「環境影響 懸念続出/普天間方法書審査会に説明」「米軍基地でパワハラ/従業員150人 抗議の署名 」「沖縄戦1フィート運動の会/25周年で毎月上映会 」沖縄タイムス、琉球新報社説「新テロ法再議決 強行と言わざるを得ない 」 (1月12日から15日)

2008年1月12日(土) 朝刊 1面

答申直前資料150ページ追加/普天間アセス方法書

1700万立方メートル海砂本島内調達・護岸工期5年

 米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書の審査をめぐり沖縄防衛局は十一日、著しい内容の不備を指摘されている方法書を追加説明した。代替施設本体の埋め立て工法や作業ヤードの面積、工事用資材を運ぶために新設する道路のルートなど五項目約百五十ページに及ぶ資料を新たに提示。埋め立てに必要な海砂千七百万立方メートルは本島から調達することを初めて明らかにした。本体埋め立ては護岸の施工計画三案のうち、最短工期(六十カ月)の施工案を検討している。

 宜野湾市内で開かれた県環境影響評価審査会(会長・津嘉山正光琉大名誉教授)で、説明した。本来方法書に記載されるべき内容を、知事意見の提出締め切りを今月二十一日に控えたアセス審査の終盤で提示した沖縄防衛局の対応に、委員から「アセス審査をないがしろにしている」など批判が相次いだ。

 追加説明で明らかになったのは(1)代替施設本体の工事計画(2)作業ヤードの面積および検討案(3)工事用仮設道路のルート案(4)埋立土砂の採取区域(5)美謝川切替ルート案―の五項目。代替施設本体については護岸工法の違いで三案を提示。防衛局は「二〇一四年までの完成からすると工期は五年間となり、もっとも工期の短い案を具体的に検討している」とした。

 作業ヤードは、辺野古漁港の辺野古地先水面と、大浦湾西海岸海域でそれぞれ約五ヘクタールの埋め立てを検討。作業ヤードから代替施設本体に資材などを運搬する工事用仮設道路はキャンプ・シュワブの敷地境界沿いに敷設を予定している。

 埋め立てに必要な土砂のうち千七百万立方メートルは本島海岸の海砂を充てることを想定。ほか二百万立方メートルは辺野古ダム周辺約七十ヘクタールの範囲から採取を検討しているとした。

 委員からはこうした追加説明の在り方が、法的に事業者に方法書のやり直しを要求できる「大規模な事業の変更」に当たるとの指摘も出た。県環境政策課は「アセス法の解釈を環境省と協議したが、やり直しには当たららない」との見解を示した。審査を傍聴した環境団体から「法の解釈は審査会が行うべき」「やり直しできるという専門家の見方もある」など異論が噴出した。

 同審査会は十六日に方法書について最終の答申案を検討する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801121300_01.html

 

2008年1月12日(土) 朝刊 27面

環境影響 懸念続出/普天間方法書審査会に説明

 「事業、環境調査の中身をしっかり示すべき」「アセス方法書の再提出を」。沖縄防衛局は十一日、米軍普天間飛行場代替施設の建設に伴う河川や海(公有水面)の埋め立ての詳細を、県環境影響評価審査会に説明した。埋め立てに、県内で採取した千七百万立方メートルの海砂の使用を予定するなど、初めて明らかにされる施工案。審査委員や傍聴した市民から、環境への悪影響を懸念する声や厳しい意見が相次いだ。

再提出要求も


 大浦湾周辺に三カ所の作業ヤード、海上ヤードをつくり、二千百万立方メートルの土砂で埋め立てる。辺野古ダム周辺の水源涵養林約七十ヘクタールからも約二百万立方メートルの土砂を採る―。防衛局の小柳真樹調達部長は約一時間、図面を示しながら埋め立て作業を細かく説明した。

 「ダンプカー約三百四十万台分の海砂を県内で採取した場合の環境への影響も考えなければ」。委員からは大量の海砂を県内で調達する計画に不安の声が上がった。

 埋め立て区域の護岸の工法について、三案を検討した結果、二〇一四年までの完成のため工期が最も短い方式を採用したとの説明に、「工期を短くすることが第一という印象だ。別の方法も考えるべきで、計画の熟度が低い」「五年という工期には無理がある」などの批判が相次いだ。

 「審査に必要な情報の提供を、審査会から防衛局にお願いするという構図はおかしい」「事前に十分な説明をして、私たちに意見を述べさせる考えはあるのか」。情報提示に消極的な防衛局の対応に不信感をあらわにする声も。

 沖縄防衛局は「手続きはきちんとしたい」「今後は日米で協議中の事項についても、情報を出していきたい」と繰り返した。

 傍聴した沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団運営委員の真喜志好一さんは「主権者としてどうしても言いたい」と立ち上がり、「事業計画に重大な変更がある。アセス法に則り、方法書の再提出を」と訴えた。平和市民連絡会の当山栄事務局長は「有害な基地をつくるために、有益な沖縄の自然が損なわれる実態がより明らかになった」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801121300_02.html

 

2008年1月12日(土) 朝刊 1面守屋色一掃へ大幅人事/沖縄局長に真部氏

 【東京】前防衛次官汚職事件に絡み、石破茂防衛相は十一日、金澤博範防衛政策局長や門間大吉審議官ら米軍再編を担当する主要ポストを中心に大幅な人事刷新する案を内定した。鎌田昭良沖縄防衛局長も北関東防衛局長に異動、後任は真部朗報道官。十七日付の発令。主要ポスト総入れ替えの異例人事に省内から米軍再編への影響を懸念する声も上がっている。

 金澤氏らは収賄罪で起訴された前事務次官の守屋武昌被告が重用してきた「守屋ライン」とされ、米軍再編の対米交渉や県内自治体説得を担当。「守屋色一掃」の狙いがあるとみられる。

 石破氏は米軍普天間飛行場移設問題などの実務を担当する課長クラスまで入れ替える予定。筆頭局長の金澤氏の後任には高見澤將林運用企画局長をあてる方針だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801121300_03.html

 

2008年1月12日(土) 朝刊 1面 

本紙「集団自決」問題報道 新聞労連大賞受賞

 新聞労連は十一日、「第十二回新聞労連ジャーナリスト大賞」を、沖縄タイムス「集団自決」問題取材班の長期企画「挑まれる沖縄戦/『集団自決』問題キャンペーン」と琉球新報取材班の教科書検定問題に関する一連の報道、朝日新聞連載「新聞と戦争」に決定したと発表した。

 沖縄タイムスの受賞理由として「党派を超えて結集した沖縄県民の運動と一体となって時代を動かした。教科書改ざんの動きを新聞と市民がスクラムを組んで押し返す画期的な足跡を残した」と評価した。

 謝花直美編集委員は「心痛を抑え体験を語った体験者と歴史を歪曲させないと立ち上がった県民とともに受賞したという思い。しかし、県民が求めた検定意見の撤回はされず、軍強制の記述も認められていない。受賞は道半ばで、全国の新聞労働者と連帯しながらこの問題を考えるきっかけにしたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801121300_12.html

 

琉球新報 社説

新テロ法再議決 強行と言わざるを得ない

 新テロ対策特別措置法は11日午後の衆院本会議で、出席議員の3分の2以上の賛成多数で再議決、成立した。再議決による成立は57年ぶりであり、極めて異例の事態だ。しかし果たして、それほどの重要な法案だったのか甚だ疑問が残る。国会での論議は十分深まらず、国民の圧倒的支持を得たわけでもない。強行な再議決と批判されても仕方あるまい。

 新法のポイントは(1)国際社会の平和と安全の確保に資する(2)活動はテロ対策海上阻止活動に従事する諸外国軍隊の艦船への給油と給水に限る(3)首相は実施計画の閣議決定や変更、活動の終了を国会に事後報告―などである。

 燃料の使途について昨年9月、NPO「ピースデポ」が軍事転用されたとの疑惑を示し、憲法に抵触する恐れがあると指摘した。新法について日本政府は、米政府との交換公文に「目的外使用の禁止」明記を求めたが、米側は拒んだ。燃料が軍事転用される恐れは十分にある。

 さらに新法では、前法にはあった自衛隊派遣の国会承認条項が削除された。これが最大の問題点である。国会が事実上、自衛隊派遣の是非を判断できなくなったわけで、文民統制が崩れる恐れがある。国会を軽んじた対応といえよう。

 政府は度々「テロとの戦い」と説明する。しかし、米国主導の対テロ戦争に正当性があるのだろうか。しかも、米側は給油活動再開にさほど関心を持っていないという指摘もある。日米首脳会談でブッシュ大統領は「早期再開への希望」という柔らかい表現を使った。米国追従、必要以上の配慮という日本の愚直な対応が目につく。

 民意はどうか。昨年12月に実施された全国世論調査では、衆院が再議決して成立させることについて賛成41・2%、反対43・6%で拮抗(きっこう)した。支持が広がらないままに再議決した与党は、今後、国民の批判を浴びよう。

 繰り返し指摘されているが、現在の衆院の与野党構成は、小泉純一郎元首相が郵政民営化の賛否を争点とした結果である。

 57年ぶりの異例の再議決をするからには、同問題を争点に掲げて民意を問うべきであった。さらに指摘すれば、日本が現憲法下でなし得る国際貢献の在り方について徹底的に議論するべきだった。今国会は、その好機であった。残念ながら国会は、前防衛事務次官の汚職事件、政治家と防衛商社幹部らとの宴席同席問題が中心となり、議論は深まらなかった。

 新法は1年で失効する。この時、さらに1年以内の延長か廃止か判断することになる。新法が成立したからといって議論を止めず、国民の圧倒的支持を得られる国際貢献を探り続けるべきである。

(1/12 10:04)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30439-storytopic-11.html

 

2008年1月13日(日) 朝刊 23面

米軍基地でパワハラ/従業員150人 抗議の署名

 基地従業員が働く米軍基地の警備部門で、「幹部らによるパワーハラスメント」の訴えが広がり、署名活動に発展している。要員の過半数に当たる百五十人が署名し、調査や処分を求めて昨年十二月に沖縄防衛局に提出した。九カ月間仕事を何も与えられない、大声で罵倒されたり侮辱されたりなどのストレスから精神疾患に陥り、配転や休職を余儀なくされた人たちがいる。防衛局は事態を重視、米軍と合同で調査に着手する。一方、幹部側は「事実ではない」と反論している。(阿部岳)

 「在沖米海兵隊憲兵隊日本人警備大隊」は、日本人の大隊長以下約二百三十人の基地従業員で構成。米軍人である憲兵司令官の指揮下にあり、各基地ゲートで警備に当たる。

 署名は、基地従業員の幹部複数による「地位を利用した嫌がらせ」「日常生活をも脅かすパワーハラスメント」を訴える内容。昨年十一月から十二月にかけて隊員百四十人と元隊員ら十人が署名し、多数の被害報告も寄せられた。

 隊員だった男性(41)は二〇〇六年の約九カ月半の間、理由を明らかにされぬまま「事務所待機処分」を命じられた。出勤しても警備に出られず、毎日八時間ただ机に向かって座っていることを求められたという。

 「新聞や本を読むことも禁じられ、警備のテキストをずっとノートに書き写した。土を掘ってまた埋め戻すような作業で、精神的に参ってしまった」と語る。〇七年三月に自殺を試みて意識を失ったところを家族に助けられ、一命を取り留めた。

 「標的にされた理由は分からない」という。出勤停止などの処分も受け退職寸前だったが、全駐労の抗議もあり、今は基地内の別の職場で働く。

 大隊の訓練を担当していた別の男性従業員(30)は昨年四月にうつと診断され、休職した。米兵を含む上司から、命じられた訓練計画書を何度仕上げても受け取ってもらえないなどの「いじめ」に遭ったと訴える。

 「次は何の嫌がらせをされるか、と下ばかり見ていた。最悪の職場環境だった」と男性。取り下げたはずの辞職届が意思に反して受理され、「退職」の形にされたため、現在不服申し立ての手続きをしている。

 ほかの隊員からも「ストに参加しないよう脅された」「突然羽交い締めにされた」「銃を持つ職場でもめ事は怖い」などの声が上がっている。

 一方、幹部の一人は「職務に懸命で、『いじめ』に使う労力はない」と事実関係を否定。「上司に改善を求めず、外部に訴えるやり方に戸惑いを感じる」と話した。

 沖縄防衛局は、米軍と合同の調査に向け協議を進めている。「大変重要な問題であり、事実関係を確認し、実態を把握した上で適切に対応していく」と説明。米海兵隊報道部も「警備大隊の隊員の訴えは把握している。防衛局と緊密に連携して調べる」としている。

 全駐労マリン支部の仲里修委員長は「他の基地職場と比べても労務管理があまりにひどく軍隊式で、実際にうつ発症が増えている。組合としても重大な関心を持って対処する」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801131300_01.html

 

2008年1月13日(日) 朝刊 23面 

合祀取り下げ訴訟/原告支援へ組織発足

 靖国神社に肉親を合祀されている沖縄戦の遺族らが、合祀の取り下げを求める訴訟の提起に向けて、五人の原告を支援する「共に歩む会」(海勢頭豊共同代表)が十二日、発足した。那覇市前島の船員会館で立ち上げ式が開かれ、沖縄国際大学の石原昌家教授が記念講演。「援護法は日本政府の戦争責任を免責し、提供者をいや応なく靖国神社に合祀するシステム」と指摘し、「今、援護法の壁を乗り越えていけるのがこの訴訟だ」と語った。

 石原教授は、援護法の制定をめぐって当時の日本遺族会の代表が、公聴会で国家の戦争責任を問い、国家補償を求めて「援護」には反対していた経緯を紹介。「援護法によって沖縄や日本の遺族会の戦争体験は塗り替えられた。国家に戦争責任を負わせることができるかどうかの分岐点だった」と述べた。

 与党の賛成多数で援護法が制定された後は、国会で適用範囲の拡大を求める修正が続いた。石原教授は「援護法の『援護』という言葉には、靖国をめぐる戦後日本の国の姿を決定付ける、巧妙に国民の意識を操作するからくりが内包されている」と語った。

 原告の代表となる川端光善さんは「(亡くなった家族の名前が)靖国神社の名簿に記載されている間は、再び戦争をできる国づくりに利用されているようで気が重い。合祀の取り下げが実現すれば、私の戦後は終わると思っている」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801131300_03.html

 

2008年1月13日(日) 朝刊 22面

沖縄戦1フィート運動の会/25周年で毎月上映会

 十二月で二十五周年を迎える「こどもたちにフィルムを通して沖縄戦を伝える会」(通称・沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会、福地曠昭代表)は、会の活性化を目指し、今年は毎月各地で上映会を開くことにしている。

 寄付金などで運営している同会は、資金難でここ十年ほど新たな記録フィルムを入手できないでいる。二十五周年を機に、県民の関心を呼び起こし、新たなフィルムの入手につなげ、会の活動を充実させたいとしている。

 同会が発足した二十五年前も、教科書から日本軍による住民虐殺が削除される問題が起こっていた。福地代表は「子どもたちに戦争の実相を正しく伝えたいと始めた運動。今も教科書問題が尾を引いており原点に返った活動をしていきたい」と意気込みを話した。

 これまでは、主にアメリカの国立公文書館やイギリスの帝国戦争博物館などから約十一万フィートの記録フィルムを買い取った。今後は、ワシントンやハワイなどからもフィルムを入手したい、としている。また、県立公文書館とも連携を図れないか模索中だ。


きょう那覇市 来月は大宜味


 今月の上映会は、十三日午後一時半から那覇市中央公民館で、記録フィルムを編集した映画などの上映会を行う。二月は大宜味村、三月に渡嘉敷島、四月に読谷村、五月は県内各大学での上映会を予定している。

 そのほか、六月二十三日に記念誌の発行、十二月に記念式典などを計画している。問い合わせは同会、電話098(862)2277。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801131300_05.html

 

2008年1月13日(日) 朝刊 2面

官邸主導 “守屋色”一掃/防衛省人事刷新

 守屋武昌前防衛次官の汚職事件に絡み、防衛省は守屋氏側近の人事刷新に踏み切った。一義的には“守屋色”を一掃し、組織改革を進める狙いだとされる。同時に、地元とのあつれきを生みながら在日米軍再編を強力に進めた守屋氏の手法を受け継ぐ面々を排除し、米軍普天間飛行場の移設問題を円滑に主導したい首相官邸の意向が反映された格好だ。普天間移設で防衛省と対立してきた内閣府からは、「県へのお土産になる」と歓迎する声が上がる一方、課長クラスにまで及ぶメスの入れように、再編への影響を懸念する声も漏れる。(東京支社・島袋晋作)

 「普天間は防衛省の人事が終わってからだ」

 今月初旬、首相官邸を訪れた政府高官に、二橋正弘官房副長官が意味深げに話し掛けた。

 普天間移設で地元との融和路線を敷く二橋氏は、北部振興事業費を「凍結」するなどして受け入れを迫る防衛省側と就任直後から対立していた。業を煮やした二橋氏が、「守屋派」更迭を強く働き掛けたとされる。

 官邸は、新テロ対策特別措置法成立後の最重要案件に、膠着する米軍普天間飛行場の移設問題を位置付けている。今回の人事は、「官邸主導」をより明確にし、移設作業を加速するための布石とみられている。

 防衛省が人事を内示したのは、対テロ新法を再議決した十一日の衆院本会議終了直後。強い影響力を持つ幹部らの突然の異動情報は瞬く間に広がり、省内は騒然とした。

 「一生懸命やってきたつもりだが大変残念だ。このままでは普天間は絶対に動かない」。人事を宣告されたある幹部は無念そうに語った。


「増田カラー」


 対象となったのは金澤博範防衛政策局長、門間大吉大臣官房審議官ら、米軍再編などで守屋氏が重用したメンバーだ。

 金澤氏は昨年九月に就任したばかりだった。わずか三カ月余での筆頭局長交代は極めて異例。守屋氏の肝いりで新設された米軍再編担当審議官の門間氏も、出身の財務省へ異動となった。在沖米軍基地関係の実務を担当し、何度も沖縄入りした辰己昌良地方協力企画課長も外れ、沖縄関係の顔触れは一新された。

 代わって、防衛政策局長には高見澤將林運用企画局長、高見澤氏の後任は徳地秀士北関東防衛局長が内定した。

 高見澤、徳地氏は、増田好平事務次官とともに海外留学経験がある「国際派」だ。中でも高見澤氏は増田氏に近く、省内では「『増田カラー』を打ち出した人事」との見方もある。


行政の連続性


 「守屋ラインを一掃できるか見ものだ」

 ある県幹部は、防衛省の一月人事に早くから注目していた。

 県側の期待感を見透かしていたように、内閣府沖縄担当部局の幹部は「次回の普天間移設協議会では、この人事を報告するだけでも大きな意義がある」と歓迎する。

 ただ、高見澤氏は昨年八月まで横浜防衛施設局長を務め、「基地行政の難しさはよく分かっている」(防衛省幹部)とされるものの、沖縄関係の実務経験はない。増田次官でさえ「沖縄の基地問題に限らず、基地行政そのものへの関心が薄い」(同)とみられている。

 「実施段階」とはいえ、課題山積の米軍再編を担う新しい顔触れに、別の内閣府幹部は「やり過ぎだ。行政の連続性が保てなくなる」と、在沖米軍基地問題が停滞することへの警戒感をにじませた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801131300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月13日朝刊)

[方法書追加説明]

新たな環境破壊も心配だ

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書に対する沖縄防衛局の追加説明は、地元住民に新たな疑問と不安をもたらしたのではないか。

 沖縄防衛局が明らかにした五項目は(1)代替施設本体の工事計画(2)作業ヤードの面積および検討案(3)工事用仮設道路のルート案(4)埋立土砂の採取区域(5)美謝川切替ルート案―である。

 本体の埋め立ては、三案ある護岸の施工計画のうち六十カ月の最短工期で終える計画案を検討しているという。

 だが、埋め立てに要する千七百立方メートルの海砂は問題がある。ダンプカー約三百四十台分という膨大な量を本島のどこから運ぼうというのだろうか。

 それだけの海砂を採れば、採砂場だけでなく、周辺環境に大きな負荷を与える。海域に生息する魚介類やサンゴなどへの影響も懸念されよう。

 なのに那覇防衛局は採砂場を具体的に提示せず、予想される環境問題にも触れなかった。

 さらに必要な二百万立方メートルの土砂は、辺野古ダム周辺の約七十ヘクタールの範囲から採取する計画だという。

 言うまでもないが、基地施設内とはいえダム周辺は水源涵養林である。そこから大量の土砂を採る場合、相当量の樹木の伐採を要する。そうなれば、周辺の保水力が衰え、一帯の環境が変わっていくのは必至だろう。

 「二〇一四年までの完成」という計画表にこだわるあまり、環境問題に対する取り組みが後回しにされてはいないか。

 県環境影響評価審査会の委員が「工期を短くすることが第一という印象」と懸念するのも当然である。

 沖縄防衛局は「手続きはきちんとしたい」としている。だが、形式的な手続きでは審査会ばかりか地元を納得させることもできまい。

 昨年十二月に出された国のアセス方法書について私たちは、出来の悪い答案みたいなものだ、と指摘した。

 今回、約百五十ページに及ぶ資料を提示したとはいえ、シュワブ沿岸海域だけでなく、海砂採取海域の環境まで破壊する可能性も浮き彫りにした。

 追加説明に対し県環境政策課は「やり直し(を要求する)にはあたらない」との見解だが、情報の開示が不十分なことに加えて、方法書にもまだ不備があるのは審査会委員の見解からも明らかだろう。

 環境に深刻な影響をもたらす恐れがあるのであれば、そのことについてきちんと説明するのが沖縄防衛局の責務である。審査会の懸念を軽々に考えてはなるまい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080113.html#no_1

 

2008年1月14日(月) 朝刊 1面

政府機関が軍命否定/裁判事案 一方的に断定

防衛研究所資料/不適切と認め削除へ

 【東京】防衛省の防衛研究所(東京都目黒区)が、所蔵している沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する資料に、渡嘉敷、座間味両島で「戦隊長の命令はなかった」という趣旨の見解を付していたことが十三日、関係者の話で分かった。両島で起こった「集団自決」への戦隊長命令の有無をめぐっては大阪地裁で訴訟が提起されており、三月に判決が出る。事実関係が裁判で争われている事案に、政府機関が一方の主張を認める断定的な記述を付していたことになる。防衛研究所は見解が「不適切」と認めており、近く削除する方針だ。

