解は「審議会では渡嘉敷島、座間味島に限らず、沖縄における『集団自決』全般に関して審議がなされた」と述べた。

 

 

 しかし、六月十三日に文科省に聞き取りをした自民党県連の伊波常洋政調会長によると、布村幸彦審議官は「審議会では両島の事例のみを議論し、本島での『集団自決』は対象にしなかった」と述べたとされ、見解に食い違いが生じている。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

超党派の県民大会計画/沖子連など検定撤回求め

 

 

 高校歴史教科書の沖縄戦に関する記述から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が文部科学省の検定で削除された問題で、県子ども会育成連絡協議会(玉寄哲永会長)と県婦人連合会(小渡ハル子会長)、県PTA連合会(諸見里宏美会長)の三者は県内の幅広い団体に呼び掛け、検定撤回と記述の復活などを求める超党派の県民大会を計画している。「原爆の日」の八月六日か九日にも開きたい、としている。

 

 

 社会活動をする各団体に呼び掛け、実行委員会を組織する方針。十八日には、さらに参加団体を増やした会合を開き、実行委員会結成に向け具体的な日程や内容などを協議する。

 

 

 大会は、超党派を目指し、二十九日の参院選挙後、仲井真弘多知事や仲里利信県議会議長にも参加を呼び掛ける予定。一九九五年に開かれた米兵暴行事件に抗議する県民大会並みに県民の総意を表現したい、としている。

 

 

 沖子連の玉寄会長は「明らかに軍命があったのに、教科書から削除するのは許し難い。県民の総意で、抗議の意思を突きつけたい」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101700_01.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 夕刊 5面

 

グアム視察へ中部首長出発

 

 【中部】米軍再編で在沖海兵隊が移転されるグアムの状況を調べる中部地区十市町村長らの視察団(団長・東門美津子沖縄市長)が十日午前、那覇空港を出発した。十三日に帰国する。

 

 

 アンダーセン、アプラの両基地を視察するほか、フェリックス・カマチョ州知事やマーク・フォーブス議長を表敬。グアム商工会議所や建設業協会なども訪れる。初日はグアム県人会と意見交換する。

 

 

 東門団長は「基地を抱える中部市町村では住民が負担を感じている。移転先の状況を視察し、行政に反映させる一歩としたい」と決意を語った。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101700_03.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 朝刊 1面

 

県議会 きょう意見書再可決/「集団自決」修正問題

 

 県議会(仲里利信議長)は十一日午前、六月定例会最終本会議を開き、高校歴史教科書の沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与を削除した文部科学省の検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書を採決する。全会一致で可決される見通し。

 

 

 県議会は六月二十二日に検定意見の撤回などを求める意見書を全会一致で可決しており、一定例会で、同じテーマの意見書を二度可決するのは初めて。検定撤回に向けた強い県民意思を示す狙いがある。

 

 

 本会議ではまた、県食品の安全安心の確保に関する条例案や十一月に開館する県立博物館・美術館の指定管理者を「文化の杜」共同企業体(代表・平良知二沖縄タイムス社専務)に指定するための議決案などを採決する。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111300_04.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 朝刊 2面

 

枯れ葉剤 米軍「調査」/北部訓練場散布

 

 米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していた問題で、那覇防衛施設局の佐藤勉局長は十日の共産党県委員会(赤嶺政賢委員長)の申し入れに対し、施設局から在沖米海兵隊と在沖米陸軍に照会するとともに、防衛省から在日米軍司令部に照会していると説明。米側は「調査する」と回答したことを明らかにした。

 

 

 その上で佐藤局長は「米側から回答を受け、事実を開示することが県民の不安払拭につながる」との認識を示した。

 

 

 一方、同問題で外務省の重家俊範沖縄担当大使は、外務省北米局が在日米国大使館に事実関係を確認中であることを明らかにした上で「重大な報道(問題)なので、米軍からの回答をできるだけ早く得たいと思っている」と述べた。

 

 

 また、米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設について佐藤局長は「(着工に)必要な手続きはすべて行ったと認識している。今後とも清々粛々と工事を進めていきたい」とあらためて推進する姿勢を示した。

 

 

使用・保有 証拠なし

 

 

 米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していた問題で、ケビン・メア在沖米国総領事は十日、米国防総省が二〇〇四年に米下院議会に提出した文書に「米軍が過去に沖縄で枯れ葉剤を使用または保有したという記録や証拠はない」との調査結果が盛り込まれていることを明らかにした。

 

 

 メア総領事によると、同文書は〇四年に下院議会からの質問を受け、米軍が調査。沖縄での現地調査は行われなかったという。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111300_05.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月11日朝刊)

 

 

[「検定撤回」再可決]

 

歴史の改ざんを許すな

 

 県議会はきょうの本会議で、文部科学省の検定により高校歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除されたことについて、検定意見書の撤回と記述回復を求める意見書を可決する。

 

 

 同一の問題で、会期中に二度同じ意見書を可決するのは初めてのことだ。

 

 

 異例といっていいが、歴史的事実に目を背けようとする文科省への県民の怒りである。文科省は、歴史を改ざんする動きに県民が警鐘を鳴らしていることを認識する必要がある。

 

 

 県議会が最初に意見書を可決したのは、六月二十二日の本会議だ。県内四十一市町村議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会も同様の意見書を可決、採択し、六団体で文科省に要請した経緯がある。

 

 

 今回の可決は、県民の総意で行った要請が、「教科用図書検定審議会が決定したことに、口を挟むことはできない」(布村幸彦文科省審議官)として拒否されたことが理由になっている。

 

 

 だが、それよりも大きいのは、県議会文教厚生委員会が実施した渡嘉敷島、座間味島での聞き取り調査で、重く口を閉ざしていた体験者から新たな証言を得たからだ。

 

 

 その多くは、旧日本軍の関与なしに「集団自決」は起こり得なかったというお年寄りたちの肉声である。沖縄戦という歴史の底に横たわる事実は、私たちがきちんと受け止めていかなければならない深いテーマを含んでいる。

 

 

 生々しい証言からは、教科書から沖縄戦の実相が削られることへの怒りが見て取れる。それはまた、「親や兄弟、叔父、叔母たちの悲惨な体験だけでなく、自分の記憶までも否定しようとする動きを許すわけにはいかない」という強い意思とも重なる。

 

 

 仲里利信県議会議長は本紙のインタビューに、「検定結果は、(集団自決による)死者を冒〓している。歴史の事実を否定するとまた戦争への道を歩んでしまう」と答えている。

 

 

 その上で「一部の人たちが戦争を美化し、歴史の事実を歪曲するということは祖父、父、弟を失った者として決して許すことはできない」とも述べた。

 

 

 県子ども会育成連絡協議会、県婦人連合会、県PTA連合会が検定の撤回を求める県民大会を呼び掛けているが、史実をゆるがせにしないためにも党派を超え、県民が一丸となって訴えていくことが重要だ。

 

 

 沖縄戦にどう向き合い、史実を語り継いでいくか。私たち一人一人の意識が問われていることを自覚したい。

 

 

※(注=〓は「さんずい」に「売」の旧字)

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070711.html#no_1

 

 

 

2007年7月11日(水) 夕刊 1・5面

 

