沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月11日、12日)

2007年8月11日(土) 朝刊 1・31面

ハンセンに新射撃場/来週入札 金武町は反発

特殊部隊施設相次ぐ/射程1200メートル道路まで500メートル

 米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に、最大千二百メートルの射程に対応する米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用の小銃(ライフル)用射撃場が整備されることが十日分かった。米側予算で来週、入札で業者選定を実施。来年二月ごろに着工、二〇〇九年七月ごろに完成見込み。同日、国から説明を受けた金武町の儀武剛町長は「負担増につながり到底受け入れられない」と反対を表明したが、日米合同委員会の合意事項ではなく、米側の判断で整備可能という。

 外務省などによると、沖縄自動車道からの距離は約五百メートル。最も近い金武町伊芸区の集落からは約一キロ。射撃場から数キロ離れたレンジ16には、グリーンベレーの都市型戦闘訓練施設の整備が進んでおり、同演習場内でグリーンベレー専用施設が相次いで整備されることになる。

 防衛施設庁によると、新射撃場は遠距離射撃に用いるといい、接近戦訓練用の都市型戦闘訓練施設の射撃場とは「用途が違う」と説明している。

 新射撃場は兵士に射撃の資格を付与するための訓練施設。高さ約十四メートルの三階建てで二、三階にそれぞれ十の射撃スポットを設置。ターゲットは百メートルから千二百メートルの距離の範囲内で対応可能となっている。

 射撃方向は北西の山側のみで、他の三方向は壁で覆うため、民間地域に銃口が向く可能性はないとし、屋上や屋外からの実弾射撃訓練は行わないとしている。

 小銃の射撃訓練で米陸軍はこれまでハンセン内の既存射撃場を使用してきたが、演習場の管理は海兵隊で、陸軍が使用するには調整が必要なため効率的ではなかったという。外務省は新射撃場の設置によって「訓練の集約・改善を行い、効果的、効率的な訓練が行えるようになる」とし、在沖米陸軍の増員を否定。米軍再編で合意した陸上自衛隊との共同使用で新射撃場を使用する可能性についても防衛施設庁は「現時点で計画していない」と否定した。

 県の保坂好泰基地防災統括監は「内容を精査して金武町との連携を密に対応を協議したい」との見解を示した。


     ◇     ◇     ◇     

安保の重荷 町に次々/町長・住民怒りの声


 【金武】「基地負担の増加で、到底容認できない」「住民をばかにした計画だ」。金武町の米軍キャンプ・ハンセンのレンジ3近くに、米陸軍が使用する新射撃場の建設計画が明らかとなった十日、町関係者やレンジ3に近接する伊芸区では、地元を無視した危険施設建設に怒りの声が上がった。金武町は、宜野座村や恩納村とともに今月七日、ハンセンの陸上自衛隊共同使用に反対の意思を表明したばかり。

 儀武剛町長は、会見を開き「米軍再編は沖縄の基地負担軽減というが、北部ではかなりの負担増だという疑念が強くなった。負担減と言いながら、訓練する場所を増やすという発想が理解できない」と、日米両政府に対する不信感をあらわにした。

 「到底受け入れられない。強い意思で反対を貫く」として、週明けにも那覇防衛施設局などに抗議する考えだ。

 池原政文伊芸区長は、レンジ4の都市型戦闘訓練施設に続いて新たな射撃場が造られることに、激しく怒った。「日本政府は米軍の言いなりではないか。レンジ4の問題で、県民から大きな反発を受けたことを理解していない」と批判。

 同基地内のレンジ16奥側へ移転するまでの間、暫定使用されているレンジ4では現在も夜間訓練や突破訓練が行われている。

 池原区長は「米軍は、住民への配慮をまったくしない。週明けにも全体協議会を開き、区として反対の意思を示したい」と話した。

 町議会の松田義政議長は「民間地に近いレンジ3に射撃場を造るとなれば、けしからん問題だ」と声を荒らげた。

 十六日にも全員協議会を開いて、儀武町長から詳細な説明を受けた上で、「議会としての対応を検討したい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_01.html

2007年8月11日(土) 朝刊 1面

4米兵を不起訴/沖国大ヘリ墜落

 宜野湾市の沖縄国際大学に二〇〇四年八月十三日、米軍普天間飛行場所属のCH53D大型輸送ヘリコプターが墜落した事故で、那覇地検は十日、航空危険行為処罰法違反(過失犯)の容疑で書類送検されていた米軍の整備士四人について、条約上、裁判権がないとして不起訴処分にした。

 県警捜査一課と宜野湾署の合同捜査本部は一日、事故から三年目となる十三日の公訴時効を前に、氏名などを特定できなまま四米兵を書類送検した。

 那覇地検は県警の捜査結果を踏まえ、日本側に裁判権があるかどうかの確認を進めていた。

 日米地位協定によると、日本の領域内で起きた事件や事故は日本側に裁判権があるが、公務執行中の罪については米軍当局に第一次裁判権があり、放棄しない限り日本側に裁く権利はない。

 米軍は軍法会議などで四米兵を降格などの処分にしており、那覇地検は米軍当局が裁判権を行使したと判断した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_02.html

2007年8月11日(土) 朝刊 1・2面

14日に公告縦覧開始/「普天間」アセス

 米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、那覇防衛施設局は十四日から方法書の公告縦覧を開始する方針を固めた。縦覧場所は施設局のほか、名護市や金武町、宜野座村内の施設局関連施設やホテルなど五カ所で調整中。方法書の受け取りを「保留」している県や名護市が場所提供に応じない姿勢のため、関連自治体の行政施設で公告縦覧を行わない異例の事態となる。

 公告縦覧の期間は一カ月間。施設局は縦覧後、二週間以内に住民などの意見を受け付ける。それらの意見の概要を作成し、県などに送付。県は意見概要の受理後、名護市など関連市町村長の意見を聴取した上で知事意見を九十日以内(県条例に基づくアセスの場合は六十日以内)に施設局に提出。施設局は知事意見などを踏まえ、方法書を確定する。

 県や名護市は現段階で方法書の受け取りを保留し、知事意見などの審査手続きに応じない意向を示している。


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県、提出再考求める/アセス方法書


 米軍普天間飛行場代替施設建設に向け、国が環境影響評価(アセスメント)方法書を県などに送付したことについて、県は十日、那覇防衛施設局の佐藤勉局長あてに「方法書に対する県の考え方」を提出し、「誠意ある対応と方法書提出の再考」を求めた。小池百合子防衛相らにも同日付で郵送した。佐藤局長は文書を受理したが、コメントなどは発表していない。

 文書で県は、環境影響評価手続きに入る前提として(1)代替施設の規模や位置などの具体的な建設計画が県、関係市町村と政府の間で協議され、移設に関する協議会で関係者の確認を得る(2)普天間飛行場の三年を目途とする閉鎖状態の実現(危険性の除去、騒音の軽減など)についても政府の誠意ある姿勢が示される―の二点をあらためて指摘した。

 その上で「普天間飛行場代替施設建設事業が具体的に始まることになる方法書の提出が、このような前提条件が整わないまま行われたことは誠に遺憾。政府の姿勢に疑問をもたざるを得ない」と批判した。県として方法書の受け取りを保留したことを表明する一方、「普天間飛行場移設問題を早期に解決したいとの県の考えに変わりはない」とし、政府との協議は今後とも続けていきたいとの意向も示している。

 また、米軍再編で負担が生じる地域への振興策、返還跡地利用対策、県全体の振興対策について「政府の責任として当然に所要の措置が講じられるべき」と強調した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_03.html

2007年8月11日(土) 朝刊 2面

防衛施設庁 北東側ルート優先

「普天間」新飛行経路

 二〇〇四年八月に起きた宜野湾市の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が米軍普天間飛行場を離発着するヘリコプターの飛行ルートを再検討していた問題で、防衛施設庁は十日までに、合意内容を報告書にまとめ、同日午前の日米合同委員会の承認を得た、と発表した。それによると、住宅密集地の上空を通過する同飛行場と中城村津覇漁港間の南東側の飛行ルートについて、市街地上空の飛行を最短距離で通過するため、「旋回範囲をより南側方向に延伸して補正」し、北東側の飛行ルートを優先使用することなどで合意した。

 しかし、基本的な場周経路や飛行高度は変更されておらず、「これまで確定されていなかった安全評価を日米間で科学的に検証した」(防衛施設庁)にすぎないのが実態。市街地の中心にある同飛行場の抜本的な安全対策にはつながらず、地元の不安は続きそうだ。

 防衛施設庁の辰己昌良施設企画課長は「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(知事が求める三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との認識を示した。

 報告書は約二十ページ。合意した安全対策はほかに、これまで目視で行っていた管制を自動化する自動管制機能の導入や、夜間の滑走路を見やすくするため、滑走路末端識別灯の新設。飛行場内にある六カ所の工作物や樹木などの障害物を撤去する。

 また、場周経路飛行時の設定高度である三百三十メートルを維持すれば、飛行場周辺での訓練中、空中でエンジンが停止しても、回転翼が回転を続け、水平方向に移動できるヘリの特性によって、飛行場内に帰還することが可能なことを確認したという。


改善取り組み「一定評価」

仲井真知事


 米軍普天間飛行場のヘリの飛行ルートの日米協議が合意したことを受け、仲井真弘多知事は十日、「日米両政府で離着陸経路の改善などの取り組みが決定されたことについては一定評価する。政府が今後、取り組みを一層強化し、ヘリの運用が極力低減されるなど、県の求める三年を目途とする閉鎖状態が早期に実現することを求める」とのコメントを発表した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_04.html

2007年8月11日(土) 朝刊 31面

知事に会長就任要請へ/超党派大会

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を削除した文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会について、準備実行委員会は十日、県婦人連合会など準備実行委をつくる六団体に加え、県議会や県経営者協会、連合沖縄など二十団体で構成する実行委員会の結成を決めた。十六日に最初の実行委員会が開かれる。また、開催時期は実行委員会に一任し、開催場所を宜野湾市の宜野湾海浜公園にするなどの開催案を決めた。

 開催案では大会名を「教科書検定意見撤回を求める沖縄県民大会」とし、大会長に仲井真弘多県知事を、実行委員長に仲里利信県議会議長を選出することや、五万人以上の参加を目標に、数百の各種団体に幅広く協力を呼び掛けていくことなども盛り込まれた。

 また、会場には糸満市の平和祈念公園が候補に挙がっていたが、五万人以上の収容を考え、一九九五年の米兵による暴行事件に抗議して行われた、県民総決起大会でも会場になった宜野湾海浜公園が第一候補となった。

 準備委員会に参加した仲里議長は「一切の政党色をなくして、ぜひ成功させたい」と意気込みを語った。県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の意見が一つになれば、教科書の改ざんを撤回させることはできる」と参加を訴えた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708111300_06.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月11日朝刊)

[4米兵不起訴]

日米地位協定のひずみだ

 検察までもが日米地位協定の壁に押しつぶされたということか。二〇〇四年八月に宜野湾市の沖縄国際大学に墜落した在沖米海兵隊の大型輸送ヘリ事故について、那覇地検は米兵四人を不起訴処分にした。

 この事故で米側は、軍法会議で二等軍曹や伍長など整備士四人の降格と減給、けん責処分したという。

 県警は四人を航空危険行為処罰法違反の疑いで送検する方針だったが、米側から氏名通知を拒否されたため被疑者不詳のまま書類送検している。

 被疑者も事故原因も分かっている。だが氏名が特定されないため起訴できず、同法違反の罪に問えない。これが日米地位協定の真の姿であり、不平等性の元凶といっていい。なぜ政府は抜本的に改正しないのか、県民には疑問というしかない。

 県警が四兵士の氏名を問い、県民がその名前を知りたいと思うのは県民感情として明白ではないか。

 にもかかわらず、ケビン・メア米総領事は地位協定を盾に「日本側が(二次)裁判権を行使できないのに、なぜ県警は名前を知りたいのか逆に疑問を感じる」と述べている。

 確かに地位協定によれば、米軍兵士や軍属の公務中の罪についての第一次裁判権は米軍当局にある。だが、「だからといってなぜ事故を起こした兵士の名前を伏せるのか」という疑問に答えたことにはならない。

 もう一つは、事故原因が整備士の人為的ミスであったにせよ、米軍には組織としての責任があるはずだ。

 であれば、地位協定を盾に高飛車に対応するのではなく、公共の危険を発生させたことを深刻に受け止め、県民に誠意を示すことが米側の最低限の礼儀ではないのか。

 総領事の発言からは逆の姿勢しか見えず、地位協定で定められた既得権益を守るようにしか受け取れない。不平等性の維持であり、県民に負担と危険性を押し付ける姿勢である。

 私たちは、復帰前の米兵絡みの事件、事故の多くが、証拠などが明白なのに沖縄側に裁判権がないため裁けなかったり、形だけの強制送還で終わったことを覚えている。

 今回の不起訴処分はそのことを思いださせる。

 想定できる米軍関連事故を考えれば、日米が平等の立場で事故原因を究明したり、事故現場の管理や捜査ができるようにするのは当然だろう。

 そのためには地位協定の運用改善ではなく、対等独立の立場に立った刑事裁判および捜査権を確立することだ。重要なのはその一点と考えたい。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070811.html#no_1

琉球新報 社説

飛行ルート これで見直しの結論か

 木を見て森を見ない議論から導かれる結論については、あらためて報告を聞くまでもない。初めから予測はされたが、それにしてもである。

 防衛施設庁は10日、2004年8月に起きた沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が見直しを進めていた米軍普天間飛行場のヘリコプター発着の場周経路などに関する報告書を発表した。

 報告書によると、離着陸のルートは、沖国大を中心に住宅などが広がる「住宅高密集度区域」を避けて飛行し、住宅密度の低い北東側経路を優先的に使用するとしている。

 沖国大側からの飛行を回避すれば安全は保障される。そう言わんばかりの結論である。地元市民は到底、納得するまい。

 宜野湾市の地図を広げて見れば、一目瞭然(りょうぜん)なのは広大な面積を含め米軍普天間飛行場の位置やその形状の特異さなどである。市の中央部にでんと構え、占有する形となっている。このため、進入経路を変更したところでほとんど意味を成さない。

