沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月6日)

2007年7月6日(金) 朝刊 1面

 

「軍命受けた」助役明言/妹2人が初めて証言

 

座間味「集団自決」45年3月25日夜

 

 

 沖縄戦時下、座間味村で起きた「集団自決(強制集団死)」で、当時の助役が「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するように言われている」と話していたことが、助役の妹二人の証言で六日までに分かった。当事者が初めて証言した。「集団自決」の軍関与が教科書検定で削除され、軍命の有無をめぐる裁判が進む中、日本軍の軍命を示す新証言として注目される。(編集委員・謝花直美)

 

 

 証言したのは「集団自決」で亡くなった当時の座間味村助役の宮里盛秀さんの妹・宮平春子さん(80)=座間味村=と宮村トキ子さん(75)=沖縄市

 

 

 座間味島への米軍上陸が目前となった一九四五年三月二十五日夜。春子さんら家族と親族計三十人が避難する座間味集落内の家族壕に、盛秀さんが来た。父・盛永さんに対し「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するよう言われている。間違いなく上陸になる。国の命令だから、潔く一緒に自決しましょう」というのを春子さんが聞いた。午後十一時半に忠魂碑前に集合することになったことも伝えた。

 

 

 集合時間が近づき、壕から出る際、トキ子さんの目前で、盛永さんは盛秀さんを引き留めようとした。盛秀さんは「お父さん、軍から命令が来ているんです。もう、いよいよですよ」と答えた。

 

 

 その後、盛秀さんは産業組合壕へ移動。同壕の「集団自決」で盛秀さんら家族を含め六十七人が亡くなった。

 

 

 当時、盛秀さんは防衛隊長も兼ね、軍の命令が村や住民に出されるときには、盛秀さんを通した。

 

 

 春子さんもトキ子さんも、沖縄県史や座間味村史の編集作業が行われた七〇―八〇年代に同島におらず、証言の機会がなかった。

 

 

 座間味島の「集団自決」の軍命を巡り、岩波書店と大江健三郎さんが名誉棄損で訴えられた「集団自決」訴訟では、元戦隊長が、助役が軍命を出したと主張。さらに訴訟資料を参考に文科省の教科書検定で、「集団自決」記述に修正意見がつき、日本軍関与が削除されている。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707061300_01.html

 

 

 

2007年7月6日(金) 朝刊 1面

 

「集団自決」再び意見書 県議会委可決

 

 高校歴史教科書の沖縄戦記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与が削除された教科書検定問題で、県議会の文教厚生委員会(前島明男委員長)は五日、検定意見撤回と「集団自決」の記述回復を拒否する文部科学省の対応を批判、あらためて検定意見撤回と記述の回復を求める意見書案を全会一致で可決した。文科省への強い不満を表し、記述回復に向けた要請行動をさらに強化するのが目的。文案の最終的な調整を行い、十一日の最終本会議で可決される見込み。県議会は六月二十二日に検定意見の撤回などを求める意見書を全会一致で可決した。県議会事務局によると、同一の問題で、一定例会中に二度の意見書を可決するのは初めて。

 

 

 文厚委では、安里カツ子副知事らとともに県内の行政・議会六団体代表の一人として四日に文科省などに要請した仲里利信議長が同省の対応などを説明した。仲里議長は「県民代表が検定意見を撤回させる強い決意で要請したが、文科省は審議官が対応し、『教科図書検定調査審議会が決めたことに口出しできない』と撤回を拒否した。撤回に向けて、再度、意見書を可決し、要請する必要がある」とした。六日に予定されている渡嘉敷、座間味両島への視察中、文案の最終的な調整を行うことを確認した。

 

 

 意見書案は、県議会や県内四十一市町村の全議会で意見書を可決したことを受けて県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会の代表ら六人の要請に対し、文科省が意見書撤回と記述の回復を拒否した経緯を明記し、「同省の回答は容認できない」と批判した。

 

 

 県議会や県内四十一市町村のすべての議会で意見書が可決されたことを挙げ、「県民の総意が明らかにされたことに対する重みへの配慮が十分でなかったことは遺憾」と訴えた。さらに「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実。沖縄戦の実相を正しく伝え、悲惨な戦争を再び起こさないようにするため」と検定意見撤回と記述の回復を再度要請している。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707061300_02.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月6日朝刊)

 

 

[検定撤回要請]

 

まっとうな見解が聞きたい

 

 県議会と県内四十一のすべての市町村議会が足並みをそろえて意見書を採択し、県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会の六団体が連名で政府に要請した。めったにないことである。

 

 

 教科書検定で、沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」の記述部分に検定意見が付され、日本軍関与の表現が削除・修正させられたことについて、要請書はこう指摘している。

 

 

 「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものである」

 

 

 「筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた沖縄県民にとって、今回の削除・修正は到底容認できるものではない」

 

 

 簡にして要を得た文章だ。沖縄戦を体験したウチナーンチュの、掛け値のない思いが盛り込まれている。

 

 

 だが、政府が今回の要請の重みを正面から受け止め、真摯に対応したとは言い難い。

 

 

 伊吹文明文科相への面談申し入れにもかかわらず、応対したのは、大臣でもなく副大臣でもなく、事務方のトップでもなく、審議官であった。

 

 

 文科省の布村幸彦審議官は「教科書用図書検定調査審議会が決めたこと」だと説明したという。

 

 

 その一方で、鈴木宗男衆院議員の質問主意書に対して、政府は三日、「沖縄戦の実態について誤解を生じる恐れのある表現に適切に検定意見を付した」との答弁書を閣議で決めている。

 

 

 六月二十三日の慰霊の日に、安倍晋三首相は記者団からこの問題を問われ、自身の見解を述べるのを避けた。私たちが聞きたくて知りたいのは、安倍首相の見解である。

 

 

 果たしてどの部分が「適切」なのか。沖縄の要請に対してどう思うのか。教科書の元の記述と日本軍関与の表現を削除・修正することと、果たしてどちらが「沖縄戦の実態について誤解を生じ」させることになるのか。

 

 

 実は、「集団自決」については、軍の関与を国として認定し、援護法を適用したケースがある。援護法がらみの軍関与の肯定と、教科書検定がらみの軍関与の記述削除という二重基準を、国はどう説明するのか。

 

 

 今回の教科書検定問題を通してあらためて思うのは、沖縄戦に関する正確な事実をできるだけ数多く、幅広く記録・保存し、戦争の実相を後世に語り継ぐことの大切さである。「集団自決」に関する再調査や県民大会、体験者の話を聞く県民向けのシンポジウムなどを検討してもいいのではないか。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070706.html#no_1

 

 

 

琉球新報 社説

 

小池新防衛相 信頼される省への転換を

 

 初の女性防衛大臣に4日、小池百合子前首相補佐官が就任した。沖縄担当相も務めた新大臣だが、普天間移設問題では、早くも「日米合意案」を強行する構えだ。「沖縄にとっては厳しい大臣」との批判も出ている。新大臣にはまず「聞く耳を持つ大臣」への転換を促したい。

 近ごろの防衛省には、違和感と危機感を感じる国民も多いだろう。

 外敵を監視するかと思いきや、国民を監視していた情報保全隊の問題。防衛施設庁では談合事件、自衛隊幹部の機密情報持ち出し問題もあった。

 普天間移設問題では、辺野古沖の環境調査に掃海母艦を派遣し、「国民に大砲を向ける暴挙」との批判も受けた。

 教科書検定では、沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制に関する記述の削除問題で、久間章生前防衛相が軍命の有無を問われ「そんな昔のことは私は知りません」。揚げ句は「防衛省は日本軍のことを引き継いだわけでない」とやる。

