沖縄タイムス 関連記事・社説(6月13日)

2007年6月13日(水) 朝刊 2面

 

 

「見切り発車」反発も/金武町長ヘリパッド受諾

 

 

 儀武剛金武町長は十二日、米軍ギンバル訓練場の返還条件となっているブルービーチ訓練場へのヘリパッド移設を「苦渋の選択」で受け入れると表明した。日米特別行動委員会(SACO)で返還のめどとしていた一九九七年度末から、約十年越しとなる地元自治体の了承で、焦点はギンバル訓練場の跡地利用に移った。政府内には安堵感が広がり、在日米軍再編を後押しするとの見方もある。しかし、地元・並里区の根強い反発など、わだかまりを残したままの「見切り発車」との声もあり、先行きは不透明だ。

 

 

同意得られた

 

 

 「SACO事案は地元の同意がすべて得られたことになる」

 

 

 儀武町長の「受け入れ表明」に防衛省幹部は声を弾ませ、「住民の代表者、責任者としての発言だ」と強調。返還に向けた米側との具体的な調整を加速する考えだ。

 

 

 一方、政府内にはギンバル訓練場の返還問題は「在日米軍再編の障害だった」(政府関係者)との見方もある。

 

 

 同問題に手を割かれ、米軍再編最終報告に盛り込まれた米軍キャンプ・ハンセンの共同使用について同町との調整が遅れていたとして、「今度は共同使用だ」(同)と次の課題を模索する動きも出ている。キャンプ・ハンセンに機能統合される浦添市の牧港補給地区など、嘉手納以南の基地返還にも追い風となるとして期待が広がっている。

 

 

「異例の配慮」

 

 

 「これで財政当局と調整に入れる」

 

 

 内閣府沖縄担当部局幹部は、儀武町長の「受け入れ表明」が、ギンバル訓練場の跡地利用事業を二〇〇八年度予算に計上する上で、財務省を説得する大きな「切り札」になるとの認識を示す。

 

 

 防衛省と内閣府はギンバル返還条件に関する町からの要望に対し、口頭ではなく文書を送付する「異例の配慮」(内閣府幹部)をした。文書が同じ日に町役場に届くよう、文書の日付や東京からの発送日も足並みをそろえた。

 

 

 幹部は「並里区を説得する根拠として、文書が儀武町長の判断を後押ししたのだろう」と述べ、安堵感をにじませた。

 

 

島田懇最終年

 

 

 内閣府は今後、財務省の査定に耐え得る実行可能性の高い跡地利用計画を目指し、担当者は「これからが重要」と気を引き締めている。

 

 

 「基地経済からの脱却」を公約に掲げる儀武町長にとって、跡地利用の大きな財源である「米軍基地所在市町村活性化特別事業」(島田懇談会事業)の期限切れを本年度末に控える中、夏場の〇八年度予算概算要求前の六月定例会が受け入れのタイムリミットだった。

 

 

 今年四月から住民説明会を七回開いたが、基地被害の増大を懸念する声が相次ぐ一方で、財源確保を危惧する意見も出るなど意見の集約は一向に図られなかった。

 

 

 儀武町長は受け入れ表明後、記者団に「町内に移設してほしくないのが本音。しかし、基地の整理・縮小の中で、返還するのは今しかないというタイミングだった」と、苦しい胸の内を語った。

 

 

 しかし、与那城直也並里区長は「訓練場の減少で、町外から見たら負担軽減かもしれないが、住民にとっては負担増でしかない」と強調。いまだ住民の反発は根強く、今後の町の対応次第では、返還作業に影響を及ぼす可能性も残っている。(東京支社・島袋晋作、吉田央、北部支社・屋良朝輝)

 

 

町議会が容認決議へ

 

 

 【金武】米軍ギンバル訓練場の返還問題で、金武町議会(松田義政議長)は十二日、返還条件となっている町内ブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設受け入れを儀武剛町長が表明したことを受けて、開会中の六月定例会で容認決議の検討に入った。十三日の定例会後、全員協議会を開いて協議し、十四日の最終日の決議を目指す。

 

 

 儀武町長は「日米特別行動委員会(SACO)最終合意に基づき、基地の整理・縮小という観点から、ギンバル訓練場の返還条件を受け入れ、跡地利用計画推進を図っていくことを決断した」と、受け入れを表明した。

 

 

 これを受けて複数の町議から「町長の表明を、議会として後押しする必要がある」との意見が出されたため、町議会では容認決議の検討に入ることを決めた。

 

 

 松田議長は「これまで十年間、紆余曲折があったが、町長は政治家として判断すべきだったし、しかるべき判断をしたと思う」と、町長の受け入れ表明を評価した。

 

 

 一方、仲間政治軍特委員長は「住民の合意をまだ得られていない」と指摘。防衛省がヘリパッドの移設先に、撤去可能なランディングマットを敷くとしたことについて「マットを敷いても、演習が固定化・強化される可能性はある」と話し、儀武町長の受け入れ表明に異議を唱えた。

 

 

[解説]

求められる説明責任

 

 

 儀武剛町長が、ブルービーチ訓練場への米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設を条件とする米軍ギンバル訓練場の返還条件の受け入れを表明した背景には、一九九六年に日米特別行動委員会(SACO)で示された返還を進めたい政府と、ギンバル跡地利用による地域活性化や「基地負担軽減」につながるとみる町側の思惑が一致したためだ。SACO合意で返還のめどとされた九七年から十年。儀武町長が条件を受け入れたことで、ギンバル返還は大きく動きだした。

 

 

 しかし、ブルービーチに隣接する並里区(与那城直也区長)は、米軍ヘリによる騒音被害増大への懸念などからヘリパッドの移設に反対しており、住民の不安を解消するための説明が求められる。

 

 

 SACOでは、演習の障害になる岩やさんご礁も少なく、米海兵隊の水陸両用車やホーバークラフトを使った上陸訓練に本島内で最も適し、キャンプ・ハンセンとの連動した訓練が望めると、ブルービーチへのヘリパッド移設を米軍が望んだ。

 

 

 しかし、並里区や町議会はこれまでに、移設反対の決議や要請などを行っており、地元の合意が得られずに返還作業は進まなかった。

 

 

 儀武町長は今年、各区で開かれた住民説明会の中で「返還条件を認めることで、町内の基地負担軽減になる。基地依存経済から脱出するチャンスだ。このまま何もしないことは、基地や訓練がそのままでいいという誤ったメッセージと受け止められる」と訴えていた。

 

 

 町民からは、跡地利用で先端医療センターやホテルの建設が計画されていることから、雇用創出に期待する声もあり、儀武町長は百二十百五十人の雇用を見込んでいる。移設先の負担増加への懸念をどのように解消するのかを示すと同時に、跡地利用による地域活性化の具体的なビジョンを示し実現する重い責任が、儀武町長に課される。(北部支社・屋良朝輝)

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706131300_04.html

 

 

2007年6月13日(水) 朝刊

 

 

「集団自決」削除/元文科相「おかしい」

 

 

 【東京】自民党の教育再生に関する特命委員会(委員長・中山成彬元文部科学相)が十二日、党本部で開かれ、文部科学省が二〇〇六年度教科用図書の検定結果を説明した。県選出の仲村正治、嘉数知賢両氏が、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の関与を高校歴史教科書から削除したことを厳しく批判。中山委員長は会合終了後、記者団に「沖縄の二人から身につまされる話があった。教科書は(中国など)外に弱くて内に強く、私に言わせればおかしい」と同調した。

 

 

 会合では鈴木恒夫氏など他の委員からも、県関係議員の発言に同調する意見が出た。今回は委員会としての結論や方向性は出さず、来週中に再度、会合を開く。

 

 

 中山委員長は南京大虐殺を例に「(死者数)三十万人なんて(史実は)ない。それを(歴史教科書で)否定すればいいのに、(沖縄戦での軍命による)殺し合いを否定するなんておかしい」とも述べた。

 

 

 沖縄戦体験者の仲村氏は「理性を失った軍隊が(住民に)『捕虜になる前に死ね』と強要したのは事実。事実は事実として(教科書に)記述して後世に伝え、二度と過ちを起こさないことが大切だ」と軍関与の記述削除を批判した。

 

 

 嘉数氏も「米軍に捕まったら女性は強姦され男性は八つ裂きにされるということで、日本軍が(住民に)手りゅう弾を渡し、集団自決に追い込まれた。自分たちで自主的に死んだことはあり得ない」と語気を強めた。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706131300_05.html

 

 

2007年6月13日(水) 朝刊 29面

 

 

燃料流出/連絡ルート機能せず

 

 

 米軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出し地元への連絡が遅れた問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)は十二日、同基地や那覇防衛施設局、県庁を訪ね、事故原因の究明と調査結果の公表、再発防止の徹底、迅速な情報開示などを求めて抗議、要請した。

 

 

 施設局の池部衛次長は、連絡の遅れについて「米軍から施設局に直接連絡するルートもあるが、今回は機能しなかった」と説明。

 

 

 佐藤勉局長が六日に第十八航空団に改善を申し入れた結果、米軍から「今後は密な連絡体制で通報したい」と返答があったという。

 

 

 環境調査については「県から十一日に環境調査の要望があり、これから文書で米軍に意向を伝える」と述べた。

 

 

 町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長は、県の上原昭知事公室長に対し「今回故障したタンクとは別に、ほかのタンクの調査も含め結果を出すよう要請してほしい。地元だけの力では弱いので、県からも強く申し入れてほしい」と要請した。

 

 

全水道が抗議

 

 

 全水道県企業局水道労組の当真亨委員長らは十二日、那覇防衛施設局を訪ね、米軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出したことに抗議し、県の機関による基地内立ち入り調査の実施、原因の究明と公表などを求めた。

 

 

