沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月27日、28日)

沖縄タイムス 社説(2007年4月27日朝刊)

[集団的自衛権]

なぜ自衛隊を戦わすのか
 政府は、憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使を一部容認するため、解釈変更に向けた有識者会議を設置した。

 安倍晋三首相の意向を受けたもので、集団的自衛権を認めて有事の際、日本が米軍に協力できるようにするのが目的である。

 集団的自衛権は、国連憲章がどの国にも認めた権利だが、日本国憲法(第九条)は国際紛争解決の手段としての「武力による威嚇、または武力の行使」を禁じている。

 このため、政府はこれまで集団的自衛権は認められないとの立場をとってきた。

 だが、米国は朝鮮半島、台湾海峡などでの米軍の作戦に自衛隊を参加させるため、集団的自衛権の行使に関する規制(憲法九条)を取り払わせたい考えだ。

 米軍再編中間報告には、自衛隊は米軍に「追加的かつ補完的な能力を提供する」と明記されている。つまり、自衛隊に海外で「武器使用」や「反撃」ができるようになれば、「米軍と自衛隊の軍事一体化」が実現するからだ。

 安倍首相は「日米同盟は日本外交、安全保障の基軸だ」として米国の要求に応える姿勢だが、果たして憲法九条を改定せずに、解釈の変更だけで集団的自衛権の行使がどこまで許されるのか。

 その延長線上にあるのは、結局「改憲」を意図した行為、と言わざるを得ない。

 政府が目指しているのは(1)日本のミサイル防衛(MD)システムで米国を狙った弾道ミサイルの迎撃(2)公海上で自衛隊艦船と並走する艦船が攻撃された場合の反撃(3)共通の目的で活動する多国籍軍への後方支援(4)国連平和維持活動(PKO)などで、ともに活動する他国軍への攻撃に反撃するための武器使用―の四つの実現だ。

 塩崎恭久官房長官は「国民の生命、身体、財産を守るために日米同盟が効果的に機能することがこれまでにも増して重要だ」と指摘している。

 だが、四つの目標はいずれも第一義的に米軍や多国籍軍を支援するのが目的であり、必ずしも「国民を守る」ためではない。

 自衛隊の活動は、元来「純粋に自衛のための行動(個別的自衛権)」であり、この個別的自衛権を拡大解釈して迎撃や反撃を可能ならしめることも予想されよう。

 日米安保条約は、米国が日本を防衛する代償として、日本は米軍への「基地提供」義務を負っている。

 その上なぜ、自衛隊を海外で「戦わす」のか。大いに議論が必要だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070427.html#no_1

沖縄タイムス 2007年4月27日(金) 夕刊 1面
F22、初の共同訓練/空自と模擬空中戦
 嘉手納基地に暫定配備中の米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが参加する初の日米共同訓練が二十七日午前、沖縄周辺空域で始まった。沖縄の南西航空混成団のF4戦闘機などの航空自衛隊機とF22などの米軍機が模擬空中戦を展開した。一方、同基地では正午前後に相次いでF22とF15の各一機が緊急着陸。同基地報道部によると、二機ともに共同訓練の参加機ではないという。緊急着陸の原因などは明らかにしていない。

 午前十一時四十五分ごろ、F22一機が着陸後に滑走路端で停止。消防車両や緊急車両約十台が取り囲み、約十五分後に駐機場へけん引された。消防車両からの放水はなかったが、一時緊迫した雰囲気に包まれた。

 午後零時二十分ごろにはF15一機が同基地に緊急着陸した。同基地報道部は「機体や基地施設、周辺地域に影響はなかった」と説明している。

 在日米軍トップのブルース・ライト司令官は今後の朝鮮半島情勢次第ではF22の嘉手納基地への再配備の可能性を指摘しており、地元からは基地機能強化と相次ぐトラブルへの反発も出ている。

 共同訓練は嘉手納基地で同日午前八時半ごろ、米軍機のF22やF15が相次いで離陸。那覇基地からは空自のF4やF15が次々に飛び立った。訓練は午前と午後の二回行われる。

 日米共同訓練は二十六、二十七日の二日間。二十六日は那覇基地内で日米のパイロットらが訓練内容を確認、米側からF22の特性についても説明を受けた。

 空自は南西航空混成団のF4戦闘機四機のほか、小松基地(石川県)の第六航空団のF15戦闘機四機、浜松基地(静岡県)の早期警戒管制機一機が参加。

 米軍は嘉手納基地に展開中の米ラングレー基地所属の第二七遠征戦闘飛行隊のF22戦闘機二機のほか、嘉手納基地の第一八航空団のF15戦闘機二機、早期警戒管制機が参加した。午前の訓練を終えた第六航空団の芳賀和典飛行隊長は「F22は機動性がいいと感じた」と感想を話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704271700_01.html

沖縄タイムス 2007年4月27日(金) 夕刊 1面
V字滑走路 沖合移動言及せず/日米協議で防衛省方針
 【東京】防衛省は二十七日午前までに、ワシントンで三十日と五月一日に開かれる日米防衛相会談や日米安全保障協議委員会(2プラス2)の席で、県や名護市が求めている米軍普天間飛行場代替施設のV字形滑走路の沖合移動について言及しない方針を固めた。政府案を基本に取り組む従来の方針を確認するにとどめるとみられる。

 防衛省首脳は同日午前、「こちらからは(米側に)言わない。(沖合移動の)決定権者は知事だ。こちら(国)にお願いするものでもない」と述べ、V字形滑走路の沖合移動は、環境影響評価(アセスメント)の知事意見で対応するしかないとの考えを強調。沖合移動はあくまで地元が決定する問題で、日米協議のテーマにはならないとの見方を示した。その上で県のアセス受け入れについては「理解してもらえると思う。(沖合に移動するかどうかは)知事がはんこを押して決まる」と述べ、沖合移動を実現するためには県がアセスを受け入れざるを得ないとの認識も示した。