 関係者によると見解は、戦時中に大本営で参謀を務め戦後に厚生省(当時)事務官に就いた馬渕新治氏が、一九六〇年に陸上自衛隊の幹部学校で「沖縄戦における島民の行動」をテーマに講演した際の講演録に添付された手記「集団自決の渡嘉敷戦」「座間味住民の集団自決」に対して付されていた。二つの手記は沖縄戦体験者によるものとみられる。

 手記に付されていた見解は、「赤松大尉、梅澤大尉(集団自決発生時は少佐)による集団自決に関する命令は出されていないことが証明されている」として、両戦隊長による命令を明確に否定。根拠に宮城晴美さんの著書「母の遺したもの」(高文研、二〇〇〇年十二月出版)などを挙げている。

 見解の作成は防衛研究所の戦史部と書かれているが、個人名や作成日は記されていない。宮城さんの著書が出版された後の〇一年以降に付されたとみられる。

 防衛研究所は十三日、担当者が不在だったが、出勤していた職員は、沖縄タイムスの取材に対し「指摘の件について昨年末ごろに報道機関から問い合わせがあった。(見解の記述が)不適切なので削除することになったと聞いている」と説明した。

 防衛研究所は安全保障に関する基本的な調査・研究や、幹部自衛官などの教育、戦史に関する基本的な調査・研究が主な業務。政府はこれらの成果を防衛政策の立案に反映させている。


     ◇     ◇     ◇     

検定撤回あす再要請

文科副大臣と実行委が面会


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員らが十四日に上京し、十五日に池坊保子文部科学副大臣と面談、検定意見撤回などをあらためて申し入れる。実行委の構成団体のうち六団体は、県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」にも実行委への協力を要請する。

 実行委は、教科書会社からの訂正申請を受け、文科省が認めた教科書の「集団自決」に関する訂正記述を、「『日本軍による強制』の記述がなくなるなど、極めて不満が残る内容となっている」と批判、「県内全市町村や県議会、県民大会での決議などを無視するもので、到底許すことはできない」として、あらためて検定意見撤回と「日本軍による強制」を示す記述回復を要請することにした。実行委結成を呼び掛けた七団体のうち、県婦人連合会など六団体は、実行委の要請行動に協力しないことを決めた「五ノ日の会」に、教科書検定問題への取り組みや県選出の全国会議員と実行委との協議を継続するよう文書で申し入れる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801141300_01.html

 

2008年1月14日(月) 朝刊 1面

F15きょう飛行再開/嘉手納基地

 【嘉手納】米本国での墜落事故をきっかけに、飛行を停止していた米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が、十四日から飛行訓練を再開する。昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶり。基地に隣接する自治体は「住民の不安は払拭されていない」などとして安全性を疑問視し、飛行再開の中止と同機の撤去を求めている。

 十四日は「成人の日」でもあり、飛行訓練を強行した場合、周辺自治体の反発は一層強まりそうだ。飛行再開に反対する市民団体は十五日正午すぎから、嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で緊急抗議集会を開く。

 同基地に隣接する沖縄、嘉手納、北谷の三市町で組織する嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は十一日、「飛行再開により、嘉手納基地周辺での墜落事故が懸念され、周辺住民の不安は計り知れず、断じて容認できない」として飛行中止を求め、抗議した。

 同基地報道部によると所属機は三十九機が飛行可能。ロンジロン(縦通材)の厚さが製造元の仕様書と合致していないとして、十七機はデータを分析中。飛行再開まで二―四週間かかるという。

 事故は昨年十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。その後の調査で、ロンジロンの亀裂が事故原因として浮かび上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801141300_02.html

 

2008年1月15日(火) 朝刊 1面

F15飛行再開 102デシベル超

24機中2機緊急着陸

 【嘉手納】米本国での墜落事故をきっかけに、飛行を停止していた米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機は十四日午前、飛行訓練を再開した。昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶり。午後五時までに、少なくとも二十四機が離陸。このうち、二機が緊急着陸した。

 嘉手納町屋良では、午前八時五十分に一〇二・二デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を計測。飛行再開の中止を求めていた周辺自治体は騒音負担の増加を指摘し、飛行再開を強行した米軍に反発を一層強めている。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)会長の野国昌春北谷町長は「ロンジロン(縦通材)以外にも、老朽化したF15には別の部品の欠陥があるのではないか。亀裂の原因が明らかでないまま飛行すれば、住民が不安に感じるのは当然だ。大切な『成人の日』に飛行を再開するのは、訓練の遅れを取り戻そうという米軍の一方的な基地運用の表れであり、容認できない」と強い口調で述べた。

 F15は、午前八時二十六分に離陸したのを皮切りに、相次いで飛行訓練を再開。嘉手納町の職員が同町屋良の「道の駅かでな」で、住宅地に近い北側滑走路を使用したF15六機の離陸時の騒音を測定、いずれも九九デシベル以上を計測した。

 嘉手納基地報道部によると、所属機は三十九機が飛行可能。ロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していないなどとして、十七機はデータを分析中。飛行再開まで二―四週間かかるという。

 事故は昨年十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落。その後の調査の過程で、ロンジロンの亀裂が事故原因として浮かび上がった。

 米空軍は、飛行停止期間中に、世界規模の一斉点検を実施。事故機以外に計九機でロンジロンの亀裂を確認した。うち二機が嘉手納基地所属機だった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151300_01.html

 

2008年1月15日(火) 朝刊 29面

門出の日 切り裂く爆音/F15飛行再開

 【中部】のんびりとした祝日の十四日午前八時二十六分、嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開した。飛行停止から約二カ月ぶりに嘉手納の空に響いたF15のごう音に、周辺住民は「何度聞いてもこの音には慣れない」「墜落しないかと心配だ」と不安をかき立てられた。

 同基地では、午後五時までに二十四機の離着陸が確認された。うち二機が緊急着陸。基地内の消防など緊急車両が出動したが、放水などはなく、いずれも数十分後に自走して格納庫に戻った。同日午前九時十七分ごろに緊急着陸した機体について、同基地報道部は「予防のための着陸で、機体にトラブルはなかった」と説明した。

 基地を見渡す嘉手納町屋良の「道の駅かでな」では、カメラを構えた報道陣や観光客らが訓練の様子を見守った。

 東京から観光で訪れた目黒孝昌さん(29)、由美子さん(39)夫妻は「沖縄に基地があるのは知っていたが、こんなにうるさいとは思わなかった。騒音以外にも事故の不安など、沖縄は大きな基地負担が押し付けられていると感じた」と心配そうな表情を見せた。

 「朝から戦闘機の音がうるさかった。新聞を開き、F15飛行再開の見出しを見て納得した」。屋良に住む伊波靖晃さん(75)は、久しぶりに聞く騒音にうんざりした様子。「やっぱりF15はほかの戦闘機よりうるさい。何度聞いてもワジワジーする。欠陥部分を点検したと聞いたが、米軍は何度も県民をだましてきた。信用できない」と憤った。

 同飛行場の飛行ルート直下に位置する北谷町砂辺。同地域に生まれ育った喜友名美春さん(20)は、十三日に町の成人式典に出席し、人生の門出を迎えた。成人として第一歩を踏み出す成人の日の飛行再開に「子どものころから自宅のすぐ上を飛び、怖い思いをしてきた。こんな日くらいは静かにしてほしかった」と声を落とした。

 この日、F15二十四機は南北滑走路を使用し、沖縄市へ向けて離陸した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151300_02.html

 

2008年1月15日(火) 朝刊 1面

防衛研「鉄の暴風」も批判/軍命否定の見解判明

 慶良間諸島の「集団自決(強制集団死)」に関し、防衛省の防衛研究所が、隊長命令があったと記述していた所蔵資料に対し、「隊長命令はなかった」と見解を付け加え公開していた問題で十四日、全文が明らかになった。所蔵資料について、沖縄タイムスの「鉄の暴風」との共通部分を指摘、「『日本軍側の旧悪を暴く』という風潮の中で事実とは全く異なるものが、あたかも真実であるがごとく書かれた」と記述していた。防衛省は批判を受け、削除する方針だが、識者は「防衛省によるゆがんだ沖縄戦住民観の本質は変わらない」と批判する。

 防衛研究所が見解を加えて公開していたのは、一九六〇年に元大本営参謀が陸上自衛隊幹部学校で沖縄戦に関する講演をした際、資料とした慶良間戦体験者の手記。

 「友軍は住民を砲弾の餌食にさせて、何ら保護の措置を講じようとしないばかりか『住民は集団自決せよ!』と赤松大尉から命令が発せられた」(「集団自決の渡嘉敷戦」)

 「艦砲のあとは上陸だと、住民がおそれおののいているとき、梅沢少佐から突然、次のような命令が発せられた。『働き得る者は男女を問わず、戦闘に参加せよ。老人、子供は全員、村の忠魂碑前で自決せよ』」(「座間味住民の集団自決」)

 戦史研究室は、元渡嘉敷島巡査の手記や沖縄女性史家の宮城晴美さんの著書を上げ「赤松大尉、梅沢大尉の自決に関する命令はだされていないことが証明されている」と手記の表紙に掲載している。

 見解に著書を引用された宮城さんは「この問題は『集団自決』訴訟と教科書検定問題と連なっている。防衛省は旧日本軍への『集団自決』への関与を否定することを前提に資料を分析している」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151300_03.html

 

2008年1月15日(火) 朝刊 29面

再発防止の政府談話要求/検定撤回きょう要請

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が十四日、政府に検定意見撤回などを要請するため東京へ向かった。実行委は「高校の日本史教科書から、『集団自決』への日本軍の強制を示す記述を削除させた検定意見は残っており、同じことが繰り返される恐れがある」と判断し、再発防止に向けた福田康夫首相や渡海紀三朗文部科学相のコメントを求めている。

 要請に向かったのは県議会議長の仲里利信実行委員長ら、実行委幹部の五人。十五日午前に大野松茂官房副長官と、午後に池坊保子文科副大臣と面談し、検定意見撤回と記述回復を福田首相らに求める文書を手渡す。

 仲里委員長は、「先月二十八日、教科書会社からの訂正申請への対応を文科省が発表した際に福田首相か渡海文科相から、県民への謝罪や再発防止に向けたコメントがいただけるはずだったので及第点を与えた」と説明。「だがコメントはなく、検定意見の実質は残ったままというのが実行委の見解で、政府の対応に及第点は与えられない」として、あらためて政府幹部による再発防止に向けたコメントを求める考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151300_04.html

 

琉球新報 社説

F15飛行再開 いつまで続ける安全無視

 機体構造の欠陥の検査で飛行を停止していた米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が14日から飛行を再開した。

 米軍は機体の欠陥や安全対策に関する情報を十分に開示しないまま、住民や地元自治体などの強い中止要請を無視した。あろうことか1カ月半ぶりの飛行再開をあえて連休最終日を選んで強行した。その神経が理解できない。

 安全が保証されないことへの住民の懸念や不安、いら立ちなどは一顧だにされない。切なる訴えに耳を傾けようとしない挑発的な振る舞い、軍の論理を優先させる姿勢は、露骨に過ぎると言わざるを得ない。

 米軍側は、安全性に問題はないと再開に踏み切った理由を説明するが、この説明を信じ、納得する者はまずいないはずだ。地元自治体などは構造的な欠陥を疑っているのである。

 F15の飛行停止措置は、昨年11月2日に米ミズーリ州で起きた墜落事故がきっかけだ。空中分解の末に墜落するという信じ難い事故である。全機の飛行を止める前代未聞の事態だった。

 これだけでも重大な欠陥が疑われるのは当然だが、実はそれ以前から運用に関し根強い懸念があったのである。使用開始から35年が経過しており、この間、老朽化した戦闘機を飛行させる危険性についても指摘されてきた。

 何よりも昨年11月の墜落事故以来、飛行中止と再開をめぐる米軍の対応、動きに異常性がはっきり表れている。

 ミズーリ州の事故を受けての飛行停止から約3週間後に「点検による安全確保」を強調し、米軍は欠陥機の飛行再開に踏み切った。だが、そのわずか2日後には再び停止措置が取られたのである。

 嘉手納基地に配備されたF15C型機の点検の結果、機体の骨格となる「縦通材」2カ所に亀裂が見つかったからだ。

 これまで再三指摘されてきたように、経年劣化や構造疲労の疑いが露見したとの見方が強まったのは当然である。

 米軍の説明によると、嘉手納基地に所属するF15 57機のうち39機は飛行再開が可能であり、1機は点検中で、17機は停止措置が継続される。

 裏を返せば、いま現在、飛行に適しないF15機の数は17機に上るということになる。構造的な欠陥を自ら認めたようなものではないか。事故が起きないほうが不思議なくらいだ。

 同基地からこの日の朝、飛び立ったF15の中には緊急着陸した機も確認された。

 安全性が担保されないF15の飛行再開は許されない。即時の飛行中止と撤去を強く要求する。

(1/15 9:45)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30504-storytopic-11.html

 

2008年1月15日(火) 夕刊 1面

軍強制明記を再要請/県民大会実行委

 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会(実行委員長・仲里利信県議会議長)は十五日午前、首相官邸に大野松茂官房副長官を訪ね、「『集団自決』への日本軍による強制」の明記や検定意見撤回などをあらためて要請した。仲里実行委員長らによると、大野副長官は「皆さまの意向を福田首相に伝える」と述べたという。

 仲里委員長らは、昨年十二月二十八日の実行委員会で採択した福田康夫首相あての要請書を手渡し、要請した。

 要請後、仲里委員長は「(文科省が記述の修正を発表した際に)県民への謝罪など首相か文部科学相のコメントを前提にいったんは八十点という評価をした」と説明。「しかしコメントはなく、検定意見そのものは生きているという認識だ。これでは県民は納得できない」と、再要請の意義を強調した。

 要請書では教科書会社からの訂正申請に対する文科省の決定について「(教科用図書検定調査審議会が示した)基本的とらえ方の結果、『日本軍による強制』の記述がなくなるという重大な問題が生じている」と指摘。

 さらに「文科相談話でも検定意見撤回や、教科書検定で沖縄戦の記述改ざんの再発防止措置などに何ら触れていない」と批判し、「到底許すことはできない」と、検定意見撤回などをあらためて求めた。

 十五日午後には文科省を訪ね、池坊保子副大臣に同様に要請する予定。

 実行委とは別に、玉寄哲永・県子ども会育成連絡協議会(沖子連)会長、小渡ハル子・県婦人連合会(沖婦連)会長らは、自民党国会議員でつくる五ノ日の会と面談し、今後の協力を要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151700_01.html

 

2008年1月15日(火) 夕刊 5面

砂辺で105デシベル屋良100デシベル/F15飛行再開

 【嘉手納・北谷】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行を再開した十四日、北谷町砂辺で一〇五・五デシベル(電車通過時の線路脇に相当)、嘉手納町屋良で一〇〇・九デシベル(同)の騒音を計測していたことが十五日、分かった。

 同基地では十四日、F15のほか、AV8ハリアー垂直離着陸攻撃機、FA18戦闘攻撃機、KC135空中給油機などが南北両方の滑走路を使用し、離着陸を繰り返した。

 北側滑走路に近い嘉手納町屋良では十四日、多くの人が不快に感じる七〇デシベル以上の騒音を六十三回計測。一方で、南側滑走路を使用した場合、飛行ルートの真下にある北谷町砂辺は、五十九回だった。

 嘉手納基地報道部によると、所属機の三十九機が飛行可能で、十七機は現在、米本国で起きた墜落事故の原因として指摘されているロンジロン(縦通材)のデータを分析中。飛行再開まで二―四週間かかるとしている。

 嘉手納、北谷町は「すべてのF15の点検が終わり、運用が本格的に始まれば、騒音負担の増加は必至だ」と今後の動向を注視している。


F15撤去求め抗議


 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練を再開したことを受け、市民団体による緊急の抗議集会が十五日、嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で開かれた。参加者は「F15を撤去せよ」などとシュプレヒコールを繰り返した。沖縄平和運動センター、中部地区労、新嘉手納爆音訴訟団が主催。六十人以上が参加した。

 同センターの崎山嗣幸議長は「F15の構造的欠陥は明確。飛行再開は到底容認できない」と訴えた。

 同訴訟団の仲村清勇団長は「F15は民間地域に墜落する危険性がある。政府は住民生活と軍事、どちらを優先するのか」などと批判した。


10機超離陸ごう音響く/2日目


 【嘉手納】米軍嘉手納基地に所属するF15戦闘機の飛行再開から二日目の十五日、同基地では午前十一時現在、F15十機以上が離陸、周辺住宅地にごう音を響かせた。F15は午前八時ごろ八機が離陸。九時半ごろからタッチアンドゴーを繰り返したり、急旋回した。


再び抗議へ三連協調整


 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練を再開したことを受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は十五日午後、北谷町役場で幹事会を開く。地元の抗議、要請を無視した形で飛行を再開した米軍に対し、あらためて抗議する方向で調整する。三連協は、十一日にも飛行再開の中止と、同機の撤去を求めて抗議している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151700_02.html

 

2008年1月15日(火) 夕刊 5面

レンジ4使用延長 抗議へ/都市型施設移設遅れで

金武町議会、18日決議

 【金武】金武町議会米軍基地問題対策調査特別委員会(知名達也委員長)は十五日、米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」にある都市型戦闘訓練施設の移設完了が二〇〇七年度末から〇九年度中ごろまでずれ込み、暫定使用が約一年半延長されることに抗議することを決めた。レンジ4施設の暫定使用の中止と施設の撤去・解体を求める抗議決議案を、十八日に開かれる臨時議会に提出する。

 二月にも着工が予定されている、「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応するグリーンベレーの小銃(ライフル)用射撃場の建設問題についても、抗議する。

 委員からは「政府と米軍の責任で工期が遅れたのだから、暫定使用は中止すべきだ」「伊芸区民に、これ以上の負担を強いることは容認できない」など、暫定使用の中止を強く求める声が上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801151700_03.html

「(金武町)伊芸区、訓練中止を要求/レンジ4移設遅れ」沖縄タイムス、琉球新報社説「戦闘訓練施設 住民の安全軽視は許せない 」 (1月10日、11日)

2008年1月10日(木) 朝刊 1面

調査着手向け本格調整/普天間アセス

次回移設協合意見通し

 【東京】政府は九日、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に向けた環境影響評価(アセスメント)調査の二月初めの着手に向け、県と本格調整に入った。仲井真弘多知事が同日、首相官邸で町村信孝官房長官、二橋正弘副長官と会談し、同調査について話し合う次回の普天間移設協議会の早期開催を確認した。同協議会で県は、政府が調査で求めているサンゴ類採捕などを許可するとみられる。

 県は調査前に、事業内容についての調査手法や予測評価などの再審査・公表を求めている。政府高官は同日、「防衛省にもっと詳しく説明するように言っている。そう難しい問題は残っていない」と指摘。アセス調査の着手については「次回協議会で合意できると思う。もうそんなに障害はない。お互いに進めようという姿勢になっている」との見通しを示した。

 次回協議会は、二十一日の知事意見提出後の今月下旬に開催する方向で調整。県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動についても意見が交わされる見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_03.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 2面

北部訓練場 北側3カ所建設合意

日米、ヘリパッド移設で

 【東京】日米両政府は九日の合同委員会で、米軍北部訓練場の返還に伴って移設されるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)六カ所のうち、未着工だった北側三カ所(国頭村)の建設に合意した。今後、業者との契約手続きを経て着工する。

 南側三カ所(国頭村、東村)について、日米は昨年三月に建設に合意し、七月に着工していた。防衛省は工期について「おおむね二年」としており、二〇〇九年七月ごろの完成を目指している。

 防衛省によると、ヘリパッドは六カ所ともそれぞれ直径四十五メートルの円形。両端に十五メートルの「無障害地帯」を整備するという。今回合意した北側の三カ所は、契約ベースで四億円を見積もっている。日米は、北部訓練場について日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、既存のヘリパッド移設を条件に、約三千九百八十七ヘクタールを部分返還することで合意している。

 防衛省は、米側へのヘリパッドの引き渡しは「六カ所すべてが完成後」としており、返還時期は〇九年七月以降となる見通しだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_04.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 2面

伊芸区、訓練中止を要求/レンジ4移設遅れ

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」の米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の都市型戦闘訓練施設移設問題で、移設完了が二〇〇七年度末から〇九年度中ごろまでずれ込むことについて、同施設に隣接する伊芸区行政委員会は九日、沖縄防衛局から説明を受けた。移設終了まで暫定使用が続くとの説明に、委員らは「これ以上、訓練による被害を我慢しろというのか」と反発し、暫定使用の中止を求めた。

 防衛局の赤瀬正洋企画部長らは、工事のための訓練中止を米軍が拒否したことなどから工期が一年半ほど遅れると説明。「早朝や夜間訓練で住民が被害を受けないよう、米軍に配慮を申し入れる。工事に関して米軍から協力は得ているが、できる限り早期に移設できるよう、今後も努力したい」と、暫定使用の延長に理解を求めた。

 委員らは「住民は一日も早い訓練中止を求めている」「正月三が日にも夜間訓練をしていた。米軍が約束を守るとは思えない」などとして訓練の早期中止を求めた。

 区行政委員会の登川松栄議長は「区民は、いつどこから弾が飛んでくるか分からない状態で生活している」と訴え、町や町議会と協力し、同局などに訓練の即時中止と早期移設を求めていく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_05.html

 

2008年1月10日(木) 朝刊 1面

軍強制明記へ11月再申請/執筆者ら活動継続

意見撤回求め声明

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、教科書会社の執筆者や編集者らでつくる「社会科教科書執筆者懇談会」は九日、都内で第四回会合を開き、検定意見の撤回と「日本軍の強制」記述の明記などを求める声明を発表し、活動を継続する方針で一致した。教科書に「軍強制」を明記するため九月にも会合を開き、十一月をめどに再度の訂正申請を目指す。

