沖縄タイムス 関連記事・社説(8月23日、24日、25日)

2007年8月23日(木) 朝刊 1面

検定撤回要求 県民大会9月29日に

会場も変更 宜野湾で

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した文部科学省の検定意見撤回を求める超党派の県民大会の開催予定が変更になり、九月二十九日午後三時から宜野湾市真志喜の宜野湾海浜公園で開かれることが二十二日、決まった。当初、糸満市摩文仁で九月二十三日に開く予定だったが、交通の便や会場の収容能力などから断念した。

 開催予定の変更は、二十二日、県議会で開かれた実行委員会準備会で決まった。沖縄戦最後の激戦地・糸満市摩文仁の平和祈念公園での開催を強く望む声があり、交通の便や会場の収容能力などの問題は解決できるとみられた。しかし、県警などから意見を聞いた結果、平和祈念公園内は狭隘で、目標の五万人の達成が困難なこと、駐車場やバス輸送で渋滞が生じることから会場の変更を決定。さらに、九月二十三日は宜野湾海浜公園で別の団体のイベントが開かれることから同月二十九日に変更になった。

 宜野湾海浜公園では一九九五年に米兵暴行事件に抗議する県民大会が開かれ、八万五千人が参加した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708231300_05.html

 

2007年8月23日(木) 朝刊 27面

対馬丸63年目の夏 1500人を鎮魂

 六十三年前の八月、米軍潜水艦に撃沈された学童疎開船「対馬丸」犠牲者の慰霊祭が、沈没した日と同じ二十二日、那覇市若狭の「小桜の塔」で行われた。会場には、生存者や遺族、関係者約二百五十人が参列。犠牲者約千五百人の冥福を祈り平和を誓った。流れる汗とともに涙をぬぐう参列者の姿もあり、今でも消えない悲しみに包まれた。

 対馬丸記念会の〓良政勝会長は「今、日本は歴史の重大な時期にきている。事実を事実として正しく次の世代に伝える責務がある」と追悼の言葉を述べた。

 四つ下の弟を亡くした島袋浩さん(74)=豊見城市=は、慰霊祭には毎年参加。「弟の死は十月に知った。対馬丸の沈没は誰にも言うなと口止めされていた。あのころは全部秘密でしたからね」と当時の状況を話した。

 同記念館では、犠牲者十三人の写真が追加展示。田港朝明さん(80)は、十二歳で亡くなった弟の写真を提供した。「元気なら七十五歳、今でも弟のことは、年中頭から離れない」と写真を見つめながら話した。

 式典で若狭小学校六年の児童らが合唱を披露した。また、参加者が、一斉に青い大空へチョウを放った。

※(注=〓は「高」の旧字体)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708231300_06.html

 

2007年8月23日(木) 朝刊 2面

普天間飛行ルート合意「最大限努力の結果」/重家大使離任会見

 駐韓国大使に転出する外務省の重家俊範沖縄担当大使は二十二日、那覇市内の沖縄事務所で離任会見し、米軍普天間飛行場の危険性除去策について、今月十日に発表したヘリコプターの飛行ルートや場周経路に関する日米合意が「最大限努力した結果だ」と指摘。さらなる運用改善は現状では困難との見方を示した。

 また、航空機事故を想定した在沖米海兵隊との実働訓練を、十月にも実施する方向で調整していることも明らかにした。

 普天間飛行場の危険性除去について重家大使は「米軍が運用に当たって安全性の徹底を図ることが第一に重要。先日発表した場周経路等の新しい措置も一つの努力の現われ」と強調した。

 その上で「ぎりぎり努力してきた結果があれ(場周経路などに関する日米合意)。抜本的には普天間飛行場を一日も早く移設することが大事」との認識を示した。

 重家大使は「ロードマップで合意したことは沖縄の負担軽減にとって重要な意味がある。再編計画の早期かつ着実な実施を図り、目に見える形で負担軽減が進むことを期待している」と在日米軍再編最終報告の進展に期待を寄せた。

 後任は駐マレーシア大使の今井正氏が九月以降に着任する見込み。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708231300_08.html

 

2007年8月23日(木) 夕刊 5面 

整地作業に住民反発/ヘリパッド移設

東村高江 現場 一時騒然

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設で、那覇防衛施設局は二十三日午前、N1地区への工事用進入ゲートから砂利などの資材の搬入作業を始めたが、反対する住民ら約二十人の阻止行動で、施設局職員と住民らがもみ合い、現場は一時騒然とした。施設局の職員らは同午前十一時五十分ごろ、作業を中断し引き揚げた。

 同午前九時四十分ごろ、施設局職員や警備員、業者ら約四十人がN1地区のゲート前に到着。住民らが阻止できないよう人垣をつくり、ゲート脇から砂利の入った袋を搬入し、道路の整地作業を始めた。同午前十一時二十分ごろ、砂袋を積んだトラックがゲート前に来ると、住民らが施設局の職員らを取り囲んで進路を防ぐなどした。施設局の職員と住民らが「邪魔するな」「作業をやめろ」と言い合い、緊迫した状況が続いた。

 二十二日夜から泊まり込みで警戒していた高江区の伊佐真次さんは「非暴力の阻止行動を展開している。(作業が進んでいるが)私たちにできることは座り込んで作業中止を訴えるしかない。高江の現状を多くの県民に知ってほしい」と話した。

砂を搬入しようとする施設局職員の進路を阻み、作業中止を訴える住民ら=23日午前10時すぎ、東村高江

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708231700_05.html

 

2007年8月24日(金) 朝刊 27面

砂辺で最悪121デシベル/06年度航空機騒音調査

 嘉手納飛行場周辺では砂辺の測定局を含む十五局すべてで、また普天間飛行場周辺では九測定局のうち六局で騒音レベルが「電車が通る時のガード下」とされる100デシベルを超過した。

 嘉手納飛行場周辺の騒音について県環境保全課は「最大値を測定したのは昨年十月だが、特別な訓練などの情報は無く理由は分からない」と説明。騒音が日常化している可能性を示唆した。

 〇六年度一日当たりの騒音発生回数が最も多かったのは、嘉手納飛行場周辺の嘉手納町屋良108・8回(前年度107回)。次いで北谷町上勢の89・5回(同80回)。両飛行場周辺の十二局で前年度を上回った。

 米軍飛行場の騒音をめぐっては一九九六年、日米間で午後十時―午前六時までの飛行制限などを盛り込んだ「騒音防止協定」が合意されている。

 しかし嘉手納飛行場周辺では屋良、嘉手納、美原の三局で、普天間飛行場では上大謝名と新城の二局で、夜間から早朝にかけての騒音回数が合意直後の数値を大幅に上回った。

 県は「騒音が周辺住民の生活に影響を与えている」として例年通り、米軍や那覇防衛施設局などに騒音軽減を申し入れる方針だ。


F22、他機種上回る113デシベル


 北谷町砂辺で二〇〇七年二月に離着陸した米軍最新鋭F22戦闘機の最大騒音値が113・1デシベルに達していたことが二十三日、分かった。県の航空機騒音測定の一部として公表された。戦闘機の機種別騒音値が判明したのは初めて。

 測定は〇七年二月二十日から四日間、嘉手納飛行場で離着陸した戦闘機について実施した。戦闘機はF22、F15、F18の三機種。目視で確認し、同飛行場周辺の騒音測定局五局で測定した。

 北谷町砂辺では、F18の騒音平均値が最も大きく104・7デシベル。F22が102・6デシベル、F15が90・1デシベルだった。一方、沖縄市知花ではF22が平均92・7デシベルで最大。F15で89・1デシベル、F18が88・1デシベル。

 戦闘機別騒音について県環境保全課は「離着陸の態勢で測定値にばらつきがあるものの、どの戦闘機も騒音が激しいことには変わりないようだ」と分析している。

 しかしF22の最大騒音値はほかの機種に比べて大きく、最新鋭機種の配備が騒音増大につながっている可能性もある。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708241300_02.html

 

2007年8月24日(金) 朝刊 2面

県のアセス反発を批判/防衛次官

 【東京】防衛省の守屋武昌事務次官は二十三日の定例会見で、米軍普天間飛行場の代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書の送付に県が反発していることについて、「名護市と相談した結果、V字案で合意し、前知事も了承した。それを合意していないと言うのはいかがなものか」と批判した。

 一方、自身の後任人事が混乱したことについては、「私の人事は大臣の判断に従うが、後任については話をしていただきたかった」と述べ、自身に相談なく人事案を固めた小池百合子防衛相の対応に不快感を示した。

 官邸で安倍晋三首相に会い、巻き返しを図ったと報道されたことには「私が総理に陳情を申し上げたことは一度もない」と“直談判”を否定。

 「公務員生活の最後をこういう形で取りざたされ、世間をお騒がせした」と十一日間に及んだ混乱を振り返り、退官後について問われると「しばらくはゆっくり休みたい」と話した。

 今後の沖縄の基地政策については「沖縄の問題は長い経緯がある。日米両政府で取り組んできて、その間、沖縄県側とも協議を重ねてきた。そういう延長戦でこの問題に取り組んでいくことが重要だ」と述べ、防衛省の重要課題として引き続き取り組む必要性を強調。

 沖縄の基地政策に長くかかわった経験から「私の後輩が仕事に取り組むことになると思うが、私の知見が必要であればいつでも協力したい」とも語った。

 同省の事務次官人事をめぐっては、七日に報道で自身の退任方針を知らされた守屋氏が反発するなど混迷。小池防衛相が推した警察庁出身の西川徹矢官房長の起用は見送られ、十七日になって防衛省生え抜きの増田好平人事教育局長を充てる人事が内定し決着した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708241300_03.html

 

2007年8月24日(金) 朝刊 26面

報道19社「尋問公開を」/「集団自決」訴訟

 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、旧日本軍の戦隊長らが岩波書店などに出版の差し止めなどを求めて大阪地裁で争われている訴訟で、九月十日に福岡高裁那覇支部の法廷で行われる所在尋問(出張法廷)が非公開とされることについて、司法記者会の加盟全十五社と那覇市に拠点を置く報道四社は二十三日、大阪地裁に法廷の公開を求める要請書を連名で送付した。

 大阪地裁広報課によると、裁判の公開を定めた憲法八二条は対審や判決を公開の法廷で行うと規定しているが、所在尋問は同条の「対審」(民事訴訟は口頭弁論)に当たらないという判例があり、必ずしも公開はしていないと説明している。

 一方で所在尋問を積極的に非公開とする法的な根拠はないという。

 渡嘉敷島の「集団自決」の体験者として当日証言する金城重明さん自身も、法廷の公開を求める上申書を大阪地裁に提出している。

 報道各社の要請では、「法廷の公開は裁判公開の原則を定めた憲法の趣旨に合致するとともに、県民と国民の知る権利にこたえ、開かれた司法への信頼を高めることになると確信する」としている。

 要請で(1)法廷の公開(2)記者席の設置(3)冒頭の法廷内撮影―を求めた。

 要請したのは、NHK沖縄放送局▽沖縄タイムス▽沖縄ケーブルネットワーク▽沖縄テレビ放送▽琉球朝日放送▽琉球新報▽琉球放送。那覇総局や支局は朝日新聞▽共同通信▽産経新聞▽時事通信▽西日本新聞▽日本経済新聞▽日本テレビ放送網▽毎日新聞▽宮古新報▽宮古毎日新聞▽八重山毎日新聞▽読売新聞。


「世論 委員に伝えた」/連合要請に文科省回答


 【東京】連合沖縄の仲村信正会長は二十三日、文部科学省に同省初等中等教育局教科書課の伯井美徳課長を訪ね、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の関与を削除した教科書検定の撤回を要請した。

 仲村会長によると伯井課長は、文科省職員の「教科書調査官」が日本軍の関与を示す記述の削除を求めた「調査意見書」を教科用図書検定調査審議会(審議会)に提出し、同意見書に沿って検定意見書が作成された経緯を連合側が指摘すると「その通りだ」と認めたという。

 一方で「審議会の委員は学術的、専門的に審議をしており、(文科省側が)意見を言うことはできない」との従来見解を繰り返したという。

 仲村会長が「委員は沖縄で調査をしたのか」と指摘すると「していない」と答えた。

 また、伯井課長は、県内の全四十一市町村議会と県議会が教科書検定の撤回を求める意見書を可決したことを念頭に「沖縄の世論の盛り上がりは審議会委員に伝えた」と述べた。

 仲村会長は要請後、「十月に開かれる連合の定期大会で教科書問題を連合沖縄から提起し、全国の理解を求めたい」と述べた。

 同行した沖教組の大浜敏夫委員長は「審議会は隠れみので、検定意見は調査官が作っていたことが明らかになった」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708241300_06.html

 

2007年8月24日(金) 夕刊 7面

ヘリパッド反対派が「住民の会」/東村高江

 【東】米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江周辺へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設に反対する住民が、二十四日午前「ヘリパッドいらない住民の会」(安次嶺現達、伊佐真次、宮城勝己共同代表)を結成し、現地で反対集会を開いた。会は東村住民で構成し、村外の賛同者にも支援を呼び掛ける。

 那覇防衛施設局が二十三日、N1地区への工事用進入ゲートから、砂利などを搬入、道路整地作業に着手したことから本格的工事を阻止するため結成された。

 安次嶺共同代表は「やんばるでも貴重な自然が残っているのは、ここだけだ。力を合わせて反対していこう」と呼び掛けた。集会では、水源地に近い貴重な自然環境と暮らしを守り、非暴力で行動することなどの活動方針を確認した。