 ただ、アセスをめぐって県は「公共用財産使用協議書」に同意し、事前調査については黙認しているものの、政府案を前提としたアセス手続きについては拒否しており、先行きは不透明だ。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704271700_02.html

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 1面
移設難航負担なお 米軍再編合意1年
 「沖縄の負担軽減」をテーマの一つに据えた米軍再編最終報告の日米合意から間もなく一年を迎える。満一年となる五月一日には、日米両政府の外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開催され、「再編の着実な実施」を確認する見通しだ。だが、懸案の米軍普天間飛行場移設問題は、V字形滑走路の詳細な位置をめぐって県、名護市と政府の調整が難航。移設協議会は一月の第三回会合以降、開催のめどが立たない状況が続いている。

 一方で普天間移設に向けた作業は着々と進む。那覇防衛施設局は県の同意を得て海域調査に着手。環境影響評価(アセスメント)手続きに入るタイミングを模索している。

 また、在沖海兵隊のグアム移転に伴う嘉手納基地以南の六基地返還に向けた詳細計画は、再編合意で示された「三月」を過ぎてもまとまらず、地元説明が遅れている。

 最終報告に盛り込まれた嘉手納基地のF15の一部訓練の本土移転は三月からスタートしたが、周辺住民の負担軽減の実感は乏しい。同基地には最終報告に基づき、昨年十月に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備された。米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22も暫定配備され、基地機能強化が際立っている。

 国会では、再編に協力した度合いに応じて交付金を支払うことを柱とした米軍再編推進法案の審議が最終局面に入る。「出来高払い」で基地の再編を進める手法は、安全保障政策に対する国の意識の転換を印象付ける。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_01.html

沖縄タイムス 2007年4月28日(土) 朝刊 2面
F22共同訓練「同盟構築の好機」/米司令官強調
 【嘉手納】米軍嘉手納基地に暫定配備中の米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが参加した初の日米共同訓練は二十七日午後も引き続き沖縄周辺空域で行われ、南西航空混成団のF4戦闘機など航空自衛隊機とF22などの米軍機が模擬空中戦を展開した。

 同基地にはF22とF15が同日、相次いで緊急着陸。緊急車両が出動するなど一時緊迫した。同基地によると二機とも共同訓練の参加機ではなく、「機体や基地施設、周辺地域に影響はなかった」と説明している。

 訓練終了後、F22に搭乗した第二七遠征戦闘中隊司令官のウェード・トリバー中佐は嘉手納基地内で会見し「同盟関係を構築するに当たって、とてもいい機会になった」と述べた。その上で「お互いのことを知り、どう戦うかを学ぶことが国益のため必要だ」と訓練の意義を強調した。同機の配備期間中に新たな共同訓練は予定されていないが、「将来(また)できればいい」と意欲を示した。

 共同訓練には米軍のF22二機とF15二機、空自のF4四機とF15四機が参加。空中での攻撃や防御など対戦形式の訓練を実施した。F22が米軍以外と共同で訓練するのは今年二月に米本国でイギリス軍とオーストラリア軍と実施して以来二度目。国外では初めて。

 同中佐によると、F22十二機は今年二月に嘉手納基地配備後、五百八十回以上の飛行訓練を実施。米軍のF15やF18戦闘機、AV8ハリアー垂直離着陸攻撃機と共同で訓練も行った。

 在日米軍トップのブルース・ライト司令官は今後の朝鮮半島情勢次第ではF22の嘉手納基地への再配備の可能性を指摘しており、地元からは基地機能強化と相次ぐトラブルに反発が出ている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704281300_02.html

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月26日、27日)

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 夕刊 5面
原告、健康被害訴え/普天間爆音訴訟
 【沖縄】米軍普天間飛行場周辺住民が国に夜間飛行差し止めと損害賠償を求めた普天間爆音訴訟の第十九回口頭弁論が二十六日、那覇地裁沖縄支部(河合芳光裁判長)であり、原告住民五人への本人尋問が行われた。原告本人尋問は十二日に続いて二度目。

 宜野湾市議会議員の桃原功さん(48)=同市普天間=は「議会や個人で騒音被害を訴えても、米軍からの反応はない。住民への配慮がなされていない」と指摘した。

 自身がヘリや航空機からの騒音によるストレス性の不整脈と診断されたことや、妻が耳鳴りを感じ、娘がピアノの習い事に集中できないなど家族の被害を証言。「米軍はこれ以上宜野湾市民に被害を与えないでほしい。裁判所も爆音から私たちを守るような判断をしてもらいたい」と求めた。

 前底伸幸さん(37)=同市上原=は「騒音被害のために自分のペースで生活が送れない。なぜ住宅の上で軍事訓練が行われ、市民の人権が守られないのか」と涙ながらに訴えた。

 午後は別の住民三人への本人尋問が行われる。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261700_04.html

沖縄タイムス 2007年4月27日(金) 朝刊 2面
「可能な限り早期」/「普天間」アセス手続き
防衛施設局長が意向
 那覇防衛施設局の佐藤勉局長は二十六日の定例記者懇談会で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きについて、可能な限り早期に方法書を県に提出したい、との考えを示した。

 佐藤局長は「本来なら環境アセスの法律にのっとった手続きで進めたいが、県、名護市との間で政府案の形状はともかく位置については十分合意に達していない」と指摘。その上で「可能な限り早く(アセス手続きに)入れるよう県と調整したい」と述べた。