 今後は名称を社会科教科書懇談会に変更し、教育関係者や市民に広く門戸を開いて存続する。

 声明では、文部科学省が昨年十二月に承認した教科書会社六社の訂正申請について「軍の強制を認めず責任をあいまいにしており、執筆者として到底、納得できない」「検定意見撤回が重要であることがあらためて示された」などとした。

 声明には教科書検定制度の改善要望も盛り込み(1)教科書調査官、教科用図書検定調査審議会(検定審)委員の人選の透明化(2)検定審の審議公開―などを求めている。

 出席者からは「検定制度を段階的に廃止する必要がある」「検定審が記述を認めない場合、学術的根拠を口頭ではなく明文化するべきだ」などの声が挙がり、声明に反映させることにした。

 二〇〇六年度検定で「集団自決」の記述に検定意見が付された五社のうち、四社の執筆者、編集者ら十五人が参加した。

 懇談会は昨年九月の初会合以降、各社の訂正申請に向けた情報交換や認識共有の場として機能してきた。参加した複数の執筆者が訂正申請前に記者会見して記述の内容を明らかにするなど、検定審議の密室性に一石を投じる役割も果たした。

 懇談会呼び掛け人で歴史教育者協議会の石山久男委員長(実教出版執筆者)は会合終了後、「これまでの取り組みの経過をまとめ、今後の課題の方向性も見えた。懇談会の活動継続の足がかりになる」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月10日朝刊)

[防衛利権]

疑惑は晴れたといえるか

 前防衛次官汚職事件に絡み、「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事に対する参考人質疑が参院外交防衛委員会で行われた。同協会は防衛族議員らが理事を務める外務省所管の社団法人である。

 秋山氏をめぐっては、防衛商社「山田洋行」が米国メーカー二社の代理店契約を維持するため、秋山氏側に三十万ドル(約三千五百万円)を支払うと記載したり、防衛族議員を通じて米政府元高官に働き掛けたとする内部文書があることが分かっている。

 また、旧防衛庁が発注した毒ガス弾の処理調査事業で、下請けに入った山田洋行から一億円を受け取ったのではないかとの疑惑もある。

 質疑で秋山氏はいずれも全面否定した。だが、疑惑は晴れたといえるのかどうか。有力防衛族議員や元米国高官らとの深い親交をうかがわせる証言があり、防衛利権の「闇」を垣間見せることになったのではないか。

 秋山氏が顧問料として月約百万円を得ている米国企業の存在も浮かび上がった。同社の実態は不透明とされ、山田洋行側からコンサルタント料として送金を受けている。

 秋山氏は、山田洋行側が「アメリカの多岐にわたる人脈を持っているところに着目したのではないか」と説明したが、これは何を意味するのか。

 防衛装備品はミサイルや戦闘機をはじめとする兵器類など巨額に上る。「防衛機密」といわれれば価格が適正かどうか判断が難しい。

 取引には防衛商社が介在し、米メーカーの見積書を水増しして請求する実態が次々判明。兵器売り込みを図る防衛産業に巣くう構造的な問題といえるものだ。言うまでもなく、予算はすべて私たちの税金で賄われている。

 国の防衛政策は国民の支持なくしては成り立たないはずだ。防衛利権の「闇」を解明しない限り、防衛に対する国民の信頼は失われるばかりだろう。

 東京地検はすでに同協会を家宅捜索している。不正がないかどうか徹底的に解明してほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080110.html#no_2

 

琉球新報 社説

防衛利権疑惑 「政」の徹底的な解明を

 防衛商社「山田洋行」の不明朗な資金の流れの鍵を握るとみられる社団法人「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事が参院外交防衛委員会で参考人質疑を受けた。

 秋山氏は、山田洋行から米メーカーの代理権維持工作で資金提供を受けたのではないかなどの疑惑を全面否定した。

 ただ、秋山氏は関係するアドバック・インターナショナル・コーポレーションが山田洋行からコンサルタント料を受領していることや、久間章生元防衛相、額賀福志郎財務相との宴席は認めた。

 質問した各議員とも、報道の事実確認がほとんどで、新たな追及材料に乏しかった感は否めない。疑惑解明が進んだとは言い難い。

 巨額の防衛利権は国防機密という厚いベールに包まれている。前防衛次官の逮捕以降、利権に政治家が群がり、甘い汁を吸っているとの国民の疑念、不信はさらに強まっている。

 大物防衛次官と防衛商社元専務の逮捕で「官」と「業」の疑惑は徐々に解明されつつある。だが、「政」の実態を暴かなければ、防衛利権の全容解明にはならない。

 山田洋行をめぐる事件を全面解決しなければ、“闇”はさらに深まる可能性がある。

 秋山氏については、東京地検が山田洋行から交流協会側に1億円を提供した疑いがある問題で、協会周辺に対する専従捜査班を設置している。

 日米の防衛産業関係の人脈が広く、政官界とのパイプ役とされる秋山氏や、場合によっては疑惑を持たれた政治家に、国会としてもさらに事情を聴く機会を設け、疑惑を徹底解明する必要がある。

 日米平和・文化交流協会は、定款では米国との文化交流に関するセミナー開催や調査研究などを事業としている。しかし、防衛庁(当時)発注の旧日本軍毒ガス弾処理事業の調査業務を行うなど、定款外の事業を行っていた。

 多くの国民は、防衛族議員らが理事を務める交流協会の役割に疑念の目を向けている。「政」につながる疑惑解明の機会を逃してはならない。

(1/10 9:36)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30370-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

戦闘訓練施設 住民の安全軽視は許せない

 金武町のキャンプ・ハンセン内レンジ4の米陸軍都市型戦闘訓練施設の暫定使用が予定より約1年半近くも大幅に延び、2009年10月ごろまで続くことが分かった。

 国は、現訓練施設は「早ければ」ことし3月までに移転すると地元に説明していたが、実際はその倍近くである。

 「早ければ」の前提付きだったかどうかの問題ではない。地元は3月で移転が完了すると受け止めていたのである。国は地元との約束をほごにしたと言わざるを得ない。

 訓練施設は民間地からより遠く離れたレンジ16付近に移設されることになっている。

 それに伴って工事されるA、B、Cの3地区のうち、B、C地区での訓練停止を米軍が拒否したことで、工事が遅れていることが暫定使用延長の理由である。

 今回、あらためてはっきりしたことは、米軍は訓練を優先し、日本政府は結果的にそれを追認するということである。

 そこには最も肝心な「住民の安全」への視点が欠けている。住民の安全軽視は許されない。

 そもそも、戦闘訓練施設の移設で日米両政府が合意したのは、住民への危険を除去する必要があることを認めたからではなかったか。

 地元から「米軍と外務省などが協議し、自分たちで示した方針を守らないのか」との怒りの声が上がるのも当然である。

 現施設は最も近い民家から約300メートルしか離れていない。ところが、使用されるM24ライフルは有効射程が約1100メートルあり、民間地への流弾被害が懸念される状況にある。

 住民に危険を及ぼす恐れのある訓練施設を放置してはならない。その基本に立てば、本来なら即座に使用を停止し、施設を撤去するのが筋である。

 それが無理ならば、次善の策として訓練施設をスムーズに移設させることが日米両政府の責務である。

 現状では、米軍の訓練優先に歯止めをかけるのは国しかない。しかし、政府にはその姿勢がうかがえない。

 防衛省は「3地区での訓練中止を米側と合意していたわけではない」としている。米軍が訓練停止に応じなければ、暫定使用は長期化することは当初から分かっていたはずである。

 政府はその事実を1年近く隠していた、と言われても仕方ないだろう。「調整や協議を継続中だった」との説明で、納得できるものではない。

 暫定使用が4年近くも続くことは、それだけ住民が危険にさらされる期間が長くなるということである。国は国民の安全を守る義務を果たしたと言えるだろうか。

(1/10 9:37)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30371-storytopic-11.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 1面

F15、14日飛行再開/残り16機は分析中

嘉手納基地の39機

 米空軍嘉手納基地報道部は十日午前、米本国での墜落事故をきっかけに機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の欠陥が判明し、飛行停止措置が取られている同基地所属のF15戦闘機の飛行訓練を十四日から再開する、と発表した。昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶり。同報道部によると、世界規模の一斉点検の結果、事故機以外に計九機でロンジロンの亀裂を確認。うち二機が嘉手納基地所属機だった。また、点検した米空軍全体のF15の約40%でロンジロンの厚みが不足し、不適合とみなされていたことも判明した。

 同報道部によると、同基地所属機は三十九機が飛行可能で、残り十六機については米本国でロンジロンの厚さの測定データを分析中。分析の完了には約四週間かかる見込みで、その後に追加検査や修理を検討するという。

 同基地のブレット・ウィリアムズ司令官は十日、「検査の結果、安全に任務を達成し、日本を守ることができると確信している」とのコメントを発表した。

 米空軍は訓練に復帰するF15は空軍が保有する全体の60%で、訓練内容も限定的としているが、詳細は明らかにしていない。

 事故は昨年十一月二日、米国ミズーリ州で発生。同州空軍所属F15C型機一機が戦闘訓練中に空中分解し、墜落した。

 事故を受け、米空軍は同四日以降、同型機全機の飛行を停止。同二十一日にはいったん解除し、嘉手納基地所属のF15戦闘機は同二十六日から点検を終えた機が順次飛行を再開した。

 しかし、事故原因とみられるロンジロンの亀裂が事故機以外で確認され、同二十八日に飛行を再停止。米空軍は相次ぐ欠陥機の報告を受け、「これまで点検を行った個所以外でロンジロン上部に問題がある可能性を示している」として、三回目となる米空軍のF15A、B、C、D型機の飛行停止措置を昨年十二月三日に決定。新たな点検作業を義務付けていた。

 嘉手納基地のF15はC型が大半でD型は数機。同基地では今月上旬から、点検を終えたとみられるF15が滑走路上を移動(タキシング)する準備訓練が行われていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_01.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 5面

ぬぐえぬ不信 地元怒り/F15飛行再開

 【中部】「構造的欠陥がなくなったと言えるのか」。十四日からの飛行再開が決まった嘉手納基地のF15戦闘機。昨年十一月の米本国での墜落事故以降、「人間でいうと、背骨が折れるようなもの」(航空評論家)という重大な欠陥が見つかった。飛行再開で騒音増加も懸念され、同基地を抱える地元自治体の首長は「危険な戦闘機の飛行中止を求める」と強く反発した。

 嘉手納基地では十日午前十時五十分ごろ、F15戦闘機が駐機場から滑走路に向け移動した。同基地では数日前から、整備要員を含め、飛行再開に向けた訓練とみられる動きが確認されている。

 宮城篤実嘉手納町長は「どのような整備点検が行われたのか分からない中では、安全性が確認されたことにはならない」と指摘。十一日に同基地司令官からF15に関する説明を受けることになっており、その席で「司令官に町民の不安を直接訴えたい」と述べた。

 北谷町の野国昌春町長は「縦通材に亀裂が見つかった経緯がある。どんなに整備をしても構造的欠陥はなくならないのではないか」と懸念。「住民の負担を増加させる飛行再開は容認できない」と強く反対した。

 東門美津子沖縄市長は「F15は今後も墜落の可能性をはらんでいる。構造的欠陥のある同機の安全性はいかなる点検をしたにせよ、市民の不安がぬぐい去れるものではない」と米軍を批判。「引き続き飛行中止と即時撤去を求める」と強調した。

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は十日午後、幹事会を開き対応を協議する。嘉手納、北谷の両町議会も同日、基地対策特別委員会を開き、対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_02.html

 

2008年1月10日(木) 夕刊 5面

平和祈り元学徒と交流/元衛生兵・小木曽さん

 沖縄戦時に衛生兵だった小木曽郁男さん(88)=神奈川県=が九日、糸満市の糸洲の壕(ウッカーガマ)で、当時看護隊だった私立積徳高等女学校の元学徒らと那覇市の沖縄ハーバービューホテルクラウンプラザで再会した。

 当時、壕内にいた衛生兵で存命しているのは小木曽さんただ一人。戦後も、壕内で自決した隊長の遺骨を収集するなど交流を続けており、「久々に会えてうれしい」と喜んだ。

 小木曽さんと元学徒らは、豊見城城址内の旧日本軍第二四師団第二野戦病院に所属。沖縄戦が終わるまで、行動を共にした。壕内で自決した隊長の遺体を埋めた小木曽さん。「暗黒の洞穴にずっと葬っておくわけにはいかない」と、戦後二十五年目に元学徒らと遺骨を収集した。

 悲惨な体験から六十年余り。当時の様子を涙ながらに語る小木曽さんに、仲里ハルさん(81)ら元学徒も目頭を押さえた。

 病室勤務だった田崎芳子さん(80)は「小木曽さんと再会できることは何ともいえない喜び。生きる素晴らしさを実感している」と語った。

 小木曽さんは、来県するたびに糸満市糸洲の壕を訪れる。「無念の思いで亡くなった仲間のためにもう一度入りたかった」と今回は七日から子や孫ら五人と自身が戦中過ごした壕を訪れた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801101700_06.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 2面

三連協、撤去要求を決定/F15飛行再開

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開することを受け、同基地周辺の首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は十日、嘉手納町役場で幹事会を開き、飛行再開の中止、同機の撤去を求めて抗議する方針を決めた。

 三連協のメンバーは、十一日午前に嘉手納基地内でF15の点検状況や飛行再開について、同基地から説明を受けることになっており、その際に抗議する予定という。

 三連協幹事会によると、抗議ではF15の安全性について、住民の不安が払拭されていないことや墜落事故再発の懸念を指摘。飛行再開は容認できないなどとして、F15の即時撤去を訴える。

 F15は昨年十一月に米本国で墜落。事故原因調査の過程で、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の欠陥が判明した。

 嘉手納基地のF15は昨年十一月四日の飛行停止以来、限定的に再開した数日を除くと約二カ月ぶりの飛行再開となる。同基地によると、所属機のうち、三十九機が飛行可能で、残り十六機については、米本国でロンジロンの厚さの測定データを分析中という。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_02.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 1面

検定撤回を再度否定/教科書問題

文科省審議官「今後は内容即し判断」

 【東京】文部科学省の布村幸彦大臣官房審議官は十日の参院内閣委員会で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した二〇〇六年度教科書検定の検定意見を撤回する考えがないことをあらためて強調した。糸数慶子氏(無所属)への答弁。

 布村審議官は、教科用図書検定調査審議会(検定審)が昨年、教科書会社六社からの訂正申請を審議する際の指針として取りまとめた「基本的とらえ方」について「検定意見と齟齬を来すものではなく、検定意見を変更したりするものではない」と述べ、検定意見の事実上の撤回にも当たらないとの認識を示した。「検定意見が今後も生き続けるのか」との質問には「今後の検定で、どのような検定意見を付すかは、その時点で具体的な記述内容に即して判断される」と述べるにとどめた。

 糸数氏は「渡海紀三朗文部科学相は談話を出したが、記述改ざんの再発防止措置に触れておらず、文科省・政府の沖縄戦に対する理解に問題がある」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_04.html

 

2008年1月11日(金) 朝刊 29面

危険と収入 業界ジレンマ/米兵・タクシー強盗致傷

 七日未明、沖縄市美原の住宅街で発生した米兵二人によるタクシー強盗致傷事件。被害に遭った運転手の男性(59)は当日、基地内を出入りする「ベースタクシー」として運行していた。米兵を客とする業務に日々不安を感じる運転手も少なくないという。しかし、確実な収入が見込めるとあって、タクシー業界は、危険と隣り合わせの状況でも運行せざるを得ないジレンマに悩まされている。(中部支社・銘苅一哲、吉川毅)

 男性は頭などに全治一週間のけがを負い、休職を余儀なくされ、心にも深い傷を負った。米軍関係者は十日午後、会社を訪れ男性に直接謝罪し、見舞いを手渡したという。

 しかし、夫を傷つけられた妻は「事件以降、本人も私も精神的に疲れています。今はそっとしておいてほしい」とやつれた表情で話した。

 沖縄署によると、同署管内では昨年、米軍構成員の犯罪が四十件発生した。月に数回発生する事件は窃盗や傷害の割合が多く、中でも、常に現金を持ち、客と密室になるタクシーの運転手が被害者になるケースは少なくないという。

 「今もあの恐怖が夢に出てくる」。二〇〇六年一月七日、北谷町の在沖米海兵隊キャンプ瑞慶覧内の路上で発生した米兵によるタクシー強盗事件。被害者の男性乗務員(64)は、首にナイフを突き付けられた感触が今も忘れられないと話す。

 「今回の事件は、私が被害に遭った二年前とちょうど同じ日に起きた。新聞報道を見て自分の事件を思い出し、震えが止まらなかった」

 男性は乗務員歴三十年。今でもタクシーを走らせ、日々不安を感じながらも後部座席に米兵を乗せている。

 「行き先があいまいで何度も行き先を変更する、人気がない暗い場所で急に停車を求める米兵は要注意だ。事件後も何度か身に危険を感じたことがあるが、私にはタクシーの仕事しかできないし、生活のためには辞められない」と話す。

 今回被害に遭った運転手が勤務するタクシー会社は、入札で米軍に入域料を払い、入域証明書を受けた「ベースタクシー」として基地内に出入りできる。

 基地内での運行は、一九九〇年ごろから月額約三千―五千円の入域料を支払う制度に変更された。

 二〇〇四年に入札制度が実施され入域料は数万円に高騰しているが、ベースタクシーの一台当たりの売り上げは県内業界で常に上位。認可台数はキャンプごとに十数台から数百台と決められている。

 ベースタクシーを運行するある会社の関係者は「小さな会社ではベースタクシーの恩恵は大きい。同業者が米兵絡みの事件に巻き込まれるたびに怒りが込み上げるが、米軍を批判すると次の入札が不利になるのではないか」とジレンマに複雑な表情を浮かべた。

 一方、米兵相手に営業していた別の会社は、数年前に乗務員が強盗被害に遭い、ベースタクシーをやめた。

 同会社の運行管理者は「事件の多くは米兵絡み。売り上げを伸ばすよりも、優先するのは乗務員の安全だ」と話した。


到底許せぬ/タクシー協が抗議


 沖縄市で起きた在沖米海兵隊員によるタクシー強盗致傷事件で、県ハイヤー・タクシー協会の伊集盛先会長、被害者の勤務先の社長らは十日、沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に対して米軍への抗議を申し入れた。「悪質な事件の続発は到底許せない。厳正な処罰、再発防止を求める」とした。

 伊集会長は「一歩間違えれば生命にかかわる事件。運転手はもとより、その家族も心配している」と指摘した。防衛局の鎌田昭良局長は「極めて悪質。四軍調整官にも直接申し入れた」と答えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月11日朝刊)

[F15飛行再開]

不安は解消されていない

 米国での墜落事故で機体構造に欠陥があることが分かり、検査のため飛行停止になっていた米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開する。

 限定的な飛行を除くと約二カ月ぶりの再開だ。米空軍は「検査の結果、安全に任務を達成できる」としているが、基地周辺の自治体、住民は「構造的欠陥がなくなったと言えるのか」と事故の再発などに不安を募らせる。

 飛行再開によって基地の騒音激化も懸念されている。安全に関する情報開示が不十分なまま、負担を強いる飛行再開は納得できない。

 昨年十一月二日に起きた米ミズーリ州でのF15墜落事故を受け、米空軍は

詳細な整備点検を実施した結果、機体の構造を支える縦通材(ロンジロン)の亀裂という構造上の欠陥が明らかになった。

 嘉手納基地報道部によると、世界規模の一斉検査によって事故機以外に九機に縦通材の亀裂を確認し、うち二機が同基地所属だったという。

 同基地所属のF15は五十五機だが、三十九機は飛行可能で、残り十六機は米本国で縦通材の厚さを分析しているという。結果によっては、欠陥機が増える可能性がないとは言えない。

 看過できないのは、点検した米空軍全体のF15の約40%で縦通材の厚みが不適合とみなされていたことだ。言い換えれば、事故発生前まで四割の「欠陥機」が世界中を飛行していたことになる。重大な事故がなかったこと自体が不思議なくらいだ。

 米空軍は、これまで事故原因を確定できない段階で飛行再開するという決定をしてきた。今回も、詳細な事故原因、安全対策を公表しないまま飛行再開を強行しようとしている。住民感情を顧みない、訓練優先の米軍の姿勢であり、住民が憤るのは当然であろう。

 米空軍は住民の安全を最優先するという考えに立つべきだ。政府も地元の反発を考慮して、米空軍に強い姿勢で臨むべきである。安全確保に疑問が残るF15の飛行再開は許されない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080111.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月11日朝刊)

[テロ新法再議決]

消化不良の論戦の末に

 臨時国会最大の焦点である新テロ対策特別措置法案は、きょうの参院本会議で否決され、このあと衆院本会議で与党の三分の二以上の賛成で再可決、成立する見通しである。

 異例ずくめの展開だった。

 衆院で与党が、参院で野党が、それぞれ過半数を占めるという「ねじれ現象」の下で、与党も野党も確たる展望が持てないまま、五里霧中の状態で国会を運営してきた。

 与党は昨年十一月一日で失効したテロ対策特別措置法に代わり対テロ新法を国会に提出。会期を再延長して法案の成立を目指した。

 民主党はアフガニスタンの民生支援を柱にしたアフガニスタン復興支援特別措置法案を対案として国会に提出。政府案と民主党案が国会審議のまな板に上った。

 私たちが今国会に期待したのは、「テロとの戦い」に関する骨太の議論である。

 イラク戦争について米国では、「あれは間違いだった」との見方が急速に広がっている。そのような意見が今や主流になりつつある。

 世界保健機関(WHO)によると、二〇〇三年三月のイラク戦争開戦から約三年間で、米軍の攻撃や自爆テロ、宗派対立などで死亡したイラク人は推計で十五万一千人に上るという。

 アフガニスタンではタリバンが再び勢力を拡大させ、テロ行為が後を絶たない。

 「テロとの戦い」とはそもそも何か。軍事力に頼ってテロをなくすことはどれだけ有効なのか。現状を踏まえて日本が今後、国際社会で果たすべき役割は何なのか。ねじれ国会の下での法案審議は、9・11テロ後の「テロとの戦い」について根本から問い直し、議論する絶好の機会だった。