 当真委員長は「流出した燃料が地下に浸透して、地下水を汚染するかもしれない。立ち入り調査で実態を把握できるようにすべきだ」と訴えた。

 

 

 対応した又吉利夫連絡調整室室長補佐は、「当局としても、県の立ち入りについて、側面支援する予定」と語った。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706131300_06.html

 

 

2007年6月13日(水) 朝刊 28面

 

 

祈りの日へ平和祈念像浄め

 

 

 【糸満】二十三日の「慰霊の日」を前に、糸満市摩文仁の沖縄平和祈念堂で十二日、平和祈念像のほこりを払う恒例の「浄め」が行われた。作業には約三十人が参加。一時間ほどの作業で平和希求の象徴として知られる漆塗りの平和祈念像に一層の光沢が戻った。

 

 

 恒例の作業は毎回、沖縄バスの新人ガイドらが手伝っているが、今回初めて、県の工芸技術支援センター(南風原町)の研修生ら九人も参加。互いに仕事を分担しながら高さ十二メートル、横幅八メートルの漆塗りの像や台座に上り、布で丁寧に汚れをふき取った。

 

 

 新人バスガイドの山下裕理さん(22)=宜野湾市=は「初めて作業に参加したが、観光客を案内するガイドが平和を発信する祈念像をきれいにすることは意味があると思う」と話した。

 

 

 同祈念堂では二十二日午後七時から沖縄全戦没者追悼式前夜祭が行われる。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706131300_08.html

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月13日朝刊)

 

 

[米艦船寄港通知]

 

 

既成事実化を許すな

 

 

 米軍が掃海艇二隻の与那国町への寄港を県に通知した問題で、外間守吉町長は住民感情や周辺の石垣市、竹富町などの意向を踏まえ反対する意向だ。当然である。

 

 

 関係自治体の足並みはそろっている。県は緊急時以外の使用を自粛するよう米軍に要請。「平和港湾宣言」をしている大浜長照市長は「県の自粛要請を無視することがあってはならない」、大盛武町長は「与那国と台湾との交流に影響が出る」と反対している。

 

 

 米軍は二十四二十六日、県管理の祖納、久部良の両港への寄港を通知。目的は「友好親善」と「乗組員の休養」。これを額面通りに受け取る人は誰もいない。米軍はいざというときの港の使い勝手を実際に入港して試しているとみるのが自然だ。むしろその方が主目的かもしれない。

 

 

 与那国町は五月に姉妹都市の台湾・花蓮市に行政連絡事務所を開設したばかり。住民団体が「せっかく築いてきた花蓮市との友好関係をないがしろにする」と懸念するのはもっともだ。

 

 

 外間町長は政府の二重基準を批判する。町長は台湾のチャーター船の入港を要請しているが、政府は出入国管理施設などの未整備などを理由に認めていない。「同じ港でも台湾は駄目で、米軍は入港できるというのはおかしい」。これまた誰もが持つ疑問だ。

 

 

 米軍艦船の国内民間港への寄港は日米地位協定五条が根拠。民間飛行場も使用できる。ここでも米軍優先の日米地位協定が顔をのぞかせる。

 

 

 米側は「乗組員を町長宅のパーティーに招待してほしい」と依頼したというから開いた口がふさがらない。招待は相手から歓迎されてなされるもので、無理強いするものではない。

 

 

 米軍が寄港を強行しても、「友好親善」にはつながらない。地元の声を無視し、横暴と取られるばかりで、損得勘定からも割が合わないはずだ。

 

 

 与那国町は台湾を望む国境の島である。米軍は潔く計画を撤回して国境に無用な波風を立たせないでほしい。政府も米軍に再考を促すべきである

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070613.html#no_2

 

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月13日朝刊)

 

 

[ギンバル返還]

 

 

根本的解決にはならぬ

 

 

 金武町の米軍ギンバル訓練場の返還問題で、儀武剛町長は返還条件となっている町内のブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設受け入れを表明した。

 

 

 ギンバル訓練場の返還は、一九九六年十二月の日米特別行動委員会(SACO)で最終合意されたが、既存のヘリパッドをブルービーチ訓練場へ移すことが条件となった。

 

 

 ヘリの離着陸訓練に伴う騒音や事故の危険性もブルービーチ訓練場へ移ることになり、周辺住民には新たなリスクが生じる。

 

 

 基地機能の「たらい回し」は、一方の住民を基地負担から解放しても、新たに移設先の住民を苦しめることになり、根本的な解決にはならない。

 

 

 儀武町長は、受け入れを表明した町議会六月定例会で「大変苦渋の選択であるが、約六十ヘクタールの基地の整理・縮小が進み、跡地利用事業で基地依存経済から脱却して自立経済を進めることにつながる」と述べた。

 

 

 その上で、受け入れ理由の一つとして、同町がギンバル訓練場跡地で予定している「ふるさとづくり整備事業」の財政支援について、内閣府が引き続き支援すべく、二〇〇八年度予算概算要求に盛り込むとの文書を得た。

 

 

 もう一つは「ヘリパッドは撤去可能なものとし、移設後の周辺住民の生活に配慮する」とした防衛省の通知があったことを挙げた。

 

 

 ギンバル訓練場には、復帰前、中国全土をにらんだ核ミサイル「メースB」が配備されていた。

 

 

 人類を脅かす核基地が復帰後三十五年たち、自立経済を図るために平和利用されることには感慨深いものを感じる。地元住民や県民にとっても異存はあるまい。

 

 

 問題は、ヘリパッドの移設先の住民

 

 

をヘリの騒音や事故の危険性からいかに守り、「平和的生存権」を担保できるかだ。

 

 

 ブルービーチ訓練場は、米軍の強襲上陸作戦場であり、今後、ヘリ訓練の増加は避けられまい。

 

 

 最も隣接する並里区は、既に一九九六年と二〇〇六年にヘリパッド移設への反対決議をしており、今後の対応が注目される。

 

 

 ギンバル訓練場を含めSACOで返還合意された十一施設は、普天間飛行場や那覇軍港、牧港補給地区などそのほとんどが県内移設条件付きである。

 

 

 しかし、SACO合意がすべて実施されても、県内にはなお在日米軍専用施設の約70%が残る。過重負担にそう変わりはないことも、あらためて認識しておきたい。

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070613.html#no_1

琉球新報 社説(6月11日)、沖縄タイムス 関連記事(6月12日)

琉球新報 社説

 

「歪曲」撤回要求・「過去」直視してこそ未来も 

 

 文部科学省の高校教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」記述から日本軍の関与が修正・削除されたことに、県民の反発が広がっている。那覇市内で9日開催された「沖縄戦の歴史歪曲(わいきょく)を許さない県民大会」には主催者発表で3500人が集い、「子どもたちに沖縄戦の実相を伝えよう」と訴えた。

 62年前の沖縄戦で過酷な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民の、これだけは絶対に譲れないという一線をあらためて見た思いがする。

 政府は、大会決議にある「今なお証言し続けている体験者の叫びを無視し(一個人の名誉棄損の)裁判の原告の主張のみを一方的に取り上げることは、体験者を愚弄(ぐろう)するばかりか、県史や各市町村の沖縄戦の調査を否定しようとするもの」との指摘を重く受け止め、歴史的事実と真正面から向き合ってほしい。

 高校教科書の沖縄戦をめぐる記述は、1982年に「日本軍の住民虐殺」が削除され、問題になっている。「出典の県史は第一級資料ではない」などが理由だった。生存者多数の証言を含む公式の戦争記録を「参考にならない」とでも言うような感覚を疑うほかないが、県民の怒りを受け止めざるを得なくなった政府は結局、検定意見を撤回している。

 2001年には、中学の歴史教科書で、アジアへの加害の記述を大幅に簡略化する流れが顕著になった。沖縄戦に関しても戦争を美化するような記述が見られ、ひめゆり学徒を「部隊」と軍隊化し、「勇敢に戦った」と記述した教科書がそのまま認められた。

 ひめゆり学徒の生存者は「私たちは看護要員として戦争に巻き込まれた」と証言しており、当該教科書がいかに事実関係を踏まえていないかが分かる。

 今回の「軍命」削除問題もしかり。県民大会では「沖縄戦の集団死・『集団自決』が『軍による強制・強要・命令・誘導等』で引き起こされたことは否定できない事実」だとし、「その事実がゆがめられることは到底容認できない」との決議が採択された。

 第二次世界大戦で多大な犠牲を払ったドイツの元大統領、ワイツゼッカー氏は1999年に来沖した際、名護市で開催されたティーチインで「過去に目をつぶる者は過ちを繰り返してしまう危険がある」「逆に過去に対して目を見開く者は、将来に向け平和の証しを体現できる」と話した。

 過去に正しく向き合ってこそ、平和な未来も開けるという大切な教えだ。歴史をゆがめることは許されまい。次代を担う子どもたちにもそのことを伝え、事実を見極める力を養うことが私たち大人の責務である。

 

 

(6/11 9:40)

 

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24518-storytopic-11.html

 

 

2007年6月12日(火) 朝刊 1面

 

 

 

ヘリパッド受け入れ 金武町長きょう表明

 

 

 

ギンバル返還「判断材料整う」

 

 

 

 【金武】金武町の米軍ギンバル訓練場の返還をめぐり、儀武剛町長は十二日開会する町議会六月定例会の冒頭、懸案となっていた返還条件のブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の受け入れを表明する。十一日、同訓練場の跡地利用事業を二〇〇八年度予算概算要求に盛り込むとする内閣府沖縄担当部局の文書と、ヘリパッド移設後の周辺住民の生活に配慮するとした防衛省の通知があったことを受け、儀武町長は「判断材料は整った」との意向を固め、議会関係者などに伝えた。

 

 

 

 内閣府は、金武町がギンバル跡地で予定している「ふるさとづくり整備事業」の財政支援について、「ギンバル訓練場の返還のめどが立ち、具体的な事業計画が策定されることを前提に、引き続き所要の支援を行うべく、関係機関と調整する」としている。