 過去や歴史に学ばない。そんな姿勢や認識だから、今なお原爆症で苦しむ多くの国民の存在が頭から消えている。だから、ついには原爆投下も「しょうがない」との発言が飛び出す。

 平時においてさえ、この程度の認識。有事においては、果たしてどうなることか。これでは、「一体、自衛隊は何から何を守っているのか」「有事に国民を守れるのか」との疑問や不信の声が上がるのも、しょうがない。

 「軍は民を守らない」のが沖縄戦で県民が学んだ教訓である。そして、普天間移設問題では「自衛隊は国民に大砲を向けてまでも、米軍基地建設を強行する」という悲しい現実を目の当たりにした。

 歴史に学ばず、国民の声に耳を貸さない。だから久間前防衛相は舌禍を起こした。辞任会見でも「しょうがない」を繰り返すあたりは、舌禍ではなく“確信犯”とみられても、しょうがない。

 そんな大臣の後だ。小池新大臣には、まず「民の声」を聴く耳を、そして真摯(しんし)に歴史と向き合い、沖縄戦の史実を知ってほしい。

 防衛省・自衛隊は国民を監視せず、国民監視の下で、国民に銃を向けず、国民の側に立ち、国民の安全と豊かさを、国を守る本務を全うしてほしい。その改革の指揮を小池新大臣が担う。期待は重い。

 在沖米総領事館は「前大臣より話しやすい。移設問題に追い風」と小池新大臣を歓迎する。一方で、内閣府幹部すら「沖縄には厳しい大臣の就任」と受け止める。

 沖縄担当相として、かりゆしウエアの普及や離島・へき地への医師確保、北部振興策の継続に強い政治力を発揮した。次は基地問題。県民が望む真の解決策の実現に、持ち前の政治力の発揮を期待したい。

 

 

(7/6 9:59)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25227-storytopic-11.html

 

 

 

2007年7月6日(金) 夕刊 1面

 

「集団自決」の現場視察 県議会文厚委

 

 「史実のねじ曲げは絶対に許さない」。県議会文教厚生委員会(前島明男委員長)の全委員が六日、沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」があった慶良間諸島を訪れた。「集団自決」の現場を視察し、体験者の証言を聞くなどして、県議会でも「集団自決」への日本軍の関与を独自に検証し、文科省に検定意見撤回を再度、要請する。県議団は「軍の関与という事実を教科書から消させない」と思いを強くしていた。

 

 

 視察には、同委員会所属の県議や県職員計十六人が参加した。午前には渡嘉敷島を訪れ、心ならずも自ら命を絶つことを強制された三百二十九人の慰霊碑「白玉之塔」や、「集団自決」現場を視察した。

 

 

 「集団自決」の現場では、体験者の金城武徳さん(76)と吉川嘉勝さん(68)が当時の状況を語った。金城さんは「軍の命令があり、村民は集落から移動した。米軍の迫撃砲が着弾する中で村民が集合し、村長が『天皇陛下万歳』と叫び、手榴弾が破裂した」と証言した。

 

 

 吉川さんは「防衛隊員だった義兄が手榴弾を爆発させようとしたが、爆発しなかった。父は火をおこし、その中に手榴弾を放り込んで爆発させようと試みた」「母が『死ぬのはいつでもできるじゃないか。手榴弾を捨てなさい』と叫び、そうして逃げられた」と証言した。

 

 

 引き続き、渡嘉敷村中央公民館で金城さんらへの質疑応答があった。吉川さんは当時、村長の助手をしていた兄の「米軍上陸の直前、日本軍は村役場を通じて十七歳以下の少年に厳重に保管していた手榴弾を二発手渡した。一発は米軍に、もう一発は自決用にということだった」との証言を紹介し、「日本軍による指示、誘導、命令、場の設定がなければ『集団自決』は絶対になかった」と断言した。

 

 

 証言を聞き終えた前島委員長は「検定意見削除は県民の総意だ。文科省にさらに強く訴えていく」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707061700_01.html

 

 

 

2007年7月6日(金) 夕刊 1面

 

普天間 淡々と記述/07年版防衛白書

 

 【東京】二〇〇七年版防衛白書の沖縄関係の記述は、前年版に一年間の基地問題の動きを追記しただけで、目新しさはない。こう着状態にある米軍普天間飛行場の移設問題についても進ちょく状況を淡々と記述するだけにとどめている。

 

 

 前年版には、「普天間飛行場を県外に移設できないのか」などQ&A形式のコラム3本が掲載されたが、今回はなくなった。

 

 

 普天間移設関係で追記されたのは、昨年八月から開かれている普天間飛行場の移設に関する協議会の開催状況や名護市キャンプ・シュワブ沖での現況調査(事前調査)を開始したことなど。県、名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動などに関する記述はない。

 

 

 このほか、昨年九月から米軍嘉手納基地に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備されたことや読谷飛行場など基地返還の進ちょく状況が記されている。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707061700_03.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月5日)

2007年7月5日(木) 朝刊 1・27面

 

国、検定撤回また否定/「集団自決」修正

 

県など6団体要請/文科相、面談応じず

 

 

 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与が削除された教科書検定問題で、安里カツ子副知事ら県内の行政・議会六団体代表が四日上京し、文部科学省など関係省庁に検定の撤回を要請した。代表団によると、文科省の布村幸彦審議官は「教科用図書検定調査審議会が決めたことには口出しできない」と述べるにとどめ、撤回を困難視する従来姿勢を堅持した。

 

 

 安里副知事は要請後の記者会見で県として「集団自決」を含む沖縄戦体験者の新たな証言や、埋もれた戦時資料の調査を検討する考えを明らかにした。また、県議会の仲里利信議長は、文教厚生委員会(前島明男委員長)の全委員が六日に渡嘉敷、座間味両島を現地調査し、「集団自決」体験者への聞き取りなどを実施することを報告した。証言を映像などに記録することを検討している。

 

 

 伊吹文明文科相は「日程上の都合」を理由に、面談に応じなかった。

 

 

 会見で、安里副知事は撤回を受け入れない文科省の姿勢に「到底、容認できない。何度でも要請する」と述べ、要請を継続する考えを強調した。

 

 

 仲里議長は、識者らで構成される審議会の議論が非公開で進む現状を強く批判。「学識経験者(審議会委員)がどういう方でどういう調査をしているのか分からない。委員と体験者による公開討論会をするべきだ」と述べ、審議の過程や検定の根拠を委員自らが明らかにすべきだと主張した。

 

 

 要請書は「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしに起こりえなかったことは紛れもない事実。今回の削除・修正は体験者による多くの証言を否定しようとするものだ」として、検定撤回を求めている。

 

 

 要請には県と県議会のほか、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議会議長会が参加。

 

 

 代表団の要請を受けた内閣府沖縄担当部局の東良信府審議官は「この問題は一気には解決しない。主張を繰り返すことが重要だ」と助言した。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

県民の声に厚い壁/官邸門前払い「強い落胆」

 

 

 【東京】「期待した分、強い落胆を感じている」―。高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する検定意見を撤回するよう求めた県内の行政・議会六団体による異例の要請行動。県内四十一市町村議会の可決を受け、「全県民の声」(安里カツ子副知事)を訴えた。しかし、文部科学省は従来と同様に“教科書通りの答弁”を繰り返すのみ。「日程上の都合」を理由に伊吹文明文科相との面談は実現せず、首相官邸には足を踏み入れることさえできなかった。

 

 

 「審議官には申し訳ないが…」

 

 