 この日、現地では、施設局による作業を警戒して、村外からの支援者も含め五十人余りが集まった。沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「幅広い支援を呼び掛け、住民らを支えていきたい」と話した。午前十二時半、施設局による作業は行われていない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708241700_05.html

 

2007年8月25日(土) 朝刊 1・27面

沖縄関係3125億円/08年度内閣府概算要求

IT・観光を重視/アジア戦略鮮明

 【東京】内閣府沖縄担当部局は二十四日、二〇〇八年度の沖縄関係予算で総額三千百二十五億円の概算要求をまとめた。ソフトを柱とした事業は情報技術(IT)、観光の両分野を特に重視。高市早苗沖縄担当相が沖縄の自立に向けた最重要課題に挙げる人材育成は、四種類の新規事業を配置して力点を置いた。これらの分野に共通して、沖縄をアジアの拠点と位置付けて観光客や企業、高度な人材などを呼び込む「海外戦略」を幅広く盛り込んだのも特徴だ。

 公共事業中心のハード分野では、施設工事が本格化している沖縄科学技術大学院大学関連の要求額を大幅に増加させた。

 概算要求の総額は、〇七年度の当初予算額比で18・3%(四百八十二億円)増加した。概算要求基準(シーリング)で前年度予算額から3%を引き、それに20%分の上積み要求することが認められているためで、年末の予算編成では〇七年度の二千六百四十二億円を割り込む可能性が高い。

 沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(島田懇談会事業)が、米軍ギンバル訓練場の跡地利用関連を除いて〇七年度で終了した影響で、ソフトを柱とした事業額は5・4%(十五億円)減少。ハード分野は21・2%(四百九十八億円)増加した。

 北部振興事業費は「普天間飛行場の移設に関する地元との協議が円滑に進む状況にあり得る」と判断。〇八年度も引き続き百億円(公共五十億円、非公共五十億円)を要求する。

 ソフト関連の新規では、沖縄に高度なIT関連産業を集積する「IT津梁パーク」整備事業で、十億円の大規模予算を要求。観光関連では、国際観光地としての受け皿づくりをするプロモーション事業などを創設した。青少年から経営者まで、多様な層の人材育成事業も網羅した。

 離島振興策では、本島との情報格差を防ぐため、宮古・八重山地域で地上デジタル放送への円滑な移行を推進する事業や、離島間で広域連携するモデル事業などを要求する。

 ハード分野では新規の大型公共事業はないが、〇八年度に研究棟、管理棟の工事が本格化する大学院大学関連は〇七年度予算比78・7%(六十八億七千百万円)増の百五十五億円を要求する。

 自民党の沖縄振興委員会・大学院大学小委員会合同会議は同日、内閣府の概算要求を了承した。


要求内容に謝意


 【東京】内閣府の二〇〇八年度概算要求がまとまったことを受け、仲井真弘多知事は二十四日午後、「かなりきめ細かい要求や、(自身の)公約によく沿ったものをくみ上げていただいた」と謝意を示した。自民党沖縄振興委員会・大学院大学小委員会合同会議に出席後、同党本部で記者団に答えた。

 仲井真知事は「高市早苗沖縄担当相が率先して沖縄の要求、ニーズに合うテーマを大小、いろいろ取り上げていただいた」と述べ、県側の要望に沿った要求内容になっているとの認識を強調。

 「少し大物(大規模事業)になると、那覇空港の第二滑走路も加速していこうではないかという感じも出ている」と評価した。


     ◇     ◇     ◇     

民放地デジ宮古へ/八重山拡大にも布石


 内閣府は二十四日、二〇〇八年度予算の概算要求で、宮古・八重山地区に地上デジタル放送を拡大するための海底光ケーブル改修を盛り込んだ。宮古島まで民放三局のデジタル波が届くことになり、八重山地域にとっても「足掛かり」となる。内閣府予算とは別に、総務省や県の支援を得ることで、宮古・八重山全域がカバーできる見通し。一一年のアナログ放送終了を前に、情報格差を懸念していた地元から期待の声が上がった。一方、ギンバル訓練場跡地に「がん免疫療法施設」などを整備する「ふるさと整備事業」が盛り込まれた金武町では、ヘリパッドの移設をめぐり、複雑な反応を示した。

 「先島地区地上デジタル放送推進事業」は県が事業主体となり、内閣府は八割の四億九千七百万円を補助する。沖縄本島と宮古島を結ぶ既設の海底光ケーブルや関連施設でデジタル波を流せるように機器類を改修する。

 琉球放送(RBC)と沖縄テレビ放送(OTV)、琉球朝日放送(QAB)の三局が利用できるようにする。宮古島以外の宮古・八重山地区へは、島伝いに置かれた送信機の改修が必要となるが、総務省や県の補助を得ることを想定。NHKは独自に計画を進めている。

 宮古・八重山五市町村の首長や議長会は一体となり、県や国に整備を要請。伊志嶺亮宮古島市長は「県と国に感謝したい。離島の情報格差を生じさせないことは、住民のために良かった」と語った。

 大盛武竹富町長は「第一段階をクリアしたという思い。国はしっかりと予算を認めてほしい」と期待を込めた。

 石垣ケーブルテレビ情報通信事業部の矢野修一課長は「地元のニュースや情報を自主制作しているが、民放に合わせてデジタル化するには高額な機材をそろえなければならない。アナログ放送終了までに間に合わせたい」と話した。

 一方、同様に整備の遅れが懸念されている南北大東両村について、内閣府は現段階では方向性を示していない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708251300_01.html

 

2007年8月25日(土) 朝刊 2面

伊吹文科相「軍関与なら問題ない」/「集団自決」修正

 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除された問題で、県選出、出身の自民党国会議員でつくる五ノ日の会(会長・仲村正治衆院議員)は二十四日、文部科学省に伊吹文明文科相を訪ね、検定の撤回を要請した。仲村会長らによると、伊吹文科相は、軍の関与を容認した上で「すべてで『軍命』があったわけではない。『軍の関与』という表現であれば、次回の検定で問題とならないだろう。出版会社にお願いしてはどうか」などと提案したという。

 伊吹文科相は今回問題となった検定意見の撤回については「大臣の立場としては言えない。大臣が一度検定に介入する例をつくってしまうと、別の検定にも影響が出てくる」などと困難視。

 しかしその一方で「私も近々大臣を辞めるのでどうこう言うわけにはいかないが、『軍の関与』という表現ならいいのではないか。教科書出版会社に『軍の関与』という表現を使用するようお願いしてはどうか」などと述べ、「軍の関与」という表記であれば次の教科書検定で合格できるとの見解を示したという。

 伊吹文科相は県議会が全会一致した「検定結果の撤回を求める意見書」の表記が「軍命」ではなく「軍の関与」となっていることに「知恵を出した表現だ。来年の教科書を書くならば、そういう形で書かせたほうがいいのではないか」と語ったという。

 仲村会長らはこの日、同省の布村幸彦審議官とも面談。今回の検定意見に「事実を明記すべきだ」と抗議し、教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」の会長との面会を強く求めたが、明確な回答はなかったという。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708251300_05.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月25日朝刊)

[アフガン・イラク]

関心が薄らいでないか

 二〇〇一年、アメリカで同時多発テロが起きたとき、私たちは翌日朝刊の社説で「憎悪の連鎖を憂慮する」との見出しを掲げ、次のように書いた。

 「今度の同時多発テロは、米国だけでなく世界の人々の戦争観や安全保障観を変える大きなきっかけになるような気がする」

 アフガニスタンのタリバン政権もイラクのフセイン政権も米軍の強大な軍事力の前になすすべもなく崩壊したが、それで戦争が終わったわけではない。

 むき出しの暴力が今なお、両国で頻発している。民間人の犠牲は増える一方だ。治安は回復せず街は戦闘で荒廃、国境周辺や隣国にはテロや殺りくを逃れた難民が殺到している。

 旧政権タリバンの活動が活発化しているアフガンでは、韓国人二十三人が拉致され、うち二人が殺害されるという事件が起きた。事件はまだ解決していない。

 内戦状態にあるイラクも深刻だ。駐留米軍は過去最大の十六万二千人に達しているが、大規模な爆弾テロや暗殺を封じ込めることができない。

 アフガンとイラクで泥沼の戦闘が続いているにもかかわらず、日本人の関心は急速に薄らいでいるのではないだろうか。

 「今更どうにもならない」という無力感や、戦争報道に対する感覚のまひが広がっているような気がする。

 「過激派拠点爆撃、二十人死亡」「米軍応戦で十六人死亡」「自爆テロ二百五十人死亡」。読者はこのような戦争報道に慣れてしまい、感情の動きが鈍くなったのかもしれない。

 新聞の見出しからは犠牲者のうめき声も死体の腐臭も伝わってこない。生身の人間が統計数字のように抽象化されている。

 映画「カンダハール」の監督として知られるイラン人のモフセン・マフマルバフ氏はかつて、バーミヤンの仏像破壊に触れて「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない。恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」と指摘した。

 「アフガニスタンの虐げられた人びとに対し、世界がここまで無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないと知って砕けたのだ」

 韓国人拉致・殺害事件の被害者家族は、事態の長期化で内外の関心が薄れることに危機感を抱き、早期解決を求める家族の映像を動画サイト「ユーチューブ」に投稿したという。

 復興支援や後方支援の形でかかわっている日本はいわば戦争の「準当事国」である。それだけになおさら、関心の低下が気になる。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070825.html#no_1

 

2007年8月25日(土) 夕刊 4面

米公文書開示の取り組み説明/カーツ氏 講演

 講演会「米国における政府公文書へのアクセスの保証」(主催・在沖米国総領事館、県公文書館)が二十四日、南風原町の県公文書館で行われ、米国国立公文書館・記録管理庁記録サービス局長のマイケル・J・カーツ氏が米国の公文書の記録管理や情報開示の取り組みを説明した。約百三十人が訪れ、公文書の公開制度について理解を深めた。

 カーツ氏は、各省庁の行政文書などの記録を管理し保存公開する、米国国立公文書館(NARA)の役割について解説。「国の安全保障やプライバシーなどの理由から、アクセスに制限がかかっている公文書がある」ことを強調した。

 その上で、国家機密情報開示政策(NDI)の取り組みを説明。情報開示の優先順位を付けたり、各省庁からエキスパートを派遣し、スムーズな制限解除決定を行うよう務めていることなど、具体的活動を紹介した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708251700_04.html

全都道府県で呼応集会を開きましょう

 沖縄戦での皇軍による「強制集団死」否定教科書検定は、従軍慰安婦否定、南京虐殺否定、東京裁判否定と共に、安倍内閣
による歴史偽造の1つの頂点です。

 沖縄全県を保守革新を問わず憤激の正当な感情が覆っています。沖縄県全市町村議会と2回決議した県議会をふくめ島ぐるみの闘いの様相を示しています。

 1995年10・21大集会を超える参加者数と全国的広がりが求められています。

 

 全力で全国から12年前の大集会と同じ「宜野湾海浜公園」へ結集しましょう。

 

 また、他の全46都道府県で呼応集会を超党派で開きましょう

 

以下に琉球新報の報道を紹介します。

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26538-storytopic-1.html

 

【琉球新報】

来月29日、宜野湾に変更 「検定」県民大会

 「教科書検定意見撤回を求める」沖縄県民大会実行委員会が22日、県議会内で開かれ、大会を9月29日午後3時から宜野湾市海浜公園多目的広場で開催することを決めた。当初、糸満市摩文仁の平和祈念公園で開く方向で調整していたが、5万人以上の動員を目指す立場から、交通の利便性がよい宜野湾市開催を了承した。期日は9月23日開催で決まっていたが、会場が確保できないため29日に変更した。

 実行委員会は今後県内約千団体に大会への参加を呼び掛けていく。事務局体制は、実行委員会の中に県議会与党代表、野党代表の計2人を幹事として配置する方向。

 この日の会合には、県議会をはじめ、県子ども会育成連絡協議会や県老人クラブ連合会、高等学校PTA連合会など呼び掛け団体、賛同団体から18人が出席した。

 県議会事務局から(1)平和祈念公園は戦没者追悼の地で大会趣旨に沿うが交通が不便(2)宜野湾市海浜公園多目的広場は会場の収容能力や交通の利便性が高い一方、大会の意義付けに乏しい場所?など二会場の利点、欠点が説明された。

 仲里議長は「参加人数を確保でき(宜野湾市海浜公園でも)慰霊の気持ちを示す方法はあると思う。予算面も抑えられる」と話した。

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月19日、21日、22日)

沖縄タイムス 社説(2007年8月19日朝刊)

[防衛次官人事]

負担軽減目指せる配置か

 大臣と事務方のトップである事務次官の確執で混迷を深めていた防衛省の次期事務次官人事がやっと決着した。

 在任四年を超えた守屋武昌次官の後任には、小池百合子防衛相が推した警察庁出身の西川徹矢官房長ではなく、防衛省生え抜きの増田好平人事教育局長を昇格させた。

 二十七日に予定していた次官人事を早めたのは、急落する内閣支持率のマイナスイメージをこれ以上拡大させないための判断があったという。だが、防衛相と事務方トップのあからさまな反目は既に国民が知るところである。

