沖縄タイムス 関連記事・社説(9月4日、5日)

2007年9月4日(火) 朝刊 1面

与党側「更新」再協議へ/泡瀬保安水域

 【沖縄】八日に契約期限が切れる米軍泡瀬通信施設の保安水域の共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長は三日、市長の政策や市政の懸案事項を協議する定例の与党連絡会(議員十二人)に対し「一年間の期限で更新したい」との意向を示し、理解を求めた。

 これに対し、与党側は「基本的には新たな基地の提供はできないという考えで一致しており、一年更新については各会派で持ち帰って検討する」とし、契約期限までに再度、与党内で協議することを確認した。

 連絡会で、東門市長は「基地に対するスタンスは変わっておらず、本来なら共同使用協定の契約更新も認められない。今回は契約期限が迫っており、行政手続き上の問題で一年だけに期限を区切って更新したい」との考えを強調した。

 一方、野党側は六日から始まる市議会九月定例会で、同契約の更新問題や事業に対する市長の結論の時期などを追及する構え。

 市議二十四人(与党六人、野党十八人)で組織する市東部海浜開発事業推進議員連盟の事務局長の普久原朝健議員は「更新は当然のこと。野党としては、まずは与党がどのように判断するか推移を見守りたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_03.html

 

2007年9月4日(火) 朝刊 2面

「普天間」移設 地元との妥協点模索/沖縄相帰任

 就任後初めて来県した岸田文雄沖縄担当相は三日午後、那覇市内のホテルで帰任会見し、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設をめぐり、名護市が沖合へ移動する修正案を求めていることについて「名護市の意見はしっかり受け止めなければいけない」と理解を示しつつも「さまざまな意見、立場があり、そういうものを受け止めて最後に結論を出さなくてはいけないが、どういった結論に持っていくかは関係者全員の努力の積み重ねだと思う」と述べ、政府と地元が納得できる着地点を探る考えを示した。

 また、同飛行場の移設協議会の開催時期については「これからさまざまなチャンネルを通じ、信頼関係を構築させていただく中で、しっかり調整し、できるだけ早い時期の開催で調整をしたい」と述べた。

 県や県議会などから要望が出された沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した歴史教科書検定の意見撤回への対応については「県民の思いの深さは強く感じている。所管でないのでコメントは控えるが、要望いただいたことは内閣として、今後の施策の中にしっかりと受け止め、反映させていくのは当然のこと」との認識を示した。

 沖縄振興計画の後期五年に向けた対応では「沖縄の特色や優位性、強みを生かした産業振興と合わせて雇用の安定、人材育成、社会資本についてもめりはりをつけて努力をしなくてはいけない」と沖縄振興の推進に意欲を見せた。岸田担当相は会見に先立ち、県市長会や町村会など市町村四団体の代表らと懇談し、同日夕、帰任した。


北部振興継続に前向き


 【恩納】岸田文雄沖縄担当相は三日午後、米軍普天間飛行場代替施設建設予定地の島袋吉和名護市長ら北部圏域十二市町村長と会談した。会談で島袋市長は「北部地域では雇用、生活環境に遅れがある。県土の均衡ある発展のためにも、北部振興事業の予算が確実に確保できるよう、特段の支援をお願いしたい」と述べ、凍結されている北部振興事業の継続を強く求めた。

 岸田担当相は「県土の均衡ある発展のためにも、北部の振興は重要な課題だと認識している。二〇〇八年度の概算要求にも盛り込まれており、議論の中で関係者の協力と理解の下にしっかりと予算獲得に向けて努力していきたい」と前向きな姿勢を示した。

 会談後、岸田担当相は「北部圏域の発展、振興という点が今回のメーンテーマだったので、(基地問題については)具体的なやりとりはなかった」と語った。

 北部市町村会(会長・儀武剛金武町長)は、北部市町村の懸案事項として、北部振興事業への支援継続や地域高規格道路の整備など九項目の要請書を岸田担当相に手渡した。岸田担当相は同日午前、沖縄科学技術大学院大学の設立を推進する独立行政法人・沖縄科学技術研究基盤整備機構の発足二周年記念式典に出席した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_04.html

 

2007年9月4日(火) 朝刊 2面

高村防衛相再び「今の案が最高」/都内で講演

 【東京】高村正彦防衛相は三日、都内で講演し、米軍普天間飛行場の代替施設(V字案)について「地元から(沖合展開を)要望されてアメリカと合意した案。工事のやりやすさや環境への影響など、いろいろな観点から考えた非常にバランスの取れた案だ」と述べ、県や名護市が求めるV字形滑走路の沖合移動をあらためて困難視した。

 高村氏は、「環境影響評価(アセスメント)の結果などを見て、こういうふうに動かした方が環境上いいというのが出てくると、またいろいろあるかもしれない」と述べ、県に提出したV字案を前提としたアセスの範囲内で、滑走路の位置が変更される可能性はあるとの認識を示した。

 その上で「(普天間移設は)ただでさえ遅れている。(沖合移動の案で)環境評価をまたやり直さないといけないようなことは絶対にない」と述べ、V字案を前提としたアセスの受理を「保留」し、沖合移動に固執する県を強くけん制した。

 高村氏は仲井真弘多知事が八月三十一日の会談で「今のままでは駄目だ。少し動かして受け入れるというのが自分の選挙公約。私の公約を知った上で今の与党は応援してくれた」と沖合移動や同飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態」の実現を強く求めたことも明らかにした。

 これに対して高村氏は「私たちからすれば今の案が最高で、地元の名護市長とか隣の町や村の方とかの要望を聞いて(V字案を)つくった。県知事からすれば県知事の言い分があるが、私たちは今の案が合理的だと思っている」と理解を求めたという。


増田次官「理解得る」/就任会見


 【東京】防衛省の増田好平事務次官は三日、就任後初めての記者会見に臨んだ。米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブへの移設について「日米間の合意に従って、地元にもよく説明して理解を得る」と従来の政府見解を踏襲し、県や名護市が求めているV字形滑走路の沖合移動を暗に否定した。

 在任期間が四年を超えた守屋武昌前事務次官の後任を務めることに「一言で言えば若干戸惑いを覚えている。『やっぱり若返ったら、駄目だったね』と言われないように、皆でよく相談しながら一生懸命やっていきたい」と新体制での抱負を語った。

 普天間移設問題についても質問に答える前に、「沖縄のこの問題についてこれまでの立場で逐一フォローしたわけではない」と断りを入れるなど、慎重な姿勢を崩さなかった。

 一方、会見に先立って守屋前事務次官の離任式が行われ、「在任中、最も印象に残っていること」に在日米軍再編を挙げた守屋氏。これに対し増田氏は送辞で普天間移設問題を挙げ、「揺るぎない信念と忍耐力を持って守屋事務次官は事務方の長としてさまざまな方針を打ち立て、米側と粘り強く交渉を行い、V字移設案で米側と合意を見ることができた」と守屋氏の手腕を評価。

 その上で「守屋事務次官が心血を注がれた米軍再編・基地問題について、日本の防衛、そして何よりも日本国民のために、職員一同精いっぱい努力していきたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041300_05.html

 

2007年9月4日(火) 夕刊 4面

町村議長会も決議/検定撤回

 県町村議会議長会(会長・神谷信吉八重瀬町議会議長)は三日の定例理事会で、文部科学省の高校歴史教科書検定で沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の日本軍関与の記述が削除・修正された問題に対し、検定意見の撤回を求める要望決議案を全会一致で可決した。

 九月二十九日に宜野湾市の宜野湾海浜公園で開かれる県民大会に三十町村の全議員三百七十四人と議会事務局職員の参加や住民に参加を呼び掛けることも確認した。

 決議は、県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議長会の検定意見撤回を求める要求に対し、文部科学省が「教科用図書検定調査審議会が決定することで理解していただきたい」との回答に終始していると批判。検定撤回と「集団自決」に関する記述回復を求めている。

 今回の検定を(1)あらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で審議会に諮問している(2)審議会への諮問案のとりまとめで係争中の裁判を理由に一方の当事者のみの主張を取り上げている―などとし「文科省の回答は到底容認できない」と糾弾している。決議は、衆参両院議長、首相、文科相、沖縄担当相に郵送する。


     ◇     ◇     ◇     

名護市議会 全員参加/9月定例会で決議案提案


 【名護】名護市議会(島袋権勇議長)は四日午前の議会運営委員会(吉元義彦委員長)で、二十九日に宜野湾海浜公園で開催される「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への全議員の参加を確認した。六日の九月定例議会冒頭で決議案が提案され、全会一致で可決される見通し。

 また、同市と友好都市などを結ぶ北海道滝川市、岩手県八幡平市、大阪府枚方市の議会に対して、検定意見の撤回の決議を要請することも確認した。

 島袋議長は「大戦を経験した沖縄の特殊事情をくみ取ってもらわないと困る。教科書から『集団自決(強制集団死)』の事実が削除されるようなことがあってはならない」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709041700_03.html

 

2007年9月5日(水) 朝刊 2面

地元理解に意欲示す/沖縄防衛局長、知事を表敬

 沖縄防衛局の鎌田昭良局長が四日、着任あいさつで県庁に仲井真弘多知事を訪ね、地元の理解に努める考えを示した。米軍普天間飛行場移設問題など、具体的な取り組みについては言及しなかった。鎌田局長は初の沖縄勤務。「これまで(沖縄に)かかわったことはなかったが、これから勉強したい」と強調した。

 仲井真知事は「沖縄防衛局とは、日ごろから仕事の上でしょっちゅう接触するので、よろしくお願いしたい」と述べた。

 面談後、仲井真知事は「安倍晋三首相も、地元の意見をよくくみ取って行政をやっていくべきだと言っているから、その精神に立ってやってもらえるのではないか」と期待感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709051300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年9月5日朝刊)

[米朝作業部会]

政府も非核化の後押しを

 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の米朝関係作業部会がジュネーブで開かれ、核放棄へ向けた「次の段階」措置を年内に完了することで合意した。

 六カ国協議では、北朝鮮の核計画の完全な申告と核施設の無力化を「次の段階」措置として設定している。

 中国・瀋陽で行われた朝鮮半島非核化作業部会で、北朝鮮は無能力化する核施設について、寧辺の実験用黒鉛減速炉と放射化学研究所(再処理施設)、核燃料加工施設の三カ所を挙げ、年内完了は困難との認識を示した。

 それだけに核施設の無能力化の完了時期を初めて区切った意義は小さくはない。高濃縮ウランによる核開発計画など難しい問題が残る中で、米朝の駆け引きが本格化したとみることもできる。楽観は禁物だが、非核化の次のステップへ向けた動きと受け止めたい。

 六カ国協議は二月に合意事項をまとめた。「初期段階措置」として、寧辺の核施設の活動停止・封印と国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れた見返りとして、北朝鮮に重油五万トン相当のエネルギー支援が行われた。

 このため「次の段階」をどのようにして具体化していくかが焦点だった。次回六カ国協議では年内完了という土台を基に本格協議が行われる。

 北朝鮮は米朝国交正常化へ向けてテロ国家指定解除を強く求めてきた。今回の協議後、朝鮮中央通信は米国が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除し、制裁についても解除するなどの措置を取ることになったと報じている。

 これに対し、ヒル国務次官補は「米国は指定解除していない。解除するかどうかは今後の北朝鮮の非核化進展にかかっている」と否定している。

 北朝鮮の核の完全放棄という目標達成は厳しく、交渉が長い道のりになるのは確実。「次の段階」の具体化へ向けて目の前には難題が山積している。

 一方、政府は日朝国交正常化以前に拉致問題解決が先決との基本姿勢を繰り返し強調してきたが、今後、関係正常化を視野に米朝二国間協議が日本の頭越しに進展する可能性も出てきた。

 日朝国交正常化作業部会が五日から再開されるが、政府は拉致問題に加え非核化へ向けた取り組みも後押しし、関係各国と協調していくべきだ。

 拉致問題が重要な課題であることに変わりはない。だがそれを前提条件にするだけでは北朝鮮に足元を見られ、日朝交渉は進展せずに、逆に米朝交渉を加速させる事態を招きかねない。

 政府は、拉致問題の解決と、朝鮮半島の非核化、日朝国交正常化を同時に達成していくような包括的枠組みを構築する必要があるのではないか。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070905.html#no_1

 

2007年9月5日(水) 夕刊 5面

未明離陸 嘉手納議会が抗議

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が八月二十八日未明に同基地を離陸した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は五日午前に開会した九月定例会の冒頭、未明離陸の全面中止と騒音防止協定の順守などを求めた抗議決議、意見書をそれぞれ全会一致で可決した。首相、防衛相、同基地司令官、沖縄防衛局長、外務省沖縄大使などに送付する。

 未明離陸が旧盆明けに強行されたことについて「米軍の無神経さ、傍若無人な態度に激しい怒りを禁じ得ない」とし、「我慢の限界だ」と訴えている。

 うるま市の県立沖縄高等養護学校と前原高校の敷地内に米軍車両が侵入した問題についても真相究明と再発防止、兵員の綱紀粛正、教育の徹底を求める抗議決議、意見書も全会一致で可決した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709051700_04.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(9月1日、2日、3日)