 だが、国会は解散・総選挙をにらんだ与野党の駆け引きが目立ち、後世に残るような論戦が展開されたとは言い難い。

 「憲法の規定に従って粛々と再議決すればいい」という与党の主張は、理屈としては理解できるにしても、やはり問題があるといわざるを得ない。

 対テロ新法に対しては国民世論が真っ二つに割れている。直近の民意が衆院ではなく参院にあることを考えればなおさらのこと、衆院での再議決には慎重であるべきだ。

 民主党も民主党だ。同党の政府案に対する対応の混乱や独自法案取りまとめ段階の混乱は、政権担当能力を疑わせるものだった。

 消化不良のまま再議決を迎えるのは残念というほかない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080111.html#no_1

 

2008年1月11日(金) 夕刊 1面

亀裂のF15は更新機

 嘉手納基地第一八整備群司令官のジョン・ハリス大佐らは十一日、ロンジロン(縦通材)に亀裂の見つかった同基地所属のF15二機は、いずれも同基地が二年前から実施している古い機体の更新計画によって配備された機体だったことを明らかにした。二機ともにC型機で、操縦席後方のロンジロンのつなぎ目付近で一カ所ずつ亀裂が確認された。

 また、同基地所属機でロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していない機体は計十七機(亀裂を確認した二機を含む)に上ると説明した。

 亀裂の見つかった二機のうち一機は一九八一年製造でラングレー基地(バージニア州)、もう一機は八五年製造でエレメンドルフ基地(アラスカ州)から配備された。

 同基地は十日に十六機がデータ分析中と発表したが、さらに一機でロンジロンの厚さが製造元の仕様書と合致していないことが判明したため、十七機をデータ分析(二―四週間)に回している、という。

 ロンジロンの厚さが仕様書と合致していない原因について、ハリス大佐は「製造元の責任」との見方を示した。

 同基地によると、嘉手納基地の計五十七機のF15のうち、十一日までに五十六機の点検が終了。一機は別の検査と重なったため遅れており、全機の点検終了は三月までかかる見通しだという。

 一方、飛行停止のきっかけとなった昨年十一月二日の米国ミズーリ州で発生した墜落事故について、米空軍は十一日までに、右側の上部ロンジロンが仕様書と合致していなかったため亀裂が生じたことが原因―とする事故調査委員会の報告書を発表した。


78―85年製機に問題

米空軍HP製造上の欠陥と発表


 【嘉手納】米空軍は十日(現地時間)、米ミズーリ州での墜落事故をきっかけに飛行停止措置がとられているF15戦闘機について、胴体と操縦席をつなぐロンジロンで製造上の欠陥が見つかったことを公式ホームページ(HP)で発表した。一九七八―八五年製造の機体に問題があったとしている。

 米空軍によると、操縦席を胴体に固定する四本のロンジロンのうち一本で製造上の欠陥が見つかった。米ミズーリ州で昨年十一月に発生した墜落事故では、ロンジロンに7G(通常の七倍の重力加速度)の負荷がかかり操縦席から分離。他三本のロンジロンも分離したという。飛行停止期間中にF15全機を検査した結果、事故機以外の九機で縦通材に同様な亀裂が見つかった。

 七八―八五年に製造したF15のうちA、B、C、D型機に製造上の欠陥が見つかったと指摘。亀裂の見つかった九機のうち数機は、修理経費の問題から次会計年度以降、使用しないという。

 太平洋空軍が所有するF15の98%が検査を終え、65%は訓練に復帰できるとも発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111700_01.html

 

2008年1月11日(金) 夕刊 7面

地元3市町が抗議/F15飛行再開

 【中部】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が十四日から飛行を再開することを受け、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は十一日、同基地内で所属機の点検状況や再開の経緯の説明を受けた。宮城篤実嘉手納町長によると、機体の構造を支えるロンジロン(縦通材)に亀裂が見つかった二機は同基地で部品を交換するという。三連協は「住民の不安は払拭されていない」などとして、飛行再開の中止と同機の撤去を求め、抗議した。

 三連協は「構造的欠陥を有するF15の安全性はいかなる点検にせよ確保されるものではない」と指摘。「飛行再開により、嘉手納基地周辺での墜落事故が懸念され、周辺住民の不安は計り知れず、断じて容認できない」などとする抗議文を同基地のジョン・ハッチソン広報局長に手渡した。

 宮城町長によると、同広報局長は「安全という確認ができている」と述べ、飛行再開の方針をあらためて示した。

 機体の点検状況については、第一八整備群のジョン・ハリス大佐らが説明。ロンジロンに亀裂が見つかった二機は部品を取り換えるなどと説明したが、飛行再開や修理の時期については明言しなかったという。

 宮城町長は七日から同基地で行われている即応訓練についても中止を求めた。


嘉手納議会 反対決議へ


 【嘉手納】F15戦闘機の飛行再開を受け、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十一日午前、基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)を開き、十七日の臨時議会で同機の飛行再開中止と即時撤去などを求める抗議決議、意見書の両案を提出することを決めた。

 米軍は同基地所属のF15は三十九機が飛行可能で、残り十六機は機体構造のデータを計測中としているが、委員からは「飛行再開する三十九機の点検は地上で行ったもので、実際に飛行した場合にトラブルが発生するのではないか」「再開しない約四割は欠陥が残っている可能性がある」などと不安を残したままの飛行に反対する意見が相次いだ。

 また、同基地で実施されている即応訓練についても、「昨年十一月の即応訓練の際にも米軍へ抗議したが、改善がみられない」とし、訓練とそれに伴う外来機の飛行を中止する抗議決議、意見書両案の提案を決めた。

 北谷町議会(宮里友常議長)でも十一日午後、基地対策委員会を開き対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801111700_02.html

「2外国人、タクシー強盗/沖縄署 米軍人を任意聴取.」沖縄タイムス、琉球新報社説「普天間代替 筋違いな米側の計画不変論」(1月3日から9日)

2008年1月3日(木) 朝刊 1面

V字80―90メートル移動案/普天間移設

官邸・与党内で検討/仲里副知事「生活配慮なら歓迎」

 【東京】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設をめぐり、政府、与党内に、日米が在日米軍再編で合意したV字形滑走路案の八十―九十メートル程度の沖合移動を容認する考えが浮上していることが二日、分かった。首相官邸と自民党幹部の一部が検討しており、代替施設がシュワブ沖合の長島にかからない範囲で、県と名護市がこれ以上移動を求めないことが条件。ただ、防衛省や外務省には日米合意案の変更に否定的な見方が強く、米側が修正に応じるめども立っていない。

 現在のV字案の南端から長島までは八十数メートルの距離がある。仲井真弘多知事は昨年十二月、与党関係者を通じ、官邸側に非公式に「長島にかからない『五十メートル+α』の範囲で、可能な限り沖合に寄せてほしい」との意向を伝えていた。

 政府関係者によると、普天間移設問題の決着に強い意欲を示す町村信孝官房長官らが、こうした知事の要望を踏まえて「地元が繰り返し移動を求めず、一度きりで受け入れるのならば修正に応じる」との考えを示しているという。

 政府、与党内には一月末にも開かれる第六回普天間移設協議会で代替施設の環境影響評価(アセスメント)調査の着手に合意し、早ければ年度内に第七回協議会を開き、沖合移動を含めたV字案の受け入れを目指すシナリオもある。

 沖合移動に柔軟な関係者の間では百メートル以内の軽微な修正であれば米軍の運用に支障は生じないとの見方があるが、ゲーツ国防長官ら米側は日米合意案の修正に強く難色を示しており、合意を得る見通しは立っていない。

 仲里全輝副知事は一日、九十メートル程度の沖合移動について「政府からは聞いていない」と断った上で、「長島を削らないぎりぎりまで沖合に寄せることになる。地元の意見を尊重し、周辺集落の生活環境に配慮するよう求めてきたが、そういう考えであれば大変歓迎すべきことだ」と高く評価した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801031300_01.html

 

2008年1月4日(金) 朝刊 29面

「普天間」排ガスで悪臭/騒音とダブルパンチ

 【宜野湾】米軍普天間飛行場の航空機から出る排ガスで、周辺住民の悪臭被害が深刻さを増している。特に北風が吹く冬場は、飛行場の南側に隣接する宜野湾市真栄原や上大謝名の被害が大きい。市民らは「石油ボイラーの煙突の横に住んでいるようなもの。何とかしてほしい」と悲鳴を上げている。(中部支社・下里潤)

 同飛行場のフェンス沿いに住宅地が密集する真栄原地区。所属機のKC130空中給油機が離陸のため、エンジンを吹かし、待機しているのが見える。

 短い時で数分、長い時には一時間近くも続くエンジン調整。特に朝夕は激しく、「騒音と悪臭でダブルパンチ」の状態が続いている。付近住民によると、周囲はくぼ地で航空機からのガスが滞留するという。

 同地区に約十年前に引っ越してきた桃原セツさん(30)。自宅アパートの三階は駐機場と同じ高さで排ガスが直接入り込む。窓を閉めてもすき間からにおいが立ち込め、一歳の息子が中毒症状になるのでは、と心配でたまらない。現在妊娠中で、胎児にも影響が出るのではないかと懸念している。桃原さんは「洗濯物にもにおいがつくし、本当に気分が悪くなる。引っ越そうにも経済的に難しい。こんな基地は早く撤去してほしい」と、力なく話した。

 のどに突き刺さるようなにおいに悩まされている宮平佳亮さん(40)はこの時期、ほとんど窓を開けられない。「子どもたちは外で遊びたいはずなのに…。マスクをして外出するわけにもいかない。吸い込んだガスが蓄積して何らかの症状が出ては大変だ。行政は何とかしてほしい」と訴えた。

 同市議会の新垣善正基地関係特別委員長は「基地被害は騒音だけではない。基地を提供する国はガスの濃度や分布を調査し、住民の声を受け止めるべきだ」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801041300_01.html

 

2008年1月4日(金) 朝刊 2面

沖合移動案「提案あれば協議」/島袋市長、前向き姿勢

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設をめぐり政府・与党内で、日米合意したV字形滑走路案の八十―九十メートル程度の沖合移動を容認する考えが浮上していることについて、島袋吉和名護市長は三日、「(政府からの)正式な発表ではない」と断った上で、「政府側から提案があれば、地元や県と協議したい」と前向きな考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801041300_02.html

 

2008年1月4日(金) 夕刊 1面

「普天間」移設 早期解決へ意気込み

仲井真知事が年頭あいさつ/「3年内閉鎖」も

 仲井真弘多知事は四日午前、職員に年頭あいさつを行い、米軍普天間飛行場移設問題について「代替施設の建設、大規模基地返還の利活用への筋道をつけるべきだ」と早期解決への意気込みを語った。また、「三年めどの閉鎖状態に向けて形を整えていきたい」との決意も示した。

 県職員の給料を特例措置で削減する案件で昨年末、県職員労働組合と合意したことにも触れ、「皆さまの決断に感謝する。身を一層引き締め、協力を無にしないよう県政運営に努めたい」と、さらなる行財政改革に努力する考えを強調した。

 また、二〇〇八年を「中長期のプランや事業への取り組みがスタートする時期」と位置付け、残り四年となった沖縄振興計画終了を見据えた三十年の構想を描く「沖縄二十一世紀ビジョン(仮称)」の策定、沖縄科学技術大学院大学開学に向けた科学技術振興、観光客一千万人誘致、完全失業率の全国平均化などに積極的に取り組む姿勢を示した。

 道州制の議論については「これからもっと多面的になってくる。皆さんの意見を自由に出してほしい」と庁内議論を深める必要性を強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801041700_01.html

 

沖縄タイムス 社説(2008年1月5日朝刊)

[基地と歴代県政]

将来展望示してほしい


「普天間」返還の焦点化

 米軍普天間飛行場の代替施設が計画通り二〇一四年に完成し、翌一五年から供用を開始したと仮定してみよう。

 二〇一五年は戦後七十年に当たる。米軍統治時代を含む七十年間、米軍基地を背負い続けてきた県民は、この時点から、嘉手納基地以北に基地が集中するという新たな時代を迎えることになる。

 この状態は、さらにその先、いつまで続くのだろうか。今から三十七年後の戦後百年までか。それ以上か。

 汚職事件で逮捕された守屋武昌前防衛事務次官は「沖縄の戦後を終わらせたい」というのが口癖だった。米軍再編によって沖縄の戦後は本当に終わるのだろうか。

 こと基地問題に関する限り、この島のありそうな未来は、決して明るいとはいえない。

 「県内に移設先を求めるのは困難であり、根本的な洗い直しを迫る時期に来ている」。今からちょうど二十年前の一九八八年、二度目の訪米で西銘順治知事(当時)は、国防総省高官に「提供施設・区域の全面的見直し」と「普天間飛行場の返還」を要請した。

 県外移設を含む米軍基地の根本的な洗い直しを求めた、当時としては画期的な内容だった。

 その翌年、マルタで冷戦の終えんを告げる米ソ首脳会談が開かれ、「平和の配当」を求める声が世界的に高まった。その流れの中で普天間飛行場の返還問題が次第に焦点化していくことになる。

 復帰後の基地問題に大きな転機が訪れたのは九五年である。

 米兵による暴行事件に端を発した「沖縄からの異議申し立て」が空前の広がりを見せ、日米両政府は九六年、県内移設を条件に普天間飛行場の返還に合意した。だが、日米合意は迷走の始まりでもあった。

 米軍基地の段階的な整理・縮小によって着実に負担軽減を図る―という県民世論の原点に立ち返って、今、何が可能なのかを考える必要がある。


全国に過重負担訴える


 ギリシャ神話に出てくるシジフォスは、神の怒りを買い、罰として苦役を課せられる。大きな岩を転がして山の頂まで運び上げるという仕事だ。だが、岩は頂まで運び上げた途端、その重さで転がり落ちる。何度やっても、同じことの繰り返し。沖縄の基地問題はかつて、シジフォスの神話に例えられた。

 事件・事故が発生すると、そのたびに自治体議会が決議し市民団体が抗議行動を展開する。その繰り返しだった。

 大田昌秀元知事は、基地返還と返還後の跡利用を一体のものとして構想し、政府との間に協議機関を設けて基地問題の解決を図ろうとした。

 県政の取り組みは、沖縄の基地問題を全国化したという点で、また、沖縄の将来像を指し示し議論を喚起したという点で特筆される。

 大田県政の試みが挫折して以降、名護市長選、県知事選とも代替施設建設に柔軟な保守系候補が勝ち続けている。だが、その勝利には、ある共通点があることも指摘しなければならない。

 日米合意案を丸のみし、そのことを選挙公約に掲げて当選した候補者は一人もいないのである。稲嶺恵一前知事は「軍民共用飛行場と十五年使用期限」を公約に掲げ、仲井真弘多知事は現行V字形滑走路案の「沖合移動」と「普天間飛行場の三年をめどとする閉鎖状態実現」を受け入れの条件にした。

 条件をつけなければ選挙に勝てない、というのが本音だった。


条件をめぐる政府交渉


 稲嶺県政は受け入れ条件をめぐって

政府と激しく対立し、対立の姿勢が逆に県民から支持された。稲嶺県政にとって致命的だったのは、米軍再編の動きの中で、日米が従来案の見直しに動いているときに、その情報を正確につかむことができず、県側からの積極的なアプローチができなかったことだ。

 仲井真県政は、実はまだ何をしようとしているのか、よく見えない。「五十メートル+α」の沖合移動が実現すればそれで万々歳なのか。普天間飛行場の閉鎖状態の実現と、広大な返還跡地の跡利用に向けた施策と、代替施設の建設は、どのような形で関連付けられているのか。将来展望を踏まえた取り組みが見えないのだ。

 環境保全と受け入れ後の将来展望を示すことは県の最低限の義務である。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080105.html#no_1

 

2008年1月6日(日) 朝刊 1面

米加州連邦裁、海軍ソナー規制/沖縄近海でも使用

 カリフォルニア州連邦裁判所は三日(日本時間四日)、クジラなど海洋哺乳類へ被害を与えると指摘されている米海軍の中周波ソナー(音波探知機)を使った潜水艦哨戒訓練を厳しく規制する裁定を下した。四日付のワシントンポスト紙が「海軍には大きな打撃となる」と報じた。

 同紙によると、裁定は同州沿岸から約二十二キロ内のソナー使用を禁止。訓練実施には開始一時間前に海洋生物をモニターし、発見場所から約二キロ内の音波停止ゾーン設定を命じた。海軍は一キロゾーンを主張していた。

 裁判は、ナチュラル・リソース・ディフェンス・カウンセルなど米自然保護団体が米海軍に訓練見直しを求めていた。同団体は「連邦裁が自然保護の措置として海軍訓練を制限する最も意義深い決定」と裁定を評価した。

 海軍報道官は「裁定により国家安全保障と環境保護のバランスが失われるわけではない」とコメントした。海軍は控訴を検討している。

 海軍は最新型潜水艦の探査は困難でソナー使用は不可欠な安全保障対策と主張していた。


沖縄海域 任務増加


 米海軍の環境影響評価書によると、本州南方や沖縄南方海域、グアム周辺海域を中心に活動する低周波ソナーを備えた米海軍の音響観測船(コリー・ショウエストとインペッカブル)の任務回数は二〇〇二年七月から一年間で七回、〇三年の同時期は十回、同じく〇四年は五回、〇五年は十八回と推移。

 両艦は横浜ノースドックを事実上の母港とする音響測定艦。中国の潜水艦の位置を特定するのが目的とみられる。

 市民団体の調査では、那覇軍港への両艦の寄港回数は増加傾向にあるという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801061300_02.html

 

琉球新報 社説

米大統領選始動 米軍再編の行方に注視

 世界で「唯一の超大国」となった米国。誰が大統領になろうが、その影響力は他に類をみないほど強力だ。もちろん、日本も例外ではない。米軍再編、経済問題など、新しい指導者の政策から目が離せない。

 3日、民主、共和両党の党員集会がアイオワ州で開かれたのを皮切りに、2008年米大統領選が本格的に始まった。今後、次々と行われる予備選や党員集会を経て、夏の党大会でそれぞれの党候補を正式に指名する。11月4日の投票日まで長い選挙戦が続く。

 三つどもえの戦いとなった民主党の初戦を制したのは、黒人初の米大統領を目指すオバマ上院議員(46)。米メディアによると、民主党の得票率はオバマ氏38%。女性初の大統領を狙うヒラリー・クリントン上院議員(60)の29%、エドワーズ元上院議員(54)の30%を押さえた。

 共和党は集計96%終了段階でハッカビー前アーカンソー州知事(52)が34%を獲得。以下、ロムニー前マサチューセッツ州知事(60)が25%、トンプソン元上院議員(65)が13%という結果だった。

 オバマ氏は政治家としてブッシュ政権のイラク政策を一貫して批判。また、選挙戦を通じて「変革」を訴え続けた。テレビ中継された勝利宣言でも「米国に変革がやってくる」と強調。イラク戦争の泥沼化など、閉塞(へいそく)感を強める米国民への呼び掛けが功を奏した。

 ブッシュ政権の現状は、米国民ならずとも幻滅感が漂う。イラクではすでに3900人以上の米兵が死亡、イラク市民も数万人が犠牲になったとされる。米軍が侵攻したアフガニスタンでも、イスラム原理主義武装勢力タリバンの反攻が目立ち、収拾の糸口さえつかめていないのが現状だ。

 加えて、米国に端を発し、世界経済を揺るがすサブプライムローン問題や原油高騰、地球温暖化防止への取り組みなど、課題が山積している。

 新しい大統領は、待ったなしでこれらの課題に取り組むことになる。特に、米軍再編への政策がどうなるか。沖縄にとっても、大きな関心を寄せざるを得ない。

(1/6 10:03)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30271-storytopic-11.html

 

琉球新報 社説

普天間代替 筋違いな米側の計画不変論

 ゲーツ米国防長官が福田康夫首相に対し「部分修正は全体を壊す」との強い表現で、米軍普天間飛行場の移設計画変更を拒んだ。

 沖縄で計画変更を認めれば、米陸軍第1軍団司令部のキャンプ座間移転や、米空母艦載機の岩国基地移転への風当たりも強まるのではないかとの懸念が、米側にはあるとみられる。

 しかし、そんな懸念は「米軍の論理」に基づくものであって、米軍基地の重圧にあえぐ沖縄側からすれば「筋違い」ということにしかならない。

 そもそも、部分修正で全体が壊れる程度の再編計画なのか。ゲーツ氏は、いびつで、もろい計画であることを認めたに等しいが、だとすれば、計画を抜本的に見直すか、白紙に戻して作り直すのが筋ではないのか。もろさを隠し、強引に計画を推し進めたとしても、やがて破綻(はたん)するであろうことは火を見るより明らかだ。

 ゲーツ氏の発言は昨年11月、日米首脳会談後に催された首脳昼食会の席上で出た。普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設問題で、同氏は初訪米した福田首相に対し、地元が沖合への移動を求めるV字形滑走路建設地の計画変更には応じられないとの立場を直接伝えた。

 これに対し、首相は「(2006年5月に)日米で合意した行程表に従い、着実に実施する」と応じ、ブッシュ大統領も賛同したという。日本側に「移設に地元理解は不可欠」との思いがあるなら、ここで首相は変に迎合せず、きっぱりと「沖縄の現実」を主張すべきであった。

 福田内閣は、安倍前政権とは異なる対応をしてくれるものと期待もしていただけに、言われ放題だったのは残念だ。米側と地元の板挟みになり、難しい調整を迫られているのは確かだが、誰のための「国防」かということである。重圧にあえぐ県民を守らずして国防も何もないだろう。

 米軍再編協議では「地元の負担軽減」が柱の一つとされた。ところが、日米軍事同盟の強化が前面に出てしまっている。県民の要求は負担軽減などという生易しいものでなく「苦痛の解消」だが、負担軽減もままならない。

 これはおかしい。日米両政府による約束違反ではないか。基本的な約束を守らないで、逆に「日米合意をほごにするな」と沖縄側を責める神経が理解できない。

 普天間移設が進展しなければ、海兵隊のグアム移転も、嘉手納より南の米軍施設の返還も実現しないというパック論も納得できない。負担軽減の本気度を疑う最たるものだろう。政府には、米側の不信解消よりも先に、県民の不信解消に努めてもらいたい。

(1/7 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30291-storytopic-11.html

 

