沖縄タイムス 関連記事(4月11日?12日)

2007年4月11日(水) 朝刊 22面
沖縄基地の危険性 学会で発表へ/英国立日本研のフック氏
 沖縄と国際安全保障の関係を研究している英国立日本研究所所長でシェフィールド大学のグレン・フック教授(57)が十日、那覇市の県庁で、県内の米軍基地調査の結果を報告した。「沖縄には国家が背負う安全保障上のリスクと、それに関連して個人が遭遇するリスクが偏在している」と指摘した。
 同教授は英国学術協会の研究費を得て「東アジアのリスク研究プロジェクト」に参加。担当する国際安全保障分野で「国家と個人が請け負うリスクがぶつかり合う現場」として、沖縄を研究対象に選んだ。先月末から十日ほどかけて米軍基地が所在する自治体などを訪ね、住民や首長らから聞き取り調査した。
 県民が政治的立場を問わず、「現在の危険にもつながる要因」と連想していることが印象に残ったという。「成熟した主権国家ではリスクは民主的に分配されるが、日本では沖縄に集中。原因を分析したい」という。
 来年中に論文をまとめ、英米の学会で発表する。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704111300_09.html

2007年4月11日(水) 夕刊 1面
オスプレイ「県内配備可能性ある」/麻生外相
 【東京】麻生太郎外相は、十一日の衆院外務委員会で米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの県内配備について、「(オスプレイが)完成品になった段階で、(現行ヘリと)置き換える可能性は十分に考えておく必要がある」と述べ、県内配備の可能性を事実上認めた。防衛省の大古和雄防衛政策局長は、米軍普天間飛行場に配備されているCH46、CH53ヘリの後継機種に関し「(米軍が)オスプレイ以外のものを開発しているとは承知していない」と指摘、後継機はオスプレイ以外にないとの認識を示した。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。
 麻生外相は、オスプレイが過去に墜落事故を起こした経緯を挙げ「軍事技術の進歩に伴い、いい完成品が出来上がれば、米側が置き換えていこうとする努力をするのは当然だ」と述べた。
 日米両政府がSACO(日米特別行動委員会)最終報告の草案に、米軍普天間飛行場代替施設へのオスプレイ配備を明記していたことについて、外務省の西宮伸一北米局長は「承知していない」と強調。その上で「(米側から)『現時点で具体的に決まっていない』との説明を受けている。SACO最終報告はオスプレイ配備を前提にしたものではない」と述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704111700_01.html

2007年4月12日(木) 朝刊 1面
オスプレイ県内配備 外相、可能性認める
 【東京】麻生太郎外相は十一日の衆院外務委員会で米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイについて、「(実戦配備可能な)完成品になった段階で、(現行ヘリと)置き換える可能性はわれわれとしては十分に考えておく必要がある」と述べ、将来的に県内配備される可能性を事実上認めた。防衛省の大古和雄防衛政策局長は、米軍普天間飛行場に配備されているCH46、CH53ヘリの後継機種に関し、「オスプレイ以外のものを開発しているとは承知していない」と指摘、後継機はオスプレイ以外にないとの認識を示した。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。
 麻生外相は、オスプレイが過去に墜落事故を起こした経緯に触れながら「軍事技術の進歩は当然だと思う。それに伴い、いい完成品が出来上がれば、米側が置き換えていこうとする努力をするのは当然だ」と述べた。
 オスプレイについては額賀福志郎防衛庁長官(当時)が昨年四月の同安全保障委員会で「将来、米海兵隊の輸送ヘリをオスプレイに代替していく予定であるとは聞いている」と述べているが、麻生外相の発言は県内配備を念頭に置いたもので、従来よりも踏み込んだものといえる。
 日米両政府が日米特別行動委員会(SACO)最終報告の草案に、普天間飛行場代替施設へのオスプレイの配備を明記していたことについて、外務省の西宮伸一北米局長は「承知していない」と述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704121300_01.html