2007年9月1日(土) 朝刊 1面

抗議署名44万人突破/14日に文科省提出

 文部科学省の高校歴史教科書検定で「集団自決(強制集団死)」の日本軍関与の記述が削除・修正された問題で、「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会に寄せられた検定撤回を求める署名が三十一日、四十四万二千二百七十三人分に達した。「歴史の事実を曲げるのは許せない」など、署名とともに同省の対応への抗議も寄せられた。同実行委は「ここまで支持が広がったのだから、不退転の決意で撤回を求める」としている。

 実行委は三十一日で集計を終え、集まった署名を九月十四日にも文科省に提出する予定。

 署名は四月ごろから集められ、県内外の個人、団体から郵送などで毎日、署名簿が届けられた。六月九日の県民大会後、同実行委が決議文とともに同十五日に文科省へ提出した署名は九万二千三百六十八人分。その後、平和の礎に刻まれた戦没者と同じ二十四万六百九人を目標に署名活動を継続、平和フォーラム、日教組など全国的な組織の協力もあり、八月三十一日には、目標を大きく上回る署名が集まった。九月十四日には、東京都内で「沖縄戦の歴史歪曲を許さない全国集会」が開かれる。(嘉数よしの)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709011300_04.html

 

2007年9月1日(土) 朝刊 31面

保革超えた政治闘争必要/佐藤優氏、那覇で講演

 復帰三十五周年記念フォーラム「沖縄の現状と展望」(主催・同実行委)が三十一日、那覇市内のホテルで開かれた。起訴休職中の外務事務官の佐藤優氏が講演し、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」が削除された教科書検定問題について「とんでもないこと。軍が存在しなければあの悲劇はない。それ以上の議論は必要ない」と主張した。

 佐藤氏は、同問題への対応について「このままだと内地の無関心の中で消されていく」と指摘。その上で「正義闘争だけでは解決しない。保守、革新に関係のない政治闘争を加えることが沖縄には必要だ」と述べた。パネルディスカッションでは、「インサイドライン」編集長の歳川隆雄氏をコーディネーターに、県議会議員の國場幸之助氏と佐藤氏が討論。教科書検定問題で、国場氏は「文部科学省がこの問題を重んじていないことが問題」と指摘。佐藤氏は、沖縄戦の実態を記した『鉄の暴風』を例に「沖縄戦とはこういうものだ、とつくりあげたことに、それ以外の人たちがアンチを言うのは世界でも珍しい。歴史認識の問題というより、レベルの低い話だ」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709011300_05.html

 

2007年9月1日(土) 朝刊 2面

防衛相「現案が理想的」/知事と初会談 議論平行線

 【東京】仲井真弘多知事は三十一日、防衛省で高村正彦防衛相と会談し、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブへの移設について意見交換した。仲井真知事が普天間飛行場の「三年をめどにした閉鎖状態」の実現や、V字形滑走路の沖合移動などを求めたのに対し、高村氏は「現在の案は最も理想的。合理的理由がない限り変えられない」と沖合移動に否定的な見解を示し、議論は平行線をたどった。

 約十五分間の会談で仲井真知事は「米軍再編には全面的に賛成だ。一方で、自分の公約は自民・公明の本部も了承している。地元の思いをくんでほしい」と要望した。

 高村氏は「政府の立場をよく理解してもらう前提で、われわれとしても地元の声に耳を傾けていきたい」と述べ、あくまで日米合意案(V字案)に理解を求めた。同時に、「具体的には県や地元と話をしていきましょう」と今後も協議を重ねていく考えを示した。

 これに対し、仲井真知事も「大臣の話は承った。私は選挙のときから言っている事があるので、実務的なところは互いに詰めたい」と同調した。

 会談後、仲井真知事は記者団に対し、「(自らの公約は)当然変える理由はない」と強調。今後も引き続き実現を求める考えを示した。その上で、今年一月以来開かれていない普天間飛行場の移設に関する協議会の再開について「内容に意味があることなら喜んで沖縄から来るが、そうでない限り意味があるのか」と述べ、政府の前向きな姿勢がない限り参加しない考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709011300_06.html

 

琉球新報 社説

新嘉手納爆音訴訟 国の過小算定は許されない

 基地周辺の住民にとって米軍機の騒音による苦痛は、本来なら数字では表し難いものだろう。しかし、裁判で認定してもらうためには、苦痛を示す根拠として示さなければならない。それがW値(うるささ指数)である。重く扱われなければならないはずだが、国は過小に算定していた。30日開かれた福岡高裁那覇支部での控訴審口頭弁論の国側主張書面で明らかになった。

 軍事空港周辺での騒音を正確に示すため防衛施設庁(防衛省に統合)はW値の算定方式を定めている。環境省の算定方式を基本にして、ジェット機の着陸の場合は、2デシベルを加算し、補正する方式だ。

 国はこの施設庁方式には従わなかった。民間空港のW値を算定するための環境省方式で算定した数値を「実勢騒音」として主張しているのだ。

 結果生じた県の測定値との差は読谷村で8・9ポイント(2000年)、うるま市石川で5・5ポイント(02年)である。さらに、年間騒音発生回数にも大きな差が出ている。

 補正しない理由は次の2点。まず(1)無人の自動監視である自動騒音測定の場合、ジェット機の着陸音と他の音との識別が事実上不可能である(2)現実の騒音は環境省方式によるW値になるところ、防衛施設庁方式は住民側に安全域を広めるために補正したものであって、補正しなくとも数値自体の信用性が否定されるものではない―と主張している。

 これに対して原告側は「識別することは十分に可能である。(システムが)正常に機能していないか、正しく設定されていない、もしくは機種別の周波数分析を最初から行っていないことを端的に示している」と批判している。

 結果として「(システムが)十分に機能しておらず、航空機騒音を十分に計測できていないことを自認しているに等しい」と指摘されても仕方ない。さらに、防衛施設庁が定めた補正方式にさえ従わない姿勢は、被害住民を軽視していると非難されよう。

 重大な点は、一審判決への影響である。一審で那覇地裁沖縄支部は「W値80、75以上の各区域における航空機騒音は減少しており、現状ではかなり低いと言わざるを得ない」と判断し、W値80以上85未満の区域の騒音被害を否定するという、全国の爆音訴訟でも初めての判断を示した。原告によると判決の「減少しており」という判断の根拠となったのは、国が過小算定したデータだという。

 一体、国は何を守ろうとしているのか。まず保護すべきは住民ではないのか。基地の重圧を受けている県民ならなおさらである。騒音被害の苦痛を、国は軽く受け止めているようにしか見えない。

(9/1 10:27)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26774-storytopic-11.html

 

2007年9月2日(日) 朝刊 1面

共同使用1年延長意向/沖縄市長、米軍へ伝達

「泡瀬」保安水域 8日期限切れ

 【沖縄】今月八日に期限切れを迎える米軍泡瀬通信施設の保安水域にかかる共同使用について、沖縄市の東門美津子市長が米軍側に一年間の期限で更新したいとの意向を伝えていたことが一日までに分かった。保安水域の共同使用は、中城湾港泡瀬沖合の埋め立て事業の工事を進めるためには必須の条件であることから、事業中止を求める市民団体などは「契約更新は事業推進に道を開くものだ」と反発しており、東門市長は難しい対応を迫られそうだ。三日には与党市議や関係者を集め、同問題に対する市長の意向を説明するとともに協議する方針だ。(吉川毅)

 同施設を取り巻く沖合五百メートルの範囲が米軍への提供水域で、一九九九年まで同施設の運用確保を図るため日米地位協定に基づき米軍が排他的に使用してきた。

 沖縄市は当初、水域の一部返還要請をしていたが、同年九月に「埋め立て工事を円滑に進め、事業の早期実現のために共同使用が必要だ」として「泡瀬通信施設における沖縄市による在日米軍施設・区域の共同使用に係る協定書」を締結した。

 これまで五年間、三年間の契約で二回更新した。東門市長が示した一年期限の更新について、米軍からの回答はまだないという。

 東門市長は「同事業の是非についてまだ結論が出ない中、行政手続き上の期限が迫り対応に悩んでいるのは事実。一年の短期契約の更新なら、どんな結論を出しても影響はない。しかし米軍が長期契約を望むなら更新しない可能性もある」と説明。さらに「基地撤去を求める私の政治スタンスともかかわることから、最終的な更新の判断は関係者といろいろ話をしてから決める」と話した。

 協定書には埋め立て後の土地利用に対する米軍の承認権限など、使用条件となる計十八項目が示されている。

 泡瀬通信施設を取り巻く沖合五百メートルの範囲の保安水域では、米軍船舶の通信に支障を及ばさない限り、埋め立て事業の工事による浚渫または建設工事を制限しないことになっている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709021300_01.html

 

2007年9月2日(日) 朝刊 20面

「集団自決」方言で/8人証言 体験生々しく

 沖縄県立博物館・美術館の開館に先駆け、「『島クトゥバで語る戦世』と若手作家スライドショー」(主催・文化の杜共同企業体、琉球弧を記録する会)が一日、那覇市おもろまちの同博物館・美術館で開かれた。

 会場を埋めた約二百人が、沖縄戦体験者の証言ビデオや二十―三十代の写真家、芸術家が撮影した県内の風景、人物の写真などに見入った。

 テーマを「集団自決(強制集団死)」に絞った「島クトゥバで語る戦世」では、八人の証言者が字幕付きの方言で生々しく戦争体験を語り、会場の共感を誘った。

 続いて上映されたスライドショーでは、県内外で作品を発表している若手作家五人が、モノクロ写真やカラー映像などで沖縄の風景や人物、祭事などを紹介。音楽や風の音、虫の声を同時に流すなど、音響効果も合わせて観客を引きつけた。

 那覇市の大学院生、山城彰子さん(23)は「私たちは、その土地の言葉や記憶にもっと敏感にならなければいけない。言葉の大切さを再確認しました」と感じ入っていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709021300_08.html

 

琉球新報 社説

日中防衛相会談 さらなる信頼醸成に期待

 高村正彦防衛相と中国の曹剛川国防相が30日に会談、海上自衛隊と中国海軍の艦船相互訪問を行うことで合意した。今年11月から12月の間に、中国艦船が初めて日本を訪問する。また、防衛当局間のホットライン創設に向けて作業グループを設置することも決めた。さらに高村氏が来年にも訪中することも確認。これまで停滞していた防衛交流が実現する。

 今年は日中国交回復35周年に当たる。この間、経済交流は年々、拡大を続け、今や双方にとって無くてはならない存在となっている。ところが、政治的な側面をみると歴史認識や靖国神社参拝問題などで両国間がぎくしゃくしてきた

のも事実だ。互いの挑発行為を避けて、偶発的な不測の事態を抑止するためにも、今回の交流結果は意義あるものと受け止められている。「軍拡」につながらないよう留意しながら、さらに意思疎通を深め、より一層の信頼醸成に努めてほしい。

 中国国防相の訪日は、1998年2月の遅浩田氏以来、9年半ぶり。日中防衛相会談は2003年9月に当時の石破茂防衛庁長官が訪中して曹国防相と会談して以来4年ぶりとなる。実は、両国間の艦船相互訪問は2000年秋、いったんは合意していた。ところが、李登輝前台湾総統訪日や小泉純一郎前首相の靖国参拝に中国側が強く反発。両国関係が悪化し、暗礁に乗り上げていた経緯がある。

 転機は昨年秋の安倍晋三首相の訪中だ。首脳会談では、日中を「戦略的互恵関係」と規定し、安全保障についても「日中安全保障対話や防衛交流を通じて、安全保障分野における相互信頼を増進する」(日中共同プレス発表)ことで合意した。曹国防相の訪日も、この合意を受けて実現した。中国中央軍事委員会主席である胡錦濤国家主席が主導したとされる。

 ただ、今回の交流で双方の不信感が一掃されたとは言い難い。例えば、国際社会から「不透明だ」と批判されている中国の国防費、国防政策について、曹国防相の説明では不十分だ。中国の国防費は19年連続で前年比二けたの伸び率で推移している。その内訳など軍事政策も含めて、無用の疑念を一掃するためにも、中国側の誠意ある説明が求められる。

 一方、日本側も日米の間で進められているミサイル防衛(MD)や米軍再編などについて、警戒感を強めている中国側の懸念に応えるべきだろう。

 日中間には、その他にも尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権問題や、東シナ海の天然ガス田開発をめぐり、解決すべき多くの課題を抱えている。折しも、今年は日中戦争の端緒となった盧溝橋事件から70年。歴史を教訓として、未来志向の関係を築くべきだ。

(9/2 9:39)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26791-storytopic-11.html

 