 要請終了後、県東京事務所で開かれた記者会見。県議会の仲里利信議長が静かに切り出した。

 

 

 「しかるべき配慮があって良かったというのが率直な思い。落胆している」とかみしめるように話した。

 

 

 代表団が求めた文科相への直談判が実現しなかった感想を、記者から問われた回答だった。

 

 

 文科省の布村幸彦審議官は三十分間の会談で、教科用図書検定調査審議会の決定に政治家も行政も口出しできないとして「理解してほしい」と繰り返すばかり。終始、うつむき加減で口調は静かだったという。

 

 

 会見で県町村議会議長会の神谷信吉会長(八重瀬町議会議長)は「文科省の壁は厚かった」と苦渋の表情。県市議会議長会の島袋俊夫うるま市議長は検定過程の不透明さに「平和の指標たる教科書が曖昧模糊では、戦争の実相を語り継げない」と強く批判した。

 

 

 県市長会の大濱長照副会長(石垣市長)は「すべての『集団自決』に軍命があったかどうかは分からない」と主張する文科省に「そうじゃない。一つでも二つでも軍命があれば教科書に書くべきだ。それほど悲惨なことだ」と訴えた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707051300_01.html

 

 

 

2007年7月5日(木) 朝刊 1面

 

小池氏、防衛相就任/沖合移動は困難視

 

 【東京】原爆投下を「しょうがない」と発言し引責辞任した久間章生前防衛相の後任として、小池百合子首相補佐官(国家安全保障担当)が四日午後、正式に防衛相に就任した。女性の防衛担当閣僚は初めて。小池氏は、同日夜の就任会見で、日米安全保障体制を基調とすることを強調、最優先課題に在日米軍再編の実施を挙げた。その上で普天間飛行場をめぐって名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動について「時間との関係もある」と述べ、困難との見方を示した。

 

 

 小池氏は米軍再編について「日米両政府で合意している普天間飛行場の移設、そして在沖米海兵隊のグアム移転をはじめとする再編計画を一日も早く実現していきたい」と意欲を示した。

 

 

 V字形滑走路の沖合移動については、普天間移設が日米特別行動委員会(SACO)の合意から十年以上経過していることを強調し、「それを始めると時間との関係もある。基本的には日米合意案に基づいて理解を求めていく」と述べた。

 

 

 その上で沖縄担当相を務めた経験を踏まえ、「日米合意は既にできているということは、名護の方も重々ご存じだ。沖縄の方を知った上で防衛大臣を務める。これまでの知見を活用するということは私の大きな役割だろうと思っている」と述べ、地元説得に自信をのぞかせた。仲井真弘多知事が公約に掲げる「普天間飛行場の三年以内の閉鎖状態」については「十年という年月がたっている中で『三年以内』という思いが出てきたこともよく分かる」と述べるにとどめた。

 

 

 小池氏は同日午後、皇居での認証式、安倍晋三首相からの辞令交付を経て正式に就任した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707051300_02.html

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月5日朝刊)

 

 

[ヘリパッド移設]

 

「押し付け」でいいのか

 

 米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、那覇防衛施設局は工事用進入路のゲート設置などの作業に着手した。

 

 

 着工に反対する地元住民らは前日から座り込みを始めていたが、住民の目をかいくぐるように、翌日の早朝、業者のトラックが進入路に入り、二カ所に金属製ゲートを設置した。

 

 

 施設局は作業終了後に、東村と高江区に着工を通知したという。地元からは「着工前に詳しい日時を連絡すべきではないか」と批判の声が上がった。

 

 

 ヘリパッド移設に伴い、ヘリ騒音などの直接の被害を受けるのは近隣の住民たちである。輸送ヘリの垂直離着陸機MV22オスプレイへの更新も取りざたされる中で、地元の人たちが不安を抱くのは当然ではないか。

 

 

 いかに反対の声が強かろうと、少なくとも地元には事前に通知し、説明をしておくのが筋だったのではないか。

 

 

 ヘリパッドの移設問題は一九九六年十二月のSACO(日米特別行動委員会)最終報告が発端になった。

 

 

 北部訓練場の過半を占める約三千九百八十七ヘクタールを二〇〇二年度末までをめどに返還することが明記されたが、返還条件のヘリパッド移設、希少動植物の調査などの関係で返還が遅れた。

 

 

 当初七カ所のヘリパッドの北部訓練場残余部分への移設が返還の条件だった。日米合同委員会は〇六年二月、六カ所に減らすことで合意した。

 

 

 当初はヘリパッド移設に反対していた東村も結局受け入れ容認に転じた。施設局は南側の三カ所で着工する計画で、残りの三カ所についても本年度に着手するという。

 

 

 この問題の経緯を見ると、ヘリパッド建設予定地に近く、反対姿勢を明確にしてきた東村高江区に対する受け入れへの圧力が、次第に強まってきた様子がうかがえる。

 

 

 ヘリパッドは人口百五十人余の高江区を取り囲むように造られる。地元の人々の日々の暮らしに甚大な影響を与えずにはおかないだろう。

 

 

 現に住民の中には引っ越しを考えている人もいるという。小規模の地域にヘリパッドの移設を押し付けるだけでは問題の解決にはつながらない。

 

 

 SACO合意は地元の頭越しに決まった。後は受け入れを迫るだけだ。新ヘリパッドがどう運用されるのか、明らかにされていない。なぜ六カ所も必要なのか、理由も検証されていない。

 

 

 環境破壊への懸念も消えない。ヘリパッド新設で基地機能は強化される。振興策などと引き換えに移設を受け入れるだけでは地域の展望は描けない。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070705.html#no_1

 

 

 

琉球新報 社説

 

検定意見撤回要請 軍命の事実は消せない

 

 日本軍による「集団自決」強制の記述を削除するよう求めた文部科学省の高校歴史教科書検定の撤回を県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議長会の各代表が文科省などに要請した。

 文科省の布村幸彦審議官は「教科用図書検定調査審議会が決めることであり、理解していただきたい」とし、検定意見の撤回を拒否した。

 戦前は国定教科書で国民を戦争へと駆り立てたこともあり、審議会の独立性を確保することは重要である。しかし、それは審議会が十分に機能していることが前提である。

 文科省職員の教科書調査官が教科書の記述内容を調査し、合否方針や検定意見の内容をまとめ、審議会に諮問するが、ほぼ原案通りに答申されることが多いといわれる。審議会の形骸(けいがい)化が指摘される状況にある。

 しかも、歴史的事実に基づいておらず、公正な検定が行われたとは認められない。「理解を」と言われても理解できるはずがない。

 教科書調査官は、大阪地裁で争われている「沖縄集団自決冤罪(えんざい)訴訟」の原告の意見陳述を検定意見の参考資料にしている。これまでの沖縄戦研究者の蓄積を無視し、著しくバランスを欠いた検定意見と言わざるを得ない。

 多くの住民が集団自決の軍関与を証言している。今回の検定意見は歴史を歪曲(わいきょく)するものである。

 それを正すのは政府の務めである。文科省が誤りを放置することは許されない。

 改正学校教育法の教育目標に盛り込んだ「国を愛する心」を育てる一環として「軍命」の削除があったのではないかとの疑念もわく。

 安倍晋三首相は著書で「教育の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家をつくることだ」と述べている。それを達成するためには歴史としっかり向き合い、子どもたちに伝えることが不可欠である。

 政府に提出した要請書は「正しい過去の歴史認識こそが未来の道標になる」と指摘している。それを政府は受け止めるべきである。

 要請団は伊吹文明文科相か副大臣、政務官との面談を求めたが、実現しなかった。県議会をはじめ、全41市町村議会が可決した検定意見の撤回を求める意見書は歴史的事実を踏まえたものであり、撤回要求は県民の総意である。その重みを軽く見てはいないか。