2007年4月12日(木) 朝刊 27面
教科書執筆者も怒り/修正検定で集会
 【東京】沖縄戦の「集団自決」について、日本軍の関与を指摘する記述を削除・修正した高校歴史教科書の検定を受けた「沖縄戦緊急学習会」(主催・出版労連教科書対策部)が十一日夜、都内で開かれた。教科書会社の執筆者は「現場との議論がないまま歴史が歪曲された」と危機感を強調し、修正撤回を求めた。沖縄から参加した平和ガイドは「死者への冒だ」と声を震わせた。大阪で続いている「集団自決」訴訟の説明もあり、参加した出版・教育関係者、平和団体など約百十人からは東京の支援組織の立ち上げなどが提起された。(吉田央)
 実教出版で日本史教科書を執筆する石山久男さんは「責任者が陰に隠れて出てこない。(教科書会社に)修正を通知する教科書調査官は(教科用図書検定調査)審議会の意向を伝えるだけで、議論がまったくできない」と悔しさをにじませた。
 「文部科学省はある時は通説を書けと言い、ある時は異なる学説の併記を求める。今回は(軍命はなかったという)元日本兵一人の証言に合わせろと言っている」と話し、教科書検定が一貫性を欠いていると批判した。
 出版労連教科書対策部の吉田典裕事務局長は「戦争ができる国造りのため、政府の思い通りの考え方を子どもたちに押し付け、戦争への抵抗感を薄くしたい安倍政権の狙いが容易に読み取れる」と批判。
 「軍の関与を否定していない学説も引用して正反対の結論を導いた。とんでもない検定だ」と怒りをあらわにした。
 三年前に沖縄に移住して平和ガイドを努める大島和典さんは、大阪での「集団自決」訴訟を説明。「この裁判は沖縄だけの問題ではない。東京でも支援組織を立ち上げ、沖縄での出張法廷や裁判官の現地調査を求めよう」と呼び掛けた。
 渡嘉敷島「集団自決」の生き残りの金城重明さんによる証言ビデオの上映もあり、金城さんは「日本軍が住民に手りゅう弾を配った時点で自決命令が出ていた。住民は軍官民共生共死の方針により、生きる恐怖から死を選んだ」と明確な軍命があったことを訴えた。
     ◇     ◇     ◇     
文科省「冤罪訴訟」公表資料で使用/「不適切」大臣が陳謝
 【東京】高校教科書検定で文部科学省が報道機関に公表した沖縄戦関連の「著作物等一覧」で、大阪で係争中の訴訟について原告側が使用する「沖縄集団自決冤罪訴訟」との呼称を使用していた問題で、伊吹文明文科相は十一日の衆院文部科学委員会で「極めて不適切だった」と陳謝した。一方、沖縄戦「集団自決」で日本軍の関与を削除した検定結果には「日本軍の強制がなかったとは言っていない」と主張し、問題視しない考えを強調した。赤嶺政賢(共産)、日森文尋(社民)の両氏への答弁。
 赤嶺氏は同省が今回の検定意見の理由の一つに同訴訟を挙げていることを念頭に「事実認定も証人尋問もこれから。どちらが正しいか決まっていないのに原告側の意見が影響したことになる。バランスの観点から重大な問題だ」と批判、文科相に説明を求めた。
 伊吹文科相は「法律上の検定権者は文部科学大臣だが、議院内閣制の日本で検定権者に教科書の内容が左右されることはあってはならない」と指摘。
 その上で「だから私は公正に一言の言葉も挟んでいない。役人も私も安倍晋三首相も一言の了解もできない仕組みで検定が行われている」と述べ、検定意見の妥当性への言及を避けた。
 日森氏は「検定意見は裁判の結果が出てからでも遅くない」と拙速な判断を問題視した。
 これに対し伊吹文科相は「最高裁の判決も裁判官の主観で変わる。判決が出ればそれが正しいから史実を書き直せというのも乱暴だ」と反論し、裁判結果と検定判断は連動しないとの考えを強調した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704121300_02.html

沖縄タイムス 関連記事(4月8日?11日)

2007年4月8日(日) 朝刊 25面
民芸、都内で「沖縄」上演/戦後「責任」問い掛け
 【東京で真栄里泰球】劇団民芸の木下順二追悼公演「沖縄」(木下作)が七日、東京都渋谷区の紀伊国屋サザンシアターで初日を迎えた。演出は児玉庸策さん。祭りの夜の幻想的な雰囲気を織り込みながら、沖縄に対する日本人の「責任」を問い掛ける舞台を、詰め掛けた観客は見入っていた。
 「沖縄」は一九六三年にぶどうの会によって初演され、民芸による上演は初めて。出演は日色ともゑさん、境賢一さん、杉本孝次さんら。
 敗戦から十五年目の沖縄の離島に持ち上がった米軍の土地接収話への人々の思惑や戦争の記憶などを描いた。心に傷を持つ女性や島出身の学生、元日本兵、島の人々のかかわりの中で、現在にも通じる本土と沖縄の関係性が浮かび上がっていく。演出の児玉さんは「(日本が)起こしたことを正確に認識することが責任を取ることにつながる。木下先生の残したことを大切にしていきたい」と話した。公演は十八日まで。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704081300_05.html

2007年4月8日(日) 朝刊 24面
「慰安婦」の存在証言/宮古島市
 【宮古島】従軍慰安婦に関する宮古島市長や市議の答弁を削除した市議会の問題を受け、宮古での従軍慰安婦問題について多くの人に知ってもらおうと、市内に住む女性の有志(川浦弥生世話人)らは七日、同市中央公民館で「宮古島の日本軍『慰安婦』についての証言を聞く会」を開いた。研究者が慰安所調査を報告し、また住民二人が沖縄戦中に自宅近くで慰安所の様子を目撃したことなどを証言した。
 沖縄各地での慰安所、慰安婦調査を続ける早稲田大学大学院生の洪△伸(ホン・ユンシン)さんは「沖縄から『人道に対する罪』を問うということ」をテーマに報告。宮古には戦時中に少なくとも十一カ所の慰安所があったとした上で、二〇〇六年に二回、聞き取り調査したことなどを語った。
 洪さんは、日本軍の組織的な関与があったこと、宮古では他の地域とは異なって民家と隣接した地域に慰安所があったことを指摘。「慰安所を手掛かりに、それを見た一人一人が証言者となり、守るべき人権について考えたい」と述べ、五月に実施する第三次調査への協力を呼び掛けた。
 洪さんの調査に協力した同市上野の仲里キミさん(71)は、小学校低学年だった戦時中に自宅近くに慰安所があったことを報告。慰安婦が歌い、覚えていたアリランを口ずさみ「楽しそうに歌っていたが、子どものころは、つらい状況とは知らなかった」と語った。与那覇博敏さん(73)=同市平良=も同様な証言をした。
※(注=△はへんが「王」でつくりが「允」)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704081300_06.html