2007年9月3日(月) 朝刊 21面

1年限定案 泡瀬に波紋/米軍水域共同使用 市長意向へ賛否

与党内も対応一致せず

 【沖縄】沖縄市と米軍が締結している米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定について、沖縄市の東門美津子市長が一年間の期限で更新する意向を米軍に伝えていたことが波紋を広げている。中城湾港泡瀬沖合埋め立て事業を進める上で必須条件となる同使用協定は八日に契約期限切れを迎える。同事業の是非について結論を出していない東門市長は、いずれの結論を出した場合にも影響が出ないようにと、一年限りの更新にしたい考えだが、米軍側が応じなければ更新しない可能性もあり、その時点で今後予定されている第II区域の工事ができなくなることも考えられる。反対、推進それぞれの市民団体や関係者は、事業の在り方を左右する東門市長の出方を注視している。(吉川毅)

 事業に反対する泡瀬干潟を守る連絡会(小橋川共男、漆谷克秀共同代表)は、「契約更新は事業推進に道を開くものだ」として八月三十日に東門市長に更新の拒否を要請していた。

 「期限が何年だろうと更新は駄目だ」。同会の前川盛治事務局長は声を荒らげ「更新するか否かは事業の根本的な問題だ。基地と環境に大きく関係する問題を密室で決めず、情報をオープンにして市民とともに決めるべきだ」と指摘する。

 推進団体プライド泡瀬の當眞嗣蒲会長は「埋め立てがどんどん進む中、市長は悩んでいる暇はない」と強調。「更新は当然のこと。市民の夢をかなえてほしい。市長はイデオロギーを排除し、市民のトップとして決断をすべきだ」と話した。

 一方、東門市長は六日から始まる市議会九月定例会に向けた与党連絡会を三日に開き、同問題について説明する方針だ。推進と反対に割れる与党議員は、東門市長が期限一年で更新する意向に「まったく初耳だ」と驚く。

 反対派の与党議員は「更新の意向が事実であれば、市長の基地政策にかかわる公約違反だ。更新は、米軍のために海を埋め立てて土地を提供することにもつながる」と断固拒否の姿勢。

 沖縄市議全三十人中、計二十四人で組織する「市東部海浜開発事業推進議員連盟」に加わる与党議員は「更新しなければ、市長の事業に対する結論の幅が狭まる。市の将来を考えれば当然更新すべきであり、市長の意向も納得できる」と話した。

 

[ことば]

 保安水域共同使用協定 米軍泡瀬通信施設を取り巻く沖合500メートルの範囲の米軍提供水域について、市が「中城湾港泡瀬沖合の埋め立て事業を円滑に進めるため」に1999年に米軍と締結した。現在、第I区域を工事中で2012年までには埋め立て後のインフラ整備も完了する予定。保安水域にかかる第II区域はその後に工事を進める。保安水域にかかる土地利用は米軍の承認権限など、使用条件となる計18項目が示されている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709031300_01.html

 

琉球新報 社説

沖縄防衛局発足 地元の声を具申できるか

 防衛施設庁が9月1日付で防衛本省へ統合されたことに伴い、那覇防衛施設局も沖縄防衛局に改編された。本省直轄の「地方防衛局」となり、今後は防衛省・自衛隊の防衛行政全般について地方ブロックの役割を担うことになるが、新組織には単に国の施策を伝えるだけでなく、基地周辺自治体や住民の訴えに誠実に耳を傾けてもらいたい。

 その上で、状況を正しく本省に伝え、場合によっては「本省の施策、手法では地元が納得しない」旨の意見を具申するくらいの決意と覚悟が欲しい。また、そうでないと本省と地元のパイプ役は果たせない。本省も、そのことを十分に理解し「住民を守らずして国防もない」との原点に立ち返って基地問題に対応すべきだ。

 防衛施設庁は2006年1月に幹部らが逮捕された官製談合事件を受けて廃止が決まり、45年の歴史に幕を下ろした。閉庁式で北原巌男長官は「知らない間に組織が病んでいた」と話したが、談合体質は以前から指摘されており「知らなかった」では済まされない。病んだ組織はメスを入れて当然で、機能統合で監察の厳格化を図る姿勢は評価されよう。

 問題は、地方の施設局を統合することで本省主導が鮮明になり、地元との調整機能が後退しないかという点だ。沖縄に関して言えば、沖縄対策室に代わって沖縄調整官を置くが、どれだけ地元の意向をくめるのか不透明である。

 沖縄防衛局に来春新設する自衛官ポストの防衛補佐官も役割がはっきりしない。将来的には内部職員にも自衛官を配置するとみられ、基地負担の軽減よりも軍事同盟が優先しないか懸念される。

 基地の重圧は深刻だ。米軍再編が地元の頭越しに行われたことに県民の不満が募っている。しかし高村正彦防衛相は、就任会見で普天間飛行場代替施設について「地元の意見は十分聞きつつ、できることならこの案(日米合意案)で説得したい」と述べた。その後、仲井真弘多知事との会談でも、修正に応じないことを強調した。

 調整は難航必至だが、北原長官は退任会見で那覇防衛施設局長の経験に触れ「文書だけでは分かりきれない基地の負担を、皮膚感覚で感じることができた」とも語った。この感覚こそが大事である。歴代の施設局長がその感覚を本省に具申していれば、違った展開があったかもしれない。

 かつて「基地と共存、共栄を」と発言した施設庁長官がいたが、これなども下からの情報不足で、県民感情を理解していなかった証しであろう。那覇市から嘉手納町に移転する沖縄防衛局には、本省の施策を「丁寧に説明する」だけでなく、地元の意向もくんで本省に具申する姿勢を望みたい。

(9/3 9:46)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26820-storytopic-11.html

 

2007年9月3日(月) 夕刊 1面

知事、検定撤回を要請/岸田沖縄相と会談

 就任後初めて来県した岸田文雄沖縄担当相は三日午前、県庁で仲井真弘多知事と会談した。仲井真知事は提出した要望書の中で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述を修正・削除した高校歴史教科書の検定問題について、検定意見の撤回を求めることを初めて盛り込んだ。だが、岸田担当相は会談で特に言及しなかった。

 岸田担当相は二日の記者団の質問に対し、米軍普天間飛行場の移設協議会の早期開催を知事に求める考えを表明していたが、会談では触れなかった。岸田担当相は会談後、「この日は基地問題全般についての話で、個別のことは取り上げなかった」と語った。

 移設協の早期開催について、仲井真知事は「県や地元の意見や要求を踏まえた上で開くなら意味があるが、それぞれの意見を言うだけで擦れ違うのなら開く意味がない」と指摘。地元要望を最大限尊重することが早期開催の前提条件との認識をあらためて示した。

 会談には、安里カツ子副知事や県議会の具志孝助副議長らも出席した。

 岸田担当相は知事との会談前に、県経済団体会議(議長・儀間紀善県商工会議所連合会会長)メンバーと懇談。「リーディング産業であるIT産業の集積・高度化を目指すとともに、観光振興、農林水産業の活性化に向けて施策を進める」と述べ、雇用創出、人材育成を含め自立型社会資本の充実を図る方針を伝えた。

 経済界は、那覇空港拡張、沖縄IT津梁パーク実現など十四項目を要請したほか、経済特区制度の緩和措置や、米軍再編に関連して建設業者のグアム進出への配慮などを求めた。岸田担当相は「結果を出せるよう努力したい」と理解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709031700_01.html

 

2007年9月3日(月) 夕刊 1面

泡瀬保安水域 契約更新 与党に説明/午後に沖縄市長

 【沖縄】八日に期限切れとなる米軍泡瀬通信施設の保安水域共同使用協定について、米軍側に一年間の期限で更新したい意向を伝えた沖縄市の東門美津子市長は三日午後、定例の与党連絡会で、与党議員十二人に経緯を説明する。

 契約を更新するか否かで、中城湾港泡瀬沖合の埋め立て事業に大きく影響する可能性がある。与党議員十二人は、同事業の推進と反対に半分で割れており、市長は苦しい対応を迫られそうだ。

 反対派の与党議員は「市長が一年期限で更新する意向だとは、与党は誰も知らなかった。これが一番の問題だ。期限が一年にしろ契約には反対だが、まずは東門市長の真意を聞くとともに、一九九九年の保守市政で契約した経緯についても説明を求める」と話した。

 一方、推進派の与党議員は「期限が迫る中で、市長は苦渋の期限設定を決めたのだと思う。市長の説明やほかの議員の意見を聞いて、与党がどうサポートできるかを考えたい」と話した。

 六日からは市議会九月定例会が始まる。契約更新問題に絡め、同事業の是非について東門市長が「遅くとも年内に結論を出す」との姿勢に対し、野党議員は厳しく追及する構えだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709031700_02.html

 

2007年9月3日(月) 夕刊 5面

北谷議会が抗議決議/嘉手納未明離陸

 【北谷】米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など計五機が八月二十八日未明に同基地を離陸した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は三日午前、臨時議会を開き、未明離陸の回避などを求める抗議決議、意見書の両案を全会一致で可決した。同基地司令官、首相、防衛相などに対し文書を送付する予定。今回の未明離陸に抗議する決議は同議会が県内で初めて。沖縄市議会、嘉手納町議会でも九月定例会へ抗議決議、意見書の両案が提案される。

 同議会は米軍が未明離陸を今月七日に予定していた際、離陸計画の即時中止を求める意見書を臨時会で可決していた。

 抗議決議では、議会の意見書や、同基地周辺の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の反対を無視し、離陸を強行した米軍を「再三の中止要請や抗議など、住民の声を無視する配慮に欠けた基地運用である」と批判。

 また、同基地に一時配備されていたF22戦闘機が米本国へ帰還する際、日中に離陸したことを指摘し「深夜未明の離陸は回避可能であり、いかなる理由でも容認できない」と強く抗議している。

 両案は(1)深夜未明の離陸の即時中止(2)F15戦闘機の即時撤去(3)騒音防止協定の遵守(4)騒音被害の低減―を求めている。

 また、今年一月から同基地北側滑走路の改修工事に伴い南側滑走路に離着陸が集中し、北谷町内の騒音が激しくなっていることから、航空機の住宅地上空での低空飛行や旋回を禁止するよう求めている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709031700_03.html

 

2007年9月3日(月) 夕刊 5面

「沖縄防衛局」始動/那覇市で除幕式

 那覇防衛施設局が一日付で「沖縄防衛局」に改編されたのに伴う除幕式が三日午前、那覇市前島「とまりん」内の同局前で行われた。池部衛次長らが新名称の看板を除幕し、出席した職員は拍手で新体制の発足を祝った。

 除幕後、池部次長は「これまでは施設行政が中心だったが、これからは一回り大きく防衛行政にも取り組み、内局から直接指示を受けることになる」と説明。

 米軍普天間飛行場移設問題については「二〇一四年(の移設完了)に向けて頑張っていきたい」と、政府案で推進する姿勢をあらためて示した。

 防衛施設庁が一日付で廃止、防衛省に統合されたのに伴い、全国八カ所の防衛施設局、五カ所の装備本部地方支部は廃止・統合され、全国八カ所に地方協力局直轄の「地方防衛局」を配置。沖縄防衛局もその一つとして新たなスタートをきった。

 局長、次長の下に、総務部から独立した会計監査官を新設。施設部、事業部、建設部に代わって企画部、調達部、管理部が設置された。

 初代局長の鎌田昭良沖縄防衛局長は、三日夕に着任する予定だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709031700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月30日、31日)

2007年8月30日(木) 朝刊 1面

陸自一混、09年度旅団化/防衛省概算要求

 【東京】二〇〇四年に閣議決定された中期防衛力整備計画(〇五―〇九年度)に盛り込まれた陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の「旅団格上げ」が、〇九年度にも始まる見通しであることが二十九日分かった。防衛省は旅団化に向け、〇八年度予算の概算要求で司令部庁舎の建築費を計上。航空自衛隊那覇基地の旧型主力戦闘機F4部隊を、〇八年度中に茨城県の百里基地のF15部隊と入れ替える予算も盛り込み、同日、自民党本部で開かれた国防部会・安全保障調査会・基地対策特別委員会合同会議で了承された。

 第一混成団の旅団化や那覇基地のF15配備は、中国の台頭をにらんだ「西方シフト」の象徴的な動きといえる。

 新築する司令部庁舎は旅団の中枢機能を果たす。陸自関係者によると、〇九年度は、人員増強の実質的な予算を要求する方針だ。

 第一混成団は第十五旅団として「離島タイプの即応近代化旅団」に変容。島しょ侵攻への対応が重視される中、「離島タイプ」と位置付けられる国内唯一の旅団となる。

 一方、尖閣諸島など島しょ部への侵略や領空侵犯に備え、那覇の302飛行隊(F4約20機)と百里の204飛行隊(F15約20機)を交代。

 米軍再編最終報告で空自との共同使用が明記された、米軍嘉手納基地のF15部隊との相互運用を強化。国産のJ10やロシア製のSU30など、F15と同じ第四世代の戦闘機を急速な勢いで増加させる中国に対する抑止力を高める狙いもある。