「検定撤回」再可決/「集団自決」修正

 

県議会「県民の総意」

 

 

 県議会(仲里利信議長)の六月定例会は十一日午前、最終本会議を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与を削除した文部科学省の検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書案を全会一致で可決した。県議会事務局によると、一定例会で、同じテーマの意見書を二度可決するのは初めて、という。文科省が検定意見の撤回に一貫して難色を示す中、二度目の意見書可決で、検定意見の撤回を求める強い県民意思があらためて示された。県議会では同意見書を衆参両院議長、内閣総理大臣、文部科学大臣、沖縄及び北方対策担当大臣あてに送付する予定。

 

 

 本会議では、同意見書案を全会一致で可決した文教厚生委員会の前島明男委員長が文案を読み上げ、提案理由を説明した。その後、採決し全会一致で可決した。

 

 

 意見書は、県議会や県内四十一市町村の全議会で意見書を可決したことを受けて、県や県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会など六団体の代表の要請に対し、文科省が意見書撤回と記述の回復を拒否した経緯に触れ「同省の回答は到底容認できるものでない」と厳しく批判。

 

 

 また、県議会や県内四十一市町村のすべての議会で意見書が可決されたことを挙げ、「県民の総意が明らかにされたことに対する重みへの配慮が十分でなかったことはまことに遺憾である」と指摘している。

 

 

 さらに、「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、沖縄戦の実相を正しく伝えるとともに、平和を希求し、悲惨な戦争を再び起こさないようにするため」とし、検定意見の撤回と記述回復を再度要請するとしている。

 

 

 意見書採決の際、自民会派の小渡亨氏(54)が退場した。小渡氏は「同じ意見書を二度出すのは逆に効果が薄れ、議会の権威が損なわれると感じたため」と理由を語った。

 

 

文化の杜 管理者に県立美術館 県議会可決

 

 

 県議会六月定例会の最終本会議ではこのほか、県食品の安全安心の確保に関する条例案や十一月に開館する県立博物館・美術館の指定管理者を「文化の杜」共同企業体(代表・平良知二沖縄タイムス社専務)に指定するための議決案など、計二十三議案を可決した。

 

 

 また、二〇〇八年五月に期限切れを迎える「駐留軍関係離職者等臨時措置法」の有効期限延長に関する意見書を全会一致で可決した。

 

 

重く受け止める

 

 

 仲井真弘多知事 県議会で教科書検定に関する意見書が全会一致で再度採択されたことは、県民の総意だと極めて重く受け止めている。沖縄戦の「集団自決」で、当時の教育を含む社会状況の総合的な背景、および戦時下の極限状態の中、手りゅう弾が配られるなど広い意味での日本軍の関与があったものと思っており、その記述が、削除・修正されたことは、誠に遺憾である。今後とも、県議会をはじめ地方六団体で歩調を合わせて対応していきたい。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

冷たい対応「許せぬ」/誠意ない国へ憤り

 

 

 「国の対応は許せない」。一度目の県民の総意にも冷ややかな国や文科省の態度が県民の怒りを呼び、過去に例のない「二度目の意思」が示された。沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」記述から軍の関与が削除された教科書検定問題で、県議会は十一日、県民の総意を重く受け止めるよう求め、検定意見撤回と記述回復を求める意見書を再び可決した。一九八二年の「住民虐殺」削除問題当時もなかった全市町村議会の意見書可決に続き、異例の形で県民の意思が示され続けている。

 

 

 四日に県内の行政・議会の五団体の代表とともに文科省への要請を行った安里カツ子副知事は「(教科書検定問題は)二度も意見書が可決されるくらい県民にとって重要なこと」と述べた。

 

 

 国の対応に「国会など都合もあるが、それなりの人に対応してほしかった。終始、『理解してほしい』との返事だったので、沖縄と温度差があると感じた。要請から帰ってきて、本当に憤りを感じ、あらためて事の重大さを認識した。(今後要請することがあれば)誠意をもって対応してほしい」と話した。

 

 

 共に要請した県市議会議長会の島袋俊夫うるま市議会議長は「県議会の最初の意見書の時は、モタモタして、何をしているんだという感じだった。今回は、国の態度に怒りを感じ、県議会の委員会が現地で独自調査もして、集約した意見書。これこそ本当の県民の総意」と意義を強調した。

 

 

 同じく同行した県町村議会議長会の神谷信吉会長(八重瀬町議会議長)は「イデオロギーの問題ではなく、県民の目線で何度でも訴えなければいけない。一過性に終わらせないためにも重要」と話した。

 

 

 新たに超党派の県民大会開催の計画を明らかにした県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の意思を訴えるために県民大会に向けて大きな弾みになる。議長や議員の皆さんにも早めに協力を呼び掛けたい」と歓迎した。

 

 

 検定撤回の運動を中心的に進めてきた高嶋伸欣琉球大教授は「文科省の冷淡な態度に、県民が怒るのは当然。選挙を控えたこの時期に決議されるのも意義深い。県民が一致団結したらここまでやるんだ、というかつての復帰運動を思わせる動きになってきたように感じる」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111700_01.html

 

 

 

2007年7月11日(水) 夕刊 1面

 

防衛相「規模最大に」/キャンプ瑞慶覧返還

 

 【東京】小池百合子防衛相は十一日午前、トーマス・シーファー駐日米国大使と防衛省内で会談し、在日米軍再編などについて意見交換した。小池防衛相は「嘉手納以南」の六基地の全面・一部返還で、米側との調整が難航しているキャンプ瑞慶覧の返還規模について、「最大の規模で返還されることが重要だ」と述べ、最大限の返還を求めた。

 

 

 一方、小池防衛相は普天間飛行場の名護市辺野古への移設について、「地元の考え方、今後の将来図を総合的に踏まえて早期に実現できるようにやっていきたい」と意欲を示した。

 

 

 その上で「自分は環境大臣もしていたので環境も保全しながら、安全保障という観点をきっちりと守っていくことも重要だと思っている」と語った。

 

 

 在沖米海兵隊のグアム移転については、「財政面で国民の納得を得て進めていくことが重要で、効率化に配慮していくことが必要。日米の合意に従って早期に実現したい」との認識を示した。

 

 

 これらに対しシーファー大使は「きっちり進めていくことが大事だ」と述べるにとどめ、具体的な言及はしなかった。

 

 

 「嘉手納以南」の返還については、グアムに移転する海兵隊の部隊名や兵員数の内訳が確定しないことなどから、キャンプ瑞慶覧は返還区域の具体的な協議が進んでいない。日米両政府は米軍再編最終報告で、返還の「詳細な計画」を二〇〇七年三月末までに作成する予定だったが、いまだに見通しが立っていない。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707111700_03.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月10日朝刊)

2007年7月10日(火) 朝刊 1・27面

 

年金・普天間で論戦/タイムス・RBC 公開討論

 

西銘氏・自立発展と加憲訴え/糸数氏・護憲で平和な暮らし

 

 