 住宅街の密集度の相対的な比較では本質的な問題は何1つ解消されないのだ。

 施設庁は「現状で普天間でとり得る最善の措置」と強調。仲井真弘多知事が求めている「3年以内の閉鎖状態」への対応として検討したと説明する。

 「3年以内の閉鎖状態」は知事の公約である。ハードルの設定は、この程度というのだろうか。随分と低く見られたものだ。

 場周経路や飛行高度が変更されていないのも疑問だ。現状の高度を維持すれば、緊急時にも飛行場内に帰還できることが可能だとしているが、説得力を欠く。3年前の墜落事故との関連について全く言及していない。

 普天間飛行場の問題は、安全性ばかりではない。騒音による地域住民の身体的、精神的な苦痛は計り知れない。

 普天間の危険性を除去するには飛行場の即時閉鎖・撤去以外にない。報告書は自明の理を図らずも証明した。

(8/11 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26212-storytopic-11.html

2007年8月12日(日) 朝刊 1・2面

「普天間」危険除去に限界/ヘリ墜落3年

 二〇〇四年八月に起きた宜野湾市の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故は、十三日で三年を迎える。事故を受け、日米が協議していた米軍普天間飛行場を離着陸するヘリコプターの飛行ルートの再検討は、現状の場周経路や飛行高度を「追認」する内容で合意。仲井真弘多知事は「三年をめどにした普天間の閉鎖状態」を繰り返し政府に求めているが、同飛行場が市街地の中心部に存在し続ける以上、危険性除去策には限界があることを浮き彫りにした。

 仲井真知事は普天間飛行場の県内への代替施設建設を容認する一方、「現行の政府案のままでは受け入れられない」として沖合移動を要請。しかし、政府からは「ゼロ回答」が続き、県は国が送付した環境影響評価(アセスメント)方法書の受け取りを保留している。

 政府と県は「早期の代替施設建設が最大の普天間の危険性除去策」との認識で一致。だが、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設が進まない限り、普天間飛行場が「居座り」続けることになり、仲井真県政は難しい判断を迫られている。


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増え続ける騒音被害/激しさ増す外来機訓練


 日米両政府は宜野湾市の米軍普天間飛行場に離着陸するヘリコプターの新しい飛行ルートに合意した。しかし、実際には同飛行場の所属機が住宅地上空で旋回飛行を繰り返し、外来機の訓練が激しさを増している。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落、炎上してから十三日で三年。同飛行場の現状をまとめ、伊波洋一市長に今後の取り組みなどを聞いた。

 普天間飛行場のヘリ部隊は今年一月下旬から、イラク派遣や海外演習などで「不在」が続いた。しかし、ヘリに代わって嘉手納基地に常駐するP3C対潜哨戒機や山口県岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機などの外来機が飛来。住宅地上空での旋回飛行訓練が常態化し、騒音の激化に歯止めがかかっていないのが現状だ。

 同飛行場の主力ヘリを含む第三一海兵遠征部隊(31MEU)は二月上旬から約二カ月間、沖縄近海や韓国で戦時増援演習「RSOI」に参加した。六月にはオーストラリアに遠征し、七月十八日に再び帰還。その後、住宅地上空で飛行訓練を繰り返している。

 一方、FA18は五月下旬から、延べ二十機以上が飛来した。タッチ・アンド・ゴーなどの飛行訓練を繰り返し、電車通過時の線路脇に相当する百デシベル超の騒音が連日発生した。

 騒音の激しい上大謝名区では四月に二千四百六回だった騒音発生回数が、五月には約一・二倍の二千九百二十九回に増加した。相次ぐ戦闘機の爆音に加え、ヘリ部隊が帰還した七月は昨年から一年間で最も多い三千四百三十九回を記録。一日平均で約百十回もの騒音が発生したことになる。

 市に寄せられた苦情も増加している。四月は一件だったのが、五月以降は毎月二十件以上にはね上がった。「爆音で頭がくらくらする。高齢者にはたまらない」「仕事で疲れて帰ってきても、爆音で気持ちよく夕食が食べられない」など、悲鳴にも似た声が絶えない。

 外来機の相次ぐ飛行訓練はヘリ墜落以前は確認されておらず、事故から三年がたち市民の負担が増しているのが現状だ。


伊波宜野湾市長に聞く/グアム移転が最善策


 ―事故後の三年間の普天間飛行場の運用をどう見る。

 「事故直後から約半年間はヘリが飛ばなくなったが、その後、イラクから部隊が帰還し事故以前の状態に戻った。最近は(騒音防止協定で禁止された)午後十時以降にヘリが飛ぶ場合が多い。三年たっても政府は何の解決策も示せていない」

 ―FA18など外来機の訓練が常態化している。

 「運用は米軍に委ねられており、日本政府はどのように使われようと止めることができない。住宅地が密集する普天間ですらこの状態で、名護市辺野古に新基地が造られれば、(同様に)日本側は手出しができないことを示している。海兵隊の出撃拠点として基地機能が強化される。絶対に容認できない」

 ―日米両政府が合意した新飛行ルートについて。

 「住宅密集地では、いくら検討しても問題は解決できない。現在、ヘリは八カ所ほどから出入りをしているが、同じ場所から離着陸を繰り返すとその地域で騒音が激化する。無灯火の夜間飛行やはみ出し飛行も絶えない。政府は普天間の実態を分かっておらず、机上の理論でしかない」

 ―七月にはグアムを視察した。

 「アンダーセン空軍基地に海兵隊の移転場所が造られつつあり、アセスメント(環境影響評価)も進んでいる。来年八月にはグアムのマスタープランが決定される。具体的な部隊名や移設の手順が明らかになるだろう。市として優先的に普天間のヘリ部隊をグアムに移す仕組みを強く求めていく。それが危険性除去の現実的な解決策で一番の近道だ」

 ―今回の参院選で野党が過半数を占めた。

 「政権交代もあり得る状態だ。国の方針も変わると思う。民主党は『常時駐留なき安保』論を示した経緯がある。米軍駐留が国民の犠牲の下に行われることに、強い抵抗感が生まれるだろう。沖縄の基地は返還されるべきだ。野党の意見が国政で実現されれば、米側も強硬的な姿勢を続けることは難しくなる」

 ―今後の取り組みは。

 「参院選で普天間の返還を求める沖縄の二人の議員が当選した。政府与党は沖縄の基地機能の強化を容認してきたが、これに歯止めをかける必要がある。これまで連絡を取ってきた米国議員などにも沖縄の状況を伝え、より早い解決に向けて取り組む」(聞き手=中部支社・下里潤)

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_02.html

2007年8月12日(日) 朝刊 1面

本紙「集団自決」報道にJCJ賞/東京で贈賞式

 【東京】優れたジャーナリズム活動と作品を表彰する日本ジャーナリスト会議(JCJ)の二〇〇七年度JCJ賞贈賞式が十一日、東京都内の日本プレスセンターホールであり、沖縄タイムス社の長期企画「挑まれる沖縄戦/『集団自決』問題キャンペーン」が表彰された。取材班を代表して出席した謝花直美編集委員に、清田義昭選考委員(出版ニュース社代表)から表彰状が贈られた。

 清田選考委員は「二年前から続く長期企画で、(大阪での)裁判や(文部科学省による)教科書への介入もあり、現在も進行中。地元の身近な問題をジャーナリストの原点に立ってまとめており、キャンペーンとはこういうものだとつくづく感じた」と報道内容を評価した。

 謝花編集委員は「歴史の歪曲を許さないという県民の代表の一人として受賞したと受け止めている。沖縄の一人一人の声を原動力にして県民大会などに向け、粘り強い報道を続けていきたい」とキャンペーン継続への意欲を示した。

 謝花編集委員は〇五年にも「戦後六十年キャンペーン」の取材班を代表してJCJ賞を受賞している。

 ドキュメンタリー映画「ひめゆり」でJCJ特別賞を受賞した柴田昌平監督は「過去に向き合って戦争体験を証言してくれた『ひめゆり』の皆さんが映画を作り、受賞したと理解している。私は仲立ちしただけだ」と述べ、証言者への謝意を強調した。

 「ひめゆり」は、財団法人県女師・一高女ひめゆり同窓会が共同製作している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_03.html

2007年8月12日(日) 朝刊 18面

サンゴ白化 白保ピンチ/WWF、死滅拡大を懸念

 【石垣】世界自然保護基金(WWF)サンゴ礁保護研究センターは九日、世界的に貴重なアオサンゴ群落があり、今月一日に国立公園に指定された石垣島・白保海域で、高海水温が原因とみられるサンゴの白化が進んでいると発表した。沖縄近海で大規模な白化が起きた一九九八年にさえ、白化を確認できなかったアオサンゴも一部で白化(淡色化)しているという。

 白化したうち、死滅したサンゴは5%程度にとどまる。同センターは「今後も高海水温が続くと大量死につながる。台風6、7号でも水温が下がらなければ被害は広がる」と懸念している。

 同センターは四日から六日まで、リーフ内(水深5メートル未満)の二十八地点で調査。すべての地点、同海域に生息するほぼすべての分類群で白化を確認した。

 目視による調査では、ハナヤサイサンゴ科とミドリイシ属は90%以上、コモンサンゴ属は50―70%、白化しにくいとされるハマサンゴ属も30―50%が白化していた。アオサンゴ属は5%未満。

 同センターが水深四―五メートルの場所に設置した水温計の記録では、梅雨明け後の六月二十一日から最高水温が三〇度を超え、七月二十三日以降は一日中三○度を下回らない日もあった。七月末までに三○度を超えた時間を積算すると平年に比べ四倍以上に達するという。

 サンゴは高水温などのストレスを受けると共生藻を失い、白く見えるようになる。今年は梅雨時の降雨や台風発生が少ないため、高海水温が続いている。さんご礁が減れば、生態系や環境に大きく影響する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708121300_05.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月12日朝刊)

[秘密保全協定]

論議は尽くされていない

 日米の軍事一体化が新たな段階に入った。というより、日本が米国の軍事戦略に組み込まれたと言ったほうが正確だろう。

 麻生太郎外相とシーファー駐日米大使は十日、軍事秘密の保全に関する規則を網羅的に定めた「日米軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)に署名、発効した。

 政府は協定に連動して新たな罰則法令は定めないとしているが、政府関係者や関連企業などに対し広範囲の守秘義務が課される。関係省庁が情報公開に消極的になるのは明らかで、さまざまな情報が「軍事秘」を盾に国民の目から遠ざけられ、国民の知る権利が制約される危険性は高い。

 もう一つ忘れてならないのは、秘密軍事情報の共有は憲法で禁じた「集団的自衛権」の行使に限りなく近づくということだ。

 協定で規定された秘密軍事情報にはMD(ミサイル防衛)やイージス艦の戦術データ、暗号情報、有事の際の共同作戦に必要な情報などが網羅的に含まれるという。

 例えば、海上自衛隊のイージス艦が収集した高度な軍事情報がデータリンク(情報共有)によって米軍に提供され実際の武力行使に至った場合、集団的自衛権の行使につながる恐れがあるとの指摘は国会などでも度々、論議されてきた。協定の締結で日米の秘密軍事情報の共有化が進めば、そうした事態がさらに現実化する可能性は高い。

 政府はデータを提供しても、武力行使には米軍独自の判断が必要で一体化には当たらないとしてきたが、もっと踏み込んだ説明が必要だ。

 協定は国会の承認なしに発効した。政府は協定などの国会承認について、法律の改廃や財政的な負担、政治的な重要性のある場合としている。同協定の締結によって法律の制定はなく、財政負担も伴わないから、国会の承認がないというのはおかしい。

 国民の知る権利や憲法解釈にもかかわる重要な協定について再度、国会で議論を尽くすべきである。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070812.html#no_2

沖縄タイムス 社説(2007年8月12日朝刊)

[米陸軍射撃場]

これが負担軽減の実態か

 米軍キャンプ・ハンセン内の「レンジ3」付近に米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用の小銃用射撃場が整備されることが明らかになった。米側予算で来年二月ごろ着工、二〇〇九年七月ごろに完成する計画だ。

 射撃場から沖縄自動車道まで約五百メートル、金武町伊芸区集落まで約一キロ。同町は「負担増につながり、到底受け入れられない」と強く反発している。

 米軍は〇五年七月、「レンジ4」都市型戦闘訓練施設で実弾射撃訓練に踏み切った。だが住宅地から約三百メートル、沖縄自動車道から約二百メートルと近接しているため、地元住民が猛反発した。

 その後、日米合同委員会で「レンジ16」北側に移設することで合意。代替施設完成後、「レンジ4」の管理権は海兵隊に移行されることになった。

 近辺住民が安堵したのもつかの間、今度は小銃用射撃場である。地域の懸念を無視した整備計画であり、住民らが怒るのは当然のことだ。

 防衛施設庁によると、遠距離射撃用で射程は最大で約千二百メートル。接近戦訓練用の都市型戦闘訓練施設の射撃場とは「用途が異なる」という。

 従来はキャンプ・ハンセンの既存射撃場で小銃射撃訓練を実施したが、海兵隊が演習場を管理しているため、効率的ではなかったと説明している。

 しかし、なぜ今になってグリーンベレー専用の新射撃場が必要なのか。キャンプ・ハンセンではせきを切ったように訓練施設整備が続き、機能の強化・集約も急ピッチで進んでいる。

 在日米軍再編の最終報告でキャンプ・ハンセンの共同使用が盛り込まれ、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が近く射撃訓練などの演習を始める。米海兵隊第三師団との共同訓練も検討されており、陸自が一連の射撃場で訓練を実施する可能性もある。

 共同使用についても、金武町、恩納村、宜野座村は「明らかな負担増」と受け止めている。新射撃場への住民の反発は必至である。米軍は住民の意向を踏まえ、整備計画を見直すべきだ。

 嘉手納以南の基地返還に伴う北部地域の負担増、基地機能強化の実態が明らかになってきた。日米で嘉手納基地の共同使用について合意しており、第一混成団の旅団への格上げ、旧東恩納弾薬庫跡地への射撃場建設など、自衛隊の強化も着々と進められる。

 テロなど新たな脅威だけでなく、中国封じ込めへ向けた南西諸島防衛などが強調される中、沖縄を舞台にした自衛隊と米軍の一体化・融合化が明確になってきた側面を見落としてはならない。今回の射撃場計画も米軍再編の中に位置付けて見ていく必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070812.html#no_1