 

 

 

 防衛省は、(1)ブルービーチ訓練場で米軍が使用していた場所のうち、一カ所を活用して整備(2)ヘリパッドはコンクリート舗装などの恒久的なものではなく、ランディングマットを敷く程度の撤去可能なものとする(3)ヘリ訓練による航空機騒音は地元の要望を踏まえ、騒音を調査するなどと明記している。

 

 

 

 儀武町長は、跡地利用事業の財政支援を内閣府に要請。さらに、町などが各区で開いた住民説明会で、米軍ヘリの飛行ルートや騒音被害を懸念する声が相次いだため、防衛省の対応を文書で回答するよう求めていた。

 

 

 

 返還条件のブルービーチ訓練場へのヘリパッドの移設をめぐっては、一九九六年と二〇〇六年に隣接する並里区が移設に反対する決議を行っている。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121300_01.html

 

 

 

 

 

 

2007年6月12日(火) 朝刊

 

 

 

首相「早期に結論」/那覇空港拡張

 

 

 

 【東京】安倍晋三首相は十一日の参院決算委員会で那覇空港の拡張整備について「沖縄の発展には那覇空港の能力の増強は必要。できるだけ早期に結論を出し、実現に向けて取り組んでいきたい」と述べ、積極的に取り組む姿勢を示した。西銘順志郎氏(自民)への答弁。「集団自決(強制集団死)」への日本軍の関与に関する記述が高校の歴史教科書から削除された問題で、西銘氏が「速やかに見直すべき」と訴えたが、安倍首相は「個別の検定意見に、内閣の長として意見を申し上げることは差し控えたい」と従来の見解を繰り返した。

 

 

 

 久間章生防衛相は、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部の現況調査(事前調査)に海上自衛隊が動員されたことに県民の反発があるとの指摘に、「戦前の軍隊と一緒に見られるというのは、自衛隊にとっても大変気の毒なこと。そういう間違った考え方をぜひ沖縄の人はやめていただきたい」と訴えた。

 

 

 

 那覇空港の拡張について、冬柴鉄三国土交通相は「福岡空港に次いで乗降客の多い空港」としつつ、「今、最終段階にある調査の結果を踏まえて、ゴーということになれば、総力を挙げて頑張っていきたい」と述べ、政府を挙げて取り組む考えを強調した。

 

 

 

 安倍首相は「沖縄はアジアの中心に位置し極めて有利な点がある。グローバル化の時代で空港がいかに整備されているかということで競争していかなければならない」と述べ、同空港の拡張整備の必要性を指摘した。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121300_03.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 朝刊 2面

 

 

 

自民、検定経過確認へ/「集団自決」修正

 

 

 

県議代表、あす文科省訪問

 

 

 

 県議会最大会派の自民党の伊波常洋政調会長ら代表は十三日、文部科学省を訪ね、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した教科書検定の経過や同省の見解などを確認する。伊波政調会長は「検定内容の事実を十分確認した上で、早い時期に議員総会を開き、意見書採択に向け意見を集約したい」と述べた。

 

 

 

 同問題に対する意見書への対応については、自民内部で賛否の意見が割れ、結論が先送りされている。

 

 

 

 執行部は会派全体の同意を得るため、検定内容の事実確認が必要と判断。伊波政調会長らは文科省初等中等教育局教科書課長らに聞き取りをする予定。

 

 

 

 八日の総会で、多くの県議が「『集団自決』は事実。修正すべきではない」「採択を見送れば、県民の反発を招く」など賛成する意向を示した。一方で「軍命の有無に対する事実関係が確かではない」「裁判で争われている。意見書は司法への政治介入になる」など反対意見も根強く、まとまらなかった。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121300_04.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 朝刊 26面

 

 

 

海自の不発弾調査 広報/うるま市が事前に

 

 

 

「辺野古と混同避けた」

 

 

 

 【うるま】うるま市は十一日、海上自衛隊などが十三日から同市沖合で実施する不発弾調査を事前広報した。名護市辺野古の米軍普天間飛行場の移設に向けた海洋調査に政府が海自艦船を投入したことが問題視されているため、不要な刺激を与えないための措置という。

 

 

 

 事前広報はこれが初めてで、うるま市役所総務課は「(辺野古で行われた)海自の海域調査支援と混同を避けたい」としている。

 

 

 

 中城海上保安署と海自は同日早朝から十五日午後五時にかけて、同市昆布沖合三キロ地点で不発弾現地調査を行う。自衛隊の水中処分母船(三千トン)一隻と関係機関のボートが現地に停泊する。

 

 

 

 三月初旬に漁業関係者が潜水中、昆布沖合十三メートルの海底で、長さ四十センチほどの不発弾らしき物体約三十個が沈んでいるのを発見した。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121300_05.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 夕刊 1面

 

 

 

ギンバル返還ヘリパッド移設受諾/金武町長「跡地利用を推進」

 

 

 

 【金武】金武町の米軍ギンバル訓練場の返還問題で、儀武剛町長は十二日午前、開会した町議会六月定例会の冒頭で、返還条件となっている町内のブルービーチ訓練場へのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設を受け入れることを表明した。儀武町長は「日米両政府間で合意された日米特別行動委員会(SACO)最終合意に基づき、基地の整理・縮小という観点から、ギンバル訓練場の返還条件を受け入れ、跡地利用計画推進を図っていくことを決断した」と述べた。

 

 

 

 儀武町長は、町がギンバル訓練場跡地で予定している「ふるさとづくり整備事業」の財政支援について、内閣府が「引き続き所要の支援を行うべく、関係機関と調整する」としたことや、防衛省が「ブルービーチ訓練場で米軍が使用していた場所のうち、一カ所を活用して整備し、ヘリパッドは撤去可能なものとする。ヘリ訓練による航空機騒音は地元の要望を踏まえ、騒音の調査を実施する」と説明があったことを報告。

 

 

 

 その上で、儀武町長は「大変苦渋の選択であるが、約六十ヘクタールの基地の整理・縮小が進み、跡地利用事業で基地依存経済から脱却して自立経済を進めることにつながる」として、返還条件を受け入れると述べた。

 

 

 

 議会後の会見で、儀武町長は「百パーセントではないが、ベターな選択だと思っている」と話し、今後、地域住民や町民に十分な説明を行い、跡地利用の推進を進めていくとした。

 

 

 

 ギンバル訓練場の跡地利用事業を二〇〇八年度予算概算要求に盛り込むとする内閣府沖縄担当部局の文書と、ヘリパッド移設後の周辺住民の生活に配慮するとした防衛省の通知があったことを受け、儀武町長は十一日、「判断材料は整った」との意向を固め、議会関係者などに伝えていた。

 

 

 

 返還条件のブルービーチ訓練場へのヘリパッドの移設をめぐっては、一九九六年と二〇〇六年に隣接する並里区が移設に反対する決議をしている。

 

 

 

 同区の与那城直也区長は「町から正式な説明を受けていない」とした上で「今後区として行政委員会を開いて対応を協議したい」と話した。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121700_01.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 夕刊

 

 

 

那覇市長「大変遺憾」/辺野古海自投入

 

 

 

 翁長雄志那覇市長は十二日の市議会六月定例会で、那覇防衛施設局による名護市辺野古での米軍普天間飛行場の代替施設建設に向けた現況(事前)調査に、海上自衛隊が掃海母艦「ぶんご」や潜水要員を投入したことについて「大変遺憾である」との見解を示した。

 

 

 

 また、陸上自衛隊の情報保全隊が特定の個人や市民団体などの活動を監視・調査していたことについて「大変残念なこと。(方言の言論弾圧など)県民の歴史体験から踏まえると反省しなければならない」として、「自衛隊に話をする機会がある時は話をしていきたい」と述べた。

 

 

 

 米軍再編促進特措法の成立については「大変遺憾である。沖縄戦と米軍支配を経験した県民感情への配慮と県民的合意もなく成立し、SACO(日米特別行動委員会)の合意に比べると問題解決について若干後退した感は否めない」と見解を述べた。

 

 

 

 古堅茂治氏(共産)の代表質問への答弁。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121700_02.html

 

 

 

2007年6月12日(火) 夕刊 5面

 

 

 

米軍燃料流出に抗議決議/嘉手納・北谷町議会

 

 

 

 【嘉手納・北谷】米軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出し、地元への連絡が遅れた問題で、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)と北谷町議会(宮里友常議長)は十二日午前、それぞれ臨時会と六月定例会本会議で、米軍に事故原因の究明と調査結果の公表、再発防止の徹底、迅速な情報開示などを求める抗議決議と意見書を、全会一致で可決した。

 

 

 

 嘉手納町議会基地対策特別委員会の田仲康榮委員長らはその後、嘉手納基地に在沖米空軍第一八航空団のダニー・ジョンソン広報部長を訪ね、ブレット・ウィリアムス司令官あての抗議文を手渡した。

 

 

 

 流出現場を視察した田仲委員長らは「タンク周辺の芝生が枯れており、かなりの量が流出していたことを物語っていた」と指摘し、あらため環境への影響に懸念を示した。

 

 

 

 ジョンソン広報部長は「燃料流出は残念だ。環境汚染や事故原因の調査結果を公表するかどうかは上級司令部で検討中」と述べ、通報の遅れについては「基地外への影響はなく、(日本側への)通報は米軍の規則に従って実施した」と説明したという。

 

 

 

 嘉手納、北谷の両町議会の決議は、事故発生から四日間も燃料の垂れ流しを続ける一方、周辺自治体への連絡も一週間後だったことに関し、「到底容認できるものではない」と米軍を批判している。

 

 

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706121700_03.html

沖縄タイムス 関連記事・社説(6月10日、11日)

2007年6月10日(日) 朝刊 25面

 