 沖縄タイムス社と琉球放送(RBC)は九日、二十九日投開票の参院選沖縄選挙区に立候補を表明している自民党公認で現職の西銘順志郎氏(57)=公明推薦=と野党統一候補で元参院議員の糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=の公開討論会を那覇市久茂地のパレット市民劇場で開いた。西銘、糸数両氏は最大の争点になっている年金問題や憲法改正、米軍普天間飛行場移設など基地問題などを討論。西銘氏は「『自立への一議席』を掲げ、沖縄の自立発展に尽くす」と訴え、糸数氏は「県民の暮らし、安全について『平和の一議席』で貢献する」と強調した。

 

 

 五千万件の年金記録不備問題で、西銘氏は「社会保険庁および政府に責任がある」とした上で、「政府の責任で、一年以内で年金記録の不備を精査し、不利益がないように完全支払いを実現する」と主張した。糸数氏は「年金問題は政府与党の失政で、その責任で解決するべきだ」と批判。「年金の記録が確認できる年金通帳と基礎年金を税金で賄う方針が必要」と述べた。

 

 

 改憲問題で、糸数氏は「平和憲法を堅持し、世界の平和を導く理念。安倍政権は改憲し、日本を戦争ができる国にしようとしている」と護憲の立場を表明。西銘氏は「国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の三原則は堅持。時代に合うように環境権やプライバシーの権利などを加えて改正する」と加憲の考えを示した。

 

 

 米軍普天間飛行場の移設問題について、西銘氏は「普天間飛行場の危険性除去が最優先されるべきだ。県外・国外が困難な場合は県内移設も選択肢の一つ。地元の意向を尊重するべきだ」と県内移設を容認する方針を明らかにした。糸数氏は「新基地建設は反対。普天間飛行場は即時閉鎖するべきだ」と断言し「基地の整理・縮小は政治の責任。基地のない沖縄を目指していく」と主張した。

 

 

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる高校の歴史教科書検定問題で、糸数、西銘氏ともに文科省の対応を批判。検定意見の撤回を求め、沖縄戦の実相を正しく伝えることを訴えた。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

「自立」「平和」で激論/支持者、拍手合戦も

 

 

 「自立への一議席を」「平和の一議席を」。九日、那覇市のパレット市民劇場で開かれた参院選の公開討論会。沖縄選挙区に立候補を予定している西銘順志郎さん(57)、糸数慶子さん(59)が、それぞれの政策を掲げて「激突」した。

 

 

 白のかりゆしウエアを着た西銘さんと、赤いジャケット姿の糸数さん。現職と元職とあって、厳しい質問も貫録たっぷりに退けた。客席は次第にヒートアップし、互いの支持者が「拍手合戦」する場面も。

 

 

 四月の参院補選に続いて二度目の投票になる琉球大学三年の牧志可奈子さん(20)は論戦に耳を傾け、「平和、経済と、強調する部分が違った。低い投票率を伸ばせるか、年金問題など今の情勢をどれだけ反映した政策を出してくるかを見守りたい」と話した。

 

 

 那覇市の新城清一さん(78)は「基地問題の政策は対照的で、やはり最大の争点。聞いていても勉強になった」。宮古島市の吉田朋子さん(38)は「島に専門医がいないためにおじを亡くした。保革ではなく、離島振興を具体的に考えてくれる人を選びたい」と語った。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101300_01.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 朝刊 1・27面

 

防衛省、米軍に照会/枯れ葉剤使用

 

 【東京】米軍がベトナム戦争で使用した、猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を一九六一―六二年に、米軍北部訓練場などで散布していた問題で、守屋武昌防衛事務次官は九日の定例会見で、那覇防衛施設局を通じて在沖米軍に事実関係を確認していることを明らかにした。

 

 

 現在も土壌にダイオキシンが残留している可能性があり、水源への影響が懸念されていることについては、「在沖米海兵隊から北部訓練場の水質に関して問題があるという報告は受けていない」と説明した。

 

 

 一方、守屋次官は六、七両日の訪米で国防総省のローレス特別顧問ら米政府関係者と面談し、米軍普天間飛行場の移設について、移設先の現況調査(事前調査)を実施していることや、今後、環境影響評価(アセスメント)を県と進めていく考えであることを説明したという。

 

 

 そのほか、仲井真弘多知事の公務復帰については「早く公務に復帰され、大変良かった。沖縄と国との間で大変難しい問題を抱えているが、今後の知事のご尽力で、十年越しの在沖米軍基地の整理統合を進めていただきたいとの強い期待を持っている」と語った。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

「猛毒だ」と反発/労組など調査要求

 

 

 米軍北部訓練場などでの米軍による枯れ葉剤散布が米側文書で裏付けられたことに対し、連合沖縄(仲村信正会長代行)は九日、「(報道が)事実であれば、看過できない。日本政府に対し、汚染が予想される地域の早急な調査を求める」とのコメントを発表した。市民団体「日本平和委員会」も同日、「猛毒のダイオキシンによる土壌汚染の可能性があり、命にかかわる問題。日本政府に対し事実の究明と被害を及ぼさないための措置を求める」との声明を出した。

 

 

 連合沖縄は「北部訓練場地域は、県民の水がめとして多くのダムが設置されている所。県民に健康被害を及ぼすことがないか、県民に大きな不安を与えることになる。日本政府に対し、社会不安を惹起させないための有効な対処策を講ずるよう強く求める」としている。

 

 

 枯れ葉剤散布は八日、米退役軍人省の公式文書(一九九八年一月十三日付)で確認。同文書は、六一―六二年の沖縄駐留中、枯れ葉剤を浴び後遺症を負ったとする元米兵の訴えを認定している。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101300_03.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 朝刊 26面

 

軍命は明確 撤回可能/「集団自決」修正で2度目意見書

 

 高校歴史教科書の沖縄戦記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与が削除された教科書検定をめぐり県議会は十一日、六月定例会最終本会議で二度目の検定意見撤回と記述回復を求める意見書を可決する。同一の問題で二度の意見書の可決は初めて。仲里利信議長(70)に意見書可決の意義や思いなどを聞いた。

 

 

 ―二度の意見書可決の意義は。

 

 

 「文部科学省に県、県議会、市町村議会など六団体の代表が要請した。しかし、文科省の審議官は県民の総意を否定し、『教科図書用検定調査審議会が決定したことに、口を挟むことはできない』と一方的に切り捨てた。『集団自決』に軍の命令があったのは紛れもない事実。記述を回復させるために再度、何らかのアクションを緊急に起こす必要があると考えた」

 

 

 ―審議会の検定意見について。

 

 

 「検定結果は、文科省の調査官が日本軍の関与の記述について削除するよう、ある程度の原案を作ってから審議会で議論した。結論ありきで、ある意味で仕組まれたものだと考える。審議会の委員が実際にどのように調査したかも分からない。(文科省が)審議会の名を借りて作られたものは当然撤回できるはずだ」

 

 

 ―県議会の文教厚生委員会が渡嘉敷、座間味両島を調査した。

 

 

 「実際に手りゅう弾を渡されたと話す人、兄が軍命を受けたことを証言する女性など、軍命があったことを証明する具体的な証言が得られた。(教科書検定の)審議会の委員も現地を訪れ、体験者の証言にきちんと耳を傾けるべきだ」

 

 

 ―今後の対応は。

 

 