 “けんか両成敗”とはいえ、約十日間にわたるドタバタ劇が、安倍晋三首相の閣僚、省庁幹部掌握力の弱さを浮き彫りにしたのは間違いない。

 選挙で選ばれた大臣に事務方が公然と盾突くという事実はまた、安倍内閣が末期症状にある証しと見ていい。

 とはいえ、防衛省事務次官の人事は沖縄にとっても人ごとではない。

 在日米軍再編の大枠の中で、沖縄の基地が占める割合は相当なものがある。その米軍基地施設をめぐる個々の問題を掌握するのが防衛省だからだ。

 普天間飛行場の代替施設建設地となる名護市辺野古キャンプ・シュワブ沿岸部の現況調査の際、調査支援の名目で海上自衛隊の掃海母艦派遣を当時の久間章生防衛相に進言し協議したのは守屋次官だと伝えられている。

 県や名護市が普天間飛行場移設に伴う環境影響評価(アセスメント)を受け入れないため、「北部振興事業を凍結」させたのも同次官の意向によるとの見方が根強い。

 アセス方法書を県、地元と調整せずに送り付けるなど、強引に事を進めようとしたこともしかりだ。

 増田局長は一九七五年の入省だが、日米地位協定や普天間飛行場代替施設問題に関係しただけで、「沖縄問題」に深くかかわった経歴はない。

 複雑なテーマに新次官としてどう取り組んでいくのか。守屋次官と同じように地元を無視し強硬姿勢を貫くのであれば反発を招くのは必至だ。

 辺野古沿岸部のアセスについては、仲井真弘多知事が「きちんとした手続きを踏んでなく、ルールに反する」と述べていることも忘れてはなるまい。

 普天間飛行場の危険性除去を含む負担軽減は喫緊の課題だが、実際には地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の嘉手納基地配備や金武町キャンプ・ハンセン内への新たな射撃演習場建設計画など軽減より先に負担の方が増している。新次官にはこのような沖縄の現実を直視してもらいたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070819.html#no_1

 

琉球新報 社説

防衛次官に増田氏 頭越し基地政策の転換を

 すったもんだの末、防衛省の次官人事がやっと決着した。守屋武昌次官を退任させ、後任に防衛省生え抜きの増田好平人事教育局長の昇格が内定した。小池百合子防衛相は当初、警察庁出身の西川徹矢官房長を次官にとの意向だったが、かなわなかった。政権のマイナスイメージ拡大を恐れた官邸主導による“けんか両成敗”となった格好だ。

 それにしても、一連の事態を見ると、安倍晋三首相の反応の鈍さが、またしても目立つ。参院選の惨敗による首相の求心力の低下をここでも見せ付けられた思いがする。秋の臨時国会に向けて、普天間飛行場移設はじめテロ対策特措法延長、集団的自衛権行使に関する憲法解釈見直し問題など、同省がかかわる課題は山積する。省挙げての対応が要求されるだけに、指揮系統の統一性、組織としての一体性が何より肝要だ。

 とりわけ、県民にとっては今回の人事が普天間移設問題にどう影響するのか。最大の関心事だろう。県や名護市にとって“強硬派”とされる守屋氏の退任で「政府の基本姿勢が後退する可能性がある」とする見方があるのは事実だ。つまり、政府が主張する辺野古沖の普天間代替V字案が後退し、県や名護市が主張する修正案が浮上する、というシナリオだ。

 確かに、小池防衛相はかつて沖縄担当相も務め、沖縄通との自負があろう。県内でも期待する声がある。だが、そのことが必ずしも沖縄側に有利に働く、と考えるのは早計だろう。早い話、環境影響評価(アセスメント)方法書を県や名護市、宜野座村に強行提出したのも小池防衛相の主導だ。

 沖縄を理解し、精通している分、逆に強硬に出てくる、という可能性も考えられよう。現に、「(小池防衛相は)守屋次官との間に大きな政策的相違はない。沖縄に対して厳しい姿勢で臨むだろう」とみる向きが防衛省内にある。

 新次官と防衛相にはあらためて要求したい。V字案にしろ修正案にしろ、地元をないがしろにして事は運ばない。さらに、日米合意に固執することなく、県外移設の可能性も模索するべきだ。

(8/19 10:43)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26446-storytopic-11.html

 

2007年8月21日(火) 朝刊 2面

施行令に指定条件/再編交付金

 在日米軍再編への協力度合いに応じて関係市町村に「再編交付金」を支給する米軍再編推進法の施行令が閣議決定されたことを受け、那覇防衛施設局は二十一日、局内で県内の関連自治体を対象に説明会を開く。

 説明を受けるのは県のほか、名護市、国頭村、東村、金武町、宜野座村、恩納村、沖縄市、嘉手納町、北谷町、うるま市、読谷村、北中城村、浦添市、那覇市の十四市町村。施行令は補助金かさ上げの対象になる「再編関連振興特別地域」の指定条件として(1)航空機が四十機を超えて増加(2)部隊の人員が一千人を超えて増加―を追記。

 一方で、再編実施の進ちょくに支障が出た場合、防衛相が再編交付金を減額またはゼロとすることができると規定。再編交付金の支給対象となる自治体は明記していない。

 防衛省は米軍普天間飛行場代替施設の建設予定地となる名護市については「再編関連振興特別地域」に該当するとの認識を示す一方、現段階では「再編案の受け入れ表明があいまい」として交付金の支給対象とするかは明らかにしていない。

 同法は十五日に施行令を閣議決定、二十九日に施行される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708211300_05.html

 

2007年8月22日(水) 朝刊 1面

「集団自決」修正/日教組 大会で撤回決議へ

 日本教職員組合(森越康雄委員長)は、高校歴史教科書の沖縄戦の記述から「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除・修正した文部科学省の検定意見の撤回と、記述の回復を求める決議を今月末に開かれる第九十五回定期大会で、採択する。決議案は現在調整中としているが、同教組は「沖縄戦の歴史歪曲を許さないとの決意を盛り込む」としている。日教組は組合員約三十二万人で組織する国内最大の教職員組合。教科書検定問題をめぐっては地理教育研究会、歴史教育者協議会などが撤回を求めており、全国的な広がりを見せている。

 同教組は来月には、同問題に関する全国集会も開催する予定で、検定意見の撤回を求める署名活動も行っている。県高教組の松田寛委員長は「県内だけでなく、全国でも動きが広がってきている。九月二十三日には県民大会も控えており、今後も波状的に検定意見の撤回を訴える必要がある」と決意を述べた。沖教組の大浜敏夫委員長は「同じ教員として、沖縄戦の真実を歪めないという思いを共有するとともに、何としても撤回を求めるという思いを一つにしたい」と語った。

 沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会の山口剛史事務局長は「両教組を中心にこれまでも全国に運動を呼び掛けていく努力は続けられてきたが、大会であらためて一つの方針として位置付けられるだろう。日本の歴史認識の問題として、実践でも共にやり抜きたい」と歓迎した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708221300_02.html

 

2007年8月22日(水) 朝刊 2面

旧那覇飛行場/地主会、高度がん施設を提案

 旧那覇飛行場用地問題解決地主会の金城栄一会長は二十一日、那覇市役所に平良克己平和交流・男女参画室長を訪ね、市が実施した同問題事業可能性調査に基づき、同地主会が作成した独自の事業案を提出した。

 提案書では、県全体規模の事業展開として、がん治療に特化した高度先進医療の導入を目指す沖縄「がん」センター構想のほか、新型路面電車(LRT)導入、南部地区での温泉施設計画、都市基盤整備―の四案を提示している。

 金城会長は「ぜひ本年度の概算要求に調査費を計上するよう、那覇市も積極的に県に働き掛けて取り組んでほしい」などと要望し、早期解決を促した。

 平良室長は「地主会からの新規の事業提案として、市で検討していく」と述べ、同問題の解決には地主会の意見が最も重要だと強調した。

 市は二十二日にも県基地対策課に同提案書を示し、事業案を検討していく考え。また、早ければ十月にも各部署の課長らでつくる同問題解決のためのワーキングチームを立ち上げ、地主会からの案が法的に可能かどうかなどについて議論したいとしている。

 同地主会は市議会にも事業案を提示し、同問題の早期解決などを求めていく予定。


旧軍飛行場地の補償急務/問われる県の指導力


 戦時中に接収された旧軍飛行場用地の補償問題で、県は本年度中に各地主会からの事業案をとりまとめ、来年度の予算化に向けた作業を本格化させる。ただ、同問題の解決は、二〇〇二年に初めて沖縄振興計画で「戦後処理の課題」に位置付けられてからすでに五年が経過。地主からも「遅々として進まない」との指摘もあり、一一年度終了まで残り五年のタイムリミットが迫る中で、作業の加速化が急務となる。

 県は同問題の解決の手法として「団体補償」を方針としている。

 ただ、個人補償を求める地主会もあることから、県は〇六年度に、那覇市が実施した同問題事業可能性調査報告について今年五月から今月にかけ、九地主会へ説明会を開催。具体的な事業案の提示と団体補償方式による解決についての理解などを求めてきた。

 県の保坂好泰基地防災統括監は「県は団体補償の方式でいく方針。ただ、事業案については、地主会によっても作業の進み具合に違いがある状況。先行しているところや市町村を優先して国との調整や要望を実施していきたい」としている。

 県は市町村や地主会から上がってきた具体的な事業案について一緒に検討作業を進める方針。

 だが最終的に国に要望する際の方針は「県と関係六市町村で構成する連絡協議会の場で決定する」(県基地対策課)としており、市町村からの事業案提出の締め切りや連絡協議会の開催スケジュールなどは今のところ示されておらず、県の取り組み姿勢のあいまいさは残る。

 長年、問題解決に向け取り組んできた旧那覇飛行場用地問題解決地主会の金城栄一会長は「振興計画に位置付けられて五年が経過しており、対応が遅過ぎる」と厳しく指摘。

 別の地主も「地主も高齢化している。戦時中の土地接収から現在まで翻弄されてきた住民、地域の問題として早く解決してほしい」と訴える。

 振興計画に位置付けられながらも手付かず状態の課題ともいえる同問題。早期解決のためにも、県が強いリーダーシップを取りながら市町村と連携し、早急な国との折衝が必要となる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708221300_04.html

 

2007年8月22日(水) 朝刊 2面

再編交付金/PAC3支給対象

 那覇防衛施設局は二十一日、県内の関連自治体を対象に、在日米軍再編への協力度合いに応じて「再編交付金」を支給する米軍再編推進法の説明会を開いた。嘉手納基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)配備や、キャンプ・ハンセンなどでの自衛隊との共同使用化に伴う負担も交付対象になることを明らかにした。補助金かさ上げの対象になる「振興特別地域」については、米軍普天間飛行場代替施設の建設予定地にかかる名護市などが該当するとの見通しを示した。

 一方で同法は、支給の是非や額が政府の「さじ加減」に委ねられる側面も目立ち、出席した自治体関係者には戸惑いも見られた。

 同法施行令は、再編交付金の支給対象となる「特定周辺市町村」と、補助金かさ上げの対象になる「振興特別地域」の指定要件を規定。

 再編交付金について施設局は、負担の増加と軽減を数値化する「点数制度」が導入されると説明。これにより、本土への一部訓練移転とともに、自衛隊との共同使用が予定されている嘉手納基地の周辺自治体の場合、支給額が相殺される見通しとなった。

 施行令は、再編の実施に向けた措置の進ちょくに支障が生じた場合、防衛大臣が再編交付金の年度交付限度額を減額またはゼロとすることができると規定。施設局は普天間飛行場代替施設の受け入れに対する名護市の現状のスタンスをどう判断するかは触れなかった。

 また、施行令は「交付しない事業」として、特定周辺市町村の区域内にあっても「再編により影響を受ける住民の生活の安定に資するよう適切に配慮された地域で行う事業とは認められないもの」を例示。普天間代替施設建設に伴う振興策を、名護市の東海岸地域に重点的にシフトさせる狙いがあるとみられる。

 一方、(1)航空機が四十機を超えて増加(2)部隊の人員が一千人を超えて増加―を指定要件としている振興特別地域について施設局は、岩国基地と普天間代替施設の建設予定地のキャンプ・シュワブが「該当するのではないか」と言及した。同地域は、特定周辺市町村と隣接市町村を一体として振興を図る。関係市町村の意向を踏まえ、知事が国に申請する。

 説明会には県のほか、中北部を中心に十四市町村から約五十人の担当者が出席。同法は十五日に施行令を閣議決定、二十九日に施行される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708221300_05.html

 

2007年8月22日(水) 朝刊 2面

新射撃場建設/米大使館に中止要請

 【東京】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設問題で、金武町議会の松田義政議長らは二十一日も引き続き在日米国大使館、首相官邸を訪ね、建設計画の即時中止を申し入れた。

 松田議長によると、米国大使館のレイモンド・グリーン安全保障政策課長は「訓練をほかの場所でできないか検討はしたが、キャンプ・ハンセンしかないという結論となった。訓練は従来よりも安全で効率的に行える」と理解を求めたという。

 首相官邸で応対した鈴木政二官房副長官は、建設計画の中止には言及せず、「米側には安全性を徹底するようしっかりと伝えたい」と述べるにとどめたという。

 二十日からの要請を終えた松田議長は「米側の意向に追従するだけで、負担増を訴える地元の政府との温度差は大きい。まだ射撃場は建設されておらず、今後も阻止を働き掛けていきたい」と語った。


射撃場反対で伊芸区が決議

近く中止求める


 【金武】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設問題で、「レンジ3」に近接する伊芸区の臨時行政委員会が二十一日午前、同区公民館で開かれ、射撃場建設に反対する抗議決議、要請決議案を全会一致で可決した。