歴史 消させない/真実 次の世代へ

 

 「沖縄戦の書き換えは絶対許せない」「悔しくて、居ても立ってもいられない」。九日、那覇市の県庁前県民広場で開かれた、「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」には「集団自決」体験者をはじめ沖縄戦体験者や若者も多数参加し、怒りの声を上げた。壇上でも日本軍から手榴弾を渡された体験者が証言し、「集団自決」犠牲者の孫が決意表明するなど文科省に検定意見の撤回を求める熱気に包まれた。集会後には国際通りをデモ行進し検定に反対の声を上げた。

 

                    

 

生存者、孫のために証言/検定に怒り熱気あふれ

 

 「腹が立ってしょうがない。教科書書き換えを許してはいけない」と憤る池原利江子さん(84)=那覇市=は渡嘉敷の「集団自決」から生き延びた。弟の持っていた手榴弾が爆発しなかったため、池原さんの家族は死ななかった。しかし、隣で輪になっていた父のいとこの家族は十数人、叔母一家は六人全員、数え上げればきりがないほど親せきたちが命を落とした。「島から復員した兵隊だってみんな(斜面の)上の方から見ていたから知っている。それなのに」ごまかそうとする国の姿勢に怒りが込み上げてくる。

 

 「自分の人生は短いが、孫やひ孫に事実を伝えなければいけない」。腰が悪く遠出は難しいが、声を上げるために可能な限り出掛けていく。

 

 慶留間の「集団自決」体験者の與儀九英さん(78)=沖縄市=は、「血の海の悲惨な話はもういい」と実体験については、あまり触れない。が、米軍上陸の一カ月半前に、日本軍の戦隊長が、集落の全員に「全員玉砕あるのみ」と力強く訓示した、と証言する。軍が狡猾に「自決」に追いやった手口を今のうちに残しておかねば、危機感を訴える。

 

 座間味から参加した宮村肇さん(53)は、体験世代ではないが「すごく腹立たしい。悔しい」と国の姿勢に怒る。体験者の島のお年寄りたちは教科書の書き換えを「ばかにしている」と怒っている、という。

 

 島袋浩さん(74)=豊見城市=は戦時中は疎開していた。弟は対馬丸で亡くなった。「当時は怖くても、行かないと言えなかった。あれも強制だったんだ」と、振り返る。最近の戦前回帰の風潮を恐れ「教科書だけでなく世の中おかしくなってきた。意思表示しなければ」。教員を目指して勉強中の宜野湾市の比嘉徳史さん(26)は「歪曲された事実を子どもたちに教えたくない」と参加。「本土の人たちも同じ気持ちが持てるよう、声を伝えたい」

 

祖父母は生きたかったはず/犠牲者の孫・宮城千恵さん

 

 「祖父母は死にたくて死んだというのですか」。渡嘉敷島で起きた「集団自決」犠牲者の孫で、南風原高校教諭の宮城千恵さん(48)は登壇し、「本当は生きたかったはずの祖父母のためにも、歴史の書き換えは許さない」と語った。

 

 宮城さんの母方の祖父母は、渡嘉敷島で「集団自決」の犠牲となった。当時、ずいせん学徒隊の動員で本島にいた母は戦後も両親の死を知らず、何度も手紙を書き続けたという。

 

 多くを語らなかった母から詳しく話を聞いたのは約二十年前。宮城さんはそれを基に紙芝居を作り、留学先の北アイルランドやハンガリーなどで子どもたちに読み聞かせる活動を続けた。

 

 宮城さんは「多くの子が、愛する家族同士がなぜ殺し合ったのか理解できない様子だった」と振り返る。

 

 「沖縄戦体験者がどんどんいなくなっていくという焦りもある。事実をしっかり若い世代に伝え、命の大切さを訴えたい」

 

 その思いから絵本制作を思い立った。母の体験を基にした英語の絵本「沖縄からの手紙」を七月に出版する。一度も会うことのなかった祖父母に思いを込めて作った。

 

 「この世に肉親同士が手をかけ合うほど、悲しいことはない。小さな島で起こった悲惨な出来事を世界中に知らせ、戦争をなくすきっかけにしたい」

 

「手榴弾渡された」/瑞慶覧さん体験を証言

 

 県民大会で社大党顧問の瑞慶覧長方さん(75)が自決用に日本軍から手榴弾を渡された自身の体験を証言した。

 

 太平洋戦争最中は国民学校の六年を終えたばかりで十三歳だった。

 

 戦時中は校舎を日本軍に接収され、公民館へ移ったがそこからも追い出された。授業どころではなかった。学徒動員で、軍の防空壕を掘った。

 

 五月二十三日。大里村のひめゆり学徒隊の隣の壕に身を寄せていたが、軍によって追い出された。それから約一カ月半、玉城、東風平、摩文仁と激戦地の中をさまよった。まさに鉄の暴風だった。

 

 六月十七日には現在の糸満市、旧真壁村で壕を掘った。当時は学校でもどこでも皇民化教育が徹底されていた。天皇の子である日本人が、もし米軍の捕虜にでもなったらこれ以上の恥はない。だからいざというときには、自分で決死しなさいということで、日本軍から手榴弾を二個渡された。

 

 知人の防衛隊が直接受け取った。うち一個が年長の自分に渡され、もし米軍が来たら壕の中の仲間十七人と一緒に自決しなさいと、その時を声を潜めて待っていた。幸い米軍は来ず、われわれは命拾いをし死体の中をくぐって真壁を突破した。

 

 手榴弾は、軍の武器だ。それを軍が渡した。どんなことがあっても国民として敵の捕虜になるな、なるぐらいなら自決せよ。これが軍、国の命令だった。

 

 皇民化教育は徹底されていた。大半の住人が捕虜になるよりはと、「集団自決」、「自決」に追い込まれた。

 

 六月十九日朝、現在の平和祈念資料館の東側。住人を救うために捕虜になった沖縄の人が壕に来た。しかしその人まで日本兵が虐殺するという大変恐ろしい状況を目撃した。われわれは何度も軍命による自決を選ぼうとしたが、何とか終戦まで生き抜いた。

 

 教科書から歴史を歪曲しようとする国の動きに対し断固として反対していかなければならない。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706101300_02.html

 

2007年6月10日(日) 朝刊 1面

 

辺野古沖調査を再開/普天間移設

 

 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブへの代替施設建設に伴う海域の現況調査(事前調査)で、那覇防衛施設局は九日、一時中断していた機器設置作業を再開した。

 

 五月二十日以来で、海生生物の藻場の利用状況などを調べる水中ビデオカメラや海象調査機器を設置した。

 

 一方、調査に反対する市民団体のメンバーらはカヌーを繰り出し、調査ポイント周辺で作業船にしがみつくなど阻止行動を行った。施設局は十日も作業を継続する。

 

 九日午前七時すぎ、施設局がチャーターした作業船や警戒船が海域での作業を始めた。海上保安庁の巡視船など五隻が沖合に展開し、ゴムボートなど約二十艇を出して警戒に当たった。

 

 午後零時半ごろ、辺野古崎沖合では作業船が水中ビデオカメラとみられる機器をクレーンで下ろし、ダイバーらが固定するための土のうや鉄筋などを持って潜水を繰り返していた。

 

 ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「海上自衛隊投入に続き、自制していた週末の作業実施など国は何でもありで進めようとしている。海保が反対派の船だけ毎回検査し、足止めするのは公平な法の執行ではない。海保への抗議も検討する」と険しい表情で述べた。

 

 五月十八日から二十日の作業では、サンゴの産卵を調べる着床具が生きたサンゴの一部を損傷したことが確認され、市民団体などが作業中止を訴えていた。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706101300_03.html

 

2007年6月11日(月) 朝刊

 

ギンバル跡地 概算要求/08年度予算

 

内閣府、島田懇活用/近日中 金武町に伝達

 

 【東京】内閣府沖縄担当部局は十日までに、金武町米軍ギンバル訓練場の跡地利用事業と、同訓練場に近接する自然・文化・生活の体験学習拠点「ネイチャーみらい館」(仮称)の整備事業を、二〇〇八年度予算概算要求に盛り込む方針を固めた。両事業の財源となる「米軍基地所在市町村活性化特別事業」(島田懇談会事業)は本年度で期限が切れるが、「継続的措置」の位置付けで国の九割補助の適用継続を財務省に求める。近日中に町側に文書で伝達する。これを受け、儀武剛町長は早ければ十二日に開会する六月定例会冒頭の行政説明で、ギンバル返還条件の受け入れを表明する意向を示している。

 

 島懇は全三十八事業のうち、〇八年四月完成予定の「みらい館」だけが継続案件として残っている。所管の内閣府には「予算を打ち切るわけにはいかない」(幹部)との判断がある。

 

 ギンバル跡地利用では、町がすでに「金武町ふるさとづくり整備事業」を策定。がん検診・治療施設を備えた先端医療センターや長期滞在型リゾートホテルなどの集積を計画している。島懇で約七十五億円の補助を想定する大規模開発のため複数年事業となることが避けられず、儀武町長は五月三十一日、内閣府に島懇の継続を求めていた。

 

 町側の要望に内閣府は「跡地利用が島懇の期限に間に合わなかったのは金武町の怠慢ではなく、ギンバルの返還遅れという特殊事情があったから。財政当局もそこは理解している」(別の幹部)と説明。〇八年度予算概算要求で、同事業の調査費や実施設計費などを盛り込む方針だ。

 

 内閣府のこうした対応を受け、儀武町長は跡地利用の財源が確保できたと判断。日米がギンバル返還の条件とする「ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の米軍ブルービーチ訓練場への移設」の受け入れ表明に踏み切る。

 

 ただ、移設条件には地元の並里区が反発を続けており、儀武町長は「受け入れ表明後に区と協議したい。防衛省にもヘリの騒音や飛行ルートで住民に配慮するよう求めている」としている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706111300_01.html