琉球新報 社説

新射撃場計画 おかしな「負担増」の先行

 在日米軍再編であれだけ「地元の負担軽減」を強調しておきながら、沖縄でこうも「負担増」が先行しているのはどういうことだろう。

 日米政府による昨年5月の米軍再編合意後、ミサイル防衛を担う主要装備の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)や、最新鋭のステルス戦闘機F22Aが相次いで嘉手納基地に配備された。

 今度は金武町のキャンプ・ハンセンに、陸軍特殊部隊(グリーンベレー)専用のライフル射撃場を新設するという。射程1200メートルで実弾を使う計画だ。沖縄自動車道から約500メートル、伊芸区の集落から1000メートル弱の地点だが、遠距離射撃であることを考えると民間地への流弾の可能性は否定できない。

 地元の金武町が「到底受け入れられない」(儀武剛町長)、「政府は米軍の言いなりか。悪夢がまた始まる」(池原政文伊芸区長)などと不安や怒りをあらわにしたのは当然だ。

 政府の説明だと、新設されるのはグリーンベレーに射撃資格を与えるための訓練施設で、高さ約14メートルの3階建て。三方向を壁で覆い、射撃方向は北西の恩納岳側だけ。「民間地へ銃口が向く可能性は全くない」(外務省)と強調する。だが、想定外の事態を引き起こすのが軍隊だ。過去に何度も流弾事故が起きていることがその証しで、いくら「安全」と言われても信用し難い。

 グリーンベレー関連施設は先に都市型戦闘訓練施設が集落に近い場所で整備された。この時も反対運動が起きたが、比較的奥の演習場側に移設することを条件に、暫定使用が日米で合意された経緯がある。

 ハンセンでは自衛隊との共同使用も始まる。自衛隊は爆破訓練などを実施する計画で、金武町や宜野座村、恩納村が負担増を訴えていた。そんな矢先の新射撃場計画だ。地元が納得するはずがない。米軍再編でうたった負担軽減はどこへ消えてしまったのか、という思いであろう。

 名護市辺野古沖での普天間飛行場代替施設計画もしかり。新たな基地建設に反対する人々や、計画修正を求める名護市や県の意向に政府は頑として取り合わない。欠陥機の指摘がある兵員輸送機MV22オスプレイの配備も現実味を帯びており、負担増は明らかだ。

 一方で、日米合意にあった在沖海兵隊司令部と隊員・家族計1万7千人のグアム移転や、それに伴う本島中南部の基地返還は進んでいない。「抑止力の維持」だけが鮮明になり、負担増を先行させる構図だ。これはおかしい。

 政府は、これ以上の負担は受け入れられないという地元の意向を踏まえ、新射撃場の計画撤回を米側に強く迫ってもらいたい。

(8/12 10:26)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26255-storytopic-11.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月10日)

2007年8月10日(金) 朝刊 2面

那覇軍港代替施設で合意/牧港補給地区

 【東京】米軍那覇港湾施設(軍港)の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)沖への移設で、政府と県、那覇市、浦添市、那覇港管理組合は九日、第十三回移設協議会を防衛施設庁で開き、追加整備される集積場を含む代替施設の位置や形状、面積について合意した。

 キンザー沖に整備する浦添ふ頭地区の沖合に隣接する逆L字形で、規模は約四十九ヘクタール。政府は今後、代替施設内の建物や集積場などの配置計画について、米側との調整に入る。

 防衛施設庁、内閣府沖縄担当部局、国土交通省港湾局の担当者のほか、県側から上原昭知事公室長、當銘芳二那覇市副市長、吉村清浦添市副市長、那覇港管理組合の堤敏郎副管理者が出席した。

 政府側から米側との調整を経た移設案が示され、県側は「提示された位置および形状に基づき、関係機関との調整を進めることについて同意する」と了承した。

 その上で(1)追加的な集積場を含む代替施設と港湾計画との整合を図りつつ円滑な移設を進める(2)今後より具体的な事項について引き続き担当レベルで密接に調整する―ことを確認した。

 政府は今後、施設の配置計画を米側と協議した上で、具体的な建設計画を進める方針だ。

 那覇港湾施設は、一九九五年の日米合同委員会で、浦添ふ頭地区内への移設を条件として全面返還に合意。代替施設の規模は三十五ヘクタールとされた。

 その後、二〇〇六年の在日米軍再編最終報告(ロードマップ)で追加的措置として集積場(十四ヘクタール)も整備されることになり、規模は全体で約四十九ヘクタールとなった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101300_03.html

2007年8月10日(金) 朝刊 27面

「再発防止徹底を」/米軍車両侵入

うるま市長ら外務省・施設局に抗議

 うるま市の前原高校に米海軍所有のトラックが侵入した問題で、知念恒男市長と市議会の島袋俊夫議長、基地対策特別委員会委員ら十八人は九日、那覇市の外務省沖縄事務所と那覇防衛施設局を相次いで訪れ、抗議した。同市議会は同問題でこの日午前、抗議決議と意見書を全会一致で可決している。市内の県立沖縄高等養護学校で起きた米軍装甲車による侵入から約二十日で同様の事件が再発したことに、知念市長と島袋議長は「県民感情を無視した米軍の行動は断じて容認できるものではない」と批判。在沖米軍に対し、再発防止を働き掛けるよう申し入れた。

 防衛施設局の池部衛次長は事件の再発に「大変申し訳なく思う」と陳謝。その上で八日、在沖米海兵隊各基地の司令官あてに、同隊外交政策部長から注意喚起の文書が送付された、と説明した。

 外務省沖縄事務所は倉光秀彰副所長が対応。「真摯に受け止める」と陳謝した。

 同席した田中直次市議は、侵入した米海兵隊員が学校内で安全に方向転換したと話していることについて、「縁石に乗り上げた跡がある」と指摘。米軍に再度、事実関係を確認するよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101300_06.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月10日朝刊)

[南北首脳会談]

核の完全放棄引き出せ

 韓国の盧武鉉大統領が今月末に平壌を訪問し、金正日総書記と南北首脳会談を行うことが決まった。二〇〇〇年六月に金大中・韓国大統領(当時)と金総書記の間で初めて行われたが、七年ぶり二回目の首脳会談になる。

 北朝鮮の核問題は六カ国協議でようやく動きだしたばかりだ。北朝鮮は非核化へ向けた「初期段階措置」として寧辺などの核施設の稼働を停止し、国際原子力機関の監視を受け入れた。

 これを受けて、今後は「次の段階」として核施設の「無能力化」と「すべての核計画申告」という重要な局面を迎えることになる。

 しかし、核の完全放棄に応じるかどうか、なお予断を許さない。今回の会談はこうした環境下で行われるため、盧大統領は北朝鮮に核放棄へ向けた取り組みを強い姿勢で求めるべきだ。

 韓国側は南北の交流・協力事業の拡大や、軍事的緊張緩和を進めたい意向だ。対北朝鮮「包容政策」を次期政権にも継承させ、南北首脳会談の定例化につなげたいとしている。

 大統領の任期は半年余を残すだけとなった。北朝鮮が会談に応じた背景には、韓国の大規模支援に期待するとともに、年末の大統領選への影響力を行使したいという狙いがあるという分析もある。野党が勝利すれば、融和政策が見直される可能性があるためだ。

 韓国国内では、野党のハンナラ党などから、劣勢の与党系勢力の浮揚を狙った「選挙イベント」などと批判があり、冷ややかな見方があるのも事実。

 ただ、朝鮮戦争以来、休戦状態にある朝鮮半島の平和体制構築へ向けた協議が検討され、米朝関係改善の新たな動きが出てきているのも確かだ。

 難しい局面だが、首脳会談がこうした動きを後押しする可能性を秘めていることも軽視してはならないだろう。

 核問題をめぐり南北首脳会談で一定の成果を挙げれば六カ国協議にも好影響を与えるはずだ。しかし、パフォーマンスに終始し、成果が得られなければ内外から反発を招く。厳しい南北首脳会談になるのは間違いない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070810.html#no_2

沖縄タイムス 社説(2007年8月10日朝刊)

[超党派県民大会]

史実は正しく伝えたい

 高校の歴史教科書から沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への旧日本軍の関与記述が修正・削除されたことに反対する、全県的な大会が開催されることになった。

 大会には県議会が全会一致で参加を決め、超党派であれば仲井真弘多知事も参加する意向だという。

 大会実行準備委員会の県子ども会育成連絡協議会、県PTA連合会、県婦人連合会は、市町村長会、議会議長会、経済団体などにも参加を求めるが、「集団自決」は沖縄戦の実相に深くかかわる問題だ。

 九月九日の県民大会には、できるだけ多くの県民が参加し、「集団自決」と「検定」について検証するとともに、歴史を改ざんする動きに異を唱えていきたい。

 「集団自決」の問題は、ややもすると沖縄一県だけの特殊なテーマと思われがちだ。少なくとも、本土のメディアは大きく取り上げておらず、全国的に理解されているとは言い難い。

 であれば、大会は他県の人々に「沖縄戦の実相」を伝える意義を持ち、沖縄戦における「集団自決」の実態について共通の理解が得られるような取り組みにする必要がある。

 この問題では、全国の小中高校、大学の歴史教育研究者らでつくる歴史教育者協議会も文科省の検定意見書撤回と記述回復を求める決議を採択した。

 県議会は同一会期内に二度「検定撤回」を求める意見書を採択し、四十一すべての市町村議会も可決している。

 「集団自決」に旧日本軍が関与したのは県民のコンセンサスといっていい。県議会などの採択は、体験者の気持ちを土足で踏みにじる文科省の検定意見に対する反論と受け止めるべきだ。

 誤解してはならないが、私たちは文科省や教科用図書検定調査審議会に対し、「ないことを記述せよ」と無理難題を求めているのではない。

 そうではなくて、体験者の証言から明らかなように歴史的な事実は“史実”として、「教科書にきちんと記載すべきだ」と言っているのである。

 文科省が言う「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現」との検定意見は、逆に沖縄戦の実相を意図的に消し去ろうとするもので、容認できるものではない。

 私たちは「負の歴史」からも学ぶべきことは多い。むしろ、そこにこそ歴史を学ぶ意義があるのであり、後の世代の都合によっていいように解釈し直してはなるまい。

 史実をどう厳粛に受け止め、正しく伝えていくか。そのことを再確認するのも県民大会の重要なテーマとなる。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070810.html#no_1

琉球新報 社説

南北首脳会談 「強面外交」転換の契機に

 7年ぶりとなる南北首脳会談が28日にも実現する。北朝鮮の強面(こわもて)外交に、韓国は再び「太陽(包容)政策」で応じる。アジアの火薬庫ともなりつつある朝鮮半島の和平実現に向け、成果と変化を期待したい。

 2000年6月、韓国の金大中大統領が北朝鮮の平壌を訪問し、金正日総書記と会談した前回の歴史的な南北首脳会談では、朝鮮半島の統一や交流と協力の強化をうたう「南北共同宣言」が発表され、雪解けムードが一気に高まった。

 だが、宣言に盛り込まれた金総書記の「適切な時期」のソウル訪問はなく、逆に雪解け会談の2年後には黄海で南北の警備艇による銃撃事件が起きている。事件の対策となる「偶発的衝突防止策」の合意に2年の歳月を要し、南北交流の至難さを露呈させた。

 その後も関係は悪化の一途をたどり、05年2月には北朝鮮が「核保有」を宣言し、翌06年7月には弾道ミサイルの連続発射。韓国は食糧・肥料支援を凍結。北は離散家族の再会事業打ち切り、核実験を強行するなど反発を強めた。韓国も「金剛山観光の見直し」を決めるなど対立を深めた。転機は今年2月。1年3カ月ぶりの6カ国協議の再開である。協議を契機に、北朝鮮は核施設稼働停止に応じ、南北閣僚級会談で離散家族再会に合意。韓国も肥料支援の再開や米40万トンの支援を決めている。

 そして、今回の首脳会談実現である。北朝鮮の強面外交に、韓国も一時は太陽政策を「北風外交」「殴り合い外交」に変化させた。だが、首脳会談再開という「大人の外交」で、再び太陽政策に立ち戻り、朝鮮半島の和平に挑む。

 今回の会談実現を、12月の大統領選で劣勢の盧武鉉大統領率いる与党の巻き返しを狙う「政治的イベント」と、やゆする声もある。

 しかし、南北対話、半島の和平は、拉致問題の難題を抱える日本にとっても重要な意味を持つ。在沖米軍基地の整理縮小も、朝鮮半島情勢が鍵といわれる。

 今度こそ北朝鮮には、強面外交を脱し、南の太陽政策に応じる「大人の外交」を求めたい。

(8/10 9:52)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26185-storytopic-11.html

琉球新報 社説

テロ特措法 延長は本当に必要か

 今年11月1日に期限切れとなるテロ対策特措法に、民主党の小沢一郎代表が「延長反対」を打ち出した。異論、反論渦巻く中、多数与党の政府・与党が数の力で強行し成立、延長させてきた特措法である。憲法違反の疑義も絶えない。この際、是非の徹底論議を求めたい。

 テロ特措法は、2001年9月11日の米中枢同時テロを受け、テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンやアルカイダ、アフガニスタンのタリバン政権の打倒などを目指す米国の軍事支援のために制定された。

 制定のきっかけは「ショー・ザ・フラッグ」というテロ直後の米国務副長官の言葉だった。米国支持の「旗幟(きし)を鮮明に」との意味が、「インド洋に日の丸を見せろ」との対日要求と曲解され、米軍のアフガン攻撃を後方支援する特別立法の制定につながった、との逸話もある。

 特措法制定で日本はインド洋に自衛隊を派遣。米軍を含む諸外国の軍艦・艦船への給油など後方支援活動を展開している。

 制定をめぐる国会論戦では日米安保の「極東」を超える米軍支援の地理的拡大、米軍以外の「諸外国の軍隊」への支援対象の拡大、明文規定がない「米本国への武力攻撃」に対する日本の自衛権行使など、米軍や諸外国の軍隊への後方支援活動が憲法が定める「集団的自衛権の行使」に当たるとの疑念も指摘された。

 米軍のアフガン攻撃自体を「米国による米中枢同時テロに対する報復戦争」とみる憲法学者も少なくない。そこから、報復戦争に手を貸すテロ特措法が、紛争解決の手段としての一切の「武力による威嚇、行使」を禁ずる憲法の理念にも反するとの指摘もある。