2007年4月9日(月) 夕刊 1面
西山元記者が控訴/沖縄返還 密約訴訟
 沖縄返還の「密約」をめぐる取材を国家公務員法違反罪とされた元毎日新聞記者の西山太吉さん(75)が、国に密約を認めて謝罪するよう求めている沖縄返還密約訴訟で、西山さんは九日、密約の事実には触れずに請求を棄却した一審・東京地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。
 西山さん側は、返還交渉の中枢にいた吉野文六・元外務省高官の証言や米国の公開公文書で密約の証拠を積み重ねたが、一審・東京地裁は密約の事実には検討を加えず、損害賠償請求権は二十年で消滅するとした民法の除斥期間を適用して訴えを全面的に退けた。
 控訴に当たり西山さんは「政府は閣議で密約を否定する見解を決めており、仮に司法が密約を認定した場合は閣議決定を覆すことになる。一審が密約の事実から逃げたのは、内閣を崩壊させるような判決までは出せなかったということだ。行政を追認するこうした司法を突き破ることができるのは、世論の力しかない」と話した。
 一審・東京地裁が除斥期間を適用し、密約の主張について事実上の門前払いとしたことについては、「国が作った救済制度で国を救うこと自体がばかげている」と批判した。
 訴訟で西山さんは、国家公務員法違反罪に問われた刑事裁判について、密約を不問に付した一方的な訴追で精神的な苦痛を受け続けているとして、国に謝罪や慰謝料を求めた。米国の公開公文書で密約が裏付けられるたびに官房長官や外務大臣らが記者会見や国会答弁で密約を否定しており、西山さんはそのたびに名誉を傷つけられていると訴えている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704091700_01.html

2007年4月10日(火) 夕刊 5面
ヘリ帰還 入学式に騒音 普天間飛行場
「台無しだ」父母憤り
 【宜野湾】十日午前七時半ごろ、韓国など海外演習に参加していた第三一海兵遠征部隊(31MEU)のヘリ部隊約二十機が米軍普天間飛行場に帰還した。同飛行場では二月から「主力ヘリ」が不在となっており、約二カ月ぶりに部隊が戻った。
 この日は同市内八小学校で入学式があり、同飛行場に隣接する普天間第二小学校(出盛光朋校長)では、入学式のさなかに学校上空を飛び、騒音が響いた。目立った混乱はなかったが、保護者から不満の声が上がった。
 体育館で行われた入学式に出席した堀口智子さん(35)=同市普天間=は「ヘリの音であいさつが聞こえにくかった。せっかくの入学式が台無しだ」と憤った。
 宮城嗣吉さん(41)=同市喜友名=は「基地が身近にあることをあらためて感じた。子どもの安全も心配だ。米軍は配慮してほしい」と話した。
 帰還したヘリは普天間所属のCH46やCH53、UH1など。着陸後、物資を降ろす様子が確認された。「普天間」に常駐する固定翼機を含む五十数機のうち、約半数が戻った。
 米海軍機関紙によると、二月上旬、31MEUなど約四千人の兵士が沖縄近海で訓練。その後、三月二十五日から三十一日まで韓国で戦時増援演習「RSOI」に参加したとみられる。
 同飛行場では、一月にCH46中型輸送ヘリを含む第一海兵航空団第二六二海兵中ヘリ中隊がイラクへ出発。二月にKC130空中給油機など固定翼機を除くすべてのヘリが不在となっていた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704101700_03.html

2007年4月11日(水) 朝刊 2面
参考人質疑で賛否 米軍再編推進法案/衆院安保委
 【東京】日米が合意した米軍再編への協力度合いに応じ地方自治体に交付金を支給する「米軍再編推進法案」を審議中の衆院安全保障委員会は十日、参考人質疑を行った。参考人は米軍再編について反対、賛成それぞれの立場で見解を述べた。
 拓殖大学の川上高司教授(国際政治)は「米軍が抑止力を落とさずに少しでも出て行ってくれるなら、やるべきだ。たとえ訳の分からないものであっても、この機を逃さずにどんどんやるべきだ」と述べ、米軍再編を推進する法整備の必要性を強調した。
 軍事評論家の江畑謙介氏は米軍再編を一定評価する一方、「今までの経緯を見ると、日米間の合意を急ぐあまり、国民に十分な説明がなされてこなかった印象がある」と指摘。普天間飛行場代替施設のV字滑走路案に関連して「垂直離着陸機MV22オスプレイでも滑走距離はせいぜい数十メートルあればいい」と述べ、形状や規模など、政府の説明責任が不十分との認識を示した。
 沖縄大学の新崎盛暉名誉教授は法案に反対の立場から、再編交付金の在り方について「(自治体の対応は)国の言いなりになるか、値を釣り上げるためにごねるということしか残らなくなる。いずれにせよ自治体の自律性が大幅に損なわれる危険性をはらんでいる」と批判した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704111300_04.html

沖縄タイムス 関連記事(4月7日?8日)

2007年4月7日(土) 朝刊 2面
空幕長 F22共同訓練認める
 【東京】田母神俊雄・航空幕僚長は六日の定例会見で、米軍嘉手納基地に暫定配備されている最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターと航空自衛隊との共同訓練について「調整の最終段階。来週中には話がまとまり、訓練ができる方向にいくと思う。早めにやりたい」と述べ、近く沖縄周辺空域で実施することを公式に認めた。
 田母神空幕長は訓練について「当然、沖縄の部隊(南西航空混成団)は参加するだろう。そのほかの部隊も、F15も参加させたい。沖縄周辺の海域でやるように調整している」と説明。
 その上で「F22の性能がどの程度か確認することはもちろんだが、通常訓練と同様、わが方(空自)の戦術がこれ(F22)に対して使えるのかというようなことも分かると思う」とした。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704071300_04.html

2007年4月7日(土) 夕刊 4面
「9条を守ろう」全国行脚で訴え/福崎さん那覇を出発
 「政府に訴えるより、歩きながら一人一人に憲法九条の大切さを伝えたい」。ネズミ男をイメージした格好で全国行脚する「WALK・9条の会」の福崎やすおさん(51)=広島県在住=が六日、「憲法第9条」と書かれた旗を持ちながら那覇市をスタート、「九条を守ろう」と訴えた。
 出発点に激戦地となった沖縄を選んだ。うそをつき、人を裏切り、金に目がくらむネズミ男のキャラクターが人間らしい姿と話し、「不完全な存在だからこそ、罪を犯さないために憲法九条は大切」と話す。
 全国行脚は、昨年十一月に広島県で行われた「9条ピースフェスタ」に参加し、決意した。広島県で町議員を十四年勤めた後、二年前に舌がんに。がん経験者の会で、同じ病気に苦しむ人の助けになれば、とカウンセリングを学んだ。
 議員時代は、自身の意見を訴えていたが、カウンセリングを通して「一方通行の言葉より対話の大切さを知った」という。
 二十六日ごろまで滞在予定で、「九条について多くの県民と話す機会を持ちたい」と語った。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704071700_04.html