 軍命削除は歴史教育に大きな汚点を残すことになる。軍命によって多くの命が失われた事実を消すことはできない。

 歴史的事実を「自虐的」とする流れを止める必要がある。正しい歴史認識に基づく日本軍関与の記述復活に全力を挙げ、次代に歴史を引き継ぐことが県民の務めである。

 

 

(7/5 9:54)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25192-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事(7月4日夕刊)

2007年7月4日(水) 夕刊 1面

「那覇空港の早期拡張を」/促進連が国交省に要請

 【東京】那覇空港拡張整備促進連盟(会長・儀間紀善県商工会議所連合会長)は四日午前、国土交通省に安富正文事務次官らを訪ね、那覇空港の拡張整備の早期実現を求める冬柴鉄三国交相あての要請書を手渡した。内閣府沖縄担当部局にも同様の要請をした。

 儀間会長によると、鈴木久泰航空局長は「沖縄の問題については十分理解している。PI(総合的調査)に沿った内容にしたいので、地元と協力したい」と従来通りの姿勢を示すにとどめた。

 内閣府の東良信府審議官は「一年でも二年でも早く実現するよう、国と一緒に頑張ってほしい」と述べたという。

 儀間会長は「われわれは那覇空港を最優先で拡張すべきだと考えている。切羽詰まった問題だと理解してくれたと思う」と述べ、早期拡張の実現に期待した。

 那覇空港について国交省の交通政策審議会航空分科会は、六月二十一日の答申で「二〇一〇年―一五年度ごろに夏季の旅客需要の増加に対応できなくなる」と指摘。今後の対応方針として「抜本的な空港能力向上のための施設整備を含め、将来需要に対応するための方策を講じる必要がある」と、拡張整備の必要性を明記した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707041700_02.html

2007年7月4日(水) 夕刊 5面

空気銃発砲 米少年に猶予判決

 北谷町の住宅街で発生した米軍属の息子による空気銃発砲事件で、女性にけがを負わせたとして重過失傷害などの罪に問われた米国人の無職少年(19)の判決で、那覇地裁は四日、懲役一年二月、執行猶予三年(求刑懲役一―二年)を言い渡した。

 〓晋一裁判官は「空気銃の威力を十分認識しながら発射しており、周辺住民や地域社会に与えた不安感も大きい」と述べる一方で「未成年で、精神的な不調を抱え、判断能力の未熟さにもやむを得ない所がある。更生の可能性も高い」と述べた。

 判決によると、少年は今年三月八日午後零時四十五分ごろ、建物四階の自宅ベランダからライフル型の空気銃で金属性の弾丸を発射。歩行中の米国人女性(50)の右胸に命中させて全治二週間のけがを負わせたほか、駐車場に止められていた軽乗用車のテールランプを壊した。

 少年は自宅で暇をもてあましている間に、父親が保管していた空気銃を発射。ベランダに並べた空き缶や、非常階段に向けて撃っている間に、木に引っ掛かったビニールのような物を狙って女性に命中させた。また乗用車のナンバープレートを狙って数発を撃った。

 空気銃には法令規定の四倍以上の殺傷能力があり、父親は銃刀法違反(無許可所持)の罪で罰金二十万円の略式命令となった。

※(注=〓は「頼」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707041700_03.html

2007年7月4日(水) 夕刊 5面

ヘリパッド移設/反対区民 座り込み続く

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺のヘリパッド移設作業に反対する区民ら約二十人は四日午前、那覇防衛施設局が工事に着手したN4地区のゲート前など三カ所で、座り込みや監視活動を続けている。

 座り込みに参加した宮城勝己さん(54)=東村平良=は「米軍提供施設だと言うが、住民が使っていた道路に突然ゲートを張り、事前通知なしに着工するのは地元軽視だ」と国の“突然の封鎖”を批判した。豊見城市から足を運んだ諸喜田耕子さん(43)は「人口が少ない土地に基地を押し付ける国のやり方に怒りを感じる。地元だけでなく、国民全体の問題だ」と話した。

 午前九時から抗議集会が開かれ、沖縄平和運動センターの山城博治事務局長が「重機などの建設車両は昨夜のうちに入ったようだ」と報告。住民らが「区民の生活を守れ」「水源地を壊すな」などと抗議の声を上げた。

 施設局によると、午前九時すぎから工事を実施しているという。整地作業などを行っているとみられる。民間地の県道70号から取材をしていた記者に、ゲートの基地警備員が「写真を撮るな」「(県道でも)関係ない」と取材活動を規制しようとする場面もあった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707041700_04.html

2007年7月4日(水) 夕刊 5面

「基地は危険」星条旗を逆さ/沖国大・シンプソン准教授ら

 【宜野湾】普天間飛行場の危険性を訴えようと沖縄国際大学のピーター・シンプソン准教授らは米独立記念日の四日午前、「普天間」が見渡せる同氏の研究室で星条旗を逆さに掲げた。米国の法律で、星条旗は「生命や財産に極度の危険が迫っている際、その危険を伝える目的を除き、下方に傾けて掲揚してはならない」と定められている。

 シンプソン准教授によると、この取り組みはイギリスでも平和団体が毎年、米軍基地に向けて行っている。星条旗を逆さに掲げることで、米軍基地がいかに危険かを示すのが狙いだ。

 英国出身のシンプソン准教授は「街の真ん中に基地があるのはあり得ない。米国に反対するのではなく、危険な基地がなくなってほしい」と趣旨を説明。ヘリ墜落事故の八月十三日を経て毎日、続ける予定で「事故を知る学生は四年生しかいなくなった。このキャンペーンで多くの学生が身近な問題に関心を持ってほしい」と呼び掛けた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707041700_05.html

2007年7月4日(水) 夕刊 5面

燃料の浸透 最大で4メートル/県公表 嘉手納基地

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、県環境保全課は四日、地面への浸透は深さ最大四メートルだったと公表した。三日の立ち入りで、米軍側から説明を受けた。米軍はこれまでの作業で汚染土壌の大半、五百三十五立方メートルを撤去し、六日までには終了するという。

 燃料の浸透は、給油タンク直近の盛り土部分で最大四メートル、平地になっている部分で一メートル。流出は五月二十五日に発生したが、三日時点でも県側が油臭を確認した。

 汚染土壌を舗装された場所に広げ、油分を蒸発させる処理について、米軍は約半年かかるとの見通しを示した。油臭がなくなれば、処理完了と判断するという。排水用のため池は基地外とつながっておらず、流出することはないとした。

 環境保全課は「適正な処理と、進捗状況の具体的な説明、公表を求める」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707041700_07.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(7月4日朝刊)

2007年7月4日(水) 朝刊 1・2・29面

 

久間防衛相辞任/県内関係者、幕引きに警戒感

 

 「与党として困っていると感じた」「けじめをつけた」―。 久間章生防衛相が三日、米国の原爆投下を「しょうがない」と発言した責任を取り辞任した。県内の被爆者団体などからは「選挙に負けるから辞任するのか」と厳しい声が上がった。

 

 

 県原爆被爆者協議会の伊江和夫事務局長(78)は「表面的にはこれで幕引きかもしれないが、自民党内には似たような考えを持った人がかなりいて、本音がぽろっとこぼれたのかなと感じる」と警戒する。「被爆者の高齢化は進んでいるが可能な限り核廃絶を訴えていく」と決意を新たにした。

 

 