 同省はさらにF15の戦闘能力を高めるため、三十二機分の近代化改修費用として、千百二十三億円を要求。防衛省の〇八年度予算の概算要求総額は四兆八千百七十二億円で本年度当初予算比0・7%増。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301300_01.html

 

2007年8月30日(木) 朝刊 26面

「集団自決」訴訟/出張法廷は非公開

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、旧日本軍の戦隊長らが岩波書店などに出版の差し止めなどを求めて大阪地裁で争われている訴訟で、司法記者会の加盟社など、那覇市に拠点を置く報道全十九社が、九月十日に那覇市で行われる所在尋問(出張法廷)を公開するよう要請していた件で、大阪地裁総務課は二十九日までに、法廷を非公開とする方針を示した。

 大阪地裁は、「所在尋問は憲法が公開を要求している弁論ではない」とした上で、「所在尋問は次の弁論で証拠として上程されるため、公開要請は担保される」などとしている。

 同日の所在尋問は福岡高裁那覇支部の法廷で、渡嘉敷島で「集団自決」を体験した金城重明さんが証言する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301300_06.html

 

2007年8月30日(木) 朝刊 27面

歪んだ戦局 刻々と/「戦中の新聞展」始まる

 沖縄戦の様子を伝える戦時中の新聞を集めた「新聞展 戦中の記事でふりかえる沖縄戦」(沖縄歴史教育研究会主催)が二十九日、那覇市寄宮の県立図書館で始まった。文部科学省の教科書検定が問題になる中、「権力により、沖縄戦の事実が歪めて伝えられたことを知ってほしい」と企画した。九月三日まで。

 新聞展では、同研究会メンバーの仲村顕さん(34)が集めた戦時中の新聞や、県立図書館が所蔵しているものの中から沖縄戦の実相が誤って伝えられた様子がよく分かるものなど十二点を選び展示している。

 一九四五年三月二十八日の毎日新聞では、米軍の慶良間諸島上陸について「所存の我部隊は之を邀撃すると共に我航空部隊は果敢なる攻撃を続行中」と報じ、「十艦百五十余機屠る」と事実と異なる大本営発表がそのまま伝えられた。

 同七月三十日の福島民報は「重傷者は集団自決」の見出しとともに、沖縄戦で重傷を負った兵士数人が戦闘の足手まといにならないよう、自ら手榴弾を使って自決したと美談調に報じた。

 終戦した八月十五日のウルマ新報など、貴重な紙面も並べられている。仲村さんは「権力が事実を誇張したり、歪めたりして情報操作した当時と、いまの状況が重なって見える。そのことを多くの人に感じ取ってもらえれば」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301300_07.html

 

2007年8月30日(木) 朝刊 27面

市議長会も検定撤回決議

 高校歴史教科書の検定で沖縄戦「集団自決」(強制集団死)の日本軍関与の記述が削除・修正された問題をめぐり、県市議会議長会(会長・安慶田光男那覇市議会議長)は二十九日、那覇市内で開いた総会で、検定意見の撤回を求める決議案を全会一致で可決した。また、構成十一市議会がそれぞれの姉妹都市の議会に同様の決議を呼び掛けることを申し合わせた。

 決議は「『集団自決』が日本軍による命令・強制・誘導等なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘。十月の九州市議会議長会理事会に、議案として提出することを決めた。

 また、県民大会の実行委員会に同会が加わることも正式決定した。


全議員参加は合計8議会に


 市町村議会で「教科書検定意見撤回を求める県民大会」への全議員の参加を確認したのは二十九日現在で、那覇市や八重瀬町など八議会となった。さらに六議会が全議員参加の方向で、協議することにしている。


金武町議会も全議員参加へ

県民大会


 【金武】金武町議会(松田義政議長、十九人)は二十九日、全員協議会を開き、九月二十九日に宜野湾海浜公園で開催される「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に、全議員が参加することを決定した。

 松田議長は「町議会として検定意見撤回の意見書を全会一致で可決しており、議員全員で参加すべきだと判断した。歴史の検証は正しくなされるべきだ。多くの町民が参加できる態勢を整えたい」と話した。

 同町では、町遺族会の呼び掛けによる各種団体会議を来月五日に開き、より多くの町民が参加できる態勢づくりを進める考え。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301300_11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月30日朝刊)

[内閣支持率回復]

「安倍ノー」は変わらず

 安倍改造内閣の発足に伴い実施された共同通信社の全国緊急電話調査で、内閣支持率が40%台を回復した。三カ月以上にわたって下落が続き、調査の度に最低記録を更新していた支持率がここにきて上昇に転じたことは、新内閣に対する国民の期待の表れ―とみていいのだろうか。

 清新さには欠けるが、派閥の領袖や大臣経験者を並べた布陣には「重厚」「安定」という評価もあった。国民の関心が高い年金問題を所管する厚生労働大臣に知名度の高い舛添要一氏を抜てきしたが、公然と首相批判を繰り返した人物を入閣させたことも懐の深さをアピールした形となり、支持率押し上げの要因となった可能性がある。

 だが、「支持しない」が依然として45・5%の高水準を維持し、支持率を上回っている状況に変わりはない。

 識者に言わせれば、「底を打っているからこれ以上悪くなりようはない」(東大先端科学技術研究センター御厨貴教授)ところまで落ちていたのであり、「改造前に比べれば“ちょいマシ”内閣」(プロデューサー残間里江子さん)なのだから、発足直後の時点で支持率が上向くのは、ある意味、当然のことといえる。

 むしろ、改造内閣の先行きを暗示するものとして注目すべきは、内閣支持率が回復を見せた一方で、安倍晋三首相について「辞めるべきだ」が前回調査比1・8ポイント増の51・3%と過半数を占めたことだ。国民は、改造内閣の顔ぶれに一定の評価をしながらも安倍首相は辞めるべきだと考えているのである。国民の声は、明確な「安倍首相ノー」にほかならないのだ。

 安倍改造内閣について本紙は、安倍首相の続投そのものが最大のサプライズであり、内閣の不安要素は安倍首相その人だと書いてきた。国民も同様の不信、懸念を抱いていることがうかがえる。

 改造内閣の真価が問われるのは、本格論戦が始まる秋の臨時国会以降になるが、国民に支持されない首相に率いられた内閣の前途は、極めて厳しい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070830.html#no_2

 

琉球新報 社説

米軍再編特措法 地元の負担軽減どこへ

 日米両政府が合意した米軍再編計画の進展度合いに応じ、関係市町村に交付する再編交付金を、減額かゼロにできることなどを定めた米軍再編特別措置法(駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法)が29日施行された。

 再編交付金は沖縄側からすれば、基地負担の迷惑料である。基地負担を押し付けられた関係自治体に対しては、無条件で交付するのが筋である。

 しかし、米軍再編特措法はそうはなっていない。政府に従う自治体には交付金を与え、異を唱える自治体は冷遇する。露骨とも言える「アメとムチ」の法制化である。

 同法は基本理念として「駐留軍等の再編に対する幅広い国民の理解が得られるよう配慮されなければならない」と明記している。「アメとムチ」では、同法が本来目指すべき「幅広い国民の理解」を得られるはずはない。

 再編交付金を受けるには、防衛相から「再編関連特定周辺市町村」の指定を受ける必要がある。指定条件は「再編へ理解が示されている」ことである。国の言う「理解」とは、再編計画の「丸のみ」にほかならない。

 負担軽減を求める地元市町村の要求を再編交付金で封じ込める意図がありありである。

 普天間飛行場をキャンプ・シュワブ沿岸部を中心とした区域に移設する再編計画を、名護市は基本的に受け入れている。その上で、沖合に移動させることを求めていることに国は理解を示さず、名護市を再編交付金の対象とするとの国の方針は示されていない。

 久間章生元防衛相が交付対象になるとの考えを示していたのに対し、小池百合子前防衛相は判断を保留した。

 名護市が再編交付金対象自治体に該当するのは明らかだが、実際の対象にするかどうかは恣意(しい)的に運用される恐れがあることを、両氏の食い違いがはからずも証明したといえよう。

 米軍再編特措法施行に合わせて点数制の再編交付金の算定方法などを定めた省令も公布、施行された。航空機の「配備なし」はゼロ、「10機以上の増加」は2点、10機ごとの増加で1点ずつ加算される。10機に対して1点の設定が妥当かどうかも不透明である。

 海上保安庁は2008年度の概算要求で、米軍再編に伴うキャンプ・シュワブ沖での海上警備体制を強化するために、中城海上保安署を「中城海上保安部」に格上げする。

 国の姿勢からは、地元の意向よりも日米合意を最優先させることしか見えてこない。

 米軍再編の目的の1つは「地元の負担軽減」である。国の施策はそれと大きく懸け離れている。

(8/30 9:46)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26710-storytopic-11.html

 

2007年8月30日(木) 夕刊 5面

沖縄・嘉手納議会も抗議へ/未明離陸

 【沖縄】米軍F15戦闘機など計五機が未明に嘉手納基地を離陸した問題で、沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会(与那嶺克枝委員長)は三十日午前、抗議決議と意見書の両案を九月六日に開会する九月定例会本会議に提案することを決めた。全会一致で可決する見通し。

 抗議決議では「早朝の時間帯の離陸を回避した本国帰還は可能だ」として騒音防止協定の順守などを求めている。

 【嘉手納】米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など航空機計五機が二十八日未明に同基地を離陸した問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は二十九日、基地対策特別委員会(田仲康榮委員長)を開き、未明離陸の回避などを求める抗議決議、意見書案を九月五日開会予定の定例会に提出することを決めた。

 委員会では「深夜の爆音は住民の我慢の限度を超えている」など、再三にわたる地元自治体の反対を無視し、未明離陸を強行した米軍を批判する意見が多く上がった。

 抗議決議、意見書は首相、外相、同基地司令官らに郵送する。また、同基地司令官、外務省沖縄事務所などについては、抗議決議、意見書に対する見解の回答を求める。

 一方で、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)は同日、いかなる理由でも、未明離陸を全面的に回避するよう求めた抗議文書を同基地司令官に送付した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708301700_03.html

 

2007年8月31日(金) 朝刊 2面

「普天間」停滞 悔やむ/守屋次官離任会見

 【東京】退任が決まっている防衛省の守屋武昌事務次官は三十日、防衛省で最後の会見に臨んだ。米軍普天間飛行場の移設問題について「これは沖縄側の切なる叫びだった。それにもかかわらず(日米合意から)十数年たっても今のところに居続けている」と述べ、在任中に実現できなかった無念さをにじませた。

 守屋氏はSACO(日米特別行動委員会)や在日米軍再編など在沖米軍基地問題に深くかかわってきた。特に普天間飛行場の移設では、SACO合意した辺野古沖案が頓挫した経緯から、米軍再編で合意したV字案の実現に固執し、強行的な姿勢を貫いた。

 こうした経緯を踏まえ、「基地被害のない沖縄を目指したいとの思いで(当時の)橋本首相、梶山官房長官が取り組んだ。国防上、基地が必要ということとの調和をいかに図るかが基本だが、やはり、県民に大きな負担が残る形での基地のありようは変えてほしいというのが原点だ」と強調した。

 その上で、日米特別行動委員会(SACO)合意から十年以上経過してもなお実現していない現状に、「十年前の県民の皆さまの思い、そういうものを踏まえて、あらためて原点に返って考える必要があると考えている」と述べ、普天間移設への理解を求めた。守屋次官は三十一日付で退任する。


     ◇     ◇     ◇     

守屋氏、院政狙い?/常勤「顧問」就任へ


 【東京】守屋武昌事務次官が、退任後も顧問として防衛省に残ることが三十日、固まった。アドバイザー的な役割を担う官庁の顧問職は通常、非常勤だが、防衛省首脳によると守屋氏は常勤での採用を望み、高村正彦防衛相に申請したという。

 顧問に実質的な権限はない。しかし、在任期間が異例の四年を超え、「防衛省の天皇」と呼ばれるほど強い影響力を持つ守屋氏だけに、顧問に就けば防衛省内に影響力が残ることは必至だ。

 守屋氏に関しては「考えの近い人間ばかりを重用し、自分に背く官僚はことごとく排斥してきた」との批判も根強く、省内では「会社の社長が会長として居座るようなもの」(幹部)という冷ややかな声もある。

 一方で、別の幹部は「普天間代替施設の修正に固執する沖縄側をけん制できる」とも指摘する。

 米軍普天間飛行場移設問題で、V字形滑走路の沖合移動を求める県や名護市は、日米合意を一貫して譲らない守屋氏を快く思っていなかった。

 事務次官人事をめぐり、小池百合子前防衛相が移設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書を県に送付する代わりに、県や名護市の(守屋氏を退任させる)要望をのんだとの密約説が浮上した経緯もあるほどだ。

 県や名護市には守屋氏の事務次官退任で、沖縄側の主張が通りやすくなるとの期待感もあったが、顧問就任となれば沖合移動の要望が通らない状況は今後も続くことになる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311300_05.html

 