 県が求めるアセス前の滑走路の位置の移動については「政府案は自然環境や騒音、危険といった生活環境、事業の実行性といった三つの要素を絶妙にバランスよく配置し、なおかつ地元名護市、宜野座村の要望を踏まえた最良の案。それを変えるような合理的理由がなければなかなか修正は困難」と指摘。一方で「アセス手続きを進める中で、仮に必要があれば修正を検討していくことが必要ではないか」とし、アセス着手後の修正には柔軟姿勢をにじませた。

 海域の現況調査については「調査機器が設置されてから現況調査に入る」と述べ、調査機器設置後にデータ収集を開始した時点で調査着手との見解を表明。調査機器の設置完了時期については「六月初旬ごろのサンゴの産卵時期までにサンゴ着床具を設置しなければならない」との見解にとどめた。

 また、潜水作業に着手する前日の二十三日付で、県警と第十一管区海上保安本部に警備要請していたことを明らかにした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704271300_04.html

沖縄タイムス 2007年4月27日(金) 朝刊 27面
目視確認は終了/辺野古調査
GW明けに作業再開
 【名護】米軍普天間飛行場の代替施設建設計画で、那覇防衛施設局は二十六日午後も現況調査(事前調査)に向けた名護市辺野古海域周辺での確認作業を継続。作業の進ちょく状況などから、同日までにダイバーの目視と写真撮影による調査ポイントの確認作業は終了したとみられる。収集資料の分析後、ゴールデンウイーク明けに、作業を再開する見通し。

 反対派は船とボート、カヌーの計十一隻で阻止行動を行い、けん制する第十一管区海上保安本部の船舶との間で、緊迫した状況が続いた。

 ダイバーが目視や写真撮影などによる現場確認をしたのに対し、反対派メンバーも潜り作業を監視した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704271300_05.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月27日朝刊)

[F22A再配備]

負担増では反発が高まる
 在日米軍トップのライト司令官(空軍中将)は、嘉手納基地から来月までに離れる予定の米軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターについて、今後の朝鮮半島情勢次第では再配備の可能性が十分あるとの認識を示した。

 司令官は北朝鮮の弾道ミサイル再発射に備え、警戒態勢を堅持する姿勢を強調してきた。今回、核問題の展開次第ではF22A再配備による抑止力強化に踏み切る意向を明確にした。

 F22A十二機が暫定配備されたのは二月。米空軍は「太平洋地域への定期的ローテーション配備の一環」と説明し、外務省は「東アジア地域の抑止力低下を補うため」と説明していた。

 地元の嘉手納町などでは、当初からなし崩しの常駐化を懸念する声が上がっていた。F22Aが緊急着陸する事態も生じており、周辺住民が不安をかき立てられるのは当然である。

 航空自衛隊那覇基地所属の戦闘機の嘉手納基地共同使用が日米間で合意されている。嘉手納基地のF15の一部訓練の本土移転が始まったが、目に見える負担軽減にはつながっていない。

 朝鮮半島危機に連動して、嘉手納基地には地対空誘導弾パトリオット(PAC3)も配備された。

 F22Aの暫定配備にとどまらず、米空軍はF16戦闘機の後継機となる次世代戦闘攻撃機F35Aを海外では唯一、嘉手納基地に配備することを検討していることを明らかにしている。

 米軍再編による米軍と自衛隊の一体化が今後さらに進み、嘉手納基地については、負担の軽減どころか、ますます重くなるだけではないのか。

 周辺自治体の首長らで構成する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会はF22A配備に反対を表明した。「爆音被害は増大こそすれ、減少しない。これ以上の負担増は限界だ」と、嘉手納町議会は配備中止を求める抗議決議を全会一致で可決している。

 政府は住民の悲鳴を真摯に受け止めるべきだ。抑止力の強化というのなら負担軽減も同時に実現していかなければ住民の反発は高まるばかりだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070427.html#no_2

沖縄タイムス・琉球新報 関連記事、社説(4月26日)

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 2面
知事・市長・防衛相会談10分 進展なし
移設、政府ペース
 米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、二十五日に防衛省内で行われた仲井真弘多知事、島袋吉和名護市長と久間章生防衛相の会談は、わずか十分間で終了した。日米首脳会談や、外務、防衛閣僚の日米安全保障協議委員会(2プラス2)前の事態打開を模索した県は、逆に政府内の「壁の厚さ」を思い知らされる形となった。

 一方で政府は、海域の事前調査着手や公共用財産使用協議書への県の同意など、移設進ちょくの「実績」を着々と積み上げており、政府のペースでなし崩し的に移設が進むことも懸念される。

読み違え

 公式会談の約三時間前。会談を控えた仲井真知事らが滞在する都内のホテルを久間防衛相が訪ねた。

 意見交換の中身は明らかでないが、防衛省幹部はこの面談に着目し、久間防衛相が環境アセスメント後の滑走路の移動に関し、何らかの「口約束」をした可能性を指摘。「アセス後の修正なら『政治的配慮』はあるかもしれないが、アセス前の修正はない」との認識を示す。

 同幹部は知事らの上京前から「安倍(晋三)総理はぶれていない。知事は読み間違えている」と繰り返し、アセス前の滑走路の位置修正にこだわる仲井真知事のスタンスに疑問符を付けていた。

 同幹部は、沖縄の政府中枢への影響力低下を指摘。主要政治家の力を頼りに、県の意思を通そうとする歴代の保守県政の手法が現状では通用しないことを強調する。

 仲井真知事は参院補選中、中川秀直自民党幹事長らを介し、安倍首相に滑走路の沖合移動を求める名護市の意向を伝えていた。

 久間防衛相は周辺に「実施段階で設計を変える分には修正とはいえない」などと柔軟姿勢を示していたという。

 知事、市長、防衛相の思惑は一致していたが、水面下では防衛省の事務方が、安倍首相周辺にV字形滑走路の沖合移動に応じないよう強く働き掛けていた経緯がある。

 今月下旬から来月初めにかけ、日米首脳会談や2プラス2など日米の重要会議が続く。自民党国防族は「(V字形滑走路の)修正はできない。日米首脳会談にも影響する」とタイミングの悪さも指摘する。

長期戦?