 あて先は、抗議決議は外務省沖縄担当大使、那覇防衛施設局長、在沖米国総領事。要請決議は県知事、県議会議長。

 抗議決議では、レンジ4都市型訓練施設のレンジ16への移転が決まった経緯を踏まえ、「地元の意思をまったく無視し、レンジ3に実弾射撃場の建設を容認したことは、日本政府の政治姿勢の弱さと米軍の占領意識と人命軽視によるものだ」と批判。その上で、「伊芸区民は日米両政府が強調する安全性を誰一人信用していない。新たな軍事施設は住民の生活を脅かす基地の機能強化につながり断じて許されない」として、建設計画の即時中止を強く訴えている。

 要請決議では、県に対して建設中止に向けた協力を求めている。

 近く池原政文区長と委員全員で要請行動を展開する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708221300_06.html

 

琉球新報 社説

さんご礁急減 地球温暖化に歯止めを

 太平洋やインド洋の一部で、さんご礁の生息状況が過去四半世紀の間に急激に悪化、地球規模でサンゴの破壊が進んでいることが、米ノースカロライナ大のグループによる調査で明らかになった。

 地球温暖化によって水温が上昇したことが要因とみられている。各国は、温暖化のもとになっている温室効果ガスの排出抑制に向け、一致して取り組むべきだ。

 ノースカロライナ大のグループは、日本の南西諸島、伊豆諸島、小笠原諸島やハワイ、オーストラリアのグレートバリアリーフなどの海底でサンゴが覆っている面積の経年変化を調査。2667カ所で調べた6000件を超えるデータを解析した。

 サンゴの被覆率は1980年以前で50%以上だったとみられるが、90年代半ば以降に急減し、2003年は平均22%にまで落ち込んでいた。

 さんご礁の破壊をこのまま手をこまねいて見ているわけにはいかない。地球規模で対策を講じることが急務だ。

 京都議定書は、温室効果ガスの排出量を2008―12年に先進国全体で1990年に比べ約5%削減することを義務付けている。

 日本は平均で6%削減することになっているが、05年度の排出量は逆に悪化し7・8%も増えていた。このままでは議定書自体が絵に描いたもちになりかねない。

 日本が先頭に立って目標達成に取り組み、官民挙げて省エネルギー対策などを推進しなければならない。

 国民一人一人が、職場や家庭で節電に努めるなど省エネを実践することも大切だ。

 サンゴの減少率は森林を大きく上回っており、年間3000平方キロを超えるペースで減っていると推定されている。

 沖縄には、ダイビングが目的で訪れる観光客も少なくない。貴重な観光資源であるさんご礁が失われては、観光の魅力が半減してしまうだろう。

 これ以上の環境悪化には、何としても歯止めをかけなければならない。

(8/22 9:46)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26502-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月16日、17日、18日)

2007年8月16日(木) 朝刊 23面

「ひめゆり」次世代へ/Coccoさんトーク熱く

 【東京】終戦記念日の十五日午後、元ひめゆり学徒の証言記録映画「ひめゆり」の特別上映会が新宿区四谷区民ホールで開かれた。元学徒の二人と歌手のCoccoさんのトークショーもあり、Coccoさんは会場の若い世代に向け、「まずは聞き、知ってほしい」と、戦争の悲惨さを後世に伝えようと呼び掛けた。

 Coccoさんが同映画を支援したことがきっかけで企画された。十六日まで開かれるが、計八百五十席に三千件以上の応募があり、抽選で選ばれた人たちが集まった。ひめゆり学徒隊を通して紹介される沖縄戦の映像に、客席からすすり泣きが聞こえた。

 上映後は柴田昌平監督を司会に、島袋淑子さんと宮城喜久子さんの元学徒がCoccoさんを交えてトーク。宮城さんは学友の死を「絶対に忘れてはいけない。若い人は命を大切にしてください」と語った。

 島袋さんは「(戦争前も戦争中も)何も知らないまま戦場に出された。知らない、知らされないことほど怖いものはない」と訴えた。Coccoさんは「あの体験をしゃべる勇気に比べ、私たちがそれを見て聞く勇気なんて小さい。おばぁたちに感謝したい」と話した。

 ミニライブでは、「お菓子と娘」などを熱唱した。同映画は今月十九日に名護市民会館、二十、二十一日には沖縄市民小劇場あしびなーでも上映される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708161300_04.html

 

2007年8月16日(木) 夕刊 1面

金武町議会 抗議決議へ/米新射撃場

 【金武】金武町の米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用の小銃(ライフル)用射撃場が建設される問題で、金武町議会(松田義政議長)は十六日午前、全体協議会を開き、早ければ十七日にも臨時議会を開き、抗議決議を行うことを決めた。

 自衛隊によるキャンプ・ハンセンの共同使用についても反対していく方針を確認し、基地機能の強化に抗議の意思を示す。

 全体協議会では儀武剛町長が、住宅地に近いレンジ3に射撃場を建設する計画があることを説明。

 「レンジ4の都市型戦闘訓練施設に町民、県民挙げて反対したその近くに、新たな施設を造るということが理解できない。断固として反対する」と町の姿勢を伝えた。

 全体協議会では、「新たな施設を造るということはもってのほか。早急に反対決議すべきだ」「金武町として容認できる問題ではない。これ以上の基地機能強化は認められない」と建設反対の声が相次いだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708161700_01.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 1面

三重の人的ミス原因/嘉手納・燃料漏れ

バルブ閉め忘れ・交代報告せず・確認怠る

 【中部】米軍嘉手納基地で今年五月、ジェット燃料が流出した問題で、同基地第一八航空団は十六日、「担当者が燃料タンクの送油管のバルブを閉め忘れたことと、不十分な勤務の引き継ぎが原因」とする調査結果を発表した。流出量は当初は約八千七百リットルと公表していたが、その後の調査で約一・七倍の約一万五千リットルに増えたことも明らかにした。人的なミスによる流出に、地元から反発の声が上がった。

 米軍の発表などによると、担当者が燃料タンクの送油管のバルブを閉め忘れただけでなく、勤務交代の際に、使用するタンクが変わったことを交代要員に報告しなかったため、指定外のタンクが誤って継続使用されたという。

 さらに、タンクへの燃料供給過剰を示す警報装置の警告を担当者が確認したが、流出の確認作業を怠ったことも判明。同航空団は装置を監視する専門要員を新たに配置するとしている。

 懸念されていた環境への影響については「水源に達することはなかった」と結論付けた。

 米軍からの報告を受けた那覇防衛施設局は十六日、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(会長・野国昌春北谷町長)に調査内容を説明した。

 野国会長は「当初の発表と量が違うのはどういうことか。人的なミスであり、管理がずさんすぎる。再度、県や地元の立ち入りを認め、確認させるべきだ」と不満をあらわにした。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_02.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 31面

琉大事件 処分取り消し/51年ぶり不当認める

きょう学長が謝罪の意

 一九五六年、島ぐるみ闘争のデモに参加した琉球大学の学生七人が除籍処分などを受けた「第二次琉大事件」で、琉大は十六日までに、五十一年ぶりに「不当処分」だったことを認め、取り消しを決めた。岩政輝男学長が十七日、処分を受けた当時の学生らと面会し、「謝罪」の意を伝える見通し。これまで公式行事や記念誌などで、事件にほとんど言及してこなかった大学当局が学生不当処分の「汚点」を認める画期的な発表となる。

 第二次琉大事件については今年五月、当時の森田孟進学長が「個人的見解」として、処分学生の希望を聞いた上で「特別修了証書授与」か「再入学」を認める考えを発表。六月に就任した岩政学長の指示で、調査委員会(委員長・新里里春副学長)が設置された。

 委員会は、学生らの行動が違法ではなかったと認め、不当処分を取り消すよう求める報告書をまとめ、学長に提出。琉大の最高意思決定機関、教育研究評議会が十四日、処分の取り消しを承認した。

 岩政学長との面談には、除籍処分を受けた学生六人(一人は他界)のうち、三人が出席する予定。

 デモの行動隊長だった嶺井政和さん(73)は「大学が取り上げるまで長過ぎた感はあるが、学長の対応が具体的にどういう形になるのか注目したい。処分を取り消し、事件をなかったことにするというのでは困る」と注文を付けた。

 当時、新聞記者で米民政府が問題視していた「琉大文学」の同人だったジャーナリスト、新川明さん(75)は「忌まわしい事件として歴史から抹殺するようなことがあってはならない。謝罪すれば済むわけではなく、今後、琉大の歴史にきちんと位置付けていくのかどうかが問われる」と話した。


[ことば]


 第2次琉大事件 1956年7月、軍用地の無期限接収と地料一括払いの方針を示すプライス勧告に反対するデモに参加した琉大の学生のうち、反米的な言動があったなどとして大学が学生会幹部やデモの中心人物ら6人を除籍(退学)、1人を謹慎処分とした。7人のうち4人が「琉大文学」の同人。近年、米国民政府の大学への強い圧力があったことを示す報告書が見つかったほか、琉大同窓会が処分学生の「名誉回復」を大学に働き掛けていた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_04.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 1面

教科書検定撤回要求 県民大会来月23日

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会が、九月二十三日午後三時から糸満市摩文仁の平和祈念公園で開かれることが、十六日決まった。大会の実行委員長は仲里利信県議会議長に決定した。十六日に那覇市内で開かれた実行委員会準備会で決まった。

 仲井真弘多知事に就任を要請する予定だった大会長は置かないことになった。知事には県民代表としてあいさつを要請する。

 事務局は、県議会内に設置する予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_05.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 2面

米軍、工事入札を公告/ハンセン新射撃場

 米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場の建設が計画されている問題で、米軍は十六日、工事に関する入札を公告した。九月末までに業者を選定する。事業費は米軍予算で七百二十万ドルを見込んでいる。地元の金武町伊芸区は来週にも抗議決議する方針。

 金武町の儀武剛町長と伊芸区の池原政文区長は同日、那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所に抗議するとともに、県に反対の立場で協調するよう求めた。県の上原昭知事公室長は「連携して適切に対処したい」と述べた。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「キャンプ・ハンセン全体で見たときに、訓練や人員の増加にはつながらない」と説明。使用部隊については「海兵隊は使わないという説明は受けていない。陸軍が主に使うという以上のことは言えない」と述べ、米陸軍専用とは断定しなかった。

 施設局の佐藤勉局長は、沖縄自動車道からの距離が約五百メートル、最も近い伊芸区の集落から約一キロ離れていると説明。レンジ4に建設された都市型戦闘訓練施設(最も近い住宅地まで約三百メートル、沖縄自動車道まで約二百メートル)との違いを強調した。

 抗議で儀武町長は今回の計画について「伊芸区の住民に、ハンセン・ゲート前での四百八十六日にわたる(レンジ4の都市型戦闘訓練施設反対の)早朝抗議行動の苦悩に満ちた日々をよみがえらせた」と指摘。「約一万人が参加した(都市型戦闘訓練施設の)緊急抗議県民集会の(地元の)意志から何一つ学んでいない」と政府の対応を批判した。

 池原区長は「過去にハンセンからの流弾、被弾事故があり、周辺住民は銃弾が一定方向に飛ぶとは限らないことを知っている。しかも今回は射程千二百メートルのライフル用の射撃場。レンジ3はレンジ4に次いで集落に近い。朝から晩まで戦場さながらの訓練が続くのは耐えられない」と訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_06.html

 

2007年8月17日(金) 朝刊 13面

シェラトン宮古進出へ

180億円投資8階建て354室

 【宮古島】宮古島市のトゥリバー地区約13ヘクタールを40億円で購入する仮契約を結んだ特定目的会社「SCG15」(本社・東京)は、同地区にホテルを中心とするリゾート開発を進め、世界各地に展開するホテルチェーン・スターウッドグループのシェラトンがホテル運営を担当する計画であることが16日、分かった。本契約成立後に開発・設計に関する業務委託を受ける松野八郎綜合建築設計事務所(東京)が同日、市議会への説明会で明らかにした。

 親会社の米国系不動産投資会社「セキュアード・キャピタル・ジャパン」(SCJ)がホテル建設費を含む総額180億円を調達。議会の承認後に本契約し、年内にも現地運営会社がシェラトンと委託契約を締結する。

 市議会で説明した「宮古島リゾートホテル計画(仮称)」によると、地上8階建てのホテルのほか、コテージを建設する。部屋数は合計で354室。

 このほか、5つのレストランやエステ、結婚式を行うチャペル棟などを計画している。従業員は約250人を見込んでいる。

 仮契約書の条項には2年以内の着工と5年以内の供用開始が盛り込まれており、9月定例会で承認されれば、2008年8月に着工、10年2月にオープンする計画だ。

 売却金は議決後5日以内に総額の10%に当たる4億円、2カ月以内に残金を支払う。

 仮契約締結後の会見で伊志嶺亮市長は「長い間の市の懸案が仮契約まで進み、ほっとした気持ちだ。厳しい市の財政状況の好転に向けて大きな一歩を踏み出した。議会の理解を得て、宮古島の経済の発展につなげたい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171300_08.html

 

琉球新報 社説

米軍再編法施行 押し付けより対話重視を

 米軍再編推進法の施行令が15日、閣議決定され、29日施行が決まった。米軍再編に伴う政府施策への協力の度合いに応じて自治体への交付金を増減する「アメとムチ法」と呼ばれる同法の本質が、施行令でより鮮明になった。再編に絡む米軍基地を抱える県や名護市など当該自治体は、いよいよ正念場だ。

 問題はすでに普天間移設問題で顕在化している。政府案に異議を唱える県や名護市を無視し、政府は代替基地建設に必要な辺野古沖での環境影響評価方法書の公告縦覧を強行している。