2007年8月31日(金) 朝刊 2面

「県民の声丁寧に聞く」/新沖縄相と知事初会談

 【東京】仲井真弘多知事は三十日、内閣府を訪ね、安倍改造内閣で沖縄担当相に就任した岸田文雄氏と初めて会談した。仲井真知事は沖縄振興への支援と、米軍再編で地元の意見を聞くよう要望。岸田沖縄相は、米軍再編について「日米合意が基本」との認識を示す一方、「県民の声を受け止め、丁寧に話を聞かせてほしい」と述べた。

 仲井真知事は「内閣で一番若く、行動力ある大臣と聞いている。百三十七万県民も期待している」と祝意を表明。沖縄振興では「復帰三十五年間、旧沖縄開発庁時代からの支援で観光が伸びるなど、いいところまで来た。今しばらく支援をいただきたい」と要望した。

 米軍再編については「兵士も減り、基地がかなり大きく返ってくる可能性があり、基本的には大賛成だが、進める過程で地元の意見や気持ちをくんでほしい」と求めた。

 仲井真知事は、首相官邸で与謝野馨官房長官と、岩城光秀、大野松茂両官房副長官とも面談した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311300_06.html

 

2007年8月31日(金) 朝刊 27面

与那原町で独自に実行委/検定撤回 県民大会

 【与那原】与那原町議会(又吉忍夫議長、十四人)は三十日、全員協議会で「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に向け、町当局(古堅國雄町長)と協力して町独自の実行委員会を組織、町民に参加を呼び掛けることを決めた。

 町内各種団体に働き掛け、週明けにも実行委員会の立ち上げに向けた準備会を開く方針。町議員の全員参加も了承した。

 県民大会が開かれる九月二十九日には町内で出発式を行い、検定意見撤回を求めるアピール文を読み上げる。会場のある宜野湾市まで町民の送迎車両の確保など、町が予算措置を検討する。

 全員協議会に同席した古堅町長は「議会が県民大会への全議員参加をいち早く表明しており、町としてもきちんと取り組みたい。県民大会を成功させるため、すべての立場を超えて町民に参加を呼び掛けたい」と話した。

 又吉議長は「平和発信は与那原から、との強い決意を示したい」と語った。

 町議会は、十七日の議会運営委員会で県民大会への全議員参加を確認していた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311300_07.html

 

2007年8月31日(金) 朝刊 27面

住民側、県調査否定に反論/新嘉手納爆音

 米軍嘉手納基地周辺の住民五千五百四十一人が、国に夜間・早朝の飛行の差し止めと損害賠償を求めている新嘉手納爆音訴訟控訴審の第七回口頭弁論が三十日、福岡高裁那覇支部(河辺義典裁判長)であった。住民側は、県が実施した騒音調査の証拠能力を否定した国側に反論。「(国側の主張は)健康被害に対する知識や統計の解析を誤認している」とし、客観的かつ科学的に適切な事実認定をするよう求めた。

 住民側は、原告居住地域の公民館で本人尋問と現場検証をするよう求めており、原告代表の意見陳述で又吉清喜さん(64)=うるま市川崎=は「地域の生の声を聞いてほしい」と語った。十月十八日に予定されている次回の弁論で、住民側が申請している専門家証人の採否が決まる見通し。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月31日朝刊)

[米軍再編法施行]

恣意的な運用をするな

 米軍再編推進法が二十九日施行されたのに伴い、防衛省は交付金の受給候補地四十市町村や、交付金の算定基準を盛り込んだ運用概要をまとめた。

 米軍再編では、普天間飛行場の代替施設(V字形案)について県と名護市が修正を求めているのに対し、政府は現段階では応じない構えで、双方の溝が深まっている。

 膠着状態が続く中で、政府の強硬姿勢が際立つ。再編計画に協力する自治体には交付金を支給し、拒む自治体は冷遇する。「アメとムチ」政策で再編の受け入れを迫っている。

 しかし、日米合意を一方的に押し付ける強圧的な姿勢だけで、再編問題を解決できるのかどうか。その実効性については疑念を抱かざるを得ない。

 防衛省によると、負担が増える所在市町村などを対象に、防衛相が財務相と協議した上で、交付対象となる「特定周辺市町村」に指定する段取りだ。

 再編事業の進ちょくを「受け入れ」「環境影響評価の調査着手」「工事着工」「再編の実施」の四段階に分けた。

 再編に伴う負担の増減については、(1)防衛施設面積の変化(2)施設整備状況(3)航空機・艦船の数や種類の変化(4)人員数の変化(5)施設の使用態様の変化―を基礎として点数化した。

 一点当たりの交付の基準となる額を算定し、市町村の負担の点数を掛け合わせて交付金が決まる仕組みだ。

 進ちょく次第では減額し、ゼロとすることもできる。「米軍再編への賛成が遅れるほど総額が減る仕組み」(防衛省幹部)という。住民対立に油を注ぐ露骨な政策としかいいようがない。

 受給候補地には移設先の名護市、陸上自衛隊のキャンプ・ハンセン共同使用に反発している金武町、宜野座村、恩納村のほか、浦添市が含まれる。

 その一方で、嘉手納基地周辺の自治体については再編交付金の対象になっていない。那覇防衛施設局は、本土への訓練の一部移転と自衛隊の共同使用が予定されているため、相殺されるとの考え方を説明している。

 これで説得できるのか。周辺自治体の反発は必至だろう。政府は周辺住民の声に真摯に耳を傾けるべきだ。

 同法施行令には再編交付金の対象となる「特定周辺市町村」のほか、補助金かさ上げ対象となる「振興特別地域」の指定要件が規定された。施設局は振興特別地域について、岩国基地と代替施設移設先のキャンプ・シュワブが該当するとの見通しを示している。

 再編交付金の交付基準の運用については、政府のさじ加減に委ねられる側面もある。恣意的な運用につながらないかどうか、注視する必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070831.html#no_1

 

2007年8月31日(金) 夕刊 1面

再編交付金 名護は支給対象ならず/防衛相見解

 【東京】高村正彦防衛相は三十一日の閣議後会見で、在日米軍再編への協力度合いに応じて防衛相の裁量で支払う「再編交付金」の交付対象に、名護市が含まれるかどうかについて「(現状では)必ずしも十分ではないと思っている」と否定的な見解を示した。

 同市が米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブへの移設問題で、日米合意したV字形滑走路の沖合移動を求めていることから、交付条件の「再編の円滑かつ確実な実施に資すると認められた場合」に該当しないと判断したものとみられる。

 防衛省は交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」の指定について、所在市町村ごとに判断するとしている。名護市とともに候補地とされた宜野座村が同様に沖合移動を求めるのであれば、交付対象にならないことになる。

 再編交付金の名護市への交付をめぐっては、これまで久間章生元防衛相が「受け入れは一応表明している」と説明。再編事業の進ちょく率として分類する(1)再編の受け入れ(上限額の10%)(2)環境影響評価(アセスメント)への着手(同25%)(3)工事(埋め立てなど主要部分)の着工(同66・7%)(4)再編の実施(同100%)―の第一段階の条件は満たしており、交付対象との見解を示していた。

 高村防衛相は「対象にするような条件を整えて対象にしたいと強い気持ちを持っている」と強調。名護市に対し政府案(V字案)への理解を引き続き求めていく考えを示した。

 九月一日付で退任する守屋武昌事務次官の防衛省顧問就任については「まだ聞いていない。賛成も反対もない」と言及を避けた。


島袋市長「おかしい」


 【名護】名護市の島袋吉和市長は三十一日、高村正彦防衛相が、名護市を米軍再編交付金の対象とすることに現状では否定的な見解を示したことに対し、「国の考えをあらめて確認したい」とした上で、「普天間飛行場の名護市への移設に、市は基本合意し海域の事前調査も認めている。協議をしようと言っているのであって拒否しているわけでもないのに、交付金の対象から漏れるということになれば、おかしい」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311700_01.html

 

2007年8月31日(金) 夕刊 1面

大臣判断で減額 批判/説明会で名護市

 米軍再編特別措置法が二十九日に施行されたことを受け、那覇防衛施設局は三十一日午前、在日米軍再編への協力度合いに応じ、関係自治体に配分する再編交付金の説明会を同局内で開いた。キャンプ・シュワブへの普天間飛行場代替施設建設に関し施設局は、事業進ちょくに応じ、四段階に分けて交付割合を設定していると説明。「受け入れ」がなければ「(交付対象に)指定されない」と強調した。

 これに対し、名護市の玉城政光政策推進部長は「市は地元の意見を聞いてもらいたいと主張しており、日米が合意したものを修正しろとは言っていない」と述べ、「容認」の認識を強調。「代替施設の事業が進んでも、防衛大臣の判断で減額やゼロとされるのはおかしい」と批判した。

 地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備された嘉手納基地に関しては、本土へのF15戦闘機の訓練移転で負担が相殺され、周辺の嘉手納町、沖縄市、北谷町は指定候補の対象外となった。

 施設局は交付対象となる「再編関連特定周辺市町村」の「指定候補」として▽普天間飛行場代替施設の建設予定地のキャンプ・シュワブにかかる名護市と宜野座村▽陸上自衛隊が共同使用するキャンプ・ハンセンにかかる金武町、宜野座村、恩納村▽那覇軍港の返還に伴い一部施設が移転される浦添市―を挙げた。

 また、嘉手納基地より南の基地返還が具体化した段階で、施設の統合集約などにより、指定対象自治体が「追加される」との見通しを示した。

 同法は指定候補の市町村であっても、防衛大臣が「再編の円滑かつ確実な実施に資すると認める場合」に限り指定する、と規定。さらに「再編事業の進ちょくに支障が生ずる場合には交付額を減額し、またはゼロとすることができる」としており、国の裁量に大きく委ねられている。

 防衛大臣が再編関連特定周辺市町村を指定後、各市町村に交付予算額を内示。その後、市町村からの事業申請の受け付けを開始する。説明会には県のほか、本島中北部を中心に十四市町村から約五十人が出席した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311700_02.html

 

2007年8月31日(金) 夕刊 7面

施設局 道路整備を再開/ヘリパッド移設

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江区のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設問題で三十一日午前、那覇防衛施設局職員が工事用道路の整備作業を進めた。反対派住民ら約二十人が抗議し現場は一時騒然となった。

 反対派住民によると、午前八時すぎから、那覇防衛施設局の職員や作業員約四十人が、土のうを積んだトラック二台とともに現場に現れた。職員らはフェンスとトラックの間で隊列を組んで住民らの抗議行動を阻み、土のうを積み降ろして、道路の舗装作業を続けた。

 住民らが作業を中止するよう職員らに訴え、午前八時四十分すぎに、作業が中止された。施設局の職員は「日米合意に基づいて行っており、粛々と作業を進めていく」と話し、現場を立ち去っていったという。

 住民の伊佐真次さんは「人数の少ない時間帯を狙ってきている。阻止するには、圧倒的に人数が足りない。さらに、多くの人の協力が必要だ」と訴えた。道路の整備作業は二十三日にも行われている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708311700_04.html

沖縄タイムス 関連記事、琉球新報 社説(8月29日)

2007年8月29日(水) 朝刊 1面

合祀取り下げで提訴/沖縄戦遺族ら4人

 靖国神社に肉親を合祀されている沖縄戦の遺族ら県在住の四人が、「親族を無断で合祀されて故人を追悼する人格権を侵害された」などとして、靖国神社に合祀の取り下げを求める訴えを十月にも那覇地裁に起こす。靖国神社に合祀の取り下げを求める訴訟は東京や大阪などで起こされているが、沖縄戦の遺族が中心となる訴訟は初めて。

 提訴するのは、沖縄戦で亡くなった兄=当時(18)=と母=同(47)=を祭られている川端光善さん(71)ら沖縄戦の遺族三人と、旧日本軍の陸軍兵だった父=同(22)=が同神社に祭られている彫刻家の金城実さん(68)ら計四人。ほかに県在住の二人が原告となることに同意しているといい、準備が整い次第、追加提訴する方針。

 二十八日、小泉純一郎前首相の靖国神社参拝をめぐる訴訟を起こした沖縄靖国訴訟団の事務局会議が那覇市内で開かれ、提訴に向けた方針を最終確認した。

 原告代表となる川端さんは「沖縄では四十九日が終われば故人はニライカナイの人となる。一農村の主婦だった母が、旧日本軍の軍属の扱いで靖国神社に『英霊』として祭られ続け、戦争ができる国造りに利用されているのは我慢できない。一刻も早く合祀の取り下げを求めたい」と語った。

 また共同代表となる金城さんは「本来は軍人でも軍属でもない一般住民が、援護法の適用を受ける形で、靖国神社に祭られることを肯定している沖縄の社会に問題を提起したい」と話している。

 合祀の取り消しをめぐっては昨年八月、日本人と台湾人の遺族ら九人が、「遺族の承諾なしに故人を祭るのは人格権の侵害で、追悼方法を自由に決める権利が侵害された」などと訴え、大阪地裁で係争中。いわゆる「合祀イヤです訴訟」で、靖国神社に合祀者の名をつづっている霊璽簿などから親族の氏名を抹消するよう求め、国には「戦没者名を同神社に通知したのは憲法の政教分離に違反する」などと損害賠償を求めている。