 「総理も大臣も事務方に洗脳され、米側とも共同戦線を張っている。それを打ち破るのは並大抵ではない」。県首脳は久間防衛相との会談結果をこう振り返る。

 県首脳は今回の会談で、地元が求める滑走路の沖合移動や普天間飛行場の危険除去策で具体的な成果は得られなかったことを示唆した上で、今後の移設問題への取り組みについて「時間がかかるかもしれない。長期戦に持ち込んだ方が沖縄にとってはいいのでは」と主張。

 一方で「アセス前の修正」にこだわり、アセス方法書の提示も拒んできたこれまでのスタンスについて「いろいろ戦略はあると思う。戦略をどうつくるかだ」と言及。今回の会談結果を受け、政策実現を図る手法の転換も示唆する。

 国側は2プラス2後に、アセス方法書提示のタイミングを模索するとみられるが、滑走路の位置の移動にこだわる名護市のスタンスの行方も焦点になりそうだ。(東京支社・島袋晋作、政経部・渡辺豪)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_03.html

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 27面
「海域使用 同意撤回を」/辺野古調査
アセス監視団、県に抗議
 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う名護市キャンプ・シュワブ沿岸海域の現況調査で、県が那覇防衛施設局の海域使用に同意したことについて、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団(東恩納琢磨団長)は二十五日、県環境政策課に抗議するとともに撤回するよう要請した。

 土田武信副団長は「アセス手続きに入る前の現況調査は脱法行為だ」と指摘、県の見解をただした。また、県が同意文書の内容を一部開示しなかったことに対し、異議を申し立てた。

 これに対し、下地寛課長は「海域の使用は要件がそろっておれば認めざるを得ない」などと答えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_04.html

沖縄タイムス 2007年4月26日(木) 朝刊 2面
「住民感情踏まえ対応」/F22沖縄常駐化に外相
 【東京】麻生太郎外相は二十五日の衆院外務委員会で、米軍嘉手納基地に一時配備されている最新鋭ステルス戦闘機F22Aの常駐化について「恒常化されるとは聞いていない。(周辺住民の)気持ちは理解できるので、それを踏まえて対応したい」との認識を示した。照屋寛徳氏(社民)の質問に答えた。

 同機の配備をめぐっては二十四日、在日米軍トップのライト司令官(空軍中将)が今後の朝鮮半島情勢次第で、再配備の可能性は十分あるとの認識を示していた。

 照屋氏は同機の常駐化が、基地周辺住民の負担増になると指摘し、外相の姿勢をただした。麻生外相は「(配備は)五月末に終わると承知している。仮定の問題には答えられない」とも述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704261300_05.html

核情報を収集か 米偵察機が飛来

放射能測定の機能を持った電子情報偵察機RC135U=25日、米空軍嘉手納基地

 【嘉手納】米空軍嘉手納基地に放射能測定の特殊な機能を持った電子情報偵察機RC135Uが3月中旬から飛来していたことが25日、確認された。同機は米国ネブラスカ州・オファット空軍基地の所属。核関連の情報収集を行う専門の偵察機として米国にも2機しかない。昨年10月にも嘉手納基地への飛来が確認されている。一時配備されているF22戦闘機を含め嘉手納基地へ米空軍の最新鋭機飛来が相次いでいる。
(4/26 9:52) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23285-storytopic-3.html

沖縄タイムス 社説(2007年4月26日朝刊)

[米軍用地訴訟]

基地被害も判断すべき
 米軍嘉手納基地内にある軍用地の強制使用で、土地を共有して基地への提供を拒否している新崎盛暉氏ら一坪反戦地主会のメンバーらが防衛相に対し、米軍用地特措法に基づく使用認定の取り消しを求めた訴訟で、那覇地裁(大野和明裁判長)は二十四日、原告の訴えを棄却した。

 判決は、土地の強制使用が適正かどうかを判断する使用認定について「首相の政策的・技術的な裁量にゆだねられている」と指摘。認定の際、考慮すべき事情として(1)わが国の安全と極東などの国際情勢(2)所有者や周辺地域の住民の負担や被害の程度(3)代替地等の提供の可能性―などを列挙している。

 嘉手納飛行場については「わが国が提供する米軍基地のなかでも、最重要で代替地を提供する可能性も極めて乏しい」としている。その上で「首相がした使用認定に裁量の逸脱、乱用があるとまではいえない」と結論付けた。

 住民の基地被害や負担について直接的な言及はなく、「基地が集中していることによって生じているとされる種々の問題」あるいは「原告の主張する諸事情」と記述している。

 裁判所は、判決言い渡しにあたって日夜激しい爆音被害に苦しんでいる嘉手納基地周辺の住民についてどこまで考えたことがあるだろうか。

 使用認定の際、考慮すべき事情として「住民の負担や被害の程度」を挙げながら、基地負担や被害について何の判断も示していない。判決は基地被害を無視していると言っていい。

 県内の米軍用地をめぐっては、一九九五年に代理署名を拒否した大田昌秀知事(当時)を相手に、国が職務執行命令訴訟を提起。最高裁大法廷は九六年八月、強制使用手続きを定めた米軍用地特措法を合憲と判断した。那覇地裁は、こうした最高裁判決を踏襲。住民の負担と被害に関する文言など引用部分も多い。