 沖縄市の金城辰也さん(41)は五年前に亡くなった被爆者の父文栄さんの遺志を継ぎ、反核運動を続けている。「原爆は戦争を終結させるためではなく、米国が威信を見せつけるために投下し、何十万人もが亡くなった。不見識で、辞任したからといって絶対に許せない発言」と話す。「選挙に負けるから辞任するというのか。被爆国の大臣としての失言と真摯に受け止めておらず、すごく腹立たしい」と怒りが収まらない様子だった。

 

 

 県原水協の芳澤弘明代表理事は「辞任は当然。遅きに失したくらい」と言い切る。「心から反省しているとは到底思えない。今回の発言は一人、久間大臣だけの問題ではなく安倍内閣の体質そのものを表している。今後も、厳しい目を向け続ける」

 

 

 日本非核宣言自治体協議会メンバーの安田慶造読谷村長は「被爆者や戦争体験者の苦労を何も分かっていない。辞任はしかるべき措置だ」と指摘。「安倍首相も辞任勧告をせずに、かばおうとするなど内閣の体質も問われる」と非難した。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

県、移設への影響注視

 

 

 久間章生防衛相が三日、引責辞任した。米軍普天間飛行場の移設をめぐって政府と県・名護市がこう着状態にある中、V字形滑走路の沖合移動に柔軟姿勢を示してきた久間氏の突然の辞任は、関係者に大きな衝撃を与えた。沖縄担当相の在任期間最長を記録し、「沖縄の理解者」(県幹部)と期待される小池百合子首相補佐官(前沖縄相)が次期防衛相に就任するが、移設作業で強硬姿勢が目立つ防衛省事務方と官邸の信頼関係も依然として健在。沖縄側が主導権を握れるかどうか先行きは不透明だ。

 

 

 小池補佐官の防衛相就任について県幹部は「沖縄担当相も務めた沖縄の理解者。実情を踏まえた対応を期待している」と普天間問題の解決に向けた政治手腕に期待を寄せる。普天間移設に関し、仲井真弘多知事が求める「代替施設の沖合移動」や「普天間飛行場の閉鎖状態」は政府の「ゼロ回答」が続く。安倍晋三首相の側近ともいわれる小池氏の就任は、県にとって「都合のいい」(首脳)側面もある。

 

 

 県首脳は「日米ともに事務方は(日米合意は)動かせないと言っている。日米の再編協議を後戻りさせられないとの考え方があると思うが、これを打開するにはもう少し次元を高めた議論や判断が必要」と強調。官邸に直結する小池氏には、首相の「政治決断」を促すパイプ的な役割を期待する見方がある。

 

 

 内閣府幹部も「県や沖縄県名護市名護市”>名護市と信頼関係の土台がある。防衛相だから百パーセント沖縄の言うことを聞くことはできないだろうが、今後は沖縄と防衛省が感情ではなく理屈で交渉できるのではないか」と期待感を示した。

 

 

指導力見守る

 

 

 普天間移設問題では、名護市が求める沖合移動に否定的な姿勢を崩さない守屋武昌防衛次官と、沖縄側の意向に配慮を示す久間防衛相との間に溝があるとされた。

 

 

 安倍首相の守屋次官への信頼は厚いとされ、官邸側は「政府案(V字案)が基本」とする姿勢で終始一貫している。

 

 

 守屋次官の在任は異例の四年目を迎え、今年三月に一年間の定年延長手続きを済ませている。防衛施設庁の廃止に伴う九月の人事異動に合わせて退官するとみられていたが、政府・与党内には久間氏の辞任で「在任期間が来年三月まで延びる」(防衛省幹部)との見方が浮上している。

 

 

 日米合意に固執し、沖合移動を求める県側の意向に耳を傾けない守屋次官に対し、県内部では強いアレルギーがある。県は小池氏が省内でどれだけ指導力を発揮するか、注意深く見守る構えだ。

 

 

幹部不安なし

 

 

 一方、防衛省幹部は小池氏の就任は「ウエルカム(歓迎)だ。心配はしていない」と官邸の意向は揺るがない、との認識を強調。参院選の結果を踏まえ、普天間代替施設の環境影響評価方法書の県などへの提示のタイミングを模索する意向だ。

 

 

 別の幹部は小池氏について「沖縄を熟知しているだけに、県や名護市との認識の違いについてもソフトに対処してくれるのではないか」と指摘。小池氏の沖縄との良好関係を逆手に取ってV字案の実現を推進できるとの期待を膨らませている。(東京支社・島袋晋作、吉田央、政経部・渡辺豪)

 

 

県の課題認識 新防衛相歓迎

仲井真知事

 

 

 仲井真弘多知事は三日、小池百合子新防衛相の就任について「県の意向、地元の要望に配慮していただけるものと思っている」と歓迎する談話を発表した。

 

 

 小池氏について知事は「これまで沖縄担当相も歴任し、沖縄の実情に詳しく、また、国家安全保障問題担当補佐官として在日米軍再編など県の直面する課題を十分認識している」と高く評価。その上で「とりわけ緊急かつ重要な課題である普天間飛行場移設問題の早期進展に期待する」と普天間問題の事態打開に期待を寄せた。

 

 

普天間移設 理解求める/小池新防衛相

 

 

 【東京】防衛相への就任が決まった小池百合子首相補佐官は三日夕、米軍普天間飛行場の移設問題について「仲井真弘多知事や沖縄の各自治体関係者とは大変面識がある。意見を伺い、理解も求める努力をしたい」と述べ、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設のV字形滑走路案(政府案)を推進する考えを示唆した。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 

 

 小池補佐官は安倍晋三首相から「在日米軍再編を着実に前に進めてほしい」と指示されたことを説明した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707041300_01.html

 

 

 

 

 

2007年7月4日(水) 朝刊 1・28面

 

ヘリパッド着工/地元通知は作業終了後

 

 【東】三日早朝に始まった米軍北部訓練場の一部返還に伴うが東村と高江区に着工を通知したのは、作業終了後の同午前九時すぎだったことが、分かった。ファクスで「移設工事六カ所のうち三カ所に着手した」との文書を送信していた。

 

 

 高江区の仲嶺武夫区長は「住民はいつ工事が始まるのかと不安の日々を過ごしており、着工前に詳しい日時を連絡するべきではないか。マスコミから第一報が入る現状はおかしい」と話している。

 

 

 防衛施設局は二日午後、県に工事着手届出書を提出。同時に、職員が東村役場と同区を訪れ、伊集盛久村長と仲嶺区長にそれぞれ工事内容を説明したが、着工開始日は「適切な時期」としていた。

 

 

 伊集村長と仲嶺区長は三日からの着工を新聞報道などで知ったという。施設局は「住民の阻止行動が予想され、混乱を避けるために詳しい日時は明示しなかった」と説明している。

 

 

 伊集村長は「七月の着工は示されていたので、着手後に正式な通知が来てもさほど問題はない」との認識を示した。

 

 

 反対派の住民らは、三日も午後五時ごろまで座り込み、工事を警戒した。四日も引き続き阻止行動を行う。

 

 

     ◇     ◇     ◇     

 

 

作業着手「だまし討ち」

 

 

 米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設に反対する、なはブロッコリーの本永貴子代表ら十人は三日、那覇防衛施設局を訪れ、同日早朝の作業着手に「だまし討ちだ」と抗議した。池部衛次長は「工事車両の進入阻止など無用な混乱を避けるべく、いろいろ考えた」と答えた。

 

 