 多くの疑念や疑問、反対の声を多数与党の力で封じ、成立させたのがテロ特措法である。

 民主党は7月の参院選で大勝し、参院第一党に、同時に参院では野党が多数を占めた。そこに民主党の小沢代表の発言である。

 小沢氏は、テロ特措法の延長を求める米国のシーファー駐日米大使に「米国を中心とした活動は、直接的に国連安全保障理事会からオーソライズ(承認)されていない」と、延長拒否の考えを示した。

 小沢氏は「日本の平和と安全に直接関係ない地域で、米国やそのほかの国の部隊と共同の作戦はできない」とも述べている。

 特措法論議の中で、再三指摘されてきた違憲・違法性が小沢氏の「延長拒否」の理由だ。

 参院で多数を占める野党の反対に、政府・与党は「日米関係を後退させるもの」と反発。民主党に翻意を促している。

 論議は、秋の臨時国会が舞台となる。論戦の行方を注目したい。

(8/10 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26187-storytopic-11.html

2007年8月10日(金) 夕刊 1面

那覇空港 滑走路増設で3案/調査会議 県民の意見収集へ

 那覇空港の整備の在り方を検討する那覇空港調査連絡調整会議(構成・国土交通省、内閣府、県)の第七回会合が十日午前、那覇市内のホテルで開かれ、新滑走路を現滑走路からどの程度離して整備するかについて「千三百十メートル」「九百三十メートル」「二百十メートル」とする三案が提案された。今後は、同案に対する県民の意見を広く収集するPI(パブリック・インボルブメント)ステップ3を今月末から実施。同調査結果を踏まえ、施設整備計画・構想など具体化の検討作業に入る。

 新滑走路案は、那覇空港を利用するすべての航空機の離着陸が可能な三千メートル、沖合側への配置を設定。

 滑走路が二本ある場合、その間隔によって管制方式が異なることから、「千三百十メートル」「九百三十メートル」「七百六十メートル」「二百十メートル」の四ケースを基本に、発着回数など「空港能力」「利便性」「事業規模」「周辺環境への影響」などの指標で比較・検討を行った。

 一日六百―六百二十回の離着陸が可能な「千三百十メートル」案は、瀬長島への影響を低減するため現滑走路南端から南限に合わせた「南寄せ」配置。事業規模が二千四百億円と大きく、入域客の増加需要予測に基づく経済効果は最大千四百二十億円と試算した。環境面では、瀬長島への直接的な影響はないものの、大嶺崎周辺区域の陸域生物、さんご礁などの一部の海域生物への影響がある。

 「九百三十メートル」案は、現滑走路の両端と新滑走路の両端を合わせた配置。「千三百十メートル」案と同様、空港能力は最大で、コスト高。地上走行距離が二千百メートルと三案で最も短い。

 現滑走路に最も近い位置の「二百十メートル」案は、一日の発着回数が四百七十―四百八十回と空港能力が最小で、事業規模も千三百億円と小さい。周辺環境への影響は、他の二案と比べて、潮流や底質環境の変化は小さい。

 同調査は、那覇空港の総合的調査の一環で、二〇〇三年度から実施。本年度のステップ3は最終段階となる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101700_02.html

2007年8月10日(金) 夕刊 1面

ハンセン内に新射撃場/施設局、金武町に伝達

 【金武】米軍キャンプ・ハンセン「レンジ3」内で、米陸軍が使用する新たな実弾射撃訓練場の建設計画があることが十日分かった。

 外務省と那覇防衛施設局の担当者らが同日午前、金武町役場に儀武剛町長を訪ね、米軍予算で建設することや最長で千二百メートルの射撃訓練が可能な施設になることなどを説明。近く業者の入札を始めたい考えを伝えたという。儀武町長は地元の負担増を理由に、反対の意思を伝えた。同日午後三時から町役場で会見を開く。

 キャンプ・ハンセンに関しては、在日米軍再編で日米合意した共同使用で、陸上自衛隊が射撃や爆破訓練を同基地内で実施することが防衛施設庁から金武町、恩納村、宜野座村に伝えられたばかりで、地元は反対している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101700_03.html

2007年8月10日(金) 夕刊 1面

「普天間」で新飛行ルート/場周経路変わらず

 二〇〇四年八月に起きた宜野湾市の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府が米軍普天間飛行場を離発着するヘリコプターの飛行ルートを再検討していた問題で、防衛施設庁は十日までに、合意内容を報告書にまとめ、同日午前の日米合同委員会の承認を得た、と発表した。それによると、住宅密集地の上空を通過する同飛行場と中城村津覇漁港間の南東側の飛行ルートについて、市街地上空の飛行を最短距離で通過するため、「旋回範囲をより南側方向に延伸して補正」し、北東側の飛行ルートを優先使用することなどで合意した。

 しかし、基本的な場周経路や飛行高度は変更されておらず、「これまで確定されていなかった安全評価を日米間で科学的に検証した」(防衛施設庁)にすぎないのが実態。市街地の中心にある同飛行場の抜本的な安全対策にはつながらず、地元の不安は続きそうだ。

 防衛施設庁の辰己昌良施設企画課長は「現状の普天間飛行場で取り得る最善の措置。われわれとしては(知事が求める三年をめどにした閉鎖状態に対する)回答と思っている」との認識を示した。

 報告書は約二十ページ。合意した安全対策はほかに、これまで目視で行っていた管制を自動化する自動管制機能の導入や、夜間の滑走路を見やすくするため、滑走路末端識別灯の新設。飛行場内にある六カ所の工作物や樹木などの障害物を撤去する。

 また、場周経路飛行時の設定高度である三百三十メートルを維持すれば、飛行場周辺での訓練中、空中でエンジンが停止しても、回転翼が回転を続け、水平方向に移動できるヘリの特性によって、飛行場内に帰還することが可能なことを確認したという。

 飛行ルートを再検討する日米両政府の「現地調整会議」は普天間飛行場を離陸した米軍ヘリが沖縄国際大学へ墜落した事故を受け、場周経路の再検討や安全対策の強化などを目的に、〇五年四月に発足。昨年九月の段階で日米の実務レベルの協議を終了し、現状の場周経路をほぼ維持する内容で事実上合意していた。しかし、「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」を求める仲井真弘多知事のスタンスなどを考慮し、正式承認のタイミングを模索していた。


机上の理論

伊波市長


 【宜野湾】宜野湾市の伊波洋一市長は「実際は基地外へのはみ出し飛行に歯止めがかかっておらず、住宅地上空で旋回訓練を繰り返している。防衛施設庁の言い分は机上の理論でしかない」と批判。その上で「飛行回数を最小限に抑えるという考えが見られない。政府は今の現状を追認したにすぎず、結局は何もできなかった。ヘリ部隊をグアムに移すのが一番の解決策だ」と語気を強めた。


「改善」評価

仲井真知事


 【東京】上京中の仲井真弘多知事は十日、自身が公約に掲げる同飛行場の「三年内の閉鎖状態の実現」とは別問題との認識を示した上で、「改良、改善というのを絶えずやっていただくことは結構なこと」と一定評価した。

 仲井真知事は「詳しく中身を見ていないが、これはこれなりに改良、改善ということで評価すべきだと思う」とする一方で、「三年内の閉鎖状態」について「これはこれで、(国から)きちっとした返事を頂いていない」と述べ、今後も引き続き求めていく考えを示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101700_04.html

2007年8月10日(金) 夕刊 7面

「回避可能」中止求める/F15未明離陸

北谷町議会意見書可決 車両侵入も抗議

 【北谷】米軍嘉手納基地がF15戦闘機四機と空中給油機一機の未明離陸を予定している問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は十日午前、臨時会を開き、「深夜・早朝の時間帯の離陸を回避した本国帰還は可能だ」として、離陸計画の即時中止などを首相や防衛施設庁長官らに求める意見書を全会一致で可決した。また、うるま市で発生した米軍車両侵入問題の意見書、抗議決議も全会一致で可決した。

 離陸計画の中止を求める意見書は、嘉手納基地に一時配備されたF22戦闘機が今年五月、未明離陸を強行した際、一部が日中に離陸し本国に向け帰還したことを指摘。住民の安眠を妨げる行為は「町民の生命、安全を守る立場から、いかなる理由があるにせよ到底容認できない」と米軍を批判。未明離陸を含む深夜・早朝(午後十時―午前六時)の時間帯の飛行中止などを求めている。

 外相や防衛相、外務省沖縄大使、那覇防衛施設局長らにあて送付する。

 また、うるま市の県立高校二校への米軍車両侵入問題の抗議決議は、「北谷町の約53%は米軍基地が占めており、侵入問題は本町でも起こりえる」と指摘。「安全であるべき学校への侵入は、一歩間違えれば生徒らの命にかかわる重大な問題だ」と米軍を批判した。

 決議と意見書では、真相究明と再発防止策の策定、兵員の教育徹底などを求めている。

 在日米国大使や在沖米国総領事、在日米軍沖縄地域調整官、首相らに郵送する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月9日)

2007年8月9日(木) 朝刊 1・27面

県民大会 超党派で/「集団自決」修正

県議会各派、全会一致

 高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を修正・削除した文部科学省の検定意見撤回を求める県民大会について、県議会(仲里利信議長)は八日午後、各派代表者会議を開き、超党派での参加を全会一致で決めた。大会実行委員会には仲里議長が出席する方針だ。仲井真弘多知事も「超党派で、要請があれば参加を検討する」(仲里全輝副知事)との姿勢で、県議会の参加決定によって、県民大会の開催が事実上決定した。時期などは実行委員会で協議される。

 代表者会議では、県議会が検定意見撤回を求める意見書を二度可決したことを踏まえ、「沖縄戦の実相を後世に正しく伝えるために超党派で参加すべきだ」との意見で一致した。

 文科省に対して、「撤回を求める沖縄側の要請にまったく配慮がない」との批判も出た。

 最大会派の自民は、六日の議員総会で意見がまとまっていなかったが、八日の代表者会議の休憩中、議員総会を開いて対応を協議。「軍命の有無を争う裁判の係争中で、司法や検定制度の政治介入になる」との反対意見もあったが、「意見書を二度可決した。軍関与は明らか。検定意見撤回のために大同団結し、文科省に要請すべきだ」という意見が大勢を占め、参加を決めた。

 代表者会議後、仲里議長は「全会一致で参加を決めたことは感慨深く、全県的な運動に広がることを期待したい。米兵暴行事件に抗議した一九九五年十月二十一日の県民大会並みの規模にしたい」と述べた。

 大会の在り方などは今後、実行委で協議するとしている。

 県民大会準備実行委員会メンバーで、県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「県民の代表である県議会が参加することで、大会の実現に向けて大きく前進した。これをきっかけに多くの団体が参加してくれるだろう」と歓迎。

 県や市長会、経済団体などに参加を呼び掛けるため、十日にも準備実行委員会を開き、今後の運営方法などを協議する考えを示した。

 教科書検定では、県議会が二度にわたり抗議の意見書を可決したが、文部科学省は「検定調査審議会の専門家が決めたもので撤回できない」との立場を崩していない。


     ◇     ◇     ◇     

知事も参加検討へ


 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述を修正・削除した高校歴史教科書の検定意見撤回を求める県民大会について仲里全輝副知事は八日、自民党県連の新垣哲司幹事長らと県庁で意見交換し、県の対応について「超党派であれば、要請があれば(仲井真弘多知事の)参加を検討する」との考えを示した。

 仲里副知事は意見交換後、沖縄タイムスの取材に対し「知事が出席するかどうかは日程の都合にもよるが、超党派であれば、出席と(大会での)発言を検討する」と説明。仲井真知事も同様の見解だとした。

 これまで仲井真知事が態度を保留していたことについては、「偏った政治的な集会であれば、参加できない。教科書検定問題というのは事実検証の問題であり、感情的、政治的問題ではない。集会そのものを知事が主催することはない」との認識を示した。また、同問題への別の対応として「専門家や学者などによる組織を立ち上げ、事実を検証することも方法の一つではないか」と提案した。


民の声 議会動かす/関係者、安堵と喜び


 「全会一致とはすごい」、「沖縄の底力を見せよう」。高校歴史教科書の沖縄戦に関する記述から「集団自決(強制集団死)」への軍関与が文部科学省の検定で削除された問題で、県議会が八日、全会一致で県民大会への参加を決めたことに、開催準備を進めてきた関係者は安堵し、喜んだ。検定撤回と記述の復活などを求める超党派の県民大会の動きが始まってから一カ月。粘り強い呼び掛けと、県民の怒りが再度、議会を動かした。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長はこの日、県議会各派代表者会議の直後、仲里利信議長、具志孝助副議長から、県民大会への参加決定を知らされた。

 「県議会がまとまるか不安もあった。県民の怒りを受け止めて参加を決めたことは非常に影響が大きい。ほかの団体も積極的に参加を表明するきっかけになる」。仲里議長の手を握り、喜びで声を弾ませた。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「超党派での参加はうれしい限り。沖縄戦を伝える『教育』として、さらに多くの人に参加を呼び掛ける」と意気込んだ。

 県が「超党派の要請があれば仲井真弘多知事の参加を検討する」としていることに、県婦人連合会の小渡ハル子会長は「大会では県民の代表として、ぜひ知事にあいさつしてもらいたい。県民が超党派で心を一つにして、歴史の改ざんをさせないよう安倍首相に訴えなければ」と強調した。

 「今度は、県民が県議会の決定に応える番だ」と力を込める青春を語る会の中山きく代表。「抗議と要請では終わらせず、教科書への記述復活を勝ち取るため、幅広く団結して県民の底力を見せつけなくては」と大会の成功を訴えた。

 県遺族連合会の仲宗根義尚会長は、近く「歴史的事実を後世に残したい」との思いを盛り込んだ独自メッセージを発表し、県民大会と連動して世論に訴えていく意向を示した。

 六月に教職員を中心に県民大会を開いた高嶋伸欣・琉球大教授。「中央政府と地方という力関係にひるまない、沖縄県民のゆるがない確信を感じる。主権在民のお手本で、『集団自決』への日本軍関与の記述復活とともに、記述復活のための県民の運動も教科書に掲載させたい」と、県民大会開催に向けた動きを評価した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091300_01.html

2007年8月9日(木) 朝刊 2面

国次第で受け入れも/アセス方法書

 米軍普天間飛行場代替施設の建設に向け、那覇防衛施設局が県に送付した環境影響評価(アセスメント)方法書の取り扱いについて、県の上原昭知事公室長は八日、県が求めている「滑走路の沖合移動」「普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態」に関し、政府から前向きな回答が得られれば受け入れる可能性があることを明らかにした。共産党県委員会の申し入れに答えた。