 もともとある判例に沿った判断だ。これでは結論ありきの感はぬぐえない。司法はもっと積極的に沖縄の実態に照らして判断すべきではないか。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070426.html#no_2

沖縄タイムス 社説(2007年4月26日朝刊)

[「海域調査」同意]

基本姿勢をなぜ崩すのか
 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設で、仲井真弘多知事と島袋吉和名護市長が防衛省内で久間章生防衛相と会談した。

 仲井真知事は、環境影響評価(アセスメント)の前段となる現況調査(事前調査)のための海域使用に同意したことを伝えた。久間防衛相は謝意を示し、今後の手続きへの協力を求めた。

 県や名護市が求めているV字形滑走路の修正について、久間防衛相は「いろいろな経緯を経て今のV字形になっており、最良のものだ」との認識を示し、V字形を基本に作業や手続きを進めていく必要性を強調した。

 普天間飛行場の危険性除去については「移設を早く進めないといけない。(移設完了までの間)いろいろな工夫を考えていきたい」と述べた。

 県は、V字形滑走路を沖合南西に移動させる名護市の修正案や、普天間飛行場の「三年内閉鎖状態」の見通しもたたない中で、同意に踏み切った。

 V字形案について、仲井真知事は現行のままでは賛成できないと何度も明言してきた。これが選挙公約の大きな柱ではなかったのか。今回の調査をどのように位置付けているのか、県民にきちんと説明すべきだ。

 政府はアセス前の滑走路の位置修正には応じないとの姿勢を示してきた。このままでは地元の意向が反映されないまま外堀が着々と埋められ、なし崩しの移設作業が進むことになる。

 県は当初、事前調査について「次の段階の環境アセスにつながるもので、V字形案などについて地元の意向も踏まえて協議した後にやるべき」との立場だった。基本姿勢をなぜ崩すのか。

 同意した背景には、早期移設が普天間の最大の危険性除去につながるとの考えが基本にあるようだ。現況調査の範囲も広く、あえて拒否する理由もないというのであれば問題だろう。

 県政にとってはジレンマだ。しかし何の担保もないまま危険性除去や政府案修正に淡い期待を抱くのは危うい。県が追い詰められ、現行案の既成事実化に手を貸す結果を招きかねない。

 日米首脳会談や日米安全保障協議委員会(2プラス2)を目前に控え、政府は米軍再編推進法案の成立などを含め、普天間移設の着実な進展を米側にアピールする狙いもあるだろう。

 知事選、参院補選で辺野古移設を推進する候補が連続当選し、政府も気をよくしているはずだ。

 だが、宜野湾市長選で伊波洋一氏が大差で当選したように、県内移設を根本から疑問視する声は決して小さくはない。県民世論を読み誤り、強硬姿勢で臨めば県民の反発を買うだけだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070426.html#no_1

琉球新報・沖縄タイムス 関連ニュース・社説(4月24日、25日)

南京大虐殺を朗読劇に 来月、東京の劇団が上演

朗読劇の鑑賞を呼び掛ける実行委メンバーら=23日、県庁
 「南京大虐殺」をテーマにした朗読劇「地獄のDECEMBER(12月)―哀しみの南京」が5月6、7の両日、県内で上演される。東京で劇団「IMAGINE21」を主宰する渡辺義治・横井量子夫妻が、朗読と芝居で日本の「加害」に向き合う。沖縄公演実行委員会の谷昌二委員長らは「日本の歴史の嫌な面を見つめることを通してこそ、将来の幸せも考えられる。一人でも多くの人に見てもらいたい」と鑑賞を呼び掛けた。
 渡辺さんの父親は関東軍の鉄道部隊中尉だったといい、横井さんの家族は日本軍相手の商売で利益を得ていたという。劇は夫妻の家族の軌跡、そして自身の人生を見つめるところから始まる。日本軍がかつて中国で繰り広げた殺りくや女性暴行の様子を、証言などに基づいて表現する。
 実行委員メンバーの日本中国友好協会県支部の上原源栄支部長は、日中戦争の発端となった1937年の盧溝橋事件から70年の節目となることに触れ「中国と草の根の交流を深めたい。そのためにはまず、日本が何をやったか認識しなければいけない」と強調した。
 沖教組那覇支部の鶴渕信子書記長は「教科書問題で揺れる中、“軍命”の本質も理解できるのではないか。多くの教職員にも見てほしい」と話している。
 公演は6日が午後6時半からパレット市民劇場、7日は午後7時から沖縄市民劇場あしびなーで。入場料は大人2800円、大学生2000円、中高生1500円。問い合わせは098(942)1101。
(4/24 9:41) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23237-storytopic-1.html