 そこに米軍再編推進法の施行である。「非協力的な自治体には再編交付金は出せない」(防衛省首脳)と、政府は早くも同法に基づく「ムチ」をちらつかせている。

 名護市の島袋吉和市長は「とんでもないことだ。(交付金で)縛ろうとしている」と反発している。

 同法に基づく再編交付金は、施設面積や建物・工作物、艦船・航空機の数など再編に基づく「変化」に応じて支給される。

 支給額の判断基準は「住民生活に及ぼす影響の程度」とされている。その点からすると、交付金はいわば「迷惑料」である。

 「産廃、原発、基地」が3大迷惑施設といわれる。受け入れ自治体には迷惑料となる交付金や特別振興策が支給・実施される。

 県内でも基地交付金、基地周辺対策事業など、毎年300億円近い「基地迷惑料」が交付されている。これに島田懇事業、北部振興策(総額1千億円)が別枠で加わる。

 だが、基地絡みの交付金や振興策は、必ずしも地域振興につながっていない。

 名護市では、この10年間に500億円を超す基地関連の特別振興策が投入・実施されたが、10年前に比べ失業率は8・7%から12・5%に、市債残高は171億円から235億円に増え、法人税収は1千万円減の4億3千万円に後退している。借金(市債残高)は基地振興策の自己負担分(裏負担)が押し上げたものだ。

 失業率は高まり、借金は増え、自立に必要な収入が減る。さらに新たな振興策が必要となり、基地依存度が高まる。悪循環に見える。

 米軍再編法の施行で、政府はムチを恐れアメ(交付金)欲しさに基地を受け入れる自治体が増えると期待しているようだが、そう甘くはない。

 新たな危険や負担増と引き換えにもらう予算や振興策というアメの怖さ、逆に自立を阻む基地振興策の矛盾に気付いた自治体は、「アメとムチ法」を前に、脱基地、反基地の動きを強めるだろう。

 頭越しの基地押し付けは百害あって一利なしである。政府には、どう喝型政治からの脱却と対話重視の民主政治への回帰を求めたい。

(8/17 9:54)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26387-storytopic-11.html

 

2007年8月17日(金) 夕刊 1面

知事、県民大会参加を明言

 仲井真弘多知事は十七日午前の定例記者会見で、来月二十三日の開催が決まった沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除する教科書検定意見の撤回を求める県民大会について「大変評価している。私もきちっと参加して、東京に向かって申し上げるべきことを私なりに表現し、発言していきたい」と大会参加を明言した。

 金武町の米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に米陸軍の小銃用射撃場が建設される問題については「金武町は米軍基地が多く、基地をある程度許容してきた部分もあったと思うが、はるかにその許容度を超え始めている」と建設に反対する町の立場に理解を示し、近く儀武剛町長と意見交換する考えを示した。

 米軍普天間飛行場代替施設建設計画で、那覇防衛施設局が県などに提出した環境影響評価(アセスメント)方法書について「信義違反というよりも、そもそも仕事のやり方がおかしい」と政府の対応を厳しく批判し、現状のままではアセス後の埋め立て申請手続きに応じない姿勢を示唆した。

 受け取りを保留している方法書に対する知事意見については「法的には動き始めているという解釈もあり、私の意見なしというわけでいくか検討中」と述べ、対応に苦慮していることを明かした。

 仲井真知事は方法書送付について「(自身は)事前に聞いていなかった」とし、送付前日に小池百合子防衛相と県との間でやりとりがあったかについても「していないと思う」と述べた。

 十一日の集中豪雨で那覇市の安里川がはんらんした問題で、県南部土木事務所が、四月のはんらんの後に、蔡温橋の改修工事で被害が拡大したとの調査結果を得ながら、対策を放置していたことについては「土木建築部からまだ(報告を)聞いていない。確認した上で、県の考えを含めて報告したい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171700_01.html

 

2007年8月17日(金) 夕刊 1面

新射撃場の建設中止要求/金武議会抗議決議

 【金武】金武町議会(松田義政議長)は十七日午前、臨時議会を開き、米軍がキャンプ・ハンセン「レンジ3」付近で予定している最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の小銃(ライフル)用射撃場建設に反対する意見書、抗議決議、要請決議案を全会一致で可決した。

 決議では「町は米軍実弾演習に伴う被弾、流弾の事故の発生に非常に敏感な地域で、レンジ4反対の緊急抗議県民運動の抗議集会から日米両政府は何一つ学んでいない」と指摘。

 民間地域に隣接する地域に、米海兵隊射撃場が多数存在している町の状況を「極めて異常な事態」と強調した上で、「米陸軍射撃場建設および陸上自衛隊の共同使用を含め、金武町がさらなる負担を押し付けられている状況である」として、射撃場建設の即時中止を強く求めている。

 意見書のあて先は内閣総理大臣、外相、防衛相など。抗議決議は駐日米国大使、在日米軍司令官あて。

 同日午後、松田議長ら代表五人が、那覇防衛施設局や外務省沖縄事務所、県などを訪ね、抗議・要請行動を展開する。

 同問題では、儀武剛町長が強い反対の意思を示しており、十六日には「レンジ3」に近接する伊芸区の池原政文区長とともに那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所に抗議した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708171700_02.html

 

2007年8月18日(土) 朝刊 1・27面

第2次琉大事件 処分取り消し通知

51年ぶり/学長、7人に謝罪

 米軍統治下の一九五六年、反米的言動を理由に琉球大学の学生七人が大学から退学(除籍)などの処分を受けた「第二次琉大事件」で、琉球大学の岩政輝男学長は十七日、五十一年ぶりに七人の処分を取り消し、当時の学生らに謝罪した。処分を受けた七人(一人は死去)のうち三人が大学主催の式典に出席、岩政学長から処分取り消し通知を受け取った。

 岩政学長は、(1)処分学生の行動は当時の法令や学則に違反していない(2)処分は米国民政府から強硬に求められ、なされた(3)大学は処分学生に何ら弁明の機会を与えていない―との事実を認めた大学の調査結果を報告。「処分を取り消し、被処分者の名誉を回復する」と発表した。

 その上で、学生らに「大変長い間ご迷惑をお掛けしました。心よりおわび申し上げます」と謝罪。出席した古我知勇さん(75)、神田良政さん(72)、嶺井政和さん(73)の三人に、それぞれ処分取り消し通知書を手渡した。出席しなかった元学生には後日、郵送される。

 式典後の記者会見で、古我知さんは「感謝の念とともに、もっと早くできなかったかなという気持ちでいっぱいだ」と複雑な心境をのぞかせた。

 嶺井さんは「これからは事件を正しく位置付け、琉大の歴史を積み上げていくための糧としてほしい」と語った。


     ◇     ◇     ◇     

元学生 ぬぐえぬ悔しさ


 米民政府の圧力に屈した琉球大学が存続のため、学生七人を退学(除籍)などの処分とした第二次琉大事件。大学当局は十七日、五十一年前に処分を下した同じ日に取り消しを発表した。通知を受けた七十代の元学生らは感謝の念を示しながらも、「もっと早くできなかったか」と、苦渋の半世紀を振り返り、悔しさをにじませた。大学の歴史の「汚点」とされる事件に振り回された当事者らは「負の歴史を記録に残し、大学の自治、学問の自由を守る糧にしてほしい」とメッセージを送った。

 記者会見した三人は一様に緊張した表情。当時、琉大学生会長として退学処分を受けた古我知勇さん(75)は「決定を喜んでいるが、もっと早くできなかったかというのが正直な心境だ」と複雑な思いを吐露した。

 嶺井政和さん(73)は「不当な処分を取り消すと決めた大学の労苦を評価し、感謝したい」としながらも、「五十一年間、退学処分の上に生きてきた。当事者はみんな七十代になっており、一人はすでに亡くなっている。(取り消しの)実効性を考えると悔しい」と無念さものぞかせた。

 当時の仲宗根政善副学長らの尽力で、本土の私大などに転入学した元学生たち。「直接の不利益はなかったのでは」との質問に、古我知さんは「二十代での二、三年の空白は五、六十代での十年に匹敵する。処分に当たった者でないと分かりませんよ」と気色ばむ場面も。当事者が負った心の傷の深さをのぞかせた。

 会見に同席した前琉大同窓会長の比嘉正幸さん(73)は「大学がいつまでも闇に葬っていてはいけなかった。時期は遅れたが、過去の学生処分を反省し、語り継いでいく第一歩にしてほしい」と期待した。

 琉大の新里里春副学長は、二〇一〇年の開学六十周年記念誌に事件の記述を初めて掲載する方針を示し、「大学人として学園の自治、学問の自由を侵さないよう頑張りたい」と決意を語った。

 一方、一九五三年に当時の灯火管制に従わなかったなどとして学生四人を退学(除籍)処分とした第一次琉大事件について、新里副学長は「大学の規定に沿った処分だった」とし、見直さない考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708181300_01.html

 

2007年8月18日(土) 朝刊 27面

普天間ヘリ 新ルート改善なし/住宅地を旋回・連日深夜飛行

 【宜野湾】日米両政府が普天間飛行場を離着陸するヘリコプターの新飛行ルートに合意して十七日で一週間。同飛行場を離着陸するヘリは新ルート以外を飛行したり、基地外上空をはみ出して訓練しており、抜本的な解決策とはほど遠い。

 同飛行場では十日から一週間、CH53大型輸送ヘリやAH1軽攻撃ヘリなどが住宅地上空を飛行。タッチ・アンド・ゴーや急上昇、急降下などを繰り返した。

 騒音防止協定で禁止されている午後十時以降の夜間飛行も連日のように続いている。宜野湾市には「孫が寝付けず、ミルクも飲まなくなっている。ノイローゼになりそうだ」「落ちるかと思い、家から飛び出してしまう」などの苦情が十件寄せられた。

 在沖米海兵隊報道部は沖縄タイムス社の取材に「運用の必要性など定められた制限範囲で安全と責任を持って飛行している」と回答。深夜の飛行については「アジア・太平洋地域の平和を維持するために必要な訓練」とした。

 伊波洋一市長は「米軍がいくら安全に気を付けても事故は起こる。(住宅密集地で)訓練するのは限界だ。日米両政府の合意は『普天間』の現状を追認したにすぎず、今後も問題点を訴えていく」と話した。


イラク派遣ヘリ7カ月ぶり帰還


 【宜野湾】イラクへ派遣されていた米軍普天間飛行場のヘリ部隊が七カ月ぶりに同飛行場に帰還したことが十七日、分かった。同日付の在日米海兵隊ホームページが伝えた。周辺の住民は、騒音の激化を懸念している。

 派遣されていたのは第一海兵航空団第二六二海兵中ヘリ中隊。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708181300_03.html

 

2007年8月18日(土) 朝刊 2面

普天間移設 変更なし/小池防衛相

 【東京】防衛省の次期事務次官に増田好平人事教育局長が内定したことを受け、小池百合子防衛相は十七日夕、新体制による米軍普天間飛行場移設問題への対応について「日米合意に基づき、再編を速やかに進めていく従来姿勢と変わらない」と述べ、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設方針に変更はないことを強調した。防衛省で記者団に答えた。

 沖縄政策全般では「米軍再編を速やかに進める方針に変更はない。同時に沖縄の発展をどう考えるか。高市早苗沖縄担当相のところでもやっているので、全体としての流れの中で決めていく」と述べた。

 次官人事が内定した経緯については「きょう安倍晋三首相から『収拾を図るように』と指示を受けた」と述べ、安倍首相の指示で内閣改造前の早期決着に至ったことを明らかにした。

 増田氏の起用には「一気に世代交代が図られることになる。これまでの次官の在任期間が長かった分だけ、その若返り度が顕著に見えるかと思うが、適材適所を機能させ、人材育成を図りたい」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708181300_05.html

 

2007年8月18日(土) 朝刊 2面

米新射撃場 計画中止申し入れ/国に金武議会

 米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」付近に計画されている米陸軍特殊部隊の小銃用射撃場建設問題で、金武町議会の松田義政議長らが十七日、外務省沖縄事務所や那覇防衛施設局を訪ね、計画の即時中止を申し入れた。県と県議会にも協調して関係機関への計画中止を働き掛けるよう要請した。

 同議会は同日可決した意見書で「基地負担増は明白。安寧な住民生活がおびやかされているのが実情」と指摘。「米軍再編に伴って沖縄の負担軽減が計画されているが、現実は陸上自衛隊の共同使用を含め、町にさらなる負担を押し付けている状況」と訴えている。

 県の保坂好泰基地防災統括監は「町と連携を密にして対応したい」と地元との協調姿勢を示した。

 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は「沖縄自動車道などからは見えない位置に設置し、三方が壁に覆われ、射撃はもっぱら山の方に向けて行われる」と安全性や騒音面での負担が少ないことを強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708181300_08.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月18日朝刊)

[琉大事件]

処分取り消しは英断だ

 米軍統治下の一九五六年八月、反米的言動を理由に退学処分などを受けた学生七人に対し、琉球大学は正式に処分取り消しを決め、本人および遺族に通知した。

 大学が半世紀以上も前の処分行為を撤回するのは極めて異例である。

 処分学生が受けた精神的苦痛を考えると遅きに失した感は否めないが、歴史のかなたに消えかけていた事件を掘り起こし、処分の不当性を認めた大学当局の英断を評価したい。

 軍用地の強制接収と反共政策が吹き荒れた沖縄の五〇年代は「暗黒の時代」と表現されることが多い。

 当時、琉大は布令に基づいて米民政副長官が管理運営の最終的な権限を持っていた。

 五〇年代半ば、米軍による土地の強制接収、地料の一括払いに反対する住民大会やデモに参加した学生は数多い。処分されたのは七人だが、この中にはデモに参加しなかった学生も含まれている。「反米的言動」というだけで、処分理由ははっきりしなかった。