 上原公室長は、滑走路の沖合移動と普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態の二点を挙げ、「政府が何らかの形で回答し、(政府と地元の)協議会などの場で明確に示すことがない限り、方法書は受け入れられない」と表明した。

 一方で、二点について「政府から何らかの歩み寄りが認められた時点で、協議会の開催などをにらみながら、(方法書を)受け入れることはあり得る」とも指摘、政府の今後の対応に期待感を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091300_03.html

沖縄タイムス 社説(2007年8月9日朝刊)

[ハンセン共同使用]

これは明らかな負担増だ

 在日米軍再編で日米合意した米軍キャンプ・ハンセンの共同使用で、防衛施設庁の担当者は県と金武、恩納、宜野座の三町村長に、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)が実施する射撃や爆破などの訓練内容を説明した。

 施設庁は年内にも開始したい意向だが、あえて時期や使用レンジなどを明らかにしなかった。報道が先行し、地元が「反対を表明せざるを得ない」状況であると判断したようだ。

 その代わり、三町村が米軍再編交付金の支給対象になると伝えた。同交付金は米軍再編の進ちょく度に応じて交付金を支給する。アメとムチを露骨に使い分け、受け入れを迫るものだ。

 再編交付金には言及したということはそれを使って受諾させるつもりであろうが、姑息な手法というしかない。

 訓練は当面、自衛隊のみで行われるだろうが、ゆくゆくは陸自に対応する在沖米海兵隊との共同訓練になるのは間違いない。米軍再編の狙いである「米軍と自衛隊の一体化」が具体化され、指揮系統や相互運用など「融合化」を強めるものになっていくはずだ。

 第一混成団はこれまで実弾射撃訓練場が確保されていないため、主に九州の自衛隊演習場を移動して訓練してきた。共同使用で訓練効率が飛躍的に高まる。二〇〇八年度以降は、整備中の沖縄市の東恩納覆道射場で小火器射撃が可能となり、米軍とともに「戦う自衛隊」の環境が整えられていく。

 共同使用は日米地位協定二条四項(a)の「合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本国政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使用させることができる」とする条文に基づく。

 だが、一時的にせよ、使用していないのならば、日米両政府は返還の方策こそ考えるべきではないのか。

 施設庁の説明に対し、儀武剛金武町長ら三首長はそろって「負担増になる」と明確に反対した。米軍に自衛隊が加われば地元負担の増加は明らかであり、共同使用は絶対に認められない。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070809.html#no_2

琉球新報 社説

アセス手続き 普天間の危険性除去どこへ

 防衛省は7日、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古沿岸域での環境影響評価(アセスメント)の方法書を県と名護市、宜野座村に提出した。

 県は2006年5月に政府と交わした基本確認書に基づいた協議が整わない段階での提出は「遺憾」(仲井真弘多知事)とし、受け取りを拒否した。

 名護市の島袋吉和市長も同様な考えで受け取りを拒んだ。

 防衛省はアセス方法書提出で、アセス手続きの効力が発生したとの認識を示したが、容認できない。

 移設問題の原点は「普天間飛行場の危険性の除去」である。それを防衛省はないがしろにしてはいないか。

 防衛省がアセス方法書を強行提出したのは、普天間の危険性除去ではなく、日米合意を最優先した結果にほかならない。

 県や名護市の要望事項が防衛省内でこの間、真剣に検討された節はない。仲井真知事が求める普天間飛行場の3年をめどとした閉鎖状態も、無視され続けている。

 防衛省が14年の移設に向けたスケジュールに重きを置き、作業を進めていることは許し難い。

 アセス方法書自体にも疑問がある。「米軍回転翼機および短距離で離発着できる航空機」とし、機種を明記していない。桜井国俊沖縄大学学長(環境学)は「どんなヘリを使うかについて国は明記しなければならない」とし「法的に欠陥のある方法書と言っていい」と指摘している。

 必要な形式を備えていない方法書は当然、無効である。

 基本確認書は「在日米軍の抑止力の維持と沖縄の負担軽減が両立する方向で対応」と明記している。政府案に反対しながら、同案を基本とした基本確認書に同意した県の対応を、政府は「事実上の受け入れ表明」と受け止めた。

 だからといって地元を無視して強権的に事を推し進めようとする姿勢は乱暴にすぎる。県が態度を硬化させるのも無理はない。

 国は行政手続きを強行する前に、県や地元の要求にどう応えるのか。納得させられない限り、混迷を深めるだけだ。

(8/9 9:52)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26161-storytopic-11.html

琉球新報 社説

超党派県民大会 検定意見撤回実現の弾みに

 県議会は各派代表者会議を開き、県子ども会育成連絡協議会など6団体の要請を受けて、文部科学省の高校歴史教科書検定意見の撤回を求める県民大会に、県議会として参加することで一致した。

 仲里利信議長を県民大会実行委員会のメンバーにすることを自民党が提案し、各派とも了承。超党派が参加する形での大会開催が決まった。

 仲里全輝副知事は「超党派の大会であれば知事が出席して見解を述べることもできる」との考えを示している。超党派の条件が整ったことで、県をはじめ、県議会、各種団体がそろった文字通りの県民大会が実現することになった。

 来年から使用される高校教科書で、沖縄戦の「集団自決」から日本軍の強制があったとする記述が文科省の検定意見で修正・削除された。歴史の歪曲(わいきょく)に対して沖縄全体で抗議し、検定意見の撤回を求めることは大きな意義がある。

 9月9日に予定されている県民大会を成功させ、検定意見の撤回を実現する出発点にしたい。

 3月末に文科省の検定意見が明らかになって以降、県内各団体が抗議の意思を表明。県内全41市町村議会が撤回を求める意見書を可決した。県議会は同一定例会中で、初めて2度も撤回を求める意見書を可決した。

 このことからしても検定意見撤回は県民の総意である。にもかかわらず文科省は県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県町村会、県町村議長会の各代表の検定意見撤回要請を拒否した。

 教科用図書検定調査審議会が決めることというのが理由だが、検定意見の内容をまとめたのは文科省の教科書調査官である。

 しかも、調査官は調査意見書で日本軍の関与に関する記述の削除を求め、審議会はそれをそのまま受け入れ、検定意見として教科書各社に通知していたのである。

 文科省に、事実をねじ曲げた検定意見をまとめた責任があるのは明らかである。

 文科省の壁は厚いものの、1982年に「住民虐殺」の記述が削除された際には、県民の声で検定意見を撤回させた前例もある。

 今回の検定意見は、研究者らがこれまで積み重ねてきた沖縄戦の事実を踏みにじるものであり、断じて容認できるものではない。

 県民の声に応じない文科省のかたくなな姿勢を転換させることができなければ、後世に大きな禍根を残すことになる。多くの県民が大会に参加し、撤回要求の意思を示すことが重要である。

 沖縄戦の事実を子どもたち、そして後世に伝え続けることは県民、そして国の責務である。

 県民大会を弾みに、強力な県民運動を展開したい。

(8/9 9:53)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26162-storytopic-11.html

2007年8月9日(木) 夕刊 1面

うるま議会が抗議決議/米軍車両侵入

 【うるま】うるま市田場の前原高校敷地内に、海兵隊員が運転する米軍のトラックが侵入した問題で、うるま市議会(島袋俊夫議長)は九日午前、臨時会を開き、同校への米軍車両無断侵入に対する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

 同議会では、先月二十六日、同市田場の県立沖縄高等養護学校敷地内に米海兵隊の装甲車両が侵入したことに対する抗議決議と意見書を全会一致で可決したばかり。

 抗議決議では「安全であるべき学校敷地内に装甲車や軍用車両が無断で侵入するという米軍の相次ぐ暴挙は、常識では到底考えられない」と厳しく批判。

 また、事件再発に「県民に対する人命軽視の表れであり、県民感情を無視した行動は断じて容認できない」として抗議するとともに、原因究明や再発防止を求めている。

 抗議決議は駐日米国大使、在日米軍司令官、在沖米国総領事、在沖米海兵隊基地司令官あて。意見書は衆参両院議長や首相などのほか、県知事や県議会議長にも提出し、事件の原因究明について協力を求める。市議団や知念恒男市長らは同日午後、外務省沖縄事務所や那覇防衛施設局、在沖米国総領事館を訪ね、米軍車両の無断進入に抗議し、再発防止を求める。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091700_01.html

2007年8月9日(木) 夕刊 5面

北部訓練場近くに弾200発/東村高江県道そば

 【東】東村高江の米軍北部訓練場のメーンゲート付近で九日午前八時二十分ごろ、米軍のものとみられる弾が入ったプラスチック製のケース一個が見つかった。ケースには長さ五センチ、直径九ミリの弾が二百発入っているとみられる。

 同訓練場内で進められている米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に反対して座り込みをしている市民団体メンバーの男性が、県道70号から約三メートル入った草むらで発見した。通報を受けた名護署員が基地内の米兵に確認したところ、音だけ鳴る訓練用の弾、と説明したという。

 機械で草刈り作業中に見つけた男性は「ゴツンとの音で気付いた。発射された形跡はなく、爆発の危険性もあったかもしれない。こんな危険なものが県道の近くにあることが信じられない」と表情をこわばらせた。

 仲嶺武夫高江区長は「またかという感じ。地元住民は米軍の弾薬類の管理のずさんさは以前から思い知らされている。米軍側に強く抗議し再発防止の徹底を求めたい」と話した。

 同訓練場内にある福地ダムや新川ダムでは、今年一月以降、ペイント弾一万五千発以上、ライフル用空砲、信号弾、手りゅう弾など計一万六千発以上の弾薬類が相次いで見つかっていて、県議会や東村議会が米軍に再発防止などを求める抗議決議案を可決している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091700_02.html

2007年8月9日(木) 夕刊 5面

「核廃絶、世界に要望」/県内13首長アピール

 【北谷】日本非核宣言自治体協議会(非核協)に加盟する県内十三市町村の首長らが九日午前、北谷町役場で記者会見し、「日本と世界各国に対し、核兵器廃絶に向けた真摯な取り組みを強く要望する」とのアピール文を読み上げ、核兵器廃絶を訴えた。会見に参加した首長らは、長崎市に原爆が投下された時間の午前十一時二分に合わせ、犠牲者に黙とうをささげた。

 久間章生前防衛相の「(原爆投下は)しょうがない」発言や非核協会長だった伊藤一長前長崎市長が凶弾に命を奪われたことなどを踏まえ、核兵器廃絶運動を盛り上げる狙い。会見には首長ら十一人が出席した。

 アピール文では、高校歴史教科書で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍関与の記述を修正・削除する文部科学省の検定意見を挙げ、「原爆体験の風化が懸念される長崎・広島と同様に、沖縄でも戦争体験の風化が問われている」と指摘。「非核三原則の崇高な理念を実現し、核兵器廃絶と恒久平和を実現するため平和活動をさらに推進しよう」と宣言した。

 県内の非核協加盟自治体は那覇、宜野湾、石垣、名護、沖縄、豊見城、北谷、南風原、東、読谷、北中城、中城、西原の13市町村。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091700_03.html

2007年8月9日(木) 夕刊 5面

あすにも不起訴処分/米軍ヘリ墜落

 二〇〇四年八月に起こった沖縄国際大学への米軍ヘリコプター墜落事故で、航空危険行為処罰法違反(過失犯)の疑いで書類送検されていた米軍の整備士四人について、那覇地検は十日にも処分を出す。日本側に裁判権がなく、不起訴になる見通し。

 日米地位協定によると、米軍の構成員や軍属による公務執行中の罪は、米軍当局に第一次裁判権がある。

 米側が裁判権を放棄しない限り、日本側は裁判権を行使できないが、米軍は四人を軍法会議で降格などの処分にしており、裁判権は米側が行使したとみられる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708091700_05.html

2007年8月10日(金) 朝刊 1面

メア米総領事「なぜ名前知りたがる」/沖国大ヘリ墜落

県警の姿勢疑問視

 ケビン・メア在沖米国総領事は九日、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故で、米側が容疑者の氏名公表や事情聴取など県警の捜査協力要請に応じなかったことについて「日本側が(二次)裁判権を行使できないのに、なぜ県警は名前を知りたいのか逆に疑問を感じる」との認識を示した。沖縄タイムス社のインタビューに答えた。

 メア総領事は、「米側が捜査に協力していなかったとは思わない」と否定した上で、事故後の米側の対応について「米側が原因を調査し、整備ミスと判明したので関係者の処分も行い、日本側に報告した。安全向上のために整備体制の見直しもした」と説明した。

 日米地位協定で、米軍の構成員や軍属による公務執行中の罪は米軍当局に第一次裁判権がある、と規定していることにも触れ、「私の理解では、公務中の場合、米側が裁判権を行使したら日本側は行使できない。今回、米側は整備士らを処分し、(一次)裁判権を行使しているから、日本側は行使できない」と指摘した。

 また、米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書の受け取りを県などが保留していることについては「アセスに対する県の対応を見ていると、逆に移設が遅れる恐れがあると懸念している」と表明。「沖合に移動するには(辺野古沖の)長島や平島が障害になる。環境への影響も拡大する」と述べ、県などが求める滑走路の沖合移動はできないとの見解を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708101300_02.html

沖縄タイムス 関連記事(8月8日夕刊)

2007年8月8日(水) 夕刊 1面

「集団自決」修正/知事、県民大会参加も

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍関与の記述を修正・削除した高校歴史教科書の検定意見撤回を求める県民大会が予定されていることについて、仲里全輝副知事は八日、自民党県連の新垣哲司幹事長らと県庁で意見交換。県の対応について「超党派で、要請があれば(仲井真弘多知事の)参加を検討する」との考えを示した。

 意見交換後、仲里副知事は沖縄タイムス社の取材に対し「知事が参加するかどうかは日程の都合にもよるが、超党派であれば参加と(大会での)発言を検討する」と述べた。

 また「偏った政治的な集会なら参加できない。集会そのものを知事が主催することはない。教科書検定問題というのは事実検証の問題で、感情的、政治的問題ではない」との認識を示した。

 仲里副知事は同問題への別の対応として「専門家や学者らから成る組織を立ち上げ、事実を検証することも方法の一つではないか」と提案した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081700_02.html

 