2007年4月8日(日) 朝刊 25面
比移民の妻子生存か/44年戦死の平良泰山さん
NPO調査で判明/おいが訪問18日対面
 戦前のフィリピン移民で一九四四年に戦死した、多良間村出身の平良泰山さん=享年(26)=の妻子とみられる現地の人が比セブ島近くのオランゴ島にいることが七日までに分かった。おいの野原賢秀さん(51)=多良間村=が訪比し、十八日にアビリーナ・タイラさん(86)と息子のパトリシオさん(66)に対面する。戦後六十二年が過ぎて海外残留遺族が存在する可能性が出たことについて、野原さんは「まずは会ってみたい。雰囲気などから感じるものがあると思う」と話している。(吉田央、溝井洋輔)
 遺骨収集事業を手掛ける特定非営利活動法人(NPO法人)「空援隊」(杉若恵亮理事長)の倉田宇山理事の調査で判明した。
 倉田さんは遺骨収集の取材でオランゴ島を訪れた二〇〇五年九月、地元警察からの情報でアビリーナさんと面談。平良さんと両親の姓名、沖縄出身者であることなどを聞き取った。アビリーナさんは日本語が話せないが、数種類の日本の軍歌を口ずさんだという。
 〇六年八月、沖縄で平和の礎に平良さんの刻銘を見つけ、同年十二月に多良間島に野原さんらを訪ね、アビリーナさんの証言がほぼ正しいことを確認した。
 平良さんは一九一七年六月、多良間村塩川生まれ。倉田さんの調査によると、四〇年ごろ渡比し、その後に現地召集された。四四年に沖縄の家族に戦死公報が届いた。アビリーナさんらフィリピンの遺族は日本国籍を持たず、「恩給法」の適用も受けられなかったという。倉田さんは「野原さんとパトリシオさんのDNA鑑定などを通じ、就籍できるよう支援したい」と話している。
 現在、多良間村役場に勤務する野原さんは「フィリピンは遠くないし、親せきが増えればいい」と話している。
 平良さんの妹の野原ヨシさん(85)=同村=は「兄とは十五、十六歳の時から離れて暮らしていた。フィリピンに家族がいると聞いて良かったと思っている。子どもにも会ってみたい」と話した。
 総務省恩給企画課は「日本国籍の取得の問題のほか、(平良さんの)戸籍に(アビリーナさんとの)婚姻関係が記載されているかどうか、恩給法適用の時効が七年という問題もある」とし、恩給法の適用を困難視している。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704081300_01.html

2007年4月8日(日) 朝刊 25面
集団的自衛権 首相容認方針/「次は憲法」警戒感
 安倍晋三首相が集団的自衛権行使を一部容認する方向で、憲法九条の解釈を見直す方針を固めたことについて、七日、県内からは反発の声が上がった。
 安倍首相の著書「美しい国」を読んだという沖縄・女性九条の会の上原智子事務局長は「意外ではなかったが、動きが速いと思った」と警戒感を示す。これまでのように法律レベルではなく、憲法レベルで容認することは「日本の進む方向を国内外にアピールすることになり、不安を感じる。会では今後も意見公告などを通して、多くの人に九条の大切さを知ってもらえるよう地道に活動していく」と話した。
 政治学者のダグラス・ラミスさんは「これは、アメリカの戦争に参加するという意味だろう。長いものには巻かれろ、という言葉があるが、本当に長いか確かめる必要がある。アメリカは第二次世界大戦以来大きい戦争に勝ったことがない」と指摘。「いわば集団的敗北権。どうして負ける勢力と一体になりたいのだろう」と疑問を示した。
 高良鉄美琉大教授は権力者の憲法擁護義務が憲法に定められていることを挙げ「安倍首相だけでなく今の閣僚には憲法を順守の意識がない」と、姿勢が憲法に反していると強調。「米国と一体となっていくことしか頭にないのではないか」と批判した。
 違憲共闘会議議長の有銘政夫さんは「九条の解釈を変えるための地ならしだ。現状に合わないからと、次は憲法を変えるだろう。国民世論で、絶対に許さない信念を持って反対を突き付けていかなければ。運動の責任が大きくなる」と訴えた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704081300_02.html