 「まず意見書は文科省に送付する。これからどのような対応をするかは、県議会や県などと意見交換しながら決めていくだろう」

 

 

 ―沖縄戦の体験者として検定問題をどうみる。

 

 

 「検定結果は、死者を冒とくしている。歴史の事実を否定するとまた戦争への道を歩んでしまう。この問題に保守も革新もない。事実は事実として、きちんと意見の通る国でなければならない。一部の人たちが戦争を美化し、歴史の事実を歪曲するということは祖父、父、弟を失った者として決して許すことはできない」(聞き手=社会部・平良吉弥)

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101300_06.html

 

 

 

2007年7月10日(火) 朝刊 2面

 

新石垣 月内に事業認定/県議会特別委

 

 県議会の米軍基地関係、観光振興・新石垣空港建設促進、少子・高齢化対策の三特別委員会が九日開かれた。米軍基地関係特別委では、米軍が北部訓練場などで枯れ葉剤を散布していた問題について上原昭知事公室長が「事実関係を外務省に照会中」と説明、照会結果を受けて対応を検討していく考えを示した。観光振興・新石垣空港建設促進では首里勇治土木建築部長が、新石垣空港の未契約用地の強制収用を可能にする事業認定を今月中旬か下旬に申請したい考えを明らかにした。少子・高齢化対策特別委で県は、認可外保育所への給食費支援について来年度予算化を目指す方針を示した。

 

 

米軍基地関係

米軍艦船民間入港 協定改定働き掛け

 

 

 県議会米軍基地関係特別委員会(親川盛一委員長)で上原知事公室長は、米艦船が与那国町祖納港へ入港した問題で「今後も日米地位協定の見直しを求める中で、緊急時以外の使用禁止を盛り込めるよう働き掛けていきたい」と述べ、通告があれば民間港湾に入港できると規定する日米地位協定の改定に取り組む考えを示した。新川秀清委員(護憲ネット)の質問に答えた。

 

 

 米空軍嘉手納基地から大量の航空燃料が流出した問題について上原公室長は「県民生活の安全確保の面から調査結果の公表を要請する」とし、原因の公表を米軍に求める考えを示す一方、土壌などのサンプル採取については困難との見方を示唆した。嘉陽宗儀委員(共産)への答弁。

 

 

 米軍が枯れ葉剤を北部訓練場などで散布していた問題について上原公室長は「事実確認を外務省に照会中。結果を見て対応したい」と述べた。渡嘉敷喜代子委員(護憲ネット)への答弁。

 

 

観光振興・新石垣

土産・飲食費増で施策

 

 

 観光振興・新石垣空港建設促進特別委員会(國場幸之助委員長)では県観光商工部と土木建築部がそれぞれ第二次県観光振興計画(二〇〇五―〇七年)と新石垣空港整備事業の進ちょく状況を報告した。

 

 

 観光関連の〇六年実績は、コンベンションの県外・海外参加者数、スポーツキャンプ合宿数、宿泊施設客室数などは〇七年目標を上回る一方、県内消費額の増加やクルーズ船、国際会議の誘致、外国人観光客誘客が課題となっている。

 

 

 伸び悩む観光客一人当たりの県内消費額について仲田秀光県観光商工部長は「(第三次計画で)目標の下方修正はしない。産業振興の観点から土産費や飲食費増に向けて県が直接かかわり、宿泊費や交通費は旅行会社などと連携しながらどんな施策が必要か検討したい」と述べた。高嶺善伸氏(護憲ネット)への答弁。

 

 

 首里土木建築部長は、新石垣空港の未契約用地の強制収用を可能にする事業認定について「今月中旬か下旬に申請したい。(一二年度末の供用開始予定までの)工事工程を考えると、申請する時期に来ている」と説明。根路銘恵一新石垣空港統括監は「事業認定の申請から認定の告示まで一年かかる。県としては事業認定後も、地権者と誠意をもって交渉を重ねていく」と述べた。辻野ヒロ子氏(自民)への答弁。新石垣空港事業用地(約百九十五ヘクタール)のうち、四月六日現在の用地収得率は81%(百五十八ヘクタール)。

 

 

少子・高齢化

認可外保育所に給食費

 

 

 少子・高齢化対策特別委員会(吉田勝廣委員長)は一議案と陳情十六件を審議。認可外保育所への給食費支援について伊波輝美福祉保健部長は「来年度の予算化を目指したい」と述べた。

 

 

 県青少年・児童家庭課によると、県内の認可外保育所は今年四月現在、四百四十九カ所で入所児童数は一万八千三十六人。児童一人当たり三百円で試算した給食費は年間十三億円(県と市町村で折半)だった。

 

 

 饒平名宏課長は「予算化の方法や額については調整中」と述べた。当銘勝雄氏(護憲ネット)への答弁。

 

 

 公立・認可保育所での障害児保育では、入所で障害の有無を判定する審査会が市町村で年一回程度しか開かれていない実態が明らかになった。

 

 

 赤嶺昇氏(維新の会)が「審査会が年一回しか開かれず障害児の入所時期を限定されることは児童福祉法に抵触するのではないか」とただした。

 

 

 伊波部長は「法に抵触する恐れがある」とし、その上で「保育予算の関係上、行政が直ちに対応できていない現状がある。努力を促していく」と答弁した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707101300_07.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月10日朝刊)

[米軍枯れ葉剤使用]

早急に実態を調査せよ

 知花弾薬庫でVX神経ガスのガス漏れ事故が発生し、作業をしていた米兵など二十四人が病院に収容された―との衝撃的なニュースが伝わってきたのは、復帰前の一九六九年七月のことであった。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルの報道によって、米軍は初めて、マスタード、GB、VXなどの毒ガスが沖縄に貯蔵されている事実を認めた。ベトナム戦争さなかの出来事だ。

 当時の新聞は「空にB52 海に原潜、陸に毒ガス。天が下に隠れ家もなし」と、住民の安全をないがしろにした軍事優先の米軍統治を強く批判した。

 だが、貯蔵されていたのは核兵器や毒ガスだけではなかったようだ。猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤が六一年から六二年にかけて、北部訓練場などで散布されていたというから驚きだ。

 沖縄での枯れ葉剤散布などによって前立腺がんにかかったとの元米兵の申し立てに対し、米退役軍人省はダイオキシンを浴びた可能性を認め、作業に携わった元米兵の後遺症を認定したという。九八年一月十三日付の同省の公式文書で明らかになった。

 元米兵が沖縄に勤務していた六一年から六二年にかけての時期は、米軍がベトナム戦争に介入し、枯れ葉剤を使用し始めた時期と重なる。

 米軍はその後、ゲリラをジャングルからあぶり出す目的で、おびただしい量の枯れ葉剤をベトナムの密林や水田などに散布した。

 その結果、密林が死に絶え、ベトナムの住民だけでなく、米国のベトナム帰還兵の中にも、がんなどの健康被害を訴える人たちが続出した。

 結合双生児として産まれたベトちゃんドクちゃんに象徴されるように、今なお続く健康被害、環境被害の深刻さは、二十世紀の国家犯罪ともいえる様相を呈している。

 北部訓練場ではかつて、ダムの湖水面を利用した訓練が行われているが、枯れ葉剤の散布が行われたとすれば由々しい問題だ。ダイオキシン残留の可能性がないかどうかを含め、早急に事実関係を調査すべきである。