 

2007年6月11日(月) 朝刊 19面

 

辺野古 連日の調査/普天間代替

 

 【名護】米軍普天間飛行場の代替施設建設に向けた名護市キャンプ・シュワブ沖での現況調査(事前調査)で、那覇防衛施設局は十日、機器の設置作業を実施した。五月二十日以来の作業再開は今月九日に続き二日目。同施設局は機器の設置作業が若干残っているため、天候を見ながら十一日も継続するかを決める。

 

 同施設局は午前八時すぎからチャーターした作業船で、海域での作業を開始。海生生物の藻場の利用状況などを調べる水中ビデオカメラや海象調査機器のほぼすべてを設置した。

 

 周辺には海上保安庁の巡視船三隻が沖合に停泊し、ゴムボートなど約十数隻が警戒に当たった。

 

 一方、基地建設に反対する市民団体メンバーらは小型船三隻やカヌー十一艇で阻止行動を展開。調査機器の設置場所をふさいだり調査船にしがみついたりした。

 

 平和市民連絡会の当山栄事務局長は「物量作戦で、これまで自制していた週末も作業をするなど、国はなりふり構わずやってきている。私たちの船が出航する前に乗船名簿の提出などを求められたが、法的根拠がない。圧力に屈せずに、平和を訴えたい」と硬い表情で話した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706111300_07.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月11日朝刊)

 

[検定撤回決議]

 

歴史の事実を直視せよ

 

 文部科学省の高校歴史教科書検定で沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除・修正されたことに対し、県内で反発や怒りの声が高まってきた。

 

 沖縄戦では住民を巻き込む激しい地上戦が展開され、その渦中で「集団自決」が起きた。極限状況下の集団自決は沖縄戦の実相を象徴的に伝える。

 

 なぜこのような惨劇が起きたのか。後世に生きる私たちは何度も問い返していかなくてはならない。

 

 教科書検定での日本軍関与の記述削除などに抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」(主催・同実行委員会)が開かれ、検定意見の撤回を求める大会決議を採択した。

 

 大会決議では沖縄戦の「集団自決」が「軍による強制・強要・命令・誘導等」によって引き起こされたことは否定できない事実だと強調。事実がゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって到底容認できるものではないと批判している。

 

 文科省は記述修正・削除の主な理由として、大阪地裁で名誉棄損をめぐって係争中の「集団自決」訴訟を挙げていると指摘し、その主張が沖縄戦の全体像を表しているはずがないと反論。

 

 決議では、歴史教科書を通して沖縄戦の実相を正しく教え伝え、悲惨な戦争が再び起こることがないようにしなくてはならないと訴え、「集団自決」に関する教科書検定意見をただちに撤回するよう強く求めている。

 

 同決議によると、六月八日現在で那覇市など二十市町村が教科書検定に関する意見書を採択している。県内四十一市町村で削除・修正反対の意見書が採択される予定だ。今回の県民大会では、県議会に対しても民意を踏まえた意見書を採択するよう求めた。

 

 県議会では最大会派の自民党内で意見が分かれている。意見書の採択に賛同する意見がある一方で、「軍命の有無に対する事実関係が確かではない」「意見書は司法への政治介入になる」など反対意見も強いようだ。

 

 だが、沖縄戦の「集団自決」の舞台は係争中の渡嘉敷島だけではない。この裁判で、県内で起きたすべての「集団自決」に対する日本軍の関与の有無が争われているわけでもあるまい。

 

 歴史的事実を直視すべきだ。裁判の一方の主張を根拠に、すべての「集団自決」への軍関与を全否定できるはずがない。検定意見の問題点である。

 

 戦後生まれが増える中で、沖縄戦の記憶をどう継承していくのか、党派を超えて継承すべきは何か、県民一人一人が正面から向き合う必要がある。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070611.html#no_1

沖縄タイムス 関連記事・社説(6月8日夕刊、9日)

2007年6月8日(金) 夕刊

 

「軍命あったと思う」/「集団自決」知事が初言及

 

 仲井真弘多知事は八日午前の定例記者会見で、文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)に日本軍が関与したとする記述が高校の歴史教科書から削除された問題について、「当時の社会状況から考えると、広い意味での軍命というか、そういうものはあったのではないかというのが個人の率直な気持ち」と述べた。

 

 仲井真知事が、「軍命」の有無に具体的に言及するのは初めて。これまでは、日本軍関与の文言を削除・修正する検定内容に対しては「遺憾」との認識を表明する一方、「軍命」の有無については「専門家の検証が必要だろう」と述べ、コメントを避けてきた。

 

 また、同検定の見直しを求める意見書採択が市町村議会で相次いでいることについては「それぞれの考えでなされているというのは、重く受け止めるべきではないかと考える」と述べた。

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した上、米軍の通報が遅れたことについて、仲井真知事は「対応の鈍さは極めて遺憾」と強い口調で批判した。

 

 七日に県が基地内に立ち入った際、米軍が土壌などのサンプル採取を許可しなかったことについても「言語道断。民間事業者だったら少なくともしばらく、活動停止に値する」と述べ、今後も調査を求める考えを示した。

 

 米海軍の掃海艦が与那国島への寄港を通知していることについて「米軍の艦船はホワイトビーチや那覇軍港など専用の港が決まっており、本来そこを使用すべきだ。民間の目的に応じて造られている港は使用すべきではなく、今回も自粛すべきだ」と主張した。

 

 日米地位協定で管理者の県も寄港拒否できない実情に一定の理解を示した上で、「緊急事態など互いに、やむを得ないという理解が成立するラインというのはある。米軍の都合のいい時にいいように利用するのはいかがなものか」と不快感を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_01.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 1面

 

北谷議会、抗議決議へ/米軍燃料漏れ

 

 【北谷】米軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出した問題で、北谷町議会(宮里友常議長)は八日午前、基地対策委員会(照屋正治委員長)を開き、十二日の六月定例会本会議で流出の原因究明と再発防止、地元の立ち入り調査などを求める抗議決議・意見書を提案することを決めた。

 

 委員らは「想像がつかないほどの大量な流出だ。基地内からは住民の使用する地下水が採取されている」など事態の重大性を指摘。七日の県による立ち入り調査が目視にとどまったことに関して「土壌を採取しないと環境汚染は把握できない」など米軍の対応を批判する声が上がった。

 

 照屋委員長は「流出はタンクのシステム上の異常と、気付くのに遅れた人的ミスが重なり起きた。あらゆる面で米軍の安全管理がずさんだったということ。米軍はしっかりとした地元の調査を認めるべきだ」と述べた。

 

 同基地司令官あての抗議文は直接基地を訪れて渡す予定で、抗議行動後の現場立ち入りも求める。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_02.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 1面

 

「象のオリ」消えた/全アンテナ撤去

 

 【読谷】二〇〇六年十二月に全面返還され、地主に引き渡すため撤去作業が進む読谷村の米軍楚辺通信所(約五三・四ヘクタール)のアンテナが八日までに、全て撤去された。同通信所は高さ約四十メートルのアンテナ三十本が直径約二百メートルの円を描くように配置され、その姿から「象のオリ」と呼ばれていた。

 

 地主の一人、知花昌一村議は「象のオリは反基地闘争の象徴だった。五十年以上この場所にあり、風景の一部になっていたこともあり、少しの寂しさもある。跡地利用計画は定まっていないが、今後は平和の象徴となるような場所にしたい」と話した。

 

 同通信所は一九九六年に日米特別行動委員会(SACO)で返還合意された。那覇防衛施設局によると、六月の工期終了までに更地にし、地主に引き渡される。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_04.html

 

2007年6月8日(金) 夕刊 7面

 

戦場の幼い命 悲惨さ伝える/平和祈念資料館で企画展

 

 【糸満】二十三日の慰霊の日を前に、子どもたちが戦争と平和について考える機会にしようと、糸満市摩文仁の県平和祈念資料館で八日、企画展「子どもたちと沖縄戦」が始まった。七月十七日まで。

 

 沖縄戦で米兵が撮影した写真の中から、子どもをメーンに据えた約三十点をパネル展示。地上戦で傷つき息絶えた少年少女の写真など、幼い命を巻き込んだ戦争の悲惨さを伝えている。

 

 また、沖縄戦を題材にした絵本「つるちゃん」(泡瀬小学校教諭、金城明美さん作)を十七枚のパネルで紹介している。

 

 八日午前には、平和学習などのため沖縄本島を訪れた、渡名喜村立渡名喜小学校の児童十八人が見学。

 

 六年の比嘉輝君(12)は「戦争と関係のない、普通の人たちが犠牲になったなんてかわいそう」と話した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081700_08.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 1・29面

 

自民、結論先送り/「集団自決」意見書

 

 県議会最大会派の自民党は八日、那覇市内で議員総会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書への対応を協議したが、賛否の意見が分かれたため、結論は先送りした。

 

 執行部は全員の同意を得るため、文科省の検定意見の経過や真意を確認する必要があると判断。執行部代表が十三日にも上京し、関係機関で事実確認する。新垣哲司幹事長は「意見の真意などを確認した上、議員総会で協議し、速やかに結論を出したい」と述べた。

 

 総会では、多くの県議が「『集団自決』は事実。修正すべきではない」「採択を見送れば、県民の反発を招く」など賛成する意向を示した。一方で、「軍命の有無に対する事実関係が確かではない」「裁判で争われている。意見書は司法への政治介入になる」など反対意見も根強く、まとまらなかった。

 

 同問題への意見書で、自民内部は賛否の意見が割れ、定例会冒頭の採択に賛成できない方針を固めていた。だが、相次ぐ市町村議会での意見書採択や県民からの反響が大きく、事態を重視した執行部は七日、役員会で「軍の何らかの関与があったのは事実」という認識で一致させ、賛成の方向で調整に入ることを決めた。