2007年4月8日(日) 朝刊 3面
米軍移転費 日本が負担/那覇空港返還
 一九七二年の沖縄返還で米軍が那覇空港から移転するための費用を、当時の山中貞則総理府総務長官が「日本政府に負担する準備がある」と米側に表明していたことが七日までに、米国の公開公文書で分かった。返還交渉の経緯に詳しい我部政明・琉球大教授によると、返還に伴う米軍基地移転費の補償を日本側が具体的に明言したことが確認されるのは初めて。移転費を補償する明確な根拠がない中、日本側が米軍基地移転に政治的な判断で個別に対処していた事実の一端が浮かび上がった。(粟国雄一郎)
 米軍移転費の負担については、六九年に非公開で行われた日米会談で、当時の福田赳夫蔵相が「施政権返還に伴う費用は日本側が負担する」と明言している。
 一方でその後、日本側が米軍の移転にどう対処してきたかは明らかになっていないという。
 山中氏の発言が記されていたのは、七一年六月三日付で米国務省から駐日米大使館に送られた秘密電信文。二日前の一日、ワシントンで山中氏とキッシンジャー米大統領補佐官が四十五分間にわたって会談した内容を伝えていた。
 それによると、山中氏はニクソン大統領に対する佐藤栄作首相のメッセージを伝え、沖縄返還について話し合う中で、日本政府が那覇空港の返還費用を負担する準備があることを表明した、とされる。
 八日後の六月九日、パリで行われた愛知揆一外相とロジャース国務長官との会談で、那覇空港の返還などを含めた施政権返還交渉が最終合意された。
 同十七日には沖縄返還協定が調印されたが、空港返還に伴う米軍の移転費を日本側が負担することは明らかにされなかった。
 我部教授によると、施政権返還と同時に那覇空港の明け渡しを求める日本側に対して、米側は基地移転費の補償を要求。返還前の米軍基地に対する移転費について、日本側は国内向けに説明する根拠を見いだせなかったとみられる。
 那覇空港にいた米軍のP3対潜哨戒機は嘉手納基地へ、家族住宅は牧港補給基地やキャンプ桑江などに移転した。我部教授は日本が当初合意した返還にかかる補償額に追加して支払った可能性が高いとみている。
[識者評論]
我部政明琉大教授
米は当然視 現在も続く
 日本政府が米軍の基地移転費を負担するという公式な発言はこれまでになく、山中貞則氏が明言している点で興味深い。山中氏は沖縄返還に熱心だったが、日米交渉にも関係していたということは知られていない。交渉の重要な当事者とまではいえなくても、極秘の財政問題を知った上で会談に臨んでいることがうかがえ、少なくともある程度の内容は知りうる立場だったのだろう。
 返還に伴うさまざまな費用について米側は、日本の要求に基づく返還であり、それに伴う費用を日本が負担するのは当然というスタンスだった。文面からは、山中氏が移転費の負担を明言しても、米側の反応が鈍かったことが読み取れる。
 当時の米側の最大の焦点は、日本から取り付けていた「基地移転およびその他の費用」の二億ドルを、基地の移転費のみではなく、継続的な維持・修繕費として確保することだった。
 日米地位協定は、駐留米軍の維持費は米側が負担するとしているが、日本は条文を緩やかに解釈することで最終的に米側の要求を受け入れた。この二億ドルの支払いは後の「思いやり予算」となり、米軍基地の維持費に対する日本の負担は増大していくことになる。(談)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704081300_03.html

沖縄タイムス 関連記事(4月6日?7日)

2007年4月6日(金) 朝刊 1・29面
基地・経済 論戦火ぶた/参院補選
 五日告示された参院沖縄選挙区補欠選は、いずれも新人で無所属の会社代表の金城宏幸氏(68)、諸派の前連合沖縄会長の狩俣吉正氏(57)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦、諸派で那覇市議の島尻安伊子氏(42)=自民、公明推薦=の三人による選挙戦が確定した。三氏は本島各地で遊説活動を繰り広げ、支持を訴えた。事実上、狩俣氏と島尻氏の一騎打ち。狩俣氏は「自公政権で格差が拡大した」と批判。島尻氏は「生活者の視点による政治改革を」とアピールした。
 米軍普天間飛行場の移設問題や経済振興の在り方などを争点に、十七日間の選挙戦がスタート。七月の参院選の前哨戦として、百五万有権者の選択に全国の注目が集まる。
 二十二日に投票、即日開票される。
 狩俣氏は那覇市での出発式の後、市内で街頭演説。県庁前での演説会で「格差のない安心した社会をつくる。沖縄の基地の整理・縮小を求めていくことをしっかり国会でやっていきたい」と、格差是正や米軍基地の整理・縮小に取り組むことを強調した。その後、本島中南部でスポット演説を行い、夜は、宮古郷友同志会の激励総決起大会に参加した。
 島尻氏は那覇市での出陣式の後、浦添市や宜野湾市、沖縄市へと北上。名護市までの十五カ所で街頭演説を繰り広げた。宜野湾市の長田交差点では「台所を基本に考え、暮らしの問題を主に訴えていく」と一貫した姿勢を強調。「台所には知恵と要求が多く詰まっている。それを国政の場で訴え、沖縄県の家計のためにも頑張っていきたい」と決意を述べた。
 金城氏は県庁前広場で演説し「普天間飛行場の移設先は、勝連沖人工島が適地だ」とし、県財政が苦しい現状について、「借金返済のため、東シナ海と尖閣諸島の資源を開発する」と訴えた。
     ◇     ◇     ◇     
遊説奔走
 五日告示した参院沖縄選挙区補欠選。狩俣吉正さん(57)と島尻安伊子さん(42)は選挙カーで街へ繰り出した。沿道の声援に手を振って応えながら、本島を南北に駆け抜けた。
狩俣さん
昼食10分 充実初日
 告示日に五十七歳の誕生日を迎えた狩俣さん。「勝利に結び付けばいいけどね」と笑顔で選挙戦をスタートさせた。
 午前中は那覇市内を回った。正午にはパレットくもじ前で国民新党の亀井静香代表代行らの応援演説を受け、「ハイサイ」と登壇。「格差をなくして安心な社会をつくりましょう」と語り掛けるように訴えた。
 昼食は午後1時すぎ。十分で弁当をかき込み、選挙カーで南部の選対支部を巡った。その後、西原町役場前で支持者と握手を交わし、夕方には沖縄市のプラザハウス前で演説に立った。
 精力的な遊説に、郷友会婦人部が用意した縁起担ぎのフチャギを食べ損ねたが、「昨日、一生懸命食べましたから」と苦笑い。初日の感触については「今は無我夢中です」と話した。
島尻さん
北上 15カ所で熱弁
 大太鼓が鳴り響く中、選挙カーに駆け足で乗り込み、選対本部のある那覇市を午前九時二十五分に出発した島尻さん。
 午前中は、浦添市で小池百合子前沖縄担当相、宜野湾市で中川秀直幹事長らと立会演説。その後、北上しながら約十五カ所で演説した。
 「台所から政治を変える」「もっとよりよい暮らしへ」をキャッチフレーズに「全国でも、一番子育て政策が進んでいる県になるよう取り組んでいきたい」と支持を訴えた。
 午後はうるま市石川で魚汁を食べた後、うるま市石川から演説をスタート。金武町のJAおきなわ金武支店前、宜野座村旧役場前で演説した。各スポットに到着するなり、支持者一人一人に駆け寄り笑顔で握手。勝利に向け力強くガンバロー三唱した。