 本永代表らは、環境影響評価(アセスメント)手続きの途中で米兵の歩行ルートなどが追加されたとして、アセスのやり直しを要求。施設局側は「既存の獣道で、環境に著しい影響はない。アセスの対象外だ」と答えたが、本永代表らは「歩行ルートの使い方を明示せず、調査もせずに影響がないと判断できるのか」と詰め寄り、押し問答になった。

 

 

小さな集落に「過重負担」

 

 

 県民の基地負担軽減という大義名分の下、特定の小さな集落の人たちに過重な負担が強いられようとしている。

 

 

 一部返還が決まった北部訓練場ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設について、那覇防衛施設局は「工事に当たっては、生活環境や自然環境に著しい影響を及ぼすことがないよう最大限の努力を払う」としている。

 

 

 施設局が示しているのは、建設工事の影響であって、完成後に飛行するヘリの種類、後継機とされるオスプレイ配備の有無、飛行コースなど住民生活に密接にかかわる運用面を、具体的に明らかにしていない。

 

 

 東村高江区の住民の中には引っ越しを考える人さえいるという。

 

 

 特色ある喫茶店や農家など、高江区には豊かな自然を求め、本土や中部などから移り住んだ人もいる。北部の中でも活気が出てきた集落を、嘉手納基地の航空機騒音で住民の転出が相次ぐ「第二の砂辺(北谷町)」にしてしまっては、本末転倒だ。

 

 

 国からは、高江区に負担の「押し付け」と引き換えに、箱物施設などの地域振興策を提案する動きも出てきそうだ。

 

 

 しかし、住民が最も望んでいるのはヘリパッドの移設中止であり、次に軍事演習優先の米軍の運用に歯止めをかけることだ。

 

 

 移設に伴う新たな基地負担を地域住民に強いる以上、政府はダムを含む貴重な自然環境の悪化を監視するための基地内への立ち入り権や、実効性のある騒音防止協定など日米地位協定見直しを含め抜本対策に取り組むべきだ。

 

 

 そうでなければ、国は小さな地域社会の住民に対し、「振興策で分断を誘導した」との批判を免れない。(北部支社・知念清張)

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707041300_02.html

 

 

 

 

 

2007年7月4日(水) 朝刊 2面

 

嘉手納油流出/県、土壌採取拒否「残念」

 

 県議会(仲里利信議長)六月定例会は三日、最終日の一般質問が行われた。米空軍嘉手納基地内のジェット燃料流出問題で、県の基地内への立ち入りが認められたものの、土壌採取が拒否されたことについて、知念建次文化環境部長は「大変残念に思う。今回の立ち入りにおいて、土壌除去現場での米軍側の対応状況や移動先における処理方法、地下水への影響、処理施設の管理体制などについて可能な限り確認し、米軍側の措置状況を把握していきたい」と述べた。

 

 

 厚生労働省が今後削減する療養病床を老人保健施設などに転換促進するため、これまで社会福祉法人が設置した特別養護老人ホームなどの設置を医療法人にも認める緩和措置を検討していることについて、県福祉保健部の伊波輝美部長は「医療療養病床から老人保健施設などへの転換が進むと、療養に要する費用が医療保険から介護保険へと移動し、県や市町村の財政負担が増加することが予想される」と懸念を示した。

 

 

 療養病床の転換を進めるに当たって、地方財政の負担が増加しないよう「必要な財政措置を全国知事会から要望している」と答弁した。いずれも當山眞市氏(公明県民会議)への質問に答えた。

 

 

サンプル拒否一定理解示す

燃料流出で沖縄大使

 

 

 外務省の重家俊範沖縄担当大使は三日の定例記者会見で、米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で米軍が県による土壌のサンプル採取などを許可しなかったことについて「米軍自身も万全の措置を取っているということで、サンプリングなどは必要ないと判断したと理解している」と述べ、一定の理解を示した。燃料流出の日本側への通報が遅れたことなどについては「遺憾」との認識をあらためて示した。

 

 

 また、米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設事業が着工されたことについては「SACO(日米特別行動委員会)合意に基づく米軍施設の整理縮小の一環として行われるもの。そういう(北部訓練場の部分返還につながる)意味では重要なこと」との認識を示した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707041300_04.html

 

 

 

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年7月4日朝刊)

 

 

[久間防衛相辞任]

 

首相は任命責任がある

 

国民感情を逆なで

 

 

 米国による原爆投下を「しょうがない」と述べた久間章生防衛相が辞任した。参院選への影響を考慮しての判断らしいが、原爆使用を容認したとも受け取れるような現職大臣の発言は許されるものではなく、辞任は当然というしかない。

 

 

 千葉県内にある大学での講演で飛び出した発言はこうだ。

 

 

 「長崎に落とされて悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で、しょうがないなと思っている」

 

 

 「勝ち戦と分かっている時に原爆まで使う必要があったのかどうかという思いは今でもしているが、国際情勢、戦後の占領状態などからすると、そういうことも選択としてはあり得るのかなということも頭に入れながら考えなければいけない」

 

 

 ここには、原爆使用の違法性、残虐性の認識がまるでない。

 

 

 差別や健康被害に苦しんできた被爆者への配慮が感じられないだけでなく、二度とあの惨劇を繰り返してはならないという核廃絶への決意もくみ取れない。

 

 

 被爆国の国民感情を逆なでするような失言が、こともあろうに防衛大臣から飛び出したのはなぜなのか。

 

 

 自民党の中川昭一政調会長は以前、日本の核保有の是非を議論すべきだと主張した。そして今、安倍内閣は、集団的自衛権の行使について、憲法解釈の変更を検討している。

 

 

 「戦後レジーム(体制)の転換」というこの政権の掛け声の中で、過去の議論の蓄積や歴史認識を無視した「なんでもあり」の野放図な空気が漂っているのではないか。

 

 

 経験の浅い若い宰相の下で、内閣のたがが緩み、言いたい放題の閣僚を生んでいるのではないか。

 

 

 気心の知れた側近議員を集めた「仲良しクラブ内閣」の下で、問題が発生したときの適切な処理能力、危機管理能力を失いつつあるのではないか。

 

 

 最近の内閣の緩みを見ていると、そのような疑問が次から次に浮かんでくるのである。

 

 

相次ぐ閣僚の失言

 

 

 自民党の中川秀直幹事長が今年に入って、「閣議で首相が入室しても雑談を続け、起立しない大臣がいる」と述べ、安倍晋三首相への忠誠心を求めたことがある。この異例の発言自体が内閣の求心力の低下を示すものだ。

 

 

 安倍首相本人の判断の甘さ、身内をかばう意識の強さが裏目に出て、事態を余計に混乱させた側面もある。

 

 

 柳沢伯夫厚生労働相の「女性は産む機械」発言に対し、厚労相に対する辞任要求を突っぱね、かばい続けたのは安倍首相である。資金管理団体による巨額の光熱水費計上問題、談合事件の絡んだ不透明な政治献金問題で窮地に追い込まれた故松岡利勝農相をかばったのも安倍首相だった。

 

 

 国民の疑問に正面から答えようとせず、国会議員の数の力を頼りに「ナントカ還元水」という説明だけで押し切るやり方は、民主主義を破壊するものであり、そのことに気付かないで済ましてきたところに危うさを感じる。

 

 

 任命責任という言葉は、対立する野党の常套句になっていて、最近は言葉のインフレの様相を呈しつつあるが、それでもやはり安倍首相の任命責任は大きい、と言わざるを得ない。

 

 

 最近の政治の動きを見ると、国会運営から大臣の失言への対応まで、何もかも「選挙のため」「選挙を配慮して」「選挙が終わるまでは」と選挙一辺倒の対応のように見える。天下分け目の選挙を前にしてやむを得ない側面もあるが、それにしても、ちよっとやり過ぎだ。

