沖縄タイムス 関連記事(3月23日?25日)

2007年3月23日(金) 夕刊 7面
海軍病院移設先に文化財
 【宜野湾】米海軍病院の移設先とされるキャンプ瑞慶覧の宜野湾市区で約三千五百年前の土器や古い住居跡などが発見されたことが二十三日、開会中の市議会定例会で明らかになった。
 呉屋等氏(清新会)への答弁。
 市教育委員会の説明によると、二〇〇四年度から〇六年度までの試掘調査で、旧普天間集落より古い約八百から五百年前の柱の跡や、約三千五百年から二千五百年前の土器の破片などが見つかった。
 詳細は三月中に取りまとめ、四月に分析を進めるという。
 文化財の発掘や保護対策などで海軍病院の移設作業にも大きく影響しそうだ。新田宗仁基地政策部長は「文化財の発掘状況を明らかにしなければ工事は入れないはずだ」とし、那覇防衛施設局が予定している今月中の着工は困難との認識を示した。
 一方の施設局は十六日、移設する建設工事の業者を選定。今月下旬から着工し、二〇〇九年三月に完成する予定。
 米海軍病院は日米特別行動委員会(SACO)合意で、キャンプ桑江の大部分返還の条件として、キャンプ瑞慶覧の普天間ハウジング地区への移設が盛り込まれた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703231700_06.html

2007年3月24日(土) 朝刊 1面
嘉手納以南返還/実施計画 来月以降に
グアム移転遅れが影響
 【東京】日米両政府が三月末までに作成を目指す嘉手納以南の米軍基地返還の詳細な実施計画(マスタープラン)が、四月以降にずれ込む見通しであることが二十三日までに分かった。遅れの背景には、在沖米海兵隊八千人のグアム移転計画の詳細が決まらないことがあるほか、関連するキャンプ瑞慶覧の返還面積の確定が難航、個別の基地の返還順序や年次などの明記も困難な情勢。日米は二〇〇七年度以降も協議を継続する方針だ。
 日本政府は大型連休中に予定している日米の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)までには一定の形でまとめる方向で調整を続けている。
 日本側関係者によると、基地返還の検討を進めるには、グアムに移転する海兵隊の部隊名や兵員数の内訳を確定することが前提。しかし、普天間飛行場代替施設の建設計画の日米合意が〇六年末までかかった影響で「米側が検討作業に入ったのは、今年に入ってから」(政府関係者)という。
 海兵隊が使用するキャンプ瑞慶覧の部分返還は、グアム移転計画とも関連するため、調整が難航。このため、返還計画作成は「キャンプ瑞慶覧次第だ」(同)との指摘もある。
 一方、県内に代替施設を確保する必要がある基地と部隊の移設先については、海兵隊の移転計画にかかわらず検討を進められるため、「微修正は残っているが、それほど大きな問題はない」(同)という。
 普天間飛行場を名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に移設するほか、第一桑江タンクファームの給油機能は普天間代替施設に併設。
 牧港補給地区の倉庫機能は、嘉手納弾薬庫とキャンプ・ハンセンに分散移転する方向で検討している。
 〇六年五月の在日米軍再編に関する日米合意文書(ロードマップ)は、嘉手納以南の基地返還について〇七年三月までに「詳細な計画」を作成することを明記した。
 日米の事務当局は今月に入って、米側との調整を加速させているが、日米関係筋は「協議の遅れは否定できない」としている。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703241300_01.html

2007年3月24日(土) 朝刊 1面
名護市も現況調査同意/普天間代替
週明けにも国へ書類提出
 【名護】米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への代替施設建設に伴う海域での現況調査について、名護市は二十三日、週明けにも同意書を佐藤勉那覇防衛施設局長あてに提出することを決めた。これを受けて近く施設局は、海域調査に必要な公共用財産使用協議書の同意申請を県に提出する。
 同日午後、防衛施設庁幹部が同市役所を訪ね、協力を求めた。
 島袋吉和市長は、沖縄タイムス社の取材に対し「県と連携して週明けに対処する。現況調査には名護漁協も同意している。長島や平島も含まれており、反対する理由はない。引き続き沖合側への移動を求めていく」と話した。市は名護漁協の意思確認と庁内での手続きを終え次第、施設局に同意書を提出する。
 海域の調査範囲は、大浦湾から久志にかけての海域。サンゴやジュゴンの生息調査、藻場のほか、波力の調査も行われる。期間は一年以上。名護市は二〇〇三年三月にも辺野古沖の従来計画のボーリング調査に伴い、同意書を施設局に提出している。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703241300_02.html