 米軍の関係部局は、元米兵の申し立てに対し、「沖縄でダイオキシン使用を確認する文書はない」と回答したという。

 今回も同じような回答が予想される。だが、記録文書がないから確認できないというだけでは住民の不安は解消されない。基地を提供している政府と、当事者である米軍の誠実な対応を求めたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070710.html#no_1

琉球新報 社説(2007年7月10日朝刊)

枯れ葉剤散布 まず事実関係の解明急げ

 米軍が1961―62年に米軍北部訓練場などで猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を散布していたことが判明した。作業に携わった元米兵が後遺症などの補償を求めた審判をめぐる退役軍人省の公文書に記されている。

 ダイオキシンは自然分解がされにくく、汚染は長期間続くと指摘される。ゆゆしき事態だ。

 何よりも県民の「水がめ」に近い場所だ。しかも汚染が広範囲に及んでいる可能性がある。政府や県は詳細に事実を掌握するとともに、現地調査を含め早急に事実解明に乗り出す必要がある。

 枯れ葉剤の散布が明らかになった退役軍人省不服審判委員会の決定文によると、元米兵は61年2月から62年4月まで輸送兵として沖縄に赴任。枯れ葉剤が入ったドラム缶の輸送やドラム缶に枯れ葉剤を注入する作業に従事したほか、雑草除去のために枯れ葉剤を散布したというのだ。

 散布された場所は、北部訓練場内とその周辺の道路脇などで「2カ月以上にわたり枯れ葉剤を浴びた」と証言している。

 相当量の枯れ葉剤がまかれた恐れが強い。今回因果関係が認められた元米兵以外にも数10人の退役軍人が、ベトナム戦争時に沖縄で枯れ葉剤にかかわったことを理由にがんなどを患ったとして補償を求めていることからも、大量散布の疑いは消えない。

 ベトナム戦争中に展開された枯れ葉剤作戦に関する悲劇や悲惨さなどは、テレビ報道、映画などを通してよく知られている。散布地域ではがんや先天性異常児、死産などが多発。前立腺がんになったとの元米兵の主張に対し、同省も証言内容や証拠などから「矛盾がなく正当」と認定した。

 北部の森林地帯には貴重な生物種や植物などが生息・分布している。自然環境への影響はないのか。ダムの水は大丈夫だろうか。看過できない問題だ。

 北部訓練場を抱える東村の伊集盛久村長は「まず事実関係をはっきりさせてもらいたい。その上で、村民を対象とした健康診断の実施を国に求めたい」と語る。懸念は当然である。

 最近嘉手納基地で起きたジェット燃料漏れ事故で米軍は、県による汚染土壌の採取や現場撮影を頑強に拒んだ。今回も恐らく情報開示や調査要請に対し、非協力な姿勢で臨むであろうことは想像に難くない。

 だが事は県民の健康、安全にかかわる極めて重大な問題だ。米国の公的機関が認めている。散布の事実はなかったでは済まされない。枯れ葉剤を使用した場所や使用量などについて、一刻も早く事実関係を包み隠さず明らかにする責任がある。

(7/10 9:42)

http://ryukyushimpo.jp/news/storytopic-11.html

 

 

沖縄タイムス、琉球新報 関連記事(7月9日)

2007年7月9日(月) 沖縄タイムス 夕刊 1・6・7面

 

北部で枯れ葉剤散布/米軍、60年代訓練場一帯

 

 米軍がベトナム戦争で使用した、猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を一九六一―六二年、沖縄の米軍北部訓練場などで散布、作業に携わった元米兵が前立腺がんの後遺症を認定されていたことが八日までに米退役軍人省の公式文書で明らかになった。

 

 

 【国頭・東】緑豊かな県民の水がめの周辺に、猛毒ダイオキシンを含む枯れ葉剤がまかれていた。「ショック」「住民の健康と環境の調査を」。地元の国頭、東両村の村長らは報道に衝撃を隠せない。米軍北部訓練場は一部返還が決まっており、跡利用への影響も懸念した。エコツーリズムの舞台として活用する住民は、不安の払拭を求めた。

 

 

 国頭村の宮城久和副村長は「大変ショック。アメリカの公的な機関から発表されている事実。国はきちんと調査をし、住民に知らせてほしい」と話した。同村では訓練場の返還後、新たな土地活用について話し合いを進めており、「今後、計画に影響を及ぼすのでは」と懸念した。

 

 

 東村の伊集盛久村長は「散布が事実なら由々しき問題。県民の水がめを抱える村として看過できない」と語気を強めた。「国に事実を明らかにしてもらい、その上で村民の健康調査を求めていきたい」と話した。

 

 

 高江区の仲嶺武夫区長は「ヘリパッド着工も進む中、住民の不安がますます大きくなった。まず場所の特定が必要。ダムに流れた可能性も否定できない」と、不安を隠せない様子で語った。

 

 

 国頭ツーリズム協会の山川安雄代表は「まったく初めて聞いた。北部訓練場には生物調査などで多くの人が入っているが、植物の生育が悪いなど、異常さを裏付ける情報は聞いたことがない」と語る。「報道が事実なら、完全に不安を払拭するためにも場所の特定やきちんとした環境調査をしてほしい」と求めた。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

ベトナム向け「実験」か

 

 

 枯れ葉剤の影響について長年ベトナムで取材を続ける報道写真家の石川文洋さんの話 一九六一年当時はまだ枯れ葉剤の人体への影響については把握されてない時期だが、同時に米国はベトナム戦争への本格介入を前に、既に軍事顧問団を送っており当然、米軍は枯れ葉剤の戦略的な重要性に気が付いていたはずだ。

 

 

 北部訓練場での散布は、ベトナム戦争へ向けた「実験」の位置付けと、訓練の障害を取り除くための雑草除去という二つの目的があったのではないか。

 

 

 枯れ葉剤の影響は長期間続く。二〇〇五年にベトナム現地で取材した時も障害がある赤ちゃんが次々と生まれていた。今後十年で終わるのか百年続くのか、誰も断言できないところが一番恐ろしい。

 

 

基地返還にも影響/琉球政府 元担当者

 

 

 米軍による枯れ葉剤の散布が判明した米軍北部訓練場(東村など)は、部分返還に向け政府が米軍ヘリパッドの移設工事に着手したばかり。枯れ葉剤による汚染の有無などその実態は不明のままで、周辺住民は「汚染の程度や健康被害が分からないことが不安」と話している。

 

 

 「米軍の毒ガス移送が大きな問題になったことは知っているが、枯れ葉剤の使用が問題にされた記憶はない」。一九七二年の沖縄の本土復帰前から琉球政府(現沖縄県庁)に勤務、基地問題にかかわってきた元幹部は話した。

 

 

 ヤンバルクイナに代表される貴重な動植物が残る沖縄本島北部。人口が多い島の中南部へ水を供給する複数のダムもある。元幹部は「枯れ葉剤は後遺症の問題もあり、事実なら基地返還にも影響するはずだ」と指摘する。同訓練場は一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で一部返還で合意。順調なら数年以内に返還されることになるが、米側には汚染除去などの義務はない。