 「第二次琉大事件」の名で呼ばれるこの学生処分は、琉大が「布令大学」であった時期に、米民政府の圧力に屈して、明確な理由もないままに学生を処分し、大学の自治を自ら葬り去った事件だった。

 処分学生の名誉回復を求める教職員や同窓会の声を受け、大学当局は学内に調査委員会を設置し、調査を進めてきた。

 委員会は「処分学生の行動は、当時の法令及び大学の学則その他の規定に照らしてもこれに違反するとは認められない」と明確な判断を下している。

 にもかかわらず大学当局が当時、処分に踏み切らざるを得なかったのはなぜか。調査委員会が指摘するように「米国民政府から強硬に除籍を含む処分を求められ」たからである。

 大学当局は処分に反対だった。学生を処分しなければ大学をつぶすという強硬な民政府の姿勢に抗しきれなかったというのが事の真相だ。

 七人のうち処分取り消し通知書の伝達式に参加したのは三人だけ。処分学生のうち一人は一昨年に亡くなり、残る三人はそれぞれの理由で伝達式への参加を辞退した。

 伝達式に参加した処分学生の一人は「(大学に対する)感謝の念と同時に、なんでもっと早くできなかったのかという思いもある」と複雑な胸のうちを語った。

 大学はこれで終わりとせず、大学の歴史の中にきちんとこの事件を位置づけ、後世に伝えていく努力をしてほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070818.html#no_1

 

琉球新報 社説

第2次琉大事件 歴史の影に目を向けたい

 1956年に反米的言動などを理由に琉球大学の学生7人が退学、謹慎処分を受けた「第2次琉大事件」で琉大当局は17日、岩政輝男学長らが記者会見し、処分の取り消しを公式に発表した。

 大学の自治を揺るがした不当な弾圧から半世紀。忌まわしい事件に新たな光を当て、歴史の影の部分と向き合い、大学の歴史に正しく位置付ける作業が始まったことを歓迎したい。

 今年6月の発足以来、事件を再検討してきた調査委員会は、処分学生の行動について「当時の法令および大学の学則やその他の規定に照らしてもこれに違反するとは認められない」と結論付けた。権力を握る米国民政府が介入し、強硬な処分を求められた末の不当処分であったことを認めた。

 当事者らは70歳を超え、一人は亡くなった。とりわけ退学処分の不名誉な烙印(らくいん)を押された6人にとって、事件の暗い記憶はその後の人生のさまざまな断面でつきまとったに違いない。

 再検討方針が明らかになった直後、ある一人が語った「琉大には青春のすべてがあった」との言葉が重く響く。名誉回復の扉がようやく開かれたとはいえ、費やされた歳月はあまりにも長すぎた。

 ただ琉大当局にとっては、名誉回復措置の検討に際し、現段階では今回の対応以外の策は考えにくかったのだろう。同窓会など関係者の声に耳を傾け、問題を放置せずに真摯(しんし)に向き合った姿勢は評価に値するのではないか。遅きに失した印象は残るけれども「大学人の良心」といったものを感じさせる。

 米軍用地料の一括払いに反対し、島ぐるみ闘争が燃えさかる渦中で起きた琉大事件には、いまだ解明されていない部分が多い。米国に生殺与奪権を握られた中での大学の自治や運営、思想・表現の自由、民主主義の在り方、アメリカの二重基準など学問対象としても多くの要素を含んでいる。

 第1次琉大事件を含め、語り尽くされていない歴史の全容解明に向けた取り組みに期待したい。

(8/18 10:02)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26413-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月13日、14日、15日)

2007年8月13日(月) 朝刊 1面

「もう飛ばないで」沖国大でライブ

米軍ヘリ墜落3年

 米軍ヘリが墜落して三年になるのを前に、現場となった宜野湾市の沖縄国際大学の学生たちが十二日、学内で手作りの「NO FLY ZONE」コンサートを開いた。ミュージシャンが歌と言葉で「もうヘリを飛ばさないで」とアピールし、事故現場隣の教室は数百人の熱気であふれた。

 「すばっぷ」のボーカルで、同大四年のみゆきさんは「どうかこの事件を忘れないでほしい」と、下級生に語り掛けた。学生自らが企画したコンサートに「うれしいけど、ヘリがまだ上空を飛んでいるのが悔しくて半々の気持ち」と話した。

 カクマクシャカ、知花竜海ら計六組が登場し、ラップや三線も交えて「行動を起こそう」と訴えた。フィナーレは総立ちでカチャーシー。実行委員長で四年の高橋正太郎さんは「今後もそれぞれの表現方法で伝え続けてほしい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708131300_03.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月13日朝刊)

[ヘリ墜落3年]

根本解決には程遠い

 沖縄国際大学の構内に米軍ヘリが墜落炎上した事故から、きょうでちょうど三年になる。この間、周辺住民や大学関係者が切実に訴えてきたのは、一日も早く危険性を取り除いてほしい、ということだった。しかし、この三年間の日米交渉の結果は、解決にならない合意というほかない。

 日米両政府は地位協定の運用改善の一環として、基地外で米軍機事故が起きたときの日米の役割を定めたガイドライン(指針)を策定し、同指針に基づく日米合同訓練を実施した。

 事故現場の外周は日本、内周は日米共同で規制するというのが指針の基本的な考え方だ。

 基地外での事故にもかかわらず県警さえ近寄れないような米軍の一方的な現場規制は、県内外から激しい反発を招いた。ガイドラインの運用で果たして日本側の機体検証、捜査権が保障されるのか、依然として疑問は残る。

 日米両政府はさらに、ヘリの飛行経路の見直しと安全対策をまとめた。

 北東向きの出発経路を優先して使用するなど飛行ルートを見直し、滑走路末端に識別灯を新設するなどの安全対策を講じるという。

 なによりも不思議なのは、この程度の対策がなぜこれまで実施されなかったのか、ということである。

 普天間飛行場の危険性や騒音被害については、事故が発生する何年も前から指摘されてきた。日米の今度の合意内容は、本来、もっと前から取り組むべきことであって、今回はそれを上回る根本的な安全対策が示されなければならなかったはずだ。

 防衛施設庁の担当課長は、今回の飛行ルート見直しと安全対策について「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(知事が求める三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との考えを明らかした。

 沖縄側との溝は依然として大きい。政府には、機能分散、訓練移転などを含めた危険性除去の方策を引き続き追求していく義務がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070813.html#no_2

琉球新報 社説

米軍ヘリ墜落3年 県外移設、真剣に考えよ

 米軍普天間飛行場所属のヘリが沖国大に墜落事故を起こしてから、きょう13日で満3年を迎えた。この悲劇を教訓にすべく、日米両政府がさまざまな対策を講じたかに見えたが、残念ながら、いまのところ、県民にとって目に見える成果はゼロに等しい。肝心の普天間移設問題は宙に浮いたままだ。それどころか、日米軍事再編の大合唱の下、沖縄の基地機能の強化が進むばかりだ。

 もつれにもつれたかに見える普天間移設問題。ここで、日米両政府は原点に立ち返ってほしい。そして、肝に銘じてほしい。「住宅密集地にある普天間飛行場の危険性の除去」。これが今回の移設問題の原点だ。そのことは、ヘリ墜落でより明確になったはずだ。今からでも遅くはない。県民の意思をくみ、県外移設に真剣に向き合うべきだろう。

 軍用機の墜落事故は過去何度かあった。復帰前の1959年6月30日、嘉手納基地を離陸した米戦闘機が宮森小学校(旧石川市)に墜落。児童を含む17人の死者と121人の負傷者を出す大惨事となった。また、68年11月19日には、嘉手納基地内に離陸したばかりのB52戦略爆撃機が墜落炎上。同機は通常兵器を積んでいたため、何度も爆発と炎上を繰り返した。近くには核兵器や毒ガスを貯蔵していたといわれる嘉手納弾薬庫があり、一歩間違えば壊滅的な被害をもたらしていた。

 しかし、それほどの事故があっても日米はどう動いたのか。県民の猛反発を無視する形で、基地の居座りを許し続けてきたのが現状だ。こう見てくると、何も沖国大へのヘリ墜落で基地の危険性が露見したわけではなかろう。

 今回の事故が起きるまで事態を放置してきた日米政府の責任は重い。百歩譲ってB52、宮森小の事故は施政権のない時代であったにしても、日本政府の責任は逃れることはできない。復帰前の状況を考えれば、今回の事故も十分、予想の範囲内といえたであろう。復帰後もほとんど無策だった、といわれても仕方がない。

 キャンプ・シュワブ沖への移設案にしても、県民の意向を無視した泥縄的な計画でしかない。この間の動きも、環境アセス事前調査への自衛隊動員、方法書の押し付け、抜本的な解決策にはならない飛行経路の見直し案など、県民を到底納得させるものではない。基地機能の強化などを見ても、むしろ「最初に再編ありき」で、危険性除去は二の次、という日米政府の姿勢がありありだ。

 県民の意思を無視した施策がうまくいくはずもない。先の参院選の際の世論調査でも普天間の県内移設反対が6割を超えている。県外移設が県民の意思だ。日米政府はこのことを真剣に受け止めよ。

(8/13 10:03)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26276-storytopic-11.html

2007年8月13日(月) 夕刊 5面

「変わらぬ危険 憤り」ヘリ墜落3年

沖国大学長 横断幕で飛行抗議

 米軍ヘリ墜落事故から三年がたった十三日午前、事故後も上空を行き交う米軍機に抗議しようと沖縄国際大学(渡久地朝明学長)は本館屋上から空に向け、「NO FLY ZONE」の横断幕を設置した。渡久地学長は「三年が経過した今もなお大学や宜野湾上空を飛び続ける米軍ヘリコプターは、大きな不安を与えている。変わらない現状に憤りを禁じ得ない」とコメントを発表した。

 横断幕は横七メートル二十センチ、縦九十センチで、掲揚期間は未定。同日午前、同大職員が設置する時間帯前後も、周辺には米軍機の爆音が響いていた。

 同日付で学内の米軍ヘリコプター墜落事件対策委員会は解散する。コメントで、渡久地学長は「これまでと同様、普天間基地を使用するすべての航空機の飛行停止、普天間基地の即時撤去、日米地位協定の改定を要求していく」とした。

 旧本館の壁面の一部はモニュメントとして保存し、関連資料は図書館で展示を予定している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708131700_02.html

2007年8月13日(月) 夕刊 4面

アセス方法書 撤回訴え/市民団体300人が抗議

 沖縄平和運動センターなど十二団体で構成する「基地の県内移設に反対する県民会議」は十三日、防衛省が米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に向けて環境影響評価(アセスメント)方法書を県などに提出したことに抗議する緊急集会を那覇市の県庁前県民広場で開いた。参加した約三百人(主催者発表)はアセス方法書の撤回などを訴えた。

 主催者を代表して玉城義和副代表(ヘリ基地反対協議会顧問)は「在日米軍再編は抑止力と県内の負担軽減をうたっているが、県の負担は増えるばかりだ。県はアセス方法書の受け入れを拒否しているので支援したい。国が辺野古への建設を断念するまで迫っていきたい」と訴えた。

 糸数慶子参院議員は「沖縄はこれまで自ら基地を招き入れることはなかった。基地に頼らず自立した経済を確立するため辺野古の自然を守っていきたい。一緒に頑張っていこう」と呼び掛けた。

 同日午後には、仲里全輝副知事を訪ね、アセス方法書を引き続き受理しないよう要請する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708131700_03.html

2007年8月13日(月) 夕刊 5面

県遺族連合会が声明/戦争の事実ありのまま教えて

 県遺族連合会(仲宗根義尚会長)は十三日、文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を検定で削除させた問題で、記述復活を求めるアピールを発表した。仲宗根会長は「戦没者遺族として、世界の平和を願う気持ちを込めた。多くの人々に関心を持ってもらいたい」と話した。同連合会は教科書検定問題を受け、今年五月の理事会・評議会でアピールの発表を決定した。

 アピールは「『集団自決』の発生は住民を巻き込んだ地上戦があった」と指摘。「当時、日本軍は『住民に安易な捕虜を戒め玉砕をしてでも島を守る』と言ったという表現や、手榴弾を民間人に二個配り『一個は敵に投げつけ、あと一個で自決するように』と言われていたことも多くの証言があり、真実」とした。

 「青少年に教科書を通して戦争の悲惨さの事実をありのまま教えることこそ、平和運動の原動力になる」とし、検定意見の撤回と教科書の記述復活を訴えている。

 仲宗根会長は「開催が決まった県民大会の成功に向けて最大限、努力したい」と語った。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708131700_04.html

2007年8月14日(火) 朝刊 1面

きょうから公告縦覧/「普天間」代替

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局は十四日、方法書の公告縦覧を開始する。

 縦覧場所は施設局など県内五カ所で、期間は九月十三日までの一カ月間。方法書の受け取りを「保留」している県や名護市が場所提供に応じないため、関連自治体の行政施設では縦覧が行われない異例の事態となる。

 国のアセス法は、対象事業を滑走路千八百七十五メートル以上と規定。普天間代替施設は滑走路の長さが千六百メートル(延長部分含めて千八百メートル)、公有水面の埋め立ては約百六十ヘクタール。このため施設局は、飛行場に関するアセスは県条例、埋め立てに関しては国のアセス法に基づいて手続きを進める。