2007年3月25日(日) 朝刊 27面
「沖縄が当事者、追及を」/返還密約27日判決
 沖縄返還密約訴訟の判決を前に、緊急討論会「復帰35年 あらためて問う沖縄返還密約 私たちはどう向き合うべきか」が二十四日、那覇市の沖縄大学で開かれた。メディア関係者や市民による実行委員会が主催。米軍再編に絡んで「密約は過去ではなく現在進行形の問題だ」との意見が出され、沖縄が当事者として日米両政府に問い続けることを確認した。
 沖縄返還で巨額の対米裏負担をしていた政府の密約をめぐり、西山太吉・元毎日新聞記者が国家賠償を求めている訴訟は二十七日に東京地裁で判決が言い渡される。
 基調報告した代理人の藤森克美弁護士は「密約は虚偽の公文書作成と行使、(密約はないとの)うその国会答弁は偽計業務妨害であり、立派な犯罪だ。裁判ではこの国が法治国家か、官僚による『官治国家』かが問われる」と強調した。
 西山記者の逮捕は一九七二年四月。沖縄は復帰直前の激動のただ中にあった。参加者約八十人を交えた意見交換で、元新聞記者の上江洲由美子さん(68)は「当時沖縄は大きな関心を示さなかった。国家犯罪を告発した記者の有罪判決に対決できないまま、機密漏洩が厳罰になるような時代を迎えてしまい、心が痛い」と目を潤ませた。
 七一年十一月のゼネストで火炎瓶による警察官の焼死を撮影し、証拠を求めた警察にフィルムを押収される言論弾圧を経験したジャーナリストの吉岡攻さん(62)も会場に足を運んだ。「表現の自由が脅かされれば生活の基盤も失われる」と、警鐘を鳴らした。
 実行委員の一人で、西山元記者の取材を重ねてきたジャーナリストの土江真樹子さんは「訴訟では個人の名誉回復ではなく、歴史が裁かれる」と、四時間に及んだ討論会を締めくくった。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703251300_04.html

米軍横田基地での有害物質漏れ7年で90件なのに 地元連絡1件のみ

米軍横田基地での有害物質漏れ7年で90件なのに 地元連絡1件のみ
http://www.asahi.com/national/update/0324/TKY200703240204.html

横田基地、有害物質漏れ7年で90件 地元連絡1件のみ
2007年03月24日16時39分
 米軍横田基地(東京都)やその関連施設で99?06年の7年間に、ジェット燃料など米国内で規制対象になっている有害物質の流出事故が計90件起き、総量は最大で約10万5000リットルに達していることが分かった。このうち地元自治体に事故の発生が伝えられたのは1件だけ。日米合同委員会の合意で米軍側に通報義務があるが、通報は判断権限も米軍側にあり、自治体のチェック機能が働かないのが実情だ。
 米国の情報公開法に基づいて開示された資料から判明した。資料は一橋大大学院生、林公則さん(28)らが入手した。
 公表されたのは99年9月発生の事故から06年5月発生の事故まで。米軍側の流出量などによる区分で分類すると、流出量が1万ガロン(1ガロンは約3.78リットル)以上で、危険度が「公衆の健康や安全に深刻な脅威を与える」とされる「カテゴリー1」の事故は1件。所沢通信施設(埼玉県所沢市)で04年8月に発生、2万900ガロンの軽油が流出した。
 1000?1万ガロンで「公衆の健康や安全に脅威を与える」危険度の「同2」は2件。05年7月に基地内でジェット燃料2400ガロンが流出するなどした。
 残りは100?1000ガロンの流出で「被害も危険も及ぼさない」「同3」が6件、100ガロン未満の「同4」が75件、流出量不明が6件だった。
 米太平洋空軍は「同1?3」の事故は報告書を作成するよう各基地に指示しており、公開されたうち計10件は詳細な報告書が作られていた。
 一方で、地元自治体が把握しているのは、所沢で起きた「同1」の1件だけ。「同2」以下の事故については、地元への情報提供はない。
 外務省によると、日本側への情報提供の手続きは97年3月の日米合同委員会で合意。「公共の安全、環境に影響を及ぼすおそれのある事件・事故が発生した場合、直ちに日本側に通報すべきだ」とし、「危険物、有害物または放射性物質の誤使用、流出で実質的な汚染が生じる可能性」や「墜落などの航空機事故」9項目を列挙。米軍側は外務省に連絡するとともに、各地の防衛施設局を通じて地元自治体へ情報提供する仕組みだ。
 ところが、通報基準となる「公共の安全、環境に影響を及ぼすおそれ」があるか否かの判断は、米軍側に任されているのが現状だ。外務省も「当該事件・事故について、米側からしかるべく通報が行われるものと考えている」とするにとどまっており、燃料漏れ事故について「米軍側からの報告を取りまとめた資料はない」という。
 東京防衛施設局によると、資料が残る03?06年で、基地側からの通報件数は計18件。うち燃料漏れに関するものは所沢通信施設での1件という。残りは、部品落下などの航空機事故や米兵らの犯罪に関するものなどで、燃料漏れについてはほとんど知らされていない。
 資料を分析した林さんは「日米地位協定によって、米軍側には米国内基地で汚染除去のために定められた手続きも適用されないうえ、原状回復義務もない。基地汚染の全体像が把握できるよう、日本側の基地への立ち入り調査権の確立も必要だ」と指摘している。
 米軍横田基地は東京都西部の5市1町に広がり、都は「軍民共用化」を求めている。