 靖国神社側は、「霊璽簿は重要な宗教行為の一部で、合祀に際して遺族の承諾を得るかどうかは靖国神社の宗教上の教義の問題。靖国神社にも信教の自由はある」と主張しているという。

 旧日本軍の軍人や軍属として徴用された韓国人の遺族らが、戦没者を通知した国に合祀の取り下げと損害賠償を求めて争われた訴訟では、東京地裁が昨年五月に請求を棄却。「戦没者通知は一般的な行政行為の範囲内で、合祀は靖国神社の判断で行われた」などとした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291300_03.html

 

2007年8月29日(水) 朝刊 1面

初代防衛局長に鎌田氏

 【東京】防衛省の九月一日付の組織改編に伴い退任する、佐藤勉那覇防衛施設局長(60)の後任に、同省大臣官房審議官の鎌田昭良氏(51)が有力視されていることが二十八日分かった。同人事は三十一日の閣議で正式決定される見通し。

 那覇防衛施設局は一日付で「沖縄防衛局」に改編され、初代局長となる。

 鎌田氏は一九五六年、千葉県生まれ。東京大学経済学部卒業後、八〇年防衛庁に入庁。防衛施設庁施設企画課長、広報課長などを経て、二〇〇六年八月から現職。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291300_04.html

 

2007年8月29日(水) 朝刊 2面

知事、新閣僚と面談へ/あす上京 基地問題説明

 安倍改造内閣の発足を受け、仲井真弘多知事は三十日に上京し、沖縄担当相や外務、防衛など沖縄関係の新閣僚を訪ねて面談するとともに、米軍普天間飛行場の移設問題や沖縄振興などに対する県側の考え方を説明、意見交換する方針だ。

 今回の内閣改造では、沖縄担当相に岸田文雄氏、外相に町村信孝氏、防衛相に高村正彦氏がそれぞれ起用されるなど、関係閣僚の顔触れが一新。

 仲井真知事は新閣僚に対し、基地問題の解決、沖縄振興への全面支援を要請する。

 特に、膠着状態にある普天間移設問題では、地元・名護市などが求めるV字形滑走路の沖合移動や、知事公約である普天間飛行場の「三年以内の閉鎖状態」についてあらためて説明、事態打開の糸口を探りたい意向だ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291300_05.html

 

2007年8月29日(水) 朝刊 2面

高村氏、沖合移動を拒否/防衛相離着任式

 【東京】高村正彦防衛相は二十八日、防衛省で開かれた着任式で訓示し、在日米軍再編について「県をはじめとする基地周辺住民の負担をわが国全体として軽減するために、ぜひとも日米合意通りに早期に実現する必要がある」と述べ、県や名護市が求める普天間飛行場代替施設(V字案)の沖合移動に応じない姿勢をあらためて示した。

 これに先立ち小池百合子前防衛相は離任式で、「職を去るについては、制服組を含め多くの皆さんから励ましの言葉をいただいた。私の真意をくみ取り、防衛省・自衛隊のあるべき姿について、まさに叫びとして受け止めさせていただいた」とあいさつし、人事をめぐって対立した守屋武昌事務次官を暗に批判した。

 続投を希望しない理由に挙げた情報保全の問題にも触れ「私自身が最も比重を置いたのはご承知の通りだ。情報管理を徹底させて日米同盟のさらなる強化に努めてほしい。これは私の最後のメッセージととらえていただきたい」と、わずか二カ月足らずで防衛省を去ることに悔しさをにじませた。

 この後、防衛省を代表して「送別の辞」を述べた守屋氏は、「本日をもって大臣が防衛省を離れられることは誠に寂しい限りですが、大臣の残された業績の上に立ち、新大臣の下、一丸となって職務に励む所存です。小池大臣のご活躍とご発展を祈念します」と淡々と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291300_06.html

 

2007年8月29日(水) 朝刊 2面

F15未明離陸中止を/施設局・外務省に申し入れ

 県内の基地所在市町村長らでつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会(会長・仲井真弘多知事)の要請団が二十八日、那覇防衛施設局や外務省沖縄事務所などを訪ね、嘉手納基地のF15戦闘機の未明離陸中止や、キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近で建設が計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場の建設中止などを申し入れた。

 要請には団長の儀武剛金武町長のほか、国頭、宜野座、北中城村長らが参加。

 施設局の池部衛次長は、嘉手納基地の未明離陸について「(二十八日の未明離陸は)大変残念。今後もできるだけ行わないよう米側に検討を求めていく」と強調。小銃用射撃場建設については「部隊の錬度維持と日米安全保障体制の目的達成のため必要と考えている」と説明し、理解を求めた。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は嘉手納基地の未明離陸について「昨年来、東京の高いレベルで運用改善できないか米側と協議している。引き続き協議し、少しでも地元の期待に応えたい」と述べた。

 要請はほかに、「在日米軍再編に関する地元意向の尊重」「海兵隊の演習・訓練の移転および在沖米軍兵力の削減」「日米地位協定の抜本的見直し」など。沖縄総合事務局、在沖米軍、在沖米国総領事館にも申し入れた。

 要請団は来月六、七日に上京し、日米の政府機関に要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291300_07.html

 

琉球新報 社説

F15未明離陸 騒音規制強化が不可欠だ

 またしても住民の中止要請を無視して、米軍が嘉手納基地でF15戦闘機の未明の離陸を強行した。28日午前4時40分前後に同基地所属のF15四機とKC10空中給油機1機が次々と離陸している。

 人々が寝静まっている時間帯に、爆音をとどろかせて離陸するのは、住民の安眠を妨げ、不安を与える暴挙であり、非常識極まりない。

 嘉手納町の測定によると、離陸時の騒音は100デシベルを超え、最大で104・3デシベルを記録した。北谷町の測定器でも最大109・2デシベルに達している。

 米軍は本当に「良き隣人」を目指すのなら、まず常識をわきまえるべきだ。

 日米両政府は1996年の日米合同委員会で「嘉手納飛行場における航空機騒音規制措置」に合意している。

 その中で「午後10時―(翌日)午前6時の間の飛行および地上での活動は、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される」と明記したが、実態は規制措置とは程遠い。

 裏を返せば、米国が運用上必要と判断すればいつでも飛行ができる―という合意であり、欺瞞(ぎまん)に満ちた内容と言わざるを得ない。

 県のまとめによると、嘉手納基地からの未明離陸は2005年度は4回だったのが、06年度は12回となり、3倍に増加している。07年度は今回で2回目だ。

 米軍嘉手納基地は、今年5月にF22Aラプター戦闘機の未明離陸を発表した際「離陸は96年に合意された航空機騒音規制措置の範囲内で行われる」と強調していた。

 深夜・未明の飛行制限を促すはずの騒音規制措置が、逆に未明離陸を正当化する根拠として利用されている。

 これでは、規制とは名ばかりで実体がない。騒音規制の名の下に、米軍の恣意(しい)的な運用にお墨付きを与えているようなものだ。

 現行の規制措置を抜本的に見直し、一刻も早く実効性のある中身に改めなければならない。

 日本政府は、米国に対し及び腰になるのではなく、理を尽くし毅然(きぜん)とした態度で規制措置の強化と厳格化を要求すべきだ。

 少し運用を工夫すれば日中の離陸でも何ら支障はないはずだが、米軍はその努力を怠っている。

 県の要請にも工夫が必要だ。単に飛行計画の変更を求めるだけではなく、一歩踏み込んで、飛行ルートや経由基地など具体的な案を示して改善を求めてほしい。

 未明離陸強行に対し、嘉手納町議会、沖縄市議会、北谷町議会は抗議決議を検討している。

 日本政府は、住民の声に真剣に耳を傾け、米国との折衝に当たるべきだ。

(8/29 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26684-storytopic-11.html

 

2007年8月29日(水) 夕刊 1面

海保、中城保安部を設置/08年度概算要求

普天間移設に備え

 【東京】海上保安庁は二十九日、総額二千九十億円の二〇〇八年度予算概算要求をまとめた。組織改正要求で、「在日米軍再編に伴う海上警備体制等の強化」として、第十一管区海上保安本部「中城海上保安部」の設置を明記した。現在の同保安署から部に格上げし、人員六十三人の増員や、三十メートル型巡視艇(PC)三隻の導入などを求める。同庁は米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に伴う「適切な警備の実施」を理由に挙げており、〇八年度の関連経費に約四十三億円を見込んでいる。

 政府は普天間移設に関して、一九九九年に閣議決定した「辺野古沖案」(従来案)が頓挫した主要因に「反対派の抗議行動」を挙げていた。十一管の警備体制を強化することで、V字形滑走路案の実現に強い意欲を示した格好だ。

 〇八年度は(1)PC三隻建造に約二十七億円(2)ゴムボート、監視取締艇、巡視艇を係留する浮き桟橋など海上警備に必要な装備に約十六億円―を要求する。PC建造は二年かかるため、同庁は〇九年度も十二億円が必要と試算。総額は約五十五億円を想定している。

 同庁の〇八年度定員要求による職員純増数は百二十人だが、シュワブ沿岸部の警備だけで政策的に五十人を増員。ほとんどを代替施設建設予定地でのゴムボートによる警備に充てるという。

 同庁人事課によると、現在の同保安署の構成は陸上職員二十人、船員十四人の合計三十四人。小型巡視艇(CL)と放射能調査船を一隻ずつ所有している。

 普天間移設に伴う「部」への格上げを受け、管理、警備救難、交通の各課を新設。シュワブ警備要員とは別に十三人を増員し、合計九十七人の体制になる。

 同庁政務課は、部の創設と増員について「シュワブ沿岸の海上警備のほか、防衛省と米軍、海保によるハイレベルな調整・交渉も必要になる」と指摘。反対派の“排除”に向け、三者が連携を強める狙いを示唆した。

 組織改正要求では、第十一管区保安本部への「刑事課」設置も盛り込んだ。十一管は全国で唯一、刑事課がなく、これまで業務を兼任していた警備部門の人手がシュワブ警備に割かれることが想定されるためという。

 全国の各管区海上保安本部は、管区内の出先機関として、海上保安部と、部より小規模な海上保安署を設置している。

 十一管区内には中城以外に石垣海上保安部と、名護・平良の各海上保安署がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291700_01.html

 

2007年8月29日(水) 夕刊 5面 

国が「辺野古シフト」/海保警備増強

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設実現に向けて、海上保安庁が二十九日、二〇〇八年度予算で警備体制の大幅増強を求めた。人員や巡視艇を阻止行動の現場に投入する「辺野古シフト」とも言え、地元の名護市では市長を支える立場からも基地建設の「強行突破」を懸念する声が上がった。反対運動を続ける市民団体も、実力行使への警戒感をあらわにした。

 名護市が求める代替施設の沖合移動が認められない中での海保増強に、島袋吉和市長の後援会長を務める荻堂盛秀市商工会長は「大臣が地元の意見に耳を傾けると言っているのに、事務レベルでそれ以前に話が進んでしまうのは疑問だ」と指摘した。

 また「小さな沖縄はいつも国の犠牲になってきた。近隣国との関係も考え、こういう時だからこそ天下御免という態度でなく、地元ときちんと話し合ってほしい」と話した。

 島袋吉和市長は「詳細が分からないので正式な発表を確認してからコメントしたい」と慎重な姿勢を示した。

 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「警備強化の名目で海保が基地建設に手を貸すことに怒りを覚える。県民の多くは辺野古の基地建設に反対している。海保による県民への挑戦だ。沖縄の海を守るために、海保がやるべきことはほかにたくさんあるはずだ」と批判した。

 一方、第十一管区海上保安本部は「予算要求段階で細かいコメントはできない」としつつ、「中城海上保安署の管轄には重要施設が多数あり、適切な警備の実施のため組織体制の強化を図る必要があると認識している」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291700_02.html

 

2007年8月29日(水) 夕刊 1面

日教組が特別決議/歴史歪曲と批判

 【東京】日本教職員組合(森越康雄中央執行委員長)は、第九十五回定期大会最終日の二十九日午前、高校歴史教科書の沖縄戦の記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与を削除した検定意見を「歴史を歪曲するもので断じて容認できない」として、検定撤回と史実に基づく記述を求める特別決議を全会一致で採択した。

 決議文は「集団自決」への日本軍関与を「日本軍の住民虐殺と併せて戦争体験者からの聞き取り調査や沖縄戦研究で、すでに明らかになっている」と指摘している。

 その上で「検定結果は沖縄戦の実相を歪めるものであり、歴史を歪曲するものである。悲惨な体験をし、筆舌に尽くし難い犠牲を強いられた沖縄の人々の思いを踏みにじるもので、断じて容認できるものではない」と厳しく批判している。