ポスト京都議定書・米中を連携協議の枠組みに
 地球温暖化が進み、予想以上に厳しい専門家の将来予測が相次いで示されている中、ポスト京都議定書に向けて、日米が連携を強化する方向へ歩みだした。
 地球温暖化対策として温室効果ガスの削減を初めて義務付けた京都議定書が採択されて今年で10年の節目の年を迎える。5年間の削減実施期間が来年から始まる。
 京都議定書に定めがない2013年以降の国際的枠組みづくりに向けて動きが活発になってきた。
 27日の安倍晋三首相とブッシュ大統領の日米首脳会談で温暖化対策を連携強化する共同文書を発表することが固まった。
 最大の温室効果ガスの排出国・米国はクリントン政権当時に京都議定書に署名しながら、ブッシュ政権が発足して間もなく批准を拒否、京都議定書から離脱した。
 この米国の離脱に加え、米国に次いで排出量の多い中国が規制の対象から外れているため、京都議
定書の実効性が疑問視されてきた。
 ここに来て米国の国内環境が変わりつつある。ブッシュ大統領は京都議定書不支持ながら、今年1月の一般教書演説でガソリンの消費量削減を打ち出すなど温暖化対策に前向きの姿勢をみせた。4月には政府に規制を命じる連邦最高裁の判決もあった。
 こういった流れもあり、ブッシュ政権も日米首脳会談では次官級協議機関の設置、省エネルギーを含む環境分野の革新的技術の共同開発などを共同文書に盛り込むことで調整を進めている。
 安倍首相は温室効果ガス排出量の多い中国の温家宝首相との東京での会談で新たな国際枠組み構築への協力を確認したばかりだ。
 京都議定書の枠組みから外れている米国と中国の両国が国際的枠組みづくりの協議に参加、協力が得られる意義は大きい。
 温暖化対策は6月の主要国首脳会議(ドイツ・ハイリゲンダム・サミット)でも議題だが、来年、日本の北海道で開かれるサミットの主要議題でもある。
 議長役を務める安倍首相には、ポスト京都に向けて強いリーダーシップを発揮してほしい。
(4/24 9:44)
琉球新報 社説
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23236-storytopic-11.html

宜野湾市長選挙・基地負担軽減を粘り強く
 米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市の市長選挙は現職の伊波洋一氏が再選を果たした。
 同市は中央部に普天間飛行場が居座り、北側にキャンプ瑞慶覧が広がる。その基地面積は全市域の32・4%をも占める。とりわけ普天間飛行場を離着陸するヘリの騒音が市民生活を脅かしている。3年前の2004年8月には同基地所属のヘリが基地に隣接する沖縄国際大学構内に墜落し、爆発、大破、炎上する事故も発生している。
 それだけに宜野湾市民は基地に敏感だ。普天間飛行場の県内移設に反対し、グアムなど国外への移設を訴えてきた伊波氏を市民は選んだ。
 普天間飛行場の移設が日米で合意されてから11年。地元の頭越しに移設を進めようとする日米両政府の移設作業は難渋、まだ動かない。伊波氏は公約通り国外移転を訴えるとともに、早急な危険性の除去、基地の負担軽減を粘り強く訴えてほしい。
 基地問題への取り組みをはじめ、現職としての実績も評価された。同じ日に投開票が行われた参院沖縄選挙区・補欠選挙での宜野湾市での得票は自民、公明推薦の島尻安伊子氏が2万247票、社民、社大、共産、民主、国民新党推薦の狩俣吉正氏が1万7989票。島尻氏が2000票余もリードしたが、市長選挙では逆に、伊波氏が自民、公明両党の推薦候補に3800票余の差で勝利したことが実績の評価を示しているといえよう。
 参院補欠選挙の投票率は47・81%で、全県選挙としては初めて50%を割り過去最低を記録したが、宜野湾市長選挙は14年ぶりに60%を超える60・39%を記録した。
 宜野湾市の置かれた状況が、有権者の関心の高さにつながった。それと同時に、両陣営の精力的な取り組みも投票率のアップにつながった。
 自公推薦の外間伸儀氏の陣営も昨年11月の県知事選挙で勝利した仲井真弘多氏が宜野湾市でもリードした勢いに乗って保守陣営がまとまり、熱い選挙戦を展開、市政奪還を狙ったが及ばなかった。
 2期目の伊波氏には、選挙戦で訴えた公約の実行力が問われる。着々と進みつつある電子自治体に向けたIT化の推進、西海岸・コンベンション地域開発のさらなる推進、企業誘致、田イモ畑の保全。これまでも訴えてきた基地被害の防止、危険性除去についても取り組みを強化し、一歩でも前進させたい。
 普天間飛行場の返還に備えた跡地利用計画の推進も大きな課題だ。地権者、市民の積極的参加も得て、夢が膨らみ、宜野湾市全体の活性化にもつながる計画が求められている。
(4/24 9:46)
琉球新報 社説
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23236-storytopic-11.html

反戦地主の請求棄却 「処分は適法」
 米軍嘉手納飛行場内の契約拒否地主の土地二筆について、米軍用地特別措置法(特措法)に基づき強制使用を認定したのは憲法違反として、共有地主154人が内閣総理大臣に使用認定取り消しを、127人が県収用委員会に使用裁決取り消しを求めた2つの訴訟の判決が24日午後、那覇地裁であった。
 大野和明裁判長は「原告らが主張する沖縄の米軍基地形成の歴史的経過などを考慮しても本件使用認定に裁量の逸脱や乱用があるとまではいえない。本件各処分は適法」として、原告の請求をいずれも棄却した。
 原告らは一筆の軍用地について共有で登記する一坪反戦地主会のメンバー。原告側によると、一坪反戦地主会が原告となった訴訟への判決は今回が初めて。
 使用認定取り消し訴訟では、小泉純一郎首相=当時=が2002年11月8日、嘉手納飛行場内に原告らの共有地について強制使用を認定したことについて、原告は「平和主義をうたう憲法の前文や9条、財産権の不可侵を定めた29条などに違反し許されない」などと訴えていた。
 また県収用委員会(玉城辰彦委員長)を相手にした訴訟では、原告は同土地に対する05年7月の使用裁決を取り消すよう求めていた。
(4/24) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23254-storytopic-1.html