 

 

 隣接の同県名護市で環境保護に取り組む「ジュゴンの里」代表の東恩納琢磨さん(42)は「枯れ葉剤散布は聞いたことがないだけに被害が恐ろしい。これまでも別の基地で有害物質が発見された経緯がある。汚染をきれいに除去し、情報公開すべきだ」と話した。

 

 

水がめ地帯 散布は重大

 

 

 沖縄県環境審議会会長の桜井国俊沖縄大学長(環境学)の話 北部訓練場は沖縄県民の水がめでダムがつくられ続けており、その地帯で枯れ葉剤がまかれたということは重要な問題でたいへん気になる。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは環境の中では消えないからだ。米軍基地内で行われることは分かりにくく、枯れ葉剤の散布は県も知らされていないだろうし、われわれも知らなかった。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707091700_01.html

 

 

 

北部訓練場で枯れ葉剤 国と米軍に事実究明要求

 

 米軍が1961―62年に米軍北部訓練場などで猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を散布していたことが明らかになった。地元住民や環境保護団体からは散布に対する反発とともに「どの場所でどのくらい使用したのか、事実関係をはっきりすべきだ」と、県による立ち入り調査の実施や、情報公開を求める声が上がった。

 伊集盛久東村長は「事実だとしたら大変なこと。村民の健康が心配だ」と驚きを隠さない。出勤途中のラジオ放送で初めて知ったという。伊集村長は「枯れ葉剤の散布が事実だとすればゆゆしき問題だ。県民の水がめであるダムを抱える村として看過できない」と述べ、「まず事実関係をはっきりさせてもらいたい。その上で、村民を対象とした健康診断の実施を国に求めたい」と語った。

 北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、移設予定地の同村高江の仲嶺武夫区長も「とんでもないことだ」と絶句した。仲嶺区長は「このままでは住民は不安な気持ちで日々を過ごすしかない。まず保管、使用した場所の特定をしてほしい」と事実の究明を米軍に求めた。

 沖縄環境ネットワークの真喜志好一世話人は「米軍基地の中でどのような環境汚染があるのか、県は立ち入り調査を求めるべきだ。県民の命を守る立場から、日米地位協定を変えていくべきだ」と話した。

 世界自然保護基金(WWF)ジャパン自然保護室の花輪伸一主任は「ベトナムで大量に使われた枯れ葉剤と同じものだと思われる。ベトナムではいまだに森林が回復していなかったり、高濃度の汚染がある。沖縄でも見た目にはないが、土の中に残留している可能性が高い。米軍の責任であり、日本と協力してどんな悪影響を及ぼしているのか調べないといけない」と強調した。

 沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は「周辺は『沖縄の水がめ』であり、どんな形で影響して

いるのか分からない。現地

の自然も含め、影響がどうでたのか検証、点検する必要がある」と語り「東村高江のヘリパッド移設問題なども併せ、抗議していきたい」と話した。

 

 

(琉球新報 7/9 16:01)

 

 

 

 

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070709-00000000-ryu-oki

 

 

 

2007年7月9日(月) 沖縄タイムス 夕刊 7面

 

ヘリパッド移設/車両立ち入り阻止

 

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で九日、移設作業に反対して座り込みを続ける同区住民ら約二十人が、訓練場のメーンゲートやN4地区などの入り口で、作業車などが訓練場内に立ち入るのを阻止している。

 

 

 午後一時現在、作業車は訓練場に入れていない。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707091700_03.html

 

 

 

2007年7月9日(月) 沖縄タイムス 夕刊 7面

 

星条旗再び掲揚/沖国大准教授

 

 沖縄国際大学のピーター・シンプソン准教授が米軍普天間飛行場に向けて星条旗を逆さに掲揚し、渡久地朝明学長から中止を命令された件で、同准教授は九日午前、再び星条旗を研究室のベランダから逆さに掲揚した。

 

 

 同准教授は「普天間飛行場の危険を知らせるためと言論の自由を守るためであり、学長を怒らせるためではない」と説明した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707091700_06.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説、共同通信 関連記事(7月8日)

2007年7月8日(日) 沖縄タイムス 朝刊 25面

 

復帰35年 沖縄自立へ/超党派有志の会シンポ

 

 琉球大学アメリカ研究センターと沖縄対外問題研究会は七日、シンポジウム「復帰三十五年を迎えた沖縄の課題」を西原町の琉球大学で開いた。六月二十一日に「復帰三十五年沖縄宣言」を発表した「超党派有志の会」を中心に約七十人が参加、復帰後の沖縄の現状について理解を深めた。

 

 

 比嘉幹郎ブセナリゾート社長が「沖縄の自立的発展を目指して」をテーマに基調講演。「犠牲と差別の強要に対する反発だった」という沖縄の政治文化を挙げ、「自由は自立することで得られる。そのためには現在の依存社会からの脱却と、自分のことは自分たちで決めるという自治をやっていく必要がある」と述べた。

 

 

 基調講演に続き、東江平之元名桜大学長、高良鉄美琉大教授、我部政明同大教授、高嶺朝一沖縄対外問題研究会会員を加えパネルディスカッションが行われた。東江さんは「復帰前後は人権や自治など、県民の間ではさまざまな動揺があった。人権は復帰によって改善されたが、自治の不安は最近の教科書問題などで再燃している」と指摘。「沖縄のアイデンティティーを守るためにも自治を強めていくべきだ」と強調した。

 

 

 高嶺さんは「復帰と同時に沖縄も国政に参加したが、選挙をやればやるほど中央の利権が入り、沖縄の自立的発展の機会が失われているような皮肉を感じる」と危機感を示した。高良教授は「沖縄戦、米軍統治、復帰運動が現在につながっているという流れを今の若者に伝えることが大切。それが若い世代のエネルギーになる」と次世代に期待した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707081300_04.html

 

 

 

 

 

 

琉球新報 社説

 

防衛白書 いたずらに脅威あおるな

 

 抑止重視の「存在する自衛隊」から、対処重視の「より機能する自衛隊」へ―。6日の閣議で報告、了承された防衛省になって初の2007年版防衛白書の特徴を一言で表現すると、こうなろうか。つまり、本来の自衛隊の役割であった専守防衛から一歩進めて、さらに海外派遣についても能動的に推進していく、ということだろう。白書は「国際的な安全保障環境のための国際社会の取り組みに主体的、積極的に参加することが重要な課題」と強調する。

 しかし、そこにはなし崩し的なイラク派兵を中心とした、過去の海外派遣への総括・反省は見られない。いたずらに周辺国の脅威をあおって、軍事力の強化を強調するだけでは、国民の共感は得られまい。それだけでなく周辺のアジアの国々を刺激するだけだろう。

 一方、沖縄に関しては、普天間飛行場代替施設の建設など、ほぼ06年版を踏襲する形となった。名護市や県が求めているV字形滑走路の沖合修正にも触れておらず、到底、県民の納得できる内容ではない。「負担軽減」の道筋は見えず、むしろ、一連の米軍再編については説明の段階ではなく実施の段階に入っている、との印象だ。辺野古での環境現況調査(事前調査)に自衛艦を出動させた事実を見ても分かるが、基地建設をしゃにむに進めていく政府の姿勢を裏付けているといえよう。