2008年1月7日(月) 夕刊 1・5面

米軍、きょうから即応訓練/嘉手納基地

 【嘉手納】米軍嘉手納基地報道部は七日、有事を想定した即応訓練を同日から十一日にかけて実施すると発表した。サイレン音や拡声器、模擬爆発音、発煙筒を伴う訓練は八日から行うという。

 同訓練は二〇〇七年十二月にも同基地の第一八航空団と岩国基地(山口県)所属の海兵隊が合同で実施したばかり。今回は同航空団単独で行われるが、度重なる訓練強行に周辺住民は反発を強めている。

 嘉手納町は七日午前、「新年早々の訓練は町民感情を逆なでする」として、米軍に口頭で訓練中止を要請した。沖縄防衛局から説明を受けた同町によると、飛行停止中の同基地所属のF15戦闘機は参加しないという。

 同基地によると、他基地の航空機や他の部隊は参加しない。具体的な訓練内容は明らかにしていないが、「装備の積み下ろし、出撃と部隊の受け入れ、医療・緊急事態への対応、そのほかの突発事態の訓練を実施する」としている。

 即応訓練は年間を通じて行われている。昨年十二月には嘉手納基地で初めて米海兵隊と合同の大規模訓練を実施。岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機約三十機や海兵隊員約六百人が参加した。深夜、早朝から英語での放送やサイレン音、爆発音が鳴り響いたため、住民からは「睡眠薬をのんでも眠れない」などの苦情が町に寄せられた。


     ◇     ◇     ◇     

「正月くらい中止して」/周辺住民、怒り心頭


 【中部】「正月くらい静かにしてくれ」。米軍嘉手納基地で七日から十一日まで、有事を想定した即応訓練が実施されることに、周辺住民から強い反発の声が上がっている。

 同基地は八日から、サイレン音や拡声器放送、模擬爆発音、発煙筒を使用すると説明。

 同基地に隣接する嘉手納町東区の島袋敏雄区長は「地域住民の感覚とずれている。理解できない」とあきれた。「(東区は)いつもうるさい。正月くらいは特別な訓練は中止してほしい」と求めた。

 同町基地対策協議会の金城睦昇会長は「今年もまた、うるさい訓練が始まったという感じだ。新年早々、住民に不安を与え、正月のめでたい気持ちを踏みにじる米軍の神経は理解できないし、強い憤りを感じる」と声を荒らげた。

 嘉手納基地まで約五百メートルの場所に住む、同町屋良の沢岻安一さん(67)は新年早々の訓練実施に「言語道断だ」と憤る。「即応訓練が恒常化しており、もう怒り心頭。米軍は、住民の訴えに耳を傾けるべきだ」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801071700_01.html

 

2008年1月7日(月) 夕刊 5面

2外国人、タクシー強盗/沖縄署 米軍人を任意聴取

 七日午前三時四十分ごろ、沖縄市美原三丁目付近の住民から「男性が外国人二人に殴られている」と一一〇番通報があった。沖縄署員が現場に駆けつけたところ、タクシー運転手の男性(59)が頭から血を流し、「男二人に瓶のような物で殴られた。タクシー代も払っていない」と話したことから、強盗致傷容疑で逃走した二人を捜索。現在、同署が目撃情報と似た在沖米海兵隊所属の男二人から任意で事情を聴いている。運転手男性は頭部裂傷などで全治一週間のけがを負った。

 同署によると、男二人は同日午前三時すぎ、北谷町キャンプ瑞慶覧の北前ゲート前からタクシーに乗車し、沖縄市美里を経由して、同市美原三丁目で下車。運賃二千七百八十円を請求した運転手に対して、男の一人が「地図を見せて」と要求。運転手が地図を取ろうとかがんだ時に、後部座席にいた別の男が運転手の後頭部を殴打した。

 付近住民によると男二人は車外でウイスキー瓶や棒のような物を持って、運転手を追いかけ、通行者が仲裁に入ったところ、現場から立ち去ったという。

 同署は目撃情報からトレーナーとジーンズのスキンヘッドの男とTシャツとジーンズ、がっちり形の二人を捜索。現場から約七百メートル離れた路上を歩いていた二十歳と十九歳の海兵隊員の着衣が一致したため、任意で事情を聴いている。二人は犯行を否定しているという。

 二人はほとんど現金を持っていなかったという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801071700_02.html

 

2008年1月8日(火) 朝刊 1面

タクシー強盗 容疑2米兵を逮捕

 沖縄署は七日、タクシー運転手の男性(59)を瓶やこぶしなどで殴り、運賃を払わず逃げたとして、在沖米海兵隊普天間基地所属の伍長、ジョセフ・リドル容疑者(20)と同基地所属の一等兵の少年(19)を強盗致傷容疑で逮捕した。タクシー運転手は頭部裂傷、左腕打撲などで全治一週間のけが。リドル容疑者は「基地に帰る途中だった」と否認、少年兵は「二人でやった」と認めているという。一方、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は同日、基地に関する調査特別委員会を九日に開き、抗議決議などの対応を協議することを決めた。

 同署によると、二人は同日午前三時すぎ、北谷町北前からタクシーに乗り、沖縄市美里の吉原社交街に到着したが、付近を往復するだけで下車しなかった。不審に思った運転手が運賃二千七百八十円の支払いを要求すると、少年兵が「地図を見せて」と言い、地図を取ろうとかがんだ運転手の後頭部をリドル容疑者が殴ったという。

 運転手は車外に出て助けを求めたが、リドル容疑者がウイスキー瓶のようなもの、少年はこぶしなどでそれぞれ複数回殴りつけたという。通行者が仲裁に入ると、二人は現場から立ち去った。

 同署が目撃情報などから二人の行方を捜索。現場から約七百メートル離れた路上を歩いていた二人の着衣が一致したため、任意で事情を聴いていた。リドル容疑者は所持金がなかった。同署は犯行動機を追及するとともに、男性を殴った凶器の特定を進めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801081300_01.html

 

2008年1月8日(火) 朝刊 2面

アセス踏まえ検討/V字沖合移動

防衛次官、会見で従来見解

 【東京】防衛省の増田好平事務次官は七日の定例会見で、米軍普天間飛行場移設をめぐって県などが求めている代替施設案(V字案)の沖合移動について、「環境影響評価(アセス)手続きで客観的なデータなどが出てきたら、まさに合理的な理由として変更する対象になる可能性がある」と述べ、アセスを踏まえて検討するとの従来の見解を繰り返した。

 政府・与党内で、V字案の八十―九十メートル程度の沖合移動を容認する考えが浮上していることについては、「方針が決まった事実はない。(米側との合意に至った)経緯を考えると、案を合理的理由なく変更するのは困難だ」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801081300_03.html

 

2008年1月8日(火) 夕刊 1面

文科相「初めと話が違う」/教科書検定

実行委反応に不快感

 【東京】渡海紀三朗文部科学相は八日午前の閣議後会見で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が、文部省の下した結論に対して、あくまで検定意見の撤回や日本軍の強制記述を求める見解を示していることについて「初めと話が違うという気がする」と述べ、不快感を示した。

 渡海文科相は実行委の反応について「報道でしか知らない」と前置きした上で、「当初は八〇点と言っていたにもかかわらず、何でこんなことになったのか、という気持ちがある」との認識を示した。

 同問題をめぐっては、昨年末の教科用図書検定調査審議会(検定審)の結論を受けた仲里利信実行委員長らが、「不満は残るが、記述はほぼ回復された」と一定の評価を下し、実行委の解散も示唆していた。

 ただ、実行委員会を開き、あらためて対応を検討した結果、実行委は解散せず、今月中にも「日本軍による住民への強制」を示す記述の回復や、検定意見の撤回などを国に求める立場を確認していた。

 今後の対応について渡海文科相は「これからの話だが、検定審の先生方が努力し、説明をいただいている。県民の皆さんにはご理解していただきたい」と、実行委の要望には応じる考えがないことを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801081700_02.html

 

2008年1月9日(水) 朝刊 1面

キャンプ・ハンセン レンジ4移設に遅れ/地元、使用中止訴え

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」の米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の都市型戦闘訓練施設の移設問題で、二〇〇七年度内で終了予定だった移設作業が一年半ほど遅れ、〇九年度中ごろまでずれこむことが八日、分かった。沖縄防衛局が同日、同町議会に説明した。レンジ4では、移設完了までの予定で〇五年から騒音を伴う射撃訓練や突破訓練などが暫定的に行われている。

 移設が遅れれば、隣接する伊芸区などの負担長期化につながるとして、町や議会、区などは暫定使用の中止などを求めていく考えだ。

 同局は儀武剛町長、松田義政町議長、池原政文伊芸区長にも今月四日、同様の説明を行った。

 レンジ4移設では、同施設のレンジ16への移設に伴い、同演習場内の三カ所の既存訓練施設が玉突きで順次移設されることになっている。

 町議らへの配布資料などによると、同局は当初、〇七年度末までに三カ所の移設作業をすべて完了させる予定だった。しかし、米軍との調整に難航したほか、訓練の関係で工事が遅れていると説明したという。工事は、A地区は〇七年度末までに終了するが、B地区は〇八年度末、レンジ4移設先のC地区は〇九年度中ごろまでずれ込む。

 工事の遅れに伴い、レンジ4の暫定使用は今後も続けられる見通しだ。同施設では夜間も訓練がたびたび行われている。

同局の説明では、伊芸区公民館に設置した騒音測定器では最大九一デシベルを測定したという。

 池原区長は「区民はこれまでも暫定使用の被害に苦しんできた。これ以上我慢しろというのか。工事が遅れたのは政府の努力不足と見通しの甘さ、米軍の責任だ」として、四月以降の暫定使用の中止を強く訴えた。

 松田議長は「今でも住民の生活は脅かされている。これ以上の暫定使用は許されない」と話し、臨時議会を開いて抗議する考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801091300_01.html

 

2008年1月9日(水) 朝刊 25面

米兵強盗致傷/東門市長が補償要求

 【沖縄】沖縄市美原で起きたタクシー強盗致傷事件で在沖海兵隊員二人が逮捕されたことを受け、東門美津子沖縄市長は八日、外務省沖縄事務所と沖縄防衛局に対し、米軍側に事件の再発防止と被害者への補償を求める要請文を送付した。東門市長は九日午前に、北中城村にある米海兵隊外交政策部(G5)を訪ねて直接抗議する。

 要請文では「米軍は兵員とその家族の綱紀粛正に取り組んでいるとのことだが、このような凶悪事件が度々発生する状況は、基本的なところから見直す必要性がある」と厳しく指摘。「市民全体に不安を与え、被害者が身体的、精神的な傷を被ったことは遺憾だ」とした上で、(1)被害者への迅速な謝罪と正当な補償(2)隊員とその家族への指導プログラムを基本的な面から見直す―ことを求めている。同事件については、宜野湾市も九日午前、市職員がG5を訪れ、文書で抗議する。


沖縄署、2米兵を送検


 沖縄市で七日、タクシーに乗車した男二人が運転手を襲い、運賃を払わず逃走した事件で、沖縄署は八日、強盗致傷の疑いで逮捕した在沖米海兵隊普天間基地所属の伍長ジョセフ・ウェイン・リドル容疑者(20)と同基地所属の一等兵の少年(19)を那覇地検に送致した。

 調べでは、二人は七日午前三時四十分ごろ、同市美原の住宅街で、乗車したタクシーの男性運転手(59)の後頭部や左腕などを瓶のようなもので殴ってけがを負わせた上、運賃約二千七百円を払わず逃げた疑い。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801091300_03.html

 

2008年1月9日(水) 朝刊 2面

「集団自決」修正/五ノ日の会、要請不参加

 【東京】県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」(会長・仲村正治衆院議員)は八日、国会内で会合を開き、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、今月中に政府への要請行動を予定している県民大会実行委員会(委員長・仲里利信県議会議長)と共同歩調を取らず、静観する方針を確認した。

 実行委から五ノ日の会に対しては、渡海紀三朗文部科学相との会談の設定などが依頼されていたが、会談の申し入れや要請への同行を見送ることで一致した。

 仲村会長は、昨年末に渡海氏が教科書会社六社の訂正申請を承認したことを念頭に「仲井真弘多知事も評価している。県民の要望は80―90%達成されたと考えている」と理由を説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801091300_04.html

 

2008年1月9日(水) 朝刊 2面

普天間代替/設計11件 入札公示

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設で沖縄防衛局は八日、航空保安施設(空港監視レーダー、方位・距離測定システム)の基本設計など計十一件の設計業務の入札を一斉に公示した。

ほかにキャンプ・シュワブ内に新設する管理棟、工場、給油所、厚生施設、立体駐車場、隊舎に関する建築・設備・実施設計業務。いずれも入札は二月八日。履行期限は来年二―三月末となっている。

 同局は昨年九月、飛行場本体や格納庫などの支援施設を含む施設配置の基本設計検討業務の入札を公示。普天間代替施設事業の設計業務に着手している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801091300_07.html

 

2008年1月9日(水) 夕刊 1面

沖縄市長が抗議/米兵強盗

 【北中城】沖縄市美原で起きたタクシー強盗致傷事件で、米海兵隊員二人が同容疑で逮捕されたことを受け、東門美津子沖縄市長は九日午前、北中城村石平の在沖米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね、「被害者に身体的、精神的な傷を与えたことは絶対に許せない」と抗議。事件の再発防止と被害者への補償を求めた。

 東門市長は「閑静な住宅街でこのよう事件が起きたことで、市民全体に不安を与えた。被害者は常に県民だ。年頭になぜこんな事件が起きるのか。怒りと悔しさがある」と述べ、在沖米海兵隊バトラー基地司令部のメリアン・クルサダーシン司令官あてに抗議文を手渡した。

 応対したラリー・ホルコム大佐は「新聞報道でしか事件の内容は知らないが、海兵隊全体として大変残念であり、怒っている。申し訳ない」と謝罪し、「早急に被害者に会って謝罪し、若い兵士への指導プログラムも見直したい」と述べたという。

 抗議文では「米軍は兵員とその家族の綱紀粛正に取り組んでいるとのことだが、このような凶悪事件が度々発生する状況は、基本的なところから見直す必要性がある」と厳しく指摘した。

 また宜野湾市も同日午前、市職員がG5を訪れ、文書で抗議した。


沖縄市議会 抗議決議へ


 【沖縄】沖縄市議会(喜友名朝清議長)は九日午前、基地に関する調査特別委員会(与那嶺克枝委員長)を開き、同市で発生した米海兵隊員二容疑者によるタクシー強盗致傷事件について、被害者に対する謝罪と補償、米軍人らに綱紀粛正を求める意見書と抗議決議を十六日予定の臨時議会に提案することを決めた。全会一致で可決する見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801091700_02.html

 

2008年1月9日(水) 夕刊 5面

即応訓練に住民苦情/町が抗議文

 【嘉手納】米軍嘉手納基地第一八航空団による有事を想定した即応訓練は、九日も引き続き行われた。深夜、未明の時間帯に拡声器放送やサイレン音が鳴り響いたため、嘉手納町役場には住民からの苦情が相次いだ。同町は同日、苦情内容を添え、同基地司令官に文書で抗議した。

 抗議文は、即応訓練に関し、町民から中止を求める声が上がっていると指摘。「即応訓練は過去にも再三トラブルを起こしており、断じて容認できない」と今後一切、嘉手納基地で同訓練を行わないよう求めている。

 同町の住民らによると、拡声器放送やサイレン音は八日夜から九日未明にかけて断続的に行われていた、という。

 町民からの苦情は深夜、未明の拡声器放送やサイレン音に対するものが多く、「うるさくて眠れない」「訓練の騒音に起こされた。戦場だ。強く抗議してくれ」など九件が寄せられた。

 また、目撃者によると、九日午前には複数の爆発音や黄色の煙を使用した訓練を実施していたほか、飛行停止中のF15戦闘機が滑走路を自走しているのが確認された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801091700_03.html

 

2008年1月9日(水) 夕刊 1面

名護市・県 促進へ/普天間移設

島袋市長と副知事一致

 名護市の島袋吉和市長は九日午前、県庁を訪ね、仲里全輝副知事らと面談した。米軍普天間飛行場移設問題について仲里副知事が「今年はぜひ前進させたい」と意欲を示し、島袋市長も同調した。

 仲里副知事は「政府が国民の視点に立つ努力をするのは当然。県政は名護市をバックアップする立場を続ける」と強調。名護市と連携し、代替施設滑走路の沖合移動を求める考えをあらためて示した。

 面談後、島袋市長は政府内で代替施設滑走路の沖合移動検討の動きがあることについて「前進したと思っている」と述べ、一定評価した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200801091700_04.html

沖縄タイムス 関連記事(12月29日、30日、31日)

2007年12月29日(土) 朝刊 1・27面

実行委の存続決定/「軍強制」回復目指す

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が二十八日、県議会で開かれ、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる高校日本史教科書の記述で、教科書会社からの訂正申請に対する文部科学省の決定についての見解や、今後の対応を話し合った。実行委は解散せず、来年一月に文科省に対して「日本軍による住民への強制」を示す記述の回復や、検定意見撤回などを求める要請行動をすることが決まった。

 同実行委の仲里利信委員長は、「ほかの実行委の理解が得られた場合、実行委は解散する」との見通しを示していた。だが、この日の議題に「組織の存続、解散」は上がらず、一月の要請行動を決めたことで当面の解散はなくなった。

 同実行委は、訂正申請に対する文科省の決定について「(教科用図書検定調査審議会が示した)基本的とらえ方の結果、『日本軍による強制』の記述がなくなるという重大な問題が生じている」「文科相談話でも検定意見撤回や、教科書検定で沖縄戦の記述改ざんの再発防止措置などに何ら触れていない」と批判し、「到底許すことは出来ない」とした要請文を採択した。

 一月に実行委のメンバーが上京して、福田康夫首相や渡海紀三朗文科相に要請文を手渡し、検定意見の撤回や、沖縄戦の「集団自決」に触れた教科書記述での「日本軍による強制」の語句の承認をあらためて求める方針だ。

 仲里委員長は「ある程度の記述が回復したことで、検定意見も撤回された」との見方を示しているが、実行委内には文科省の決定への厳しい意見も多いことから、実行委の「公式見解」では批判を強めることになった。


     ◇     ◇     ◇     

「軍強制」復活へ決意新た


 県民大会実行委員会の存続が決まった。沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で同実行委は二十八日、県庁で話し合いを持ち、来年一月に文部科学相などに「軍強制」の記述復活などを再要請することを発表した。仲里利信実行委員長(県議会議長)は、教科用図書検定調査審議会の報告内容に対し「不満は残るが記述はほぼ回復された」として実行委の「解散」も検討していた。当面の存続が決まったことで、活動の継続を望んでいたほかのメンバーからは安堵の声が上がった。

 同実行委の玉寄哲永副委員長は「多くの県民から『実行委の存続を』と言われていたので、安心した」と述べた。「超党派の『県民党』で実行委の活動を続けるには、県民の力が必要。実行委は検定意見の撤回と『軍の強制』の記述回復の二つは絶対に譲らない。一歩一歩、県民の思いを前に進めていくので支えてほしい」と呼び掛けた。

 県PTA連合会長の諸見里宏美会長と、元女子学徒隊でつくる「青春を語る会」の中山きく会長は、いずれも「ほっとした」と話す。諸見里会長は「年明けには中学教科書の見直しも始まる。今回のようなことにならないよう、しっかりと文科省の動きを見据えないといけない」。中山会長は「ここで解散したら、沖縄の願いはこの程度だと見透かされる。政府の思うつぼだ」と強調した。

 この日の実行委員会では、検定意見の撤回や「軍強制」を求める要請文を全会一致で可決。しかし、ある実行委員からは、「実行委は超党派の組織だが、幹部の意見が解散か存続で割れている気がする」と、同委員会の存続を不安視する声も出た。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712291300_01.html

 

2007年12月29日(土) 朝刊 2面

F15、10機の点検完了/飛行再開時期は不明

 米本国での墜落事故を受けて飛行停止措置が取られている米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機約五十機のうち、十機が点検を終えて飛行可能な状態にあることが二十八日、分かった。

 飛行再開の時期については不明。同基地のジョン・ハッチソン広報局長が明らかにした。

 同広報局長は「二十八日時点で十機が再点検を済ませ、飛行可能になっている」と説明した。ただ、飛行再開の見通しについては「上級司令部が決定する」とし、嘉手納基地の判断では決められない状況にあることを明らかにした。

 同基地では所属機二機で縦通材(ロンジロン)の亀裂が判明した。同部位については全機の塗装をはがし、非破壊検査を実施。ロンジロンの「厚さ」に関するデータを米本国のロビンズ基地に送っているという。

 同広報局長は「嘉手納基地所属の全機の点検を終えても、上級司令部の飛行停止解除の命令が出なければ飛行は再開しない」とする一方、「全機の点検が終了する前に飛行を再開するケースもあるが、その場合は基準をクリアした機体のみの運用となる」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712291300_06.html

 

2007年12月30日(日) 朝刊 1面

「瑞慶覧」過半返還を/政府、最大規模要求

「嘉手納」以南基地/米、移転策定前と難色

 【東京】在日米軍再編で日米合意した「嘉手納以南六基地」の返還交渉で、キャンプ瑞慶覧(約六百四十ヘクタール)の一部返還をめぐって日本側が、過半の約三百二十ヘクタール以上を求めていることが二十九日、関係者の話で分かった。キャンプ桑江の海軍病院の移転予定地と住宅統合エリアを除く、キャンプ瑞慶覧西側の一帯などが対象。しかし米側は在沖米海兵隊のグアム移転計画がまとまっていないことなどから難色を示しており、同計画によっては最終的な返還規模は縮小する可能性もある。

 一九九〇年の日米合同委員会で返還合意した泡瀬ゴルフ場(四十七ヘクタール)や、日米特別行動委員会(SACO)で合意したロウワープラザ地区(二十三ヘクタール)、喜舎場地区(六ヘクタール)、普天間地区(五十五ヘクタール)も含まれている。

 一方、在日米軍沖縄地域調整事務所がある国道330号の東側部分や、住宅統合が進み、米軍高官が居住するアッパープラザ地区などは返還が困難とみられているが、日本側は「可能な限り最大」の返還を求めている。