 

 

 自民党は、各メディアの世論調査で、安倍政権の支持率が急速に低下しつつある現実を真剣に正面から受け止めた方がいい。

 

 

後任に小池補佐官

 

 

 安倍首相は、久間防衛相の後任に小池百合子首相補佐官を指名した。小池氏は、国際安全保障問題に明るいだけでなく、沖縄担当相を務めた経験もあり、沖縄問題にも詳しい。かりゆしウエアの普及にも一役買った。

 

 

 国と県の間で見解が対立している普天間飛行場の辺野古移設問題について「久間大臣―仲井真知事」のコンビは、落としどころを模索したものの、結局、うまくいかなかった。

 

 

 沖縄通の新大臣の誕生で現在のこう着状態がどう変わるのか、どのように采配を振るうのか、これからの仕事ぶりを注視したい。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070704.html#no_1

 

 

 

 

 

琉球新報 社説

 

防衛相辞任・問われる首相の任命責任

 

 先の大戦での米国による原爆投下を「しょうがない」と発言し国民の反発を招いた久間章生防衛相が3日、辞任を表明した。世界唯一の被爆国の閣僚としてあるまじき暴言であり、辞任したのは至極当然だ。

 安倍内閣の閣僚辞任は、政治資金収支報告書の不適切な処理で引責辞任した佐田玄一郎行政改革担当相に続いて2人目である。

 「政治とカネ」の問題で追及されているさなかに自殺した松岡利勝農相を含めると、昨年9月に安倍晋三首相が就任してから三閣僚が交代することになる。

 そもそも、任期途中で辞任を余儀なくされるような人材を国務大臣として登用したのは安倍首相である。首相の任命責任を厳しく問わなければならない。

 久間氏は6月30日、千葉県柏市で講演した際に、先の大戦での米国による原爆投下について「長崎に落とされ悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で、しょうがないなと思っている。それに対して米国を恨むつもりはない」と述べた。

 原爆を投下することは、取りも直さず大量破壊と無差別殺戮(さつりく)を意味する。今も多くの被爆者が後遺症に苦しんでいる。国際法に反する非人道的行為であり、どのような理屈を持ち出してきても容認できるものではない。

 それを「しょうがない」と平然と言ってのける神経は常軌を逸している。閣僚としての資質を欠いていると断ぜざるを得ない。

 だからこそ、国民の間から不信の声が巻き起こった。久間氏は1日「原爆は許せないという気持ちは微動だにしていないが、ああいう報道のされ方をするのは私の言い方にもまずい点があった。国民、被爆者の方に申し訳なかった」と陳謝、発言を事実上撤回したが、後の祭りだった。

 不可解なのは安倍首相の対応である。当初「米国の(当時の)考え方について紹介したと承知している」「核を廃絶していくのが日本の使命」などと述べ、問題視していなかった。その後も防衛相に注意を促すにとどまっており、あいまいな形で幕引きを図ろうとしていたようだ。

 暴言を容認する首相の感覚も国民の意識と大きく懸け離れている。本当に核兵器廃絶を目指すのなら、原爆投下を是認するかのような暴言を吐く閣僚を任にとどめるべきではないだろう。

 後任として防衛相に就任する小池百合子氏は環境相や沖縄担当相、首相補佐官を歴任し、かりゆしウエアを世界に広める会の発起人も務めている。

 沖縄の実情に詳しいだけに、県民の意向を踏まえた形で、基地問題に対処するよう望みたい。

 

 

(7/4 9:39)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25161-storytopic-11.html

 

 

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(7月3日)

2007年7月3日(火) 朝刊 1面

 

ヘリパッドきょう着工 東村高江区

 

施設局が届け出

 

 

 米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設で、那覇防衛施設局は三日早朝に工事着手する方針を固め、県環境影響評価条例に基づき二日午後、県環境政策課に事前届け出を行った。届出書は、六カ所のヘリパッド移設予定地のうち、今回着工するのはN4地区二カ所とH地区一カ所と明示。残るG地区一カ所とN1地区二カ所も「本年度着手予定」としており、日米合同委員会で合意されれば着工手続きに入る見込み。完成予定日は二〇〇九年二月二十八日としている。

 

 

 施設局は三日以降、工事用進入路のゲート設置などの作業に着手。その後、施設整備に向けた本格工事を始める。

 

 

 移設に反対する周辺住民の一部が二日から現場付近で座り込みをしており、工事阻止行動などで混乱も予想される。

 

 

 県環境影響評価条例三四条に基づき施設局職員が二日夕、県環境政策課に「事業着手届出書」を提出した。

 

 

 届出書によると、事業規模は約三ヘクタール。事業区域は「東村の米軍北部訓練場内」。事業の種類は「ヘリコプター着陸施設及び進入路等の支援施設の整備」としている。

 

 

 施設局は工事による騒音を少なくするため、区域ごとに施行する予定だが、本年度施行分はN4地区とH地区が県道70号で分断されているため、同時施行するという。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707031300_01.html

 

 

 

 

 

2007年7月3日(火) 朝刊 1面

 

県・代表団、撤回要請へ/「集団自決」修正

 

 高校の歴史教科書の沖縄戦記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与が削除された教科書検定問題で、県の安里カツ子副知事が四日、同検定の撤回などを求め県内五団体の代表らとともに上京する。

 

 

 県のほか県議会、市長会、市議会議長会、町村会、町村議長会の代表ら。安倍晋三首相や文部科学省、内閣府などに要請する予定。

 

 

 二日行われた県議会(仲里利信議長)六月定例会の一般質問で、仲里全輝副知事は、県議会と県内四十一市町村の全議会で、沖縄戦「集団自決」への軍関与を削除した検定の撤回と記述復活を求める意見書が可決されたことについて、「県民の強い思いだと重く受け止めている。県としてもその事実の究明のために強く申し入れ、深い議論をしていただくよう対応していくべきだと考える」と述べた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707031300_03.html

 

 

 

 

 

2007年7月3日(火) 朝刊 2面

 

県、きょう基地立ち入り/嘉手納油流出

 

米軍、土壌採取認めず

 

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、米空軍は三日午前十時から基地内での土壌入れ替え作業に県と那覇防衛施設局職員が立ち会うことを許可した。施設局が二日午前、県環境保全課に通知した。県が求めた土壌などのサンプル採取は認められていないが、県は立ち入る方針だ。

 

 

 同基地には県職員七人、施設局職員四人の計十一人が立ち入る。汚染土壌の除去現場と、取り除いた土壌を基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング」の実施状況を確認する。

 

 

 一方で米軍は、県によるビデオや写真撮影、現場からの土壌などの採集は「不可」としており、県は三日の確認作業を行った上で今後の対応を検討する。

 

 

 県は先月七日に米軍から基地内立ち入りを認められたが、土壌などのサンプル採取を拒否され、目視確認にとどまっていた。このため、土壌や水のサンプル採取を含む基地内調査を再申請していた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707031300_04.html

 

 

 

 

 

琉球新報 社説

 

ヘリパッド移設・性急では混乱するだけだ

 

 東村高江区への米軍ヘリパッド移設工事の着手が目前に迫っている。建設に反対する同区の住民有志や市民団体メンバーらが2日朝から抗議の座り込みを開始した。

 建設予定地入り口では抗議集会が開かれ、静かな住環境や区民生活の安全確保などを訴える切実な声が上がった。

 人口約150人。パインを中心に農業で生計を立てる住民が多いのどかな小さな集落周辺は、ただならぬ雰囲気に包み込まれた。シュプレヒコールがこだまし、胸のボードには不信や不安のたけが書かれている。覚悟の表れなのだろう、道路に座り込む顔はいずれも思い詰めた重い表情だ。