 

                    

 

 文部科学省の検定で高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から日本軍の関与が削除・修正された問題に抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」(主催・同実行委員会)が九日午後二時から、那覇市の県庁前県民広場で開かれる。

 

 大会決議として、検定意見に抗議し「『集団自決』に関する検定意見を直ちに撤回すること」を求め、文部科学大臣、内閣総理大臣、県知事、県議会議長あてに送る。

 

 実行委には県内の六十三団体が参加。歴史教科書執筆者らでつくる「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し、沖縄の真実を広める首都圏の会」のメンバーも全国から集う。主催者側は五千人の参加を見込んでいる。

 

 一方、五万人を目標に実行委が呼び掛けている署名は八日現在、二万九千三百九十五人となった。大会当日、会場でも署名を受け付ける。

 

 雨天の場合、会場は宜野湾市民会館大ホールに変更されるが、少雨だと県民広場で開催される。

 

 会場の決定は同実行委員会が九日正午までに決定する。問い合わせは実行委事務局、電話098(887)1661。

 

 実行委によると、RBCiラジオで午後零時十分、二十分、三十分の三回、番組中に会場のお知らせを行う。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_04.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 28面

 

ひめゆり説明員 県外から初

 

【糸満】「ひめゆり学徒隊」の生存者が、自らの沖縄戦体験を語る糸満市の「ひめゆり平和祈念資料館」に八日までに、学徒隊に代わり沖縄戦を語り継ぐ「説明員」に、三重県出身の尾鍋拓美さん(26)が就任した。(仲本利之)

 

 二〇〇五年から説明員を務める仲田晃子さん(30)に続き二人目、県外出身者としては初めて。今後、学徒隊の「証言員」との語らいや資料研究などを通じて「ひめゆり」の知識を深め、半年後に展示室に立つことを目指す。

 

 本村つる館長(81)は「私たちのすべてを継承するつもりで平和の後継者になってほしい」と期待する。

 

 尾鍋さんは一九八一年生まれ。地元三重の高校を卒業後、京都文教大学で文化人類学、琉球大学大学院で社会科教育を専攻し、昨年三月に同大学院を修了した。

 

 「ひめゆり」にかかわわるきっかけは、京都文教大二年のフィールドワーク。「沖縄戦の記憶を学ぶ」を研究テーマに選んだ尾鍋さんは、沖縄に足を運び、学徒隊について調査研究。フィールドワークでまとめた報告書を同資料館の学芸員に送付し返事の手紙をもらうなどの交流を深めた。

 

 昨年八月、戦史研究などを通じて親交があった琉大出身の仲田さんの紹介で同資料館の臨時職員に。以来約十カ月間、来館者の感想文を文集にまとめたり、企画会議の事務補助などの業務に当たってきた。

 

 証言員の津波古ヒサさん(79)は「私たちは自ら体験したことしか語れないが、尾鍋さんは証言員みんなの話に耳を傾け、何でも学ぼうとする姿勢がある」と話す。家族のように受け入れる証言員の心の広さに尾鍋さんは「県外出身であることを意識したことはない」と笑う。

 

 「資料館を訪れた人々が地元に帰り、平和の大切さを家族や友人に語り継ぐ、そのきっかけをつくる説明員になりたい」と意欲的だ。

 

 一九八九年の開館当初二十八人でスタートした証言員は現在十五人。年々証言員が少なくなる中、次世代への「語り継ぎ」は一歩一歩進んでいる。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_05.html

 

2007年6月9日(土) 朝刊 29面

 

海自反対派調査「有無」食い違い

 

 【東京】陸上自衛隊の情報保全隊が、イラク派遣活動など自衛隊の活動に批判的な全国の市民団体などの動向を調査していた問題で、社民党の福島瑞穂党首は八日、防衛省に守屋武昌事務次官を訪ね「憲法違反だ」と抗議、同保全隊の収集情報をすべて公開するよう求めた。

 

 福島党首によると、守屋氏は、米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設に伴う周辺海域の現況調査に海上自衛隊を動員したことに反対する動きについて「事後的に、海自の情報保全隊が、任務に従事した隊員がどう評価されているのか、情報収集はしているだろう」と述べたという。

 

 しかし、守屋氏本人は記者団に対し「一般論として『当然海上自衛隊も関心を持っているだろう』と言っただけ。福島氏には『(反対の動きへの情報収集について)報告も受けていない』と何度も伝えた」と語り、両氏の話が食い違っている。

 

 一方、福島氏によると守屋氏は、イラク派遣活動に関する情報収集の事実は認めた上で、隊員士気の堅持、家族の不安を払拭するために必要な活動であったことを強調したという。そのほか、情報保全隊の規模について陸自が六百六十八人、海自が百三人、空自が百五十六人であることも明らかにしたという。

 

 同保全隊の収集情報が記録された「内部文書」の信用性については否定しつつ「これは本来出るべきものではなかった」と語り、文書の存在を事実上認めたという。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706091300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月9日朝刊)

 

[米軍燃料流出]

 

「同じ水」を飲みながら

 

 米空軍嘉手納基地で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は同基地内に立ち入り、流出現場の土や水の採取などを求めたが、米軍にあえなく拒否された。

 

 県は、燃料が流出したタンク周辺の土壌や側溝などの水をサンプリングし、揮発性有機化合物などの有無、量などを調べる予定だった。

 

 土や水の採取は、住民が不安を抱いている環境汚染を調べる上で、最低限必要だ。

 

 だが、写真撮影すら拒まれ、目視調査のみに終わっている。これでは、基地外の環境に影響があるのかどうか、結論を出すのは到底困難だ。

 

 米軍は何のために基地内への立ち入りを許可したのか。地元の調査を「一応、受け入れた」というアリバイづくりと疑われても仕方あるまい。

 

 またしても、日米地位協定の「壁」が背景に立ちはだかっている。

 

 同協定三条は、米軍の管理権を認める一方、「立ち入りが軍の運用を妨げることなく行われる限りにおいて、立ち入り申請に対してすべての妥当な考慮を払う」と定めている。

 

 今回、立ち入りは認められたものの、基地内での実質的な調査は拒否された。基地内調査が「米軍の裁量」に委ねられているからにほかならない。

 

 同三条は、その三項で「施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行わなければならない」とも定めている。

 

 だが、「公共の安全」よりも「基地管理権」や「米軍の裁量」が優先されているのが日米同盟、そして沖縄の現実といえよう。

 

 本土復帰後も過重な基地負担の中で、県民はこの不公平、不平等な地位協定によって苦悩を強いられてきた。

 

 苦悩解消には、政府も本気で取り組んでこなかったし、今後も取り組む気配さえなく、対米従属の姿勢を見せている。

 

 嘉手納基地には、周辺を含め計二十三の「嘉手納井戸群」と呼ばれる地下水源がある。県企業局北谷浄水場が一日約二万トンを取水し、地元など七市町村に給水している。

 

 県内の米軍基地の水道は、そのほとんどが近隣市町村を通じて給水を受けている。広大な嘉手納基地も、主な供給源は北谷浄水場である。

 

 「同じ水」を飲みながら、なぜ、ジェット燃料の流出事故を県民と米軍が共通の問題として対処できないのか。

 

 憲法で保障された「平和的生存権」がいかに米軍基地によって脅かされているか、地位協定の理不尽さをあらためて考えざるを得ない。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070609.html#no_2

 

2007年6月10日(日) 朝刊 1面

 

歴史歪曲 3500人抗議/「集団自決」修正

 

63団体が県民大会/検定意見撤回求め決議

 

 文部科学省の高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除、修正されたことに抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」(主催・同実行委員会)が九日、那覇市の県民広場で開かれた。約三千五百人(主催者発表)が参加。文科省に対し、検定意見の撤回を求める大会決議を採択した。

 

 六十三団体でつくる実行委員会を代表し、あいさつした高嶋伸欣琉球大学教授は「生徒がこの教科書を使う来年四月までまだ時間がある。県民の声を文科省にぶつけて検定意見を撤回させることは一九八二年の前例もあり、十分可能だ」と強調。「会場の熱気に勇気づけられた。来週予定している伊吹文明大臣との交渉では、過去の経緯などを含めて厳しく追及し、成果につなげたい」と力を込めた。

 

 沖教組の大浜敏夫委員長は「日本軍の命令がなかったことにされれば、住民自ら死を選んだことになり、軍国美談にされかねない。文科省による歴史歪曲に対し、県民の怒りは頂点に達している。大きなうねりを全国の世論へとつなげていこう」と呼び掛けた。

 

 「文科省による教科書検定意見を撤回させる」「県議会に民意を踏まえた意見書をただちに採択させる」「沖縄戦の実相を子どもたちに伝えていく」の三項目を掲げたスローガンを採択。県政野党各党や労組、市民団体が連帯あいさつをしたほか、県外から出版関係者や日教組の代表らも駆け付けた。

 

 参加者らは「ガンバロー三唱」で気勢を上げた後、「子どもたちに戦争の実相を伝えよう」「県民は沖縄戦の歪曲を許さない」などと訴え、国際通りをデモ行進した。

 

 大会決議は文科相、首相、知事、県議会議長あてに送付する。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706101300_01.html

沖縄タイムス 関連記事・社説、琉球新報 社説(6月7日夕刊、8日)

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

自民、意見書採択へ調整/「集団自決」修正

 

 県議会最大会派の自民党は七日、県議会内で役員会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書採択に向けた調整に入る方針を決めた。八日に議員総会を開き、協議する。同党は五月三十日の議員総会で賛否が割れ、六月定例会での採択に賛成できない方針を確認していた。役員会では「軍の何らかの関与があったのは事実」という認識を一致させ、議員総会で結論を出す方針を固めた。一部には反対論もあり、総会の議論に注目が集まる。

 