 二〇〇六年五月の在日米軍再編に関する日米合意文書(ロードマップ)は、嘉手納以南の基地返還について〇七年三月までに「詳細な計画」を作成することを明記。しかし、「瑞慶覧」の返還規模確定が遅れ、めどが立たない状況となっている。

 関係者によると、返還の検討を進めるには、グアムに移転する部隊や兵員数の内訳を確定することが前提。しかし米側はグアム移転のマスタープラン(基本計画)案の作成時期を〇八年三月としている。このため、「瑞慶覧」の返還規模確定を含めた嘉手納以南の返還に関する「詳細な計画」作成も〇八年三月以降にずれ込む見通しだ。

 「瑞慶覧」の返還規模をめぐるこれまでの交渉で、国道58号沿いの約百ヘクタールについては米側も大筋で了承しているという。しかし、「嘉手納以南」の返還を、米軍再編に伴う「負担軽減」の“目玉”としたい日本政府は、より多くの返還を要望。

 石破茂防衛相も十一月、ゲーツ米国防長官に対し「県民に、目に見えるものとしてきちんと示さなければならない。長官のリーダーシップをお願いしたい」と最大規模の返還を求めている。


[ことば]


 嘉手納以南6基地返還 06年5月に日米合意した在日米軍再編最終報告(ロードマップ)に盛り込まれた普天間飛行場、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)、那覇港湾施設(軍港)、キャンプ桑江、陸軍貯油施設第一桑江タンク・ファームの5施設全面返還と、キャンプ瑞慶覧の部分返還のこと。これらは在沖米海兵隊のグアム移転と「パッケージ」とされている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712301300_01.html

 

2007年12月30日(日) 朝刊 21面

情報漏れか偶然か/名護市発注工事 ピタリ入札

 名護市発注の公共工事の入札で、事前に公表されない最低制限価格(最低価格)と一円単位まで一致する金額で多数の事業が落札されたことが明らかになった。市議らは「建設業者側への情報漏れや、業者間の談合があるのではないか」と追及。市議会も調査に乗り出した。一方、市は関与を否定し、業者側も「過去の傾向から割り出した」と説明している。市の情報漏れや談合はあったのか、それとも「偶然の一致」なのか。見解は対立したままだ。(社会部・鈴木実、北部支社・石川亮太)

 名護市は工事発注に当たり、資材の単価や数量、難易度などの要素を数量化し、非公表の「設計価格」を設定。ダンピング防止などのため、65―85%を最低価格とし、それを下回った入札は無効とする。この最低価格は、市長や副市長ら決裁権のある市幹部が最終的に決め、封をして保管される。

 設計価格は、例えば「539487円」などと切りの悪い数字になるため、「入札予定価格」は端数を切り捨てたり、総額を数%圧縮する。事前に公表されるのはこの数字だけだ。

 業者が事前に最低価格を割り出すためには、「(非公表の設計価格)×(非公表の掛け率)」を積算する形となり、「ぴたり」特定の可能性は極めて低い。

 自治体によっては、最低価格を分からなくしようと、「81・34%」など掛け率を小数点以下まで細かく書き入れるケースもあるという。


予定価格と関連も


 名護市は設計価格や掛け率を非公表にしているものの、最低価格が把握されるのを防ぐこうした工夫が徹底されていないとの指摘もある。

 例えば、市教育委員会発注の二〇〇七年度校舎建築事業では、三つの事業の最低価格を予定価格のちょうど85%に設定、ほかにも85%台が五つあった。設計価格や掛け率が分からなくても、「予定価格の85%=最低価格」の単純な予想が成り立つ仕組みだ。

 市内の建設会社社長は「事業によっては予定価格と最低価格に関連性があり、見破るのは簡単。落札額と一致しても不思議ではない」と話し、当局からの情報漏れは否定する。最低価格との「ぴたり入札」の中には、当局の傾向を業者側に見透かされた事例も含まれるとみられ、市内部からも「なぜ、こんな分かりやすい価格なのか」との批判もある。


特定事業で何度も


 ただ、こうした構図では説明しきれない入札結果も多い。

 特定の事業で何度も「ぴたり入札」が重なったり、予定価格との関連性が見られない分野でも金額が一致するケースがあるからだ。加えて、報道機関などに事前に流れた談合情報通りに落札する事例もあり、「市当局からの情報漏えいや談合があるのではないか」とのうわさはなくならない。

 末松文信副市長は「最低価格は封印されており、封をした人でない限り分からない」と強調、情報漏れを否定している。

 一方、市外の設計士は「これだけ多くの事業で一致率が高いことは偶然ではあり得ない」と話す。野党市議らは「最低価格付近で落札すれば見掛け上は落札率も下がり、談合との批判が避けられる。公共工事はもともと予定価格が高めに設定されており、最低価格でも利益は出せる。市と業者の間で何らかの不正があるのではないか」と疑問を投げ掛ける。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712301300_02.html

 

2007年12月30日(日) 朝刊 21面

検定撤回訴えサイクリング/教諭ら40キロ走破

 【北谷】沖縄戦で起きた「集団自決(強制集団死)」での日本軍の強制を否定する教科書検定意見の撤回を求める「ピースサイクリングおきなわ」(主催・同実行委員会)が二十九日、糸満市の「平和の礎」から北谷町砂辺馬場公園の約四十キロで行われた。高校教諭ら九人が自転車をこぎ、沖縄戦の事実を後世に伝えようとアピールした。

 九月の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」で示された思いをPRしながら、同大会の「平和の火リレー」コースを一列になって走行。県民大会が行われた宜野湾海浜公園を経て、米軍上陸地モニュメントがある北谷町へ向かった。

 おそろいの黄色のTシャツを着けた一行は、約四時間半をかけゴール。伴走した車の拡声器を使い「沖縄戦の実相をゆがめる文部科学省の検定意見を撤回させよう」と呼び掛けた。

 宜野湾市立真志喜中の西島一郎教諭(37)は「サイクリングは基地撤去まで続く。いつになるかは分からないが、参加者の姿を見て児童・生徒も平和について考えるはずだ」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712301300_10.html

 

2007年12月31日(月) 朝刊 1面

サヨナラ2007年・・・怒・偽・明

 二〇〇七年がもうすぐ暮れる。政治の世界では七月の参院選挙で自民党が歴史的な惨敗。安倍晋三首相の突然の退陣に国民はあっけにとられ、福田康夫首相が後を継いだ。社会保険庁のずさんな事務で、「宙に浮いた」五千万件もの年金記録が発覚。防衛商社から約三百回もゴルフ接待を受けた「大物防衛次官」が逮捕されたほか、老舗や有名店で食の偽装が相次ぐなど、不祥事が目立った一年だった。

 県内では、文部科学省が高校歴史教科書から、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の日本軍強制の記述を削除する検定審議会意見に、「歴史歪曲は許さない」と県民の怒りが高まった。

 九月には計十一万六千人(主催者発表)が参加した県民大会も開催された。

 超党派の実行委員会などが再三にわたって政府への要請を続けた結果、軍の「関与」を示す記述は復活した。しかし、「軍が強制」の表現は認められなかった。

 米軍普天間飛行場の移設問題では、国と県の交渉が膠着状態に陥った。地元との溝はいまだに埋まっていない。米軍の演習・訓練も激化の一途をたどった。

 また、全国学力テストの結果で沖縄が最下位となり、教員採用試験では採点ミスも発覚するなど、教育関係の「暗いニュース」も多かった。

 一方で、スポーツ界では明るい話題も。特にゴルフでは、米ツアー本格参戦二年目の宮里藍が女子世界マッチプレーで準優勝。諸見里しのぶも日本女子オープン選手権で初優勝し、県民を沸かせた。

 「来年はもっと明るい年になってほしい」。多くの県民がそう願う中、二〇〇八年がまもなく明ける。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712311300_01.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(12月27日、28日)

2007年12月27日(木) 朝刊 1・2・3面

「軍が強制」認めず/関与記述復活

検定審の結論承認/文科省「意見は有効」

 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する検定問題で、教科書会社六社から提出された八冊の訂正申請を審議していた教科用図書検定調査審議会(検定審)の杉山武彦会長は二十六日午後、渡海紀三朗文部科学相と会談し、審議結果の報告書を手渡した。これを受け、渡海文科相は全社の記述を承認した。「集団自決」について「日本軍によって追い込まれた」など軍の「関与」を示す記述は復活したが、「日本軍が強制した」など主語の「日本軍」と「強制」を直接つなげる表現は認められなかった。大半の会社が検定審の方針に沿う形で、「集団自決」の背景・要因を詳しく記述した。

 一方、「集団自決」に関して「『強制集団死』とする見方が出されている」(三省堂)、「強制的な状況の下で追い込まれた」(実教出版)など、主語を明示しない表現に限って「強制」の文言が容認された。

 九月二十九日の県民大会で決議された「検定意見の撤回」は検定審で議論されず、実現しなかった。記述が修正されたことで「事実上の撤回」との指摘も挙がっているが、文科省は「検定意見を変更するものではない」(伯井美徳教科書課長)とし、今後の検定でも有効との認識を示している。

 検定審が承認した記述では、「集団自決」が起こった背景や要因として、六社のうち五社が「戦時体制下の日本軍による住民への教育・指導や訓練」(第一学習社)、「敵の捕虜になるよりも死を選ぶことを説く日本軍の方針」(東京書籍)などを詳述した。

 清水書院も県内議会の意見書可決の動きを年表に記載した。

 検定審は二十五日午後に日本史小委員会と第二部会(社会科)を相次いで開き、訂正申請された六社・八冊すべての記述について「承認することが適当」との意見を付すことで一致した。

 日本史小委は審議の過程で指針に当たる「基本的とらえ方」をまとめ、文科省教科書調査官を通じて教科書会社側に伝達。「過度に単純化した表現」は「生徒の理解が十分にならないおそれがある」として、日本軍だけが住民に「集団自決」を強制したと読み取れる表現を事実上、禁じた。また、「集団自決」が起きた背景に複合的な要因があったことを詳述することなどを求めていた。


重く受け止める/福田首相


 福田康夫首相は二十六日夜、沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題の決着について「記述を学術的、科学的に決めていく制度だから、われわれの口から良い悪いを言う立場にない。ただ沖縄県民の思いは重く受け止めている」と述べた。


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密室審議で灰色決着/文科省、体面に固執


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本史教科書検定問題が二十六日、決着した。県民の猛反発を受けた政府が、教科書会社の「自主的な」訂正申請を誘導する異例の展開。あくまで検定意見は撤回せず、実質的な記述復活で丸く収めようとする教科書検定審議会は、教科書会社と“密室”で交渉を続け、「軍の強制」は許さないが「関与」「心理的強制」は容認するという“灰色判定”で幕引きを図った。


「強制」に照準


 「直接的な軍の命令を示す根拠は確認できていない」。十二月三日、検定審の日本史小委員会が三回目の非公開審議を終えた直後、各教科書会社の役員が文部科学省に呼び出された。個別に面談した教科書調査官からは「基本的とらえ方」と題する検定審の指針が口頭で伝えられた。

 各社が十一月上旬に提出した訂正申請には、「強制」「強要」など軍の直接的関与を示す表現が盛り込まれていた。その内容変更を暗に求める指針の告示。執筆者の一部は反発したが、調査官は「調整」と呼ばれる各社との意見交換の場でも「強制」の文言を削るようさらに迫った。

 教科書会社の立場は「一方的に指示を受けるだけで、質問すらできない」(社員)ほど弱いという。約一カ月後、各社は訂正申請をいったん取り下げ、軍による教育・指導で住民が自決に追い込まれた状況を詳述するなどした修正版を再提出。「軍が強制」の記述はきれいに消えていた。


「自主的」強調


 だが一方で、いくつかの教科書は「軍によってひきおこされた『強制集団死』」「軍とともに死ぬ(『共生共死』)ことを求められた」など新たな記述を追加。全体としては「集団自決」と軍の関与についての記述が大幅に増える結果になった。

 文科省幹部はこの間の経緯を「あ・うんの呼吸で決まった」と表現するが、ある教科書執筆者は「文科省と検定審は最後までメンツにこだわった。検定意見の維持という『名』を取る代わりに、沖縄戦の記述が増えたり、(軍の強制と)ほぼ同じ意味の表現になることは認めて『実』を捨てたんだ」と指摘する。

 今回の検定結果について発表した文科省の記者会見。担当幹部は「あくまで教科書会社の自主的な申請に基づいたもの」「具体的な文言はすべて各社の創意工夫」と原則論を繰り返し、具体的な判断基準についての質問には「審議会のことなので」と応じなかった。


制度改善遠く


 さまざまな圧力の影響を受けない「静ひつな環境」を保つとの目的から検定審の審議は公開されず、議事録すらない。事実上の方針転換となった今回のケースも、代弁役の文科省が「当初の検定意見や審議に問題はなかった」と評価すれば、それ以上の検証は困難だ。

 「透明性の向上や細やかな審議の必要性などについてさまざまな指摘があった」。渡海紀三朗文科相は二十六日、検定制度の改善を検討する意向を示したが、文科省の担当幹部は「具体的な改善策は、ケースに応じその都度考えていく」と慎重な姿勢を崩さない。

 今回、修正を迫られた執筆者の一人は「今のままでは検定制度も教科書も信頼を失ってしまう。子どもにとってどんな教科書が必要なのかを、開かれた場でみんなで考える仕組みが必要なのに…」と危機感を強める。県民を巻き込んだ今回の“再検定騒ぎ”が将来の制度改善に資するかどうかは不透明だ。


知事は関与記述評価


 教科用図書検定調査審議会(検定審)の審議結果について、仲井真弘多知事は二十六日、記者団に対し、軍の「関与」を示す記述が認められたことについて、一定の評価を下した。

 県庁で、記者団の質問に答えた仲井真知事は「百点とはいえなくても、まずまずの配慮というか受け止め方を文部科学省がやっているのではないか。後退した印象を与える面もあるが、県民大会のマグマというかエネルギーを受けて、今の審議会や文部科学省で、ぎりぎり受け止めてもらったという線まで来ているのではないか」との見方を示した。

 教科書会社からの訂正申請に伴って、「集団自決(強制集団死)」に関する記述が大幅に増えることについては、「一つの背景説明とか、いろんな様相がある。そういうものを簡潔に分かりよく、背景とかさまざまなことを表現しているということは、立体的というか理解はしやすいと思う」と歓迎の意向を示した。


「主張認められた」


五ノ日の会仲村正治会長


 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する検定問題で、文部科学省が教科書会社からの訂正申請を承認したことについて、県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」の仲村正治会長(衆院議員)は二十六日、「主張が認められた」と評価した。

 後援会事務所で会見した仲村氏は「『集団自決(強制集団死)』をはじめ、沖縄戦の実態を詳しく記述し、われわれが主張してきた内容が認められた」と評価。

 訂正内容について、「実質的に軍の関与や強制を示す表現になっている」との見方を示した。

 また、検定意見については「教科用図書検定調査審議会の再審議を経て訂正されたことで、事実上撤回されたと判断した」との考えを示した。


県民への配慮必要性を強調


岸田文雄沖縄担当相


 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十六日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、渡海紀三朗文部科学相が訂正申請を承認したことを受け、コメントを発表した。

 「先の大戦で国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲になり、つらく悲しい経験をした県民の思いは、沖縄担当相として重く受け止めなければならない」と県民への配慮の必要性を強調した。

 「この機会に、内閣府としても沖縄戦について一般の方々に理解を深めていただくため、沖縄戦関係資料の閲覧事業でインターネット閲覧の充実など、利用者の利便性向上を図る」として、内閣府が所管する「沖縄戦関係資料閲覧室」の機能を強化する方針をあらためて示した。


「関与」回復と県教育長評価


「思い伝わった」


 仲村守和県教育長は二十六日、教科用図書検定調査審議会の審議結果について、「来年四月から子どもたちが使う教科書で、日本軍の関与という主語が回復されていると考える。沖縄戦の実相を正しく伝えることができることから大きな意義があり、評価したい」と歓迎した。

 記述回復がなされた理由については、「九月二十九日に結集した十一万余の平和を希求する県民の強い思いが、国や文部科学省に伝わったと思う」と話した。


渡海文科相 一問一答


 検定審の報告を受け、渡海紀三朗文部科学相は二十六日午後、省内で記者会見した。一問一答は以下の通り。

 ―検定審報告への感想は。

 「手続きは大変真摯にやっていただいた。先生方の結論なので、私の立場からコメントすることは差し控えたい」

 ―この結果を県民は理解すると思うか。

 「審議会の審議を明らかにし、専門的・学術的に審議していただいた。理解をいただきたいとは思う」

 ―大臣談話にある沖縄戦学習の一層の充実には、「沖縄条項」の検討も含まれるのか。

 「第二次世界大戦では広島、長崎、東京など多くの国民が被害にあった。特定の地域を取り上げて条項をつくるのは適切ではない」

 ―結論は、二〇〇六年度検定が「歴史の教訓を風化させる内容だった」という意味にならないか。

 「検定はあくまで、その時の知り得る学術的・専門的な意見や著述などを総合的に審議会で判断するもので、今回の訂正が現在の説に対して、どうなのかを審査したものだと理解している」

 ―今回は検定審の審議の前に、文科省の方針が示されたことが問題なのではないか。

 「それはなかった。通常の手続きにのっとり、先生方が審議した。それ以前に何らかの(文科省の)結論が出ていたと言われたが、承知していない」

 ―「政治介入」という指摘もされているが。

 「(教科書会社の)訂正申請を誘導したのではという指摘もあるが、大臣就任後に一番心掛けたのは、『政治的な介入』にならない検定制度をどう守るかが私の一番の責任だと考えていたので、それはない」

 ―今回の承認と06年度検定意見の間で齟齬はないという認識か。

 「そういうことです。報告書を読めば理解いただける。私は報告書を読んでそう思った」

 ―県民が納得しない場合の手だてはあるか。

 「基本的にはない。納得していただきたいと言ったが、中身についてではなく、手続きを踏んだことを納得していただけるという意味です」

 ―県民大会の怒りは何だったと思うか。

 「沖縄の方々には『これは違う。歴史がゆがめられた』という思いがあったのではないか」

 ―検定意見を撤回せずに記述を変えられるなら、今後の検定でも同じことが起こり得るのか。

 「絶対ないとは言えないが、あくまで通常の検定手続きにのっとりやった結果である。より良い記述にしようと教科書会社から訂正が出た。こういうことが起こらないように、検定の過程の透明性を上げるなど検討していく」


専門家9人から意見聴取


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書記述について、教科用図書検定調査審議会は九人の専門家に意見を求めていたことを明らかにした。

 このうち、元陸上自衛官で軍事史専門家の原剛氏や日本大学講師で現代史家の秦郁彦氏は、梅澤裕氏ら「集団自決」訴訟の原告や原告側証人の証言などを引用し、「集団自決」への日本軍による命令や強制を否定した。

 沖縄県史編集委員で沖縄戦研究家の大城将保氏や、関東学院大教授で日本近現代史専門の林博史氏は体験者の証言、「軍官民共生共死」が徹底されていた状況などを踏まえ、「集団自決」には日本軍による命令・強制・誘導があったとした。氏名と意見内容の非公表を望んだ一人を除く、八人の意見要旨は次の通り。

 大城将保・沖縄県史編集委員 「敵の捕虜になる前に潔く自決せよ」という軍命令は沖縄全域に徹底されていた。地上戦となった沖縄戦の悲劇を象徴するのは「集団自決」と「住民虐殺」。事実誤認と歪曲に基づく主張で、教科書から抹殺するような検定の在り方は許し難い暴挙というしかない。

 我部政男・山梨学院大教授 沖縄戦末期にいわゆる「集団自決」が事実として起こった。その背景に「軍官民一体化」の論理が存在していたことは明確だ。因果関係を説明する方法として提示されているのが「軍命令」であり、「軍官民一体化」論理の範囲に入ると考える。

 高良倉吉・琉球大教授 日本軍は本土上陸作戦を阻止するため沖縄での時間稼ぎが最大の課題だった。目前の住民の生死より作戦遂行を至上とした軍の論理があり、軍民雑居状態を放置した。慶良間諸島での「集団自決」も、軍の結果責任は明らかで、軍側の論理の関与を否定できる根拠はない。

 秦郁彦・現代史家 渡嘉敷島を中心に考察するが、「集団自決」の軍命説は成立しない。自決の「強制」は物理的に不可能に近い。自決者は全島民の三割に及ばず多数が生き延びた。負傷者の治療に軍医らが当たったと村長が認めている。攻撃用手りゅう弾の交付と「集団自決」に因果関係はない。

 林博史・関東学院大教授 沖縄戦での「集団自決」が、日本軍の強制と誘導で起きたことは沖縄戦研究の共通認識。捕虜になるのを許さない軍思想の教育などさまざまな方法で、軍は住民を「集団自決」に追い込んだ。私の著書を根拠に強制性の叙述を削除させたのは、著書内容を歪曲しており検定意見の撤回しかない。

 原剛・防衛研究所戦史部客員研究員 沖縄戦では戒厳令は宣告されず、軍に住民への命令権限はなかった。関係者の証言などによると、渡嘉敷・座間味両島の「集団自決」は軍の強制と誘導によるものとはいえない。「鬼畜米英に辱めを受けるより死を選ぶ」という思潮が強かったことが原因。自ら死を選び自己の尊厳を守ったのだ。

 外間守善・沖縄学研究所所長 日本本土の一億日本人のため沖縄島は防波堤として使われた。沖縄県民十余万人を犠牲とした、「集団自決」を含む責任は日本国にある。日本国、日本人に沖縄の痛みを理解してもらいたい。沖縄における軍の存在は住民にとって脅威だった。「集団自決」の問題にもこれらが通底している。

 山室建徳・帝京大講師 軍人が死闘を繰り広げる中、日本人全体が屈服しないことを見せつけるべきだという考えが共有された状態で沖縄戦に突入したが、先祖伝来の地に住む沖縄県民の多くは「集団自決」の道をとらなかった。一部の軍が住民に自決を強要したとだけ記述するのは、事実としても適切ではない。

 審議会の日本史小委員会委員は次の通り。(一人は本人意向で非公表)