 日教組は教科書検定の結果が公表された直後の今年四月、検定を批判する書記長談話を発表。その後は高教組や沖教組と情報交換を続け、決議の準備を進めてきた。

 森越委員長は大会終了後の記者会見で「本土決戦のために沖縄を犠牲にし、戦後も占領された状況に痛みが本土にあるべきなのに、(検定で)勝手に(軍命の)事実はなかったと言っている。日本中が怒るべきだという思いで、沖縄側とも相談して特別決議をした」と経緯を説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291700_03.html

 

2007年8月29日(水) 夕刊 5面

北谷議会が抗議決議へ/嘉手納未明離陸

 【北谷】米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機など航空機計五機が二十八日未明に米本国へ向け離陸した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は二十九日午前、基地対策特別委員会を開き、騒音防止協定の順守やF15戦闘機の即時撤去などを求める抗議決議・意見書案を九月三日の臨時会へ提出することを決めた。あて先は同基地司令官や首相、外相など。

 同議会は米軍が未明離陸を今月七日に予定していた際、F22戦闘機が日中の離陸で米本国へ帰還したことを理由に「早朝の時間帯の離陸を回避した本国帰還は可能だ」として離陸計画の即時中止を求める意見書を臨時会で可決していた。

 委員会では「議会や地元周辺自治体の首長らの反対要請にもかかわらず離陸計画が強行された」など、米軍に対する不信感を強める意見が上がった。

 また、抗議決議案では、今年一月から同基地北側滑走路の改修工事にともない、南側滑走路に離着陸が集中し、北谷町内の騒音が激しくなっている問題についても「負担軽減が実行されていない」などとして、航空機の住宅地上空での低空飛行や旋回の中止も求めている。

 同委員会の照屋正治委員長は「米軍の一方的な都合で旧盆明けに強行したのは納得がいかない。騒音防止協定や米軍の配慮は口先だけのものだ」と批判した。

 嘉手納基地周辺の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)は二十九日に米軍へ抗議文を送付。嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は同日午後、沖縄市議会(喜友名朝清議長)は三十日に委員会を開き対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291700_04.html

 

2007年8月29日(水) 夕刊 5面

「墜落だ」響くサイレン/米軍事故を想定 避難訓練

 【嘉手納】米軍嘉手納基地に近い嘉手納町立屋良小学校(児童三百九人)と屋良幼稚園(園児三十八人)は二十九日、学校付近に米軍機が墜落、炎上したことを想定した避難訓練を実施した。過去の米軍機墜落事故を教訓に毎年行われている。校内に事故を知らせる放送やサイレンが鳴り響く中、児童らが真剣な表情で訓練に臨んだ。

 「学校近くに飛行機が落ちました。直ちに避難してください」

 午前九時四十五分、授業中で静まり返った校内に、放送とサイレンが流れた。児童らは口と鼻をハンカチなどで押さえながら、担任教師らの誘導に従い、室内履きのまま約百メートル離れた公園まで避難した。

 同校六年の渡久知結菜さん(11)は「最近も那覇空港で飛行機の火災があり、不安だった。訓練で学んだことをいざという時に生かしたい」と話した。

 山内晃校長は「基地に近いということもあり、子どもたちに万が一に備える防災意識の高揚と危機回避能力の向上を図っていきたい」と訓練の意義を説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708291700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月26日、27日、28日)

2007年8月26日(日) 朝刊 2面

九州議長会に提起へ/「集団自決」修正意見書

 高校歴史教科書で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述が削除された問題で、文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会実行委員長の仲里利信県議会議長は、二十九日に長崎市で開かれる九州議長会に、検定意見撤回を求める意見書採択を提起する。

 すでに、各県議会議長に打診しており、議長会前の事前協議で取り扱いが話し合われる予定だ。

 仲里議長は「各県議会の反応はいまひとつで、議長会として可決できるか微妙だ」としながらも、「原爆投下に対する久間前防衛相の『しょうがない』発言などのように、第二次世界大戦の実相を歪曲する動きは沖縄だけの問題ではない。各県議会の賛同を得て、ぜひ可決したい」と述べた。

 県民大会の開催決定後、仲里議長に対しては、大会に反対する抗議の電話や文書が数件続いたというが「検定撤回は県民の総意だ。『集団自決(強制集団死)』の歴史を正しく伝えることがわれわれの役目。九州議長会や全国議長会などの協力を得て、検定を撤回させたい」と意欲を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708261300_05.html

 

2007年8月27日(月) 朝刊 21面

練馬区議会に陳情/「集団自決」修正

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から、軍関与が削除された検定意見問題で、東京都練馬区議会の九月定例会で「日本軍関与の記述の回復を求める」意見書を可決し、文部科学省に提出するよう求める住民らの陳情書が二十七日、提出される。

 同区の会社経営・柏木美恵子さん(51)と友人たちや練馬区沖縄県人会長の志多伯泰雄さん(66)らが呼び掛け人となっている。陳情書は、沖縄県議会や全市町村議会が「検定撤回」を求める意見書を決議したことに触れ、次代を担う若者が「事実を事実として教育される機会を奪われることを憂慮する」としている。

 議会が決議するかどうかは不透明。

 九月十一日には、山口剛史琉球大准教授らを招き、同区内で検定問題を考える集会を開くことにしている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708271300_07.html

 

2007年8月28日(火) 朝刊 27面

沖縄 見えぬ出口 改造内閣発足

 がけっぷちの安倍晋三首相は、独自色より挙党態勢を選んだ。二十七日発足した安倍改造内閣。要所へのベテラン配置や批判派取り込みで脱“お友達内閣”をアピールし「適材適所の布陣」を強調した。政治とカネの問題にも厳しい姿勢を見せたが「政策と人事がミスマッチ」「派閥人事だ」との声も出た。一方、県内では普天間飛行場の移設をめぐり、移設予定地の名護市では高村正彦防衛相の就任に期待と冷めた見方が交錯。伊吹文明文科相の留任には「(教科書検定の撤回を求める)県民の声が届くのか」と落胆が広がった。

 高村防衛相について、島袋吉和名護市長は「高村氏は外相も歴任し、沖縄問題も十分理解できると思っている。名護市は引き続き、できるだけ滑走路を沖合に出してほしいと要望していく。十分話し合いながら、沖縄振興、北部振興策についても頑張っていただきたい」と期待した。

 移設設先に近い辺野古区有志でつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「高村氏は日米問題にも詳しいし、元防衛庁長官の額賀福志郎氏が財務相というのは心強い。振興策など地元の意見を最大限に生かしながら、移設を粛々と進めてほしい」と話した。

 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「辺野古の新基地建設がいい方向に向かうとは思えない。米国にノーと言える政府を求めるが、従来の政府と変わらないのでは。期待はしていない」と淡々と話した。

 伊波洋一宜野湾市長は「沖縄の諸課題、特に普天間飛行場問題に尽力してほしい。ヘリ部隊のグアム移転など、一日も早く市民の目に見える形で危険性を除去してもらいたい。跡地利用計画も進んでおり政府のバックアップを要望する」とした。

 一方、伊吹文科相の留任に、検定意見の撤回を求める県民大会副実行委員長の玉寄哲永さん(県子ども会育成連絡協議会会長)は「とてもがっかりした」と一言。「文科相が変われば、教科書改ざんの撤回を求める県民の声に耳を傾ける環境ができると思っていた。変わらないなら、県民大会を成功させ、県民の思いを直接ぶつけたい」と語った。

 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の事務局長で琉球大学の山口剛史准教授は「伊吹文科相は『審議会決定に口出しできない』と言っていたが検定は文科省主導で公正・中立性のないままに教科書が書き換えられていった。今後も文科相の監督責任を追及していきたい。国会でも議論し、追及してほしい」と県選出の議員らに要望した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708281300_01.html

 

2007年8月28日(火) 朝刊 1面

「地元意向聞く」/「普天間」で岸田沖縄相

 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十八日夜の就任会見で、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設への対応について「基本的には日米で合意した案で進めるべきだ」と述べ、在日米軍再編で合意されたV字形滑走路案を推進する政府方針を踏襲する考えを示した。一方で「その際には地元の理解、協力が欠かせない。地元の意向を丁寧に聞くのが基本だ」と述べ、仲井真弘多知事や島袋吉和名護市長が求める沖合移動の考え方に耳を傾ける姿勢を強調した。

 岸田氏は沖縄振興への取り組みで「沖縄政策は国政上、重要と認識している。一つの大きな柱として自立型経済の構築があり、もう一つ、県民は基地の負担に苦しんでいる。しっかりした政策、視点を念頭に努力したい」と抱負を述べた。

 重点的に取り組む分野では「沖縄の魅力を最大限に引き出すのが大事と思う。沖縄出身の方々は幅広い分野で活躍されている。(前任の)高市早苗沖縄担当相が取り組んだ人材育成に加え、環境、観光など沖縄の魅力は多岐にわたると思うので力を引き出していきたい」と述べ、環境や観光分野で振興に注力する考えを説明した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708281300_02.html

 

2007年8月28日(火) 朝刊 9面

「自立経済へ支援を」/県経済界から要望

「岸田氏は沖縄勉強して」

 安倍改造内閣が27日発足したことを受け、県経済界のトップからは、沖縄の自立型経済の構築に向けた取り組み支援を求めるほか、那覇空港拡張やアジア・ゲートウエイ構想の一層の推進を期待する声が上がった。これまで沖縄との関連が薄いとされる岸田文雄沖縄担当相については「よく分からない」との声が多く、「沖縄について勉強してほしい」などの要望も出た。

 県商工会議所連合会の儀間紀善会長は「民間主導の自立型経済の構築に向け、産業振興はじめ、那覇空港の拡張整備、アジア・ゲートウエイ構想の推進、大学院大学の実現、米軍基地問題の早期解決などに協力してほしい」とコメントした。

 県経営者協会の知念榮治会長は岸田沖縄担当相について「接触もないし、よく分からないのでコメントし難い」としたものの、「官房長官や外務大臣にベテランを充てたことは、今の難局を打開する決意が見える」と全体的には評価した。

 県建設業協会の呉屋守将会長は、岸田沖縄担当相が広島県出身であることに触れ、「広島も第二次世界大戦で大きな苦しみを味わった県。沖縄の苦しみも分かるはず」と指摘。「沖縄にかかわりがあるなしに関係なく、原点に立ち返って勉強してほしい」と要望した。

 県内の観光関連業者27団体で構成する沖縄観光の未来を考える会の新垣安男会長は「内閣や担当が変わっても、沖縄側から主体的な意見や政策を提案する姿勢に変わりはない」と強調。「県経済の自立をテーマに観光業界ができることを議論し、担当大臣に理解を求めていきたい」と話した。

 一方、知念、呉屋の両氏とも、厚生労働相に舛添要一氏を充てたことを評価。「年金問題を解決しようとの意気込みを感じる」「しっかり安倍内閣の年金問題への方針を国民に知らせることができるはず」と期待した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708281300_03.html

007年8月28日(火) 朝刊 1面

米軍機きょう未明離陸/機体を更新5機本国へ

 【中部】米軍嘉手納基地報道部は二十七日、F15戦闘機四機と空中給油機一機が米本国に向け、二十八日未明に同基地を離陸する、と発表した。「アイロン・フロー計画」と呼ばれる同基地のF15戦闘機を製造年の新しい機体に更新する措置に伴うもの。

 機体更新に伴うF15戦闘機の未明離陸は当初、今月七日に予定されていたが米軍は理由や今後のスケジュールを明らかにせず、延期していた。

 同基地周辺の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」の野国昌春会長(北谷町長)は、同基地に一時配備されていたF22戦闘機が米本国に帰還する際、日中に離陸したことを例に挙げ、「未明離陸は回避できるはず」と指摘。

 その上で、「七日に予定されていた際にも三連協で中止を要請した。二十八日は午前零時を過ぎても旧盆のウークイやエイサーなどが行われている。その日に未明離陸が強行されるのは遺憾だ」と反発した。

 三連協は二十七日午後、同基地第18航空団司令官あてに文書で中止を要請。那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所にも同基地へ未明離陸の中止を働き掛けるよう文書で依頼した。


嘉手納議会 あす特別委/抗議へ意見集約


 嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は二十九日に基地対策特別委員会を開き、未明離陸に抗議する方向で意見をまとめる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708281300_04.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月28日朝刊)

[安倍改造内閣]

政策転換があいまいだ


派閥会長そろって起用

 安倍改造内閣が発足した。論功行賞と側近重用が目立った第一次安倍内閣と比べると、派閥均衡・安定重視の印象が強い顔ぶれだ。

 キーワードは「お友達内閣からの脱皮」「挙党一致態勢」「地域格差是正」である。

 何よりも目を引くのは派閥の領袖や党内実力者を要所に配置したことだ。内閣の重厚さを演出する人事だが、見方を変えれば、実力者を閣内に取り込むことによって批判を封じ、一蓮托生の挙党態勢をつくりあげたということだろう。がけっぷち内閣を象徴するような布陣といえる。