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2007年4月6日(金) 朝刊 1・29面
沖縄原告、敗訴確定/靖国訴訟
 小泉純一郎前首相の靖国神社参拝は政教分離を定めた憲法に違反し、人格権を侵害されたとして沖縄戦の遺族らが国と前首相に損害賠償を求めた「沖縄靖国訴訟」で、最高裁第一小法廷(泉徳治裁判長)は五日、請求棄却の一、二審判決を支持、原告の上告を退ける決定をした。
 参拝が合憲か違憲かの判断は示されないまま、原告敗訴が確定した。
 沖縄戦の遺族ら原告は、肉親が知らぬ間に靖国神社に祭られ、戦闘に協力した者として賛美されているのは耐えがたい苦痛で、前首相の参拝により苦痛はさらに深まったと主張したが、二審・福岡高裁那覇支部は「参拝が違憲だとしても、原告の権利の侵害は認められず、損害賠償請求を棄却する結論は変わらない」として憲法判断を示さなかった。
     ◇     ◇     ◇     
原告、門前払いに怒り/「司法の独立放棄だ」
 小泉純一郎前首相の靖国神社参拝の違憲性を問うた沖縄靖国訴訟で、最高裁は五日、原告の上告を退けた。「司法の独立を放棄した」「あまりに形式的だ」。原告団の間には、門前払いに怒りと無力感が広がった。
 「司法が憲法判断をせずに、一体この国は本当に民主国家なのか」。原告団長の金城実さん(68)は落胆を隠さない。「集団自決」の軍命を否定する訴訟や教科書検定を挙げ、「沖縄戦の隠蔽が進む中で裁判所はまたも目をつぶった」と憤る。
 沖縄戦で母と兄を亡くした副団長の川端光善さん(71)は、一審で証言に立った。「沖縄戦の実態や、家族が戦争責任者と一緒に祭られた痛みを訴えたが、裁判官は『それは裁判と何の関係もない』という態度だった。政府を守るという立場ありきだ」。悔しさを押し殺しつつ、「敗訴で終わりではない。靖国神社に合祀取り下げを求める訴えを起こすことも考えていく」と前を向いた。
 事務局長の西尾市郎さん(59)は「憲法判断を避けたのは、司法が危険な方向に進み始めた証しだ」と批判。その上で、一審で裁判官が南部戦跡を訪れたことを「これまでの靖国に関する訴訟で一度もなかった」と、成果に挙げた。
 琉大法科大学院の高良鉄美教授(憲法)は「司法が政治と同じベクトルを向けば、少数者の権利は多数決の中で放置されてしまう。戦争の反省に立った政教分離原則の重みからすれば、棄却するにしても憲法判断に踏み込み、一石を投じるべきだった」と指摘した。
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2007年4月7日(土) 朝刊 1面
普天間移設で独自性を強調/伊波氏・外間氏 対談
 【宜野湾】十五日告示、二十二日投開票の宜野湾市長選に出馬を表明している無所属で現職の伊波洋一氏(55)=社民、社大、共産、民主推薦=、無所属新人で前市教育委員会教育部長の外間伸儀氏(59)=自民、公明推薦=は六日、沖縄タイムス中部支社で対談した。両氏は、普天間飛行場の危険性除去や移設先、経済活性化策などでそれぞれの政策構想を主張、互いの独自性を強調した。
 伊波氏は普天間飛行場が米国の安全基準に合致せず、危険性は明白になっていると主張。「グアム移設は可能だ。税金を投入しながら、国民が抱える危険性を除去しないことは道理が通らない」と訴えた。
 外間氏は県と協力し、普天間飛行場の危険性除去を一日も早く実現したいと説明。「移設先のベストは国外、県外。国と県、名護市による協議の推移を見守りたい」と述べ、移設先で見解が異なった。
 経済活性化策について、外間氏は「基地周辺整備事業で高率補助の公共事業を推進し、生活環境も改善する」と強調。伊波氏は「西海岸地区で五十万―七十万人の観光客を集客し、企業誘致による地域活性化」を提起した。
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2007年4月7日(土) 朝刊 25面
市民200人、抗議集会/「集団自決」修正
「軍命 確かに聞いた」
 二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」に日本軍が関与したことを表す記述を文部科学省が削除させたことについて、県内の市民団体が六日、那覇市古島の教育福祉会館で緊急抗議集会を開いた。「集団自決」の生き残りの参加者は「(日本)軍の命令を確かに聞いた」と証言。軍の関与を否定した検定に対し「はらわたが煮えくり返る思いだ」と怒りをあらわにした。約二百人の参加者からは「声を上げなければ、沖縄戦の実相がゆがめられるばかりだ」など、危機感を訴える声が相次いだ。
 渡嘉敷島の「集団自決」で生き残った女性(83)は、日本軍が各家庭の男性に手りゅう弾を配り、日本軍の命令で島民が集合させられて「自決」を強いられたことなど、当時の状況を詳しく証言した。
 「手りゅう弾で死ねなかった人たちはカミソリで切りつけ合っていました。軍の命令だから集合するように、と確かに聞いたんです。誰も死ぬことなんか望んでいなかった」。女性は切
々と当時を振り返り、「教科書の書き換えを許してはいけない。沖縄戦を子孫に語り継がなくてはいけない」と訴えた。
 本島中部の高校教諭の男性(55)は「日本軍の強制は明らかなのに、事実がこれほど簡単にねじ曲げられてしまう現状は怖い。戦場にされた沖縄から声を上げなければ、数の暴力に押し流されてしまうばかりだ」と危機感をあらわにした。
 集会は「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(高嶋伸欣・福地曠昭共同代表)が主催。「沖縄戦の実相をゆがめ、戦争の本質を隠蔽する暴挙は許せない」とし、検定の修正指示撤回を求めるアピールを採択した。
識者「歪曲」加速を懸念
 高嶋伸欣琉球大学教授は「いま声を上げなければ、次は沖縄戦の住民虐殺の否定にもつながりかねない」と懸念。「現場の教員は教科書問題自体を教材に取り上げ、子どもたちに考えさせるなどの工夫も必要だ」と強調した。
 山口剛史琉大准教授は、大阪地裁で元軍人らが岩波書店などを訴えている「集団自決訴訟」について、「原告が検定を利用して(勝訴)判決を勝ち取ろうとするのは問題だ」と影響を危惧。裁判の行方を注視するよう呼び掛けた。