沖縄タイムズ 基地関連記事(3月15日、16日、17日、20日)

2007年3月15日(木) 夕刊 5面
北谷町長、米に綱紀粛正要請/空気銃発砲
 【北谷】北谷町内で八日、米陸軍軍属の息子の無職少年(19)が自宅マンションから空気銃のようなものを歩行者や駐車中の車に発砲した事件で、野国昌春北谷町長は十五日午前、在日米軍沖縄調整事務所を訪ね、事件の再発防止と軍人・軍属への綱紀粛正を申し入れた。
 野国町長は「町内では米軍人・軍属やその家族などによる犯罪が度々発生している。町内の約54%を占める広大な米軍基地を抱える町民は、事件の再発に対する不安や米軍への不信感を感じている」と強く抗議した。
 野国町長によると、対応した同事務所所長のマーク・R・フランクリン大佐は「今回の事件は米軍としても不快感を感じている。日ごろから良き隣人を心掛けていても、一つの事件で台無しになってしまう。米軍人・軍属のすべてが同じような事件を起こす人間ではないことを理解してほしい」と述べるにとどまり、再発防止や綱紀粛正の具体的な案には言及しなかったという。
 抗議に先立ち十四日に那覇防衛施設局、外務省沖縄事務所へ要請をしている野国町長は「米軍、国とも事件の深刻さを受け止めているという印象を受けた。それぞれの立場で再発防止に努めてほしい」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703151700_05.html

2007年3月16日(金) 夕刊 1面
普天間移設 海域調査に同意へ
知事 範囲拡大を一定評価
 仲井真弘多知事は十六日午前の定例記者会見で、米軍普天間飛行場代替施設の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に伴う海域の現況調査に向け、国から公共用財産使用協議書の同意申請を受けた場合の対応について「事務処理上は、形式が整えば処理せざるを得ないと思っている」と述べ、アセス前段の事前調査の手続きに応じる意向を表明した。
 また、国との調整で調査範囲が辺野古沖を埋め立てる従来計画と同エリアまで拡大されたことを認めた上で、「(現行の政府案のままでは認められないとする)こちらの立場や主張も考えていてくれるのかなというのもないわけではない」と述べ、一定評価する考えを示した。
 天候不良で延期になった尖閣諸島視察について「尖閣は沖縄の県域なので、なるべく早く行きたい」と早期視察の意向をあらためて示した。
 今後、中国、台湾から視察中止を求める動きが出た場合でも「それぞれ(中国と台湾)と友好関係を維持強化したいということを基本に持っており、(視察を)ちゅうちょしない」と述べた。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703161700_01.html

2007年3月17日(土) 朝刊 2面
米軍・軍属事件事故1270件
 【東京】北原巖男防衛施設庁長官は十六日の衆院外務委員会で、二〇〇六年度の全国における米軍人・軍属による事件・事故数が一月末時点で千二百七十件に上り、約九割が交通事故関係であることを明らかにした。笠井亮氏(共産)への答弁。
 北原長官は、過去の統計についても〇一年度が千七百三十三件、〇二年度千九百四十四件、〇三年度二千七十九件、〇四年度千八百六十六件、〇五年度が千七百五十五件だったと説明した。
 これについて麻生太郎外相は「国民の不満が起き上がり、結果として抑止力を下げることにもなりかねない。米軍とさらに詰めていかなければ」と述べ、綱紀粛正、再発防止策の徹底などを米側に申し入れる考えを示した。
 岩屋毅外務副大臣も事件・事故の多発に「非常に遺憾」と述べ、米軍人などによる事件・事故を未然防止するための取り組みを強化する考えを強調した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703171300_04.html