 施設局は縦覧後、二週間以内に住民などの意見を受け付ける。それらの意見の概要を作成し、県などに送付する。県は意見概要の受理後、名護市など関連市町村長の意見を聴取した上で、知事意見を九十日以内(県条例に基づくアセスの場合は六十日以内)に施設局に提出。施設局は知事意見などを踏まえ、方法書を確定する。

 県や名護市は現段階で、知事意見などの審査手続きに応じない意向を示しており、知事意見の回答期限の解釈が焦点になる可能性もある。

 縦覧場所は(1)施設局三階広報室(2)同局名護連絡所(名護市辺野古134ノ1)(3)同局金武防衛施設事務所(金武町金武35)(4)観光ホテルおおくら一階ホール(名護市東江1ノ3ノ6)(5)キューピットハイツ一階(宜野座村惣慶1639ノ2)。いずれも土日、祝日を除く午前九時から午後五時。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708141300_02.html

2007年8月14日(火) 朝刊 25・2面

ヘリ墜落3年 決意新た

 米軍ヘリ墜落事故から三年を迎えた沖縄国際大学(渡久地朝明学長)で十三日、学生や教員ら約百五十人が集会を開き、「事故を風化させず、記憶を語り継いでいこう」と誓いを新たにした。

 事故発生時刻に近い午後二時、墜落現場付近で始まった集会で、四年の高橋正太郎さん(21)は「僕は事件から目を背けません。僕たちができる表現方法で、素直な気持ちを伝えていきたい」とメッセージを読み上げた。

 教員有志でつくる「米軍ヘリ墜落事故を考える会」は、事故翌月から三年間、毎月十三日に欠かさず続けてきた集会を普天間飛行場が撤去されるまで続ける決意を表明。教員らは口々に「われわれに時効はない」「基地閉鎖は夢物語ではない」などと訴えた。

 参加した二年の知花恵さん(19)は「先輩たちの思いが伝わってきた。体験していない自分たちがどう伝えていけるか考えていきたい」と話した。

 また、同大の教員三人はそれぞれの研究室から星条旗を逆さに掲げ、抗議の意思を示した。八月末まで毎日続ける予定。


「基地撤去を」500人が抗議/宜野湾で市民集会


 【宜野湾】米軍ヘリの沖国大への墜落事故から三年たった十三日、事故に抗議する「動かせ普天間!許すな県内移設!8・13抗議集会」(主催・沖縄平和運動センターなど)が宜野湾市で開かれた。同市真栄原の普天間飛行場第二ゲート前には労組関係者や市民ら五百人(主催者発表)が集まり、同飛行場の即時返還を求め、県内移設反対の声を上げた。

 崎山嗣幸平和運動センター議長は「事故から三年。飛行ルートが変わっても、住宅や学校の上空で訓練が行われる。今後も運動を強化しなければならない」と呼び掛けた。


普天間の危険極限/伊波市長会見


 【宜野湾】沖縄国際大学に米軍CH53D大型輸送ヘリが墜落した事故から満三年を迎えた十三日、宜野湾市の伊波洋一市長は市役所で記者会見し、「普天間飛行場の危険性は極限状態だ。今後も危険性が放置されることは許されない」と述べ、同飛行場の早期閉鎖・返還に引き続き全力で取り組む考えを示した。

 日米両政府が合意した同飛行場の新しい場周経路について、伊波市長は「防衛施設庁は米側の説明をうのみにしている。住宅地上空のヘリ飛行を容認するもので、点数で評価すると零点かマイナスだ」と述べ、市が求める危険性除去策にはつながらないとの認識を示した。

 その上で、「政府の説明はフェンス内での飛行訓練が前提で、詭弁でしかない」と指摘。「現実には、三種類のヘリによって高度や飛行ルートなどが異なっており、住宅地上空で訓練を繰り返している。飛行経路をカメラで撮影し、政府の言う『安全の根拠』を示すよう求めていく」と話した。

 今後の取り組みとしては「普天間の現状を国会レベルで訴え、米国議員にも、より深く問題を理解してもらう。部隊をグアムに移すことが最善の方法だ」とした。

 ケビン・メア在沖米国総領事が事故の容疑者の氏名公表に「なぜ名前を知りたいのか疑問を感じる」との認識を示したことには、「私たちの思いを受け止めていない。県民感情を逆なでしている」と批判した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708141300_05.html

2007年8月14日(火) 朝刊 24面

宮城さん、原告を批判/「集団自決」訴訟で報告会

 大阪地裁で七月にあった「集団自決」訴訟の証人尋問の報告集会が十三日、那覇市内であった。被告・岩波書店側の証人だった宮城晴美さんが、自著「母の遺したもの」について「話しを聞きやすかった女子青年団からの取材で、日本軍寄りでこの本を書いてしまった」と振り返り、「言葉が足りなかった部分は書き改めているところ」と語った。

 同訴訟は、沖縄戦時の慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、住民に命令をしたと著作に記されて名誉を棄損されているとして、旧日本軍の戦隊長らが作家の大江健三郎さんと岩波書店に出版の差し止めなどを求めている。

 集会で宮城さんは、著書で当時の兵事主任(助役)が住民に「集団自決」を命じたとしたことについて「助役には申し訳なく、遺族に迷惑を掛けたことを反省している」と強調。座間味島の戦隊長だった原告の梅澤裕氏には「兵事主任や手榴弾を配った部下が悪いと、自分に都合のいいことばかりを言っている」と批判した。

 報告集会は、被告・岩波側を支援している「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」の主催で約五十人が参加。

 裁判を傍聴した沖縄国際大の安仁屋政昭名誉教授は「原告側の証言はピント外ればかりだった。『集団自決』にはさまざまな背景があるが、住民が軍の強制と誘導によって死んでいったという『集団自決』の言葉の中身を、しっかりと伝えていく必要がある」と語った。

 また九月十日に那覇で予定されている所在尋問(出張法廷)が非公開とされていることについて、参加者から公開を求める声が次々と上がった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708141300_09.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月14日朝刊)

[サンゴ白化]

死滅防ぐために知恵を

 海水温がいつもの夏より高く感じられるという。この高水温が、石垣島・白保海域のサンゴ群落をはじめ多くのさんご礁の白化の原因になっているというから要注意だ。

 今月四日から六日まで、白保海域の水深五メートル未満のリーフ内二十八地点を調査した世界自然保護基金(WWF)サンゴ礁保護研究センターが、同海域に生息するほぼすべてのサンゴの分類群で白化を確認したという。

 目視調査では、ハナヤサイサンゴ科とミドリイシ属の90%以上が白化。コモンサンゴ属は50―70%、白化しにくいハマサンゴ属も30―50%、アオサンゴ属は5%未満が白化していた。

 事態は深刻で、海底の環境は極めて厳しい状況にあると言うしかない。

 サンゴは石灰質でできている。骨格にある無数の穴にはサンゴ虫が生息している。サンゴ虫の体内にはカッチュウソウ(植物プランクトン)がすむが、海水温が三〇度を超えると外に逃げ出すことも明らかになっている。

 カッチュウソウが光合成でつくった養分をサンゴ虫が取れず、色鮮やかなサンゴが脱色したようになるのが白化であり、やがて死滅に至るのである。

 沖縄近海で大規模な白化が起きた一九九八年には、世界中に点在する二百七のさんご礁海域でも約75%が白化現象を起こし、多くの地点でサンゴが死滅したという報告もあった。

 今回の調査では、死滅したのは5%にとどまっているが、「今後も高水温が続くと大量死につながる」(同センター)との懸念は消えない。

 同センターが水深四―五メートルに設置した水温計で、梅雨明け後の六月二十一日から最高水温は三〇度を超えているからだ。

 七月二十三日以降は一日中三〇度から下がらず、七月末までに三〇度を超えた時間を積算すると平年の四倍以上あったという。

 琉球列島周辺に多い造礁サンゴの適正水温は一八度から二八度だ。いまの海水温は高過ぎるといっていい。

 白化現象は石垣島と西表島の間にある「石西礁湖」でも見られ、一九八〇年から二〇〇三年の間には75%のサンゴが死滅したとの環境省報告もある。和歌山県の潮岬沖で沖縄近海で見られるリュウキュウキッカサンゴが確認されたり、南方の魚類が本州周辺で捕れてもいる。海水温が高いからだ。

 白化現象は陸域の気象と連動する。海の環境を守るためにも温暖化防止は急務であり、CO2の排出削減など世界的規模で検討することがサンゴを保護する手だてとなる。手遅れにならぬうちに知恵を出していきたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070814.html#no_1

2007年8月14日(火) 夕刊 1・5面

アセス方法書 縦覧開始/「普天間」代替

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局は十四日午前、県内五カ所で方法書の公告縦覧を開始した。方法書は政府案を前提とし、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部にV字形の長さ千八百メートル(延長部分含む)の滑走路二本を配置した図を掲載。ただ、滑走路の緯度経度、進入灯の長さなど詳細は明示していない。県や名護市は現段階で方法書の受け取りを「保留」しており、知事意見などの審査には応じない方針だ。

 調査海域は、日米特別行動委員会(SACO)で合意した名護市辺野古沖の従来案とほぼ同範囲を設定。施設局によると、調査内容は陸海ともに現在、事前調査の位置付けで実施している現況調査と同じだという。

 方法書はA4判、三百一ページ。事業実施区域を「名護市辺野古沿岸域」と明記。滑走路の北側に「格納庫・エプロン」や「飛行場支援施設」を配置。埋め立ての北端部には「燃料関連施設」を設置する。

 使用を予定する航空機の種類として、「米軍回転翼機及び短距離で離発着できる航空機」と記載している。

 埋め立て面積は、代替施設本体が約百五十ヘクタール、護岸部分約十ヘクタールで、計約百六十ヘクタール。埋め立て土量は約二千百万立方メートルを計画し、そのうち約二百万立方メートルはキャンプ・シュワブの山側(北西部)の土砂を採取する。飛行場設置区域にかかる美謝川は、一部流域で切り替えなどを行う。

 大浦湾西側海域に大型ブロックなどの製作ヤード、辺野古地先水面に小型ブロックの製作ヤードの設置を想定。作業ヤードとしての使用が終了した後は「名護市が有効に活用することも含め」今後検討するとしている。

 ほかに、大浦湾の中央海域の海底に「製作済みケーソン」の仮置きのための海上ヤードの設置を想定。規模などは今後検討するという。

 公告縦覧期間は九月十三日までの一カ月間。

 同日の公告で、施設局は名護市辺野古沖を埋め立てるSACO合意に基づく従来の代替施設建設事業を、八月七日付で廃止したことも明らかにした。


     ◇     ◇     ◇     

「欠陥方法書」批判/市民、内容に憮然


 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、方法書の公告縦覧が十四日午前始まり、初めて内容が公開された。那覇市の那覇防衛施設局では早速市民が閲覧し、「必要な情報がない欠陥方法書だ」と批判。同局は閲覧場所として、県や市町村から庁舎の提供を受けられず、ホテルやアパートの一角を借りる「苦肉の策」。五カ所のうち、那覇防衛施設局を除く、名護市辺野古、名護市東江、宜野座村、金武町の四カ所では同日午前、閲覧者はいないまま、手続きの形式は整い、動き始めた。

 施設局の閲覧窓口には、方法書三冊と意見書を受け付ける箱が置かれた。開始早々の午前九時すぎ、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の土田武信副団長が訪れた。

 メモや写真をとりながら閲覧した土田副団長は、施設の緯度経度も明示されない内容に、「説明責任を果たしていない」と憮然。「少なくともサンゴを痛めつけている事前調査を白紙にした上で、アセスの手続きに入るべきだ」と、同局の対応を批判した。

 メンバーの真喜志好一さんは「航空機の種類や飛行ルートも明示されず、これでは住民生活への影響が分からない。方法書の資格がない」と断じた。「国の事業にもかかわらず、アセス法の精神に反する手続きを強行するのはおかしい」と憤った。

 一方、移設先に隣接する名護市辺野古の那覇防衛施設局名護連絡所の縦覧場所には、午前中閲覧者が誰も来ず、方法書の置かれた部屋はがらんとしていた。

 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「県や名護市も協力していない。『国のやることに口出しするな』と言わんばかりの傲慢なやり方で腹立たしい。こうした状況でわれわれが慌てて中身を確認する必要はない」と話した。

 名護十字路近くの観光ホテルおおくらでは、一階ロビーの一角に、いすとテーブルが並べられ、施設局の担当者二人が閲覧者を待った。午前中、閲覧者は一人も訪れなかった。

 宜野座村内では民間アパートの一階に方法書が三冊置かれているが午前中、閲覧に訪れる人はいない。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708141700_01.html

2007年8月15日(水) 朝刊 1面

金武町ギンバル跡利用/がん施設 琉大と連携

 金武町の儀武剛町長と琉球大学医学部放射線医学分野の村山貞之教授らが十四日、県庁で記者会見し、同町の米軍ギンバル訓練場の跡地利用計画として、がんの早期発見・治療が可能な先端医療施設の整備を琉大と協力して進めていくと発表した。PET―CT(陽電子放射断層撮影装置)や県内で設置例がなく、外科手術を伴わないFUS(集束超音波装置)など先端の医療機器を導入し、周辺に人工ビーチや宿泊施設などを集積する「金武町ふるさとづくり整備事業」を推進する。