県、事前調査に同意 ジュゴン配慮求め 普天間移設
 米軍普天間飛行場移設先の環境現況調査(事前調査)で那覇防衛施設局が県に海域使用の申請をしていた件で、県土木建築部の首里勇治部長は24日午後、施設局の高木健司建設企画課長を県庁に呼び、名護市辺野古周辺の調査に関する海底使用への同意書を交付した。辺野古沖の平島、長島で確認されているアジサシ類の繁殖やジュゴンへの影響低減へ向け、専門家の指導・助言を得て調査機器の設置場所や方法を検討することなど15項目の配慮要望事項も添付した。県の同意を受け施設局は25日から機器の設置作業を実施する。
 県は同意書交付後、施設局の事前調査の地点数を公表。潮流など海象の調査機器が29カ所、サンゴ類調査39カ所、パッシブソナー(音波探知機)30カ所、ビデオカメラ14カ所の計112カ所に上ると明らかにした。反対派の妨害を想定し、具体的な調査位置は「公表すると(機器の)設置に支障がある」として公表しなかった。
 県の「配慮事項」ではジュゴンについて(1)機器設置は海草を避ける(2)作業船の高速航行を避ける(3)電気ブイの光度や灯質を検討し、数を最小限にする―などと6点の配慮を要求した。平島、長島のアジサシ類については繁殖への影響回避を求めた。
 首里部長によると、調査機器の設置作業の時間帯について、配慮事項では言及していないが、県と施設局との調整で日中に行われると確認した。
 今回、県が同意した海域面積は3442平方メートル。施設局の申請は、調査地点112カ所の3925平方メートルだったが、483平方メートルについては名護市管理の部分。県によると、こちらも施設局は17日に市から同意を得た。2004年の従来移設案建設に伴うボーリング調査では3783平方メートルだった。
 海域使用で県の同意を受け、防衛省首脳は24日、「住民に迷惑を掛けないよう配慮して調査を進めたい。(着手は)明日からだ」と述べ、25日に現場に機材を運び調査を進める意向を示した。
 那覇防衛施設局は24日午前、県の海域使用同意を必要としない海底の目視確認などに着手している。
(4/25 9:32) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23258-storytopic-3.html

琉球新報・沖縄タイムス 関連ニュース・社説(4月25日)

辺野古沖調査・地元との話し合いが先だ
 普天間飛行場の名護市辺野古への移設作業は、V字形に2本の滑走路を建設する政府案の修正を県や名護市が求めているにもかかわらず既成事実だけが着々と積み重ねられている。
 那覇防衛施設局は建設に向けて、辺野古沖の環境現況調査(事前調査)に24日から着手、潜水士が海底のサンゴの状況を目視で調査した。
 そもそも県民の頭越しに日米で決めた移設案であり、地元の合意を得ていない段階での調査は大いに疑問だ。
 まず、代替施設の建設位置や運用方法などについて、県や名護市、辺野古住民と十分に話し合うことが先決ではないか。移設作業だけを突出して進めるのは拙速としか言いようがない。
 施設局が提出した公共用財産使用協議書に正式に同意を与えていない段階だったため、環境に直接手を付けず県の同意を必要としない作業を先行して実施した。
 やみくもに日米合意案での移設を急ぐ政府の姿勢が一段と鮮明になってきた。
 「現行のV字形案のままでは賛成できない」と公約し知事選に当選した仲井真弘多知事は、島袋吉和名護市長とともに、V字形滑走路を沖合に移動するよう求めている。事前調査は容認したものの、現状では環境影響評価(アセスメント)には同意できない―との考えだ。
 だが、守屋武昌防衛事務次官は「日本政府と米政府が合意した案は地元の調整を受けてできたものだ。現時点で変えることは全く考えていない。米国も同じ考え方だ」と繰り返し指摘、取り付く島がない。
 地元の意見に耳を貸さず、理解を得ることもないままに強引に移設作業を進めたのでは、いずれ行き詰まるだろう。
 そのことは、SACO(日米特別行動委員会)最終報告に基づく辺野古沖への移設が、住民らの反対運動に阻まれて頓挫した経緯を見ても明らかだ。
 政府は、日米合意案に執着するのはやめ、県民の声によく耳を傾けるべきだ。
(4/25 9:42)
琉球新報 社説
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23261-storytopic-11.html

[「代替施設」海域調査]
アセスの趣旨からも疑問
 那覇防衛施設局が名護市辺野古キャンプ・シュワブ沿岸部への普天間飛行場代替施設建設に伴う海域の現況調査に向けた確認作業に入った。
 辺野古沖案からV字形滑走路案に変更されてから初の調査だが、地元の反対と不安に配慮したやり方と言えるのかどうか。疑問と言うしかない。
 今回の調査は環境影響評価法の面からも問題点が指摘されている。沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団が強調する「アセス法(環境影響評価法)の方法書の手続きが完了する前に調査を行うことは違法」との見方である。
 県も「次の段階の環境アセスにつながるもので、V字形滑走路案などについて地元の意向も踏まえ協議した後にやるべき」と述べていたではないか。
 調査内容を非公開にしたことも疑惑を助長させる一因であり、透明性を重視する環境アセスメントの趣旨に照らして不自然なのは明白だろう。
 それが県民の不安と国に対する不信感を増幅させていることを無視してはなるまい。
 施設局は調査を「環境アセスと異なる」としている。それでも結果を環境影響評価に反映させることができるのであれば、それに言及しない国の手法が県民の理解を得られないのは言うまでもない。
 県が言うように「(代替施設の)早期移設が普天間飛行場の危険性除去」につながるのは確かだが、地元と県、国の移設協議が進んでいないというのもまた実態としてあるではないか。
 であれば、今回の施設局の動きに対し県はもっと毅然とした姿勢で臨むべきだったのであり、調査を許したことの責任は極めて重い。
 「県内ありき」で代替施設の建設を進めようとする日米両政府への不信感は大きいのであり、政府に対する県民の怒りを忘れてはなるまい。
 一方、県が事前調査を容認したことで、移設作業がなし崩し的に進められる恐れも出てきた。
 事前調査は「海底の国有財産の調査は県の同意はなくてもできるもの」(県)として済まされるものではないはずだ。
 なぜ県は調査を黙認したのか。これによって「普天間」移設のプロセスが形骸化しないのかどうか。地元をはじめ県民の不安はそこにもあり、県には説明責任が求められる。
 調査を強行することで地元住民や反対派との間に緊迫した状況をつくった施設局の姿勢は批判されてしかるべきだ。国と県、名護市は県民の不安、疑問にきちんと応える責任があろう。
沖縄タイムス 社説(2007年4月25日朝刊)
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070425.html#no_1