2007年3月20日(火) 朝刊 31面
ヘリパッド移設 区民怒り/施設局「騒音基準内」
 【東】「高江区に人が住めなくなる」―。米軍北部訓練場の一部返還に伴うヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設問題で、移設地に近い東村高江区(仲嶺武夫区長)で十九日夜、那覇防衛施設局による騒音被害についての住民説明会が開かれた。施設局側は、騒音について環境省が定める基準以下と強調。対策として区内に騒音測定器を設置し、住民生活に影響がある場合、米軍側に申し入れるとの考えを示し、住民の理解を求めた。区民らはあらためて「建設反対」を表明し、住民感情を無視して工事手続きを進める国の対応に怒りの声を上げた。
 会には仲嶺区長や区の代議員十三人が参加。施設局職員は、同施設の返還経緯と騒音測定の結果などを説明した。二〇〇三年に実施した騒音調査を基準に、同区の住宅地域での騒音は環境省が定める「小規模飛行場環境保全暫定指針」に基づき、住宅地での指針値以下であることを強調。ノグチゲラなどの鳥類の繁殖時期を避けた七月から本格工事を実施する方針を語った。
 男性区民は「騒音の問題だけではない。ヘリコプターは落下するし、低空飛行もする。問題がずれている」と厳しく批判。「北部地域の基地の返還は、高江だけに負担が増えている」と怒りを込めた。
 別の区民は「工事着工について新聞報道で見たが、本当にもう変更はないのか」などと落胆の声も聞こえた。妊婦の森岡尚子さん(34)は「四歳の娘もヘリの音をとても怖がるし、胎児にもよくないと医者から聞いた。ヘリパッドができると子育てのために区から出る住民も増えるかもしれない」と、区の存続にもかかわる問題だと訴えた。
 仲嶺区長は「ここまで工事手続きが進んでいることに驚き、動揺している。区として『反対』の姿勢は変わらない。今後どういう対応をするか区民の意見を聞いて考えたい」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703201300_02.html

参院補選 論戦本格化/投票まで1カ月(沖縄タイムズ)

(今日の沖縄タイムズより)
参院補選 論戦本格化/投票まで1カ月
 四月二十二日投開票の参院沖縄選挙区補欠選は二十二日で残り一カ月。与党・経済界が推す前那覇市議の島尻安伊子氏(42)=自民、公明推薦=と、野党陣営候補の連合沖縄前会長の狩俣吉正氏(56)=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=による事実上の一騎打ちとなる見通しで、両陣営の運動は活発化している。「子育て支援」を前面に打ち出す島尻氏に、狩俣氏は「格差社会の是正」を強調、論戦が本格化してきた。 島尻氏は二十日、久米島町を訪れ、支持を訴えた。本島中南部の繁華街を中心に後援会の街宣カーが回り、知名度アップに取り組んでいる。島尻氏は「島々、地域を回るごとに子育てなど課題の大きさを痛感した。与党初の女性国会議員として政策実現を目指したい」と述べた。
 一方、狩俣氏は同日、地域の活動家や県議、市町村議員らの関係者を回り、協力を要請した。離島各地を訪問するとともに、本島中南部の市町村支部を立ち上げ、浸透を図っている。狩俣氏は「多くの人々と接し、感触は上々。一カ月間で政策をアピールし、全力で駆け巡る」とした。

 会社代表の金城宏幸氏(68)も出馬表明している。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703211300_03.html

基地と汚染(米谷ふみ子) ーしんぶん赤旗より

(今日の赤旗、「学問 文化」欄に掲載されたものです。)