2007年8月8日(水) 夕刊 1・5面

米軍校内侵入/外務省「地位協定逸脱」

 【東京】うるま市田場の県立前原高校の敷地に米軍車両が侵入した問題で、社民党の照屋寛徳衆院議員と山内徳信参院議員は八日、外務省に伊澤修日米地位協定室長を訪ね、再発防止などを米側に働き掛けるよう要請した。照屋氏らによると、伊澤室長は「明白な地位協定違反だ」と言明、米側に綱紀粛正を求めていく考えを示したという。伊澤室長は、地位協定第五条二項で定める「基地間の移動」で保護される範囲を逸脱していると説明した。

 侵入した車両は米海軍所属だが、海兵隊に貸し出していたもので、海兵隊員が運転していたことも明らかにした。ただ、行き先や同校に侵入した理由は「事実関係が特定できない」とした。

 これに対し、照屋氏らは事実関係を明らかにした上で、再発防止や綱紀粛正のために、当事者の特定と責任追及など具体的かつ有効な方策を取るよう求めたが、伊澤室長は「日米の高いレベルで協議して、綱紀粛正を図っていきたい」と述べるにとどめたという。


沖縄事務所と施設局に要請

社民県連・護憲ネット


 同問題で、社民党県連と護憲ネットワーク県議団は八日、外務省沖縄事務所と那覇防衛施設局を訪れ、米軍の当事者の特定など事実関係の公表と再発防止を要請した。

 外務省沖縄事務所では倉光秀彰副所長が「このようなことが起きないよう高いレベルで求めていく」と述べた。


     ◇     ◇     ◇     

米軍「指導徹底されず」/抗議の教育長に謝罪


 うるま市の県立前原高校(大城順子校長)に米海軍所有のトラックが侵入した問題で、仲村守和県教育長、県の保坂好泰基地防災統括監らは八日午前、北中城村石平のキャンプ瑞慶覧を訪れ、在沖米海兵隊外交政策部(G5)に抗議と再発防止を申し入れた。

 仲村教育長によると、対応したG5のラリー・ホルコム大佐(部長)は「(前回の侵入後)各指揮官から隊員に指導するよう伝えていたが、徹底されていなかった」と説明し、謝罪した。また、公共施設に立ち入ることのないように目的地や経路を明確にするなど、再度兵員指導を徹底する認識を示した、という。

 トラックの所属部隊や行き先などの詳細については「運用上の理由から答えられない」と述べた、という。

 仲村教育長は「装甲車であれトラックであれ、いかなるものも学校内に入ることは許されない。三度目が起こることのないよう、直ちに全兵員に再発防止の指導を徹底するべきだ」と強い口調で話した。


施設局、学校に陳謝


 【うるま】那覇防衛施設局は八日午前、うるま市田場の県立前原高校(大城順子校長)を訪ね「ご迷惑掛けて申し訳ありません。米軍に対して再発防止をきちんと申し入れしました」と謝罪した。

 施設局の立津長一業務課長は、兵士が道に迷って校内に侵入したことなどを説明。米軍の回答として「今後、県民に心配を掛けないようきちんと指導する」と伝えた。また「米軍の行動は極めて遺憾であり、厳重に注意した。米軍には常識に欠けることがあったかもしれない」と述べた。

 大城校長は「無断侵入は、傍若無人としか言えない。なぜまた同じことが起きたのか。米軍の教育は末端まで行き届いていない」と述べ、施設局に対し米軍に地位協定を守らせるよう要請した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081700_03.html

 

2007年8月8日(水) 夕刊 5面

先島のサンゴ白化深刻/高海水温が要因

 【宮古・八重山】宮古島や石垣島の周辺海域で、七月以降の高海水温が要因とみられるサンゴの白化現象が広範囲に確認されている。リーフ内側の水深の浅い部分での白化が顕著で、環境省は「海水温が高いままだと、さらに広がる可能性がある」とみている。

 気象庁によると、沖縄近海の七月の海水温は平年に比べ一―二度高い。海水を混ぜることで水温を下げる効果がある台風の発生が少ないことが原因の一つと考えられる。大規模なサンゴの白化が起きた一九九八年と状況が似ているという。

 環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターによると、石垣島の平久保、玉取崎、米原、川平石崎、御神崎、名蔵湾、白保と竹富島の東側の海岸付近で、サンゴの白化が見られる。七月下旬以降、確認情報が集中しているという。

 白化しやすいとされるミドリイシサンゴ、コモンサンゴのほか、米原や白保ではハマサンゴの白化を確認している。

 宮古島周辺でも七月中旬からサンゴの白化現象が確認されている。二〇〇四年から環境省の委託を受け調査を実施している宮古島市職員の梶原健次さん(38)は五日、同市城辺の吉野海岸で白化が進行している状況を目撃した。

 水深一―二メートル内の海岸近くでは全体の約八割、ミドリイシサンゴの約九割が白化し、うち5―10%が死滅していたという。梶原さんは「今年は台風の接近も少なく、白化の程度がかなり強いというのが実感。現状のままでも来年の産卵に大きな影響が出るのは間違いない」と話す。

 サンゴの白化は共生藻を失って、白い骨格が透け、白く見える現象。サンゴは共生藻の光合成生産物を受け取ることで大半の栄養を補給しているため、白化が長く続くと飢餓状態で死滅する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081700_04.html

 

2007年8月8日(水) 夕刊 5面

V字案修正を否定/官房長官、再度強調

 【東京】塩崎恭久官房長官は八日午前の記者会見で、防衛省が名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への米軍普天間飛行場代替施設建設に伴う環境影響評価(アセスメント)方法書を県などに送付したことを受け、日米両政府が合意したV字形滑走路案を修正する考えがないことをあらためて強調した。

 塩崎長官は「二〇一四年までの代替施設の完成を実現するため、今回の方法書の送付はぎりぎりのタイミングと(防衛省から)聞いている」と送付の理由を説明した。

 県や名護市が代替施設の建設位置を沖合に移動するよう求めていることには「(在日米軍再編最終報告で日米が合意した)ロードマップで示された計画を進めていくという基本方針は変わっていない」と述べ、V字案を推進するとの認識を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081700_05.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(8月7日、8日朝刊)

2007年8月7日(火) 朝刊 1面

F15未明離陸 延期/嘉手納基地

 【中部】米軍嘉手納基地は六日午後、機体の入れ替えのため、米本国に向け七日早朝に予定していたF15戦闘機四機と空中給油機一機の離陸について「延期する」と発表した。理由や今後のスケジュールについては明らかにしていない。

 これに対し、基地周辺自治体の首長らで構成する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は六日午後、同基地司令官あてに、深夜早朝の飛行中止を求める要請文を送付した。

 北谷町議会基地対策特別委員会(照屋正治委員長)は七日、委員会を開いて対応を協議する。

 野国町長は「五月に未明離陸したF22戦闘機の一部はグアム経由で日中に帰還しており、未明離陸ではない方法も可能なはずだ。米軍は(午後十時―午前六時の飛行制限を定める)騒音防止協定を順守してほしい」と訴えた。

 同基地では今年一月にF15などが二日連続で、五月にも一時配備されていたF22戦闘機十二機のうち、十機が地元の反対を押し切り、未明離陸を強行した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071300_03.html

 

2007年8月7日(火) 朝刊 2面

年内にも開始の意向/ハンセン共同使用

 在日米軍再編の最終報告に盛り込まれた米軍キャンプ・ハンセンの共同使用で、防衛施設庁は年内にも陸自第一混成団のハンセン使用を開始したい意向であることが六日分かった。ただ、七日の県と金武町などへの事前説明では、地元の反発が強いことなどを考慮し、具体的な使用開始時期など詳細には触れない方針だ。

 同庁は当初、七日に渡部厚施設部長や佐藤勉那覇防衛施設局長を県と金武町に派遣し、訓練スケジュールなどの詳細を説明する予定だった。

 ところが、報道が先行し、地元から「いま説明に来られても反対を表明せざるを得ない」との意向も伝えられたことから、同庁内部で説明内容を再検討。一方的な「通告」と受け止められ、地元との関係悪化を避けるため、今回は「共同使用に向けて理解を求めるキックオフ」(同庁関係者)との位置付けとし、担当調査官の説明にとどめる方針に変更した。

 米軍再編交付金の配分調整が進む中、共同使用の受け入れに難色を示した場合、交付金の受給にも影響しかねないため、地元側も現時点で受け入れの可否を迫られるのは避けたい意向があるとみられる。同庁は今後数回の地元との「調整」を経て、自衛隊による在日米軍基地の使用を規定した日米地位協定二条四項(a)に基づく手続きに着手する見込み。

 施設庁は七日、米軍再編交付金の配分に向けた検討状況や、キャンプ・キンザーの返還に伴うキャンプ・ハンセンへの一部施設の移転の可能性についても言及するとみられる。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071300_09.html

 

2007年8月7日(火) 朝刊 28面

さんご礁保全啓発を/環境省

 さんご礁の保全活動を訴える世界的なイベント「国際サンゴ礁年2008」を来年に控え、環境省自然環境局は六日、県庁で説明会を開いた。研究者、企業、自治体やダイビング関係者など約七十人が県内での活動について話し合う「沖縄ワーキンググループ」の設立について議論した。

 一九九七年以来二度目の実施で、日本や米国、オーストラリアなど四十四カ国と、四十の国際機関が参加。それぞれさまざまな行事や活動で、さんご礁の価値や危機にひんしている状況を普及啓発する。イベントを主導する県自然保護課によると、ワーキンググループでは、県民や観光客の参加が可能で、さんご礁がある沖縄ならではの取り組みを探る。東京の推進委員会に活動の報告や提案を行い、来年の活動計画に「現場」の意見を反映させるという。

 出席者からは「サンゴについて、メンバーの共通認識が必要。まずは勉強会から始めてはどうか」「学校現場のカリキュラムに合わせた活動方針を定めた方が良い」などの意見が出た。

 県自然保護課はワーキンググループに参加する団体や個人を募集している。問い合わせは同課、電話098(866)2243。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071300_11.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月7日朝刊)

[原爆症認定]

救済基準の見直し急げ

 広島市を訪れた安倍晋三首相は、国敗訴が続いている原爆症認定の問題について、「認定基準を専門家の判断の下、見直すことを検討させたい」と表明した。

 国の認定基準をめぐる裁判では原告全員、あるいはほとんどを原爆症と認める判決が相次いでおり、認定基準の見直しを求める声も高まっている。

 しかし、厚生労働省は見直しには否定的だ。このため、認定基準の緩和による救済など「政治決着」を模索する動きも出ていた。

 被爆者援護法によると、広島、長崎の被爆者は、厚生労働相の認定を受ければ月額約十三万七千円の医療特別手当が支給される。国は二〇〇一年、爆心地からの距離で推定される被ばく放射線量と、当時の年齢、性別などで発症リスクを数値化した「原因確率」を基に放射線の影響を審査している。

 安倍首相は今回、認定基準の見直し方針を明らかにする一方で、「裁判は別」と発言するなど司法の判断を仰ぐ姿勢をなお崩していない。

 この問題では、厚労省の新たな認定基準導入後、がんなどを発症した被爆者らが原爆症認定を求めて国に集団申請したが、却下されたため、処分取り消しと慰謝料支払いを求めて各地で提訴する動きが広がった。

 大阪地裁は昨年五月、原告九人を原爆症と認定、同八月には広島地裁が四十一人、今年一月に名古屋地裁で四人中二人、三月には仙台地裁が二人、東京地裁も三十人中二十一人を認定している。七月には熊本地裁が二十一人中十九人を認定した。

 判決は認定基準の不備を指摘。基準の機械的な適用を批判し、被爆直後の症状や疾病の内容などを総合的に考慮すべきだとしている。

 原告の平均年齢は七十六歳を超えており、提訴後に三十五人が死亡した。「国の認定基準の機械的運用では不十分」とする新基準導入前の最高裁判決を踏まえた原告勝訴の流れができつつある中で、高齢の被爆者にこれ以上の負担を強いるのは酷である。

 安倍首相の発言をめぐっては「参院選で追い詰められた首相のポイント稼ぎ」など、冷ややかな見方もある。選挙後の状況を見れば当然だろう。

 それでも、全国各地の原告らはかたずをのんで見守っているはずだ。懸念を払しょくできるかどうかは、ひとえに今後の首相の対応にかかっている。

 放射線の人体への影響は未解明の部分もあり、新基準の設定は容易ではないようだが、問題を先送りする時間的な猶予はない。国は控訴を断念して原告と真摯に向き合い、被爆者の救済に全力を挙げるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070807.html#no_1

 

琉球新報 社説

原爆症認定 新たな基準作りを急げ

 広島、長崎の被爆者や遺族から批判を浴びている原爆症の認定基準をめぐる問題で安倍晋三首相は「認定基準を専門家の判断の下、見直すことを検討させたい」と表明した。

 原爆症の認定申請を却下された被爆者が処分取り消しなどを求めた各地の集団訴訟で、国は7月30日の熊本地裁判決を含め6連敗している。

 司法判断は既に固まっているとみるべきだ。原爆投下から62年。被爆者の高齢化が進む。残された時間は少なく、救済は待ったなしである。

 見直しを求める意見は与党内にもある。もろもろの事情を酌めば、安倍首相は、見直しの検討指示の段階にとどまるべきではない。認定枠の拡大に向け、抵抗も予想される厚生労働省に対し、実態に合った認定基準作りを急ぐようもっと踏み込んだ指示を出す必要がある。

 原爆症の認定をめぐる一連の訴訟で争点となったのは、認定基準である。昨年5月の大阪地裁判決は、放射線と発病との因果関係を明確に認める画期的な判断を下した。国の認定審査の誤りを指摘し、被爆者の幅広い救済を促した判決はその後に続く司法判断の枠組みとして定着しつつある。

 国の敗訴に終わったこれまでの判決で指摘されたのは「科学的根拠を厳密に求めると、被爆者救済という被爆者援護法の目的に沿わない」というものだ。現行の認定基準は、爆心地からの距離などを基に推定される放射線量をベースに年齢、性別などの要素を加味し認定している。

 しかし、判決はこの審査の在り方について「機械的に当てはめて放射線に起因することを否定している」と批判。「被爆状況など個々の被爆者の個別的事情を踏まえた判断をする必要がある」と政府に反省を強く迫った。