ギンバル返還 跡利用推進を要望

ギンバル訓練場に隣接する中川区住民を対象に開かれた説明会=24日夜、金武町の同区公民館
 【金武】日米特別行動委員会(SACO)で合意された金武町の米軍ギンバル訓練場の返還条件となっている米軍ブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、町当局と那覇防衛施設局は24日夜、ギンバル訓練場に隣接する中川区住民らを対象にした説明会を中川区公民館で開いた。住民ら約40人が出席し、町が推進する跡地利用計画への要望を出したほか、ヘリパッド移設後の騒音を懸念する声が上がった。
 町担当者や施設局職員の説明に対し、住民からは「ギンバル訓練場が返還されずにそのまま利用されることには反対。跡利用計画を金武町全体の事業として早く進めてほしい」「ヘリパッドが移設されるなら、米軍には飛行ルートや時間を守らせてほしい」などの意見があった。
 中川区の宜志富司区長は「跡地利用計画の財源が確保できる間に返還を進めてほしい」と述べた。
 同問題については、両訓練場内に土地を所有する並里区が反対を表明しており、10、11の両日の並里区への説明会でもヘリパッド移設に反対する意見が相次いだ。
 儀武剛町長は「各区から意見を聞き、町全体の基地負担軽減を考えて最終判断をしたい」と述べ、金武区や屋嘉区、伊芸区などでも説明会を開き、あらためて並里区との話し合いを行う意向を示した。
(4/25 9:53) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23270-storytopic-1.html

機器設置へ作業本格化 「普天間」事前調査

海底の写真撮影後、機材を引き上げる作業員=25日午前10時ごろ、名護市辺野古沖
 【名護】那覇防衛施設局は25日午前、米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う、名護市辺野古周辺海域の現況調査(事前調査)の前段階となる潜水作業を前日に続き実施した。施設局が契約した漁船から潜水士が数カ所で写真を撮るなど、海底の状況を確認した。基地建設に反対する市民団体も前日に続いて反発。海上での抗議行動を展開した。
 早朝から続いた雨が一時的に降りやんだ午前9時すぎ、潜水士が確認作業を開始した。作業は辺野古周辺海域数カ所で同時に行われ、潜水士は海底の様子を目視やカメラで確認し、作業船に上がり記録を取っていた。作業船の周囲は第11管区海上保安本部の職員が乗った警戒船やゴムボートが取り囲み、反対派の行動をけん制した。
 反対派も午前8時にシーカヤックやボートで辺野古を出発。作業船に近づき、作業をやめるよう潜水士に訴えた。
 県は24日、那覇防衛施設局から求められていた「公共用財産使用協議」に同意しており、施設局は現状確認が済み次第、調査機器を設置する本格的な作業に移るとみられる。
(4/25 16:02) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23281-storytopic-3.html

知事、沖合移動を要請 防衛相、アセス協力求める

普天間移設計画などをめぐる意見交換で面会する(左から)久間防衛相、仲井真知事、島袋名護市長=25日午前、防衛省
 【東京】仲井真弘多知事と久間章生防衛相は25日午前、防衛省内で会談し、手詰まり状態にある米軍普天間飛行場移設問題で意見交換した。防衛省によると、仲井真知事はV字案に対し「(形に対しては)異論はないが、意見を以前からいろいろ申し上げている」と述べ、地元の要望を入れて沖合にずらすことなどを暗に求めた。普天間飛行場の「3年以内の閉鎖状態」や沖合移動の具体案などには言及せず、次回協議会の日程についても触れなかった。会談後、仲井真知事は県や名護市が求める修正案について「前から話している。まだ最終的な答えはもらっていない」と述べた。
 仲井真知事は冒頭、久間防衛相に対し、参院補選への協力に謝意を伝えた。知事によると、久間防衛相は県が24日に移設先の環境現況調査(事前調査)で海域使用に同意したことに対して礼を述べた。会談には名護市の島袋吉和市長、末松文信副市長も同席した。
 会談に先立つこの日朝、知事は久間防衛相と都内のホテルで2人だけで面会し、意見交換したもようだ。
 久間防衛相は環境現況調査(事前調査)の後に実施する正式な環境影響評価(アセスメント)について「(公有水面埋め立ての)許可権者は知事なのでよろしくお願いしたい」と協力を求めた。これに対し、仲井真知事は「よく打ち合わせた上で進めていきたい。地元の意見に耳を傾けていただければ」と述べた。
 さらに久間防衛相は「危険性除去のため移設を早めなければいけない。いろいろ工夫の仕方を考えたい」と述べ、「10年前にも移設返還にかかわったが、今度こそ完了させたい」と移設推進に強い意欲を示した。
 仲井真知事は「そこはわれわれも同じだ」とした上で「確認書にも危険性除去は書いてある。延長線上の問題ととらえてほしい」と要望した。
 知事は参院補選で来県した安倍首相の「地元の意見に耳を傾けたい」との発言について、移設案修正への理解を「大変(強く)にじませたと思う」との認識を示していた。
(4/25 16:04) 琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-23282-storytopic-3.html