基地と汚染   ―下―         米谷ふみ子

米軍基地の危険溶液放置
 「癌を起こすかって? イエス」

 日本は、アメリカの領土の二十五分の一に近く、人口密度はアメリカは一キロ平方メートルに付き二十四人で、日本は三二〇・四人にもなる。国土は、ほとんどが山岳地帯で耕作地は少ない。そんな所に、世界中でアメリカの国内を除いて一番多くの土地一万九千五百三十六エーカーを今アメリカの基地に提供しているのだ。基地は、たいてい飛行機の発着をする平地が必要なので、日本人が住んだり、耕したりする面積を大量に占めていることになる。
 その狭い日本で岩国基地を拡(ひろ)げ、戦闘攻撃機が百三十機ほどと原子力空母が移駐するという話が出ているとき、ロサンゼルス・タイムズにアメリカ国内の軍用基地の環境汚染の恐ろしい記事が出ていた。日本のメディアに出るかと待っていたが出なかった。アメリカ国内で起こっていることだが、同じ戦闘機や戦艦が日本の基地にも出入りしているのだから、基地の近くの住民の健康にかかわることなので心配する必要があると思う。
   □   □
 一九九〇年代に大量の工業用溶剤が国の水道水に入っているのを環境庁が発見した。四年間の検査の結果、四十倍も癌(がん)を起こすのではないかと疑われているTCE(trichloroethylene)の汚染がアメリカ国内にある千四百の軍事施設で拡がっていた。二〇〇一年に環境庁がその汚染をとめるために厳しい企画をくんだのだが、国防総省やブッシュ政権の反対に遭い、実行不可能になった。
 飛行機や他の機械の金属から油を除く透明な液体TCEは中央政府や国際機関や、五、六の州では使用禁止になっているものだ。先天性障害児や子どもの白血球、腎臓、肝臓の癌の原因をいわれ、その汚染で何百というコミュニティーの人々が癌に罹(かか)っているのに何も処置がとられていず、十年も放置されている。
 TCEの研究専門家のボストン大のオゾノフ教授は「TCEが癌を起こすかって? イエス。多くの症例があります」と言っている。
 恐ろしいことに既に閉じられたテキサスのケリー空軍基地で何十年とTCEが使われ、何千ガロンという溶液が浅い地下水を含む多孔(たこう)質浸透性の地層に染み込んでいた。それが徐々に基地からサンアントニオの住宅地の方に四マイルも移動したのだ。空軍が清掃し始め汚染が少なくはなったが、もう十五年はかかるということだ。
 ノース・カロライナにある海兵隊のルジューン・キャンプでは汚染した井戸を閉じたけれど、一九六八年から一九八五年までに一万二千五百九十八人の生まれた子どもたちの間に癌とか先天性障害児は百三人でその中で白血病が六十二人と、国の平均より二倍も多い。
 カリフォルニア州でもエドワード空軍基地やキャンプ・ペンドルトンなどでもTCEの汚染が認められる。同州では二百四十三の井戸が閉じられた。多くの軍需産業工業地でも汚染がひどい。バーバンクにあるロッキード飛行機製作会社の跡の汚染で住民からの訴訟が延々と続き遂に法廷外で決着したことがあった。ここでも半分の量の井戸が閉じられたと、枚挙に遑(いとま)がないほど例がある。
 基地拡張の交渉を日米政府がするとき、空気汚染と騒音のことは出るが、足元が危ないのをメディアは報告していない。
   □   □
 全米科学アカデミーは二〇〇六年七月にTCEは「発がんの危険性および他の健康被害を及ぼす危険性を持つ証拠が二〇〇一年に比べて強まった」と発表した。アメリカ国防総省、エネルギー省、航空宇宙局のうち60%の個所でTCEが検出されている。アメリカ軍はほぼ使用を取りやめ二〇〇五年には十一ガロンのみしか購入していない。二〇〇六年のアメリカでの使用量は約百トンであると言っている。が、日本での基地拡張の交渉に、狭い土地ゆえ、皆の食料(海千山千の)が汚染している可能性があるので基地の近くの土壌や海水の検査を要求する必要がある。
 TCEの使用禁止とか地下水汚染処置を要求しなければ、将来日本中、居住地も農耕地も水が汚染されるだろう(もう汚染された所は医療費もアメリカ負担を要求する)。日本のように狭い土地での現象がアメリカ人には分からないし、他国民の安全なんて考えには入れていない。ことに外国にある基地のことまでは考えていない。例えば、アメリカで禁煙が流行(はや)り、たばこが売れないと東南アジアに行ってたばこを売るというのが、アメリカのビジネスである。更年期の女性のホルモン療法が癌を起こすとアメリカで取りやめになっても、一年後でも日本の婦人雑誌にホルモン療法を薦(すす)めている記事が出ていた。
 事ほど左様に、国内で使えなくなったものでも外国の基地に残っていれば、使うだろうし、原子力潜水艦が寄港して放射能が洩(も)れてもそこの政府に洩らしたとは即時にしらせないだろう。
 政府というものは、国民を守るためにある。国民の健康を守るのに目を見張っていなければならない。他国が毒を盛っているのなら、やめろを要求するべきだ。そのために国民は税金を払っているのだ。我が子が殺されるのを遠慮して黙って見ている親は馬鹿(ばか)、そんな状態では日本中が人工的ハンディキャップや病人で一杯になる。今のアメリカのように。
(こめたに ふみこ・作家、米ロサンゼルス郊外在住)
2007年3月21日 しんぶん赤旗