 跡地利用の中核施設となる先端医療施設、免疫療法施設、リハビリ関係施設などは、「米軍基地所在市町村活性化特別事業」(島田懇談会事業)の約七十億円で整備する見込み。

 公設民営を想定しており、ほくと会北部病院を運営主体とする方針。

 琉球大学は今後、医師の派遣や技術支援、臨床研究などを実施する予定で、町と連携して先端医療施設の整備を進めていくことを確認した。

 医師や看護師などのスタッフ、病床数など施設規模の具体的な内容は未定。同町は事業導入による雇用効果約百二十人と見込んでいる。村山教授は「PET施設だけでなく、もう少しレベルの高い研究に使えるものを考えている。有意義な機器を町と協力して導入していきたい」と話した。

 儀武町長は「琉大、北部病院と連携して先端医療施設の整備を進め、北部地域や県民の健康保養に貢献したい。医師確保なども含めて急ピッチで進め、三―四年後をめどに開業したい」と述べた。会見には北部病院の前田利夫理事長も出席した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708151300_01.html

2007年8月15日(水) 朝刊 1面

PAC3司令官を解任/内部規律に違反

 米軍嘉手納基地に日本国内で初めて配備された最新鋭の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を運用するため、昨年十一月に着任した米陸軍防空砲兵大隊の司令官が、軍の内部規律に違反したとして解任されていたことが十四日、分かった。

 PAC3をめぐっては当初から、新たな部隊移駐で「米兵の犯罪が増加するのでは」などとする米軍内の規律の乱れを懸念する声が地元で上がっていた。部隊トップが規律違反で解任されたことで、綱紀粛正を求める声が一層強まりそうだ。

 解任されたのはマシュー・マイケルソン中佐。米軍によると、米軍人の規律などを定めた統一軍事裁判法に違反した。違反の内容については「プライバシーにかかわるため明らかにできない」としている。後任には八月七日、エドワード・オニール中佐が着任した。

 日米両政府は昨年七月、米軍再編最終報告に基づく嘉手納基地へのPAC3配備を発表。米本土から第一防空砲兵連隊第一大隊の約六百人が同基地に移駐し、昨年十二月末から運用を開始した。

 司令官解任について、上部組織の第九四陸軍防空司令部(米ハワイ州)は「第一大隊の隊員が高潔で品格ある司令官の下で任務に当たるよう約束する」としている。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708151300_02.html

2007年8月15日(水) 朝刊 29面

監視団がアセス方法書撤回要求

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局が方法書の公告縦覧を始めたことを受け、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団は十四日、方法書の即時撤回を求める声明を発表した。

 声明は、防衛省の指針が「航空機の種類」の方法書への記載を義務付けていると指摘。「記されていないのは、危険なオスプレイの配備を隠すためではないか」と指摘した。

 県庁で記者会見した東恩納琢磨団長は、「アセスは地域の合意形成のための手続き。(知事)意見がなければないでいい、という姿勢が他府県で許されるか。沖縄差別だ」と批判した。

 また、ブロック製作ヤードとして大浦湾を埋め立てる計画について、平良夏芽事務局長は「サンゴの大群落を付属施設でつぶすような青写真は許せない」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708151300_05.html

2007年8月15日(水) 朝刊 2面

防衛次官交代 知事が提案?/全国紙報道

 ○…混迷を深める守屋武昌防衛事務次官の交代人事をめぐって十四日、県に思わぬ「火の粉」が降り掛かった。全国紙の同日付朝刊で、守屋次官の交代を小池百合子防衛相に提案したのは仲井真弘多知事だった、と報じられたためだ。記者団から真偽をただされた仲井真知事は「考えられない話でしょ」と一笑に付し、県幹部も「泥仕合のとばっちりだ」と苦り切った様子だった。

 ○…全国紙が報じた「知事提案説」は、名護市議の証言として「二日に仲井真知事から防衛相に“守屋外し”の提案があった」という内容。県などが求める米軍普天間飛行場の移設案の修正に応じない守屋氏の交代と引き換えに、移設手続きの第一弾となる環境影響評価方法書を県に提出。小池防衛相が訪米の際の手柄にした、としている。

 ○…この報道で同日午前、県庁で記者団に囲まれた仲井真知事は「別の組織の話で、常識では考えられない話」と半ばあきれた口調。方法書とのバーター論にも「(県は)方法書を正式に受け付けていない。(次官交代と方法書送付は)全然別の話では」と一蹴。県幹部の一人は「根も葉もない話。県をおとしめるための謀略めいている。とんだ騒動だ」と苦笑交じりに首をひねった。


     ◇     ◇     ◇     

小池氏・名護市長会談/きょう来県


 【東京】小池百合子防衛相は十五日夕、一泊二日の日程で来県する。名護市内のホテルで宿泊を予定しており、島袋吉和名護市長ら米軍普天間飛行場移設先の周辺市町村関係者と会談するとみられる。県と名護市が要求している代替施設の沖合移動や、防衛省が難色を示している北部振興事業費の本年度一次配分などの行方が焦点になる。

 小池防衛相は十五日午後六時すぎ沖縄入り。十六日午前に「かりゆしウエアを世界に広める会」のイベントに出席し、同日午後六時半から那覇市内のホテルで沖縄観光をテーマに講演する。

 普天間移設をめぐって防衛省は今月七日、移設先の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部海域での環境影響評価(アセスメント)方法書を県や名護市に提出。アセス手続きを開始したとの認識に立っている。

 一方の県と名護市は、アセスが政府案(V字形滑走路案)の建設位置を前提に実施される点を問題視。代替施設を沖合側に寄せるよう強く求め、方法書の受け取りを保留している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708151300_06.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月15日朝刊)

[8・15と戦後体制]

事態は悪化しつつある


戦場・占領・復興の混在


 終戦記念日にあえて問い掛けてみたい。「先の大戦が終わった日はいつですか」「沖縄戦が終わったのはいつですか」。

 「八月十五日=終戦記念日=戦争が終わった日」という認識は、今や国民共通の記憶となっているが、ことは必ずしも単純でない。

 国民が終戦詔書の玉音放送を聞いたのは八月十五日だが、日本政府がポツダム宣言の受諾を正式に連合国に伝えたのはその前日の十四日。ミズーリ艦上で降伏文書の調印式が行われたのは九月二日のことである。

 沖縄の慰霊の日に当たる六月二十三日は、沖縄戦が終わった日だとはいえない。六月二十三日以降も一部では日本兵による奇襲攻撃などがあった。逆に六月二十三日以前に収容所に収容され「戦後」の生活を歩み始めた住民も少なくなかった。

 激しい戦闘と占領生活と戦後復興が混在する形で進行していたのである。

沖縄で降伏文書の調印式が行われたのは九月七日のことだ。

 地上戦のあと米軍がそのまま占領軍として駐留し住民を直接統治した沖縄と、ポツダム宣言受諾後に米軍が進駐して間接統治した本土とでは、「終戦」の迎え方、受け止め方が大きく異なる。そしてそれ以上に本土と沖縄の決定的な違いを生んだのは戦後体制であった。

 本土の一部知識人の中には、四月二十八日を終戦記念日にすべきであるとの意見があったという。

 四月二十八日はサンフランシスコ講和条約が発効した日である。日本が米軍占領から解放され主権を回復したこの日、沖縄は本土から切り離され、米軍の統治に委ねられた。

 この日を終戦記念日にしたいと主張する知識人には、沖縄が置かれた戦後の境涯に対する痛覚が働かないのだろうか。

 安倍晋三首相は就任以来、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を訴えてきた。参院選敗北後も、その姿勢を変更する気はないようだ。だが、沖縄の戦後体制は本土とまったく異なっており、一緒くたに論じることはできない。それが議論の前提だ。


同一制度の異なる現実


 復帰前、沖縄には憲法が適用されなかった。軍事上の必要性がすべてに優先され、地方自治も人権も大きな制約を受けた。あえて要約すれば、これが沖縄の戦後体制であった。

 復帰によって憲法が適用され、米軍基地は日米安保条約と日米地位協定の下で運用されることになった。しかし、本土と同一の制度に移行したからといって、本土と同一の現実を保障したわけではなかった。

 基地外での米軍機事故にもかかわらず、県警さえ近寄れないような米軍の一方的な現場規制。学校敷地への米軍装甲車、車両の度重なる侵入。米軍基地をめぐるさまざまな「理不尽さ」は、沖縄の戦後体制が今なお続いていることを示している。

 憲法は国の最高法規である。けれども沖縄では、その最高法規の位置に日米安保条約が鎮座していて、憲法の影が薄い。

 普天間飛行場所属の米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落した際、現場規制をした米軍は、地位協定の合意議事録に基づいて、つまり与えられた権利として、県警の検証を拒否した。

 イラク戦争にのめり込む米国を支援する一方で、国家主権にかかわる事例に対して米軍に強く当たることのできない日本政府とはいったい何なのか。多くの県民が疑問を感じたはずだ。


進む日米の軍事一体化


 「戦後体制からの脱却」を言うのであれば、何よりもまず沖縄において基地をめぐる「理不尽さ」の解消に全力を挙げなければならない。

 残念ながら沖縄の現実は、その方向に向かっているとは言い難い。普天間飛行場の辺野古移設をめぐる最近の政府の対応は、あまりにも強引で度が過ぎるところがある。

 事前の相談もなく日米で移設案を決め、決まったものに対しては「のむならカネをやるが、のまないならカネはだせない」という露骨な脅し。これが果たして負担軽減のための施策といえるのだろうか。

 米軍再編に絡んで本島北部への基地の集中化、機能統合が進んでいる。米軍と自衛隊の一体化も急速に進みつつある。その上、集団的自衛権の行使や憲法九条の改正が具体化すれば、沖縄は大きな安全保障上の負担を新たに抱え込むことになるだろう。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070815.html#no_1

琉球新報 社説

終戦記念日 平和と不戦を誓う日に

 戦後62年の終戦記念日が今年も巡ってきた。去る大戦で犠牲になった多くのみ霊に謹んで哀悼の意を表する。あらためて恒久平和と不戦を誓う日にしたい。

 最近の日本の現状を見ると、過去の過ちに目をつぶり歴史の風化を促すような動きが顕著である。極めて憂慮すべき状況だ。

 今年3月に公表された高校日本史教科書検定で沖縄戦「集団自決」の日本軍の関与が削除・修正されたほか、第2次大戦中の従軍慰安婦問題では安倍晋三首相が「(旧日本軍による慰安婦動員の)強制性について、それを証明する証言や裏付けるものはなかった」などと発言し批判を浴びた。

検定意見の撤回を

 不用意な首相発言が一因となって、7月には米下院が日本政府に慰安婦問題で公式謝罪を求める決議を初めて可決する事態になった。

 教科書検定問題、従軍慰安婦問題などに共通しているのは、旧日本軍の犯した非道な行為を可能な限りぼかし、糊塗(こと)しようとする意図が透けて見える点だ。

 戦後62年が経過し大戦の実相を証言できる人が少なくなってきたのをいいことに、歴史を歪曲(わいきょく)することは絶対に許されない。

 再び過ちを繰り返さないためには、過去の行為を直視して反省し、史実を後世に正しく伝えていくことが不可欠である。

 政府内で、過去の過ちをあいまいにしようとする動きが見られるのは危険な兆候だ。こうした傾向が強まれば、やがては大戦自体を

正当化することにもなりかねない。

 沖縄戦の集団自決については、昨年の検定まで、軍の強制を明記した教科書もすべて合格していた。ところが、今年の検定で、唐突に修正意見が付いた。

 教科書を審査するのは教科用図書検定調査審議会だが、検定意見の原案は文部科学省が作成している。何らかの政治的意図が働いたとしか思えない。

 にもかかわらず、伊吹文明文科相は検定意見撤回の要請に対し「政治による教育への介入になるので難しい」と述べ、教科用図書検定調査審議会の結論を尊重する考えを示している。

 審議会に修正を求める検定意見を出させておきながら、抗議を受けると審議会を盾にして撤回を拒む。このような欺瞞(ぎまん)がまかり通っていいはずがない。

 同問題では、県議会と県内全41市町村議会が検定撤回を要求する意見書を可決した。県議会や県子ども会育成連絡協議会、県PTA連合会、県老人クラブ連合会、県高等学校PTA連合会、県遺族連合会、県婦人連合会などによる超党派の県民大会が9月に開催される運びになっている。

 終戦記念日に際し、政府がなすべきことは、歴史の真実に目を向け、検定意見を直ちに撤回し記述を復活させることだ。

住民守らぬ軍隊

 昭和天皇が国民向けのラジオ放送(玉音放送)でポツダム宣言受諾を明らかにした1945年8月15日、沖縄では敗戦を知らずガマに隠れている住民がおり、依然、投降を拒否する日本兵と米軍との間で散発的な戦闘もあった。

 久米島では15日以降も、海軍通信隊(約40人、鹿山隊)によって住民がスパイ容疑で次々と殺される事件が起きている。軍は住民を守るどころか刃(やいば)を向けた。

 20万人余が犠牲になった沖縄戦で、日本兵は住民を壕から追い出したり、食料を奪ったり、スパイの嫌疑をかけて殺害するなどしている。

 こうした悲惨な歴史をありのままに伝えていくことは、後に続く者の務めである。

 憲法9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とうたっている。

 とりわけ9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記、戦力の不保持にまで踏み込んでいる。

 戦争の悲劇を二度と繰り返さないためには9条を堅持しなければならない。

 だが、自民党が9条2項を削除し「自衛権」と「自衛軍」の保持を明記した新憲法草案を2005年に決定するなど、改憲に向けた動きも具体化している。

 戦争を防ぐにはどうすればいいのか。皆で考える日にしたい。

(8/15 9:49)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26324-storytopic-11.html