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沖縄タイムス 関連記事(4月5日?6日)

2007年4月5日(木) 朝刊 27面
「やはり政府はうそを」オスプレイ配備隠し
 政府は、やはりうそをついていた―。普天間代替施設へのMV22オスプレイ配備計画を政府が隠していたことが四日明らかになり、移設先の名護市の市民団体などから怒りの声が噴出した。「事実を認めるべきだ」「計画を白紙に戻せ」。ヘリパッドが集落近くに移設される東村の住民にも、不安は広がった。一方、名護市は「事実を確認してから」と慎重な姿勢を見せた。
 移設先の大浦湾に面した名護市東海岸に住む沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団の東恩納琢磨団長。「国はこれまで市民や県民をだまし続けてきた。闇から闇に葬り去ることは許されず、国は事実を認めるべきだ」と激しく批判した。
 オスプレイに対する住民の不安を訴え、「これまでの説明と違うのだから、住民や自治体への説明からやり直すべきだ。今の状態で事前調査を強行すべきではない」と、国の現況調査の中止を求めた。
 ヘリ基地反対協議会の大西照雄共同代表は「国の秘密主義、やりたい放題は許されない。県民はだまされてはいけない」と強調した。
 政府は一九九七年の名護市民投票以来、「具体的な配備計画は承知していない」と繰り返してきた。SACO合意を究明する県民会議の真喜志好一さんは「オスプレイには力学上の根本的な矛盾がある。政府自身がその危険を認識したからこそ、情報を隠してきた。沖縄を植民地扱いしている」と憤った。
 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「日米両政府は基地さえ造ってしまえば、何でも持ってこられると考えている。オスプレイ配備の事前合意が明らかになり、反対運動はさらに強まる」と警告した。
 「事実なら大変なことだ」。北部訓練場の一部返還に伴いヘリパッドが移設される東村高江の仲嶺武夫区長は、不安を募らせる。「訓練が普天間代替施設と連動されることは明らかだ。政府が情報を隠しているなら、国民をだますやり方で許せない」と批判した。
 一方、名護市の幹部は「初めて聞く話だ。ただ、(SACO合意からオスプレイの文言が)最終的に削除されたということは、配備が合意に至っていないということではないか。詳しいことは事実関係を確認してからでないと答えられない」と述べるにとどめた。
[視点]
県民脅かす卑屈な交渉
 オスプレイ配備計画をめぐる交渉過程で浮かび上がったのは、政府の卑屈な態度だ。復帰をめぐる密約から普天間移設まで、対外的に説明できない米国との約束が積み上がり、県民の安全を脅かし続けている。
 共同通信が入手した文書によると、米側さえ配備計画の公表を求めたにもかかわらず、政府はそれを押しとどめ、国民にも背を向けた。
 現行案のV字形滑走路でも、米側は「双方向からの着陸はあり得ると伝えた」と明らかにしたが、政府は「乗員の生命にかかわる場合だけ」と限定して説明し、問題をうやむやにしている。
 政府が米側の要望を丸のみし、説明責任を回避し続ける限り、普天間移設や日米安保体制に対する県民の信頼は失われるばかりだ。
 代替施設の完成時にオスプレイが配備されるのは、もはや明らかだ。政府が本当に移設を「負担軽減の最善策」と信じるなら、非を認めた上で、情報を開示することは無理な注文ではない。「密約」が次々に米側文書で明らかになるような政府の姿勢を許し続けるのかどうか、国民の側も問われている。(社会部・阿部岳)
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2007年4月5日(木) 朝刊 27面
岩波書店・大江さん抗議/高校教科書検定
「集団自決」訴訟は継続中 原告側の訴えだけで修正
 【東京】二〇〇八年度から使用される高校歴史教科書の検定で文部科学省が沖縄戦の「集団自決」記述に関し、日本軍の関与を否定する意見を付し教科書会社に修正させたことについて、岩波書店と作家の大江健三郎さんらは四日、連名で抗議声明を発表した。岩波書店と大江さんは沖縄戦時に慶良間諸島で起きた「集団自決」をめぐって、当時の日本軍戦隊長らと民事訴訟で係争中だが、今回の検定が元戦隊長側の主張のみを取り上げて修正の根拠の一つにしていると非難。近く声明文を伊吹文明文科相に郵送する予定だ。
 声明は(1)訴訟は継続中(2)集団自決に軍命があったことは多くの文献などで明らか(3)住民が軍命があったと認識していたことは戦隊長側も認めている―と指摘している。
 同日、岩波書店の宮部信明編集部長、岡本厚編集副部長、代理人の秋山幹男弁護士が文科省で会見。大江さんは出席しなかったが「心から賛同する、私の名前で出してほしい」と話しているという。
 文科省が今回の検定で参考にしたとして報道機関に提出した沖縄戦関連の「著作物等一覧」には、同訴訟を「沖縄集団自決冤罪訴訟」と元戦隊長ら原告やその支援者が使用する呼称をそのまま明記していた。
 訴訟を担当する岡本副部長は会見で、文科省が今回の検定から修正意見を付したことや、近年、軍命を否定する著作物が発刊されていないことを指摘した上で「原告の訴え自体に文科省の修正が対応していると考えざるを得ない」との見方を示した。
 文科省が訴訟での元戦隊長の主張を修正の根拠にしていることについて「中立公正に訴訟を取り上げるべきだ。非常に乱暴なやり方だ」と強く非難した。
 秋山護士も「隊長命令がいつどこであったかどうかについては争いの対象になっているが、軍の関与、強制というレベルの事実は(裁判の)証拠上はっきりしている。それらを検討した上で検定したとは到底思えない」と疑問を呈した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051300_04.html