 冷戦時代の自衛隊は日米安保体制の下で、仮想敵国ソ連の脅威に対する抑止力として存在意義があった。冷戦が終結し、ソ連が崩壊した今、世界は国際的なテロ組織の台頭、北朝鮮による核実験と弾道ミサイル開発に象徴される大量破壊兵器の拡散という時代に突入している。このような時代背景に基づき、白書は国際平和維持活動(PKO)やイラク復興支援特別措置法などによる自衛隊の海外派遣が「付随的活動」から「本来任務」に格上げされた意義を強調している。紛争地における“主役”の地位を狙っているのだろうか。

 省昇格をめぐっては当初、市民団体や識者などから「防衛庁のままで何がいけないのか」「シビリアンコントロール(文民統制)の堅持を」などとする批判や注文が噴出していた。これに、白書は「(統制が)弱まることはない」「諸外国は好意的」など、具体性がなく、批判にまともに応えたとは言い難い。

 周辺諸国の脅威をあおり、逆に中国は「防衛省誕生」に警戒感を持つ。これでは、互いに不信感を増幅させるだけで、双方にとって決して好ましい結果はもたらさない。軍事力の強化だけでなく、お互いが防衛政策の透明性を高めていく中で、例えば防衛交流などさまざまな取り組みが求められる。

 

 

(7/8 9:53)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25276-storytopic-11.html

 

 

 

(7月8日 共同通信の配信記事)

 

 

沖縄で枯れ葉剤散布 60年代、米軍訓練場 退役軍人省文書で判明 ダイオキシン残留の可能性

 【マニラ8日共同=舟越美夏】米軍がベトナム戦争で使用した、猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を一九六一―六二年、沖縄の米軍北部訓練場(国頭村東村)などで散布、作業に携わった元米兵が前立腺がんの後遺症を認定されていたことが八日までに米退役軍人省の公式文書で明らかになった。米領グアム島での枯れ葉剤使用の実態調査を進めているグアム議会議員らが入手した。

 米軍が沖縄に枯れ葉剤を貯蔵していたとの指摘はこれまでもあったが、貯蔵・使用が文書で認定されたのは初めて。文書は米軍が沖縄に枯れ葉剤を集積、ベトナムへの運搬基地としていたことをうかがわせており、現在も北部訓練場などの土壌にダイオキシンが残留している可能性もある。  同訓練場は九六年の日米両政府合意で面積七千八百ヘクタールのうち約四千ヘクタールの返還が決まっており、今月三日には一部返還に向けた工事が始まったばかり。

 周辺一帯は「沖縄の水がめ」ともいわれる地域で、汚染除去問題などを契機に県民の反米感情が高まれば、米軍基地返還や移設をめぐる協議の行方にも影響を与えそうだ。

 文書は後遺症の補償などを求めた元米兵に対する退役軍人省不服審判委員会の九八年一月十三日付の決定文。

 決定文によると、元米兵は六一年二月から六二年四月まで輸送兵として沖縄に赴任。枯れ葉剤が入ったドラム缶の輸送やドラム缶に枯れ葉剤を注入する作業のほか、北部訓練場内とその周辺の道路脇の雑草除去のために枯れ葉剤の散布を行った。上官は枯れ葉剤の害については説明せず、防護服なども与えられなかったため散布の際、枯れ葉剤が身体や衣服に付着した。

 元米兵は、このため前立腺がんになったと主張。決定は沖縄での枯れ葉剤使用を示す軍の公式書類はないとしたが、元米兵の証言内容や証拠は「矛盾がなく正当」とし、前立腺がんがダイオキシンを浴びたことに起因するのは確実として、補償などの権利を認めた。

周辺住民ら「初耳」 実態は不明のまま

 米軍による枯れ葉剤の散布が判明した沖縄の米軍北部訓練場(沖縄県東村など)は、部分返還に向け政府が米軍ヘリパッドの移設工事に着手したばかり。枯れ葉剤による汚染の有無などその実態は不明のままで、周辺住民は「汚染の程度や健康被害が分からないことが不安」と話している。

 「米軍の毒ガス移送が大きな問題になったことは知っているが、枯れ葉剤の使用が問題にされた記憶はない」。一九七二年の沖縄の本土復帰前から琉球政府(現沖縄県庁)に勤務、基地問題にかかわってきた元幹部は話した。

 ヤンバルクイナに代表される貴重な動植物が残る沖縄本島北部。人口が多い島の中南部へ水を供給する複数のダムもある。元幹部は「枯れ葉剤は後遺症の問題もあり、事実なら基地返還にも影響するはずだ」と指摘する。

 同訓練場は一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で一部返還で合意。順調なら数年以内に返還されることになるが、米側には汚染除去などの義務はない。

 隣接の同県名護市で環境保護に取り組む「ジュゴンの里」代表の東恩納琢磨さん(42)は「枯れ葉剤散布は聞いたことがないだけに被害が恐ろしい。これまでも別の基地で有害物質が発見された経緯がある。汚染をきれいに除去し、情報公開すべきだ」と話した。

 (共同=小宮伸太郎)

 一帯は沖縄の水がめ

 沖縄県環境審議会会長の桜井国俊沖縄大学長(環境学)の話 北部訓練場は沖縄県民の水がめでダムがつくられ続けており、その地帯で枯れ葉剤がまかれたということは重要な問題でたいへん気になる。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは環境の中では消えないからだ。米軍基地内で行われることは分かりにくく、枯れ葉剤の散布は県も知らされていないだろうし、われわれも知らなかった。

 枯れ葉剤とは 猛毒ダイオキシンを含んだ除草剤。米軍はベトナム戦争中の1961年から約10年間、密林を拠点に抵抗を続ける南ベトナム解放民族戦線への対策として、密林を枯らす目的で空中から散布した。米コロンビア大などによると、同戦争でまかれた枯れ葉剤に含まれるダイオキシン総量は最大366キロ。ダイオキシンは自然界では分解しにくく、発がん性や、生殖器官などに悪影響を与える内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)としての有害性が指摘される。散布地域ではがんや先天性異常児、流産、死産などが多発。帰還兵にも被害が出ている。

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(7月7日)

2007年7月7日(土) 朝刊 1面

 

県議ら「軍関与を確信」/「集団自決」証言次々

 

 沖縄戦での「集団自決(強制集団死)」について、高校の日本史教科書から軍の関与を示す記述が文部科学省の教科書検定で削除された問題をめぐり、県議会文教厚生委員会(前島明男委員長)は六日、ほぼ一日かけて渡嘉敷、座間味島を視察した。計八人の体験者から「玉砕命令を聞いた」などの生々しい証言を聞いた委員らは視察後、「軍の関与は間違いなくあった」などと語り、軍関与の記述復活に向け、文科省への要請を続ける意向を示した。

 

 

 委員十一人と委員外一人の県議十二人は同日午前に渡嘉敷島での視察を終え、午後座間味島に渡った。

 

 