 今回の組閣人事で注目されるのは、官房長官に政策通の与謝野馨氏を起用し、お友達内閣からの脱皮を印象付けたこと。選挙後、首相批判を繰り返してきた舛添要一氏を厚労相として処遇したこと。民間から前岩手県知事の増田寛也氏を総務相に起用し格差是正問題を担当させたことだ。

 三人とも政策に詳しく知名度も高い。年金問題や地域格差問題に本腰で取り組むというメッセージを込めた人事なのかもしれない。

 今度の組閣ではサプライズ(驚き)人事がなかった。強いて上げるとすれば実は、安倍首相の続投そのものが最大のサプライズであった。

 この内閣の不安要素は何かというと、残念ながら安倍首相その人である、というほかない。

 安倍晋三首相は選挙期間中、「私か小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民に聞きたい」と大見得を切った。にもかかわらず、開票の真っ最中に早々と続投を宣言。歴史的惨敗の責任について党や国民に明確な説明をすることもなく、「改革の方向性が否定されたとは思えない」と強弁し続けたのである。

 自民党の参院選総括委員会は、安倍首相への批判を盛り込んだ異例の最終報告書をまとめた。

 多くの有権者が今、安倍首相の指導力に対して強い疑問を抱いている。それを解消して求心力を回復するのは容易なことではない。


ねじれ国会にどう対処


 安倍改造内閣は、衆院で与党、参院で野党が多数を占めるという「ねじれ国会」を抱えてスタートした。麻生太郎新幹事長がいみじくも語ったように、この事態は「二〇〇七年体制」ともいうべきかつてない出来事だ。九月からの臨時国会にどのように対応していくか。「安倍―麻生」盟友体制がまず試されることになるだろう。

 年金記録不備、政治とカネ、地域間格差、教育改革、公務員制度改革など待ったなしの課題が山積している。

 参院選前までは数の力を背景に国会で強行採決を繰り返してきたが、もうその手は使えない。民主党と法案をすり合わせたり、修正協議を重ねたりという機会が増えるはずだ。

 安倍首相はこれから先、ジレンマを抱え込む可能性がある。

 「安倍カラー・保守思想」を前面に打ち出すことを求める従来の支持層に顔を向けるのか、それとも選挙の反省を踏まえ政策の軌道修正を求める人たちの声を優先的に聞くのか。

 改革を継続していくのか、それとも改革の影の部分を取り上げ「地方の反乱」に答えていくのか。

 「戦後レジーム(体制)からの脱却」という方針は変えていない。

 改革を進めつつ地域格差是正も、というのが首相の基本姿勢だ。

 要するに改造内閣の重点課題は何なのか、反省を踏まえた政策転換の中身があいまいで分かりにくいのである。

 結果責任を取らずに続投することになった安倍首相の下で信頼を回復するのは並大抵でない。政権運営は思っている以上に厳しいと見るべきだ。


岸田氏の力量は未知数


 沖縄担当相には古賀派のプリンス的な存在と言われる岸田文雄氏が起用された。沖縄との縁はほとんどない。

 まずは沖縄各地を視察し、現場の人たちとひざを交えて話し合い、土地の歴史と風土、現在の課題を早くつかんでほしい。

 沖縄応援団が急減している永田町の中で、先頭に立って沖縄の立場を主張しなければならないのが沖縄担当相の役割である。

 普天間飛行場移設を含む米軍再編問題は、高村正彦大臣―増田好平事務次官の新体制に引き継がれた。辺野古移設をめぐっては防衛省の中で大臣と次官の間に微妙な温度差があっただけに新体制の今後の対応を注目したい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070828.html#no_1

 

琉球新報 社説

安倍改造内閣 今度こそ強い指導力を/「沖縄の課題」解決忘れずに

 安倍改造内閣が発足した。

 自民党が歴史的惨敗を喫した参院選から間もなく1カ月。内閣の支持率は、低迷のトンネルに入ったまま回復の兆しが見えない。加えて安倍晋三首相の党内での求心力は減速著しく、目を覆うばかりである。

 今回の改造はこうした中で断行された。安倍首相にとっては、足元が揺らいだ政権の立て直しに向け、政権の命運を懸けた人事の刷新である。

 年金問題や政治とカネの問題など山積する課題への対応を誤るようなことがあれば、今度こそ国民は間違いなく政権を見限る。首相にはもはや後がない。政権を支える新閣僚らも同様だ。

痛みへの目配り

 安倍政権はいま、正念場に立たされていることをしっかり肝に銘じてほしい。そして国民が求める要望、期待などへの目配りを忘れないでほしい。さらに痛みを訴える声などに対しても、配慮が十分に行き届いた政権運営を常に心掛けてもらいたい。

 内閣改造の前に行われた自民党三役人事では、選挙対策など党運営の要となる幹事長に麻生太郎前外相を起用したほか、政策立案を担う政調会長に石原伸晃氏、党内をまとめる総務会長には2階俊博氏を充てた。

 新閣僚の顔ぶれは、冬柴鉄三国土交通相ら5人が留任し、初入閣は民間から起用し総務相兼任で新設の地方・都市格差是正担当相に充てた増田寛也・前岩手県知事ら7人で、官房長官の与謝野馨前経済財政担当相ら5人は再入閣組だ。

 党内外から批判を浴びた側近重用による「お友達内閣」の色彩を一掃できるかが焦点だった。

 町村信孝外相、高村正彦防衛相、留任した伊吹文明文部科学相ら各派閥の領袖を重要閣僚に配置。経験豊富な実力者を並べ、重厚な布陣を敷いた形となった。

 首相は組閣に際し、前回に比べて相当に頭を悩ませたのかもしれない。閣僚の不祥事などへの対応を中心に危機管理能力を欠いたことが厳しく指摘され、挙党一致を求める党内の意見に配慮せざるを得なかったからだ。

 しかし、挙党態勢は国民の目には「派閥均衡」と紙一重だ。「先祖返り」したと批判されかねない。人心一新を強調した手前、清新さも必要だし、小泉純一郎前首相ばりの「サプライズ」とはいかないまでも、なんとか安倍カラーをにじませたい。あれやこれや腐心したのではないか。

 増田氏の起用や、年金問題を担当する厚生労働相に首相の対応を批判してきた舛添要一氏を抜てきしたことなどが、首相が国民に示した回答の一つと見ることができる。

 疲弊した地方の活性化、地域間格差への対応については、自民党の参院選総括委員会が敗因などを分析した報告書でも「構造改革の痛みの先にあるべき将来展望を示せず、地方の反乱が広がった」と指摘された。

隔たりを埋めよ

 沖縄担当相には岸田文雄氏が就いた。沖縄相は、米軍基地問題をはじめ、将来を見据えた振興開発の在り方、経済の自立的発展に向けた諸施策の展開など解決すべき課題は数多い。

 岸田氏は就任の記者会見で「自立型経済の構築に向けた取り組みを進めたい」と述べた。在沖米軍基地問題への対応では「沖縄県民の負担が少しでも軽減されるよう」全力を尽くす考えを明らかにした。

 県民の声に耳を傾け、沖縄が抱える諸問題の解決に真摯(しんし)な対応を求めたい。

 米軍再編問題の中核である普天間飛行場の返還・移設問題は、県民が望む形で道筋を付けたとは言い難い状況だ。仲井真弘多知事が公約した普天間飛行場の3年内の閉鎖状態にも程遠い。

 名護市辺野古海域の環境影響評価(アセスメント)をめぐっては、国はアセス方法書を一方的に送付した。政府の強硬な姿勢は、県や県民の意思とは隔たりがありすぎることに思いをいたすべきだ。

 岸田氏は、国が県や地元の頭越しに先走りをする場合などには、政府や防衛省をいさめるぐらいであってほしい。

 秋の臨時国会が来月中旬には始まる。政権交代へ民主党の攻勢が一段と強まるのは確実だ。

 新体制はどんな政策課題を示し、論戦を挑んでいくのか。多くの国民が注視している。

(8/28 9:47)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26656-storytopic-11.html

 

2007年8月28日(火) 夕刊 1面

F15未明離陸強行 4機すべて100デシベル超

 【中部】旧盆「ウークイ」翌日の二十八日未明、米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機四機が米本国へ向けて離陸した。嘉手納町屋良の通称「安保の見える丘」で騒音を測定した同町によると、同日午前四時三十九分に最高値の一〇四・三デシベル(電車通過時の線路脇に相当)を記録。基地周辺自治体による反対を押し切っての強行に、首長らは「迷惑千万であり、抜本的な解決が必要だ」などと米軍に対する反発を強めている。

 F15戦闘機四機は午前四時三十九分から四十分にかけて、相次いで同基地南側滑走路から北谷町砂辺側へ飛び立った。同四十二分には、KC10空中給油機が南側滑走路から沖縄市知花側へ離陸した。

 F15戦闘機は、離陸順に、一〇一・五デシベル、一〇二デシベル、一〇四・三デシベル、一〇二・八デシベルと四機すべてが一〇〇デシベル以上の騒音を記録。KC10空中給油機は八三・九デシベル(地下鉄の車内に相当)だった。

 今回の未明離陸は前日の二十七日午前に周辺自治体に連絡があり、沖縄、嘉手納、北谷の地元自治体の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)が中止を要請していた。

 同協議会会長の野国昌春北谷町長は「旧盆の翌朝に強行したことは許し難い。米軍の配慮は形だけのものであり、今後、騒音の改善について同基地と強力な交渉をする」と批判した。同協議会は近日中に同基地に対する抗議行動を予定している。

 北谷町議会の基地対策特別委員会は二十九日、沖縄市議会の基地に関する調査特別委員会は三十日にそれぞれ未明離陸について対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708281700_01.html

 

2007年8月28日(火) 夕刊 5面

轟く爆音 眠り奪う/F15未明離陸

旧盆 台無しと住民

 【中部】「爆音で眠れず、旧盆が台無しだ」。沖縄の伝統行事ウークイから数時間後の二十八日未明、米軍嘉手納基地からF15戦闘機など計五機が深夜の住宅街に爆音を轟かせた。周辺自治体首長らの強い中止要請にもかかわらず未明離陸を強行した米軍に、住民らは「とてつもない騒音で跳び起きた」など、眠りを奪われた爆音に怒りを募らせた。

 隣接する嘉手納町の宮城篤実町長は、旧盆明けの未明離陸に「計測した騒音の値と関係なく、地域住民にとっては迷惑千万な話。抜本的な解決が必要であり、国にも厳しい現状を訴えたい」とした。沖縄市の東門美津子市長は「周辺住民の健康を守る上でも未明離陸はしないでほしいと再三お願いしてきたが、また守られなかった。しかも今回はウークイ。本当に残念だ」と批判した。

 県の昨年度調査で、同基地周辺の騒音としては過去最悪の一二一・六デシベルを測定した北谷町砂辺区。松田静造さん(78)は「戸を閉めていても飛行機の離陸が分かった」とあきれた様子。

 「子ども六人はうるさいと言い砂辺を出て行った。早く静かな地域になってほしい」と静かな口調に怒りをにじませた。

 米軍機が自宅の周辺上空を通過したという渡慶次保さん(74)は「旧盆が終わり床に就いたのは午前二時ごろ。疲れていたのに、とてつもない爆音で跳び起きた。夜明けまで眠れず、楽しかった旧盆が台無しだ」と声を荒らげた。

 嘉手納町屋良の島袋敏雄東区自治会長は「静かな生活を求める住民の思いを、くみ取ってくれないのか」。同町屋良の元高校教師知念正直さん(72)は「地域住民の気持ちを逆なでするもので、軍事優先の姿勢が変わらないことを示している」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708281700_02.html

 

2007年8月28日(火) 夕刊 5面

米射撃場 外務省に中止訴え/伊芸区長ら 負担増に反発

 米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設問題で、地元金武町伊芸区の池原政文区長ら行政委員会のメンバー約十人が二十八日午前、外務省沖縄事務所や県庁を訪ね、建設中止への申し入れや協力要請をした。池原区長らは同日、在沖米国総領事館も訪ねる。

 外務省沖縄事務所の田中賢治課長補佐は「レンジ3は、バラバラに行われていた射撃訓練を集約するもの。(射撃訓練場の)移動であり強化ではない。安全性についても現地を訪れ確認している」と理解を求めた。

 池原区長らは「伊芸区にとって機能強化による負担増にほかならず、われわれは捨て石にされている」と、強い口調で建設中止を申し入れた。

 一方、県の保坂好泰基地防災総括監は「県の立場は皆さんと同じ。町とも連携して対応したい」と、地元と連携する考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708281700_03.html

 

2007年8月28日(火) 夕刊 5面

中東籍男性の入域拒否する/普天間飛行場フェアで

 中東の国籍を持ち県内に住む男性三人が二十六日夕、「フライトラインフェア」が開かれていた米軍普天間飛行場のゲートで、入域を拒否されていたことが分かった。日本人らしい警備員が運転免許証で国籍を確認した後、理由を示さずに拒否を告げたという。

 男性三人のうち一人は「恥ずかしい思いをさせられた。差別は許せない」と憤った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708281700_04.html