007年4月5日(木) 朝刊 2面
「普天間」解決と経済振興で激論/宜野湾市長選 公開討論会
 【宜野湾】二十二日投開票の宜野湾市長選に向け市民の関心を高めようと、「公開討論会」が四日、市民会館で開かれた。立候補予定者で、革新系無所属の現職伊波洋一氏(55)=社民、社大、共産、民主推薦=、無所属新人の外間伸儀氏(59)=自民、公明推薦=が、米軍普天間飛行場問題や経済振興策を中心に主張を展開した。主催は宜野湾青年会議所、日本青年会議所沖縄ブロック協議会。
 島袋純琉球大教授が司会を務め、市の課題、迅速な対応が求められる施策など五点を議論した。
 基本演説で、両者とも普天間飛行場の危険性除去や移設を念頭に持論を展開。伊波氏は「基地問題解決のためには米国を訪れ、直接訴えていく必要がある。引き続き市政を担い課題解決に取り組みたい」とアピール。
 外間氏は「国や県に主張すべきは主張し、要求すべきことは要求したい。跡地利用に向けてしっかりと国、県と対話していきたい」と訴えた。
 早急に取り組む重要施策は「普天間飛行場の早期の危険性除去と返還、跡地利用計画の策定」(外間氏)、「大山田イモ地区保全計画と連動した大山小過大規模校の解決」(伊波氏)を優先課題に挙げた。
 クロス討論で、危険性除去への対応を問われた外間氏は「騒音データや過去の事故を調べ、有効な手法を研究したい」と回答。大山小問題の解決で、校区再編から分離新設校設置への方針転換を問われた伊波氏は「校区再編では新たな問題が生じるためであり、矛盾はない」などと答えた。
 最後のアピールでは、伊波氏が「小学生までの入院費無料化を実施」と明言。外間氏は「公共事業導入で、生活環境の改善」を訴えた。
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2007年4月5日(木) 夕刊 4面
普天間移設問題「環境にも配慮」/小池首相補佐官が講演
 小池百合子首相補佐官は四日、那覇市内のホテルで開かれた講演会(主催・沖縄経済同友会)で、米軍普天間飛行場の移設問題について「仲井真弘多知事は三年以内の早期閉鎖を求めている。そのためにもキャンプ・シュワブ沖への日米合意案を進めていかなくてはいけない」と述べた。その上で「環境の観点からも日米合意は藻場を守るということでよく考えられた案。地域の声も受け止めながら、その後の跡地利用をどう進めるかを考える重要な時期だ」との考えを示した。
 沖縄振興計画が後期五年の折り返しの節目を迎えることについて「沖縄にはビジョンが必要。沖縄の文化やシーサー、かりゆしウエアなどを世界にアピールし、観光地というだけでなく、プラスアルファの文化を発信することが重要」と述べ、戦略的な観光振興を促した。那覇空港の拡張に関しては「アジアのハブ空港に十分なり得る。観光客の受け入れ態勢の点検も必要で、(早期建設に向けて)もっと声を上げるべき」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704051700_03.html

2007年4月6日(金) 朝刊 1面
F22・空自、共同訓練へ
沖縄空域数週間内/南西混も参加
 嘉手納基地に暫定配備されている米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターが今月中旬にも、沖縄周辺空域で沖縄の南西航空混成団を含む航空自衛隊との空対空の日米共同訓練を計画していることが五日、分かった。実施時期について嘉手納基地は「数週間以内」としている。空自は来週にも正式発表する方向で調整を進めている。F22の配備は騒音面でも周辺住民の不満が高まっており、嘉手納基地の機能強化につながる日米共同訓練実施には反発も予想される。
 空自南西航空混成団と嘉手納基地所属の第一八航空団の日米共同訓練は一九七九年以降、三十四回行われている。今回の訓練でF22が第一八航空団の一部として参加するのかは不明。
 空自からは那覇基地所属のF4のほか、石川県の第六航空団など沖縄以外の部隊が参加する方向で調整が進んでいる。
 F22と空自の共同訓練について、外務省の西宮伸一北米局長は「特定の施設・区域に一時的に展開している米軍の航空機が、各種訓練に参加すること自体は日米地位協定上、排除されない」との見解を示している。
 F22を運用するウェイド・トリバー司令官は嘉手納配備が始まった二月、嘉手納基地所属のF15戦闘機やE3空中警戒管制機と沖縄周辺海域で訓練することや、三沢基地(青森県)所属の米軍F16戦闘機との訓練計画を発表。一方で、空自との訓練については「(現時点は)計画にない」としていた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200704061300_01.html