 最新の熊本地裁判決では、糖尿病のほか、変形性関節症など運動機能障害の症状にも救済範囲が拡大された。放射線の人体への影響にはまだ未解明の点がある。それを考慮した妥当な判断だ。

 首相は見直し検討の一方で「裁判は別だ」とも語っているが、原告らは肉親を失い、病に苦しめられるなど辛酸をなめてきた。平均年齢は70歳を超え、亡くなった人も多い。国は控訴するべきではない。

 原爆症の認定者には、月額約14万円の医療特別手当が支給される。だが認定者は、被爆者健康手帳を持っている者の1%にも満たない。厳格な基準に阻まれ、申請者のうち認定されるのは2、3割にとどまっている。

 国は被爆者の切実な訴えに耳を傾け、早急に新たな基準作りに取り組んでほしい。

(8/7 9:49)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26098-storytopic-11.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 1面

アセス方法書送付/普天間政府案で防衛省

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に向け、防衛省は七日午後、政府案に基づく佐藤勉那覇防衛施設局長名の環境影響評価(アセスメント)方法書を県に送付した。県は名護市が求める滑走路の沖合移動を主張し、現段階で方法書を送付されても、知事意見の取りまとめに向けた審査を行わない意向を示しており、普天間移設問題をめぐる県と政府の交渉は重大局面を迎える。

 施設局幹部らは同日正午すぎ、県庁二階にある返還問題対策室を訪ね、方法書を提出した。

 国からの方法書送付について仲里全輝副知事は七日午前、「前提条件が整っておらず、方法書を受理できるわけがない。仮に強行したとしても文書で受理しない旨を防衛省に通告するつもりだ」との考えを示した。ただ、方法書の送付を受けた場合、県は法律上、受け取りを拒否できないため、難しい判断を迫られそうだ。

 県は同日夕、知事コメントを発表する。方法書送付を受け、国と県などは来週にも、普天間移設に関する協議会を内閣改造が想定される二十七日前に開催する方向で調整に入るとみられる。

 小池百合子防衛相は二日に仲井真弘多知事と面談した際、普天間代替施設の建設について「沖縄の海を守ることに力点を置いている」と述べ、環境への配慮を強調。海域の埋め立て面積が増大することから、沖合移動は困難との見方をあらためて示していた。

 仲井真知事は二月に守屋武昌防衛事務次官と面談した際、アセス後に修正の可能性があるとの提示を受けたことを明らかにした上で「県は現行のV字案に反対しており、後先が逆。新しい案にして、名護市の考えも聞いて対応するのが筋」と指摘。環境アセスメントの先行実施を容認しない考えを示している。

 県首脳は、政府案に基づく方法書が送付された場合、「フリーズ(凍結)状態にする」と主張。県が知事意見を出さない場合、国から「不作為」を理由に行政訴訟を起こされる可能性もあるが、訴訟も覚悟で臨む見解を示していた。

 方法書は県への送付と同時に、一カ月間の公告縦覧に付される。縦覧後、県は住民らからの意見をまとめた意見概要を受理し、六十日以内に知事意見を国に提出する。

 防衛省はキャンプ・シュワブ周辺海域で六月にミドリイシサンゴの産卵が始まるため、「五月には調査準備に着手する必要がある」と主張。アセスに基づかない事前調査の位置付けで海域の現況調査に着手している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_01.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 1面

守屋次官、今月末退任/防衛相方針

 【東京】小池百合子防衛相は七日までに、防衛省の守屋武昌事務次官を今月末で退任させ、後任に西川徹矢官房長を起用する方針を固めた。守屋氏は今年三月、定年を延長しており、在任期間は異例の五年目に入っていた。守屋氏の退任に伴い、同様に定年延長していた佐藤勉那覇防衛施設局長も退任する。

 民主党など野党が反対するテロ対策特別措置法が焦点となる秋の臨時国会に向けて留任説もあったが、在任期間が異例の長さとなったため、交代を決めた。

 守屋氏は一九七一年に防衛庁入り。官房長、防衛局長を経て二○○三年八月に事務次官に就任。米軍普天間飛行場移設など沖縄の基地問題や在日米軍再編に長く携わった。ただ、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設では、現況調査(事前調査)への海上自衛隊動員を強行するなど、厳しい姿勢が目立っていた。

 西川氏は一九四七年六月生まれ。大阪府出身。京大卒後、七二年に警察庁入庁。二〇〇五年八月から現職。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_02.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 5面

うるま議会 抗議決議へ/相次ぐ米車両学校侵入

 【うるま】米軍車両とみられるトラックが、うるま市田場の前原高校(大城順子校長)の敷地内に侵入した問題で、うるま市議会基地対策特別委員会(東浜光雄委員長)は七日午前、九日に臨時会を開き、再発防止などを求める意見書と抗議決議を提案することを決めた。うるま市基地対策課では車両の所属などについて那覇防衛施設局を通し米軍側に照会しているが、同日午前の時点で回答はないという。一方、県教育庁は「度重なる米軍の傍若無人な行動に抗議する」などとした抗議文を決定。午後にも仲村守和県教育長が那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所に再発防止を求めて抗議する。

 うるま署は七日午前、前原高校敷地内で、侵入した車両のタイヤ痕などを調査した。

 同市では先月十八日にも、市内にある県立沖縄高等養護学校内に米海兵隊の装甲車が侵入していおり、うるま市議会は同二十六日に臨時議会を開いて抗議決議と意見書を可決している。

 米軍関係の教育現場への車両侵入が相次いだことに、市議会基地対策特別委員会の東浜光雄委員長は「また同じことが起こってしまった。抗議決議や意見書を提出しても原因の説明は得られず、それで(事件が)終わった状態になってしまっている」と指摘。

 米軍側が日米地位協定の運用上の都合を理由に事故の原因を説明しないことについて「地位協定の行き詰まりであり、これでは県民が納得しない」と話し、県の協力を得て米軍側に再度原因究明を求めていく意向だ。

 うるま市も抗議行動を行う予定。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_04.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 5面

北谷町議会 中止要請へ/未明離陸

 【北谷】米軍嘉手納基地がF15戦闘機の未明離陸を予定している問題で、北谷町議会基地対策特別委員会(照屋正治委員長)は七日午前、臨時会を十日に開き、未明離陸の中止と深夜・早朝(午後十時―午前六時)の飛行制限などを定めた騒音防止協定の順守―などを求める意見書を提案すると決めた。あて先は首相や外相、防衛相など。

 意見書案は、五月にF22戦闘機が米本国向けに帰還した際、一部が他基地を経由して嘉手納基地を日中に離陸したと指摘。「未明離陸の回避は可能であり、いかなる理由があるにせよ容認できない」としている。

 照屋委員長は「深夜・早朝の安眠する時間帯の離陸は、大きな住民負担があり容認できない。中止要請の決議までに未明離陸を強行すれば、意見書に加えて抗議決議も審議したい」とした。

 基地特委は、前原高校の敷地内に米軍車両とみられるトラックが侵入した問題についても臨時会前に開催する基地特委で対応を協議する。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_05.html

 

2007年8月7日(火) 夕刊 4面

山内徳信氏が初登院/臨時国会

 【東京】七月二十九日投開票の参院選比例代表で初当選した山内徳信氏(72)=社民=が臨時国会召集日の七日午前、初登院した。沖縄選挙区で二期目の返り咲きを果たした糸数慶子氏(59)=無所属=は約十カ月ぶりに登院した。両氏は最優先で取り組む課題に、高校歴史教科書から日本軍の関与が削除された教科書検定問題を挙げ、「師弟コンビ」で沖縄の課題解決に向けて連携する意欲を示した。

 山内氏は紺のスーツに、出馬表明でも身に着けた読谷山花織のネクタイで国会入り。教科書検定の撤回を最優先に挙げた上で「辺野古のV字形の海上基地や東村高江のヘリパッドを造らせないことにも全力を尽くしたい」と述べ、文部科学省や防衛省の関係者と早期に面談する意向を示した。

 糸数氏は白のスーツ姿。「付託された議席の重みをあらためて感じている。(恩師の)山内氏と一緒に、沖縄と国政の課題解決に取り組めるのは大きな喜びだ」と意気込んだ。教科書検定問題については「戦争体験のない世代に歴史認識をきちんと伝えるため、元の正しい記述に戻していくことが真っ先にやることだと思っている」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708071700_08.html

 

2007年8月8日(水) 朝刊 1面

公告縦覧 来週開始/県・名護市、受け取り保留

「普天間」アセス方法書提出

 米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に向け、防衛省が七日、環境影響評価(アセスメント)方法書を県に提出したことを受け、県の仲里全輝副知事は同日午後、県庁で記者会見し、方法書の受け取りを保留し、知事意見などのアセス手続きに着手しない意向を明らかにした。しかし県は法律上、受け取りを拒否できず、那覇防衛施設局はアセス法に基づき、来週中に公告縦覧手続きを開始する方針だ。防衛省は同日、県のほか名護市と宜野座村にも方法書を送付。名護市も県と歩調を合わせ、アセス手続きには応じない考えだ。

 方法書送付を受け、県は数日中にも、仲井真弘多知事名で小池百合子防衛相と佐藤勉那覇防衛施設局長あてに、現段階ではアセス手続きには応じられない、との県の見解を正式に申し入れる。また県は、公告縦覧の場所として県庁など関連施設を提供しない考え。

 仲里副知事は会見で「前提条件が整わない中、方法書が提出されたことは誠に遺憾」と表明。県と名護市が求める滑走路の沖合移動や普天間飛行場の三年をめどにした閉鎖状態について、政府の前向きな対応が示されない段階で方法書が提出されたことを批判した。さらに「単なる行政的な事務処理の一手続きとして進めることはできない」と主張。方法書の受理を保留する考えを示した。

 アセス後に行われる国から県への埋め立て申請手続きに関しても仲里副知事は「政府が(県の意向を)無視して強行していく過程があれば承認申請の場合にノーという場合もあり得る」とし、応じない意向を示唆。調査範囲について方法書は、現在海域で実施している現況調査と同様の範囲まで拡大しているとみられる点について、仲里副知事は「方法書の中身については精査していない」と断った上で「法律上何の意味合いもない」との認識を示し、政府案を前提とした方法書である以上、受理しない方針をあらためて示した。

 一方、防衛省幹部は「環境影響評価法六条に基づく『送付』はあくまでも送付であり、協議などを行う必要はなく、送付さえすれば効力を有する」との解釈。施設局は公告縦覧については「来週に行う予定」とし、県の意向とは無関係にアセス手続きを進める考えだ。

 名護市の島袋吉和市長は七日、「県や名護市の考え方について協議を行うことなく方法書を提出したことについて大変遺憾。受け取ることはできない」と述べた。宜野座村の東肇村長は「宜野座村としては、従来通り村内上空を飛行しないよう、施設局に求めていく。アセス手続きについては、県や名護市と歩調を合わせて対応していきたい」と話した。


調査範囲は政府案前提


 【東京】米軍普天間飛行場代替施設の建設に向けた環境影響評価(アセスメント)方法書で、V字形滑走路の位置は、日米で合意した名護市キャンプ・シュワブ沿岸部の位置に明記され、政府案を前提とした内容となっている。海域の調査範囲については、名護市嘉陽集落の東部にあるバン崎から、同市久志集落の南部にある宜野座村前原付近までのエリアを設定。アセスの前段として防衛省が実施している現況調査(事前調査)と同じ範囲とみられる。

 辺野古沖を埋め立てる従来案の調査範囲に比べると、安部岬からバン崎に及ぶエリアを新たに追加。南北方向には拡大しているが、全体的に陸地寄りとなっており、V字形滑走路の沖合移動を求める名護市にとっては受け入れ難いと見られる内容だ。

 方法書によると、公有水面の埋め立て面積は、約百六十ヘクタール(代替施設本体部分約百五十ヘクタール、護岸部分約十ヘクタール)。埋め立てに使う土は約二千百万立方メートルを計画。辺野古ダム周辺の土砂約二百万立方メートルを活用、残り約千九百万立方メートルは購入する計画だ。護岸は延長約四千八百メートルを計画。そのうち深い水深に対応する「ケーソン護岸」を千四百メートル、浅い水深に対応する「傾斜堤護岸」を三千四百メートルと想定している。

 護岸のブロックなどを製作するための陸上ヤードも大浦湾西岸海域(大型ブロックを製作)、辺野古地先水面(小型ブロックを製作)に設置。そのほか、製作済みケーソンの仮置きのための海上ヤードを大浦湾中央海域の海底に想定している。

 一方、飛行場の使用を予定する航空機の種類については「米軍回転翼機及び短距離で離発着できる航空機」と明記。現在普天間飛行場で運用しているヘリや固定翼連絡機を想定したものだが、将来的には垂直離着陸機MVオスプレイの配備も予想される。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081300_01.html

 

2007年8月8日(水) 朝刊 27・26面

強権手法に反発噴出

 「地元を敵に回すつもりか」「小池さんは無知だ」―。防衛省が七日、米軍普天間飛行場代替施設の建設に向け、環境影響評価(アセスメント)方法書の送付を強行した。一方的に書類を押し付けられ、ぶぜんとした表情の県や名護市の幹部。容認派の市民からさえ、反発の声が上がった。環境問題の専門家は、非科学的な調査を懸念した。

 【名護】防衛省が方法書を名護市などに送付した事に、地元の反対派は環境への影響を危惧、容認派からも地元との協力関係への悪影響を懸念する声が上がった。

 辺野古区出身の島袋権勇名護市議会議長は「一方的に送付するやり方は理解できない。市議会でも沖合移動を決議しており市の立場を支持する。政府は地元と協議会を開く努力をしないのか」と強引な手法にいら立った。同区代替施設等対策特別委員会の古波蔵廣委員長は「何を焦っているのか。地元の感情を悪化させては敵に回すだけだ。久辺三区、市、県と連携していく」と憤った。

 一方、同区有志でつくる代替施設推進協議会の宮城安秀代表は「一歩進んだ感じ」と移設作業の進展を歓迎。「時限立法で出来高払いの米軍再編推進法も成立した。作業が早めに進み、地元が要望する振興策を実現させてほしい」と話した。

 沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の東恩納琢磨団長は「小池さん(防衛相)はジュゴンの藻場の消失面積が少ないから『環境に配慮している』というが無知だ。辺野古崎を挟んで埋め立てれば潮の流れが変わり、人間で言えば首を絞めるようなもの。ジュゴンは救えず海ガメなど、地域の生態系への影響は大きい」と指摘した。