 役員会後、新垣哲司幹事長は「問題の重要性を踏まえ、自民党としての意見集約を図りたい」と述べた。伊波常洋政調会長は「文科省の検定意見の趣旨など事実確認し、戦争体験者や国会議員ら幅広い意見を聴き、結論を出す」と説明した。

 

 議員総会で採択に向けた意見集約後は、文案などの調整を進める見込みだ。

 

 三十日の議員総会では、「『集団自決』は歴史的な事実であり、多くの証言がある。記述を修正すべきではない」という賛成意見が出た一方、「軍命の有無が係争中の裁判で焦点になっている段階での意見書は、司法への政治介入になる」という反対があった。

 

 中には「司法の判断が出ていない段階で、従来の記述を修正すべきではない」との賛成意見もあった。総会で、意見がまとまらず、意見書に賛成できない状況になっていた。

 

 検定意見書に抗議する「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない県民大会実行委員会」は六月五日、県庁内で会見し、意見書に賛成しない方針を固めた自民党県連に対し、賛成するように再考を求める要望書を手渡す意向を表明している。新垣幹事長は「日程調整し、対応する」と述べた。

 

 要望書では、各市町村議会が「集団自決」に対する軍関与を不明瞭にした修正意見の撤回を求め、意見書を採択していることについて、「保革を超えた大きな県民の声だ」と指摘。その上で「意見書に対する態度の再考を自民党に求め、県民の代表者として県民の声に応える議会の発言と働きを強く求める」とした。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_01.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

東門市長「容認できぬ」/米軍燃料漏れ

 

 【沖縄】米軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出して土壌に浸透した問題について、沖縄市の東門美津子市長は七日開会した市議会六月定例会の冒頭あいさつで、「米軍と国の対応については大変遺憾であり、とても容認できるものではない」と厳しく批判し、「地元への連絡が一週間遅れた上、各自治体への説明も異なっているなど米軍と国の連絡体制のずさんさが露呈した」と指摘した。

 

 今後の対応は沖縄市嘉手納町北谷町の三首長らで組織する「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」で八日に、米軍に対し(1)原因究明とその対策(2)事故の再発防止(3)速やかな情報提供(4)具体的な環境汚染対策を求めて抗議する方針を示した。

 

周辺水質異常なし

 

 【中部】米軍嘉手納基地のジェット燃料流出を受け、基地内や周辺の十九井戸で水質調査を実施した県は七日、ベンゼンなどの揮発性有機化合物(VOC)は、厚生労働省が定める水道水質基準の基準値の十分の一以下で、異常はなかったとの分析結果をまとめた。県は五日に取水、VOC十九項目などについて調査した。

 

現状確認で県 午後立ち入り

 

 米空軍嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は七日午後、現状確認のため基地内に立ち入り、米軍から説明を受ける。

 

 県はサンプル採取など流出現場での調査についても米軍に要請しているが、同日午前の段階で米軍は許可しておらず、調整を続けている。

 

 県は同日午後、花城順孝企業局長らが同基地を訪ね、同基地司令官に原因究明と公表、再発防止と安全管理の徹底を申し入れる。那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所にも同様の申し入れをする予定。

 

                    

 

嘉手納町、現場確認/三連協あす立ち入り

 

 【嘉手納】米軍嘉手納基地で先月二十五日から四日間にわたってジェット燃料が流出した問題で、嘉手納町は七日までに流出が起きた燃料タンクを確認した。同町基地渉外課は、那覇防衛施設局が示した地図や航空写真などを照らし合わせた上で「流出のあったタンクに間違いない」としている。

 

 燃料タンクの位置は同町役場から南へ六百二十メートルの地点。同基地北側滑走路に隣接し、土に覆われたタンクが二基(高さ約二メートル)並んでいる。滑走路に近い一基は、表面の芝生が茶色に変色している。

 

 「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協、会長・野国昌春北谷町長)は八日、同基地への抗議後に現場を確認することになった。嘉手納基地から七日午前、立ち入りを認めるとの連絡があった。これまでに日本側が現場確認したのは一日の那覇防衛施設局のみ。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_02.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 1面

 

読谷飛行場跡にフッ素/鉛検出問題

 

 【東京】二〇〇六年七月末と同年九月にそれぞれ返還された読谷村の米軍読谷補助飛行場跡地、瀬名波通信施設跡地の土壌から基準値を超える鉛などが検出された問題で、防衛施設庁は七日までに詳細な調査結果をまとめた。読谷補助飛行場跡地では、南側地域で鉛のほかに特定有害物質のフッ素も検出されたことが明らかになった。同飛行場では油分も含め、土壌の汚染は全体で約五千七百立方メートルに及んだ。瀬名波通信施設跡地では鉛、油臭による汚染土量が約四百立方メートルと確認された。

 

 施設庁は今後、調査結果に基づいて原状回復作業を行う予定。七日午後に読谷村に説明する。

 

 読谷飛行場ではこれまでに、土壌一キロ当たりの含有量で、基準値の八十倍、溶出量で基準値の約二十倍の鉛などが検出されていた。今回の詳細な調査では汚染場所を解体業者の廃車置き場や作業場、冷蔵庫などの不法投棄場所、水道工事業者作業場付近と特定。

 

 範囲は面積約四千六百平方メートル、地下三メートルに及び、約五千七百立方メートルの汚染土壌のうち、約五千立方メートルが鉛、フッ素を含んでいたことが分かった。

 

 一方、瀬名波通信施設でもこれまでに、土壌一キロ当たりの含有量で基準値の一・九倍に当たる鉛が見つかっていた。汚染が確認されたのはガソリンスタンド跡地、自家発電施設跡地で、面積約三百平方メートル、地下二メートルに及ぶ範囲で、約四百立方メートルの汚染土壌のうち、約百立方メートルが鉛によるものだった。〇三年に返還された北谷長のキャンプ桑江北側部分でこれまでに見つかった汚染土壌は約四万九千立方メートルで、そのうち鉛、ヒ素、六価クロムの特定有害物質を含む土壌は約八百立方メートルだった。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_03.html

 

2007年6月7日(木) 夕刊 4面

 

戦語る864人 迫力の写真展/佐喜眞美術館

 

 比嘉豊光写真展「わったー『島クトゥバで語る戦世』684」(主催・佐喜眞美術館)が六日から、宜野湾市の同美術館で始まった。入場無料。七月二日まで。会場には、自らの戦争体験を語る高齢者八百六十四人の写真を展示。来場者は作品を通して沖縄戦の記憶を継承することの重要性を再認識していた。

 

 写真展は、一九九七年から沖縄戦を地域の方言(島クトゥバ)で体験者に語ってもらい、映像と写真で記録する活動を継続している写真家、比嘉豊光さんの作品を展示した。

 

 二十三、二十四日の午後には同美術館でシンポジウムがある。問い合わせは同美術館、電話098(893)5737。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706071700_07.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 1面

 

米軍、土壌・水の採取拒否/嘉手納・燃料流出

 

県の立ち入り調査難航

 

 【嘉手納】嘉手納基地内で大量のジェット燃料が流出した問題で、県は七日、基地内に立ち入り、環境への影響を調査した。県は流出現場の土壌や水の採取などを求めたが、米軍に拒否された。理由は説明しなかったという。県は「土壌や水が採取できず、基地外の環境に影響があるのか結論を出すことは難しい」としている。一方、県の花城順孝企業局長らは同日、同基地と那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所に原因究明と再発防止を申し入れた。花城局長によると、同基地第一八施設大隊のマイケル・ハス司令官は、米軍の調査結果の公表について「上部機関と相談する」との回答にとどめたという。

 

 立ち入り調査で、県は燃料が流出したタンク周辺の土壌や側溝などの水を採取し、揮発性有機化合物(VOC)の有無や量などを調べることにしていた。

 

 県によると、米軍は燃料流出の経緯や量などを説明した。

 

 燃料が浸透した土壌の範囲や深さなどについて「作業の中で判明するだろう」とし、把握していなかった。取り除いた土壌を基地内の舗装された場所に広げ、土壌中の油分を蒸発させる「ランドファーミング」と呼ばれる手法で浄化すると説明。早ければ今月中旬に着工する。

 

 調査には県職員約十人ほどが立ち会った。芝生の枯れていた給油用タンクで、わずかに燃料のにおいがしたという。

 

 一方、花城局長は、ハス司令官に対し、嘉手納基地と周辺地域の地下水を水源とした「嘉手納井戸群」が県民の重要な水道水源であることから、「地域の生活環境の保全に支障が生じることが懸念される」と指摘。県などが流出事故の連絡を受けたのは発生から七日後だったことについても、「米軍の施設の管理運用体制に疑念を抱かせるもので誠に遺憾」と訴えた。

 

 施設局の岡田康弘施設部長や外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は、県の基地内への立ち入り調査が継続できるよう米軍に協力を働き掛ける意向を示した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_01.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 31面

 

抗議署名2万8177人に/「集団自決」修正

 

 文部科学省の高校歴史教科書検定への抗議の輪が沖縄から全国へ広がっている。「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会が県内外の関係団体に署名を呼び掛けたところ、七日現在で二万八千百七十七人分が集まった。実行委は五万人を目標に置いているが、「これを超えると期待している」と話している。

 

 そのうち約一万八千人分は全国の分。日教組が第一次分として集約したものが大半で各県の教員が署名した。実行委は「実際に教科書を手に取る先生の署名が多いのはありがたい。今、何が起きているのかを学校現場でも知ってもらいたい」と語る。

 

 日本史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の部分から日本軍の関与部分の記述を削除・修正した今回の検定問題が逆に、戦後六十二年を経て、埋もれがちだった沖縄戦に対する全国の関心をあらためて呼び起こす機会になれば、と期待している。

 

 一方、県内分は約一万人だが、実行委に参加している六十三団体のうち提出したのは二団体にとどまっているため、最終集計予定日の十三日には「まとまった数になる」(実行委)と話している。