 六十七人が犠牲になった「産業組合壕」や、「集団自決」で亡くなった四百二人を含めた千二百二十人を祭った「平和之塔」などを訪れた。同島で平和学習ガイドブック作成のため、体験者から聞き取り調査をしている宮里芳和さん(59)から「体験者の七割は玉砕命令を聞いている」などの説明を受けた。

 

 

 座間味コミュニティセンターでは、沖縄戦時下、座間味村助役だった宮里盛秀さんの妹の宮平春子さん(80)ら体験者六人の証言を聞いた。「玉砕命令を聞いた」「梅沢隊長は『舌をかみ切って死になさい』と言った」などの証言が次々に飛び出した。体験者が声を詰まらせ、手を固く握り締めながら語る姿に、涙を流す委員もいた。

 

 

 委員の一人、仲里利信県議会議長は「これまで語らなかった体験者が、思い切って口を開いてくれた。それだけ教科書検定問題は重く受け止められているということだ。われわれも体験者の思いに真摯に向き合い、歴史を子どもたちに正しく伝えるため、検定意見が撤回されるまで動き続ける」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_02.html

 

 

 

2007年7月7日(土) 朝刊 2面

 

汚染土の除去完了/嘉手納燃料流出

 

施設庁長官「浄化し再利用」

 

 

 【東京】米空軍嘉手納基地内でのジェット燃料流出問題で、米空軍が実施している土壌入れ替え作業について北原巖男防衛施設庁長官は六日、米側から「五日に(汚染された)土壌の除去作業がすべて完了した」との報告を受けたことを明らかにした。定例会見で述べた。

 

 

 施設庁によると、同基地内に立ち入りした三日に米側から説明を受けた段階での除去土壌は五百三十五立方メートル。今後、新たな土での埋め直しを予定している。

 

 

 除去された土壌は基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング法」で約半年間かけて浄化し、基地内の建設工事事業で再利用されるという。

 

 

 北原長官は「地域住民が大変心配している事案なので、これからもしっかりフォローしていきたい。情報などがあれば、速やかに地域住民に説明したい」と述べた。

 

 

 小池百合子防衛相の就任については「沖縄担当大臣を経験され、沖縄の基地問題についても大変詳しい。県知事をはじめ多くの方々をご存じだ。施設庁職員一丸となって小池大臣の下、最優先である米軍再編の一日も早い実施に向けて努力したい」と語った。

 

 

 一方、米軍普天間飛行場の移設に関する政府と地元の協議会の再開については「議題を含めて、具体的にいつということはまだ決まっていない」と述べるにとどめた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_03.html

 

 

 

2007年7月7日(土) 朝刊 31面

 

学長に撤回求める/星条旗逆さ掲揚中止命令

 

 【宜野湾】沖縄国際大学の准教授が普天間飛行場に向け星条旗を逆さに掲揚したことに渡久地朝明学長が中止を命令した件で、准教授が所属する総合文化学部と法学部の教授会は六日、「表現の自由に抵触する恐れがある」として中止の撤回と謝罪を求めた。一方、学長はホームページなどで「米国市民が不快感や屈辱感を抱く」との声明を出しており、学内の言論活動をめぐり議論を呼びそうだ。

 

 

 総合文化学部の小熊誠学部長は「本来、ヘリ墜落事故が起きた大学として訴えるべきで、学長は県民の気持ちを考えるべきだ」と糾弾。学部として星条旗を掲げたピーター・シンプソン准教授の行動に支持を表明した。

 

 

 法学部の佐藤学教授によると、今回のキャンペーンは象徴的言論で法律には反しないという。佐藤教授は「学長の主張は教員のあらゆる表現活動に拡大解釈される危険性がある」と指摘。中止要求は言論活動の委縮につながるとして「大学の自殺行為だ」と批判した。

 

 

 これに対し、大学当局は事前に施設の使用許可がなかったと説明。学部の決議については「現時点では何も聞いておらず、コメントできない」としている。

 

 

 シンプソン准教授は週明けに正式に許可を申し入れ、拒否された場合は署名運動を行う考えだ。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_05.html

 

 

 

2007年7月7日(土) 朝刊 30面

 

平和資料館に300万人/改築7年で大台達成

 

 【糸満】糸満市摩文仁の県平和祈念資料館(宮城智子館長)の延べ入館者数が六日、二〇〇〇年四月に改築・移転してから七年で三百万人を突破し、修学旅行で訪れた仲野宏美さん=東京都豊島学院高二年=に記念品が贈られた。

 

 

 突然の朗報に驚いた表情の仲野さん。「素晴らしい記念に加えられたことがうれしい。これからも資料館にたくさんの方が訪れるといいな」と喜びを語った。

 

 

 宮城館長は「親子で訪れることができるような、県民に密着した資料館として取り組みを進めていきたい」と述べた。

 

 

 同館は改築・移転以来、年平均約四十万人が来館しており、〇六年六月に二百五十万人を突破していた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707071300_06.html

 

 

 

琉球新報 社説

 

「集団自決」再可決 それでも国は拒否なのか

 

 県議会文教厚生委員会が間髪を入れず新たに動いた。

 文部科学省による教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する日本軍の強制をめぐる記述が修正・削除された問題で、同委員会は5日、検定意見の撤回と記述回復を求める意見書案を再度、本会議に提出することを全会一致で可決した。6日には委員会のメンバー全員が渡嘉敷、座間味両島に渡り、集団自決の生存者らから当時の様子などを聞き取り調査した。

 県議会の迅速な対応は多くの県民から共感され、支持を集めるだろう。

 議会が同一定例会中に同じ趣旨の意見書をあらためて可決するのは初めてである。2日前、県や県議会を含む県内6団体の代表らが文科省を訪れ、検定撤回を要請した際の対応は「門前払い」同様だった。煮え切らない文科省の態度に、不満や憤りが一気に沸騰した形だ。

 新たな意見書案は、文科省の姿勢について「あらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で(教科用図書検定調査)審議会に諮問している」と検定手続きの在り方を厳しく批判、記述復活を再度求める内容だ。

 係争中の裁判を検定意見の参考資料としたことには「一方の当事者の主張のみを取り上げている」と指摘。「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」とした。当然の結論である。

 それにしても、要請団への文科省の回答は私たちの認識とは懸け離れすぎている。撤回要求の拒否理由は「審議会の決定事項」とのほぼ一点張りだ。県民を納得させられるはずがない。

 「審議会を隠れみのにしているにすぎない」(平良宗潤・県歴史教育者協議会委員長)といった批判に対し、文科省はどう答えるのだろうか。

 解せないのは審議会の態度も同様だ。検定意見を承認した論拠や審議の過程などは不透明なままで、弁明も一切ない。

 そもそも審議会のメンバーすら分かっていない。文科省を含め説明責任を放棄していると批判されても仕方がない。

 安倍晋三首相の見解もぜひ聞いてみたい。

 軍命否定論は、従軍慰安婦問題をめぐる安倍首相の「官憲が人さらいのように連れて行く強制性はなかった」との論法と根底で重なり合っている。そんな批判にどう反論するのだろう。

 県議会の意見書案は11日の本会議で全会一致で可決される。政府は今度こそ、県民の撤回要求に誠実に向き合い、納得いく回答を示さねばならない。

 

 

(7/7 9:56)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25250-storytopic-11.html