 また、平和市民連絡会の平良夏芽共同代表は「基地建設のためのアセスで到底容認できない。白紙撤回まで反対の声を大きな渦にしていきたい」と批判した。


県、政府の「暴走」懸念


 「米軍統治下みたいに県民意思を無視して(基地建設を)強行するのか」「基地と向き合うことになる地元に対する政府の姿勢に疑問を持たざるを得ない」。七日午後、県庁で開かれた県側の記者会見。政府が不意打ちに近い形で方法書を提出したことに仲里全輝副知事は終始、ぶぜんとした表情で厳しい言葉を続けた。

 会見の冒頭、知事コメントを淡々と読み上げながら、仲里副知事は率直な思いも語った。「沖縄の米軍基地は非民主的な形で、所有者の権利を無視して強権的に接収され出来上がった。この経緯を思い出す」。一呼吸置いて、「(今後は日本)政府がそういうことをまたやるのか、という思いもある」と、気抜けした口調で漏らした。強権的な対応への怒りより、膠着状態の打開に突っ走った政府の「暴走」への懸念を強くにじませた。

 施設局の幹部らは正午すぎ、県庁の返還問題対策課を訪れた。上與那原美和子課長は「受け取れないときちんと申し上げたが、向こうは置いていった」。その場で、互いに「理解してほしい」との応酬があったという。

 名護市役所には、午後二時すぎに姿を見せ、やはり拒否する市側を押し切って提出した。市幹部は「地元が納得していないのに、どうしてこのタイミングなのか理解できない」と首をひねった。


     ◇     ◇     ◇     

「アリバイづくりだ」/環境専門家、厳しく指摘


 防衛省が提出した方法書に対して、環境の専門家から批判が相次いだ。沖縄大学学長の桜井国俊教授は「事前調査で環境を破壊した上、方法書でも航空機の種類を明示しない。アセス法に違反しながら、環境配慮のアリバイをつくる犯罪的な行為だ」と厳しく指摘。

 建設場所をめぐる国と地元の対立に触れ、「両者の案と、環境影響が大き過ぎれば中止するという三つの選択肢を用意するのが本来のアセスだ」と、科学的に比較検討するよう求めた。

 方法書は、ジュゴンについて「海外で飛行場など人間活動との共存の有無について情報を入手する」と記述。ジュゴンに詳しい水生哺乳類の研究者、粕谷俊雄さんは「生息地を破壊する工事との共存例など聞いたことはないが、あっても沖縄に当てはめられるか疑問だ」とした。

 ジュゴンは環境省が絶滅危惧種に指定したばかり。「頭数が少な過ぎて、ここまでなら生息環境を破壊しても大丈夫だと許容する余地はない」と断言し、計画自体の見直しを求めた。

 事前調査では、すでにサンゴの着床具が設置されているが、方法書でもその場所は明らかにされなかった。沖縄リーフチェック研究会の安部真理子会長は「海流や砂が堆積しないことが場所選定の条件になるが、公開しなければ検証できない。学生の論文なら失格だ」と、手厳しい評価を下した。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081300_02.html

 

2007年8月8日(水) 朝刊 2面

射撃や爆破訓練予定/ハンセン共同使用で施設庁説明

 防衛施設庁の原田実施設調査官らが七日、県と金武町役場を訪ね、在日米軍再編で日米が合意した米軍キャンプ・ハンセンの共同使用で陸上自衛隊が射撃や爆破、車両を使った訓練を実施すると説明した。町役場で説明を受けた金武町、恩納村、宜野座村の三首長はいずれも共同使用について「地元の負担増になる」と反対の意思を伝えた。訓練の開始時期や具体的な訓練場所などについての言及はなかった。原田施設調査官は三町村が米軍再編交付金の支給対象になることを明らかにした。

 県への説明後、ハンセンの共同使用について原田施設調査官は「地元は負担増と懸念を抱いているので自衛隊、米側と詰めた内容についてよく説明し、理解を得られるようになればいい思っている」と述べた。

 県の上原昭知事公室長は「自衛隊が共同使用することによって地域の負担につながらないよう、地元に十分説明し理解を得るよう求めた」と強調。その上で、防衛施設庁が説明を重ねた後、共同使用を進めていくとの見通しを示した。ハンセンの共同使用に伴う再編交付金については「共同使用も米軍再編の一環なので自衛隊が使用することで負担が増えるのであれば当然(交付)対象になるということだった」と述べた。

 金武町役場では、ハンセンに関する三町村連絡協議会(三連協、会長・儀武剛金武町長)で、三町村の首長らがハンセンの共同使用などについて説明を受けた。儀武町長は「レンジ4の都市型戦闘訓練施設は使用しないと明言していた。地元としては共同使用は、現状では負担増になるので反対だと伝えた。共同使用に反対しているので、再編交付金については、具体的に聞かなかった」と述べた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081300_04.html

 

2007年8月8日(水) 朝刊 27面 

米軍、侵入認め「遺憾」/うるま市

 【うるま】米軍トラックがうるま市の前原高校(大城順子校長)敷地内に侵入した問題で、在日米海兵隊基地司令部は七日午後、うるま市の照会に対して、米海兵隊員が運転中に道に迷って学校内で方向転換したことを認め「事件によって生じた不安について遺憾に思う」と回答した。那覇防衛施設局を通して文書で答えた。

 トラックが所属する部隊や行き先、訓練の内容は明らかにしていない。トラックは海軍の所有だという。文書によると、トラックは(学校の)駐車場内で安全に方向転換後、訓練のための運送業務を続けたという。

 また、うるま市では同日夜、前原高校、沖縄高等養護学校を含む市内の七つの県立学校の校長やPTA会長が参加した連絡協議会が開かれ、今後の対応策などを話し合った。

 前原高校の有銘清教頭は「沖縄高等養護学校内に装甲車が侵入して、ひと月もたたないうちに事件が発生したことは大きな問題だ」と指摘。沖縄高等養護学校の塩浜康男校長は「米軍側はいったいどういう感覚をしているのか。危機回避の方法として、正門を閉めることも検討している」と怒りを隠せなかった。

 前原高校PTAの具志川光彦会長は「市内のどの学校でも事件が起こる可能性がある。不審者対策と同様に、危機意識を持って対策を立てていきたい」と呼び掛けた。


仲村県教育長 施設局に抗議


 うるま市の前原高校の敷地内に米海軍所有のトラックが侵入した問題で、仲村守和県教育長、県の保坂好泰基地防災統括監らは七日午後、那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所を訪れ抗議した。

 仲村教育長らは七月二十三日に、同市の沖縄高等養護学校への米海兵隊装甲車侵入で抗議したばかり。「再び米軍の暴挙が発生し、学校の安全が脅かされたことは異常事態だ」と厳しく批判。米軍に再発防止の徹底を強く申し入れるよう要請した。保坂統括監も「全軍で隊員教育を徹底してほしい」と要望した。

 同局の池部衛次長は無断侵入の経過を報告、「隊員の綱紀粛正を強く申し入れた」と述べた。外務省沖縄事務所では倉光秀彰副所長が対応した。

 また、高教組、沖教組、沖縄平和運動センターの三団体も同日、同局を訪れ、安全確保が徹底されるまでの間、米軍基地外での車両の運行中止を米軍当局に強く働き掛けるよう求めた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200708081300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月8日朝刊)

[米軍車両再侵入]

舌の根も乾かぬうちに

 果たして日本国内で、市街地を迷彩色を施した軍隊の車両が、真昼から堂々と走り回る地域がどれほどあるのだろうか。

 七日午後、うるま市田場の県立前原高校の敷地内に米軍車両が侵入した。目撃した学校関係者によると、米軍車両は、中庭を一周して出て行ったという。時間にしてわずか一分前後。人身、施設への被害はないものの、実に由々しき問題だ。

 同市内にある県立沖縄高等養護学校に米軍装甲車が侵入したのは半月ほど前のことである。前回の問題で、米軍は再発防止を示していたのではなかったか。それが舌の根も乾かぬうちに二度目の侵入である。安保条約を盾にした米軍の「何でもあり」の行為は絶対許されるものではない。

 まず指摘したいのは米軍による沖縄県民の権利の侵害である。沖縄は先の戦争で、県民の意に反する形で米軍に土地を接収され、その後六十数年も基地として使用されている。だが、われわれは生命、財産の権利侵害まで認めてきたことはない。

 今回の問題で米軍は日米地位協定に基づく「施設間の移動」との立場をとっている。だが、現実的に県民の生活の場である公道が日常的に軍事利用されているのは明白だ。

 数年前、沖縄自動車道が米兵の大型トラックの運転訓練に使用されていることが明らかになった。朝夕の出勤、帰宅時間に遭遇する米軍の大型車にヒヤっとしたドライバーも多いだろう。

 確かに一連の軍車両侵入という出来事は、目に見える被害はなかった。しかし、平和に暮らす権利を侵害され、事故に結び付く危険性という日常の中での精神的苦痛は政府が考える以上に大きなものがある。

 政府は基地面積の縮小によって負担を軽減していると主張する。しかし、駐留自体が負担だということになぜ目を向けようとしないのか。基地の整理・縮小と、海兵隊などの撤退を求める理由はそこにこそあり、政府はそのことを真摯に受け止めるべきだ。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070808.html#no_2

 

沖縄タイムス 社説(2007年8月8日朝刊)

[アセス方法書送付]

県民の怒り無視するか

 防衛省はなぜ地元を無視して強引に事を運ぼうとするのだろうか。普天間飛行場の代替地となる名護市辺野古キャンプ・シュワブ沿岸部で実施する環境影響評価(アセスメント)のことだ。

 防衛省は政府案に基づくアセス方法書を県に送付したが、名護市と県、国の協議が三者の溝を埋めるほどきちんと進められた形成は全くない。

 「沖合移動」を求める名護市に対し、「変更せず現計画通り」とする政府の間で意見は隔たったままだ。

 仲井真弘多知事も現行案の沖合移動と、三年をめどに「普天間」を閉鎖状態にすることを政府に求めている。つまり、これが県の基本姿勢なのに何一つクリアされていない。

 さらに忘れてならないのは、多くの県民がシュワブ沿岸部への「新基地」建設だけでなく県内移設に反対しているということだ。その声を一切無視した那覇防衛施設局の手法には、どうしても異を唱えたくなる。

 これでは見切り発車であり、「県民、地元の意見はもう聞かない。国の方法で移設を推し進める」というようなものだろう。

 強権を発動して事をなそうとするのは、県民を愚弄する行為と言っていい。強行すれば地元住民との衝突は必至であり、このような手法を認めるわけにはいかない。

 仲里全輝副知事は「前提条件が整っておらず、方法書を受理できるわけがない。仮に強行したとしても、文書で受理しない旨を防衛省に通告するつもりだ」と述べている。

 当然であり、地元の意向を無視した動きには毅然とした態度で反対の意思を示してもらいたい。

 ただ、県が反対しても方法書は法律上、受け取りを拒否できない。今回の場合、一カ月間公告縦覧に付され、県は住民らの意見をまとめた意見概要を受理し、六十日以内に「知事意見」を国に提出しなければならないという。

 県が方法書を受け取らず知事意見も出さなければ、国から不作為を理由に行政訴訟を起こされる可能性もある。

 とはいえ、海域現況調査や海上自衛隊の大浦湾派遣、今回のアセス方法書送付など防衛省の強引さは目に余る。国への不信感は高まっているのであり、県の対応を注視していきたい。

 方法書送付は確かに行政手続きの一つである。だが、防衛省がなし崩し的に新基地建設を進めていけば、地元だけでなく県民の反発を買うのは間違いない。県民の胸中には憤怒のマグマが渦巻いているのであり、政府は怒りの大きさを認識する必要がある。

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070808.html#no_1

 

琉球新報 社説

米軍車両侵入 本当に兵士を教育したのか

 またしても米軍車両が県立高校に無断で侵入するという由々しき事態が6日に発生した。米海兵隊の装甲車が7月18日に県立沖縄高等養護学校に侵入してから1カ月もたっていない。

 今度は米海軍のトラックだったが、運転していたのは、やはり海兵隊員である。

 高等養護学校侵入後、在沖海兵隊は「良き隣人として再発防止のため、文化の違いについて(兵士の)教育に努めたい」と、抗議に訪れた仲村守和県教育長に謝罪した。

 それにもかかわらず学校への侵入が再発したのは一体どういうことか。兵士に対し、具体的にどのような指導がなされたのだろうか。

 「教育に努める」という言葉は口先だけで、実際は何の対策も講じていなかったのではないか。疑念と不信感は強まるばかりだ。

 学校関係者などによると、6日午後2時44分ごろ「NAVY」(海軍)と記されたナンバープレートを付けたクリーム色のトラック1台が、うるま市の県立前原高校に、正門から無断で乗り入れ、敷地内のロータリーを時計回りに一周して走り去った。

 車両は2トントラックで、運転席と助手席に軍服を着た外国人が乗っていた。ロータリーを回る際にタイヤを内側の縁石に接触させたという。

 米軍は、無断で学校敷地内に乗り入れた経緯と理由を明らかにしてもらいたい。その上で、兵士に対する教育を徹底し綱紀粛正を図り、二度と同様の事態を引き起こすことがないように厳しく対処すべきだ。

 安心して学習に専念できる環境であるべき学校施設内に、米軍車両を許可なく乗り入れる兵士の行為は、生徒の安全を脅かすものであり、非常識極まりない。

 学校を米軍の提供施設とでも勘違いしているのではないか。占領意識が丸出しだ。

 こうした暴挙が沖縄で繰り返されるのは、米軍に対し毅然(きぜん)とした態度で対処してこなかった日本政府の責任であると言わざるを得ない。

 政府は、米国側に強く抗議し、具体的な再発防止策を示すよう要求すべきだ。

 日米地位協定は、第5条で米軍車両が日本国内で施設・区域間を自由に移動する権利を保障しているが、学校施設に断りなく侵入してもいいとは、どこにも書いていない。

 政府は、高等養護学校を含め一連の学校施設への侵入が地位協定上も問題があることをきちんと示し、猛省を促してもらいたい。

 米軍は本当に「良き隣人」を自任するのなら、県民の安全を脅かすような行為をしないように、細心の注意を払うべきだ。

(8/8 9:56)

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-26130-storytopic-11.html