 

 実行委は、九日午後二時から那覇市の県庁前の県民広場で開く県民大会の会場でも署名を呼び掛けることにしている。集まった署名は十五日に実行委代表らが文部科学省側に大会決議とともに手渡すことにしている。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_03.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 1面

 

自民、きょう意見集約/「集団自決」修正

 

県議会意見書採択へ調整

 

 県議会最大会派の自民党は七日、県議会内で役員会を開き、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定に対する意見書採択に向け調整に入る方針を決めた。八日の議員総会で協議する。自民党は五月三十日の議員総会で賛否が割れ、六月定例会での採択に賛成できない状況だった。役員会では「軍の何らかの関与があったのは事実」との認識を一致させ、議員総会で所属県議に考えを示し、再度協議、結論を出すとしている。一部には慎重論や反対論も根強く、議員総会の協議の行方が注目される。

 

 役員会後、新垣哲司幹事長は「問題の重要性を踏まえ、自民党としての意見集約を図りたい」と述べた。伊波常洋政調会長は「文科省の検定意見の趣旨など事実確認し、戦争体験者や国会議員ら幅広い意見を聴き、結論を出す」と説明した。

 

 議員総会でまとまれば、所管する文教厚生委員会(前島明男委員長)を中心に、文案などの調整を進める見込みだ。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_04.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 31面

 

久間防衛相「反自衛隊」分類 不適切/陸自市民監視

 

 【東京】共産党が自衛隊関係者から入手した「内部文書」で、自衛隊のイラク派遣に反対する国会議員の発言などを「反自衛隊活動」と分類していたことについて、久間章生防衛相は七日午後の参院外交防衛委員会で、「反自衛隊というレッテルを張るわけにはいかない」と述べ、好ましくないとの見解を示した。白眞勲氏(民主)への答弁。

 

 久間氏は「記入した人の私見にかかわるものだ。評価を省として下していれば問題だが、そういう判断を下しているわけではない。上がってきた事実を束ねているだけだ」と述べ、問題にはならないとの認識を示した。

 

 「反自衛隊」の分類の中に、騒音に関する基地への苦情も含まれていたことについて「それを親自衛隊か、反自衛隊かという二つを選択するとなると、そちら(反自衛隊)の方に書いたとしてもやぶさかではない」と述べつつ、「苦情は苦情だ」と述べ、「反自衛隊」とするべきでないとの認識を示した。

 

 一方、「内部文書」について「全く根も葉もないということではないと思う」と述べ、一定の信ぴょう性があるとの認識を示したが、「全部本物かチェックできないので分からない」と述べた。

 

 今後本物かどうかを調査するかについては、保存義務がない類であることを強調した上で「内部(報告書)の話ですから、調査する必要はないと思っている」と語った。

 

 「反自衛隊」の分類については、守屋武昌防衛次官も同日の定例会見で「(反自衛隊と)決め付けることに目的があったのではない」とし、隊員士気の堅持、家族の不安を払しょくするための必要性を強調した。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_05.html

 

2007年6月8日(金) 朝刊 2面

 

与那国寄港 自粛を要請/県、米海軍司令官に電話

 

 米軍艦船二隻が与那国町への寄港を検討している問題で、県の上原昭知事公室長は七日、在日米海軍司令官のジェームズ・ケリー少将あてに、寄港の自粛を口頭で申し入れた。

 

 上原公室長は政務補佐官を通じ電話で「民間港湾および漁港は、民間船舶の運航や漁業の施設として設置されたもので、緊急時以外、米軍艦船の使用は自粛してもらいたいというのが県の一貫した方針。久部良漁港および祖納港の使用自粛を要請する」と伝えた。

 

 石垣海上保安部から六日、県八重山支庁あてに米軍艦船二隻が与那国町の祖納港および久部良漁港を使用するとの通知を受けて要請した。

 

 通知によると、使用期間は二十四日午前九時入港、二十六日午前九時出港となっている。入港するのは米海軍佐世保基地(長崎県)所属の掃海艦「パトリオット」と「ガーディアン」(いずれも排水量一三一二トン)。寄港目的は「親善・友好訪問および乗組員の休養」となっている。上原公室長は七日、社民党県連の新里米吉書記長らが与那国への寄港を拒否するよう求めたことに、「日米地位協定の問題もある。控えてほしいと考えているが、ノーと言えるかは別問題」と語った。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200706081300_06.html

 

沖縄タイムス 社説(2007年6月8日朝刊)

 

[陸自市民監視]

 

この人権感覚は問題だ

 

 共産党の志位和夫委員長は、陸上自衛隊の情報保全隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体のほか政党、労組、ジャーナリスト、宗教団体などの動向をまとめた「内部文書」を入手した。

 

 調査リストには自衛隊のイラク派遣に反対する集会やデモなどの関連だけで四十一都道府県の二百八十九団体・個人に上り、高校生も含まれている。

 

 県内ではイラク戦争に反対した市民団体ら十三団体のデモ行進やビラ配りなど十五件も入っていた。

 

 そもそも自衛隊のイラク派遣に反対する市民運動は、監視が必要な異常な行為なのか。政府批判、自衛隊批判は「言論の自由」「報道の自由」によって保障された人権の一つではないか。

 

 今回リストアップされた個人や団体のメンバーらはさぞ驚き、自衛隊への不信感を募らせたことだろう。

 

 文書は百六十六ページ。陸自東北方面情報保全隊がまとめた「情報資料」(二〇〇四年一二月)と、情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」(〇三年十一月〇四年二月)の二種類。

 

 志位氏は「個人のプライバシーに対する侵害行為で憲法違反だ」と鈴木政二官房副長官に中止を要請したが、塩崎恭久官房長官は記者会見で「法律にのっとって行われる調査活動や情報収集は当然、受け入れられるべきだ」と述べ、許容範囲との認識を示した。

 

 久間章生防衛相は「自衛隊が情報収集活動をするのは当然」とした。防衛省の守屋武昌事務次官は、反対集会などの情報を集めていたことを認めた上で「自衛隊法に基づく調査研究で違法性はない」と説明している。

 

 しかし、自衛隊の調査・情報収集に何の限定も加えない発言はおかしい。「自衛」の名目であれば何をしても許されるというわけでもあるまい。調査にもおのずから限界があるはずだ。

 

 集会の自由、デモ行進の自由などを含む「表現の自由」は、民主主義社会では最も尊重されるべき人権である。写真撮影などで市民のプライバシーを脅かし、市民運動を委縮させるようなことがあってはならない。

 

 シビリアン・コントロール(文民統制)の原則を忘れるべきではない。このような調査は自衛隊による民の統制につながる本末転倒の発想で、自衛隊の市民監視と批判されるゆえんだ。

 

 特に沖縄は広大な基地を抱え、歴史的体験を踏まえればイラク派遣への反対運動が起きるのも当然ではないか。

 

 約五年前、自衛隊で情報公開請求者の個人情報リストを作成していたことが問題になったが、プライバシーを軽視する自衛隊の人権感覚はおかしい。

 

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070608.html#no_1

 

琉球新報 社説

 

自衛隊の国民監視 矛先の向かう先が違う

 いつから自衛隊は国民に矛先を向けるようになったのだろうか。陸上自衛隊が自衛隊の活動に批判的な市民団体や政党、労組、ジャーナリストなどの動向を調査した内部文書の存在が6日、明らかになった。国民を守るべき自衛隊が、自衛隊を守るために国民を監視する。本末転倒だ。

 共産党が入手・公表した自衛隊の「内部文書」は2種。「イラク派遣に対する国内情勢の反対動向」(2003年11月04年2月)と「一般情勢」(04年12月)で、いずれも陸上自衛隊の情報保全隊が作成したものだ。

 文書にはイラク派遣に反対する集会やデモ、ビラ配布などを行った289の団体・個人の動きが詳細に記録されている。

 県内でも沖縄弁護士会や沖縄平和運動センターなど15団体、5個人の活動が「監視対象」となっていた。

 7日の参院外交防衛委員会で、久間章生防衛相は、「監視活動」が陸上自衛隊に限らず、海上、航空自衛隊でも行われていた可能性を認めている。

 反対集会への参加者の撮影も行われていた。「撮影は違法」との野党の指摘に久間防衛相は、マスコミ取材を例に「取材が良くて自衛隊が駄目だという法律の根拠はない」と反論している。マスコミの取材と自衛隊の監視を同列に並べる感覚も、いかがなものか。

 自衛隊による「国民監視」の事実を内部文書で暴露された防衛省は「部隊の保全のために必要な情報活動」「情報収集はイラク派遣時に限ったこと」と釈明している。

 これに対し野党は「個人のプライバシーに対する侵害行為で、憲法違反」(共産党)「シビリアンコントロール(文民統制)が全く効いていない」(民主党)「税金を使った憲法違反の行為で言語道断」(社民党)と批判している。

 戦前、戦中は特高警察が国民を監視し、発言によっては逮捕・拘留し、反戦の声を抑えた。加えて、負け戦すら勝ち戦にすり替える軍の「大本営発表」で情報操作し、国民を戦争に駆り立て、多くの国民を死に追いやった歴史がある。

 自衛隊による「国民監視」に、市民からは「戦前の特高警察の復活を思わせる」「戦前回帰に身震いする」などの声が上がっている。

 自衛隊は、存在自体が憲法違反との意見もある。改憲論争の焦点の一つに「9条改正」による自衛隊の軍隊化もある。

 国の平和と独立を守り、直接・間接侵略に対処するのが自衛隊の主任務のはずだ。しかし実態が、戦前の特高警察を想起させる国民の監視機関だとするならば、やがて矛先を国民に向ける軍隊に変わりかねない。そんな自衛隊なら、民主国家・日本には不要だ。

 

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http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-24442-storytopic-11.html