 【日本史小委員会委員】有馬学(九州大大学院教授)▽上山和雄(国学院大教授)▽波多野澄雄(筑波大副学長)▽広瀬順晧(駿河台大教授)▽二木謙一(国学院大名誉教授)▽松尾美恵子(学習院女子大教授)▽吉岡真之(国立歴史民俗博物館教授)

 


[県選出・出身国会議員コメント]

歴史観に明確表現必要

 下地幹郎衆院議員(無所属) 官房長官談話など政治の歴史観に対する強い平和への意思があって然(しか)るべきだ。記述回復と同時に、審議会を超えた政治の強い意志をあらためて首相が表すべきだ。戦争に関する歴史観には明確な表現が必要だ。

あいまいな表現に不満

 照屋寛徳衆院議員(社民) 検定意見撤回がなされず、県民の求める完全な記述回復にもなっていない。あいまいな表現で極めて不満だ。生存者の証言からも日本軍の命令、強制があったことは明白である。沖縄条項の確立を強く要求する。

要因・背景詳しく表現

 嘉数知賢衆院議員(自民) 県民の声を真摯(しんし)に受け止め、訂正前に比べて沖縄戦の悲惨さ、住民の「集団自決」に追い込まれるに至った要因、背景などが詳しく表現され、軍の関与なくしてこの事が起こり得なかった事実が述べられ評価したい。

世論が検定審動かした

 西銘恒三郎衆院議員(自民) 県民世論が検定審議会を動かした。特に歴史小委員会は7回開かれ、沖縄史の専門家から意見聴取したことを評価する。教科書の記述内容は、囲みや側注の補足もあり、歴史事実を記述に回復したと思う。

検定意見も事実上撤回

 仲村正治衆院議員(自民) 問題発覚後、国会や党内で沖縄戦の真実を歪(ゆが)めることは許さないと追及した。「集団自決(強制集団死)」の軍関与など沖縄戦の実態を詳しく記述し、われわれの主張が認められた。検定意見も事実上撤回された。

沖縄を思う決意に敬意

 安次富修衆院議員(自民) 検定審の報告で、日本軍の関与や強制という記述が明記されたことで、記述の回復と前回の検定意見撤回がなされたものと判断する。渡海紀三朗文部科学相が談話を発表し、沖縄を思う決意に心から敬意を表したい。

記述後退に憤り感じる

 赤嶺政賢衆院議員(共産) 県民の思いを深く受け止めると言いながら、軍の強制を踏まえた執筆者の一回目の訂正申請を「過度に単純化した表現」としてばっさり切り捨て、記述を後退させたことに憤りを禁じ得ない。戦争の実相を歪める。

訂正承認した努力評価

 島尻安伊子参院議員(自民) 県民大会の決議を重く受け止め、異例の訂正申請をした教科書出版社と執筆者、訂正を承認した検定審議会と文部科学省の努力を評価する。悲惨な沖縄戦の教訓を後世に継ぐ重大な国民の責務を果たしたい。

軍の残虐行為覆い隠す

 糸数慶子参院議員(無所属) 「集団自決」記述への検定意見は、日本軍の残虐な行為を覆い隠し、軍官民共生共死という沖縄戦の美化を目的とした明確な意図の下に付されたと理解する。大臣談話に得るものはなく、検定意見の撤回を求めていく。

はびこる国家主義官僚

 喜納昌吉参院議員(民主) 文科相は「検定は国が教科書記述の欠陥を指摘するのが基本」と言うが、国が欠陥を押し付け、歴史を改ざんしたのが実態。安倍時代錯誤政権の国家主義官僚がはびこり、福田首相は裸の王様である。沖縄は闘う。

戦争の肯定につながる

 山内徳信参院議員(社民) 県民大会の総意は検定意見の撤回と記述の回復。記述の量は増えたが、肝心な「集団自決」への軍の強制を否定、責任逃れに終始している。戦争肯定の教育とつながる。子どもの未来を守り抜く民衆力が必要だ。

[県内政党コメント]

自民党県連・事実上の「検定」撤回

 沖縄戦、「集団自決」における日本軍関与が明確に書き記されたほか、その背景についても書き加えられており、これまでより詳しく記述されたことは評価する。検定審議会の再審議による内容であり、事実上の「検定意見の撤回」と判断したい。

社民党県連・強制認めず強い怒り

 日本軍の強制が認められなかったことに強い怒りを持つ。背景、要因の記述は必要だが、軍の強制が削除されると沖縄戦の実相が歪(ゆが)められる。検定意見も有効との認識では、大臣談話の内容と有効性に問題が残る。沖縄の声を発信し続ける。

公明党県本・史実を教育に生かせ

 日本軍による強制は採用されず、関与の表現にとどまった。一方、説明記述で、「集団自決」の歴史的背景が詳しく述べられる。「検定意見の撤回」については議論されず。県民の思いは届かないのか。歴史の真実を後世の平和教育に生かすべきだ。

社大党・戦争の肯定許されぬ

 今回の検定結果は前回同様、文科省指導により事実をありのままに書いていない。県民は検定意見の撤回と事実に基づいた記述を求めており、到底承服できない。沖縄戦体験者の前では、いかなる人でも戦争を肯定し美化することはできない。

共産党県委・福田内閣に強く抗議

 検定意見も撤回せず、「軍強制」の記述回復も認めなかった。県民大会に込めた思いを踏みにじる福田内閣に強く抗議する。軍は住民を守らないという沖縄戦の教訓を消そうとする策動が根強く続いている。最後まで検定意見の撤回を求める。

政党「そうぞう」・県民の思いとはズレ

 日本軍に「追い込まれた」という記述で軍の「関与」は認めたが、「強制」という強い表現にならなかったことで、県民の思いとのズレがはっきりした。大臣談話に、沖縄の戦後史について踏み込んだ表現がないことも、非常に残念に思う。

民主党県連・検定制度の廃止要求

 軍命の強制を曖昧(あいまい)にし、軍や戦争への嫌悪感を消すことに固執する自公政権は、教育現場で戦争準備をしているのではないか。旧日本軍を擁護する政治的関与を排除できない検定制度、審議会を直ちに廃止し、民主的な機構をつくる必要がある。

国民新党県連・県民の思いではない

 そもそも、この問題の発端は、沖縄戦に詳しくない審議会(専門委員会)で歴史問題を検討したことが問題だった。行政的に落としどころを模索した結果だと思うが、沖縄県民の思いではない。大臣が出した談話はもっと踏み込むべきだ。

[関係首長コメント]

総意伝わらず残念だ

 翁長雄志那覇市長 県民の総意が伝わらなかったのかと残念。一定の配慮はあったようだが、県民は素直な表現を望んでいたはずだ。県外では、沖縄と文科省だけの問題としてとらえられていた印象が強く、今後の運動について話し合いが必要。

歴史ねじ曲げに怒り

 東門美津子沖縄市長 検定審とは何なのか。「集団自決」の体験者などから多くの証言がある中で、なぜこんな結論が出るのかまったく分からない。県民の思いが伝わらず、歴史的事実が時の政府によってねじ曲げられることに怒りしか感じない。

犠牲者のため真実を

 知念恒男うるま市長 教科書が都合のいいように変えられることはショックだ。いつの時代でも事実は事実として教えるべきではないのか。このままでは、次は沖縄戦の記述すらなくならないか心配だ。犠牲者のためにも真実を伝えるべきだ。

決定は死者への冒涜

 儀間光男浦添市長 太平洋戦争では国民全体が皇民化教育などの体制下、日本軍に従うようになっていた。そのこと自体が軍の命令を表す。軍の強制を認めないことは言葉のもてあそびで死者への冒涜(ぼうとく)だ。間違いは素直に認めて改めるべきだ。

国の主張に反撃必要

 伊波洋一宜野湾市長 日本軍の強制を否定し、歴史を歪曲する検定意見が今後も有効ならば、県民の思いを害し続けることになる。国は検定意見を撤回するべきだ。沖縄戦を風化させない取り組みを続け、国の主張に反撃することが必要だ。

継続して思い訴える

 島袋吉和名護市長 あれだけ大きな県民大会を開き、沖縄の心が国を動かすと思っていたが、検定意見の撤回が実現できずに残念だ。これで終わりではなく、継続して沖縄の思いを訴え続け、検定意見撤回を勝ち取るまで頑張っていきたい。

県民の訴えとは逆行

 西平賀雄糸満市長 体験者は「軍強制」を事実だと言っている。今回の結果は大変遺憾だ。事実を伝えていかなければ、教育にならない。県民の行動に対し、国の動きは逆行しているようだ。県民の訴えをもっと真摯に受け止めてほしい。

研究者の意見を排除

 伊志嶺亮宮古島市長 県民大会の思いは検定意見の全面撤回だった。日本軍による強制の実態を正しく残すことだったが、沖縄戦研究者の意見も取り入れられていない。県民の総意がこのような形で無視されるのは、非難されるべきだ。

県民は普遍性求めた

 金城豊明豊見城市長 「9・29」の県民大会以降の県民の要求は、あくまで正しい歴史の記述復活である。県民は歴史認識の普遍性を求めており、後世再び、この問題が再燃する可能性も否定できない今回の検定審の結論は、大変残念に思う。

今後の記述後退懸念

 大浜長照石垣市長 軍の命令があったという声は参考にならなかったのか。不満どころか怒りを感じる。検定意見が残れば教科書の記述は後退する恐れがある。沖縄戦の専門家の意見を取り入れて判断すべきで、検定意見撤回を求め続けたい。

史実改ざん許されず

 古謝景春南城市長 県民大会で決議されたことが検定審で審議されなかったことは誠に残念だ。史実の改ざんは許されるものではない。戦争は人間を異常な状態にするものであり、二度とこのような戦争を起こさせないことが大事なことだ。

戦没者に申し訳ない

 小嶺安雄渡嘉敷村長 はっきり言って期待外れの結果だ。この内容では「集団自決(強制集団死)」があった地元の首長として、亡くなられた御霊に申し訳ない。証言に基づく史実を後世に伝え、平和国家を築くため、訴え続ける必要がある。

軍国主義否定教育を

 仲村三雄座間味村長 多くの村民や県民が望んだ検定意見の撤回が実現しなかったことは遺憾だ。一方、軍の関与に一歩踏み込んだ記述がされており、これらを通して、当時の軍国主義教育などの反省に立った教育がなされることを期待する。

誤った教育に危機感

 安田慶造読谷村長 教科書検定問題が表面化して以降、これまで口をつぐんでいた人も、後世に真実を残そうと勇気を出して証言してきたのに残念だ。大人の都合だけで誤った教育を受けることになってしまう子どもたちの将来が危惧(きぐ)される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712271300_01.html

 

2007年12月27日(木) 朝刊 26・27面

ぼけた核心 落胆/歪曲懸念 消えず

 高校歴史教科書検定問題で教科用図書検定調査審議会(検定審)は二十六日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への「日本軍の強制」「軍命」などの記述を認めなかった。「軍関与」の表現にとどめ、九月二十九日の県民大会で決議された検定意見の撤回にも触れなかった。「日本軍の黒い行為をぼかす」「自分たちがうそをついているというのか」。「集団自決」や沖縄戦の体験者、学校関係者は怒りをあらわにした。一方、東京で記者会見した県民大会実行委員会のメンバーらは不満は残るとしながらも「記述の回復は、ほぼなされた」と一定の評価。受け止めは分かれた。

 「日本軍の黒い行為が、消しゴムでこするように灰色にぼかされた。次の検定では白にするんですか」。座間味島の「集団自決」の体験者、宮城恒彦さんは憤りを抑える口調で問い掛けた。

 「過ちを犯したのは日本軍であって今の政府ではないのに、認めてどんな損があるのか。不可解だ」と声を落とす。「私たち体験者がいなくなった後は、誰も事実を伝えられない。検定ごとに首相や文科相の意向で歪曲されてしまう」と将来を案じた。

 渡嘉敷島で「集団自決」を体験した池原利江子さんは「私たちは、防衛隊の伝令に軍の命令だからと言われ、まさか死ぬとは思わず集合した」と強調。軍の命令を認めない文科省に「まるで私たちがうそを言っているみたいだ。怒るというより、あきれる。死んだ人がかわいそう」と憤る。「このまま、黙っていてはいけない。私たちが生きているうちに、どうにか教科書の記述を回復してほしい」と力を込めた。

 慶留間島で「集団自決」を目の当たりにして生き延びた体験を持つ元座間味村長の與儀九英さんは「(軍の強制を明記せずに)『追い込まれた』というと、自決する以外にも選択肢があったように聞こえるが、当時はそんな生ぬるい状況ではなかった。個人の自由や主体性が生まれる余地はなく、軍の命令には絶対服従で、自決する以外に道はなかった」と記述の“後退”を批判した。

 「日本軍の強制は入れるべき」。元女子学徒隊でつくる「青春を語る会」の中山きく会長は、納得がいかない。「受け入れられないのなら上京し、自分たちの思いを伝えたい」。戦時中、手榴弾を配られ自ら命を絶とうとした悲しい過去を忘れることはない。「これだけ生き証人がいる。日本軍の強制を入れるまで訴えていきたい」と語った。


文科相 謝罪・反省踏み込まず


 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、渡海紀三朗文部科学相は二十六日午後、文科省で記者会見し、教科用図書検定調査審議会(検定審)が承認した訂正申請について「沖縄県民に理解をいただきたい」と述べた。

 県民の反発を招いた文科省の対応については、「何を反省すべきか整理していない」とし、謝罪や反省に踏み込まなかった。訂正申請に沖縄側が反発した場合の手だては「基本的にない」として、今回の対応で決着とする考えを強調した。

 検定意見を撤回せずに記述を変更したことの整合性について「齟齬はない。検定審の報告書を読めば理解いただける」と述べ、訂正申請が検定意見の範囲内で審議されたとの認識を説明した。

 沖縄条項の創設に関しては「第二次世界大戦で悲惨な出来事は広島、長崎、東京大空襲もある。特定地域を取り上げて条項をつくるのは適切でない」と述べ、否定的な考えをあらためて示した。

 会見に先立ち、渡海文科相は大臣談話を発表。検定手続きの改善方策を検定審で検討し、二〇〇八年夏をめどに一定の方向性を示す方針を明らかにした。


実行委 不満残すも「80点」


 【東京】「不満は残るが記述はほぼ回復された」。文部科学省の教科書検定に抗議し、記述の回復と検定意見の撤回を文部科学省などに要請した県民大会実行委員会の委員らは二十六日、都内で記者会見し、検定審の結論を“八十点”とした。

 仲里利信実行委員長(県議会議長)は、検定意見が撤回されなかったことについては「記述が回復されたことで、検定意見は自動的に消滅したと理解している」と述べ、事実上、県民大会の決議要望は果たせたとの認識を示した。

 一方で「日本軍による強制や命令の語句が修正・削除されたことは不満」と強調。(1)沖縄戦に関する記述に配慮した「沖縄条項」(2)審議委員に沖縄戦研究者を加えること(3)沖縄戦の実相に関する調査研究を進めること―などを今後も強く求めていく考えを示した。

 実行委幹事の平良長政県議も県議会、市町村議会の意見書可決や県民大会に関する記述が盛り込まれたことは評価したものの、「相当不満もあるし課題もたくさんある」。

 会見後、「沖縄戦書き換えの動きを完全には押し返せなかったが、不満ばかり言っていたらせっかく一つになった沖縄がばらばらになる」と複雑な心境を吐露した。

 仲里議長らはこの日沖縄へ戻り、二十八日午後の実行委で経過を報告する。仲里議長は「仮定の話」とした上で、他の実行委の理解が得られた場合、実行委は解散するとの見通しを明らかにした。


執筆者 文科省姿勢を批判


 実教出版の高校歴史教科書執筆者の石山久男さんは「『軍の強制』があいまいにされた」と不満をあらわにした。「根本は検定意見にある。検定意見を撤回させて、『軍の強制』を明示する記述が戻るまで、来年度以後も訂正申請を続ける」と決意を新たにしていた。

 東京書籍の執筆者、坂本昇さんは、「日本軍によって『集団自決』に追いこまれたり」と「日本軍」の主語が復活した点は成果を認めたが、「集団自決」体験者の金城重明さんの著書から引用したうち、軍命に触れた部分が認められず「残したかった」と肩を落とした。

 別の教科書会社の執筆者は「『日本軍によって自決を強要された』との記述が認められず、非常に残念だ」。その上で「強制集団死という記述を盛り込むことができた。二歩後退、一歩前進。検定意見を撤回せずメンツだけを守ろうとする姿勢は許せない」と文部科学省を批判した。


学校現場も懸念


 実際に教科書が使われる学校現場からも、落胆の声が上がった。北部農林高校の大城尚志教諭は「多くの高校生が県民大会に参加したが、『結局自分たちの知らない所で偉い人が決めてしまう』と感じるのが怖い」と懸念する。

 高教組の福元勇司書記長は「二度も書き直しをさせる文科省の姿勢は異常だ」と指摘。「『集団自決』を現場で子どもたちと一緒に考えていきたい」と強調した。

 沖教組の大浜敏夫委員長は「次回以降の検定基準として定着する可能性」を挙げ、「今後も検定意見撤回を求める」とした談話を発表した。


     ◇     ◇     ◇     

撤回触れず 後退危険も/解説


 沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、教科用図書検定調査審議会(検定審)の結論は、「集団自決」を「日本軍が強制した」という直接的な記述を認めず、「関与」を示す表現にとどめた。軍の強制を明記した複数の会社に訂正申請の取り下げを促すなど、「強制回避」に固執。記述修正に対する賛成、反対の両派に配慮したあいまいさが際立った。検定意見は手つかずで残り、今後の検定で記述が後退する危険性をはらんだままだ。

 訂正申請後に検定審を頻繁に開き、専門家の意見を聞いた慎重な対応も、裏を返せば「軍の強制」記述を削除した二〇〇六年度検定の審議がいかに不十分だったかを浮き彫りにした。

 検定審は今回の訂正申請を受けた十一月五日以降、沖縄戦を審議する日本史小委員会を今月二十五日までに七回開いた。沖縄戦、沖縄史、軍事史の専門家九人から意見を聴取するなど「とりわけ慎重かつ丁寧」(報告書)な対応を取ったとしているが、遅きに失した感は否めない。

 そもそも、住民を巻き込んだ国内唯一の地上戦とされる沖縄戦の記述を審議するに当たり、前回の検定審で不可欠な作業を怠っていたことの表れだ。教科書が沖縄戦の実相を生徒に正確に伝えるためにも、検定審議を恒久的に改善する取り組みが求められる。

 訂正申請の審議では「集団自決」について「日本軍に追い込まれた」など、軍の関与を示す表現が認められた。一方、実教出版は「日本軍は(略)集団自害と殺しあいを強制した」との訂正申請のやり直しを余儀なくされた。

 「関与」は県議会が検定意見の撤回を求めて意見書を可決する際、与野党が一致するキーワードだった。検定審と文科省がこれを「落としどころ」に設定し、「軍の強制」をぼかす表現で幕引きを狙った印象はぬぐえない。(東京支社・吉田央)


渡嘉敷・座間味村に号外


 沖縄タイムス社は二十六日午後、教科用図書検定調査審議会が、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関して、日本軍強制の記述を認めなかったことを伝える号外三万部を「集団自決」のあった渡嘉敷、座間味両村を含む県内各地で配布した。

 渡嘉敷村へは午後四時ごろ、チャーター船で二百部届けた。村役場や港ターミナル、雑貨店などで配布。村民らは食い入るように読んでいた。

 村在住の當山清林さん(69)=会社代表=は「じっくり読んで、友人らと議論したい」と話した。

 ホテル経営の関根史郎さん(44)は「このような結果になったのは非常に残念で許し難い。教科書会社もいろんな圧力がかかり大変だとは思う」と悔しさをにじませた。

 座間味村には午後五時ごろ、三百五十部届くと、人々は驚いた様子で受け取った。四十代の男性は「島であったことは、直接言葉で子どもたちに語り継いでいくしかない」と決意したように語った。


「県民大会」新たに追加


 【東京】教科用図書検定調査審議会(検定審)が訂正申請を認めた複数の教科書に、九月二十九日に開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」など教科書検定をめぐる県内の動きや問題そのものを取り上げる記述が新たに加わった。

 東京書籍の「日本史A」は最近の出来事として、「2007年の教科書検定の結果、沖縄戦の『集団自決』に日本軍の強制があった記述が消えたことが問題になった」と記述。「側注」で「沖縄県では、県議会・全市町村議会で検定意見の撤回を求める意見書が可決され、同年九月には大規模な県民大会が開催された」と紹介している。

 清水書院の「日本史B」は年表の中に「沖縄県と県下全市町村の議会、集団自決についての教科書検定意見の撤回を求める意見書を可決」との記述を加えた。


きょう緊急県民集会


 文部科学省が教科書会社からの訂正申請への対応を公表したことを受け、「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は二十七日、緊急の県民集会を開く。文科省が沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」についての教科書記述で、日本軍の「強制」を示す記述の回復を許さず、「関与」などの表現にとどめさせたことに抗議する。

 二十六日、県庁で記者会見した同実行委の大浜敏夫共同代表は、文科省の訂正申請への対応について「(検定意見撤回などを求めた)全市町村や県議会の決議、体験者の新たな証言、九月二十九日の県民大会に参加した十一万六千人の意見を無視するものだ」と批判、「県民の抗議の意思を示そう」と参加を呼び掛けた。

 緊急集会は、二十七日午後六時から那覇市の県民広場で開かれる。


退職教員らが軍命削除抗議


 高校歴史教科書検定問題で、退職教員などでつくる「おきなわ教育支援ネットワーク」は二十六日、「沖縄県民の意志を踏みにじる『軍命』再々削除に抗議し、『検定意見撤回・軍命記述回復』をかちとるまでがんばろう」との声明を発表した。


つくる会が抗議


 新しい歴史教科書をつくる会は二十六日、沖縄戦の「集団自決」に日本軍の関与があったとの記述を認めた教科書検定審議会の決定について「到底容認できない」などとする抗議声明を出した。つくる会は「文部科学省は検定制度の根幹を揺るがすという重大な汚点を残した」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712271300_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月27日朝刊)

[教科書検定審報告(上)]