 どう考えても、東海岸を望む小さな里にはおよそ不釣り合いな光景である。違和感を禁じ得ない。

 「一度完成してしまうと高江の被害はずっと続く」「子どもや孫など、次の世代のためにも着工させてはいけない」といった区民の声を国はどう受け止めるのか。

 ヘリパッドの同区移設は、米軍北部訓練場の一部返還に伴い10年前の日米特別行動委員会(SACO)の合意に盛り込まれた。移設計画に対し、区は二度にわたって反対決議をした。

 今年4月に行われた村長選挙では移設反対の姿勢を掲げて伊集盛久村長が無投票当選した。民間地にあまりにも近く、危険であるとして「住民の意思の先頭に立つことが村長の務め」との姿勢を表明していた。

 5月中旬、伊集村長から方針転換が告げられた。当初から変更の可能性の難しさに触れてはいたものの、村長は「これまでの手続きの経緯を踏まえると、移設場所の変更は難しい」との理由で容認姿勢に転じた。

 その上で今後は、自然・生活環境の保全、住宅や学校上空の飛行回避を求めていく方針を明らかにした。

 思い起こすのは、基地問題を抱える首長たちが過去、口にした「苦渋の決断」という言葉だ。安全保障問題で首長の裁量、努力には限界があり、現実的な政策を選択せざるを得ないということを表した言葉である。

 根本問題は「苦渋の決断」を強いる国の施策にある。国はいったい何度同じ事態を繰り返せば気が済むのだろうか。

 米軍再編推進法が今国会で成立した。在日米軍再編への協力度合いに応じて地方自治体に交付金を支給する、いわゆる「アメとムチ」の政策を進めるための法律だ。今後、地域が分断され、混乱に陥る事態が一層懸念される。

 地域住民の理解の得られぬままに強行される政策は、早晩つまずく。性急に事を運べば、混乱するだけである。

 

 

(7/3 9:37)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-25129-storytopic-11.html

 

 

 

 

 

2007年7月3日(火) 夕刊 1面

 

ヘリパッド移設着手/施設局 進入路ゲート設置

 

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設で、那覇防衛施設局は三日早朝、工事用進入路のゲート設置などの作業に着手した。午前五時半ごろ、業者のトラックが相次いでN4地区の進入路に入り、約一時間かけて二カ所に金属製のゲートを設置。反対派は約二十人集まったが、集団で座り込みを始める前にゲート設置作業が完了したため、大きな混乱はなかった。

 

 

 新設されるヘリパッドは直径四十五メートル。十五メートル幅の無障害物地帯を設置する。施設局はヘリパッド区域内の希少動植物を移動・移植した後、無障害物地帯の整備のための伐採作業と土砂流出対策を実施。その後、着陸帯の整備に入る。

 

 

 この日はゲート設置と一部植栽の伐採などを行い、午前八時までに予定の作業を終えたという。

 

 

 施設局が二日、県に届け出た「事業着手届出書」によると、六カ所のヘリパッド移設予定地のうち、今回着工するのはN4地区二カ所とH地区一カ所。残るG地区一カ所とN1地区二カ所も「本年度着手予定」としており、日米合同委員会で合意されれば着工手続きに入る見込みだ。完成予定日は二〇〇九年二月二十八日。

 

 

 一九九六年のSACO(日米特別行動委員会)最終報告は、北部訓練場(約七千八百三十三ヘクタール)の過半を占める約三千九百八十七ヘクタールを〇二年度末までをめどに返還すると明記している。しかし、返還条件のヘリパッド移設をめぐり、希少動植物の調査などで返還が遅れている。

 

 

 移設先は東村高江区を取り囲むように造られる。このため、周辺住民や市民グループは、集落への騒音被害や自然環境への影響を指摘し、ヘリパッド移設に反対している。

 

 

 同事業は環境影響評価法や県条例の対象外だが、施設局は「自然度が高い地域」として〇二年六月から自主的に環境影響評価に関する手続きを実施。着陸帯の新設地と周辺を含めた調査地区で、計三千種を超える動植物類を確認した。このうち、レッドデータブックなどに記載されている希少動植物は二百四種。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707031700_01.html

 

 

 

 

 

2007年7月3日(火) 夕刊 5面

 

不意つく作業 怒り/東村ヘリパッド移設

 

 【東】工事は日の出とともに始まった―。米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区周辺へのヘリパッド移設作業が三日早朝、始まった。那覇防衛施設局は移設予定地のN4地区とH地区で工事用進入路のゲート設置作業などを実施。ヘリパッド建設に反対する高江区民らは明け方の“不意打ち”作業に「そこまでやるか」と抗議の声を上げ、約二十人がN4地区のゲート前で座り込みを行った。高江区代議員六、七人も急きょ、公民館に集まり今後の対応を協議した。

 

 

 警戒していた区民によると、午前五時半ごろに作業員や施設局員を乗せたトラックや車が現場に到着。N4地区の米軍提供施設の旧道と県道70号の境界の二カ所に鉄製のゲートを設置する作業を始めた。

 

 

 午前六時すぎには、区民ら約十人が駆けつけたが、着々と進められる工事を見つめる以外になすすべもなかった。N4地区の作業は午前六時五十分ごろに完了した。

 

 

 国頭村安波のH地区に通じる道路入り口でもゲート設置が行われ、警備員一人が警戒に当たった。

 

 

 着工を確認した同区の伊佐真次さん(45)は「こんな朝早くからやるのか」と、国の強行姿勢にあきれ顔。「子どもたちのためにも危険なヘリパッドはいらない。高江の現状を多くの人に知ってほしい」と座り込みへの参加を呼び掛けた。

 

 

 ブロッコリーの森を守る会代表の安次嶺現達さん(48)は「区民はヘリパッド建設に賛成していない。区民の生活や安全を脅かす基地を造らせるわけにはいかない。この自然は県民みんなの宝だ。みんなで守っていきたい」と訴えた。

 

 

 「ここまできてしまったか」とうなだれるのは仲嶺武夫高江区長。午前七時半すぎに設置されたゲートを確認。「施設局は完成後の生活環境について、運用面で解決すると言っているが、具体的な策が提示されていないので不安だ」と漏らした。

 

 

 伊集盛久東村長は「容認の立場なので粛々と見守るしかないが、住民や生活環境に影響しないように最大限の配慮を国に求めていく」と話した。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707031700_02.html

 

 

 

 

 

2007年7月3日(火) 夕刊 1面

 

県、除去現場を確認/嘉手納燃料流出

 

土壌採取できず

 

 

 【嘉手納】米軍嘉手納基地で航空燃料が給油タンクから流出した問題で、県は三日午前、同基地内の汚染土壌が除去された現場を目視調査した。現場立ち入りは二度目だが、県が求めた土壌採取、ビデオ・写真撮影は拒否された。県環境保全課職員は「土壌採取が認められなかったことは残念。対応については今後検討する」と話した。

 

 

 調査場所は汚染土壌の浄化現場を含む二カ所。流出現場では午前十時すぎに県職員と、調査立ち会いの那覇防衛施設局の職員が、同基地の第一八航空団環境課職員らから説明を受けた。

 

 

 県職員らは汚染土壌が取り除かれ、赤土がむき出しになった給油タンクの上に乗り、周囲を回りながら除去状況を確認。引き続き、汚染土壌を舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させている浄化現場で作業手順の説明を受けた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200707031700_03.html