史実をぼかす政治決着


「強制」認めず「関与」へ

 高校日本史教科書の検定問題で教科用図書検定調査審議会は、教科書会社六社から訂正申請のあった沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する記述について、渡海紀三朗文科相に審議結果を報告した。

 そこで県内のすべての高校生に質問したい。

 以下の三つの文章は(1)が原文である。その後、文部科学省や審議会の意思が働いて(2)に書き改められ、多くの県民の強い抗議を受けて教科書会社が訂正申請をした結果、(3)の記述に変わった。さて、この三つの文章は、どこがどのように変わったのか。なぜ、このような変更をしなければならなかったのか。そのねらいは何か。

 (1)「日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」

 (2)「日本軍に壕から追い出されたり、自決した住民もいた」

 (3)「日本軍によって壕を追い出されたり、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」

 どうだろうか。

 よくよく読み比べないと気付かないような変化なので、二度、三度とゆっくり読み直してほしい。

 (1)は「日本軍」という主語と「集団自決に追い込まれた」という述語の関係が明確だ。だが、(2)は主語と述語が切れてしまい、両者の関係があいまいになっている。

 (3)は原文とうり二つである。原文がほぼ復活したといえるが、主語と述語のつながりはやや弱くなった印象だ。

 この一連の経過を通して見え隠れするのは「できれば日本軍という主語を消したい」「日本軍と集団自決の関係をあいまいにしたい」という背後の意思である。

 検定審の結論は三点に要約される。

 第一に、検定意見を撤回していない。第二に、「日本軍によって強制された」というような軍の強制を示す表現は採用していない。第三に、日本軍によって「追い込まれた」などの軍の関与を示す記述は認められた。

 検定で消えた「強制」を「関与」という形で復活させ、この問題の決着を図ったわけだ。


沖縄戦の特徴とは何か


 九月二十九日の県民大会で決議されたのは「検定意見の撤回」と「記述復活」の二点だった。

 県民世論が検定審を動かし、ある程度の記述復活が実現したのは確かだ。

沖縄の取り組みは決して徒労に終わったわけではない。

 しかし、教科書各社が「強制」の復活を目指し前後の表現を工夫しながら訂正申請したにもかかわらず、検定審は「このままの記述では訂正は認められない」と再度の書き換えを求めた。

 なぜこれほど「強制」という言葉の使用を忌避するのか、不可解というほかない。

 検定審は訂正申請を審議するに当たって県内外の専門家八人から意見を聴いた。その中で、ある専門家は、日本軍によって住民が追い詰められたことが沖縄戦の特徴であり、日本軍の存在が決定的な役割を果たしている、と述べている。

 また、別の専門家は「『戦闘能力のないものは捕虜になる前に自決(玉砕)せよ』という方針は全軍的な作戦方針に基づくものであって、特定の部隊長がその場になって命令したか否かの次元の問題ではない」と指摘している。私たちもその通りだと思う。

 隊長命令があったかどうかという問題と、日本軍によって強制されたという問題を混同してはならない。


検定制度改革が必要だ


 沖縄からの異議申し立てに対し、「政治的な介入があってはならない」との声が上がった。だが、それを言うのであれば次の疑問にも答えてほしい。

 二〇〇五年度までは軍の強制記述が認められてきた。なぜ、今回、学説の大きな変化がないにもかかわらず、検定意見がついたのか。係争中の裁判の一方の主張を検定意見の根拠にしたのはなぜなのか。

 今回、あらわになったのは検定制度の密室性である。検定審の審議内容は非公開で、議事録も公表されていない。検定意見の詳細な内容は文書化されず、ほとんどが口頭説明だという。

 検定審は突っ込んだ議論もせずに教科書調査官の検定意見原案を通してしまった。調査官が検定審とどういう関係にあるのかもベールに包まれたままだ。

 検定制度は、透明性を確保するため抜本的に改革する必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071227.html#no_1

 

琉球新報 社説

教科書問題 「軍強制」は明らか/検定意見は撤回すべきだ

 沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に関し、「日本軍による強制」の記述を修正・削除した高校歴史教科書検定意見問題で、教科用図書検定調査審議会(検定審)は、県民が求めた検定意見の撤回を認めなかった。

 「集団自決」の現場にいながら命拾いをした多くの体験者らがこれまで「軍の強制」を証言してきた。その事実を検定審が一つ一つ丹念に検証した形跡はない。

 そのことを抜きに「軍の直接的な命令」を示す根拠はないと断定することに、果たして正当性があるだろうか。

 歴史的事実を追究する努力を尽くさず、体験者の証言を顧みることもなく「集団自決」の本質とも言える「軍の強制」を削除できるほど、歴史は軽いものなのか。

乱暴な論理

 検定審は訂正申請した教科書出版社に対して「直接的な命令」「強制」の断定記述は「生徒が誤解するおそれがある」との指針を通知していた。

 指針は検定審の考えを押し付けるものである。「集団自決」の実相と真摯(しんし)に向き合った教科書執筆者や教科書出版社に対する圧力以外の何ものでもない。

 「それぞれの集団自決が、住民に対する直接的な軍の命令により行われたことを示す根拠は、現時点では確認できていない」として、検定意見から一歩も踏み出さないとあっては、結論は分かり切っていたと言わざるを得ない。

 専門家からの意見聴取にしても形式的なものだったと言えまいか。

 検定意見が歴史に照らして正しいものであれば、それを堅持することは当然のことである。

 しかし、今回の「集団自決」についての検定意見は妥当なものと言えるだろうか。

 検定審の意見聴取に対して大城将保氏(沖縄県史編集委員)は「直接命令を下した指揮官名まで判明している事例も少なくない」と指摘している。

 多くの沖縄戦研究者が検定意見を批判していることを、検定審はまず重く受け止めた上で、審議に臨むべきではなかったか。

 意見聴取に対しては、日本軍の強制をめぐって多様な意見があった。検定審は結果的に「軍の強制はなかった」との意見を採用したとも言える。

 だが、検定審がこれまでの沖縄戦研究の積み重ねを無視するに至った理由は、不透明と言わざるを得ない。検定審はその説明責任を尽くすべきである。

 「軍命を示す根拠は確認できない」との理由だけで、納得する人がどれだけいるだろうか。

 すべての「集団自決」で軍の強制を示す根拠はない。だからといって、軍の強制が明らかにあったケースがあるにもかかわらず「軍の強制」記述を一切認めないのはあまりにも乱暴な論理である。

史実後世へ

 県内全41市町村議会で「検定意見の撤回」を求める意見書が可決され、県議会は二度にわたって決議した。検定意見の撤回などを求めた9月の県民大会には11万6千人(主催者発表)が集まるなど、検定意見の撤回は県民の総意と言っていい。

 一連の大きなうねりが政府の訂正申請に応じる方針を引き出したと言える。

 教科書出版社が「集団自決」の背景をより詳しくしたことには評価する声もある。一部の教科書は検定前に近い記述が認められた。

 だが、日本軍の関与を薄めさせようとする検定審と教科書調査官の意図に変化はない。「集団自決」の重要なポイントである「軍の強制」の記述抜きには、正しい歴史を子どもたちに教えることはできないのではないか。

 渡海紀三朗文科相は検定審の意見提出を受けて「歴史の教訓を決して風化させることのないようにと願う。沖縄県民の思いを重く受け止め、これからも子どもたちにしっかりと教えていかなければならない。沖縄戦の学習がより一層充実するよう努めたい」との大臣談話を出した。

 大臣談話を実現するには「集団自決」に導いた「軍の強制」について、文科省や検定審は現地での聞き取りなど、幅広い調査を実施するべきである。

 県民要求の一つは「記述の復活」である。今回の訂正申請承認を歓迎する声もあるが、中途半端な解決では後世に禍根を残すことにもなりかねない。

 史実を後世に伝えるのは県民の責務であることを再確認したい。

(12/27 10:00)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-30065-storytopic-11.html

 

2007年12月27日(木) 夕刊 1面

僕らの教科書から「軍強制」消えた/高校生ら危機感と憤り

 「なぜ、正しい記述が認められないの」。沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する検定問題で、「日本軍」と「強制」を直接つなげる表現を認めなかった教科用図書検定調査審議会の結論に、実際に教科書を使う立場にある県内高校生から戸惑いと不満の声が上がった。9・29県民大会で決議された「検定意見撤回」は実現せず、「僕たちや後輩たちに悪影響が出る」と危機感を募らせた。

 県民大会参加後、報告会を開いた北部農林高校生徒会長で三年の島袋奈津子さん(18)は「軍は関与はしたけど、強制はしていないというあいまいな表現になっている。体験者が強制されたという事実が否定された感じがする」と懸念する。

 南風原高校三年の具志沙織さん(18)は「沖縄と本土で沖縄戦に対する考え方がこんなに違うのかと無力感を覚えた。沖縄にはたくさんの生存者の証言や遺留品があるのに、どうして正しい記述が認められないのだろうか」と疑問を投げ掛けた。

 その上で「あやふやな教科書では、これから歴史を学ぶ後輩たちに大きな誤解を与えてしまう。沖縄戦を経験したオジーやオバーの心の傷は決して癒えることはないのに、歴史だけが書き換えられていくようで憤りを感じる」と語った。

 宮古郡民大会で「なぜ事実をもみ消し、ゆがんだ情報を伝えようとするのか」と訴えた宮古高校二年の我如古博斗君(17)は「日本軍の関与が認められたことはいいことだが、『軍』と『強制』を直接つなぐ表現が記述されなかったことはショック」と話す。親せきの高齢者から沖縄戦当時の話を聞き、日本軍の強制は歴史的事実ととらえた。検定意見の撤回が実現しなかったことに「間違った検定意見が残ると、僕たちや後輩が学ぶ上で悪影響が出る」と語った。

 父親に誘われ、参加した県民大会をきっかけに、初めて「集団自決」の問題を真剣に考えるようになったという那覇国際高校三年の当真里菜さん(18)。多くの県民の熱意で埋め尽くされた会場に立って、「軍の強制があったことは間違いない」との思いを一層強くしたという。「これまで祖父母や両親、先生から沖縄戦の実相について学んできた。私たちの力で今後、再び県民が願う教科書に戻していけると信じている」と力強く語った。


[ことば]


 教科書検定問題 2008年度から使用される高校歴史教科書の検定で文部科学省が沖縄戦の「集団自決」から日本軍の強制を示す記述を「誤解を与える恐れがある」として、検定意見を付け、教科書会社に削除を求めた。この問題で県内では検定意見の撤回と記述回復を求める抗議の動きが広がり、9月に11万6000人(主催者発表)が参加した県民大会が開かれた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712271700_01.html

 

2007年12月27日(木) 夕刊 1・4面

「軍強制」復活を要請/執筆者らが文科省に

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定で、渡海紀三朗文部科学相が「日本軍の強制」記述を認めない形で訂正申請を承認したことを受け、教科書執筆者や教育関係者、労組らでつくる四団体と県関係の野党国会議員が二十七日午前、文科省に松木秀彰教科書課長補佐を訪ね、検定意見の撤回と「軍強制」を含む記述の回復を要請した。

 出席者によると、松木補佐は「軍強制」に関する記述について「文章全体を見て判断しており、『強制』という文言を排除したわけではない」と説明したという。

 琉球大学の高嶋伸欣教授は「渡海文科相の談話に謝罪はおろか、反省の言葉も含まれていない」と指摘。松木補佐は「沖縄県民の思いを重く受け止めるという言葉が入っている」と返答した。

 糸数慶子参院議員は「軍の強制記述は二〇〇五年まで認められていた。学説状況に変化がないのに、なぜ検定意見が付いたのか」と疑義を示した。松木補佐は「わずかな変化があった」として、大阪で係争中の「集団自決」訴訟が影響したことを示唆したという。

 出席団体の要請書では、訂正申請の審議に際して文科省が「教科書会社が訂正申請を取り下げた」と説明しているが、実際には教科書調査官から申請のやり直しを要求されていたことなど審議の「密室性」を批判した。

 松木補佐は「あくまで教科書会社が自主的に取り下げたと認識している」と述べるにとどめた。

 実教出版執筆者の石山久男さんは要請後、「根拠のない検定意見を付けた誤りを認めようとせず、質問にもごまかしの回答しかしない文科省の姿勢に憤慨している」と怒った。

 これに先立ち、共産党の穀田恵二国対委員長、赤嶺政賢衆院議員らが布村幸彦大臣官房審議官と面談し、同様の趣旨を要望した。布村審議官は「軍強制」の記述削除について「直接的な軍の命令を示す根拠は現時点では確認できていない」と述べ、理解を求めた。


     ◇     ◇     ◇     

教科書検定意見 撤回求め抗議文/第9条の会


 高校歴史教科書の検定問題で、教科用図書検定調査審議会が沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に対する軍強制記述を認めなかったことに対し、第9条の会・沖縄うまんちゅの会(安里要江ほか共同代表)は二十七日、文部科学大臣と同審議会長あてに「教科書検定意見をただちに撤回せよ」と訴える抗議文を電報で送った。


記述の回復へ運動すすめる/県労連がコメント


 高校歴史教科書の検定問題で、教科用図書検定調査審議会が沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への軍強制の記述を認めなかったことに対し、県労働組合総連合の宮城常和議長は二十七日、「『検定意見の撤回』と『記述の回復』という沖縄県民の総意の実現に向けて県民とともに運動をすすめる決意である」などとするコメントを発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712271700_02.html

 

2007年12月28日(金) 朝刊 1面

「軍強制」再三差し戻し/教科書検定申請

執筆者ら「不当」と批判

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述に関する教科書検定の訂正申請をめぐり、文部科学省が「日本軍の強制」に関する記述などについて複数回、教科書会社に差し戻し、書き換えを求めていたことが二十七日、分かった。

 九月二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の記述では、「(主催者発表の)十一万人については異説や疑問の声も出ている」として、別の書き方を打診したという。差し戻し後、記述を書き換えた教科書会社の編集部長らの説明を受けた執筆者が都内で会見し、明らかにした。執筆者らは「文科省が不当な修正を強要した」と批判した。

 執筆者によると、十一月一―九日にかけ各社が訂正申請した後、文科省の教科書調査官と各社の編集部部長、役員らが記述を調整。執筆者に問い合わせるなどした後、最終的に社の判断として記述を書き換えた。

 実教出版の執筆者・石山久男さんによると、当初訂正した「日本軍は…集団自害と殺しあいを強制した」との記述について調査官の指摘があり、「日本軍が…集団自害と殺しあいを誘導し、強制した」と再申請した。

 しかし、この記述も認められず、同社はいったん申請の取り下げを検討した。その後、調査官が「(申請の)不承認はあり得ない」として再々申請を強く求めたため、「日本軍」の主語を削除した。

 東京書籍の執筆者・坂本昇さんは、体験者の証言を掲載した「囲み」で、「集団自決」について「軍から命令が出たとの知らせがあり」との記述を加えて申請したが、差し戻された。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712281300_01.html

 

2007年12月28日(金) 朝刊 25面

「強制」削除市民怒り/運動の継続誓う

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は二十七日、教科書会社からの訂正申請に、「軍強制」を示す記述を認めなかった文部科学省に抗議する緊急集会を那覇市の県民広場で開いた。約七百人(主催者発表)が参加し、「軍強制」の記述復活と検定意見の撤回などを求めた。

 同実行委の大浜敏夫共同代表は「教科用図書検定審議会は『(日本軍)に強制、誘導された集団自決』は駄目で『追い込まれた』という記述なら良いという基準を設けた。絶対に許すことはできない」と語気を強めた。

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史琉球大学准教授は「文科省は教科書会社が申請した『日本軍が強制した』との訂正記述を書き直させ、二重に検定で事実を歪めた」と指摘。「教科書執筆者たちは『訂正申請は毎年できる。強制が認められるまで何度でも申請する』という決意だ。私たちも検定意見撤回まで共に頑張ろう」と呼び掛けた。

 参加者からは九月二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員会に運動存続を求める声が相次いだ。

 高校教員の新垣真理さん(54)=那覇市=は「実行委を中心にもう一度、沖縄の声を示すべきだ。せっかく声を上げた『集団自決』体験者らの証言を、後世に伝える方法も考えてほしい」と訴えた。

 無職の照喜名朝寿さん(70)=同市=は「『軍強制』を認めないことがうそで、歴史歪曲だ。実行委は解散せず、今まで通りに検定意見撤回まで活動を続けてほしい」と期待する。

 看護師の知花喬さん(38)=同市=も「国の方針で歴史の事実をすり替えるのは、やっぱりおかしい。九月の県民大会では、県民の総意として検定意見の撤回を求める声が出た。『軍強制』の記述回復も大いに期待していたのに」と納得いかない様子だった。


実行委解散を困難視

玉寄哲永副委員長


 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は二十七日、那覇市の県民広場で開かれた抗議集会に参加し、同実行委の二十八日での解散について「なかなかそうならないのでは」と述べ、早期の解散は難しいとの認識を示した。

 玉寄副委員長は抗議集会で「文科省の対応には不満が残る。九月二十九日の県民大会で決議された検定意見撤回、記述回復を含め、政府に要求した四項目のすべてが実現が中途だ」と指摘。「二十八日の実行委でどのような反応があるのか、解散になるのかは不透明だ」と話した。その後、記者団の取材に「実行委の中には、文科省の対応に厳しい意見も多く、簡単に解散するとはならないのでは」との見通しを示した。


都内でも抗議の声


 教科書検定審議会の結論を受け、教育関係の市民団体などが二十七日、東京都内で集会を開催、記者会見で参加者は「再び歴史の真実を歪曲したことに強く抗議する」と訴え、検定意見の撤回と記述の回復をあらためて求めた。

 教科書執筆者の一人で歴史教育者協議会の石山久男委員長は「まったくのゼロ回答。沖縄県民の怒りを無視し、沖縄戦研究をも否定した」とした上で「検定意見の撤回や制度の抜本的改善が実現するまで戦い続ける」と宣言した。

 九月の沖縄県民大会の実行委員らが一定の評価をしていることについて、高嶋伸欣琉球大教授は「一緒に運動している人は『首相らが謝罪するまでケリがつかない』という点で一致している」と述べた。

 集会では、大阪市の社会科教諭(46)から「小手先の修正で子どもをごまかすのはやめてほしい」などの意見が出た。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200712281300_02.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年12月28日朝刊)

[教科書検定審報告(下)]

幾つもの問いが残った


県民大会が示したもの


 教科書検定をめぐる九月二十九日の県民大会で、心に残る印象深い場面があった。読谷高校の津嘉山拡大君と照屋奈津美さんが高校生を代表して演壇に立ち、検定意見に疑問を投げ掛けた時のことである。

 「沖縄戦を体験したおじぃおばぁたちが嘘をついていると言いたいのでしょうか」

 「私たちは真実を学びたい。そして、次の世代の子どもたちに真実を伝えたいのです」

 タオルを握り締め何度もうなずきながら話を聞いているおばぁ。小さい体を丸めて目頭を押さえるおばぁ。そういう姿を壇上から見て、胸が熱くなった、と津嘉山君は語っている。

 会場には親子連れや家族連れが目立った。小さな子どもが大会の意味を分かるわけではないが、大会に参加した記憶は残る。大きくなって、その大会がどういう大会であったかを自ら学び、自分なりに解釈する。これが追体験だ。そういう仕方でおじぃおばぁの戦争の記憶が子や孫の世代に継承されてきたのだと思う。

 家庭の中で沖縄戦の話になった途端、おじぃおばぁの表情が曇り、口を閉ざすことがある。実はその沈黙に触れることが沖縄戦の継承になっているのではないか。沈黙はどのような言葉よりも雄弁に、抱えている問題の真実を照らし出す。

 沖縄社会は、そのようにして戦争体験を戦後世代に語り継いできた。

 六十年を超える戦後の時間の堆積の中で継承されてきたものは、変化することはあっても簡単には崩れない。それを示したのが今回の沖縄側の取り組みだった。県民大会になぜ、あれほど多くの人たちが集まったのか。この問いをないがしろにせず、深く考え抜くことが大切だ。

 「集団自決(強制集団死)」に関する教科書の記述が一部復活したからといって、これで終わり、というわけにはいかない。検定意見が撤回されていない以上、同じ問題が再び繰り返される恐れがあるし、何よりも沖縄にとって大きな課題は、これから先、沖縄戦をどのように継承していくかという問題である。


土地の記憶・国民の記憶


 かつて沖縄に中屋幸吉という詩人がいた。米軍統治下に生きた中屋は、文学と社会運動に身を投じ、復帰前に若くして自ら死を選んだ。彼の残した言葉にこんな表現がある。

 「キミハ ソッチカラ オレヲナガメ オレハ コッチガワカラ キミタチヲ ミテイル」

 この表現の真意は分からない。本土の視線を見返す沖縄の視線のようにも感じられる。確かなことは、「キミ」と「オレ」の間に深い溝があることが自覚されていることだ。

 今回の教科書検定であらわになったのも、日本軍による強制を認めようとしない「キミ」と、史実がねじ曲げられることを憂慮する「オレ」の対立の構図だった。沖縄の戦後史は、今に至るまで、このような図式の繰り返しだった、ともいえる。

 沖縄戦における「集団自決」や「日本軍による住民殺害」の体験は、沖縄の人たちにとっては琴線に触れる「土地の記憶」であるが、「国民の記憶」と呼べるものにはなっていない。

 広島、長崎の被爆体験は「土地の記憶」であると同時に、「国民の記憶」にもなっている。だが、沖縄の地上戦体験は「土地の記憶」にはなっているが、「国民の記憶」になっているとは言い切れない。


体験の継承と普遍化を


 教科書検定のために提出した清水書院の申請図書は「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた」という表現だった。検定で「日本軍」「強制」という言葉にクレームがつき、「なかには集団自決に追い込まれた人々もいた」と書き改められた。

 訂正申請で「強制」という文言の復活を試みたが拒否され、結局、次のような長い文章に変わった。

 「…米軍の捕虜になって悲惨な目にあうよりは自決せよ、と教育や宣伝を受けてきた住民のなかには、日本軍の関与のもと、配布された手榴弾などを用いた集団自決に追い込まれた人々もいた」

 次代を担う学生に希望したいのは、今回の検定事例を丹念に、さまざまな角度から検証する機会をつくってほしいということである。大きな問いを引き受けることが戦争体験の継承と普遍化につながっていく。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20071228.html#no_1